【解決手段】車両用シートSは、表皮4の端末に取り付けられた複数の取付部材50を有してシートフレームFに表皮4を連結する表皮部材FMを備える。取付部材50は、表皮4の端末の一部を収容する収容部55を有する幅広部51と、シートフレームFの縁に係止される溝部53とを有する。溝部53の壁面は、収容部55を作用点として溝部53を中心に加わる表皮4からの回転力の方向に対して交差する方向に延出しており、表皮部材FMは、複数の取付部材50によってシートフレームFを構成する枠に跨って取り付けられている。
前記取付部材は、前記表皮の端末のうち、着座者の着座によって最大の張力がかかる部位に接続されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシートにおいては、シートバックを構成する前後のフレームが表皮を取り付けるための特殊な形状でなければ、表皮の端末を固定することができなかった。
また、表皮端末を固定するために特許文献2に記載されているJ字状のフックを用いる場合には、当該フックの形状、及び支持剛性の低さにより、着座及び離座の際に表皮が弾性変形することによってフックが外れてしまうことがあった。
【0005】
また、フックが外れることが無いように、フックに荷重がかかった状態である着座状態を基準として表皮とフックとの取付位置を決定するようにすると、表皮に弛みが生じることがあり、この場合快適な座り心地を確保できなくなっていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、取付部を備える表皮部材によって表皮がシートフレームに取り付けられていることにより、シートの表皮とシートフレームとの接続状態の維持に好適なシートを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、表皮に弛みが生じることが無く、表皮が十分に張った状態とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本願発明に係るシートによれば、シートフレームと、該シートフレームに接続される表皮とを備えるシートであって、前記表皮と、前記表皮の端末に取り付けられた複数の取付部材と、を有して前記シートフレームに前記表皮を連結する表皮部材を備え、前記複数の取付部材のそれぞれは、前記表皮の端末の一部を収容する収容部を有する本体と、前記シートフレームの縁に係止される係止溝とを有し、該係止溝の壁面は、前記収容部を作用点として前記係止溝を中心に加わる前記表皮からの回転力の方向に対して交差する方向に延出しており、前記表皮部材は、前記複数の取付部材によって前記シートフレームを構成する枠に跨って取り付けられていること、により解決される。
【0009】
上記構成によれば、表皮から収容部を作用点として取付部材に加わる回転力に対して、取付部材に形成された溝の壁面にシートフレームが当接してシートフレームから抗力が加わることで、その回転を制限される。そして、表皮部材がシートフレームを構成する枠を跨るように取り付けられていることで、表皮が十分に張られた状態となり、表皮部材とシートフレームとの接続状態が好適に維持される。
【0010】
前記シートフレームには窪み又は突起が形成されており、前記取付部材は、前記本体から前記係止溝の逆側に形成されて前記窪み又は前記突起に係合する係合部を有すると好ましい。
上記構成によれば、シートフレームに形成された窪み又は突起に、本体から係止溝の逆側に形成された係合部が係合することで、取付部材の回動が抑制されて取付状態が安定し、且つ、位置決めができる。
【0011】
前記シートフレームは、着座フレームであり、該着座フレームは、クッションフレーム本体と、該クッションフレーム本体の下側から曲がって形成された下部フランジと、を有し、該下部フランジに前記係止溝が係止されて、前記取付部材が取り付けられるようにしてもよい。
上記構成によれば、着座フレームに形成された下部フランジに取付部材が取り付けられていることにより、着座フレームの下側まで表皮を張らせて取り付けることができる。
【0012】
前記シートフレームは、シートバックフレームであり、該シートバックフレームは、枠状のバックフレーム本体と、該バックフレーム本体に架け渡された板状支持部材とを備え、該板状支持部材は、一部から突出して屈曲する支持フランジを有し、該支持フランジに前記係止溝が係止されて、前記取付部材が取り付けられるようにしてもよい。
