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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-181794(P2015-181794A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】ダイアライザー
(51)【国際特許分類】
   A61L 33/00 20060101AFI20150925BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20150925BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20150925BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20150925BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20150925BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20150925BHJP
   A61P 7/08 20060101ALI20150925BHJP
【FI】
   A61L33/00 P
   A61M1/18
   C08L69/00
   C08K3/32
   C08K5/49
   A61K35/14 Z
   A61P7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-62180(P2014-62180)
(22)【出願日】2014年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化スタイロンポリカーボネート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀澤 和史
【テーマコード(参考)】
4C077
4C081
4C087
4J002
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077BB03
4C077CC05
4C077GG02
4C077GG03
4C077GG13
4C077LL05
4C081AB31
4C081AC15
4C081BA15
4C081BB08
4C081BC02
4C081CA201
4C081DA01
4C081EA02
4C081EA03
4C081EA04
4C081EA12
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB34
4C087DA02
4C087DA04
4C087DA05
4C087NA07
4C087ZA52
4J002CG011
4J002CG021
4J002CG031
4J002DH026
4J002DH036
4J002EW066
4J002EW126
4J002EW136
4J002FD036
4J002GB01
(57)【要約】
【構成】 ポリカーボネートを必須成分とする成形材料であって、該成形材料中のリン元素Pの含有量が20μg/g以下である成形材料を成形してなることを特徴とする、ダイアライザー。
【効果】 本発明のダイアライザーは、蒸気滅菌等の高温多湿条件における加水分解が抑制され、蒸気滅菌手法による殺菌をした場合に起こり得る加水分解による失透(白化)及び機械的性質等の諸物性劣化が抑制され、また、熱水中に浸漬放置された場合でも透明性や機械的物性等の諸物性を保持するものであり極めて有用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを必須成分とする成形材料であって、該成形材料中のリン元素Pの含有量が20μg/g以下である成形材料を成形してなることを特徴とする、ダイアライザー。
【請求項2】
請求項1に記載の成形材料から射出成形された厚さ2mmの成形片をオートクレーブ内で121℃ 100%RHの環境下で120時間保持する処理を行い、該処理前の該成形片の粘度平均分子量(Mw0)から該処理後の該成形片の粘度平均分子量(Mw1)を減じた値が3500以下であることを特徴とする、ダイアライザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の諸特性を損なうことなく、耐加水分解性および耐熱水性に優れたダイアライザーに関する。より詳しくは、本発明は、蒸気滅菌時に起こり得る加水分解による失透、物性劣化が抑制された成形材料から成形された人工透析用ダイアライザーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、機械的、熱的特性に優れ、耐衝撃性に優れたエンジニアリングプラスチックとして車両分野、一般機器分野、食品分野、医療分野等の広範な分野で様々な用途に使用されている。特に、ポリカーボネート樹脂は、透明性、衛生性に優れ、強靱で耐熱性にも秀でているため、医療分野において、例えば注射器、外科用具、静脈注射器、手術用器具などを収容、包装する容器状包装具や、人工肺、人工腎臓、麻酔吸入器、静脈コネクター及び付属品、血液遠心分離装置などの医療用装置、および外科用具、手術用具等の医療用部品として使用されてきている。
