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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-181775(P2015-181775A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】空気浄化装置及びフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20150925BHJP
【FI】
   A61L9/01 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-61752(P2014-61752)
(22)【出願日】2014年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】591108190
【氏名又は名称】株式会社セフテック
(71)【出願人】
【識別番号】391028122
【氏名又は名称】株式会社ガステック
(74)【代理人】
【識別番号】100103757
【弁理士】
【氏名又は名称】秋田 修
(72)【発明者】
【氏名】早川 義久
【テーマコード(参考)】
4C080
【Fターム(参考)】
4C080AA05
4C080AA07
4C080BB02
4C080CC02
4C080CC12
4C080HH05
4C080JJ04
4C080KK08
4C080LL03
4C080MM02
4C080MM05
4C080QQ11
4C080QQ17
4C080QQ20
(57)【要約】
【課題】 ホルマリン等の有害物質を酸化して分解除去する濾過剤が充填されたフィルタの交換時期を、未熟練者でも随時容易且つ正確に判断できる空気浄化装置、及び、当該空気浄化装置に用いるフィルタを提供する。
【解決手段】 空気浄化装置の、少なくともフィルタチェンバ4の内壁面と対向する側壁の一部に第1の透明部9Aが設けられたフィルタ7のフィルタケーシング9内に、ホルマリン等の有害物質を酸化して分解除去する酸化剤と当該酸化剤中の酸化生成物の増加に伴って色が変化する反応指示薬を併せた濾過剤が充填され、前記フィルタチェンバ4の少なくとも一部に、前記第1の透明部9Aを通してフィルタケーシング9内の濾過剤を当該フィルタチェンバ4の外側から観察可能な第2の透明部19Aが設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタチェンバ内に、ホルマリン等の有害物質を酸化して分解除去する濾過剤を用いたフィルタを少なくとも1つ組み込んで、送風手段を用いてフィルタチェンバ内に導入された外部の空気を、前記フィルタを通過させて浄化するようにした空気浄化装置であって、
前記フィルタは、少なくとも、フィルタチェンバの内壁面と対向して配置される側壁の一部に第1の透明部を有するフィルタケーシングと、その内部に充填された、当該フィルタケーシングを通過する空気に含まれる有害物質を酸化して分解する酸化剤と当該酸化剤中の酸化生成物の増加に伴って色が変化する反応指示薬を併せた濾過剤から構成され、
前記フィルタチェンバの少なくとも一部に、前記第1の透明部を通してフィルタケーシング内の濾過剤中の反応指示薬の色を当該フィルタチェンバの外側から観察可能な第2の透明部が設けられていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
フィルタチェンバ外面の第2の透明部の近傍位置または第2の透明部に、有害物質の酸化生成物の増加に伴って濾過剤中に空気流通方向に進行する反応指示薬の変色域の境界位置が、フィルタ交換が必要な位置に達したか否かを知らせる指標を記した表示部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
空気浄化装置のフィルタチェンバに組み込まれるフィルタケーシングと、
前記フィルタケーシング内に充填される、当該フィルタケーシングを通過する空気に含まれるホルマリン等の有害物質を酸化して分解する酸化剤と当該酸化剤中の酸化生成物の増加に伴って色が変化する反応指示薬を併せた濾過剤からなり、
前記フィルタケーシングは、その少なくとも一部に、濾過剤中の反応指示薬の色を外部から観察可能な透明部を有していることを特徴とするフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルマリン等の有害物質を含む空気を浄化するフィルタの交換時期を、容易に確認できるようにした空気浄化装置に関し、また、前記空気浄化装置に組み込まれるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