上記構成によれば、板状支持部材に形成された支持フランジに取付部材が取り付けられることにより、シートバックの後ろ側まで表皮を張らせて取り付けることができる。
【0013】
前記シートフレームは、シートバックフレームであり、該シートバックフレームは、シート幅方向に渡された回動軸によって着座フレームに回動可能に接続されており、前記回動軸の一部を覆うようにシート幅方向に延在する下部バックフレームを有し、該下部バックフレームは、一部から突出して屈曲するバックフランジを有し、該バックフランジに前記係止溝が係止して、前記取付部材が取り付けられていると好ましい。
上記構成によれば、一般に剛性の高い下部バックフレームに取付部材が取り付けられるので表皮とバックフレームとの取付状態が安定する。
【0014】
前記表皮の端末のうち前記取付部材に接する部分は、表皮中央部よりも伸縮性が低いと好ましい。
上記構成によれば、表皮の伸びを抑えて、表皮の取付部材との接続状態を安定させることができる。
【0015】
前記シートフレームは、シートバックフレームであり、エアバッグを前記シートバックフレームに取り付けるエアバッグ取付部材を備え、該エアバッグ取付部材を避けた位置で、前記取付部材が前記シートバックフレームに取り付けられていると好ましい。
上記構成によれば、取付部材とエアバッグ取付部材との干渉を抑制できる。
【0016】
シートの高さを調整可能なシートリフターを備え、前記取付部材は、前記シートリフターを避けた位置で前記着座フレームに取り付けられていると好ましい。
上記構成によれば取付部材とシートリフターとの干渉を抑制できる。
【0017】
前記取付部材は、前記表皮の端末のうち、着座者の着座によって最大の張力がかかる部位に接続されていると好ましい。
上記構成によれば、大きな張力がかかる部位を安定して支持できる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明のシートによれば、表皮が十分に張られた状態となり、表皮部材とシートフレームとの接続状態が好適に維持される。
また、本願発明のシートによれば、シートフレームに形成された窪み又は突起に、本体から係止溝の逆側に形成された係合突出部が係合することで、取付部材の回動が抑制されて取付状態が安定し、且つ、位置決めができる。
また、本願発明のシートによれば、着座フレームの下側まで表皮を張らせて取り付けることができる。
また、本願発明のシートによれば、板状支持部材に形成された支持フランジに取付部材が取り付けられていることにより、シートバックの後ろ側まで表皮を張らせて取り付けることができる。
また、本願発明のシートによれば、表皮とバックフレームとの取付状態が安定する。
また、本願発明のシートによれば、表皮の伸びを抑えて、表皮の取付部材との接続状態を安定させることができる。
また、本願発明のシートによれば、取付部材とエアバッグ取付部材との干渉を抑制できる。
更に、本願発明のシートによれば、取付部材とシートリフターとの干渉を抑制できる。
また、本願発明のシートによれば、大きな張力がかかる部位を安定して支持できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用シートSについて、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(車両用シート全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用シートSの模式的な外観図、
図2は、シートフレームFを示す斜視図である。なお、
図2に示された丸印は、後述する取付部材50が取り付けられる部位を示すものである。
本実施の形態に係るシートとしての車両用シートSは、
図1で示すように、シートバックS1、着座部S2及びヘッドレストS3より主に構成されている。
【0022】
車両用シートSの中には、
図2に示すシートフレームFが設けられている。シートフレームFは、シートバックS1のフレームであるシートバックフレーム1と、着座部S2のフレームである着座フレーム2とから構成されている。シートバックフレーム1と着座フレーム2とは、リクライニング機構3を介して連結されている。シートバックフレーム1及び着座フレーム2のそれぞれの外側にクッションパッド5及び表皮4が設けられて、シートバックS1および着座部S2が構成される。