【0003】
そして、そのような医療用部品のアプリケーションとしてダイアライザーがある。
腎臓の機能が低下して血液を自力で浄化できなくなった患者には、従来より、人工透析による治療が行われている。人工透析とは、患者の体外に引き出した血液をダイアライザー(人工腎臓)に流して浄化して、浄化した血液を再び体内に戻す治療のことをいう。ダイアライザーとしては、筒状容器からなる本体の内部に、体液から目的成分を除去するために中空糸等の分離膜が充填され、その両端部に、体液を出入りさせるための透析液接続部が備わったキャップ部品が取り付けされた構造の透析用部品が用いられている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他方、医療分野では小規模実施が可能でかつ無害な蒸気滅菌手法の検討が進められてきている。ところが、蒸気滅菌のような高温高湿条件下の処理においては、一般的にポリカーボネートは加水分解による失透(白化)や分子量低下を引き起こす場合があることが知られており、前者は視認性を損ない、後者は加水分解による分子量低下に起因する機械物性劣化に繋がることから、この問題への解決が強く望まれている。
【0005】
従来、ポリカーボネートの耐加水分解性を向上させる手法としては、例えば、ポリカーボネートにリン系化合物とフェノール系化合物とを併用添加する技術(特許文献2)等があるが、医療分野では、さらなる耐加水分解性および耐熱水性を要求される場合があり、現状では必ずしも十分ではない。
【0006】
【特許文献1】特開平9−66225報
【特許文献2】特開平6−166808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の従来技術では達成し得なかった諸問題を解決した、すなわち、蒸気滅菌手法による殺菌をした場合に起こり得る加水分解による失透(白化)及び機械的性質等の諸物性劣化が抑制された成形材料から成形してなるダイアライザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意検討した結果、ポリカーボネートからなる成形材料において、該成形材料中のリン元素Pの含有量を低減、あるいは低い含有量レベルに制御されて特定値以下とした成形材料が、ポリカーボネートの本来の機械的物性等の諸特性を損なうことなく耐加水分解性および耐熱水性に優れることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリカーボネートを必須成分とする成形材料であって、該成形材料中のリン元素Pの含有量が20μg/g以下である成形材料を成形してなることを特徴とする、ダイアライザーを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のダイアライザーは、蒸気滅菌等の高温多湿条件における加水分解が抑制され、蒸気滅菌手法による殺菌をした場合に起こり得る加水分解による失透(白化)及び機械的性質等の諸物性劣化が抑制され、また、熱水中に浸漬放置された場合でも透明性や機械的物性等の諸物性を保持するものであり極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のダイアライザーとは、例えば、人工透析用の部品であって、筒状容器からなる本体の内部に、体液から目的成分を除去するために中空糸等の分離膜が充填され、その両端部に、体液を出入りさせるための接続部が備わったキャップ部品が取り付けされた構造の透析用部品を意味する。
【0012】
本発明において使用されるポリカーボネートとは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルを反応させるエステル交換法によって得られる重合体(樹脂)およびその組成物であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂とその組成物が挙げられる。
【0013】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられる。
【0014】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。本発明に使用されるポリカーボネートとしては、エステル交換法によるポリカーボネートよりも色相等の特性低下が少ない界面重合法(ホスゲン法)によるポリカーボネートがより好ましい。
【0015】
本発明に使用されるポリカーボネートの粘度平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性、強度の面より好ましくは、10000〜100000、より好ましくは20000〜40000の範囲である。また、かかるポリカーボネートを製造するに際し、分子量調整剤、各種触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0016】