医学部や歯学部等の解剖実習においては、腐敗や細菌の繁殖を防ぐためにホルマリンを注入し、エタノールに浸漬した被剖検体を解剖台上で解剖している。解剖実習は長期間に亘って行われるため、実習を中断するときは、殺菌消毒と乾燥防止の目的で被剖検体にエタノールを噴霧し、これをさらにエタノールを噴霧した布で覆った後、周囲にホルマリン等の人体に有害な物質が拡散しないように、解剖台上の被剖検体に、特許文献1に記載されているような、ガスバリア性を有するカバーを被せて、次回の解剖実習再開時まで保管している。
【0003】
そして、次回の解剖実習の再開する際に、カバーに設けられている排気口と外気取込口の蓋体を外して前記排気口を空気浄化装置に排気ホースで連結し、被剖検体やこれを覆っている布から発散したホルマリンやエタノールを含んだカバー内の空気を空気浄化装置に吸引して、カバー内の空気が外気取込口から流入してくる清浄な外気と置換された後に、カバーを取り外して実習を再開している。
【0004】
空気浄化装置によって吸引された空気は、この中に含まれるホルマリンやエタノールが当該空気浄化装置のフィルタチェンバ内に組み込まれているフィルタによって除去されて清浄化された後、解剖室内に放出される。
【0005】
この際、分子量の大きいエタノールは、活性炭を濾過剤に用いたフィルタに物理的に吸着されて濾過されるが、分子量の小さいホルマリンは当該フィルタには捕捉されずに透過してしまうため、過マンガン酸カリウム等の酸化剤を濾過剤に用いたフィルタを前記活性炭フィルタの後方に設けて、ここでホルマリンを酸化分解して無毒化している。
【0006】
ホルマリンを分解除去するフィルタの濾過剤は、ホルマリンを酸化分解するにしたがってその濾過能力が次第に低下していくため、フィルタ後方から室内に漏れ出すホルマリンの濃度が所定の許容レベルに達する前にフィルタを新しいものと交換する必要がある。
【0007】
一方、フィルタの交換時期を報知するために、特許文献2で提案されている発明においては、空気浄化装置の空気流路に複数のフィルタを前後に配列して、前方のフィルタと後方のフィルタ間の隙間に、前方のフィルタを通過した空気の汚れを検出する汚れ検出センサを設け、前方のフィルタを通過した空気の汚れが所定の閾値に達すると、報知信号が発せられるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4822470号公報
【特許文献2】特開2011−72962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されている発明においては、汚れ検出センサで検出される汚れの閾値は、後方のフィルタから外部に放出される空気中に含まれる有害物質の濃度の許容レベルに基づく推定値が用いられているため、実際にフィルタ交換が必要となる時期が正確に把握できなかった。
【0010】
そのため、前記汚れの閾値は、安全性を考慮して実際にフィルタ交換が必要となる値より低く推定されることにより、必要以上に早期にフィルタが交換されてしまう可能性があった。
【0011】
また、フィルタの交換時期を判断する方法として、フィルタ後方の空気流路内にホルマリンの反応指示薬を封入した検知管を差し込んで、フィルタを通過した空気に含まれるホルマリンの濃度を測定する方法もあるが、この方法では連続的な測定ができず、また測定する空気の中にエタノールが含まれていると、反応指示薬がこれに反応してホルマリンの濃度が正確に測定できなくなる問題があった。また、この測定には専門的な知識や熟練を必要とし、費用がかかる問題もあった。
【0012】
そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題点を解消し、ホルマリン等の有害物質を酸化して分解除去する濾過剤が充填されたフィルタの交換時期を、未熟練者でも随時容易且つ正確に判断できる空気浄化装置、及び、当該空気浄化装置に用いるフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的のために提供される本発明の空気浄化装置は、フィルタチェンバ内に、ホルマリン等の有害物質を酸化して分解除去する濾過剤を用いたフィルタを少なくとも1つ組み込んで、送風手段を用いてフィルタチェンバ内に導入された外部の空気を、前記フィルタを通過させて浄化するようにした空気浄化装置であって、前記フィルタは、少なくとも、フィルタチェンバの内壁面と対向して配置される側壁の一部に第1の透明部を有するフィルタケーシングと、その内部に充填された、当該フィルタケーシングを通過する空気に含まれる有害物質を酸化して分解する酸化剤と当該酸化剤中の酸化生成物の増加に伴って色が変化する反応指示薬を併せた濾過剤から構成され、前記フィルタチェンバの少なくとも一部に、前記第1の透明部を通してフィルタケーシング内の濾過剤中の反応指示薬の色を当該フィルタチェンバの外側から観察可能な第2の透明部が設けられていることを特徴としている。
