特開2015-180564(P2015-180564A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-180564(P2015-180564A)
(43)【公開日】2015年10月15日
(54)【発明の名称】垂直離着陸飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/28 20060101AFI20150918BHJP
【FI】
   B64C27/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-92265(P2015-92265)
(22)【出願日】2015年4月10日
(62)【分割の表示】特願2012-192458(P2012-192458)の分割
【原出願日】2012年8月16日
(71)【出願人】
【識別番号】500111806
【氏名又は名称】荒井 優章
(72)【発明者】
【氏名】荒井 優章
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水平飛行状態からホバリング状態または下降状態、あるいは、垂直離陸上昇またはホバリング状態から水平飛行に移行するまでの間において安定的な姿勢を確保する。
【解決手段】機体100の前部であってこの機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第一の主翼200と、機体の後部であってこの機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第二の主翼500と、第一の主翼および第二の主翼のそれぞれの左翼および右翼の長さ方向に対して略中心位置に配置されるエンジン300,310と、エンジンの後方にそれぞれ設けられその作用により機体の上昇・下降を制御するフラップ211,221と、エンジンの後方にそれぞれ設けられその作用により機体の進行方向を制御する方向舵210,220と、から構成し、第一の主翼と第二の主翼とエンジンとフラップおよび方向舵とともに一体的に垂直方向又は水平方向に枢動させる構成とした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部であって該機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第一の主翼と、
機体後部であって該機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第二の主翼と、
前記第一の主翼および前記第二の主翼のそれぞれの左翼および右翼の長さ方向に対して略中心位置に配置される各2基以上のエンジンと、
前記エンジンの後方にそれぞれ設けられその作用により前記機体の上昇・下降を制御するフラップと、
前記エンジンの後方にそれぞれ設けられその作用により前記機体の進行方向を制御する方向舵と、を備え、
前記第一の主翼および前記第二の主翼は、前記エンジン、前記フラップおよび前記方向舵とともに一体的に垂直方向又は水平方向に枢動することを特徴とする垂直離着陸飛行体。
【請求項2】
前記第一の主翼および/または前記第二の主翼は、前後に1m移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸飛行体。
【請求項3】
前記第一の主翼は、前記機体の前方から三分の一より機体前方側の位置に配設されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の垂直離着陸飛行体。
【請求項4】
前記第一の主翼は、前記第二の主翼の取り付け位置よりも低い位置に取り付けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の垂直離着陸飛行体。
【請求項5】
前記第二の主翼は、前記第一の主翼の後部にあって、前記機体の前方から三分の二より後方側の位置に配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の垂直離着陸飛行体。
【請求項6】
前記エンジンは、前記機体の中心軸に対して3度以内の角度で外側に向けてそれぞれ配設固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の垂直離着陸飛行体。
【請求項7】
前記エンジンは、プロペラ式エンジンまたはジェット噴射式エンジンのいずれかであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の垂直離着陸飛行体。
【請求項8】