本発明に使用される成形材料は、後述する分析手法にて検出できるリン元素Pの総含有量が特定数値以下にあるものである。このようなリン元素は、製造原料の不純物や、離型剤の製造触媒、重合時の酸性雰囲気を中和するためのリン酸化合物、リン系触媒としてのリン系化合物に由来するもの等もあるが、安定剤、酸化防止剤、難燃材等の各種添加剤に含まれるリン系化合物に由来するもの、またはこれらリン系触媒や安定剤の中に不純物として含まれ得るリン系化合物、あるいは製造設備を洗浄する洗浄剤としてのリン系化合物等に由来するもの等がある。
【0017】
これらリン元素Pの起源となるリン系化合物の例としては、リン酸化合物、亜リン酸化合物あるいはそのエステルホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、亜ホスフィン酸化合物など公知のものが該当する。
【0018】
本発明に使用される成形材料においては、成形材料中のリン元素Pの含有量が20μg/g以下である必要があり、このような範囲の含有量に制御することにより、加水分解が抑制された成形材料とすることができる。本発明者の成果として特筆すべきは、医療分野において好適に使用できる成形材料中に含有されるリン元素Pの総含有量の上限値を明確化した点であり、このリン元素Pの含有量を越えないように管理調整することで医療分野に好適な耐加水分解性等に優れる成形材料を提供することができ、極めて有用である。
尚、本発明の成形材料中のリン元素Pの含有量は、ICP発光分光分析法を用いて測定することができる。
【0019】
本発明に使用される成形材料は、この成形材料から射出成形された厚さ2mmの成形片をオートクレーブ内で121℃ 100%RHの環境下で120時間保持する処理を行い、該処理前の該成形片の粘度平均分子量(Mw0)から該処理後の該成形片の粘度平均分子量(Mw1)を減じた値が4500以下である成形材料が好ましい。より好ましくは、その値が4000以下である。この条件下で優れた特性を有する成形材料であれば、医療分野における耐加水分解性の要求を十分に満足できることを発明者は見出している。
【0020】
本発明に使用される成形材料を製造する方法としては、最終成形品を成形する直前までの任意の段階で、当該業者に周知の手段によって行うことができる。重合にて得られたポリカーボネートとタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等で混合し、一軸または二軸押出機等で溶融混練する方法などである。
【0021】
また、本発明に使用される成形材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルポリカーボネート、シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸および/またはイソフタル酸との重縮合物またはそれとポリエチレンテレフタレートとの共重合物等を少量添加して使用することができる。
【0022】
さらに、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、離型剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、染顔料、展着剤(エポキシ化大豆油、流動パラフィン等)等を配合することができる。
【0023】
上記公知の添加剤として任意のリン系化合物が添加される場合においては、ポリカーボネートからなる成形材料中のリン元素Pの含有量が20μg/gを越えないようにされる必要がある。例えば、リン元素P源としては、ポリカーボネートの重合過程で触媒や酸性雰囲気の中和剤、熱安定化のために安定剤としてのリン系化合物等が挙げられる。成形材料中に含まれるリン元素Pの総含有量が過剰となる場合は、必要に応じて公知の手法によりリン系化合物を適宜除去するのが好ましい。除去方法としては、例えば、造粒工程において減圧条件下で250℃〜300℃程度の温度条件下にて押出機の中を複数回再造粒し、該当するリン系化合物を押出機のベントから排出する方法等がある。また、ポリカーボネートの特性に悪影響を与えない範囲で減圧下にて熱を加える、または熱水抽出による除去を行うこともできる。
【0024】
上記安定剤としてのリン系化合物としては、下記一般式(1)で表わされる化合物等があり、例えば、住友化学社のスミライザーP−168等が市場で入手可能である。
一般式(1)
【0025】
【化1】
(一般式(1)において、R5は炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基を、aは0〜3の整数を示す)
【0026】
成形材料と所望により各種添加剤を配合する方法としては、最終成型品を成形する直前までの任意の段階で、当該業者に周知の手段によって行うことができる。例えば、カーボネート樹脂の重合前、重合中、又は重合直後に所望によりリン系化合物を配合する方法はもちろんのこと、重合にて得られたポリカーボネートとタンブラ、リボンブレンダー、高速ミキサー等で混合し二軸押出機等で溶融混練する方法などである。
