特開2015-180838(P2015-180838A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン−ゴバン パフォーマンス プラスチックス パンプス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特開2015-180838振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法
<>
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000003
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000004
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000005
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000006
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000007
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000008
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000009
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000010
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000011
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000012
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000013
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000014
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000015
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000016
  • 特開2015180838-振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-180838(P2015-180838A)
(43)【公開日】2015年10月15日
(54)【発明の名称】振動減衰滑り平軸受複合材、滑り平軸受ブシュおよび滑り平軸受アセンブリ、並びに滑り平軸受複合材を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/06 20060101AFI20150918BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20150918BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20150918BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20150918BHJP
【FI】
   F16C27/06 A
   F16C33/20 A
   F16C33/14 Z
   F16F15/02 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-121858(P2015-121858)
(22)【出願日】2015年6月17日
(62)【分割の表示】特願2014-2528(P2014-2528)の分割
【原出願日】2009年9月30日
(31)【優先権主張番号】102008049747.9
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508298237
【氏名又は名称】サン−ゴバン パフォーマンス プラスチックス パンプス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】ブルジェット・ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルドマン・ジョエルグ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に良好な騒音減衰および振動減衰特性を有し、かつ、複合材料を破壊するリスクなく、比較的複雑な3次元の軸受幾何学的形状を製造することも可能にする振動減衰滑り平軸受複合材を提供する。
