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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-180166(P2015-180166A)
(43)【公開日】2015年10月8日
(54)【発明の名称】埋設管路防護板
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/02 20060101AFI20150911BHJP
【FI】
   H02G9/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-57372(P2014-57372)
(22)【出願日】2014年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】クボタシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】原田 潤
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康孝
【テーマコード(参考)】
5G369
【Fターム(参考)】
5G369AA06
5G369BA01
5G369DA01
(57)【要約】
【構成】 埋設管路防護板10は、金属板12および金属板12の表面全体を封止する樹脂層14を備え、既設の埋設管路100を防護するために埋設管路100の上方に埋設される。樹脂層14には、金属板12の周側縁12aより内側において、樹脂層14の厚みを薄くすることによって形成される応力分散部20が設けられる。
【効果】 金属板の周側縁の上下位置おいて樹脂層に集中する応力を応力分散部に逃がすので、樹脂層の割れを適切に防止できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される既設の埋設管路を防護するために当該埋設管路の上方に埋設される埋設管路防護板であって、
金属板、および
前記金属板の表面全体を封止する樹脂層を備え、
前記樹脂層は、前記金属板の周側縁より内側において、当該樹脂層の厚みを薄くすることによって形成される応力分散部を有する、埋設管路防護板。
【請求項2】
前記樹脂層の中央部分の表面は、前記応力分散部の厚み方向の内縁に沿って面一に形成される、請求項1記載の埋設管路防護板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は埋設管路防護板に関し、特にたとえば地中に埋設される既設の埋設管路を防護するために埋設管路の上方に埋設される、埋設管路防護板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の埋設管路防護板の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の埋設管路防護板は、金属板と、金属板の表面全体を所定の厚みで封止する廃プラスチック製の樹脂層とを備え、矩形板状に形成される。そして、既設の埋設管路の上方に並べて埋設されることで、新たな地中埋設物を施工するときの掘削作業などによって、既設の埋設管路が破損されてしまうことを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−114940号公報 [H02G 9/02]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の埋設管路防護板では、金属板の表面全体が樹脂層によって封止されるので、金属と樹脂との熱膨張率の違いに起因して、金属板の周側縁の周囲において応力集中が発生し、特に金属板の周側縁の上下の位置において樹脂層に割れ(亀裂)が生じてしまう場合があった。樹脂層の割れを防止するためには、樹脂層の厚みを大きくすることが考えられるが、単に樹脂層全体の厚みを大きくするだけでは、割れ防止の効果は小さい。また、樹脂層の厚みを大きくすると、埋設管路防護板の全体重量が増してしまう上、材料コストも嵩む。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、埋設管路防護板を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、樹脂層の割れを適切に防止できる、埋設管路防護板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、地中に埋設される既設の埋設管路を防護するために当該埋設管路の上方に埋設される埋設管路防護板であって、金属板、および金属板の表面全体を封止する樹脂層を備え、樹脂層は、金属板の周側縁より内側において当該樹脂層の厚みを薄くすることによって形成される応力分散部を有する、埋設管路防護板である。
