【実施例】
【0025】
図1に示すように、ワーク締結装置10は、基台11と、この基台11に立てられた箱型フレーム12と、この箱型フレーム12の上部に設けられる主軸台13と、箱型フレーム12の下部に設けられる心押し台14と、箱型フレーム12に縦に且つ互いに平行に設けられているラック15、直線ガイド16及びボールねじ17と、直線ガイド16で鉛直移動可能に案内されラック15に噛み合うピニオン18及びこのピニオン18を駆動する第1駆動モータ19を有する第1加工機構20と、この第1加工機構20より下位に配置され直線ガイド16で鉛直移動可能に案内されラック15に噛み合うピニオン21及びこのピニオン21を駆動する第2駆動モータ22を有する第2加工機構23と、この第2加工機構23より下位に配置され直線ガイド16で鉛直移動可能に案内されボールねじ17で移動される押し付け機構25とを備えている。
【0026】
主軸台13は、第1ワークとしてのシャフト本体26を把持し軸回りに回す主要部材であり、シャフト本体26をチャックするコレット27と、このコレット27を回すスピンドルモータ28を備えている。
心押し台14は、主軸台13と共にシャフト本体26を支える部材であり、センタ29と、このセンタ29を昇降するシリンダユニット31とを備えている。
【0027】
押し付け機構25は、ボールねじ17と、このボールねじ17を回す第3駆動モータ32と、ボールねじ17で移動されるスライダ33と、このスライダ33に固定され正面へ延びるブラケット34と、このブラケット34で支持されるパレット35とからなる。なお、ブラケット34には、パレット35を鉛直軸回りに回転させるパレット旋回モータ36が備えられている。
【0028】
さらにワーク締結装置10は、第1加工機構20に付設され第1かしめローラ38の高さ位置を検出する第1位置センサ39と、第2加工機構23に付設され第2かしめローラ41の高さ位置を検出する第2位置センサ42と、スライダ33に付設されパレット35の上面の高さ位置を検出する第3位置センサ43と、第1〜第3位置センサ39、42、43からの位置情報に基づいて第1〜第3駆動モータ19、22、32を制御する制御部45とを備えている。
【0029】
制御部45は、第3駆動モータ32の電流値を押し付け荷重に換算することで押し付け荷重を求める荷重取得機構44を備えている。
【0030】
図2に示すように、第1ワークの一具体例であるシャフト本体26は、鋼製の筒体である。中空部にセンタ29の先端が進入する。
図3に示すように、第2ワークの一具体例であるカムロブ46は、シャフト本体26の外径より僅かに大きな内径の貫通穴47を有する。
図4に示すように、第1かしめ凹部48と第2かしめ凹部49が、カムロブ46の上下面に且つ貫通穴47の縁に形成されている。
【0031】
図5に示すように、第1加工機構20は、図面表裏方向に昇降する昇降フレーム51と、この昇降フレーム51の両端部から延びている2つのサブフレーム52、52と、これらのサブフレーム52、52の先端にV字状に設けられるレール53、53と、これらのレール53、53に各々移動可能に取付けられるサブスライダ54、54と、これらのサブスライダ54、54で支持され基部側にラック55、55が形成され先端に左右の第1かしめローラ38L、38R(Lは左、Rは右を示す添え字。図面は下から見ているため、左右が逆になる。)を有するプレート56、56と、昇降フレーム51の中央に取付けられている駆動源57と、この駆動源57に支持されシャフト本体26に向かって移動すると共に両側面にラック58、58が形成され先端に中央第1かしめローラ38C(Cは中央を示す添え字。)を有する移動部材59と、昇降フレーム51又はサブフレーム52、52に回転自在に取付られラック58、58で回されるファーストピニオン61、61及びこのファーストピニオン61、61で回されると共にラック55、55に噛合っているセカンドピニオン62、62とを備える。
【0032】
駆動源57で移動部材59を前進させると、中央の第1かしめローラ38Cが前進し始める。同時にファーストピニオン61及びセカンドピニオン62が回転し始め、左右の第1かしめローラ38L、38Rが互いに接近するように移動し始める。
3個の第1かしめローラ38L、38R、38Cは、シャフト本体26を重心(図心)とする正三角形の頂点に常に位置している。
【0033】
結果、
図6に示すように、3個の第1かしめローラ38L、38R、38Cでシャフト本体26を挟む。第1かしめローラ38L、38R、38Cは外周が突になっている。シャフト本体26を回すと、第1かしめローラ38L、38R、38Cは、シャフト本体26に食い込んで第1かしめ山を形成する。
【0034】
第2加工機構(23)は、第2かしめローラ(41L、41R、41C)を備えている点が異なるもののその他は第1加工機構20と同一の構造であるため、詳細な構造説明は省略する。
【0035】
図7に示すように、パレット35は、等ピッチで設けた複数の通孔64と、第1ワークとしてのカムロブ46や識別リング65の搭載位置及び搭載姿勢を決める位置決め片66や位置決めピン67を備えている。通孔64にセンタ(
