【解決手段】絶縁性基板上に形成され、半導体層40、ソース領域41、ドレイン領域42で構成される薄膜トランジスタを備えるトランジスタ回路において、半導体層の下側に第1のゲート絶縁膜30を介してボトムゲート電極20があり、半導体層を挟んでボトムゲート電極と対向する側に第2のゲート絶縁膜31を介してトップゲート層50を具備した少なくとも一つの第1の薄膜トランジスタと、半導体層の下側に第1のゲート絶縁膜30を介してボトムゲート電極20のみを具備する少なくとも一つの第2の薄膜トランジスタと、を同一基板上に形成する。
絶縁性基板上に形成され、半導体層、ソース領域、ドレイン領域で構成される薄膜トランジスタを備えるトランジスタ回路において、前記半導体層の下側に第1 の絶縁層を介してボトムゲート層があり、前記半導体層を挟んで前記ボトムゲート層と対向する側に第2の絶縁層を介してトップゲート層を具備した少なくとも 一つの第1の薄膜トランジスタと、前記半導体層の下側に前記第1の絶縁層を介して前記ボトムゲート層のみを具備する少なくとも一つの第2の薄膜トランジスタと、を同一基板上に形成したことを特徴とするトランジスタ回路であって、
前記トップゲート層が、前記ボトムゲート層と短絡されないことを特徴とする前記第1の薄膜トランジスタを具備し、
前記トップゲート層が前記半導体層との構造的重なりに比べて、前記ボトムゲート層と構造的に重なる面積が大きく、
前記第1の薄膜トランジスタの方が、前記第2の薄膜トランジスタよりも耐圧が低く形成され、
前記絶縁性基板と前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とはそれぞれ透明な材料で構成されていることを特徴とするトランジスタ回路。
前記トップゲート層と前記ボトムゲート層とが前記半導体層を介さずに重畳する面積が、前記半導体層を介して重畳する面積の8倍より大きい請求項1記載のトランジスタ回路。
前記トップゲート層と前記ボトムゲート層とが前記半導体層を介さずに重畳する面積が、前記半導体層を介して重畳する面積の20倍より大きい請求項1記載のトランジスタ回路。
前記トップゲート層と前記半導体層との間の前記第2の絶縁層の厚さが、前記ボトムゲート層と前記半導体層との間の前記第1の絶縁層の厚さより薄いことを特徴とする前記第1の薄膜トランジスタを具備した、請求項1乃至3いずれか一つに記載のトランジスタ回路。
前記トップゲート層と前記半導体層との間の前記第2の絶縁層の単位面積あたりの絶縁層容量が、前記ボトムゲート層と前記半導体層との間の前記第1の絶縁層 の単位面積あたりの絶縁層容量より大きいことを特徴とする前記第1の薄膜トランジスタを具備した、請求項1乃至4いずれか一つに記載のトランジスタ回路。
前記第1の絶縁層の厚さが200nm以上であることを特徴とする前記第1および第2の薄膜トランジスタを具備した、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
前記ソース領域及び前記ドレイン領域の一部と前記第1の絶縁層を挟んでオーバーラップする前記ボトムゲート層を持つ前記第1および第2の薄膜トランジスタを具備し、か つ、前記トップゲート層が前記ソース領域及び前記ドレイン領域とオーバーラップしていないことを特徴とする前記第1の薄膜トランジスタを具備した、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
前記ソース領域及び前記ドレイン領域とチャネル領域の一部とが、前記ボトムゲート層とオーバーラップし、かつ、前記トップゲート層とオーバーラップしていないことを特徴とする前記第1の薄膜トランジスタを具備した、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
前記トップゲート層のすべての領域が、絶縁層あるいは前記半導体層を介して前記ボトムゲート層とオーバーラップしていることを特徴とする前記第1の薄膜トランジスタを具備した、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
前記トップゲート層が前記半導体層と重ならない領域の、前記トップゲート層と前記ボトムゲート層との間の前記第1の絶縁層の厚さと前記第2の絶縁層の厚さの和を、前記トップゲート層が前記半導体 層と重なる領域の、前記トップゲート層と前記ボトムゲート層と間の前記第1の絶縁層の厚さと前記第2の絶縁層の厚さの和より薄くしたことを特徴とする前記第1の薄膜トランジスタを具備した、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の実施形態の説明の前に本発明の基本概念および基本原理を説明する。本発明では上述の問題を解決するために、絶縁性基板上のシリコン層などの半導体層を挟むようにその下側、及び上側にゲート電極層を形成する。以下、半導体層の下側(基板側)のゲート電極をボトムゲートと呼び、半導体層の上側(基板とは反対側)のゲート電極をトップゲートと呼ぶ。半導体層の下にはボトムゲートに対するゲート絶縁膜を形成し、半導体層の上にはトップゲートに対するゲート絶縁膜を形成する。上記構成において、ボトムゲートに対するゲート絶縁膜をトップゲートに対するゲート絶縁膜よりも厚く形成する。
【0011】
上述の構成において、ボトムゲートとトップゲートの両方が形成されており、両者を短絡して同一の電圧を印加すると、両方のゲートにより駆動される、いわゆるデュアルゲート構造になる。一方、両者を短絡せず、トップゲートの電位を固定しない状態、つまりフローティング状態にしておいた場合、トップゲートと構造的に重なる電極配線の電位や、トップゲートと構造的に重なる半導体層の電位の影響を受け、トップゲートの電位は、上記の構造的に重なる領域の電位、及びその領域との容量結合の割合により決まる。フローティング状態であるトップゲートが、ソース、ドレイン領域と構造的に重ならず、ボトムゲートと構造的に重なる面積が大きい場合、特に半導体層との構造的な重なりに比べて十分に大きい場合は、トップゲートの電位はボトムゲートの電位に近い値となる。
【0012】
上記内容に関して、
図1(a)を用いて詳細に記述する。下側に金属配線1があり、その上に、下側のゲート絶縁膜2を形成した後に、金属配線1上の一部に半導体層3を形成する。更に上側のゲート絶縁膜4を形成した後に金属配線5を金属配線1と同じ大きさに形成した構造を考える。本構造において、金属配線1の電位をVMに固定し、半導体層3の電位がVSiであるとする。金属配線5は、外部から電位を固定しない、いわゆるフローティング構造とする。
【0013】
