【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態において、振動減衰滑り平軸受複合材は、摺動材料を含む摺動層と、寸法安定性支持層と、弾性層とを含む振動減衰滑り平軸受複合材であって、
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合するステップと、
弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
または
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたってエラストマー層に接合するステップと、
エラストマー層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、エラストマー層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
により得られる、滑り平軸受複合材。
【0007】
滑り平軸受複合材は、したがって少なくとも3層を有する層システムを備えることができる。寸法安定性支持層は、摺動層と弾性層との間に配置できる。弾性層を摺動層と寸法安定性支持層との間に配置することも同様に可能である。
【0008】
滑り平軸受複合材の摺動層とは面していない側にさらなる層を設けることができる。例えば、弾性層は、摺動層と寸法安定性支持層との間に配置される場合、寸法安定性支持層の被覆されていない側に追加弾性層を設けることが可能であり、この追加弾性層は、シート状の材料として設けられ、その領域全体にわたって寸法安定性支持層に接合されうる。
【0009】
実施形態において、滑り平軸受複合材は個々の層間に特に強固な接着部を有することが可能なため、複合材は種々の成形技法によって、例えば平坦な材料から3次元の幾何学的形状システムに変換できる。層システムはそれ自体が単純な構造を有することが可能であり、特に良好な振動および騒音減衰特性を有する。これは第1に、層を全領域にわたって互いに接合し、第2に、個々の層厚さに幅広い変化を持たせたシート状の出発材として個々の層を用意することによって達成できる。滑り平軸受複合材が、例えば軸方向のカラーを有する滑り平軸受ブシュの形態で使用される場合、軸受の部材間の相対的な動きのタイプおよび大きさにかかわらず最適な振動減衰を達成可能である。さらに、複合材にしっかりと一体化された弾性層は効果的な固体伝播音の分離を付与することができるため、軸受を介した騒音の伝播を最小化できる。そのような滑り平軸受ブシュが座席構造に使用される場合、これは効果的な振動減衰および座席支持構造からの車両フロアアセンブリの分離を意味し、これにより運転者および乗員の快適性を目に見えて向上できる。
【0010】
滑り平軸受複合材の一態様は、初めはシート状の材料として存在する個々の層から1つまたは複数の工程ステップで滑り平軸受複合材を得られることである。シート状の材料は、例えば、製造工程において連続的に圧延される連続的なストリップの形態であり、1つまたは複数のステップにおいて互いが接合されて複合材料が製造される。これにより、上述されるように、弾性層が特に顕著な割合を有する滑り平軸受複合材の製造が可能とされ、その結果、滑り平軸受複合材から製造される軸受は所定の軸受ハウジングの幾何学的形状により容易に適合され、公差および軸受部材間のミスアライメントも破壊されることなく低減できる。特に、局部応力のピークが起こると、例えばミスアライメントによるジャミングの場合において、負荷応力は弾性変形によって相殺される。
【0011】
上記の有利な特性のため、滑り平軸受複合材は多様な方式で使用されうる。例えば、滑り平軸受複合材は、適切な成形の後にヒンジ軸受として使用でき、その場合においては、高い弾性変形能を規定のトルクを発生させるために利用できる。
【0012】
第1に、摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、および第2に、弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側に接合することによって、例えば内部摺動層を有する円筒状の軸受ブシュを製造するために形成される層システムを製造できる。弾性層は外側に配置され、したがって軸受ハウジングに接する。ここで、例えば弾性層を形成しうるエラストマーの、軸受ハウジングの材料、例えば鋼に対する摩擦係数が、鋼に対して鋼を組み合わせた材料と比較すると非常に高いことにより、複合材滑り平軸受のハウジング内での回動が有効に防止されることが確実となる。これは特にベルトテンショナなどのような軸受ハウジング内に滑り平軸受を遊びを持って取り付ける場合において特に役立つ。
【0013】
一実施形態において、振動減衰滑り平軸受複合材は、個々の層をそれぞれシート状の材料の形態で用意するステップと、摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合するステップと、弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側において接合するステップとにより得られる。
【0014】
まず第1に、摺動層は寸法安定性支持層に接合することができる。これは250〜400℃の温度範囲の接着剤という手段によって実施されることが好ましい。接着剤は、少なくとも1種のフルオロポリマー、特にペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(MFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレンのターポリマー、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン(THV)、硬化接着剤、特に、エポキシ接着剤、ポリイミド接着剤および/または低温ホットメルト接着剤、特にエチレン酢酸ビニル共重合体およびポリエーテルポリアミド共重合体、または適切な熱可塑性樹脂および/またはその混合物を含むことができる。
【0015】
弾性層と寸法安定性支持層との接合は、接合剤という手段によって実施できる。弾性層がエラストマー、例えばニトリルゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム、オレフィンエラストマー、スチレンエラストマー、熱可塑性エラストマー、架橋エラストマー、ポリエーテルポリエステルエラストマー、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンアクリルゴムおよび/またはフルオロエラストマーを含む場合、支持体材料と弾性層との間の強固な接合部は、約150〜250℃の温度での加硫工程という手段によって製造されうる。ここで、エラストマー中、および接合剤により活性化された支持体材料の表面で架橋が起こりうる。したがって、支持体材料と弾性層との間にある接合層は、少なくとも1種の反応性高分子、特に、シラン基を含むポリマーおよび/または溶剤、特に、メチルイソブチルケトン中、キシレン中、エタノールと水中、またはエタノール中のピグメントと、メチルエチルケトンとを含むことができる。