前記第一の主翼および前記第二の主翼は、水平方向から垂直方向に100度の角度まで枢動することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の垂直離着陸飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体上部の左右に取り付けた翼に風噴射装置を設けた垂直離着陸飛行体に関するものであり、特に、低速飛行およびジグザグ飛行および垂直離着陸および空中停止状態等のいかなる飛行状態でも安全な姿勢制御を獲得出来る垂直離着陸飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、機体上部に一枚又は二枚の非可動式の翼を水平に固定し、その非可動式翼の左右の両端先端にエンジンを備え、そのエンジンを可動式とし、このエンジンの向きを水平から垂直に、あるいは、垂直から水平に可動させることにより、ヘリコプターのように垂直に離着陸できる一方、普通の飛行機のように速い速度で飛行できるようにした垂直離着陸飛行体として、アメリカのベル・エアクラフトとボーイング・ロータークラフト・システムズが共同で開発したティルトローター式の垂直離着陸輸送機「V−22」(通称:オスプレイ(osprey))が知られている。
【0003】
このオスプレイは、タンデムローター式のヘリコプター、例えば、「CH−46」と比べて、航続距離で4倍以上飛行することができ、2倍の速度で飛行することができ、搭載量も3倍は積載できるなど、CH−46と比べるとほとんどの面で優れているとされている。また、オスプレイは空中給油もできるため、行動範囲が1100キロにも広がり長距離飛行も可能である。
【0004】
ところで、この左右の二基のエンジンが水平から垂直に稼働する飛行体は、垂直方向にエンジンの向きを可動させることにより垂直離着陸することができ、また、水平方向にエンジンの向きを可動させることにより水平飛行が可能となる。
【0005】
この飛行体は、水平飛行しながら機体後方の方向舵の角度を変更することで、機体の方向を制御することが可能であり、更に、翼に配設された風噴射装置とフラップの作動により上昇と下降が可能となる飛行体であって、例えば、水平飛行ではエンジンが進行方向に向き、機体後方に風は噴射される。この時、気流は機体および翼に並行して機体後方に流れて、翼に取り付けられているフラップの作用が十二分に発揮されるので、一定速度の水平飛行では安定した飛行姿勢の制御が実現できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような一枚翼又は二枚翼の垂直離着陸飛行体によれば、以下のような問題があった。
(1)水平飛行状態からホバリング状態又は下降状態、または、垂直離陸上昇又はホバリング状態から水平飛行およびジグザグ飛行等に移行するまでの間、エンジンの角度が翼に並行になるまでの飛行状態において、エンジンからの噴射風は下方に強く噴射し翼に叩き付けられる状態になるので、推力は打ち消され、翼の下方に乱気流を発生させ、様々な方向からの風に影響されやすく、不安定姿勢を誘発するという問題がある。
【0007】
(2)方向舵は翼の外側最先端にエンジン取り付けられた位置から最も離れた機体最後部に備えられ、更に、翼の左右両端のエンジン取り付け部直後方から外れた機体後方中央部に備えられているため、ホバリングや水平飛行等の各飛行状態でプロペラから発する噴射気流から外れているために、速度の遅い水平飛行やホバリング状態では、噴射気流が機体後方に流れるよりも、機体の下方に流れ、方向舵には全く届かずに方向制御が難しいという問題がある。
【0008】
(3)翼の外側最先端の位置に重量の重いエンジン取り付けられたことにより、機体の重心は機体中心から左右に拡散され、飛行中に左右の翼先端の上下動により一層の重力を加えてしまい、様々な方向からの気流やジグザグ飛行などでは特に翼の上下動の制御が難しくなる問題が有る。
【0009】
従って、本発明の目的は、水平飛行状態からホバリング状態または下降状態、あるいは、垂直離陸上昇またはホバリング状態から水平飛行やジグザグ飛行等に移行するまでの間において安定的な姿勢を確保することが出来、かつ、方向制御にも優れた垂直離着陸飛行体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の目的を達成するため、機体前部であって該機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第一の主翼と、機体後部であって該機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第二の主翼と、前記第一の主翼および前記第二の主翼のそれぞれの左翼および右翼の長さ方向に対して略中心位置に配置される各2基以上のエンジンと、前記エンジンの後方にそれぞれ設けられその作用により前記機体の上昇・下降を制御するフラップと、前記エンジンの後方にそれぞれ設けられその作用により前記機体の進行方向を制御する方向舵と、を備え、前記第一の主翼および前記第二の主翼は、前記エンジン、前記フラップおよび前記方向舵とともに一体的に垂直方向又は水平方向に枢動することを特徴とする垂直離着陸飛行体を提供するものである。