【0014】
本発明の空気浄化装置においては、フィルタチェンバ外面の第2の透明部の近傍位置または第2の透明部に、有害物質の酸化生成物の増加に伴って濾過剤中に空気流通方向に進行する反応指示薬の変色域の境界位置が、フィルタ交換が必要な位置に達したか否かを知らせる指標を記した表示部を設けてあることが望ましい。
【0015】
また、前記目的のために提供される本発明のフィルタは、空気浄化装置のフィルタチェンバに組み込まれるフィルタケーシングと、前記フィルタケーシング内に充填される、当該フィルタケーシングを通過する空気に含まれるホルマリン等の有害物質を酸化して分解する酸化剤と当該酸化剤中の酸化生成物の増加に伴って色が変化する反応指示薬を併せた濾過剤からなり、 前記フィルタケーシングは、その少なくとも一部に、濾過剤中の反応指示薬の色を外部から観察可能な透明部を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された発明に係る空気浄化装置によれば、フィルタ内のホルマリン等の有害物質を酸化して分解除去する濾過剤の劣化度合を、装置外部から目視によって、随時確認することできるため、フィルタ交換時期を知らせるためのホルマリン検出センサや報知装置等を空気浄化装置に設ける必要がない。
【0017】
また、本発明においては、ホルマリン検出センサ等を用いずにフィルタ交換時期を知ることができるため、ホルマリン検出センサ等の故障によってフィルタ交換時期のタイミングを逸する虞が無く、高い信頼性と安全性を確保することができる。
【0018】
また、請求項2に記載された発明に係る空気浄化装置によれば、前述した請求項1の発明がもたらす効果に加えてさらに、濾過剤に含まれる反応指示薬等の変色状況を見ただけではフィルタの交換時期の判断が困難な未熟練者でも、表示部に記された指標を参照することによって、フィルタ交換の時期を的確に把握することができる。
【0019】
また、請求項3に記載された発明に係るフィルタによれば、そのフィルタの濾過剤に含まれる反応指示薬の変色状況を透明部を通してフィルタケーシングの外部から観察することができるため、フィルタ内の濾過剤の劣化度合を容易に確認することができる。
【0020】
また、透明部を通して観察されるフィルタケーシング内の濾過剤に含まれる反応指示薬の変色状況から、新しいフィルタと使用済みのフィルタの識別が容易にできるため、誤って使用済みのフィルタを再び使用して、ホルマリン等の有害物質で汚染された空気を空気浄化装置から室内に流出させてしまう事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の空気浄化装置を解剖台の被剖検体カバーに連結した状態を示す側面図である。
図2】本発明の空気浄化装置に設けられているフィルタチェンバの縦断面図である。
図3】本発明の空気浄化装置に設けられているフィルタチェンバの水平断面図である。
図4図2のA−A断面を示すフィルタチェンバの横断面図である。
図5】本発明の空気浄化装置に用いられるホルマリン除去用フィルタの斜視図である。
図6】本発明の空気浄化装置に用いられるホルマリン除去用フィルタの透明部近傍の水平断面図である。
図7】本発明の空気浄化装置に設けられている透明部を有する蓋体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の空気浄化装置を解剖台の被剖検体カバーに連結した状態を示す側面図であって、同図に示す空気浄化装置1は、解剖実習室内に置かれた解剖台Aの近傍に設置して使用される。
【0023】
前記解剖台Aには、 前回の解剖実習が終了してから次回の解剖実習が開始されるまでの間、ホルマリンとエタノールを用いて処理されている解剖実習用の被剖検体Bが載置されている。この間、解剖が中断されている被剖検体Bから人体に有害なホルマリンや高濃度のエタノールが解剖実習室内に流出・拡散することを防ぐために、前記被剖検体Bには、ガスバリア性を有する柔軟な透明樹脂シート製の被剖検体カバーCが被せてある。
【0024】