【0008】
第1の発明では、埋設管路防護板は、既設の埋設管路を防護するための防護板であって、埋設管路の上方に並べて埋設される。埋設管路防護板は、金属板と、金属板の表面全体を封止する樹脂層を備える。つまり、埋設管路防護板は、所定の厚みの樹脂層よって金属板を挟み込むようにして、樹脂層の内部中央に金属板が埋め込まれる構造を有する。そして、樹脂層には、金属板の周側縁よりも内側の位置に、応力分散部が設けられる。応力分散部は、樹脂層の厚みを金属板の周側縁の位置における厚みよりも薄くすることによって形成され、樹脂層に対して強度を抑えた部分を敢えて設けることにより、金属板の周側縁の上下位置おいて樹脂層に集中する応力を自身に逃がす(分散させる)機能を有する。
【0009】
第1の発明によれば、樹脂層に応力分散部を形成し、金属板の周側縁の上下位置おいて樹脂層に集中する応力を応力分散部に逃がすので、樹脂層の割れを適切に防止できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、樹脂層の中央部分の表面は、応力分散部の厚み方向の内縁に沿って面一に形成される。
【0011】
第2の発明では、樹脂層の中央部分の表面は、応力分散部の厚み方向の内縁に沿って面一に形成される。すなわち、樹脂層の中央部分の厚みは、応力分散部の内縁の位置における厚みと同じであり、樹脂層の中央部分は、応力分散部を介して周縁部分よりも厚みが薄くなる。
【0012】
第2の発明によれば、樹脂層を形成する樹脂量を少なくできるので、材料コストを軽減できると共に、防護板を軽量化できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、樹脂層に応力分散部を形成し、金属板の周側縁の上下位置おいて樹脂層に集中する応力を応力分散部に逃がすので、樹脂層の割れを適切に防止できる。
【0014】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施例である埋設管路防護板を埋設管路の上方に埋設した様子を概略的に示す図解図である。
図2図1の埋設管路防護板を示す平面図である。
図3図1の埋設管路防護板を示す断面図であって、(a)は図2のIIIa-IIIa線における断面を示し、(b)は図2のIIIb-IIIb線における断面を示す。
図4図1の埋設管路防護板の側縁部を拡大して示す図解図である。
図5図1の埋設管路防護板の製造方法を示す図解図であって、(a)は下金型に下側の樹脂層を配置した様子を示し、(b)は下側の樹脂層上に金属板を配置した様子を示し、(a)は金属板上に上側の樹脂層を配置して上金型でプレスする様子を示す。
図6図1の埋設管路防護板を埋設管路の上方に並べて配置した様子を概略的に示す図解図である。
図7】この発明の他の実施例である埋設管路防護板の側縁部を拡大して示す断面図である。
図8】この発明のさらに他の実施例である埋設管路防護板の側縁部を拡大して示す断面図である。
図9】この発明のさらに他の実施例である埋設管路防護板を示す図解図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、この発明の一実施例である埋設管路防護板10(以下、単に「防護板10」と言う。)は、地中に埋設されるケーブル保護管、水道管およびガス管などの既設の埋設管路100を防護するための防護板であって、埋設管路100の上方に予め並べて埋設される。そして、新たな地中埋設物を施工するとき等において、掘削機の進行を食い止める、或いは、作業者に防護板10(延いては埋設管路100)の存在を気付かせることで、掘削作業によって埋設管路100が破損されることを防止する。
【0017】