【解決手段】第1の主要表面と、第1の主要表面の反対側に位置する第2の主要表面を有する鋼を含む寸法安定性支持層12と、第1の主要表面上に設けられた摺動層10と、第2の主要表面上に設けられた弾性層14と、を含む、振動減衰滑り平軸受複合材であって、軸方向のカラーを含み、摺動層10の厚さは、0.05〜1.0mmであり、弾性層14の厚さは、0.15〜5.0mmであり、弾性層14の厚さが、摺動層10の厚さの少なくとも3倍であり、摺動層10が、その領域にわたって寸法安定性支持層12に接合され、且つ、弾性層14がその領域にわたって寸法安定性支持層12に接合された、振動減衰滑り平軸受複合材。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主要表面と、前記第1の主要表面の反対側に位置する第2の主要表面を有する鋼
を含む寸法安定性支持層と、
前記第1の主要表面上に設けられ、摺動材料を含む摺動層と、そして、
前記第2の主要表面上に設けられた弾性層と、を含む、
振動減衰滑り平軸受複合材であって、
軸方向のカラーを含み、
前記摺動層の厚さtSLは、0.05〜1.0mmであり、
前記弾性層の厚さtELは、0.15〜5.0mmであり、
前記弾性層の厚さtELが、前記摺動層tSLの厚さの少なくとも3倍であり、
前記弾性層、前記摺動層、及び前記寸法安定性支持層は、それぞれシート状の材料であり、
前記摺動層が、その領域にわたって前記寸法安定性支持層に接合され、且つ、前記弾性層がその領域にわたって前記寸法安定性支持層に接合された、振動減衰滑り平軸受複合材。
【請求項2】
前記摺動層と前記寸法安定性支持層との間に更に接着層を有する、請求項1に記載の振動減衰滑り平軸受複合材。
【請求項3】
前記接着層は、フルオロポリマー、硬化した接着材、および接着材であるそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項2に記載の振動減衰滑り平軸受複合材。
【請求項4】
請求項1に記載の振動減衰滑り平軸受複合材からなる、滑り平軸受ブシュ。
【請求項5】
軸受ハウジングと、請求項4に記載の滑り平軸受ブシュと、軸受シャフトとを含む振動減衰滑り平軸受アセンブリ。
【請求項6】
請求項5に記載の振動減衰滑り平軸受アセンブリを含む自動車用シート。
【請求項7】
摺動材料を含む摺動層と、金属を含む寸法安定性支持層と、弾性層とを含む振動減衰滑り平軸受複合材を製造する方法において、
前記摺動材料が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記摺動層と、前記寸法安定性支持層と、前記弾性層とをそれぞれシート状の材料として用意するステップと、
前記摺動層をその領域にわたって前記寸法安定性支持層に接合するステップと、
前記弾性層をその領域にわたって前記寸法安定性支持層に、前記寸法安定性支持層の前
記摺動層とは面していない側において接合するステップと、を含み、
前記弾性層の厚さtELが、前記摺動層tSLの厚さの少なくとも3倍であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動減衰滑り平軸受複合材に関する。本開示はさらに、この材料から製造される滑り平軸受ブシュと、滑り平軸受アセンブリと、滑り平軸受複合材を製造するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー層が設けられたもの(例えば米国特許第3、881、791号明細書)を含む、複合材で作られた滑り平軸受は長年公知であり、自動車産業やその他の製造業においても、例えば円筒状の滑り平軸受ブシュのような、さまざまな幾何学的形状の滑り平軸受として種々の方式で使用されている。
【0003】
囲んでいるエラストマー層を有するそのような円筒状の滑り平軸受ブシュは米国特許出願公開第2003/0012467(A1)号明細書に記載されている。それはポリマー、例えばポリイミドからなるシェルのような円筒状の滑り平軸受を備え、この軸受はエラストマーシェルによって囲まれる。米国特許出願公開第2003/0012467(A1)号明細書によると、この軸受アセンブリを製造するため、円筒状の滑り平軸受はエラストマーリングに圧入される。さらなる可能性には、高分子滑り平軸受の周りにシェルのようなエラストマー層を射出成形することがある。しかしながら、これは非常に単純な幾何学的形状、例えば、真円筒状のシェルの場合、または大きな出費に関連する場合においてのみ十分に達成されうる。
【0004】