この構成において、フローティングである金属配線5の電位は、金属配線1と半導体層3の電位と、それらと金属配線5間の容量により決まる。金属配線5と半導体層3間の容量をCA、金属配線5と金属配線1間の容量をCBとすると、フローティング状態の金属配線5の電位VFは、
VF=[(CA/(CA+CB)]×VSi+[(CB/(CA+CB)]×VM (式1)
となる。
【0014】
薄膜トランジスタ構造において、多くの場合、
図1の構造における半導体層の部分はチャネル領域であり、0V近辺であることが多いことを考慮すると、
VF=[(CB/(CA+CB)]×VM (式2)
と近似しても定性的には問題とならない。式2から明らかなように、CAに比べてCBが十分に大きければ、フローティング状態の金属配線5の電位VFは、金属配線1の電位VMとほとんど同じになる。
【0015】
金属配線1の電位を−16Vにして、上側のゲート絶縁膜4の膜厚を120nm、下側のゲート絶縁膜2の膜厚を120nmから600nmまで変化させた場合の、金属配線5の電位を調べた例を
図1(d)に示した。同図は、金属配線1と金属配線5の間の半導体層3がない領域の面積(CBを支配)と半導体層3がある領域の面積(CAを支配)の比に対してプロットしている。この結果から明らかなように、上記面積比が20倍を超えると、フローティング状態の金属配線5の電位が金属配線1の電位と近くなることがわかる。実際の薄膜トランジスタ構造においては、半導体層3、つまりチャネル領域の電位は、金属配線1の電位、あるいはドレイン領域の電位の影響を受け、相対的に金属配線1の電位に近づくため、この面積比に対する制約は
図1(d)に示した結果より弱くなる。上記のメカニズムにより、トップゲートとボトムゲートを短絡せずとも、構造的に前述の条件を満たすことで、関連技術のデュアルゲート構造と等価となる。
【0016】
つまり、ボトムゲートに対するゲート絶縁膜はトップゲートに対するゲート絶縁膜より厚いので、本願の構造によるデュアルゲート特性は、トップゲート特性、つまりゲート絶縁膜が薄い場合の特性に支配される。一方で、トップゲートを形成しない場合には、ゲート絶縁膜が厚い場合の特性となり、トップゲート構造の有無により、低電圧で駆動する薄膜トランジスタと高電圧で駆動する薄膜トランジスタを作り分ける場合も含めて、異なる耐圧の薄膜トランジスタを作り分けることができる。
【0017】
また、以上のような考え方をもとにすれば、絶縁性基板上に半導体層、半導体層中にまたは半導体層に隣接して形成されたソース・ドレイン領域、半導体層を挟むように形成された第1の絶縁層と第2の絶縁層、第1の絶縁層を介して半導体層の反対側に形成されたゲート端子層と、第2の半導体層を介して半導体層とは反対の側に形成されたゲート電極層を有し、少なくともゲート電極層は半導体層と重なった領域を有し、さらに少なくとも半導体層と重ならない領域でゲート電極層とゲート端子層とが重なっていることを特徴とする薄膜トランジスタの構成でもトランジスタ動作を得ることができ、必要に応じて低電圧用薄膜トランジスタまたは高電圧用薄膜トランジスタの一方を選択する場合のように耐圧特性の異なる薄膜トランジスタの一方を任意に選択することが可能になる。
【0018】
図1(b)は、本発明による薄膜トランジスタ構造を模式的に示す概念斜視図であり、
図1(c)はその薄膜トランジスタ構造を真上から見た図である。
図1(a)は、
図1(c)中のI−I線に沿った断面図に対応する。ボトムゲート電極とトップゲート電極の間に絶縁膜しか存在せず、トップゲートがフローティング状態である場合、トップゲートの電位はボトムゲートの電位と同じになる。
図1(a)のように、トップゲートとボトムゲートの間にシリコン層などの半導体層(チャネル)が挟まれている領域がある場合は、チャネル電位もフローティングのトップゲートに影響し、それらの面積比によってフローティングのトップゲート電位が決まる。つまり、チャネルが挟まれている領域に比べて挟まれていない領域が十分に大きければ、ボトムゲートの電位とフローティングのトップゲートの電位はほとんど等価になり、ボトムゲート駆動によってデュアルゲート駆動と同等の性能を得ることができる。
【0019】
一般的に、画素回路の電源電圧は、少なくとも10V程度以上にする必要があることが多い。よって、画素トランジスタや周辺回路駆動用の薄膜トランジスタは、比較的高電圧が印加されるため、それに伴う信頼性確保のためにゲート絶縁膜の膜厚を100nm程度以上で形成する必要がある。この要求を満たす薄膜トランジスタを一般に、高電圧用薄膜トランジスタと呼ぶことができる。
【0020】
一方で、特に周辺回路において信号処理回路に用いられる薄膜トランジスタは、5V程度以下の低電圧で駆動される回路であり、近年ますます低電圧化される傾向にあり、ゲート絶縁膜の膜厚を120nm程度、あるいはそれ以下で形成する必要がある。特に3.3V、2.5V、あるいはそれ以下の電源電圧で駆動する場合はゲート絶縁膜の膜厚を50nm程度まで薄くすることが望ましい。この要求を満たす薄膜トランジスタを一般に、低電圧用薄膜トランジスタと呼ぶことができる。
【0021】
しかし、本発明のように別々に作り分ける適用範囲は、上記呼び方に分類される異なる薄膜トランジスタに限定されるものではなく、異なる薄膜トランジスタの駆動電圧の相対的な比較において高低の区別がつけられる組合せの薄膜トランジスタを作り分ける場合も含む。したがって、以下の説明では、高電圧用薄膜トランジスタとは低電圧用薄膜トランジスタに比較して駆動電圧が高い薄膜トランジスタを意味するものであり、低電圧用薄膜トランジスタとは高電圧用薄膜トランジスタに比較して駆動電圧が低い薄膜トランジスタを意味する場合も含むものとして扱う。
【0022】
一般には高電圧用薄膜トランジスタと低電圧用薄膜トランジスタとを単一の構造でまかなうために、双方から歩み寄って100〜120nmのゲート絶縁膜厚を有する同一耐圧の薄膜トランジスタが用いられることが多い。本願では高電圧用薄膜トランジスタに必要な耐圧と、低電圧用薄膜トランジスタに要求される低電圧駆動の双方を満足させるために、高電圧用薄膜トランジスタ構造と低電圧用薄膜トランジスタ構造とを同一基板上に形成することができる場合についてのみならず、一方の薄膜トランジスタの耐圧が他方の薄膜トランジスタの耐圧と異なる場合のように、耐圧特性の異なる薄膜トランジスタを同一基板上に形成する場合も含めて以下に本発明の実施形態について述べる。
【0023】
(第1の実施形態)