そして、解剖実習を再開する際には、解剖台Aから被剖検体カバーCを取り外す前に、前記被剖検体カバーCの一方の端面に設けられて常時は蓋で密閉されている排気口と、空気浄化装置1との間を、前記蓋を取り外して排気ホースDで接続する。
【0025】
また、被剖検体カバーCの反対側の端面には、これも図示しないが、常時は蓋で密閉されている外気取込口が設けられており、前記排気口に排気ホースDを接続する際に、この蓋を外して被剖検体カバーCの内部に前記外気取込口から外気の流入が可能にしておく。
【0026】
この状態で、空気浄化装置1に内蔵されている送風手段を動作させて、被剖検体カバーCの内側に充満している有害物質を含んだ空気を、排気ホースDを介して空気浄化装置1の内部へ吸引する。
【0027】
空気浄化装置1に取り込まれたホルマリンやエタノールを含んだ空気は、その内部に組み込まれているフィルタを通過する際にこれらの有害物質が除去され、清浄化された空気が解剖実習室内に放出される。
【0028】
こうして、被剖検体カバーC内の空気は、外気取込口から流入した外部の清浄な空気で置換される。被倍検体カバーC内の空気が完全に置換された後、被剖検体カバーCを取り外して実習を再開する。
【0029】
本実施形態においては、空気浄化装置1は、機枠2の底部に設けられた複数のキャスタ車輪3によって解剖実習室の床面Eの上を所望の位置へ移動可能な構造になっている。機枠2の外側は、ステンレス製のパネルで覆われていて、前記パネルには、操作スイッチや内部の点検用の蓋等が設けられている。また、図示していないが、機枠2の内部にはブロワが送風手段として搭載されている。
【0030】
また、機枠2の上にはフィルタチェンバ4が設けられている。図2はフィルタチェンバ4の縦断面図、図3はその水平断面図、図4は、図2のA−A断面を示す横断面図であって、これらの図に示すように、フィルタチェンバ4は箱状に製作されており、前側の端面に排気ホースDに連結される吸気口5が設けられている。また、図示は省略しているが、フィルタチェンバ4の後端側の下面には、機枠2内のブロワに連通する出口が設けられている。
【0031】
フィルタチェンバ4の内部には、吸気口5から前記出口に至る空気流路が形成されていて、この空気流路内の前段にはその前後方向に並べて同一仕様の4つの活性炭フィルタ6が隣接して配置されており、また後段には、同一仕様の4つのホルマリン除去用フィルタ7が隣接して配置されている。
【0032】
これらの活性炭フィルタ6とホルマリン除去用フィルタ7はそれぞれ、外形寸法が同一サイズに統一されている、周囲が矩形枠状のフィルタケーシング8、9を有しており、活性炭フィルタ6のフィルタケーシング8内には活性炭が濾過剤として充填されている。
【0033】
また、ホルマリン除去用フィルタ7のケーシング9内には、過マンガン酸カリウムの粒子表面に反応指示薬の微粒子をコーティングした濾過剤が充填されている。この反応指示薬は、濾過剤中の過マンガン酸カリウムがホルマリンと反応し、酸化生成物が増加してPH値が変化すると色が変化するものが用いられている。
【0034】
フィルタチェンバ4の内側の上面と下面、及び、奥側の側面には、活性炭フィルタ6のフィルタケーシング8の上面と下面、及び奥側の側面にそれぞれ対向してこれらを案内支持するフィルタ保持部材10a、10b、10cが、図4に示すように、前後方向に見て略コ字状に設けられている。
【0035】
また、図3及び図4に示すように、フィルタチェンバ4の手前側の側壁には、活性炭フィルタ6を交換時に出し入れするための矩形状のフィルタ交換用開口部11が形成されている。
【0036】
前記フィルタ交換用開口部11は、常時は開閉ハンドル12によって取り外し可能な蓋体13で密閉されている。また、図2及び図3に示すように、フィルタチェンバ4の内側には、これらのフィルタ保持部材10a、10b、10cの後端面に前端面を当接させた状態で、フィルタチェンバ4の前後方向から見て矩形枠状のフィルタ位置決め部材14が固定されている。
【0037】
前記フィルタ位置決め部材14は、フィルタチェンバ4内でフィルタ保持部材10a、10b、10cに保持されている4つの活性炭フィルタ6の列最後尾のもののフィルタケーシング8の後端面を、フィルタチェンバ4の前後方向の所定位置に位置決めしている。
【0038】
また、それぞれの活性炭フィルタ6のフィルタケーシング8の後端面の周縁部には、全周に亘ってゴム素材からなる帯状のシール部材Sが貼り付けられていて、これらの活性炭フィルタ6相互のフィルタケーシング8間、ならびに、最後尾の活性炭フィルタ6のフィルタケーシング8とフィルタ位置決め部材14間をそれぞれ密封している。