図2図4に示すように、防護板10は、金属板12および樹脂層14を含み、上面および下面において中央部分が周縁部分よりも窪む(つまり中央部分の厚みが薄くなる)略矩形板状に形成される。防護板10の大きさは、埋設管路100の管径などに応じて適宜設定される。一例として、防護する埋設管路100の管径が75−200mmの場合には、防護板10の長辺の長さは、たとえば800mmであり、その短辺の長さは、たとえば500mmである。また、防護板10の中央部分の厚みaは、たとえば40mmであり、周縁部分の厚みbは、たとえば50mmである。
【0018】
金属板12は、比較的軽量でかつ一定以上の剛性を有する金属によって、矩形薄板状に形成される。この実施例では、金属板12は、JIS−G3101に準拠する一般構造用圧延鋼材(SS400)によって形成され、その長辺の長さは、740mmであり、その短辺の長さは、440mmである。また、金属板12の厚みは、少なくともアースオーガ式の建柱機による穿孔を防ぐことができるように、金属板12の素材等を勘案することによって適宜設定される。SS400を用いるこの実施例の場合、金属板12の厚みは、たとえば2.3mmである。
【0019】
樹脂層14は、防護板10の外殻ないし本体を構成し、金属板12の表面全体を封止するように設けられる。つまり、樹脂層14は、略矩形板状に形成され、この樹脂層14によって金属板12を挟み込むようにして、樹脂層14の内部中央に金属板12が埋め込まれる。このように樹脂層14によって金属板12の表面全体を封止することによって、地中成分による金属板12の腐食が防止されるので、防護板10の機能を長期的に保持できる。
【0020】
樹脂層14の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルおよびポリエチレンテレフタレート等の廃プラスチック(再生樹脂)を用いるとよい。廃プラスチックは、数種類の材料がブレンドされており、不均一な材料であって割れを生じやすいが、廃プラスチックを用いて樹脂層14を形成することにより、環境保護に貢献でき、材料コストを低減することもできる。ただし、バージンプラスチック(未使用樹脂)を用いて樹脂層14を形成することもできる。また、廃プラスチックの中でも、ポリエチレンおよびポリプロピレン等を主体とするポリオレフィン系の廃プラスチックを用いて樹脂層14を形成することが好ましい。これは、ポリオレフィン系の廃プラスチックを用いると、塩化ビニルやポリエチレンテレフタレート等の廃プラスチックを用いる場合と比較して、樹脂層14の柔軟性が増し、後述するボーリングマシンのロッドの先端をより閉塞し易くなるからである。この実施例では、樹脂層14は、ポリオレフィン系の廃プラスチックによって形成される。
【0021】
そして、樹脂層14の上面および下面には、金属板12の周側縁12aよりも内側の位置に、応力分散部20が設けられる。応力分散部20は、樹脂層14の厚み(上下方向の長さ)を金属板12の周側縁12aの位置における厚みよりも薄くすることによって形成され、樹脂層14に対して強度を抑えた部分を敢えて設けることにより、金属板12の周側縁12aの上下位置おいて樹脂層14に集中する応力を自身に逃がす(分散させる)機能を有する。
【0022】
具体的には、応力分散部20は、平面視で金属板12の周側縁12aに沿って延びる矩形枠状に形成され、樹脂層14の中央側に向かうに従い徐々に薄肉となる。つまり、応力分散部20の表面は、樹脂層14の中央側に向かうに従い金属板12に近づく傾斜面20aとされる。傾斜面20aの傾斜角度は、特に限定されないが、この実施例では水平方向に対して30°である。
【0023】
また、樹脂層14の中央部分の表面、つまり樹脂層14の上面および下面の中央部分は、応力分散部20の厚み方向(上下方向)の内縁20bに沿って面一に形成される。すなわち、樹脂層14の中央部分の厚みは、応力分散部20の内縁20bの位置における厚みと同じであり、樹脂層14は、応力分散部20を介して中央部分が周縁部分よりも厚みが薄くなっている(窪んでいる)。
【0024】