まず、耐圧特性の異なる第1および第2の薄膜トランジスタのうち、トップゲート電極で駆動される第1の薄膜トランジスタ(すなわち、その耐圧が第2の薄膜トランジスタの耐圧より低い方)と、それより耐圧が高くなるようにボトムゲート電極で駆動される第2の薄膜トランジスタ(すなわち、その耐圧が第1の薄膜トランジスタの耐圧より高い方)とを同一基板上に形成した本発明によるトランジスタ回路に関して
図2(a)および(b)を参照して説明する。
【0024】
図2(a)および(b)に示すように、同一の絶縁性基板10の上にボトムゲート電極20をそれぞれ形成し、その上に共通の第1のゲート絶縁膜30を形成する。第1のゲート絶縁膜30の膜厚は、第2の薄膜トランジスタに印加される電圧の大きさに対応して比較的厚く形成される。第1のゲート絶縁膜30の上には、両薄膜トランジスタのソース領域41およびドレイン領域42を備えた半導体層40を有し、その上に第2のゲート絶縁膜31が形成されている。第2のゲート絶縁膜31の膜厚は、第1の薄膜トランジスタより低電圧で駆動するために少なくとも第1のゲート絶縁膜30より薄く形成する。ここまでの構成要素は
図2(a)および(b)に示すように両薄膜トランジスタに共通である。
【0025】
図2(a)に示すように、両薄膜トランジスタの内の耐圧が低い方の第1の薄膜トランジスタでは、第2のゲート絶縁膜31上にトップゲート電極50を設ける。一方、第1の薄膜トランジスタよりもその耐圧が高い方の第2の薄膜トランジスタでは、
図2(b)に示すように、第2のゲート絶縁膜31上にはトップゲート電極を設けない。さらに層間絶縁膜32を両薄膜トランジスタに共通に形成し、ソース、ドレイン電極配線70がソース領域41およびドレイン領域42にコンタクトホールを介して接続されるように形成されている。
【0026】
このようにして、耐圧の異なる第1の薄膜トランジスタ構造と第2の薄膜トランジスタ構造を同一基板上に容易に形成することが可能となる。また、
図1を参照して説明した本発明の条件を満たすことにより、
図2(a)に示す第1の薄膜トランジスタでは、第1のゲート絶縁膜30より薄い第2のゲート絶縁膜31上のトップゲート電極50に支配される薄膜トランジスタが構成される。他方、
図2(b)に示す第2の薄膜トランジスタでは、第2のゲート絶縁膜31より厚い第1のゲート絶縁膜30の下に配置されたボトムゲート電極20に支配される薄膜トランジスタが構成されているので、第2の薄膜トランジスタは第1の薄膜トランジスタより耐圧が高い構造となっている。
【0027】
このように、ボトムゲート用絶縁膜の厚みをトップゲート用絶縁膜の厚みより大きくしておき、トップゲートがある場合はボトムゲートとのデュアルゲート構成もしくはそれと等価の構成とすることによりトップゲート駆動できる第1の薄膜トランジスタを作成できる。一方、トップゲートが無い場合はボトムゲート駆動できる第2の薄膜トランジスタが作成され、その耐圧を第1の薄膜トランジスタより高くすることができる。
【0028】
よって、本発明が適用される薄膜トランジスタは、一般的に低電圧用薄膜トランジスタと高電圧用薄膜トランジスタと呼ばれる組合せに限られず、画素用薄膜トランジスタにトップゲート電極を設けた第1の薄膜トランジスタ構造を採用し、同一基板上の他の領域に、画素用薄膜トランジスタよりさらに高い電圧で駆動される第2の薄膜トランジスタを形成する場合にも、上述した本発明に基づき、第2の薄膜トランジスタにはトップゲートを設けない構成とることで、耐圧の異なる2種類の高電圧用薄膜トランジスタを同一基板上に容易に形成することができる。
【0029】
以下では、
図2(a)に示したトップゲートを有する薄膜トランジスタを画素用薄膜トランジスタに適用した場合の構造に関して、
図3(a)を参照してその製造方法を含めて詳細に記述する。
【0030】
ガラスや石英などの透明絶縁性基板10の上にCrを用いてボトムゲート電極20を形成した。なお、電極21も同一層のボトムゲート電極であり、図示した断面と異なる別の断面でボトムゲート電極20と短絡している。なお、上記ボトムゲート電極20の下層に基板材からの汚染物質拡散防止等を目的とした絶縁膜を形成しても良い。また、上記ボトムゲート電極20は他にもMo、W、Ti、Nb、Alやそれらの合金、またはそれらの積層構造で形成しても良いし、それらのシリコン化合物で形成してもよい。上記ボトムゲート電極20の膜厚は、光を透過しない程度、かつ十分に低い電気抵抗が得られる程度に厚くする必要があり、加えて、後述する第1のゲート絶縁膜で十分にカバーできるだけの膜厚にする必要があり、ボトムゲート電極20の厚さは20nm〜400nmの範囲にするのが望ましい。
【0031】
次に、上記ボトムゲート電極20の上に第1のゲート絶縁膜30をSiO2で形成する。なお、SiO2に限定されることは無く、TaO、SiON、またはSiN、あるいはSiO2とSiNの積層で形成することも可能である。また、低アルカリガラスやソーダライムガラスなど不純物をある程度有する材料を基板に用いる場合、基板とボトムゲート電極の間に、酸化物層、例えばSiO2、SiN、SiO/SiN積層など、を適宜積層してもよい。第1のゲート絶縁膜30の膜厚は、画素用薄膜トランジスタのよりさらに高電圧で駆動される薄膜トランジスタに印加される電圧の大きさに対応して比較的厚く形成することが望ましく、第1のゲート絶縁膜30の膜厚を120nm、200nm、400nm、600nmと変えて試作した。
【0032】
次に、50nm程度の膜厚の半導体層(ここではシリコン層40)をCVD(Chemical Vapor Deposition)により堆積し、チャネル注入を行なった後に、エキシマレーザーによる結晶化(ELA)を実施し、多結晶シリコン薄膜を形成した後に、シリコン層40をアイランド状に加工する。第1のゲート絶縁膜30が120nmの場合は、レーザー結晶化における熱がボトムゲートにより逃げやすく、ボトムゲートの有無により結晶化率が異なることが分かった。よって第1のゲート絶縁膜30の膜厚は200nm以上にすることが望ましい。
【0033】
次に、第2のゲート絶縁膜31をSiO2で形成する。なお、SiO2に限定されることは無く、TaO、SiON、またはSiN、あるいはSiO2とSiNの積層で形成することも可能である。第2のゲート絶縁膜31の膜厚は、薄膜トランジスタを低電圧で駆動するために比較的薄く、少なくとも第1のゲート絶縁膜30より薄く形成することが望ましい。本願実施例では第2のゲート絶縁膜31の厚さは120nmとした。あるいは、第2のゲート絶縁膜31の単位面積あたりの絶縁膜容量を、第1のゲート絶縁膜30の単位堆積あたりの絶縁膜容量より大きくすることでも良い。絶縁容量は、絶縁膜の膜厚や絶縁膜の誘電率で制御が可能であるため、より駆動能力の高いトップゲート特性を得るためには、TaOなどの誘電率の高い材料を薄く形成することが好ましい。