独国実用新案第20 2005 006 868(U1)号明細書は、金属支持体が、摩擦を低減する、例えばPTFEを含有する外側層が摺動層としてその上に配置されるエラストマー層で被覆される、さらなる滑り平軸受複合材システムを開示している。特に、独国実用新案第20 2005 006 868(U1)号明細書には、摩擦を低減する外側層およびエラストマー層ならびにエラストマー層を金属支持体材料に接合する接合層が、各場合において、溶剤を含有するウェットコーティング組成物としてそれぞれの下層に塗布されることが記載されている。その結果、例えばエラストマー層の場合においては一般に5〜120μmという比較的薄い層厚さのみが可能である。しかしながら、複合材は成形ステップ後にのみ完成するため、個々の層をウェットコーティング組成物として支持体材料に塗布することによって、成形時に層システムが破壊されることなく、より複雑な形状、例えば、軸方向のカラーが設けられた軸受ブシュを製造することが可能となる。しかしながら、おもに振動減衰を担うエラストマー層は十分な厚さを有しないため、そのような軸受ブシュでは満足な振動減衰は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この先行技術に鑑み、本開示の目的は、特に良好な騒音減衰および振動減衰特性を有し、かつ、複合材料を破壊するリスクなく、比較的複雑な3次元の軸受幾何学的形状を製造することも可能にする振動減衰滑り平軸受複合材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態において、振動減衰滑り平軸受複合材は、摺動材料を含む摺動層と、寸法安定性支持層と、弾性層とを含む振動減衰滑り平軸受複合材であって、
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合するステップと、
弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
または
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたってエラストマー層に接合するステップと、
エラストマー層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、エラストマー層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
により得られる、滑り平軸受複合材。
【0007】
滑り平軸受複合材は、したがって少なくとも3層を有する層システムを備えることができる。寸法安定性支持層は、摺動層と弾性層との間に配置できる。弾性層を摺動層と寸法安定性支持層との間に配置することも同様に可能である。
【0008】
滑り平軸受複合材の摺動層とは面していない側にさらなる層を設けることができる。例えば、弾性層は、摺動層と寸法安定性支持層との間に配置される場合、寸法安定性支持層の被覆されていない側に追加弾性層を設けることが可能であり、この追加弾性層は、シート状の材料として設けられ、その領域全体にわたって寸法安定性支持層に接合されうる。
【0009】
実施形態において、滑り平軸受複合材は個々の層間に特に強固な接着部を有することが可能なため、複合材は種々の成形技法によって、例えば平坦な材料から3次元の幾何学的形状システムに変換できる。層システムはそれ自体が単純な構造を有することが可能であり、特に良好な振動および騒音減衰特性を有する。これは第1に、層を全領域にわたって互いに接合し、第2に、個々の層厚さに幅広い変化を持たせたシート状の出発材として個々の層を用意することによって達成できる。滑り平軸受複合材が、例えば軸方向のカラーを有する滑り平軸受ブシュの形態で使用される場合、軸受の部材間の相対的な動きのタイプおよび大きさにかかわらず最適な振動減衰を達成可能である。さらに、複合材にしっかりと一体化された弾性層は効果的な固体伝播音の分離を付与することができるため、軸受を介した騒音の伝播を最小化できる。そのような滑り平軸受ブシュが座席構造に使用される場合、これは効果的な振動減衰および座席支持構造からの車両フロアアセンブリの分離を意味し、これにより運転者および乗員の快適性を目に見えて向上できる。
【0010】
滑り平軸受複合材の一態様は、初めはシート状の材料として存在する個々の層から1つまたは複数の工程ステップで滑り平軸受複合材を得られることである。シート状の材料は、例えば、製造工程において連続的に圧延される連続的なストリップの形態であり、1つまたは複数のステップにおいて互いが接合されて複合材料が製造される。これにより、上述されるように、弾性層が特に顕著な割合を有する滑り平軸受複合材の製造が可能とされ、その結果、滑り平軸受複合材から製造される軸受は所定の軸受ハウジングの幾何学的形状により容易に適合され、公差および軸受部材間のミスアライメントも破壊されることなく低減できる。特に、局部応力のピークが起こると、例えばミスアライメントによるジャミングの場合において、負荷応力は弾性変形によって相殺される。
【0011】
上記の有利な特性のため、滑り平軸受複合材は多様な方式で使用されうる。例えば、滑り平軸受複合材は、適切な成形の後にヒンジ軸受として使用でき、その場合においては、高い弾性変形能を規定のトルクを発生させるために利用できる。
【0012】