【0011】
以上の構成において、前記第一の主翼および/または前記第二の主翼は、前後に1m移動可能であることが望ましい。
【0012】
また、前記第一の主翼は、前記機体の前方から三分の一より機体前方側の位置に配設されていることが望ましい。
【0013】
また、前記第一の主翼は、前記第二の主翼の取り付け位置よりも低い位置に取り付けることが望ましい。
【0014】
また、前記第二の主翼は、前記第一の主翼の後部にあって、前記機体の前方から三分の二より後方側の位置に配設されていることが望ましい。
【0015】
また、前記エンジンは、前記機体の中心軸に対して3度以内の角度で外側に向けてそれぞれ配設固定されていることが望ましい。
【0016】
更に、前記エンジンは、プロペラ式エンジンまたはジェット噴射式エンジンのいずれかであることが望ましい。
【0017】
また、前記第一の主翼および前記第二の主翼は、水平方向から垂直方向に100度の角度まで枢動することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以上のように構成されるので、機体左右の翼中心付近に重量物のエンジンを機体付近に近づけて重心を集中させ、方向舵とフラップを同じ翼のエンジン近傍後方に配設し、翼の角度と位置を可動式としたことで、機体は滑走離着陸や垂直離着陸の時に翼角度と翼の位置の可動により、エンジン噴射風は翼に邪魔にされず最良の風作用を得ることができる。更に二枚翼および三枚翼採用機では、機体の前後左右の重量バランスに対応でき、最適な重心を獲得し、更に三枚翼の構成ではそれぞれの翼をコンピューター制御により可変して最適な制御を獲得でき、その結果、低速でも高速でもあらゆる飛行状態にも安定できることを可能にし、傾斜地等への離着陸や安全飛行と大型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】 第一の実施形態に係る一枚翼飛行体全体の構成を示した模式図である。
図2】 第一の実施形態に係る一枚翼飛行体を機体前方から見た模式図である。
図3】 第一の実施形態に係る一枚翼飛行体の翼の角度を可動させてホバリングさせた状態を示した模式図である。
図4】 第一の実施形態に係る一枚翼飛行体の翼の平面を可動させた場合と機体後方に方向舵と水平尾翼を配設した構成を示した側面図である。
図5】 第一の実施形態に係る一枚翼飛行体の翼の方向舵とフラップの位置の構成を示した側面図である。
図6】 第二の実施形態に係る二枚翼飛行体全体の構成を示した図である。
図7】 第二の実施形態に係る二枚翼飛行体の翼の取り付け位置を示した側面図である。
図8】 第二の実施形態に係る二枚翼飛行体の水平飛行状態を示した正面図である。
図9】 第二の実施形態に係る二枚翼飛行体の翼の角度を可働させてホバリングさせた状態を示した側面図である。
図10】 第二の実施形態に係る二枚翼飛行体のエンジンの取り付け角度を機体に対して僅かに角度を付けた状態を示した図である。
図11】 第二の実施形態に係る二枚翼飛行体のホバリング時の前後の翼の取り付け位置を示した図である。
図12】 第二の実施形態に係る二枚翼飛行体の前後の翼の位置を可動とした状態を示した図である。
図13】 第三の実施形態に係る三枚翼飛行体全体の構成を示した平面図である。
図14】 第三の実施形態に係る三枚翼飛行体の水平飛行状態を示した側面図である。
図15】 第三の実施形態に係る三枚翼飛行体のホバリング状態を示した側面図である。
図16】 第三の実施形態に係る三枚翼飛行体が直立ホバリングの状態を示した平面図である。
図17】 第三の実施形態に係る三枚翼飛行体が垂直ホバリングした状態を示した側面図である。
図18】 第三の実施形態に係る三枚翼飛行体が傾斜地への着地をし、滑落を防ぐ体勢をしている状態を示した図である。
図19】 第三の実施形態に係る三枚翼飛行体が、翼を機体の前後に可動している模式図である。
図20】 機体上部に配設した主翼を平面から垂直に可動させる可動装置を示す図である。
図21】 溝に挿通される翼の台部を示す斜視図である。
図22】 溝に挿通される翼の台部を示す側面図である。
図23】 翼支持部に嵌挿される翼取付部と、この翼取付部に設けられるギア付きモータと、このモータとかみ合って翼の角度を変更するためのギア付きのモータと、翼の位置を前後に移動させるためのギア付きのモータの位置関係を示す図である。
図24図23に示した翼取付部と各モータの側面図である。
図25】 各モータを可動装置に取り付けた状態を示す側面図である。
図26】 可動装置と各モータの取り付け状態を示す斜視図である。