【0034】
次に、トップゲート電極50をCrで形成した。ボトムゲート電極20と同様に、Mo、W、Ti、Nb、Alやそれらの合金、またはそれらの積層構造で形成しても良い。また、ボトムゲート電極20とトップゲート電極50の材料は必ずしも一致させる必要はない。
【0035】
次に、トップゲート電極50をマスクとしてN型の不純物(リン)、あるいはP型の不純物(ボロン)を高濃度に注入しソース領域41、ドレイン領域42を形成する。もしくは、トップゲート電極50を形成するより前に、トップゲート端より規定の長さだけ外側に、N型、あるいはP型の不純物を高濃度に注入し、ソース、ドレイン領域を形成し、トップゲート電極形成後に、トップゲート電極50をマスクとしてN型、あるいはP型の不純物を低濃度に注入したLDD(Lightly Doped Drain)領域を形成してもよい。この場合、上記規定の長さがLDD長となる。
【0036】
さて、ここで、
図2(b)に示すように、さらに高電圧用の薄膜トランジスタとなる部分では、トップゲート電極をエッチング除去し、低電圧用薄膜トランジスタとなる部分では、マスクとして用いたトップゲート電極をそのまま残す。このようにすることで、相対的に駆動電圧の異なる薄膜トランジスタ構造を同一基板上に形成することが可能となる。
【0037】
また、高電圧用薄膜トランジスタ構造と低電圧用薄膜トランジスタ構造とを同一基板上に形成するほかの方法には以下の方法を採ることもできる。
【0038】
トップゲート端より規定の長さだけ外側に、N型、あるいはP型の不純物を高濃度に注入し、ソース、ドレイン領域を形成する。低電圧用薄膜トランジスタとなる部分のみにトップゲート電極を形成しその後に全体をレジストで覆った後、トップゲート領域とその領域近傍、および必要に応じて高電圧用薄膜トランジスタのドレイン端近傍の必要な部分に対するレジストを除去開口し、低電圧用薄膜トランジスタはトップゲート電極50をマスクとして、それ以外の開口部はレジストをマスクとしてN型、あるいはP型の不純物を低濃度に注入したLDD(Lightly Doped Drain)領域を形成する。
【0039】
なお、LDD領域が不要であれば、低電圧用薄膜トランジスタのトップゲート端から規定の長さだけ外側に、および高電圧用薄膜トランジスタの規定の領域に、N型、あるいはP型の不純物を高濃度に注入し、ソース、ドレイン領域を形成することもできる。
【0040】
次に、第1の層間絶縁膜32をSiO2、またはSiN、あるいはSiO2とSiNの積層で形成し、コンタクトホール60および61を開口し、ソース、ドレイン電極配線70および電極21に接続された電極配線71を形成する。コンタクトホール60及び61を開口する際に、シリコンのソース領域41またはドレイン領域42にそれぞれコンタクトするコンタクトホール60と、ボトムゲート電極20と同層の電極21とコンタクトするコンタクトホール61とでは、コンタクトホールの深さが異なるため、特に絶縁層とシリコンのエッチング選択比を大きくする必要がある。上記エッチング選択比が十分大きくないと、電極21とのコンタクトホール61が開口するより前に、シリコンとのコンタクトホール60でシリコンのエッチングが進行し、最悪の場合、シリコンを突き抜けて開口し適切なコンタクトが取れない場合がある。
【0041】
そこで、
図3(b)に示すようにトップゲート電極50を形成するより前にコンタクトホール62をあらかじめ開口しておき、第1の層間絶縁膜形成後のコンタクトホール形成時における前述の問題を回避することができる。
【0042】
なお、コンタクトホール62を開口する工程は、第2のゲート絶縁膜31を形成する前でも可能である。また、
図3(b)のように、トップゲート電極50を形成するより前にコンタクトホールを開口するプロセスを用いる場合には、
図4に示すようにコンタクトホール63を開口した後のトップゲート電極形成工程で、トップゲート電極50と同層で電極51を形成する方法を用いても良い。トップゲート電極50と電極51を連続した配線とするなど電気的に短絡しておけばトップゲート電極50と電極21は同電位となり、また、前述したように、電極21とボトムゲート電極20は電気的に短絡されているため、トップゲート電極50とボトムゲート電極20は同電位となる。つまり、シリコンの下側にあるボトムゲートを用いて駆動すると、シリコンの上側にあるトップゲートも同時に駆動されるデュアルゲート構成が得られる。
【0043】
次に、第2の層間絶縁膜33をSiNで形成し、薄膜トランジスタ構造を保護し、トランジスタ回路を形成した。本薄膜トランジスタを画素用トランジスタとして用いる場合、更にコンタクトホール80を開口し、透明画素電極90をITO(Indium Tin Oxide)で形成した。画素以外の領域においては、透明画素電極90は必ずしも透明な電極である必要はない。
【0044】
また、本発明の上記実施形態によれば、低電圧用薄膜トランジスタと高電圧用薄膜トランジスタのいずれのトランジスタもボトムゲートまたは下層導電層を利用して駆動できる。前述したように、高電圧用薄膜トランジスタにはトップゲートが存在しないため、ボトムゲートに対するゲート絶縁膜(比較的厚く形成されている)に支配される特性が得られ、高電圧においても高い信頼性を持つトランジスタを得ることができる。
【0045】
低電圧用薄膜トランジスタには前述した条件を満たすトップゲートが存在する。この場合には、トップゲートとボトムゲートの両方を同時に駆動するのと等価な特性が得られ、トップゲートに対するゲート絶縁膜(比較的薄く形成されている)に支配される特性が得られ、高い電流駆動能力を持ち高速な駆動が可能である。
【0046】
つまり、前述した条件を満たすトップゲート層の有無により、高耐圧の高電圧用薄膜トランジスタと低電圧で高速に駆動する低電圧用薄膜トランジスタを作り分けることができる。
【0047】
また、近年は、ディスプレイの解像度向上、及び高機能化のために画素の開口率が低下する傾向にあり、それを補うためにバックライト輝度が高くなっている。上記関連技術の構造においてはバックライト等の外部からの光が薄膜トランジスタのシリコン層に入射されるため、シリコン層に電子・正孔対が形成される。特に、チャネルとドレインの境界領域付近で発生した電子、あるいは正孔は電界によってリーク電流としてドレイン領域に流れ込む分が存在するため、ドレイン電流として検出される。つまり、光の照射によりオフリーク電流が増大する、いわゆる、光リーク電流の問題が生じる。これにより、画素蓄積容量や画素容量に書き込んだ電圧が低下してしまい、コントラストの低下、明点欠陥、暗点欠陥等をもたらす問題や、ゲート線駆動回路等においては誤動作を起こす問題があった。