第1に、摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、および第2に、弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側に接合することによって、例えば内部摺動層を有する円筒状の軸受ブシュを製造するために形成される層システムを製造できる。弾性層は外側に配置され、したがって軸受ハウジングに接する。ここで、例えば弾性層を形成しうるエラストマーの、軸受ハウジングの材料、例えば鋼に対する摩擦係数が、鋼に対して鋼を組み合わせた材料と比較すると非常に高いことにより、複合材滑り平軸受のハウジング内での回動が有効に防止されることが確実となる。これは特にベルトテンショナなどのような軸受ハウジング内に滑り平軸受を遊びを持って取り付ける場合において特に役立つ。
【0013】
一実施形態において、振動減衰滑り平軸受複合材は、個々の層をそれぞれシート状の材料の形態で用意するステップと、摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合するステップと、弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側において接合するステップとにより得られる。
【0014】
まず第1に、摺動層は寸法安定性支持層に接合することができる。これは250〜400℃の温度範囲の接着剤という手段によって実施されることが好ましい。接着剤は、少なくとも1種のフルオロポリマー、特にペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(MFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレンのターポリマー、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン(THV)、硬化接着剤、特に、エポキシ接着剤、ポリイミド接着剤および/または低温ホットメルト接着剤、特にエチレン酢酸ビニル共重合体およびポリエーテルポリアミド共重合体、または適切な熱可塑性樹脂および/またはその混合物を含むことができる。
【0015】
弾性層と寸法安定性支持層との接合は、接合剤という手段によって実施できる。弾性層がエラストマー、例えばニトリルゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム、オレフィンエラストマー、スチレンエラストマー、熱可塑性エラストマー、架橋エラストマー、ポリエーテルポリエステルエラストマー、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンアクリルゴムおよび/またはフルオロエラストマーを含む場合、支持体材料と弾性層との間の強固な接合部は、約150〜250℃の温度での加硫工程という手段によって製造されうる。ここで、エラストマー中、および接合剤により活性化された支持体材料の表面で架橋が起こりうる。したがって、支持体材料と弾性層との間にある接合層は、少なくとも1種の反応性高分子、特に、シラン基を含むポリマーおよび/または溶剤、特に、メチルイソブチルケトン中、キシレン中、エタノールと水中、またはエタノール中のピグメントと、メチルエチルケトンとを含むことができる。
【0016】
異なる温度で実施されうる2つの接合ステップのため、摺動層と弾性層とがそれぞれ寸法安定性支持層の表面に接合される振動減衰滑り平軸受複合材の製造は2段階工程で実施されうる。ここで、摺動層と寸法安定性支持層との間の接合部がまず製造される。その理由は、これが高温で実施されるべきであるためである。摺動層と寸法安定性支持層とからなる中間部を弾性層の部分加硫に適した温度範囲(約150〜250℃)に冷却後、第2の接合部、すなわち弾性層と寸法安定性支持層との間の、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側の接合部が製造される。
【0017】
代わりとして、振動減衰滑り平軸受複合材は、摺動層と、寸法安定性支持層と、弾性層とによって形成される複合材システムを含むことができ、そのシステムにおいて、弾性層は摺動層と寸法安定性支持層との間に配置される。両接合部が加硫処理において製造されるため、これにより両接合作業を1つのステップで行うことが可能となる。
【0018】
摺動層内の摺動材料は多様な化学組成物を含みうる。それは好ましくは樹脂、特に、フルオロポリマー類、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)およびペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)、およびポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリスルホン、特にポリエーテルスルホン、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリウレタン(PUR)、ポリエステル、ポリフェニレンオキシドおよびその混合物からなる群から選択される樹脂を含む。