【0023】
シートバックフレーム1は、
図1,
図2に示すように、上下方向に延在する左右のサイドフレーム10と、左右のサイドフレーム10に架け渡され下部に設けられた下部フレーム22及びメンバーフレーム22aと、サイドフレーム10の上端部を連結する上部フレーム21と、により枠状に構成されている。なお、サイドフレーム10、下部フレーム22、メンバーフレーム22a及び上部フレーム21は、特許請求の範囲に記載されたバックフレーム本体に対応する。
シートバックフレーム1を構成する左右のサイドフレーム10は、リクライニング機構3のリクライニング軸19(
図6参照)を中心に回動可能に着座フレーム2と接続されている。リクライニング軸19は、特許請求の範囲に記載された回動軸に対応する。
【0024】
サイドフレーム10は、板金をプレス加工して成形され、上方よりも下方の幅が広くなるように湾曲した略板体からなる。サイドフレーム10は、
図2に示すように、ほぼ平板状の側板11と、この側板11の前後両側のそれぞれの端部をU字状に内側に折り返してなる前縁部12a及び後縁部12bとを有している。
【0025】
シート幅方向左右の両サイドフレーム10における後縁部12bの前方の少なくとも一部には、
図7に示すように、シート内側に突出するように切り起こされた切起こし部12cが形成されている。切起こし部12cは、係合溝12dを有して、後述する取付部材50を強固に保持するためのものであり、詳細については後述する。
【0026】
両サイドフレーム10には、樹脂製の上側板ばね14と下側板ばね15とが、上下に配置され、シート幅方向に架け渡されてリベット17によって固定されている。上側板ばね14及び下側板ばね15は、一部に前後に繰り返し湾曲して形成された蛇腹部14a,15aを有し、弾性変形することにより着座者を後方から支持するものである。ここで、上側板ばね14は、特許請求の範囲に記載の板状支持部材に対応する。
【0027】
上側板ばね14におけるシート幅方向に延在する蛇腹部14aではない平板状の部位の一部には、
図10を参照して後述するように、上端部から後方突出して、下方に湾曲(屈曲)して延在するJ字状の引掛け部14bが形成されている。この引掛け部14bは、後述する取付部材50が係合することによって、表皮4をシートバックフレーム1に取り付けるためのものである。なお、引掛け部14bは、特許請求の範囲に記載の支持フランジに相当する。
【0028】
また、サイドフレーム10のシート外側の面には、
図1に示すエアバッグモジュール6が、
図8を参照して後述するエアバッグ取付部材6eによって固定されている。
【0029】
上部フレーム21には、ピラー支持部23が設けられ、ピラー支持部23には、不図示のヘッドレストフレームが設けられる。ヘッドレストフレームの外側に不図示のクッション部材を設けられることでヘッドレストS3が構成される。
【0030】
下部フレーム22は、左右のサイドフレーム10に対して、その後面に連続的に形成されて架け渡されている。
メンバーフレーム22aは、車両用シートSの剛性を高めるためのものであり、下部フレーム22の前方に配置されてサイドフレーム10に架け渡されている。メンバーフレーム22aは、
図9を参照して後述するように、断面略C字状に形成されており、後述する取付部材50によって表皮4が固定されている。
【0031】
着座フレーム2は、前側及び両サイド側を構成する上面視コの字型の前フレーム2aと、前フレーム2aの開放側である後方側に架け渡された後フレーム2bとが組み合わされて、枠状に形成されている。ここで、前フレーム2aと後フレーム2bとは、特許請求の範囲に記載のクッションフレーム本体に対応する。
図6を参照して後述するように、前フレーム2aは、断面略C字状に形成されており、後方側にC字の開放部が位置するように配置されている。同様に、後フレーム2bは、断面略C字状に形成されており、前方側にC字の開放部が位置するように配置されている。前フレーム2a及び後フレーム2bがこのように形成されていることで、取付部材50の取り付けが容易となる。
【0032】