【0048】
しかし、本発明の上記実施形態によれば、ボトムゲートは、半導体層における高濃度不純物注入領域であるソース、ドレイン領域と重なるように形成されるから、ボトムゲートがチャネルとドレインの境界領域付近に入射する外部光を遮る機能を持ち、上記の光リーク電流の問題を解消することができる。
【0049】
図2、
図3、
図4に示した薄膜トランジスタ構成において、その動作に関して以下詳細に記述する。
図4に示した構造において、特にトップゲート電極50と同層で形成された電極51が電気的に短絡されている場合はデュアルゲート構成となる。第1のゲート絶縁膜30に比べて第2のゲート絶縁膜31が薄いため、その薄膜トランジスタの特性は、トップゲートに対する特性に支配される。一方で、トップゲート電極50がない場合は、その薄膜トランジスタの特性は、ボトムゲート特性となる。よって、トップゲート電極の有無により、異なる2つの特性を容易に作り分けることができる。具体的には、トップゲート電極50がある場合は、高い電流駆動能力を持った低電圧用薄膜トランジスタが得られ、トップゲート電極50がない場合は、大きなゲート耐圧を持った高電圧用薄膜トランジスタが得られる。
【0050】
図4の構成において、トップゲート電極50と、同層で形成された電極51が電気的に短絡されないで、
図2、
図3の構成と同様に、トップゲート電極50がフローティングになっている場合でも、すでに前述したように、以下に記述する条件においては、上述のデュアルゲート効果と同じ効果が得られる。
すなわち、ボトムゲートとトップゲートとの間において、チャネルが挟まれている領域に比べてチャネルが挟まれていない領域が十分に大きければ、ボトムゲートの電位とフローティングのトップゲートの電位はほとんど等価になり、ボトムゲート駆動によってデュアルゲート駆動と同等の性能を得ることができる。
【0051】
また、チャネルが挟まれている領域と挟まれていない領域の望ましい面積比は、チャネルが挟まれていない領域におけるボトムゲートとトップゲート間の距離が短いほど小さくなるため、
図5に示したような構造であるとより望ましい。つまり、ボトムゲートとトップゲートの間にチャネルが挟まれていない領域における、第1のゲート絶縁膜30の厚さと第2のゲート絶縁膜31の厚さの和が、ボトムゲートとトップゲートの間にチャネルが挟まっている領域における、第1のゲート絶縁膜30の厚さと第2のゲート絶縁膜31の厚さの和より小さいことがより望ましい。
図5に示したこのような構造は、シリコン層のアイランドを形成する際に、エッチングを多めにすることで容易に形成することが可能である。
【0052】
なお、
図2、
図3、
図4において、ソース、ドレイン電極配線70の少なくとも一部がトップゲート電極50の上に重なっている場合は、フローティングのトップゲート電位がソース、ドレイン電位の影響を受けるため、ソース、ドレイン電極配線がトップゲートとできるだけ重ならないことが望ましい。
【0053】
上記の構造を有する薄膜トランジスタを作製し、薄膜トランジスタの特性を測定した結果を
図6に示す。本構造の第1のゲート絶縁膜の厚さは600nmであり、第2のゲート絶縁膜の厚さは120nmであり、トップゲートがある構造においては、トップゲートとボトムゲートの間に絶縁膜しかない領域の面積が、チャネル面積の8倍の場合である。
図6(a)は、横軸がボトムゲートに印加した電圧、縦軸がドレイン電流であり、フローティング状態のトップゲートの有無により、明確に異なる二つの特性を作り分けられることが示されている。つまり、トップゲートがない薄膜トランジスタの特性は、第1のゲート絶縁膜の膜厚が厚いことに由来する特性が得られ、高いゲート耐圧を持つ高電圧用薄膜トランジスタが得られる。トップゲートがある薄膜トランジスタの特性は第2のゲート絶縁膜の膜厚に由来する高電流駆動能力を持つ低電圧用薄膜トランジスタが得られる。
図6(b)には、トップゲートとボトムゲートの間に絶縁膜しかない領域のチャネル面積に対する比に対する変化を示した。この結果から、上記面積比が1.5程度の場合は高い電流駆動能力の観点で十分ではないことが示されている。先に示した通り、上記面積比が8より大きいと十分に高い電流駆動能力を得ることができる。
図1(d)の結果からも、上記面積比が大きいことが望ましいことが示唆されており、上記面積比が20以上であることが望ましい。
【0054】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態においては、ソース、ドレイン電極配線70がトップゲートより上層に位置する場合を示したが、第2の実施形態では、
図7に示すように、ソース、ドレイン電極配線70がトップゲートより下層に位置する構造である。すなわち、第2の実施形態では、第2のゲート絶縁膜31を形成する前に、ソース、ドレイン電極配線70を形成している。この方法によって、
図2の構造で必要としたコンタクトホール60を形成する工程をなくすことができる。また、ボトムゲート電極20と同層の電極21と接続するコンタクトホール160を
図2におけるコンタクトホール61の代わりに形成する。すなわち、トップゲート電極50を形成する前に、コンタクトホール160用の開口を第1のゲート絶縁膜30および第2のゲート絶縁膜31に形成しておく。これにより、トップゲート電極50とこのトップゲート電極50と同層の電極51を形成する。他の製造方法、構造に関する制約条件は第1の実施形態と同じであり、得られる効果も第1の実施形態と同じである。
【0055】
また、
図7の変形例として、コンタクトホール160を形成せずに、
図8に示すように、第1の層間絶縁膜32を形成した後にコンタクトホール80を開口する際に、同時に、電極21とコンタクトするためのコンタクトホール81を開口しても良い。この場合には、電極21とコンタクトする電極91を、透明画素電極80と同時に形成すると良い。画素以外の領域においては、画素電極90及び電極91の材料としては必ずしも透明な電極材料である必要はない。
【0056】
(第3の実施形態)
第3の実施形態ではオフセット構造を有する薄膜トランジスタに本発明を適用した構造に関して記載する。
図9乃至
図13に示すように、低電圧用薄膜トランジスタと高電圧用薄膜トランジスタとの両者の薄膜トランジスタを容易に同一基板に同時に作りこむことができる。
図9および
図10において、高電流駆動薄膜トランジスタと高耐圧薄膜トランジスタそれぞれに対して第1の実施形態に沿った例と第2の実施形態に沿った例の2つの例を示しており、いずれか一方の構造をとればよい。同様に