また、樹脂層14は、金属板12の上下方向の一方側と他方側とで均等な厚みに形成されると共に、金属板12の水平方向(左右方向および前後方向)の一方側と他方側とで均等な長さに形成される。すなわち、樹脂層14は、金属板12を中心として上下、左右および前後に対称となるように形成される。これによって、防護板10の成形後(冷却後)に樹脂層14の内部に生じるひずみを、金属板12の上下、左右および前後方向における一方側と他方側とで均等に負担することができ、ひずみによる防護板10の変形を防止できる。
【0025】
金属板12上側の樹脂層14の中央部分の厚みa1は、ボーリングマシンのロッドが樹脂層14に接触したときに、このロッドの先端を樹脂層14によって閉塞可能な厚みである、17mm以上に設定されることが好ましい。この実施例では、軽量化および材料コスト削減などの観点から樹脂層14の厚みをできるだけ薄くすること、また、防護板10の成形時に樹脂層14の厚みに多少のずれが生じてしまう可能性を考慮して、厚みa1は20mm程度(具体的には18.9mm)に設定される。また、金属板12下側の樹脂層14の中央部分の厚みa2も、厚みa1に合わせて20mm程度に設定される。
【0026】
また、金属板12の周側縁12aから防護板10の側面までの樹脂層14の水平方向の長さFWは、たとえば30mmに設定される。これは、長さFWを25mm以下に設定すると、後述のプレス成形によって下側の樹脂層14aおよび上側の樹脂層14bの周縁部同士を融着して一体化するとき(図5参照)に、融着面積が小さくなって樹脂層14が上下に剥離する恐れがあるからである。また、長さFWを25mm以下に設定すると、金属と樹脂との熱膨張率の違いに起因する応力が樹脂層14の側面において大きくなり、樹脂層14の側面に割れの生じる恐れがあるからである。一方で、防護板10を地中に並べて配置するときには、隣接する防護板10の金属板12同士の間隔(つまり樹脂層14のみとなる部分)は、できるだけ小さくなる方が好ましい。したがって、長さFWは、30mm程度に設定されることが好ましい。
【0027】
また、応力分散部20の水平方向の外縁から防護板10の側面までの樹脂層14の水平方向の長さWは、たとえば60mmに設定される。ここで、長さWは、35−100mm程度に設定されることが好ましい。これは、長さWを35mmよりも小さくすると、つまり金属板12の周側縁12aから応力分散部20までの距離(周側縁12aから傾斜面20aまでの樹脂層14の厚み)が、金属板12の周側縁12aからその直上の樹脂層14の表面(直上表面P)までの距離より小さくなると、応力分散部20に応力が集まりすぎて、応力分散部20の位置において樹脂層14に割れの生じる恐れがあるからである。一方、長さWが100mmを超えると、応力分散部20による応力の分散効果が小さくなるからである。
【0028】
表1には、この発明者らによる、樹脂層14に生じる応力の解析結果、および実サンプルにおける割れ試験の結果を示す。ここでは、この実施例(実施例1)の他に、実施例1の寸法をベースとして、応力分散部20の外縁から防護板10の側面までの長さW、樹脂層14の周縁部分の厚みb、および金属板12の周側縁12aから防護板10の側面までの長さFW(図4参照)を変更した各実施例についての結果を示す。また、比較例として、応力分散部を有さない従来の表面がフラットな防護板についての結果を示す。比較例の防護板は、樹脂層が応力分散部を有さないこと以外は、この実施例と同様の構成を有している。つまり、比較例の防護板は、厚さ2.3mmのSS400によって形成される金属板の表面全体が、ポリオレフィン系の廃プラスチックからなる樹脂層によって封止される構成を有する。
【0029】
【表1】
【0030】
ここで、応力の解析では、金属板12の位置を固定として、樹脂層14に対して中央側に引っ張る方向に1500Nの荷重をかけ、そのときに樹脂層14に生じる応力分布を算出した。表1には、金属板12の周側縁12aの直上表面P(図4参照)における樹脂層14の応力を代表値として示している。直上表面Pの位置が、応力分散部を有さない従来の防護板において樹脂層14に割れが生じる箇所であり、この位置の応力を小さくできれば、樹脂層14の割れが防止されると評価できるからである。また、割れ試験では、防護板10を40℃で9時間加熱および−10℃で9時間冷却を1サイクルとして3サイクル繰り返した後、目視によって割れの有無を調べた。割れ試験は、各実施例および各比較例について5サンプルずつ行い、全てのサンプルについて異常が見られなかったものを合格(○)とし、1サンプルでも割れが生じたものは不合格(×)とした。