図27】 可動装置に翼が取り付けられて作用する状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態図】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第一の実施の形態>
図1は、一枚翼の飛行装置(以下、「飛行体」という)の構成を示した模式図である。
図1に示すように、この飛行体は、機体100の上部に配設される一枚の主翼200と、主翼200の左右の各翼の中心部付近に固定されたプロペラ式のエンジン300,310と、エンジン300,310直後の翼に配設されその作用により機体100の上昇・下降を制御するフラップ211,221と、エンジン300,310直後の翼に配設されその作用により機体100の進行方向を制御する方向舵210,220と、機体100後部に配設される方向舵230と、フラップ500,501が配設される水平尾翼400と、からなる。
【0021】
以上の構成において、エンジン300,310の中心軸は、機体100の中心軸に対して3度以内の角度で外側に向けてそれぞれ配設固定されている。また、主翼200は、水平方向から垂直方向に100度の角度で枢動する。
【0022】
また、主翼200の左右の各翼の中心部付近にエンジン300,310を設けている。これは、翼の取り付け位置が端部に比べて重心が機体中心部に集中され、左右の翼の上下動バランスがとり易いからである。また、機体最後部にフラップ500,501が配設される水平尾翼400と方向舵230を設けて、姿勢制御を更に向上させるようにしている。
【0023】
なお、エンジン300,310は、プロペラ式エンジンを例として説明しているが、これに限るものではなく、例えば、ジェット噴射式エンジンであっても良い。
【0024】
図2は、この飛行体を正面(機体前方)から見た模式図である。
図に示すように、一枚の主翼200に配設されたエンジン300,310の直後方に方向舵210,220とフラップ211,221とが配設されている。このように、エンジン300,310の直後方に方向舵210,220とフラップ211,221とを配設することにより、エンジン300,310の噴射風が方向舵210,220とフラップ211,221に当たり、方向舵210,220とフラップ211,221が効率的に作用することになる。この場合、機体100後部に配設される方向舵230と水平尾翼400に設けられたフラップ500,501は方向舵210,220とフラップ211,221の補助的な作用を行うこととなる。
【0025】
図3は、この飛行体100の主翼200の角度を垂直方向に可動させてホバリングさせた状態を示した模式図である。
図に示すように、飛行体100に取り付けた主翼200にはプロペラ式のエンジン300,310が配設され、このエンジン300,310の中心軸は機体100の中心軸に対して内側へ傾斜するように配設されている。そして、主翼200が垂直方向に枢動すると、主翼200に固定された方向舵210,211とエンジン300,310も主翼200と同じ方向に移動する。主翼200のフラップ220,221は噴射風と並行に有り、風の抵抗は最小限となる。方向舵210,211は、常にエンジン300,310の直後に存在し、エンジン300,310から噴き出される推進風の中心部に配設されている。このため、傾斜を付けられた噴射風は機体の外方下方に噴射される状態となる。
【0026】
図4は、図3の飛行体100を側面側から見た模式図である。
図に示すように、エンジン310(300)と、方向舵210(220)と、フラップ211(221)は、主翼200の角度と共に一体で連動して垂直方向および水平方向に可動する。
【0027】
図5は、図1の飛行体100が水平飛行している場合の模式図である。
図に示すように、プロペラ式のエンジン310(300)の噴射風直後方に方向舵210(220)とフラップ211(221)が配設されているので、噴射風がロスなくこれらに吹き付けるため、進行方向の制御や上昇・下降の制御が容易となる。
【0028】
このように、機体上部に固定した左右の翼中央部付近にエンジンを配設し、エンジンの向きと翼とを連動させて可動式とし、機体左右の可動式翼にエンジンと方向舵とフラップを取り付け、飛行状態に対応してエンジンと翼と方向舵とフラップが連動するので、常に噴射風が姿勢制御・方向制御に作用することとなる。
【0029】
また、エンジンを取り付けた翼の近傍にフラップを取り付け、翼に固定されたエンジンの直後方翼に方向舵が配設されるので、いかなる姿勢の場合にも噴射風の中心には方向舵が位置することとなる。また、翼は滑走離着陸や垂直離着陸や上昇滑空や下降滑空や空中停止などのいかなる状態でも、エンジンから噴き出された噴射風と翼が平行になる。エンジンとフラップが連動するので、翼が常に最も風抵抗の少ない状態を保ち、かつ、フラップが最も作用しやすい場所に噴射風が流れるようになる。