図11および
図12においても、第1の実施形態に沿った例と第2の実施形態に沿った例の2つの例を示している。
【0057】
ただし、この形態において、以下の注意が必要な場合がある。つまり、高耐圧の薄膜トランジスタはトップゲートが存在しないため、製造工程において、トップゲート電極をマスクとして不純物を注入する工程があると、高耐圧の薄膜トランジスタにおけるチャネル領域に意図せずに不純物が注入されてしまう。このような意図しない不純物注入を回避するためには、トップゲート電極をマスクとして注入するのではなく、フォトレジストをマスクとして不純物を注入する方法をとることになる。この場合、ソース、ドレイン領域を形成する高濃度の不純物注入と、LDD領域を形成する低濃度の不純物注入のいずれもフォトレジストをマスクとする必要があるため、製造工程数が増える。このようなLDD領域形成に関する製造工程数増加を解消するために、以下に示す形態で実施した。
【0058】
第1の実施形態に示した構造において、トップゲート電極50を形成するより前にN型、あるいはP型の不純物を高濃度に注入し、ソース領域41、ドレイン領域42を形成する場合に、トップゲート端より所定の長さだけ外側に、N型、あるいはP型の不純物を高濃度に注入し、ソース、ドレイン領域を形成する。この場合に、
図9乃至
図13に示したように、ボトムゲート電極20が上記所定の長さのすべての領域とオーバーラップするように製造する。
【0059】
本形態においては、第1、第2の実施形態と異なり、トップゲート電極をマスクとしてN型、あるいはP型の不純物を低濃度に注入したLDD領域を形成しない。つまり、所定の長さの領域はオフセット領域となる。このオフセット領域はすべてボトムゲートと第1のゲート絶縁膜を介して重なっているので、オフセットはボトムゲートの電位の影響でLDDと同等の機能を有する。つまり、オフセット領域は高抵抗であるため、オフセット領域とオーバーラップするボトムゲートがない場合は、オン電流が小さくなってしまう問題があるが、ボトムゲートの電位の影響でこの問題を解消することができる。よって、本手法により、LDD形成工程をなくし、製造工程を短縮することが可能となった。
【0060】
低電圧用薄膜トランジスタと高電圧用薄膜トランジスタを同時に作り分けた構成において、高電圧用薄膜トランジスタの特性はボトムゲートに対する特性そのものであり、低電圧用薄膜トランジスタの特性を支配するのはトップゲートにより二次的に駆動される特性である。つまり、低電圧用薄膜トランジスタにおけるボトムゲートの役割は、トップゲートがフローティングである場合に、そのフローティング状態の電位をボトムゲートで制御することであり、一般的なゲート電極のようにチャネル領域を制御することを必ずしも必要としない。よって、高電流駆動を目的とした低電圧用薄膜トランジスタの形成にはボトムゲートとトップゲートの間にチャネルを挟まない領域の十分な大きさがあればよく、後述する実施形態で示すように、ボトムゲートが必ずしもチャネル領域と重なっていなくても良い。
【0061】
しかしながら、下記の2つの観点で、ボトムゲートは、オフセット領域と重なっていることが望ましい。
【0062】
1つ目の観点は、オフセット領域を持つ薄膜トランジスタにおいては、ボトムゲートがすべてのオフセット領域と重なっていることで、ボトムゲートの電位の影響でオフセット領域がLDDと同等の機能を持つことである。
【0063】
2つ目の観点は、ボトムゲートは、バックライトの光がシリコン層への入射が遮られ、光リーク電流を抑制できる有用な機能を持ち合わせる。ここで、チャネルとドレイン領域の境界部(ジャンクション領域)、LDD領域、またはオフセット領域に入射する光が光リーク電流の主要因であるため、その領域を遮ることが重要であることは広く知られており、上記ボトムゲートが、光リーク電流の抑制に十分な効果を与える。上記の2つの観点から、
図11および
図12に示したように、低電圧用薄膜トランジスタにおいては、LDD領域、あるいはオフセット領域と重なる構造とするのが望ましい。
【0064】
なお第1,2の実施形態で記述した形態は、多結晶シリコン薄膜トランジスタに対する形態として記述したが、本発明は、シリコン薄膜として多結晶シリコンに限定されるものではなく、非晶質シリコンでも適用できる技術である。実際に、非晶質シリコンを用いた構成によって実施した形態に関して以下に記載する。すなわち、シリコン層として非晶質シリコンを用いて
図9乃至
図12のような構造を製造しても良い。あるいは
図13のように関連技術の非晶質シリコン薄膜トランジスタの製造方法に近い形で製造してもよい。具体的には、先の実施の形態と同様に、ガラス基板上にゲート電極を形成し、第1のゲート絶縁膜を形成した後に、非晶質シリコン層を形成した後に、N型の不純物(例えばリン)を高濃度に含んだ非晶質シリコンをソース、ドレイン領域(41,42)として形成してもよい。他の構造、及びその製造方法に関しては
図9乃至
図12の場合と同じである。
【0065】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、シリコンなどの半導体アイランド形成時の下地掘り込み構造に関して記述する。第1から第3の実施形態で記述したいずれの形態においても、
図1で示したように、金属配線5と金属配線1間の容量CBをできるだけ大きくすることが望ましい。
これを実現するには、既に記述したボトムゲートとトップゲートの間にシリコン層などの半導体層がない領域をできるだけ大きくする方法以外にも、
図5に示した構造とすることが効果的である。つまり、半導体層がない領域のボトムゲートとトップゲート間の絶縁膜の厚さを、半導体層がある領域のボトムゲート1とトップゲート5間の絶縁膜の厚さより薄くすることで、金属配線5と半導体層3間の容量CAに対するCBの大きさの比を相対的に大きくすることができるため、ボトムゲートとトップゲートの間に半導体層がない領域の面積を大きくすることと同等の効果が得られるためである。
【0066】
一般的に、シリコン等の半導体のアイランドの形成はフォトリソグラフィー工程を使って行なう。本工程で半導体をエッチングする際に、半導体層の下地の絶縁膜2(第1のゲート絶縁膜)まで深くエッチングし、その上に第2のゲート絶縁膜4を形成し、トップゲートを形成することで、本構造を容易に得ることができる。上記の半導体のエッチングの際に、ボトムゲートが露出するまで第1のゲート絶縁膜をすべてエッチングすることが望ましいが、第1のゲート絶縁膜をわずかでもエッチングするだけでも一定の効果が得られる。