(表皮部材の構成、及び取付部材の着座フレームの幅方向への取り付け)
次に、表皮部材FMの構成、及び取付部材50の着座フレーム2の幅方向への取り付けについて、
図3乃至
図5を参照して説明する。ここで
図3は、着座フレーム2の下内端8aに取り付けられた表皮部材FMを示す模式図、
図4は、着座フレーム2の下内端8aに取り付けられた取付部材50を示す模式図であり、
図1のIV-IV断面図、
図5は、着座フレーム2の幅方向に取り付けられる取付部材50の取付位置を示す概念図である。
【0033】
表皮部材FMは、表皮4と、表皮4に一体的に取り付けられる取付部材50とから構成され、表皮4をシートフレームFに容易かつ強固に取り付けるための部材である。
【0034】
表皮4は布状素材から成り、表皮4の端末又は表皮4に縫合された力布4aの端末に、硬質樹脂製の矩形の板状のトリムプレート37が縫合されている。
力布4aは、表皮4の端末に縫合されており、表皮4よりも伸縮性の小さい布状素材から成る。このように、伸縮性の小さい力布4aが取り付けられていると、表皮4の伸びを抑えることができ、後述する取付部材50との接続状態の安定性を高めることができる。
【0035】
なお、表皮4の端末に接続された力布4aと表皮4の中央部は、伸縮性の異なる別の材料からなるものに限定されない。例えば、力布4aを、表皮4と同一の材料で幾重にも重ねられたものとしたり、表皮4を熱硬化性材料を含む素材とし、熱を加えることによって伸縮性を小さくするようにしてもよい。
更には、取付部材50との接続状態の安定性が確保できるならば、表皮4の中央部と比較して端末側の伸縮性を小さくする必要はなく、力布4aを用いずに後述する取付部材50にトリムプレート37を介して表皮4に直接接続するようにしてもよい。
【0036】
トリムプレート37は、表皮4の端末又は表皮4に縫合された力布4aの端末の形状を保持するために用いられる。このトリムプレート37を取付部材50が収容することで、表皮4の端末又は表皮4に縫合された力布4aの端末に取付部材50が接続されることとなる。
【0037】
本実施形態では、力布4aの端末にトリムプレート37を固定しているが、本発明はここの構成に限定されるものではない。具体的にはトリムプレート37を用いずに、力布4aの端末を複数回折り返して縫成したものや、複数重に巻回して縫成したもの、複数重に巻回して縫成したものを一方向に押し潰したものを取付部材50の後述する収容部55に挿入してもよい。
【0038】
取付部材50は、硬質樹脂から一体成形されてなり、
図3に示すように、断面略U字状の外面形状を有する本体としての幅広部51と、シートフレームFの縁に掛け止めされる掛け止め部52と、シートフレームFの縁に覆い被さるように設けられた延出ガイド部54とを備えている。
【0039】
なお、取付部材50がシートフレームFの各部位に取り付けられる例について後述するが、ここでは、
図3及び
図4を参照して車両用シートSの幅方向両側のおける着座フレーム2の下内端8aに取付部材50が取り付けられる例を説明する。なお、この例での取付部材50の説明において、前後、内外及び上下方向は、着座フレーム2の下内端8aに取り付けた状態における方向である。
【0040】
取付部材50は、着座フレーム2の断面略C字状の前フレーム2aの下内端8aに取り付けられており、下内端8aに沿う方向に略同じ断面形状を備えている。
掛け止め部52は、下内端8aに掛け止めされる部位である。掛け止め部52には、幅広部51から連続する溝部53が形成されている。溝部53は、特許請求の範囲に記載の係止溝に相当し、幅広部51と、幅広部51の根本の部分から分岐する延出ガイド部54との間の空間からなる。溝部53は、幅広部51における着座フレーム2の下内端8a側に取付部材50を掛け止めるためのものである。溝部53が、下内端8a先端の返し部8nを挟持することによって、掛け止め部52が下内端8aに掛け止めされることとなる。
【0041】
具体的には、溝部53の壁面は、取付部材50の中心に対して接線方向に延在し、換言すると、後述する収容部55を作用点として溝部53を中心に加わる表皮4からの回転力の方向に対して交差する方向に延出している。このように、溝部53の壁面が延出しており、返し部8nを溝部53が挟持していることで、表皮4から引っ張り方向の荷重が加わったとしても、溝部53の壁面が返し部8nに当接することによって、取付部材50の抜け落ちが回避される。