【0031】
表1に示すように、防護板の厚みが全体に亘って40mmである比較例1では、直上表面Pの応力は、1.1MPaであった。また、防護板の厚みが全体に亘って50mmである比較例2では、直上表面Pの応力は、厚み40mmの場合の応力よりは小さくなるものの、0.9MPaとなるに留まった。これに対して、各実施例1−7の全てにおいて、直上表面Pの応力は、0.8MPa以下となった。このことから、樹脂層14全体の厚みを大きくするよりも、応力分散部20を設ける方が直上表面Pの応力を小さくできる、すなわち、応力分散部20に応力を逃がす(分散させる)ことによって、直上表面Pの応力を効率的に小さくできるということが分かる。
【0032】
また、割れ試験においては、比較例1および2のいずれにおいても、樹脂層に割れが発生した。これに対して、実施例1−5のいずれにおいても、樹脂層14に割れは発生せず、変形などの異常も確認されなかった。しかし、長さFWが25mm以下である実施例6および7においては、直上表面Pにおける樹脂層14の割れは発生しなかったが、樹脂層14の側面に割れが発生するものがあった。応力の解析においては、樹脂層14の側面の応力が、実施例6では1.5MPaとなり、実施例7では0.9MPaとなることが算出されており、樹脂層14の側面の応力が大きくなったことが割れの一因であると考えられる。
【0033】
以上のように、応力の解析結果および割れ試験の結果から、樹脂層14に応力分散部20を設けることによって、樹脂層14の直上表面Pの応力を効率的に小さくすることができ、樹脂層14の割れを適切に防止できることが確認された。
【0034】
なお、応力の解析結果および割れ試験の結果を考慮すると、樹脂層14に1500Nの荷重をかける解析条件において、樹脂層14表面に生じる応力が0.9MPa以上になると、実際に樹脂層14に割れが発生する恐れがあり、樹脂層14表面に生じる応力が0.8MPa以下となった場合には、樹脂層14に割れは発生しないということが言える。
【0035】
続いて、図5を参照して、防護板10の製造方法の一例について説明する。防護板10は、下金型30および上金型32を備えるプレス成形機によるプレス成形を用いて製造される。なお、下金型30および上金型32のプレス面には、防護板10の樹脂層14に対して応力分散部20および中央部分の窪みを形成するための突出部30a,32aが設けられている。ただし、突出部30a,32aは、必ずしも下金型30および上金型32に一体的に設けられる必要はなく、防護板10をプレス成形するときに防護板10の下側および上側に別部材として載置されるものであってもよい。以下、防護板10の製造方法について具体的に説明する。
【0036】
先ず、廃プラスチックを粉砕して作成された再生樹脂を押出成形機のホッパーに供給し、押出成形機によって約180〜200℃の温度で加熱溶融して、たとえば棒状の樹脂材料として押し出す。
【0037】
次に、図5(a)に示すように、樹脂層14を形成する樹脂量の半分の量の樹脂材料をプレス成形機の下金型30の上に載置する。そして、樹脂材料の上にプレス用の平板を置き、その上から上金型32を降下させて、下金型30内の下部の隅々まで均一に樹脂材料が充填されるように所定時間プレス保持する。その後、上金型32を上昇させ、プレス用の平板を取り除く。これによって、金属板12の下面を被覆することとなる下側の樹脂層14aが形成される。また、下側の樹脂層14aの表面(下面)には、突出部30aによって応力分散部20が形成される。
【0038】
続いて、図5(b)に示すように、下側の樹脂層14aの上面の中央位置に金属板12を置き、再び上金型32を降下させて、下側の樹脂層14aに対して金属板12が食い込むように所定時間プレス保持した後、上金型32を上昇させる。これによって、金属板12が樹脂層14aによって被覆されると共に、金属板12が位置決めされる。
【0039】