【0019】
寸法安定性支持層は、金属、特に鋼、ステンレス鋼、銅、チタン、青銅、黄銅、アルミニウムまたはその合金を含みうる。
【0020】
滑り平軸受複合材を形成する層の個々の層厚さに関しては、弾性層の厚さが摺動層の厚さの倍数の場合に、特に有利な減衰および固体伝播音分離特性が達成される。したがって、弾性層の厚さは、0.3〜0.6mmなどの、0.15〜5mmとすることができる。摺動層は、0.1〜0.3mmなどの、0.05〜1.0mmの厚さを有することができる。そして寸法安定性支持層は0.2〜0.5mmなどの、0.1〜1.5mmの厚さを有することができる。
【0021】
さらなる一実施形態において、摺動層と寸法安定性支持層とは、支持層が摺動層の摺動材料によって囲まれるというような方式で一体化することができる。ここで、摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合することは、一体型の層の複合材を製造することを含みうる。この場合においては、支持層は、摺動層の摺動材料中に、金属インサートとして、特に、編まれた金属メッシュ、エキスパンデッドメタルまたは金属不織布として構成できる。
【0022】
滑り平軸受ブシュは、好ましくは端部面に配置される少なくとも1つの軸方向のカラーを有することができる。滑り平軸受複合材の個々の層、すなわち摺動層、寸法安定性支持層および弾性層の間の高い強度の接合部のため、そのような軸方向のカラーの形成は、1つまたは複数の層のはがれまたは剥離が起こることなく容易に達成されうる。
【0023】
滑り平軸受ブシュは、本質的に円筒状の形状を有することができるが、滑り平軸受ブシュは同様に、軸方向のカラー有りまたは無しの、円錐形の形状を有することも可能である。
【0024】
層間の強固な接合部の結果、滑り平軸受ブシュは振動減衰滑り平軸受複合材から種々の方式で製造可能である。したがって、初めは平坦な材料として存在する滑り平軸受複合材から巻くことまたは曲げることによって滑り平軸受ブシュを製造することができる。
【0025】
代わりとして、滑り平軸受ブシュをスタンピングおよび深絞りを併用することによって製造することも可能である。
【0026】
振動減衰滑り平軸受複合材は、軸方向のカラー有りまたは無しの滑り平軸受ブシュの形態、またはそうでなければ別の形態の、種々の方式で使用できる。ミスアライメントを補償するため、公差を一定にする要素として、および軸受部材間に規定のトルクを発生させるためにヒンジを使用することが考えられる。座席において、滑り平軸受複合材はさらに、公差を小さくするため、およびミスアライメントの補償のため、および特に運転者および乗員の快適性を向上させるための固体伝播音の分離のために使用できる。これらの特性はまた、車両のステアリングシステム、車両のシャーシ部材、および高周波振動運動(ベルトテンショナ、2重質量フライホイール、分割型ベルトプーリ、ショックアブソーバおよび車両サスペンションの部材)のための滑り平軸受複合材の使用に活用できる。
【0027】
さらなる一実施形態において、振動減衰滑り平軸受アセンブリは、軸受ハウジングと、滑り軸受ブシュと、軸受シャフトとを含むことができる。有利な実施態様では、滑り平軸受ブシュの滑り平軸受複合材の弾性層が設けられ、その層の延長部と垂直にプレストレスされる。弾性層のこのプレストレスの結果、滑り平軸受の寿命中に摺動層から材料が徐々に剥離することをプレストレスされた弾性層の対応する膨張によって補償でき、軸受部材の遊びのない溶解が滑り平軸受の寿命全体で保証される。
【0028】
さらに別の実施形態においては、摺動材料を含む摺動層と、寸法安定性支持層と、弾性層とを含む振動減衰滑り平軸受複合材を製造する方法において、
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたって寸法安定性支持層に接合するステップと、
弾性層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、寸法安定性支持層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
または
摺動層と、寸法安定性支持層と、エラストマー層とをそれぞれシート状の材料、特にストリップ形状の連続的な材料の形態で用意するステップと、
摺動層をその領域にわたってエラストマー層に接合するステップと、
エラストマー層をその領域にわたって寸法安定性支持層に、エラストマー層の摺動層とは面していない側において接合するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【0029】