【0042】
幅広部51は、トリムプレート37を内部に保持して係止する収容部55と、第一の壁部59,第二の壁部60とを備えている。第一の壁部59と第二の壁部60とは、その間に、収容部55から引き出される力布4aを通すスリット69を形成している。
【0043】
収容部55は、その内部にトリムプレート37を係止可能な大きさの空間からなり、その外縁が断面略C字状を成し、前端及び後端が開放されて貫通孔として前端から後端まで形成されている。
【0044】
第一の壁部59は掛け止め部52から延出しており、第二の壁部60は幅広部51から延出している。第一の壁部59と第二の壁部60とは、相互に逆方向に向かってずれて延出し、収容部55を挟んで掛け止め部52の逆側の壁を構成している。
【0045】
第二の壁部60は、延出部65と係合突起66を備えている。
延出部65は、延出するにしたがって第一の壁部59との間隔が広がるように延出して形成されている。このように形成されていることで、延出部65と第一の壁部59との間に、延出部65から離れるに従って大きくなる隙間が生じ、次に説明する係合突起66を係合溝8dに係止させための延出部65の弾性変形が可能となる。
【0046】
係合突起66は、特許請求の範囲に記載の係合部に対応し、第二の壁部60の端部に形成され、断面三角形状に形成されて収容部55の貫通方向と同じ方向に延在する突起である。着座フレーム2における係合突起66に隣接する位置には、シート幅方向外側から内側に切り起こされた切起こし部8cが形成されている。切起こし部8cの係合突起66に対向する位置には、係合溝8dが形成されている。係合突起66が着座フレーム2の係合溝8dに係合することにより、取付部材50の強固な掛け止めが実現できることとなる。
なお、上記構成とは逆に、第二の壁部60の端部に溝等の窪みが形成され、切起こし部8cに当該窪みに嵌る突起が形成されるものであってもよい。
【0047】
延出ガイド部54は、幅広部51における掛け止め部52の逆側にあり、力布4aの延長側へ延出し、着座フレーム2における下内端8aの下側の面に覆い被さるように設けられている。このように、延出ガイド部54は、下内端8aに覆い被さるように配置されており、収容部55から下内端8aを越えて、着座フレーム2の外側に力布4aを案内している。
【0048】
溝部53は、返し部8nの先端に対向する位置に形成されており、返し部8nの表面及び裏面に対向して沿うようにその内側面が形成されている。
延出ガイド部54は、
図3に示すように、返し部8nの外面を覆うように配置されることとなる。
【0049】
取付部材50は、作業者に押し込まれることによって、着座フレーム2における両側の下内端8aの内側に幅広部51が収まり、掛け止め部52の溝部53が返し部8nに挿入される。このとき、延出部65が切起こし部8cに当接して弾性変形して、その復元力により係合突起66が係合溝8dに嵌ることとなる。そして、延出ガイド部54が返し部8nのシート幅方向内側を覆うように配置されることとなる。
【0050】
このように、係合突起66を切起こし部8cに係合させる構成は、シートフレームFに高い支持剛性で取付部材50を取り付けることができるため好適である。しかし、必要な支持剛性の確保が可能であれば、切起こし部8cの係合溝8dに係合させずに返し部8nのみに係止させるようにしてもよい。特にこの場合には、返し部8nがあれば、取付部材50を取り付けることが可能となり汎用性が高くなる。
【0051】
更に、表皮部材FMとシートフレームFの取り付け部位との位置関係が、常に表皮4に張力を生じさせるような関係であれば、返し部8nは必ずしも
図3に示すように湾曲して形成されている必要はなく、直線的に形成されていてもよい。具体的には、複数の取付部材50を取り付けることによって表皮4に生じる張力は、取付部材50を回転させる力として機能する。この取付部材50を回転させる力によって、溝部53に収まる部位が溝部53を構成する壁に当接して摩擦が生じることで、取付部材50が外れることが防止される。つまり、溝部53に収まる厚さ及び長さの部位がシートフレームFにあれば、取付部材50を取り付けることが可能となるため汎用性が高い。