そして、図5(c)に示すように、残り半分の量の樹脂材料を金属板12および樹脂層14aの上に載置し、最終プレスを行う。つまり、上金型32を降下させて下金型30内の上部の隅々まで均一に樹脂材料が充填されるように所定時間プレス保持する。これによって、金属板12が樹脂層14bによって被覆されると共に、樹脂層14aと樹脂層14bとが周縁部において一体化(融着)されて、金属板12の表面全体を封止する樹脂層14が形成される。また、上側の樹脂層14bの表面(上面)には、突出部32aによって応力分散部20が形成される。
【0040】
最後に、プレス成形された防護板10を下金型30から取り出した後、発生しているバリをカッタ等によって適宜除去し、防護板10を水槽中で冷却または大気中で自然冷却して、防護板10の製造作業を終了する。
【0041】
このような防護板10は、図6に示すように、隣り合う防護板10の長辺側の端面同士を突き合わせるようにして、埋設管路100の上方の地中に並べて埋設される。これによって、埋設管路100の周辺において、たとえばアースオーガ式の建柱機を使用して掘削作業が行われる場合に、建柱機のオーガヘッド(穿孔用のドリル)が埋設管路防護板10に接触しても、金属板12がオーガヘッドを食い止めるため、金属板12よりも下方へ穿孔することができない。そして、建柱機の操作者がたとえば建柱機が浮き上がるなどの異常を感じることで、掘削作業が中断される。また、たとえばボーリングマシンを使用して掘削作業が行われる場合に、ボーリングマシンのロッドの先端が埋設管路防護板10に接触しても、ロッドの先端が樹脂層14によって閉塞されて削孔が困難になることで、ボーリングマシンの送水圧が上昇する。そして、ボーリングマシンの操作者がその送水圧の上昇に異常を感じることで、掘削作業が中断される。
【0042】
すなわち、新たな地中埋設物を施工するために埋設管路100の周辺において掘削作業を行う場合でも、防護板10を埋設管路100の上方に埋設しておくことによって、掘削機(建柱機のオーガヘッド)の進行を阻止する、或いは、作業者に埋設管路100の存在を気付かせることができるので、埋設配管100が損傷を受ける事態を未然に防止できる。
【0043】
この実施例によれば、樹脂層14に応力分散部20を形成し、金属板12の周側縁12aの上下位置おいて樹脂層14に集中する応力を応力分散部20に逃がすので、樹脂層14の割れを適切に防止できる。
【0044】
また、この実施例によれば、樹脂層14の中央部分の表面が応力分散部20の厚み方向の内縁20bに沿って面一に形成される、つまり樹脂層14の中央部分の厚みが周縁部分の厚みより小さくされるので、樹脂層14を形成する樹脂量を少なくできる。したがって、材料コストを軽減できると共に、防護板10を軽量化できる。
【0045】
なお、上述の実施例では、表面が傾斜面20aとなる傾斜状に応力分散部20を形成するようにしたが、これに限定されない。たとえば、図7に示すように、応力分散部20を階段状に形成することもできる。図7に示す実施例では、応力分散部20は、樹脂層14の中央側に向かって段差状に薄肉となり、応力分散部20の表面は、垂直面20cおよび水平面20dによって形成される。そして、樹脂層14の中央部分の表面は、応力分散部20の厚み方向の内縁となる水平面20dに沿って面一に形成される。
【0046】
また、図8に示す実施例のように、樹脂層14の周側縁角部に対して、樹脂層14の厚みを金属板12の周側縁12aの位置における厚みよりも薄くした切欠き部22を形成することもできる。切欠き部22は、たとえば、樹脂層14の側面に向かって薄肉となる傾斜状または階段状に形成される。この切欠き部22は、金属板12の周側縁12aの上下位置おいて樹脂層14に集中する応力を自身に逃がす第2応力分散部として機能する。このような切欠き部22を樹脂層14に設けることによって、金属板12の周側縁12aの上下位置における樹脂層14の応力をより適切に分散させることができる。
【0047】
さらに、図示は省略するが、樹脂層14の周縁部分を、金属板12の周側縁12aを中心とする断面円形状に形成することもできる。これによって、金属板12の周側縁12aの上下位置における樹脂層14の応力をより適切に分散させることができる。なお、樹脂層14の周縁部分を断面円形状に形成する場合、その内側面側の部分が応力分散部20として機能し、外側面側の部分が第2応力分散部として機能する。
【0048】