【0030】
従来の垂直離着陸飛行体は、機体がホバリング状態(空中停止時又はそれに近い飛行状態)の時に、エンジンから吹き出す気流方向は、飛行体の下方に真っ直ぐ噴射されるが、これでは飛行体が空中停止状態ではわずかな横風に吹かれても踏ん張り制御力が無い。また、翼先端に重量物のエンジンが取り付けられているので更に姿勢を乱される。これに対して、本実施の形態に係る垂直離着陸飛行体は、エンジンの吹き出し口角度が3度以内の角度で外側に向けてそれぞれ配設固定されているので、ホバリング状態ではエンジンの吹き出し口からは機体の右外側斜下方および左外側斜下方に風を噴射させることとなり、機体が横風に影響されにくい安定姿勢の確保が出来る。
【0031】
これらにより水平回転や、回転や前後左右の移動など様々な状態で安定して飛行できることができ、水平飛行状態では飛行機並みの高速性と、離着陸には飛行機又はヘリコプターのどちらか最適な滑走離陸又は垂直離着陸の選択を可能にし、且つ、安全な飛行体を提供することができる。
【0032】
<第二の実施の形態>
図6図11は、第二の実施の形態に係る二枚翼の飛行体の例を示す図であり、図6はその平面模式図、図7は側面模式図、図8は正面模式図、図9はホバリング状態の側面模式図、図10はホバリング状態の正面模式図、図11はホバリング状態の平面模式図である。
図1図5と同一の内容には同一の符号を付したので重複する説明は省略するが、本実施の形態に係る飛行体は、二枚翼である点において、第一の実施の形態の飛行体と異なる。飛行体の積載量の大小で、二枚の翼としたほうが望ましい場合があるためである。
【0033】
図6図11に示すように、本実施の形態による飛行体は、機体100の前部であってこの機体100の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第一の主翼200と、機体100の後部であってこの機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第二の主翼500と、第一の主翼200および第二の主翼500のそれぞれの左翼および右翼の長さ方向に対して略中心位置に配置されるエンジン300,310,320,330と、エンジン300,310,320,330の後方にそれぞれ設けられその作用により機体100の上昇・下降を制御するフラップ211,221,231,241と、エンジン300,310,320,330の後方にそれぞれ設けられその作用により機体100の進行方向を制御する方向舵210,220,230,240と、から構成されている。
【0034】
以上の構成において、第一の主翼200および第二の主翼500は、第一の実施の形態と同じく、エンジン300,310,320,330、フラップ211,221,231,241および方向舵210,220,230,240とともに一体的に垂直方向又は水平方向に枢動する。なお、第一の主翼200は、機体100の三分の一よりも前に配設され、第二の主翼500は、機体100の三分の二よりも後方に配設されている。
【0035】
また、図7に示すように、第一の主翼200と第二の主翼500は、取り付け位置(高さ)が異なっており、第二の主翼500は第一の主翼200の高さより高い位置に設けられている。同一高さにすると、第一の主翼200のエンジン300,310の噴射風が第二の主翼500のエンジン320,330に当って、第一の主翼200のエンジン300,310から噴射される噴射風を打ち消してしまうからである。
【0036】
また、これらの図に示すように、二枚翼の場合には水平尾翼と尾翼方向舵が設けられていない。第二の主翼500が水平尾翼として機能し、それぞれの方向舵210,220,230,240が舵として機能するからである。
【0037】
図12は、第二の実施の形態に係る二枚翼の飛行体の変形例を示す図である。
図に示すように、第一の主翼200と第二の主翼500の位置は、機体前後に1mほどの移動を可能としている(符号200の位置と200Bの位置間の移動、または、符号500の位置と500Bの位置間の移動)。これにより、低速飛行やホバリング状態や積載重量バランスにも効果的に安定した姿勢が確保できる。
【0038】
<第三の実施の形態>
図13図19は、第三の実施の形態に係る三枚主翼の飛行体の例を示す図であり、図13はその平面模式図、図14は水平飛行状態の側面模式図、図15はホバリング状態の側面模式図であり、図16は機体が直立姿勢でホバリングを示す正面模式図で、図17は、機体が直立姿勢でホバリングを示す側面図で、図18は機体が急斜面に着陸又は斜面に並行に待機できる事を示す図である。図19は三枚の翼が機体の前後に移動できる事を示した図である。
【0039】