【0052】
上記のように構成された取付部材50は、着座フレーム2における両側の下内端8aに取り付けられることによって、取付部材50に力布4aを介して一体的に縫合された表皮4を幅方向に張ることができる。また、取付部材50は、着座フレーム2の下内端8aの内側に配設されることによって露出せず、不意に足等あたって取付部材50が着座フレーム2から抜け落ちることを防ぎ、且つ、美観を損ねることがない。
特に、取付部材50は、着座フレーム2の両側において、前後方向において略同じ位置に、略同数だけ配置されていると好ましい。このようにすることで、表皮4にかかる張力の偏りを防ぎ、着座部S2における表皮4のシート幅方向の皺・弛みの発生を抑制することができる。
【0053】
特に、取付部材50は、着座フレーム2における両側の下内端8aにおけるシートリフター70を避けた位置に取り付けられると望ましい。ここで、シートリフター70は、着座フレーム2の高さを調整可能にする装置であり、左右の動作をリンクさせるため、左右に架け渡されたシャフト70aを備える。
このように、取付部材50は、シートリフター70を避けた位置に取り付けられることで、取付部材50の取り付けの際、又はシートリフター70の動作の際に相互に干渉することを回避することができる。
【0054】
(取付部材の着座フレームの前後方向への取り付け)
次に、取付部材50の着座フレーム2の前後方向への取り付けについて、
図6を参照して説明する。ここで
図6は、着座フレーム2の前後に取り付けられた取付部材50を示す概念図であり、
図1のVI-VI断面図である。
【0055】
着座フレーム2を構成する前フレーム2a及び後フレーム2bは、断面略C字状、及びこれに略前後対称な形状である断面略C字状を有し、対向する側にC字の開放側が位置するように配設されている。特に、前フレーム2aのうちシート幅方向に延びる部位の下方の部位には、後ろ側に延出した先で上方向に延びる返し部2cが形成されている。同様に、後フレーム2bの下方の部位には前側に延出した先で上方向に延びる返し部2dが形成されている。この返し部2c,2dは、特許請求の範囲に記載の下部フランジに対応する。
【0056】
取付部材50は、前フレーム2a及び後フレーム2bそれぞれの断面略C字の内側に幅広部51が収まり、掛け止め部52の溝部53が返し部2c,2dに嵌り、延出ガイド部54が返し部2c,2dの内側を覆うように、着座フレーム2に取り付けられている。
【0057】
このように、取付部材50が着座フレーム2を構成する前フレーム2a及び後フレーム2bに取り付けられることによって、取付部材50に一体的に縫合された表皮4を前後方向に張ることができる。また、取付部材50は、前フレーム2a及び後フレーム2bに配設されることによって露出せず、不意に足等あたって取付部材50が着座フレーム2から抜け落ちることを防ぎ、且つ、美観を損ねることがない。
特に、取付部材50は、着座フレーム2の前後において、シート幅方向の略同じ位置に、略同数だけ配置されていると好ましい。このようにすることで、表皮4にかかる張力の偏りを防ぎ、着座部S2における表皮4の前後方向の皺・弛みの発生を抑制することができる。
【0058】
(取付部材のシートバックフレームの幅方向への取り付け)
次に、取付部材50によるシートバックフレーム1のシート幅方向へ表皮4の取り付けについて、
図7及び
図8を参照して説明する。ここで
図7は、シートバックフレーム1の幅方向の一側に取り付けられた取付部材50を示す概念図であり、
図1のVII-VII断面図、
図8は、シートバックフレーム1の幅方向の一側に取り付けられる取付部材50の取付位置を示す概念図である。
【0059】
図7に示すように、取付部材50が取り付けられるシートバックフレーム1の左右の両サイドフレーム10の後ろ側の縁には後縁部12bが形成されている。また、上記のように、サイドフレーム10における後縁部12bの前方の所定距離に、シート幅方向外側から内側に切り起こされた切起こし部12cが形成されている。
後縁部12bは、断面略C字状に湾曲して形成された返し部12nを有する。具体的には、返し部12nは、シート幅方向内側に向かって延出して前方に向かって湾曲(屈曲)している。
【0060】