【0039】
なお、図示を省略しているが、フィルタチャンバ4の内側には、4つの活性炭フィルタ6の列前端のフィルタケーシング8の前端面を後方に押圧して、これらの活性炭フィルタ6を前記フィルタ位置決め部材14との間で挟み込んで固定しておくカムを有するカム機構が設けられている。
【0040】
前記カム機構は、これらの活性炭フィルタ6を交換する際に、フィルタチェンバ4の外部に配置されている図示しない操作ハンドルを回すことにより、フィルタケーシング8の押圧を解除し、フィルタ交換用開口部11から使用済みの活性炭フィルタ6を取り出して新たなものと交換できるように構成されている。
【0041】
また、後段の4つのホルマリン除去用フィルタ7は、前述したフィルタ保持部材10a、10b、10cと同様に、フィルタチェンバ4の前後方向に見て略コ字状に設けられたフィルタ保持部材15a、15b、15cによって保持されているとともに、列最後尾のホルマリン除去用フィルタ7のフィルタケーシング9が、フィルタ位置決め部材16によって位置決めされている。
【0042】
なお、ここでも図示は省略しているが、フィルタチャンバ4の内側には、前述した活性炭フィルタ6の場合と同様に、これらのホルマリン除去用フィルタ7の列前端のフィルタケーシング9の前端面を後方に押圧してこれらのホルマリン除去用フィルタ7を前記フィルタ位置決め部材16との間で挟み込んで固定し、フィルタ交換時に外部の操作ハンドルを回して押圧を解除可能なカム機構が設けられている。
【0043】
また、フィルタチェンバ4の手前側の側壁の、前記フィルタ交換用開口部11の後方には、ホルマリン除去用フィルタ7を交換時に出し入れするための矩形状のフィルタ交換用開口部17が形成されている。
【0044】
このフィルタ交換用開口部17は、前述したフィルタ交換用開口部11と同様に、常時は開閉ハンドル18によって取り外し可能な蓋体19で密閉されている。この蓋体19には、その内側に配置される4つのホルマリン除去用フィルタ7のフィルタケーシング9の手前側の各側面に設けられているそれぞれの透明部9A(第1の透明部)と対向するように、透明なアクリル樹脂板からなる透明部19A(第2の透明部)が設けられている。
【0045】
図5に示すように、前記透明部9Aはフィルタケーシング9の同図手前側の側面に開口された矩形状の開口部9Bに、透明なアクリル樹脂板9Cを装着して構成されている。また、フィルタケーシング9の上面には、ネジ固定される蓋板9Dで塞がれる充填口9Eが形成されていて、ここから濾過剤Fの充填や詰め替えができるようになっている。
【0046】
この濾過剤Fは、前述したように、過マンガン酸カリウムの粒子表面に反応指示薬の微粒子をコーティングしたものであり、前記透明部9Aを通してフィルタケーシング9の外部から濾過剤F表面の反応指示薬の色の変化を観察できるようにしている。
【0047】
また、フィルタケーシング9の前後の面の中央部分にはそれぞれ、濾過剤Fの中に空気を通すためのステンレス製の多孔板9Fが装着されている。また、後面の周縁部には、全周に亘って前述した活性炭フィルタ6に使用されているものと同様なシール部材Sが貼り付けられている。
【0048】
図6は、透明部9A近傍の水平部分断面図であって、同図に示すように、アクリル樹脂板9Cの周縁部とフィルタケーシング9の開口部9Bの周縁部の裏面との間にはシール部材9Gが組み込まれており、このシール部材9Gによってフィルタケーシング9内を通過する空気がアクリル板9Cの周囲から外部に漏れ出すことを防いでいる。また、アクリル板9Cは、固定材9Hによってフィルタケーシング9の内側から前記開口部9Eに固定されている。
【0049】
図7に示すように、蓋体19の外側の透明部19Aからは、その内側に配置されている各ホルマリン除去用フィルタ7の透明部9Aを通してこれらのフィルタ7内の濾過剤の状態を観察することができる。
【0050】
同図において、各透明部9Aから見えている斜線で示す部分は濾過剤がまだ有効である領域を示しており、境界位置Xより左方の白い部分は濾過剤が劣化して無効である領域を示している。
【0051】
前記無効の領域では、濾過剤に含まれる反応指示薬によって濾過剤が変色しており、前記境界位置Xは、フィルタ7の濾過剤の劣化に伴って同図右方(空気流路の下流側)へ移動していく。
【0052】
また、蓋体19外側の透明部19Aの上方のスペースは、フィルタ交換が必要な位置に達したか否かを知らせる表示部20として用いられている。図7においては、前記表示部20には、変色域の境界位置Xの変化する範囲に対応させてそれぞれ、「安全」、「要交換」、「危険」の範囲の指標が記されており、前記境界位置Xが「要交換」の範囲に入ったときは、フィルタ交換が必要な時期であることを示している。