【0067】
なお、第1〜第3の実施形態に記載した、フローティング状態のトップゲートを備えるボトムゲート駆動薄膜トランジスタを画素アレイに適用する方法に関して記述する。液晶表示パネルのTFT基板で一般的によく用いられる画素電極90のアレイ構造を
図14(a)に示し、本発明の薄膜トランジスタ構成を適用した画素電極90のアレイ構造を
図14(b)と
図14(c)に示した。データ線72がソース、ドレイン電極配線70と接続されている画素アレイ構造において、
図14(b)においては、トップゲート電極50の配線が、ボトムゲート電極20の配線の上に重なるように形成されている。また、
図14(c)においては、トップゲート電極50がデータ線72と重ならないように配置されている。本発明の効果を得るためには、
図14(b)の構成にしても良いが、
図14(c)の構成にすることで、データ線72の電位の影響をゲート線が受けにくくなるだけでなく、ゲート線とデータ線間の寄生容量を著しく低減することができる点では、
図14(c)の構成の方が好ましい。
【0068】
以上述べたように、低電圧用薄膜トランジスタ構造と高電圧用薄膜トランジスタ構造とを同一基板上に形成する方法は、n−チャネル型またはp−チャネル型トランジスタの一方で形成された単チャネル型デバイスであれば、N型、あるいはP型の不純物を高濃度、必要に応じて低濃度に導入すればよい。CMOSデバイスであれば、
図15、
図16に示すように、N型とP型の不純物を高濃度、必要に応じて低濃度に導入し、n−チャネル型またはp−チャネル型トランジスタの一方で低電圧用薄膜トランジスタ構造と高電圧用薄膜トランジスタ構造とを構成する場合も、n−チャネル型またはp−チャネル型トランジスタの双方で低電圧用薄膜トランジスタ構造と高電圧用薄膜トランジスタ構造とを構成する場合も、それぞれ必要に応じて作り分けることができる。
【0069】
図15および
図16に開示の構造は、基本的には
図13の構造を採用している。
図15(a)および(b)に示したn−チャネル型薄膜トランジスタにおける低電圧用薄膜トランジスタおよび高電圧用薄膜トランジスタの構造では、n型ソース領域41(n)およびn型ドレイン領域42(n)をそれぞれ備えている。そして、
図16(a)および(b)に示したp−チャネル型薄膜トランジスタにおける低電圧用薄膜トランジスタおよび高電圧用薄膜トランジスタの構造では、p型ソース領域41(p)およびp型ドレイン領域42(p)をそれぞれ備えている。その他の構成要素は
図13と同じであるので、説明は省く。
(第5の実施形態)
第5の実施形態につき
図17を用いて説明する。
図17(a)は平面図、(b)は(a)の断面線II−IIに沿った断面図、(c)は(a)の断面線III−IIIに沿った断面図をそれぞれ示す。絶縁性基板10上に半導体層3、半導体層3中にまたは半導体層に隣接して形成されたソース領域41、ドレイン領域42、半導体層を挟むように形成された第1の絶縁層2と第2の絶縁層4、第1の絶縁層2を介して半導体層の反対側(絶縁性基板10側)に形成されたゲート端子層101としての金属配線と、第2の絶縁層4を介して半導体層とは反対の側に形成されたトップゲート電極50を有し、少なくともトップゲート電極50は半導体層3と重なった領域を有し、さらに少なくとも半導体層(ソース・ドレイン領域を含む)と重ならない領域で、トップゲート電極50とゲート端子層101とが重なっている。このトランジスタを駆動するゲート信号はゲート端子層101とトップゲート電極50と重なった領域を介して供給される。ソース・ドレイン配線はソース41、ドレイン42領域にコンタクトホール(図示しない)を介して接続された導電性層(
図2の70に相当する)からなり、所望の信号/電圧が供給される。本実施例の薄膜トランジスタはトップゲート電極50により駆動され、上側のゲート絶縁膜4の厚さやチャネル長の設定により、高電圧用薄膜トランジスタまたは低電圧用薄膜トランジスタとして用いられる。半導体層をトップゲート電極とボトムゲート電極とで挟み込む構造に比べると、半導体層(ソースドレイン領域を含む)が平坦な面に形成されるため、ボトムゲート電極上に半導体層を形成する構造に比べ、レーザー結晶化や、リソグラフィといった製造プロセス上の制御が容易になる。製造上の不具合により、デバイスの一部でゲートリークが生じても、トップゲート電極50はゲート端子層101に直接接触せず絶縁層を介して分離されているため、過電流がシステム全体に流れることが防止され、致命的な不具合を回避することが可能になる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態について
図18を用いて説明する。
図18(a)は平面図、(b)は(a)の断面線IV−IVに沿った断面図、(c)は(a)の断面線V−Vに沿った断面図をそれぞれ示す。透明な絶縁性基板10上に半導体層3としてInGaZnO(インジウム、ガリウム、亜鉛それぞれの酸化物からなる透明半導体)、半導体層に隣接して形成されたソース領域41およびドレイン領域42用のITO層、半導体層を挟むように形成された第1の絶縁層2としてSiO2層と第2の絶縁層4としてSiO2層を有し、第1の絶縁層を介して半導体層の反対側に形成された金属配線のゲート端子層101に、透明導電体であるITO(インジウム、スズそれぞれの酸化物からなる導電体)と、第2の半導体層を介して半導体層とは反対の側に形成されたゲート電極層としてのトップゲート電極50に、透明導電体であるITOを有し、少なくともトップゲート電極50は半導体層3と重なった領域を有し、さらに少なくとも半導体層(ソース・ドレイン領域を含む)、と重ならない領域で、トップゲート電極50とゲート端子層101とが重なっている。上記実施形態では半導体層としてInGaZnOを例示したが他の酸化物半導体、例えばZnO、AlZnSnO、InHfZnO,ZnSnO、等の結晶性あるいは非結晶性酸化物半導体を用いることもできる。また、透明導電体としてITOを例示したがInZnOなどの透明導電体であってもよい。
【0070】