【0027】
本発明のダイアライザーは、両端に開口を備える略円筒形をしている。ダイアラザー本体の両端の開口の側壁部には、それぞれ接続部が設けられており外部の透析装置と接続可能に成されている。また、ダイアライザー本体の両端の開口には、ヘッダー(ふた)が設けられており、ヘッダーには接続部が備えられている。透析を行う際には、ダイアライザー本体の内部に所定の中空糸膜を収納しヘッダーでシールし、接続部を介して体液を注入する。そして、透析後は、接続部から外部へと導かれるように成される。
【0028】
本発明のダイアライザーの成形方法としては、特に限定されるものではなく、公知の成形方法により成形することができる。ブロー成形、押し出し成形、一般的には射出成形が好適な成形方法として例示される。成形温度は、成形加工性の面から260〜290℃が望ましい。
【0029】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
原料としてビスフェノールAと塩化カルボニルからホスゲン法にて合成された粘度平均分子量30000のポリカーボネートペレット(住化スタイロンポリカーボネート社製SDポリカ SD2000H(以下、「PC―1」と略記する。)のリン元素P含有量を測定したところ、定量限界(10μg/g)以下であった。得られたペレットPC―1の特性を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
原料としてビスフェノールAと塩化カルボニルからホスゲン法にて合成された粘度平均分子量30000のポリカーボネートペレット(住化スタイロンポリカーボネート社製カリバー 351―6(以下、「PC―2」と略記する。)のリン元素Pの含有量を測定したところ、18μg/gであった。得られたペレットPC―2の特性を表1に示す。
【0032】
(比較例1)
ポリカーボネート成分の調整にて得られた実施例2のペレットPC−2に安定剤成分としてクラリアントジャパン社のサンドスタブP−EPQ(以下、「B―1」と略記する。)を添加し、二軸押出機(L/D=42、Φ=37mm、神戸製鋼社製KTX−37)を用いて、溶融温度280℃にて溶融混練しペレット(以下、「PC―3」と略記する。)を得た。得られたペレットPC―3のリン元素Pの含有量を測定したところ、23μg/gであった。得られたペレットPC―3の特性を表1に示す。
【0033】
(リン元素Pの定量)
上記で得られた各種ペレットを0.1g秤量後、硝酸を加えて密閉後、マイクロウェーブ分解を行い、放冷後、分解液に超純水を加えて20mLの検液を作製した。次いでICP発光分光分析装置(島津製作所社製型式「ICPS−8100」)に各種ペレットから作製された検液を導入することにより、リン元素Pの含有量を測定(定量限界:10μg/g)した。
【0034】
1.耐加水分解性の評価方法
各種ペレットから100トンの射出成形機を用いて溶融温度280℃にて成形を行い、2mm厚みのプレート試験片を作成し試験に供した。このプレートを121℃×100%相対湿度条件下、タバイエスペック社製のプレッシャークッカー( T P C − 4 1 1 )(オートクレーブ)中で暴露し、120時間湿熱劣化させる。暴露前後の試験片をジクロロメタンに溶解し、NO.1濾紙を用いて溶解液中の不溶物をろ過する。この濾液をドライアップし、得られたポリマーの一定量(0.25g)をジクロロメタン50mlに溶解する。キャノン・フェンスケ粘度計を用いてジクロロメタン希薄溶液の粘度を23℃で測定し、シュネルの式を用いて各試験片の粘度平均分子量を求めた。
(シュネルの式) [η]=1.23×10−4・M0.83
[η]:固有粘度、M:粘度平均分子量
なお、加水分解性の指標である分子量低下は、暴露前のポリカーボネートの粘度平均分子量をMW0、暴露後のポリカーボネートの粘度平均分子量をMW1としたとき、MW0からMW1を減じた値(以下ΔMWと略記)が3500以下を良好とした。
【0035】
2.耐熱水性の評価方法
各種ペレットから100トンの射出成形機を用いて溶融温度280℃にて成形を行い、試験片(127x12.7x6.4mm)を作成し試験に供した。得られた試験片を両持ち梁の下式に示す試験治具を用いて、臨界ひずみ量εが3%以上になるようにたわみをかけた状態で、90℃の熱水中に10日間浸漬放置し、試験片に発生したクラックの存在数を評価した。なお、下式を用いて計算を行うと臨界ひずみ量εが3%以上となるように最大たわみ量σを設定することができる(例えば、h:6.4mm、L:100mmのとき、σ=10mm)。クラックは光学顕微鏡にて試験片表面を50倍率で、5x5mm四方に存在するクラック数を観察した。試験片中2カ所のクラック数の平均が10以下を良好とした。
【0036】
【0037】
【表1】
表中「判定」は ○: 良好 、×:不良 を表す。
【0038】
成形材料が本発明の構成要件を満足する場合(実施例1および2)にあっては、今回の評価項目について良好な結果を示した。
【0039】
比較例1は、リン元素P含有量が規定量よりも多い場合で、耐加水分解性および耐熱水性に劣っていた。