当業者には、添付図面を参照することにより本開示が一層良く理解され、その多くの特徴および利点が明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】滑り平軸受複合材から巻くことによって製造される、スリットを有する円筒状の滑り平軸受ブシュの斜視図である。
図2a】滑り平軸受複合材から巻くことによって製造される、軸方向のカラーを有する円筒状および円錐形の滑り平軸受ブシュの斜視図である。
図2b】滑り平軸受複合材から巻くことによって製造される、軸方向のカラーを有する円筒状および円錐形の滑り平軸受ブシュの斜視図である。
図3】第1の滑り平軸受アセンブリの斜視図である。
図4】第2の滑り平軸受アセンブリの斜視図である。
図5】深絞りによって製造される、軸方向のカラーを有する滑り平軸受ブシュの図である。
図6図2aの滑り平軸受ブシュの軸方向断面図である。
図7図6の詳細Xの図である。
図8】軸方向のカラーおよび滑り平軸受複合材から形成される図6とは別の層構造を有する滑り平軸受ブシュの軸方向断面図である。
図9図8の詳細Yの図である。
図10図9と異なる層構造の図である。
図11】滑り平軸受材料の摺動層と寸法安定性支持層とが一体化された滑り平軸受複合材から形成される、軸方向のカラーを有する滑り平軸受ブシュの図である。
図12図11の詳細Zの図である。
図13】変更された層構造を有する図11の滑り平軸受ブシュの図である。
図14図13の詳細Wの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
異なる図における同じ参照符号の使用は、類似または同一の要素であることを示す。
【0032】
図1に示す滑り平軸受ブシュ1は、初めは平坦な材料として存在する、適切な寸法にされた滑り平軸受複合材の片を巻くことによって製造される。代わりとして、材料片を曲げることもまた可能である。巻かれた材料片の対向する両端はスリット1aの境界となる。本場合において、スリット1aは軸方向に直線で入っている。あらゆる非線形の様式および/またはブシュ1の対称軸に対して斜めに入るスリットもまた可能である。図1の滑り平軸受ブシュ1において、滑り平軸受複合材は摺動層が内部、つまりブシュ1の内部表面に配置されるような向きとすることができる。図6図14に関連してより詳細に説明されるように、摺動層を外側に配置することも同様に可能である。
【0033】
図2aは、一端の面に形成された軸方向のカラー1bを有する滑り平軸受ブシュ1を示す。この軸方向のカラーは、例えば、初めは円筒状のブシュ1の端部をかしめることによって製造できる。本場合において、軸方向のカラー1b(フランジ)は直角に位置調整されている。しかしながら、内方向へ向くフランジ(図示せず)になるまで、角度を大きくしたり小さくしたりすることの両方が可能である。
【0034】
図2bは、滑り平軸受ブシュ1*の別の実施態様を示す。本場合において、滑り平軸受ブシュ1*は円錐形の形状を有し、軸方向のカラー1b*が最大直径を有する端部面に配置される。
【0035】
図3は、第1の振動減衰滑り平軸受アセンブリを示す。第1の振動減衰滑り平軸受アセンブリは、滑り平軸受複合材から巻くことによって作製された、軸方向のカラー1bを有する円筒状の滑り平軸受ブシュ1がその中に挿入された、鋼で作られた軸受ハウジング2を含む。滑り平軸受ブシュ1の軸方向のカラー1b上に載る拡張された直径を有する端部3aを有するシンプルな円筒状のピン3が軸受シャフトとして設けられ、円筒状のピン3は滑り平軸受ブシュ1によって少なくとも1つの方向において軸方向に固定される。同時に、滑り平軸受ブシュ1は同様に、軸受ハウジング2から抜けないように軸方向のカラー1bによって固定される。本場合における、滑り平軸受ブシュ1が作製される滑り平軸受複合材は、摺動層と、エラストマー層と、その間に配置される金属製の寸法安定支持層とを含む。摺動層が内側にあり、エラストマー層が外側、つまり軸受ハウジングに接している場合、ピン3は滑り軸受ブシュ1内に摺動させることができる。しかしながら、ハウジング2内における軸受ブシュ1の回転は、滑り防止エラストマーによって有効に防止される。ベルトテンショナまたは2重質量フライホイールではそのような滑り平軸受アセンブリが一般的である。
【0036】
図4は、さらなる振動減衰滑り平軸受アセンブリを示す。振動減衰滑り平軸受アセンブリは、再度、その中に図2aに示すタイプの滑り平軸受ブシュ1が挿入された軸受ハウジング4を含む。ハウジング4内に滑り平軸受ブシュ1を固定するために、第2のカラー1cが形成される。滑り平軸受ブシュ1が作製される滑り平軸受複合材の個々の層間の強固な接合部のため、第2の軸方向のカラー1cの形成時に層の複合材が破壊されるリスクはない。
【0037】