図1図12と同一の内容には同一の符号を付したので重複する説明は省略するが、本実施の形態に係る飛行体は、三枚翼である点において、第一と第二の実施の形態の飛行体と異なる。三枚翼としたのは、一枚又は二枚翼の場合は、機体の各方向からの風や重量バランスなどの影響により機体の前後が上下動しやすいからであり、また、フラップもエンジンから離れて備えられており、ホバリング等の空中停止状態では、機体の左右に取り付けられた風噴射装置からは風は垂直に下方に噴射するために、各方向からの風に影響され易いからである。また、飛行体の積載量の大小や旅客輸送や救助活動や軍事用で三枚の翼としたほうが望ましい場合があるためである。更に、第一と第二の実施形態の飛行体と異なる飛行姿勢等のバランスと揚力と動作の正確さを獲得するために三枚翼とするのが望ましい場合があるためである。
【0040】
図13図19に示すように、本実施の形態による飛行体は、機体100の前部であってこの機体100の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第一の主翼200と、機体100の中心部にあってこの機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第三の主翼500と、機体100の後部であって、この機体の上部に取り付けられた左翼および右翼からなる第二の主翼600と、第一の主翼200および第三の主翼500および第二の主翼600のそれぞれの左翼および右翼の長さ方向に対して略中心位置に配置されるエンジン300,310,320,330、350,360とエンジン300,310,320,330,350,360の後方にそれぞれ設けられその作用により機体100の上昇・下降を制御するフラップ211,221,231,241,251、261と、エンジン300,310,320,330,350.360の後方にそれぞれ設けられその作用により機体100の進行方向を制御する方向舵210,220,230,240,250,260と、から構成されている。
【0041】
以上の構成において、第一の主翼200および第三の主翼500および第二の主翼600は、第一及び第二の実施の形態と同じく、エンジン300,310,320,330、350,360、フラップ211,221,231,241,251,261および方向舵210,220,230,240,250,260とともに一体的に垂直方向又は水平方向に枢動する。なお、第一の主翼200は、機体100の三分の一よりも前に配設され、第三の主翼500は、機体100の中心部付近に配設され、第二の主翼600は機体100の三分の二よりも後方に配設されている。
【0042】
また、図14に示すように、第一の主翼200と第三の主翼500と第二の翼600は、取り付け位置(高さ)が異なっており、第三の主翼500と第二の主翼600は第一の主翼200の高さより高い位置に設けられ、第二の主翼600は第三の主翼500の高さより高い位置に設けられている。同一高さにすると、第一の主翼200のエンジン300,310の噴射風が第三の主翼500のエンジン320,330に、第三の主翼500のエンジン320,330の噴射風が第二の主翼600のエンジン350,360に乱気流として噴射されてしまうからである。
【0043】
また、これらの図に示すように、二枚主翼および三枚主翼の場合には水平尾翼と尾翼方向舵が設けられていない。第三の主翼500と第二の主翼600が水平尾翼として機能し、それぞれの方向舵210,220,230,240、250,260が舵として機能するからである。
【0044】
図16は、機体100は垂直方向でホバリング又は上昇することを示す平面図で、図17は垂直ホバリングの側面図である。三枚翼に6基の風噴射装置を配設し、これにより、推力は大幅に向上し、直立の飛行姿勢をも可能にし、六枚の翼の作動と六か所のフラップと六ケ所の方向舵の作動により、直立姿勢のホバリング状態から、垂直姿勢のままで水平回転又は水平移動又は前後左右にも効果的に安定した姿勢が確保でき、図18のように急傾斜地に着陸待機又は傾斜地に並行に飛行する事を可能にする。
【0045】
図19は、第三の実施の形態に係る三枚翼の飛行体の変形例を示す図である。
図19に示すように、第三の主翼500を挟んで、第一の主翼200と第二の主翼600の位置は、機体前後に1mほどの移動を可能としている(符号200の位置と200Bの位置間の移動、または、符号600の位置と600Bの位置間の移動)。これにより、低速飛行やホバリング状態や正確な動作や積載重量バランスにも効果的に安定した姿勢が確保できる。
【0046】
図20は、機体上部に配設した主翼を平面から垂直に可動させる可動装置を示す図である。図に示すように、この可動装置10には、断面逆T字形の溝11と、ギア溝14と、ガイドレール15が設けられている。
【0047】