第5の実施例と同様に、このトランジスタを駆動するゲート信号(図示しない)はゲート端子層101を介して供給される。ソース・ドレイン配線はソース41、ドレイン42領域にコンタクトホール(図示しない)を介して接続された導電性層(図示しない)からなり、所望の信号/電圧が供給される。本実施例の薄膜トランジスタはトップゲート電極50により駆動され、ゲート絶縁膜4の厚さやチャネル長の設定により、高電圧用薄膜トランジスタまたは低電圧用薄膜トランジスタとして用いられる。本実施例の構造によれば、第5の実施例で説明した利点に加えて、液晶ディスプレイのような透明な構造体により光を透過させることが必要なデバイスにおいて、ゲート電極層とゲート端子層とが重なっている領域が共に透明な光透過性の材料で形成されるため、例えば、液晶ディスプレイパネルのTFT基板における画素領域にもゲート電極層とゲート端子層とが重なっている領域を形成することができ、それらの層に誘起される容量を大きくとることができ、トランジスタ動作がより安定する。上記実施例では、絶縁膜としてSiO2を用いたが、ITOに屈折率が近いSiN層を用いれば、界面での屈折率の際に起因した反射を抑制できるため、透過率を高めることも可能になる。本実施例は、液晶ディスプレイばかりでなく、有機ELディスプレイやイメージセンサなど光学的な機能を大面積に活用するデバイスに適用可能である。
【0071】
以上に述べた本発明のついては、その特徴項を以下に列挙しておく。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、低電圧で駆動する薄膜トランジスタと高電圧で駆動する薄膜トランジスタのような耐圧の異なる薄膜トランジスタを同一基板上に備える回路に利用可能である。
(付記1)
絶縁性基板上に形成された第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された第2の絶縁層と、前記絶縁性基板と前記第1の絶縁層との間に形成された第1の導電体層と、前記第2の絶縁層上に形成されたフローティング状態の第2の導電体層とを備え、前記第2の導電体層は前記第1の半導体層とオーバーラップするトップゲート電極領域と、前記第1の半導体層とオーバーラップしない領域で前記第1の導電体層とオーバーラップしている容量結合領域とを有し、前記トップゲート電極領域の電位が前記第1の導電体層の電位の近傍となるように前記容量結合領域の面積が前記トップゲート電極領域よりも広いことを特徴とする薄膜トランジスタ。
(付記2) 前記トップゲート電極領域と前記容量結合領域との面積比が8以上であることを特徴とする付記1に記載の薄膜トランジスタ。
(付記3)
前記第1の導電体層が前記第1の半導体層とオーバーラップするボトムゲート電極領域を有することを特徴とする付記1または2に記載の薄膜トランジスタ。
(付記4)
前記第1の導電体層が前記第1の半導体層と重なる領域には形成されていないことを特徴とする付記1または2に記載の薄膜トランジスタ。
(付記5)
前記絶縁性基板と前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層はそれぞれ透明な材料で構成されていることを特徴とする付記4に記載の薄膜トランジスタ。
(付記6)
付記3に記載の薄膜トランジスタを第1の薄膜トランジスタ領域として具備するとともに、前記第1の薄膜トランジスタ領域の前記絶縁性基板と同一基板上に形成された第2の薄膜トランジスタ領域を具備し、前記第2の薄膜トランジスタ領域では前記絶縁性基板上に形成された前記第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に形成された第2の半導体層と、前記第2の半導体層上に形成された前記第2の絶縁層と、前記絶縁性基板と前記第1の絶縁層との間に形成されて前記第2の半導体層とオーバーラップする第2のボトムゲート電極層を有するとともに、前記第2の絶縁層上で第2の半導体層とオーバーラップする領域には前記第1の導電体層が存在しないことを特徴とするトランジスタ回路。
(付記7)
前記第1および第2の半導体層とオーバーラップする領域において前記第2の絶縁層の厚さが前記第1の絶縁層の厚さより薄いことを特徴とする付記6に記載のトランジスタ回路。
(付記8)
前記トップゲート電極領域と前記第1の半導体層との間の前記第2の絶縁層の単位面積あたりの絶縁層容量が、前記ボトムゲート電極領域と前記第1の半導体層との間の前記第1の絶縁層の単位面積あたりの絶縁層容量より大きいことを特徴とする付記6に記載のトランジスタ回路。
(付記9)
前記第1の絶縁層の厚さが200nm以上であることを特徴とする付記6乃至8のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
(付記10)
前記第1および第2の半導体層はその中にまたは半導体層に隣接して形成されたソース領域およびドレイン領域を備えており、前記第1の薄膜トランジスタ領域では前記ボトムゲート電極領域が前記ソース領域および前記ドレイン領域の一部とオーバーラップするとともに前記トップゲート電極領域が前記ソース領域及び前記ドレイン領域とオーバーラップしていないことを特徴とする付記6乃至9のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
(付記11)
前記第1の薄膜トランジスタ領域では前記第2の導電体層のすべての領域が前記第1の
導電体層とオーバーラップしていることを特徴とする付記6乃至10のいずれか1項に記
載のトランジスタ回路。
(付記12)
前記第1の薄膜トランジスタ領域では、前記第2の導電体層が前記第1の半導体層と重ならない領域での前記第2の導電体層と前記第1の導電体層との間の絶縁膜の厚さを、前記第2の導電体層が前記第1の半導体層と重なる領域での前記トップゲート電極領域と前記ボトムゲート電極領域と間の絶縁膜の厚さより薄くしたことを特徴とする付記6乃至11のいずれか1項に記載のトランジスタ回路。
(付記13)
絶縁性基板上に半導体層、半導体層中にまたは半導体層に隣接して形成されたソース・ドレイン領域、半導体層を挟むように形成された第1の絶縁層と第2の絶縁層、第1の絶縁層を介して半導体層の反対側に形成されたゲート端子層と、第2の半導体層を介して半導体層とは反対の側に形成されたゲート電極層を有し、少なくともゲート電極層は半導体層と重なった領域を有し、さらに少なくとも半導体層と重ならない領域でゲート電極層とゲート端子層とが重なっていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
(付記14)
透明な絶縁性基板上に半導体層、半導体層中にまたは半導体層に隣接して形成されたソース・ドレイン領域、半導体層を挟むように形成された第1の絶縁層と第2の絶縁層、第1の絶縁層を介して半導体層の反対側に形成された透明なゲート端子層と、第2の半導体層を介して半導体層とは反対の側に形成された透明なゲート電極層を有し、少なくともゲート電極層は半導体層と重なった領域を有し、さらに少なくとも半導体層と重ならない領域でゲート電極層とゲート端子層とが重なっていることを特徴とする薄膜トランジスタ。