図4の滑り平軸受アセンブリにおいて、広げられたクリンチボルトヘッド6aを有するクリンチボルト6は、ここで軸受シャフトとして機能し、本場合においては滑り平軸受ブシュ1に下から挿入される。本場合において、滑り平軸受ブシュ1から上方へ突出するクリンチボルト6の部位6bは、ボルトの滑り平軸受ブシュ1と接している部分(見えない)よりもわずかに小さな直径を有し、滑り平軸受という手段によって軸受ハウジング4に対して例えば揺動によって回すことができる部材5に、固定された座部で接合される。ここで、この方式で作られた部材5とクリンチボルト6とからなるユニットは、ハウジング4内に挿入された滑り平軸受ブシュ1に対して滑らかに動くことができる。ここで、摺動層は再度滑り軸受ブシュ1の内部表面に配置される。滑り平軸受ブシュ1が作製される滑り平軸受複合材内に設けられる弾性層のため、公差および軸受部材間のミスアライメントも問題なく補償できる。
【0038】
滑り平軸受複合材から滑り平軸受ブシュを製造するさらなる可能な方式には、したがってスタンピング動作ともに複合材の深絞りが含まれる。ここで、図5に示す滑り平軸受ブシュ1**の円筒状の部位は、1つまたは複数のステップにおいて、初めは穿孔を囲んでいる平坦な材料として存在する複合材を絞ることによって形成される。最後に、絞られた領域を囲んでいる領域は、次いでスタンピングされ、したがってブシュ1**の軸方向のカラーを形成する。この製造技法の結果、この滑り平軸受ブシュ1**はスリットを有しない。
【0039】
図6は、図2aの滑り平軸受ブシュ1の軸方向断面図を示す。ここで、図7に詳細を拡大して示すように、摺動層10は内部に配置される。この層は、摺動材料としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなることが好ましい。原則的に、例えばNorglide(登録商標)の商品名で本出願人によって販売されているような多くの摺動材料がここで使用できる。
【0040】
摺動層10は、接着層11を介して下の寸法安定性支持層12に接合される。寸法安定性支持層12は、0.2〜0.5mmの厚さを有する鋼からなることが好ましい。寸法安定性支持層12は、次に、接合層13を介して弾性層14に接合される。弾性層14は、エラストマー、特にニトリルゴムからなることが好ましい。弾性層14の結果、優れた振動減衰が、滑り平軸受複合材から製造される滑り平軸受ブシュ1において達成される。図3および図4に示す滑り平軸受アセンブリの弾性層14は、その全領域にわたって軸受とともに設けられる部材(ハウジング2、4)に接し、図4の滑り平軸受アセンブリの場合においては、その上、部材4と部材5との間の効果的な固体伝播音の分離をもたらす。さらに滑り防止弾性層14は、ハウジング4内で滑り平軸受ブシュ1が回転するのを防止する。
【0041】
摺動層10が外側にある、軸方向のカラー1bを有する滑り平軸受ブシュ1の一実施態様が図8に示される。この構造は図9に詳細に示され、個々の層10〜14の名称および機能は類似している。そのような機構において、図4の滑り平軸受アセンブリの場合における軸受ハウジング4は、一方、他の部材1、5、6に比べて滑らかに回転する。
【0042】
図10は、弾性層14が摺動層10と支持層12との間にある滑り平軸受複合材の、別の層構造を示す。弾性層14はどの場合においても接合層13を介して、摺動層10と、寸法安定性支持層12とにその両面においてしっかりと接合される。そのような複合材は、原則的に、どの場合においても連続的なストリップ材料として存在する摺動層および支持層が、それぞれ接合層の塗布によって用意され、次いで、同様に連続的なストリップ材料として供給される弾性層に、両側から塗布される1つの製造ステップにおいて製造されうる。ここで、摺動層と弾性層との間および弾性層と寸法安定性支持層との間の接合部は、加硫処理という手段により、加圧下および150〜250℃の温度で製造される。
【0043】
最適な減衰特性を得るために、上述の滑り平軸受の弾性層14の厚さは、摺動層10の層厚さの倍数であることが好ましい。本場合においては、摺動層10は約0.1mmの厚さを有し、弾性層14は約0.4mmの厚さを有する。
【0044】
図11図14図9図10図12および図14における拡大図)は、滑り平軸受複合材の層構造のさらなる実施形態を示す。ここで、摺動層15は寸法安定化された実施形態において使用される。この層は、摺動材料としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなることが好ましい。強化材料としては、編まれた金属メッシュ、エキスパンデッドメタル、または別のタイプの金属インサート、特に、多孔金属板または金属不織布を使用することが可能であり、強化材料のすべての面が摺動材料によって囲まれる。寸法安定化された摺動層15は接合層13を介して弾性層14に接合される。
【0045】
再度、寸法安定化された摺動層を、複合材料から製造される滑り平軸受ブシュの内側または外側に配置することが可能である。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14