図1、符号29)が通過する。
【0036】
以上の構成からなるワーク締結装置10を用いて実施する組立カムシャフトの製造方法を次に説明する。
図8(a)に示すように、ロボット又は人手でシャフト本体26をコレット27に挿入する。コレット27を閉じる(縮径する)ことで、コレット27にシャフト本体26は吊り下げられる。
図8(b)に示すように、上昇するセンタ29でシャフト本体26の下部の位置決めを行う。
図8(c)に示すように、シャフト本体26を所定回転速度で回転しつつ、第1かしめローラ38、38をシャフト本体26に食い込ませる。
【0037】
図8(d)に示すように、シャフト本体26の外周をかしめて隆起させる。結果、第1かしめ山68が形成される。
図8(e)に示すように、第1かしめローラ38、38を待機位置に戻して、第1かしめ山68の近傍を空ける。
図8(f)に示すように、パレット35を上昇して、カムロブ46を第1かしめ山68へ押し付ける。すると、第1かしめ山68が塑性変形し、その一部が
図4に示す第1かしめ凹部48に流入する。
【0038】
図9に示すように、押し付け荷重に比例してスリップトルクが増加する。すなわち、押し付け荷重が大きくなるほど、塑性変形が進み、第1かしめ凹部48に多くの肉が流入するからスリップトルクが増加する。要求トルクがTsのときの押し付け荷重がFpであるとすると、
図8(f)で、押し付け荷重がFpに達したときに、パレット35の上昇を終了する。
【0039】
なお、押し付け荷重の測定は、ロードセル(例えばカムロブ46とパレット35上面との間に介在させる。)で実施することが望ましいが、本例では、第3駆動モータ32の電流値を荷重取得機構(
図1、符号44)で、押し付け荷重に換算することで押し付け荷重を求める。
【0040】
図10(a)に示すように、パレット35を下げる。カムロブ46は第1かしめ山68に噛み合っているため落下することはない。
図10(b)に示すように、カムロブ46の下方が空いたら、第2かしめローラ41、41でシャフト本体26のカムロブ46の下面近傍をかしめる。
図10(c)に示すように、カムロブ46は第1かしめ山68と第2かしめ山69とで挟まれるようにしてシャフト本体26に取付け固定される。
以上を繰り返すことにより、複数個のカムシャフト構成要素をシャフト本体26に固定することができる。
【0041】
以上に述べた組立カムシャフトの製造方法は、フロー図を用いて次のように説明することができる。このフローは制御部(
図1、符号45)で実行される。
図11のST01にて、カムロブに係る目標位置Psを入力する。シャフト本体の何処にカムロブを設けるかは、設計図面などで決まっているため、目標位置Psは一義的に定まる。
【0042】
さらに、後のST17に備えて、再加工の要否を入力すると共に実使用上許容される位置ずれaを入力する。
【0043】
併せて、押し付け目標荷重Lsを入力する。押し付け目標荷重Lsは、例えば、
図12を用いて、要求されるスリップトルクTsから押し付け目標荷重Lsが定まる。さらに、実使用上許容されるスリップトルクの許容上限値Ts2と許容下限値Ts1とから定まる、許容上限荷重Ls2及び許容下限荷重Ls1を入力する。
【0044】
図11のST02にて、第1かしめローラによる第1切込量を入力する。
図13に示すように、多数の試作品から切込量と押し付け荷重との相関を調べておく。この相関を用いて、押し付け荷重がLsであるときの切込量を定め、これを第1切込量として入力する。
なお、第1切込量は、後に修正されるため、このステップでは初期値として扱われる。初期値であるため、第1切込量は、シャフト本体の外径(設計値。この設計値には公差を含めない。)の外周面に第1かしめローラが接触したときからの前進距離、すなわち切込深さと定義される。
【0045】
図11のST03にて、第1切込量に基づいて、シャフト本体に第1かしめ山を形成する。
次に、ST04にて、押し付け機構で、カムロブを第1かしめ山へ押し付ける。
この押し付け工程中、カムロブの位置情報を取得し(ST05)、カムロブが目標位置Psに到達するまで押し付けを継続する(ST06)。
【0046】
カムロブが目標位置Psに到達したら第3駆動モータの電流値を測定し(ST07)、第3駆動モータを停止し(ST08)、測定で得た電流値を荷重に換算し(ST09)、得られた換算荷重が、許容荷重範囲に収まっているか否かを調べる(ST10)。
【0047】
収まっている場合は、ST05で得たカムロブの位置情報を取得し、この位置情報に基づいて第2かしめ山の位置を決定する(ST11)。具体的には、
図1に示す第3位置センサ43により、パレット35の上面位置が検出できる。本実施例では、パレット35の上面は、
図10(c)に示すカムロブ46の下面に合致しているため、カムロブ46の下面の高さ位置が検出できる。
図10(c)にて、カムロブ46の下面からLだけ下がった位置を第2かしめローラの高さとする。Lは、組立カムシャフトを試作し、このデータを蓄積することで、カムロブ毎に予め定めておく。
【0048】