図21および図22は、この溝11に挿通される翼の台部20を示す図であり、図21はその斜視図、図22はその側面図である。図21に示すように、この台部20は、溝11に挿通嵌合される台座部21と、翼を支持する翼支持部22とからなる。翼支持部22は、図22に示すように、長さ方向に対しい空洞が貫通している。この部分を利用して翼を軸支するようにしている。
【0048】
図23は、この翼支持部22に嵌挿される翼取付部80と、この翼取付部80に設けられるギア付きモータ32と、このモータ32とかみ合って翼の角度を変更するためのギア付きのモータ30と、翼の位置を前後に移動させるためのギア付きのモータ40の位置関係を示す図であり、図24はその側面図である。
【0049】
図25は、これらの各モータを可動装置10に取り付けた状態を示す側面図である。図に示すように。ギア付きモータ40がギア溝14に噛み合って回転することにより前後に移動するようになっている。図26は、可動装置10とモータ30,32,40の取り付け状態を示す斜視図である。
【0050】
図27は、これに翼200,600,500が取り付けられて作用する状態を示す図である。図に示すように、モータ30と32によって翼200,600,500の角度が変わり、図示しないが、モータ40によって翼200,600,500の位置が前後に移動可能になる。
【0051】
<本実施の形態のまとめ>
1.本発明によれば、第一の主翼および第二の主翼および第三の主翼を選択して設け、機体左右の翼中心付近に重量物のエンジンを機体の重心付近に集中させ、方向舵とフラップを同じ翼のエンジン近傍後方に配設し、翼の角度と位置を可動式として機体に設けたことで、機体は滑走離着陸や垂直離着陸の時に翼角度と翼の位置の可動により、エンジンの噴射風は翼に邪魔にされず最良の風作用を得られる。また、機体の重量バランスに対応できる。これにより、低速でも高速でもアクロバット飛行でもあらゆる飛行状態にも安定できることを可能にし、安全飛行と大型化が出来る効果がある。
【0052】
2.本発明の三枚翼採用機によれば、機体前部の翼は、機体の三分の一よりも前に配設し、機体中央部に配設された翼と、機体後部翼は機体の三分の二よりも後方に配設し、更に翼の位置は機体前後に1mほどの移動を可能にすることで、低速飛行やホバリング状態や積載重量バランスにも効果的に安定した姿勢が確保できる効果がある。
【0053】
3.本発明の三枚翼採用機によれば、機体中央部の翼は、機体の全長の中間付近に配設し、更に翼の位置は機体前後に1mほどの移動を可能にすることで、低速飛行やホバリング状態や積載重量バランスにも機体前部の翼と連動したり、機体後部の翼と連動したり等と効果的に安定した姿勢が確保できる効果がある。
【0054】
4.本発明によれば、エンジンを翼の先端から内側に固定して取り付けた翼は、水平方向から垂直方向に、翼とエンジンと方向舵とフラップが一体的に100度可動にした事で、垂直上昇の時にも水平飛行状態と同様に、エンジンの向きが翼の向きと連動するために、風向きに対して翼の最小抵抗面が得られるので、空気抵抗が大幅に低減されることと、揚力減衰防止効果と、翼平面に打ち付ける乱気流防止効果により、安全な姿勢制御の確保が可能である。
【0055】
5.本発明によれば、翼は、機体の上部に取り付けられたことにより、例えば、プロペラ式のエンジン推進機とした場合は、地面との間隔を確保可能となり、プロペラの半径を大きくすることが出来るメリットや、飛行艇などには離着陸の時に水面から間隔が得られること等の効果がある。
【0056】
6.本発明によれば、エンジン取り付け部付近の可動式翼にフラップを配設した場合は、エンジンからの風の流れが常に利用できるメリットが有り、各種の飛行状態に応じた姿勢制御に利用できる効果がある。例えば、空中停止状態で二基又は四基又は六基のフラップを作動させることで、機体はそのまま前後に移動できるし、機体の左右のどれか一つのフラップを作動させることで、緩やかな水平回転が得られる。
【0057】
7.本発明によれば、各エンジン直後方に配設した方向舵は、どんな姿勢の飛行状態でもエンジンからの風の吹き出し流の中心に常に位置し、最適な姿勢制御を可能に出来る効果がある。例えば、空中停止状態で二基または四基又は六基の方向舵を作動させることで、機体はそのまま左右に移動できるし、機体の左右のどれか一つの方向舵を作動させることで、緩やかな水平回転が得られる。
【0058】
8.本発明によれば、機体前後に取り付けられた一枚または二枚又は三枚の主翼は、前後に1m位の移動が可能な可動式とし、積み荷のバランスや速度や乱気流等時の姿勢制御に合わせた最適なバランスを飛行中にもコンピューター制御で可能とし、従来にない安全性を確保することが出来る。即ち、三枚の主翼が水平から垂直方向に可動するだけでなく、更に、機体に固定ではなく、前後可動も可能にすることにより、飛行バランスを確保することが可能となる。
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