取付部材50は、作業者に押し込まれることによって、後縁部12bの断面略C字の内側に幅広部51が収まり、掛け止め部52の溝部53に返し部12nが挿入される。このとき、延出部65が切起こし部12cに当接して弾性変形して、その復元力により係合突起66が係合溝12dに嵌ることとなる。そして、取付部材50は、延出ガイド部54が返し部12nのシート幅方向内側を覆うように、両サイドフレーム10に取り付けられている。
【0061】
このように、シートバックフレーム1における両サイドフレーム10に取り付けられることによって、取付部材50に一体的に縫合された表皮4を、シート幅方向に張ることができる。
また、取付部材50は、その大部分である幅広部51が後縁部12bの内側に収まっているため、着座者に違和感が生じることが抑制されている。
特に、取付部材50は、シートバックフレーム1の上下方向の略同じ位置に、略同数だけ配置されていると好ましい。このようにすることで、表皮4にかかる張力の偏りを防ぎ、シートバックS1における表皮4のシート幅方向の皺・弛みの発生を抑制することができる。
【0062】
また、取付部材50は、
図8に示すエアバッグモジュール6をサイドフレーム10に固定するためのエアバッグ取付部材6eの近傍を避けた位置(
図8に示すハッチング部)で、サイドフレーム10に取り付けられていると好適である。このように取付部材50が取り付けられていることで、エアバッグ取付部材6eの取り付け、取り外し作業の際に、誤って取付部材50がサイドフレーム10から外れることを抑制することができる。
【0063】
(取付部材のシートバックフレームの上下方向への取り付け)
次に、取付部材50による表皮4のシートバックフレーム1の上下方向への取り付けについて、
図9及び
図10を参照して説明する。ここで
図9は、シートバックフレーム1の下部に取り付けられた取付部材50を示す概念図、
図10は、シートバックフレーム1の上部に取り付けられた取付部材50を示す概念図であり、
図1のX-X断面図である。
【0064】
図9に示すように、取付部材50が取り付けられるシートバックフレーム1の下部には、メンバーフレーム22aが左右のサイドフレーム10に架け渡されている。
メンバーフレーム22aは、断面略C字状に形成され、リクライニング軸19を覆い、後方に開放側が向くように配設されている。
断面略C字状のメンバーフレーム22aの下部に、後方に延出して上方に湾曲(屈曲)して形成された返し部22nが形成されている。ここで、メンバーフレーム22aは、特許請求の範囲に記載された下部バックフレームに対応し、返し部22nは、特許請求の範囲に記載されたバックフランジに対応する。
【0065】
取付部材50は、メンバーフレーム22aの断面略C字の内側に幅広部51が収まり、掛け止め部52の溝部53が返し部22nに嵌り、延出ガイド部54が返し部22nのシート後方側を覆うように、メンバーフレーム22aに取り付けられている。
【0066】
図10に示すように、取付部材50が取り付けられるシートバックフレーム1の上部には、上側板ばね14が左右のサイドフレーム10に架け渡されている。
上側板ばね14における蛇腹部14a以外の板状部位の一部は、上側から後方に延出して下方に湾曲して形成された引掛け部14bを有して、断面倒立J字状に形成されている。
【0067】
取付部材50は、上側板ばね14の断面倒立J字状の内側に幅広部51が収まり、掛け止め部52の溝部53が引掛け部14bに嵌り、延出ガイド部54が引掛け部14bのシート後方側を覆うように、上側板ばね14に取り付けられている。
【0068】
上記のように、取付部材50によって、シートバックフレーム1を構成するメンバーフレーム22aに表皮4の下側端末を固定され、上側板ばね14に表皮4に縫合された力布4aの端末を固定されている。このように取付部材50によって、取付部材50に一体的に縫合された表皮4を、シートバックフレーム1におけるシート上下方向に張ることができる。
【0069】
なお、上側板ばね14に取り付けられた取付部材50が力布4aを介して表皮4に接続された構成とし、メンバーフレーム22aに取り付けられた取付部材50が表皮4に直接接続された構成としたがこれに限定されない。双方の取付部材50が、力布4aに接続された構成にしてもよく、直接表皮4に接続された構成にしてもよい。
【0070】