図11のST12にて、決定されたかしめ位置に基づいて第2かしめローラで、シャフト本体に第2かしめ山を形成する。
所定の作業の全てが終了する、又は、休憩時間に入る若しくは終業時間に至るなどの理由で作業を終えるか否かを調べ(ST13)、作業を継続する場合は次に進む。
【0049】
ST14にて、換算荷重とLs(押し付け目標荷重)とを比較する。換算荷重がLs以上であれば、押し付け過ぎとして、(第1切込量−β)を新しい第1切込量とする、修正を行う(ST15)。換算荷重がLs未満であれば、押し付け不足として、(第1切込量+β)を新しい第1切込量とする(ST16)。なお、βは、例えば第1切込量の(0.1%〜5%)の範囲から経験的に選択した値である。
【0050】
ST03での第1切込量は、ST15又はST16で修正された第1切込量に置換される。結果、次のシャフト本体には、第1切込量に基づいて第1かしめ山が形成される。
ST15又はST16による修正が施されるため、第1かしめローラの経時変化やシャフト本体やカムロブのロッド毎のばらつき等によって押し付け荷重が変動した場合には、目標値を修正して対応する。結果、シャフト本体とカムロブとの間の締結力の低下を抑制することができる。
【0051】
ST10で、換算荷重が、許容荷重範囲から外れている場合には、ST17で再加工の要否を調べる。ST01で再加工要とされた時には(A)へ進み、否とされた場合は、ST18に進む。
ロボットを用いてシャフト本体をワーク締結装置から外し、一次保管場所へ移動する際に、加速力や振動が加わるため、カムロブの脱落が懸念される。対策として、ST18で第2かしめ山を形成し、その後に不良品として排出する(ST19)。
【0052】
ST10で、換算荷重が許容荷重範囲から外れていると判断された場合には、換算荷重が許容上限荷重Ls2より大きい場合と、許容下限荷重Ls1より小さい場合とがある。換算荷重が許容上限荷重Ls2より大きい場合には、再加工の余地がないため、不良品と処理する。一方、許容下限荷重Ls1より小さい場合は、再加工の余地がある。
【0053】
そこで、
図14にて、ST20で換算荷重が、許容下荷重Ls1未満であるか否かを調べる。すなわち、許容荷重範囲から外れていると判断された換算荷重が、許容上限荷重Ls2より大きいのか、或いは、許容下限荷重Ls1よりも小さいかを調べる。ST20が否の場合は、換算荷重が許容上限荷重Ls2より大きいと判断して、第2かしめ山を形成し(ST21)、不良品として排出する(ST22)。
【0054】
ST20で換算荷重が、許容下荷重Ls1未満であるときは、第3駆動モータを再運転し追加的な押し付けを行う(ST23)。第3駆動モータの電流値を連続的に測定し(ST24)、測定で得た電流値を荷重に換算し(ST25)、得られた換算荷重が押し付け目標荷重Lsに達するまで第3駆動モータの運転を続ける(ST26)。
【0055】
換算荷重が押し付け目標荷重Lsに達したら第3駆動モータを停止し(ST27)、そのときのカムロブの位置を測定する(ST28)。
ST29で、測定位置が許容位置範囲、すなわち(Ps−a)以上で(Ps+a)以下の範囲に収まっているか否かを調べる。aはST01で入力された許容ずれである。
【0056】
否であれば、寸法的に不合格であると判定されるため、第2かしめ山を形成し(ST30)、不良品として排出する(ST31)。
測定位置が許容位置範囲内であれば、再加工が有効になり、製品を合格水準に高めることに成功したと判定する。よって、
図11の(B)に進み、
図11のフローを実施する。
【0057】
尚、第1ワークは軸、第2ワークは軸に圧入される軸受であってもよい。第1ワークとしての軸の外周に旋盤で切削加工(レース加工)を施し、この加工箇所へ第2ワークとしての軸受を押し付けて圧入する。押し付け荷重に基づいてレース加工時の切削量(切り込み深さ)を修正するようにすれば、刃具の摩耗や軸の外径にばらつきがあったとしても、軸と軸受との間の締結力が適正に維持される。
【0058】
よって、シャフト本体や軸に代表される第1ワークと、カムロブや軸受に代表される第2ワークとに係る締結方法は、次のようにまとめることができる。
目標値に基づいて第1ワークに加工を施す第1加工工程(
図11、ST03相当)と、前記第1ワークの加工箇所に向けて第2ワークを押し付ける押し付け工程(
図11、ST04相当)と、この押し付け工程における押し付け荷重を取得する荷重取得工程(
図11、ST09相当)と、取得した荷重に基づいて前記目標値を修正する目標値修正工程(
図11、ST15、16相当)とを有し、前記第1ワークに前記第2ワークを締結するワーク締結方法であって、前記目標値修正工程で前記目標値が修正された場合は、その修正後に実施される前記第1加工工程は、修正後の目標値に基づいて次の第1ワークに加工を施す。
【0059】
本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記実施形態では、第1切込量を毎回修正していたが、換算荷重とLs(押し付け目標荷重)との差が所定値未満であれば、第1切込量を修正せずそのままの値で、次の第1ワークに加工を施しても良い。