【0053】
また、本実施形態においては、前記表示部20には濾過剤が有効なときと、劣化して効力が無効になったときの、それぞれの標準的な色見本を併せて表示してあり、未熟練者でも濾過剤の劣化時の変色状態が的確に判断できるようにしてある。
なお、ここでは、表示部20を蓋体19の透明部19Aの上方のスペースに設けているが、透明部19Aの中に設けてもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、空気浄化装置1に取り込まれる空気にホルマリンとともに高濃度のエタノールが含まれているため、フィルタチェンバ4内の空気流路のホルマリン除去フィルタ7の前段に、活性炭フィルタ6を配置してエタノールを吸着除去し、ホルマリン除去フィルタ7の濾過剤Fに含まれる過マンガン酸カリウムがエタノールと反応してホルマリンの分解能力が損なわれないようにしている。
【0055】
しかしながら、組織の病理検査を行う場合のようにエタノールが発生せず、ホルマリンのみを空気浄化装置で除去すればよい場合には、活性炭フィルタをフィルタチェンバの空気流路の前段に設ける必要はないため、フィルタチェンバ内にはホルマリン除去用のフィルタのみを組み込んでもよい。
【0056】
また、フィルタチェンバやこの内部に組み込まれるフィルタの形状は、前述した実施形態に限定するものではなく、例えばフィルタチェンバを縦型の円筒形に構成して、その内部に垂直な空気流路を形成するとともに、フィルタケーシングをこれに適合する上下に扁平な円柱状としてもよい。
【0057】
また、前述した実施形態においては、フィルタケーシング9の一方の側面に透明部9Aを設けてこれを第1の透明部とし、また、フィルタチェンバ4のフィルタ交換用開口部17に装着した蓋体19の透明部19Aを第2の透明部としているが、これらの透明部は本実施形態のものに限定するものではなく、2つの透明部を通して、フィルタチェンバの外側からフィルタケーシング内の濾過剤中の反応指示薬の色を観察可能であればよい。
【0058】
したがって、フィルタケーシング全体を透明素材で製作してこれを第1の透明部としてもよく、同様に、フィルタチェンバ全体を透明素材で製作してこれを第2の透明部とすることも可能である。
【0059】
また、第1の透明部及び第2の透明部に用いる透明素材としては、アクリル樹脂板に限定するものではなく、他の樹脂板や強化ガラス等、必要な強度を備えた透明度の高い素材であればよい。
【0060】
また、本実施形態においては、濾過剤Fには、過マンガン酸カリウムの粒子表面に反応指示薬の微粒子をコーティングしたものを用いているが、濾過剤はこれに限定するものではなく、ホルマリンを酸化分解可能な他の酸化剤、例えば、二酸化マンガンを用いてもよい。
【0061】
なお、二酸化マンガンを用いる場合には、その粒子の表面に反応指示薬の微粒子をコーティングすると、ホルマリンの酸化反応が抑制されてしまうため、二酸化マンガンの層と反応指示薬の層を交互に積層してフィルタケーシング内に充填することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の空気浄化装置及びフィルタは、医療関係の大学や研究機関、病院等のホルマリンを取り扱う様々な環境において利用することが可能である。さらに、本発明の空気浄化装置及びフィルタは、ホルマリンと同様に濾過剤に含まれる酸化剤によって分解され、その酸化生成物で反応指示薬が変色する物質を含んだ空気を浄化する場合にも利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 空気浄化装置
2 機枠
3 キャスタ車輪
4 フィルタチェンバ
5 吸気口
6 活性炭フィルタ
7 ホルマリン除去用フィルタ(フィルタ)
8、9 フィルタケーシング
9A 透明部(第1の透明部)
9B 開口部
9C アクリル樹脂板
9D 蓋板
9E 充填口
9F 多孔板
9G シール部材
9H 固定材
10a、10b、10c フィルタ保持部材
11 フィルタ交換用開口部
12 開閉ハンドル
13 蓋体
14 フィルタ位置決め部材
15a、15b、15c フィルタ保持部材
16 フィルタ位置決め部材
17 フィルタ交換用開口部
18 開閉ハンドル
19 蓋体
19A 透明部(第2の透明部)
20 表示部
S シール部材
F 濾過剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7