また、シートバックフレーム1の下部に取り付けられた取付部材50においては、メンバーフレーム22aの内側及び後ろ側に取り付けられているため、前側にいる着座者に違和感を付与することを回避できる。
同様に、シートバックフレーム1の上部に取り付けられた取付部材50においては、上側板ばね14の後ろ側に取り付けられているため、前側にいる着座者に違和感を付与することを回避できる。
【0071】
特に、取付部材50は、シートバックフレーム1の上下において、幅方向の略同じ位置に、略同数だけ配置されていると好ましい。このようにすることで、表皮4にかかる張力の偏りを防ぎ、シートバックS1における表皮4のシート上下方向の皺・弛みの発生を抑制することができる。
【0072】
また、取付部材50は、シートバックS1及び着座部S2のそれぞれの表皮4における着座者から受ける最大の張力がかかる部位において接続されていると好ましい。例えば、SAE規格に準拠したダミーに基づいて想定される着座者の体型を考慮して、シートバックS1においては、着座者の腰部が接触する部位の上下左右の張力線上に取付部材50が接続されていると好適である。また、着座部S2においては、後側の部位、特に、着座者の臀部が接触する部位の上下左右の張力線上に取付部材50が接続されていると好適である。
【0073】
(変形例)
変形例に係る取付部材80は、
図11に示すように、上記実施形態に係る取付部材50の係合突起66を3つの壁によって覆うように突出する補助壁部81を備えることを主な特徴とする。
具体的には、補助壁部81は、延出部65の両側面及び端面から所定の厚みをもって、係合突起66よりも外側に延在している。補助壁部81は、取付部材80の外方からみて、開放側が延出部65の基端側であるコの字形に延出部65から延在している。
このように取付部材80は、補助壁部81を備えることで、シートフレームFに取付部材80を取り付ける際に、補助壁部81を押すようにして延出部65を変形させやすくなるので作業性が良好となる。
【0074】
例えば、補助壁部81の壁間隔が
図3に示す切起こし部8c,12cの幅よりも大きく、切起こし部8c,12cから補助壁部81が突出する大きさであれば好適である。このようにすれば、切起こし部8c,12cによって延出部65が隠れることで操作が困難となることなく、補助壁部81を押して延出部65を容易に変形させることができる。このため、補助壁部81によって、係合突起66を係合溝8d,12dに容易に係合させることが可能となる。
【0075】
上記実施形態に係るシートフレームFの形状によれば、シートフレームFに取り付けられて決定される取付部材50の配置によって、取付部材50が露出しないことで美観が保たれる。また、着座者側に取付部材50が配置されないため着座者に違和感を付与しないため好適である。
【0076】
本実施形態では、本発明に係るシートに関して説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0077】
例えば、上記実施形態においては、本発明に係るシートの例として車両に用いられるシートについて説明したが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、デスク用の椅子に適用してもよい。
また上記のように、本実施形態に係る取付部材50によれば、掛け止め部52が返し部8nに係止し、更に、係合突起66が溝部53に係合することで、強固な取付状態を維持することが可能である。このため、表皮4がウレタン同等の物性を有する弾性材料からなり、フレームとの取付部における変位が大きいために強固な取付状態を必要とするシートにも好適である。また、クッションパッド5を備えない薄いシートにも適用可能である。更に、チャイルドシートに適用するようにしてもよい。
【0078】
上記実施形態においては、シートバック又は着座フレームの縁部分、メンバーフレーム又は上側板ばねに、表皮部材の取付部材を取り付ける例について説明したが、本願発明はこの構成に限定されない。つまり、シートバック又は着座フレームに、表皮を覆って、その表皮の対応する辺の端末部を取付部材によって取り付けるようにできればよく、例えば、上側板ばねではなく、上部フレームに取り付けるようにしてもよい。同様に、メンバーフレームではなく、下部フレームに取り付けるようにしてもよい。