また、上述の各実施例では、樹脂層14の中央部分の表面を応力分散部20の厚み方向の内縁20bに沿って面一に形成したが、これに限定されない。図9に示す実施例のように、樹脂層14の中央部分には、応力分散部20より内側において、応力分散部20の内縁20b部分より厚肉となる凸部24を形成してもよい。すなわち、図9に示す実施例では、樹脂層14には、金属板12の周側縁12aよりも内側の位置において、金属板12の周側縁12aに沿って延びる矩形枠状の溝部26が形成される。そして、溝部26の外側の側面部分が応力分散部20として機能する。
【0049】
この発明者らは、図9に示すような溝部24を有する実施例においても、上述の実施例と同様にして、樹脂層14に生じる応力の解析を行った。ここでは、中央部分(凸部24部分)における防護板10の厚みを50mmとする以外は、表1の実施例1と同じ寸法条件とし、溝部24の水平面の幅を変更した複数の実施例について解析を行った。
【0050】
その結果、いずれの実施例においても、金属板12の周側縁12aの直上表面Pの応力は、0.8MPa以下となった。具体的には、溝部24の水平面の幅が0mmの場合、つまり溝部24がV字状の断面形状を有する場合には、直上表面Pの応力は0.8MPaであった。また、溝部24の水平面の幅が100mmの場合には、直上表面Pの応力は0.7MPaであり、溝部24の水平面の幅が200mmの場合には、直上表面Pの応力は0.6MPaであった。
【0051】
以上のことから、図9に示す実施例においても、応力分散部20に応力を逃がすことによって、直上表面Pの応力を効率的に小さくすることができ、樹脂層14の割れを適切に防止できるということが分かる。また、溝部24の水平面の幅が大きくなるに従い、応力分散部20による応力の分散効果が大きくなるので、応力分散部20による応力の分散効果を最大限に発揮するには、図2等に示す実施例のように、樹脂層14の中央部分の表面を応力分散部20の厚み方向の内縁20bに沿って面一に形成する方が好ましいと言える。
【0052】
なお、図9に示す実施例では、防護板10の中央部分(凸部24部分)における厚みと周縁部分における厚みとを同じ大きさに設定しているが、防護板10の中央部分における厚みを、周縁部分における厚みよりも小さく設定することもできる。たとえば、防護板10の中央部分の厚みを45mmとし、周縁部分の厚みを50mmとすることもできる。
【0053】
さらに、上述の各実施例では、金属板12は、JIS−G3101に準拠する一般構造用圧延鋼材(SS400)によって矩形薄板状に形成されたが、これに限定される必要はない。金属板12は、その鋼材と同程度の剛性を有する金属の板であればよい。たとえば、図示は省略するが、金属板12として、パンチングメタルやエキスパンドメタルなどの間隙を有するものを用いることもできる。間隙を有する金属板12を用いることによって、防護板10をプレス成形するときに、この間隙を通じて金属板12の下側の樹脂層14aと上側の樹脂層14bとが一体化するため、防護板10をより強固に成形することができる。また、金属板12のコーナ部(角部)には、Rを付けてもよい。
【0054】
また、樹脂層14を形成する廃プラスチック(或いは未使用樹脂)には、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維体を混合しておくこともできる。これにより、樹脂層14の熱膨張率(伸縮量)が小さくなる、つまり金属板12と樹脂層14との熱膨張率の差が小さくなるので、樹脂層14に発生する割れ(亀裂)や変形をより確実に防止できる。この際、廃プラスチックに対して繊維体を混合する割合が5重量%未満の場合には、樹脂層14の熱伸縮率を小さくする効果が低くなり、20重量%を超える場合には、ボーリングマシンのロッドの先端を閉塞させ難くなると共に、原料コストの低減という観点に背く。このため、樹脂層14を形成する廃プラスチックに混合する繊維体の割合は、5〜20重量%とすることが好ましい。
【0055】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 …埋設管路防護板
12 …金属板
14 …樹脂層
20 …応力分散部
100 …埋設管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9