【0016】
異なる温度で実施されうる2つの接合ステップのため、摺動層と弾性層とがそれぞれ寸法安定性支持層の表面に接合される振動減衰滑り平軸受複合材の製造は2段階工程で実施されうる。ここで、摺動層と寸法安定性支持層との間の接合部がまず製造される。その理由は、これが高温で実施されるべきであるためである。摺動層と寸法安定性支持層とからなる中間部を弾性層の部分加硫に適した温度範囲(約150〜250℃)に冷却後、第2の接合部、すなわち弾性層と寸法安定性支持層との間の、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側の接合部が製造される。
【0017】
代わりとして、振動減衰滑り平軸受複合材は、摺動層と、寸法安定性支持層と、弾性層とによって形成される複合材システムを含むことができ、そのシステムにおいて、弾性層は摺動層と寸法安定性支持層との間に配置される。両接合部が加硫処理において製造されるため、これにより両接合作業を1つのステップで行うことが可能となる。
【0018】
摺動層内の摺動材料は多様な化学組成物を含みうる。それは好ましくは樹脂、特に、フルオロポリマー類、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)およびペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、およびポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリスルホン、特にポリエーテルスルホン、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PUR)、ポリエステル、ポリフェニレンオキシドおよびその混合物からなる群から選択される樹脂を含む。
【0019】
寸法安定性支持層は、金属、特に鋼、ステンレス鋼、銅、チタン、青銅、黄銅、アルミニウムまたはその合金を含みうる。
【0020】
滑り平軸受複合材を形成する層の個々の層厚さに関しては、弾性層の厚さが摺動層の厚さの倍数の場合に、特に有利な減衰および固体伝播音分離特性が達成される。したがって、弾性層の厚さは、0.3〜0.6mmなどの、0.15〜5mmとすることができる。摺動層は、0.1〜0.3mmなどの、0.05〜1.0mmの厚さを有することができる。そして寸法安定性支持層は0.2〜0.5mmなどの、0.1〜1.5mmの厚さを有することができる。
【0021】
さらなる一実施形態において、摺動層と寸法安定性支持層とは、支持層が摺動層の摺動材料によって囲まれるというような方式で一体化することができる。ここで、摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合することは、一体型の層の複合材を製造することを含みうる。この場合においては、支持層は、摺動層の摺動材料中に、金属インサートとして、特に、編まれた金属メッシュ、エキスパンデッドメタルまたは金属不織布として構成できる。
【0022】
滑り平軸受ブシュは、好ましくは端部面に配置される少なくとも1つの軸方向のカラーを有することができる。滑り平軸受複合材の個々の層、すなわち摺動層、寸法安定性支持層および弾性層の間の高い強度の接合部のため、そのような軸方向のカラーの形成は、1つまたは複数の層のはがれまたは剥離が起こることなく容易に達成されうる。
【0023】
滑り平軸受ブシュは、本質的に円筒状の形状を有することができるが、滑り平軸受ブシュは同様に、軸方向のカラー有りまたは無しの、円錐形の形状を有することも可能である。
【0024】
層間の強固な接合部の結果、滑り平軸受ブシュは振動減衰滑り平軸受複合材から種々の方式で製造可能である。したがって、初めは平坦な材料として存在する滑り平軸受複合材から巻くことまたは曲げることによって滑り平軸受ブシュを製造することができる。
【0025】
代わりとして、滑り平軸受ブシュをスタンピングおよび深絞りを併用することによって製造することも可能である。
【0026】
振動減衰滑り平軸受複合材は、軸方向のカラー有りまたは無しの滑り平軸受ブシュの形態、またはそうでなければ別の形態の、種々の方式で使用できる。ミスアライメントを補償するため、公差を一定にする要素として、および軸受部材間に規定のトルクを発生させるためにヒンジを使用することが考えられる。座席において、滑り平軸受複合材はさらに、公差を小さくするため、およびミスアライメントの補償のため、および特に運転者および乗員の快適性を向上させるための固体伝播音の分離のために使用できる。これらの特性はまた、車両のステアリングシステム、車両のシャーシ部材、および高周波振動運動(ベルトテンショナ、2重質量フライホイール、分割型ベルトプーリ、ショックアブソーバおよび車両サスペンションの部材)のための滑り平軸受複合材の使用に活用できる。
【0027】
さらなる一実施形態において、振動減衰滑り平軸受アセンブリは、軸受ハウジングと、滑り軸受ブシュと、軸受シャフトとを含むことができる。有利な実施態様では、滑り平軸受ブシュの滑り平軸受複合材の弾性層が設けられ、その層の延長部と垂直にプレストレスされる。弾性層のこのプレストレスの結果、滑り平軸受の寿命中に摺動層から材料が徐々に剥離することをプレストレスされた弾性層の対応する膨張によって補償でき、軸受部材の遊びのない溶解が滑り平軸受の寿命全体で保証される。
【0028】
さらに別の実施形態においては、摺動材料を含む摺動層と、寸法安定性支持層と、弾性層とを含む振動減衰滑り平軸受複合材を製造する方法において、
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合するステップと、
弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
または
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたってエラストマー層に接合するステップと、
エラストマー層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、エラストマー層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【0029】
当業者には、添付図面を参照することにより本開示が一層良く理解され、その多くの特徴および利点が明確となるであろう。