【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明のボールエンドミルは、工具本体の軸方向先端部側に、複数枚の切れ刃と回転方向に隣接する前記切れ刃間に形成されたギャッシュを有する切れ刃部を備え、この切れ刃部が前記工具本体の軸方向に、ボール刃が形成されるボール刃部と、前記ボール刃に連続する外周刃が形成される外周刃部とに区分されたボールエンドミルであり、
前記ボール刃部が前記ボール刃の回転方向後方側に形成される二番面と、この二番面に回転方向後方側に連続して形成され、前記二番面と異なる面をなす三番面と、この三番面に回転方向後方側に連続して形成され、前記三番面と異なる面をなす四番面を持ち、
前記外周刃部の前記各外周刃の回転方向後方側に互いに異なる面をなす複数の外周刃逃げ面が形成され、
前記四番面が回転軸に関して外周側に向かって凸の曲面状に形成され、
前記ギャッシュの前記外周刃部側に前記ギャッシュに通じる外周溝が形成され、前記ギャッシュの溝底と前記外周溝の溝底は前記回転軸に対して異なる角度をなしていることを特徴とする。
【0014】
ボール刃部が各ボール刃の回転方向後方側に二番面から四番面までの4面の逃げ面を持つことは、面数が複数であることで、ギャッシュを除き、ボール刃部自体を球体状に形成し易くする意味がある。外周刃部が各外周刃の回転方向後方側に複数の外周刃逃げ面を持つことも、面数が複数であることで、外周刃部を円柱状に形成し易くする意味がある。ボール刃部と外周刃部のいずれの逃げ面も、ボールエンドミルの回転軸Oを中心とした回転体形状に近い立体形状に切れ刃部を形成し易くし、切れ刃部の剛性を高めることに寄与する。請求項1における「工具本体」はボールエンドミルの本体のことであり、「回転軸」はボールエンドミルの回転軸Oを指す。
【0015】
特にボール刃部の四番面を回転軸Oに関して外周側(表面側)に向かって凸の曲面状に形成することで(請求項1)、
図1のX−X線の矢視図である
図2、及び
図1のA−A線の断面図である
図6に示すようにギャッシュ6を除き、ボール刃部40を一層、球体状に近付けることが可能になり、ボール刃部40の体積が増すため、ボール刃部40の剛性を上昇させることが可能になる。「曲面状」は曲面と多面体を含む。
【0016】
また
図1に示すようにギャッシュ6の外周刃部50側にギャッシュ6に通じる外周溝9が形成され、ギャッシュ6の溝底61と外周溝9の溝底91が回転軸Oに対して異なる角度α1、α2をなしていることで、ギャッシュ6の溝底61の、回転軸Oに直交する平面からの傾斜を外周溝9の溝底91の傾斜より緩くし、ギャッシュ6の溝底61の、ボール刃4からの深さを小さく抑えることが可能になる。外周溝9は切れ刃部2の周方向には各外周刃5の最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eの回転方向後方側で、外周刃5の回転方向前方側に形成される。
【0017】
「外周溝9がギャッシュ6に通じる」とは、特許文献1のねじれ溝のように回転軸O方向に連続した1本の溝をなすように外周溝9がギャッシュ6に連続することを除外する趣旨であり、ギャッシュ6を構成する面(ギャッシュ壁面6aとギャッシュ底面6b及びボール刃4のすくい面7)と外周溝9を構成する面(外周溝面9aと外周刃5のすくい面8)が回転軸O方向に不連続な面をなして隣接することを意味する。ギャッシュ6の溝底61は
図1に示すようにボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界を指し、外周溝9の溝底91は外周刃5のすくい面8と外周溝面9aとの境界を指す。
【0018】
「ギャッシュ6の溝底61と外周溝9の溝底91が回転軸Oに対して異なる角度α1、α2をなす」とは、ギャッシュ6の溝底61と回転軸Oとがなす角度α1と、外周溝9の溝底91と回転軸Oとがなす角度α2が相違することである。ここで言う溝底61、91と回転軸Oとがなす角度α1、α2は
図1に示すようにボール刃4のすくい面7と外周刃5のすくい面8が正面に位置するように切れ刃部2を半径方向(回転軸Oに直交する方向)に見たときの角度を言う。ボール刃4のすくい面7と外周刃5のすくい面8が正面に位置するように切れ刃部2を半径方向に見たときの角度が、溝底61、91と回転軸Oとがなす傾斜角度を正確に表示していると言えるからである。
【0019】
角度α1と角度α2が相違することで、切れ刃部2を半径方向に見たときに、ギャッシュ6の溝底61と回転軸Oとがなす角度α1を外周溝9の溝底91と回転軸Oとがなす角度α2より大きくすることができる。このことはギャッシュ6の溝底61の、回転軸Oに直交する平面からの傾斜を緩く(小さく)しながら、外周溝9の溝底91の、回転軸Oに直交する平面からの傾斜を大きくすることであり、結果的にギャッシュ6の溝底61がシャンク部3側にまで直線的に連続する
図8〜
図10に示す例、並びに特許文献1との対比ではギャッシュ6の溝底61の回転軸Oからの距離が大きくなるため、ギャッシュ6の溝底61の、ボール刃4からの深さを小さく抑えることが可能になる。
【0020】
ギャッシュ6の溝底61の深さが小さく抑えられることで、
図8〜
図10に示す従来例と異なり、
図6に示すようにボール刃部40の回転軸Oに直交する断面上、ギャッシュ6は切れ刃部2の中心(回転軸O)寄りにまで深く切り込まれた、
図9に示すような形にはならなくなる。「ギャッシュ6の溝底61と外周溝9の溝底91が回転軸Oに対して異なる角度α1、α2をなすこと」は、ギャッシュ6の溝底61と外周溝9の溝底91が連続した直線や曲線を描かず、互いに異なる不連続な直線や曲線を描くことでもある。但し、溝底61、91は図示するように凹の稜線のように明確な線として表れるとは限らず、凹曲面をなしていることもあるため、線として表れないこともある。
【0021】
ギャッシュ6が切れ刃部2の中心寄りにまで深く切り込まれた形にならないことで、
図6に示すようにボール刃部40の回転軸Oに直交する断面上、ギャッシュ6の回転方向後方側の面をなすボール刃4のすくい面7におけるボール刃4を通る接線7Aとボール刃4の逃げ面10、もしくはボール刃4の逃げ面10におけるボール刃4を通る接線10Aとが切れ刃部2の断面側(回転軸O側)になす角度θ1を鈍角にすることが可能である(請求項3)。
【0022】
この場合には、四番面12が回転軸Oに関して外周側(表面側)に向かって凸の曲面状であることと併せ、これらの要件を備えない
図8〜
図10に示す例との対比では、ボール刃部40の回転軸Oに直交する断面積、すなわちボール刃部40の体積を増大させることができるため、切れ刃部2の剛性をより高めることが可能である。角度θ1はボール刃部40を回転軸Oに直交する断面で見たときのすくい面7とボール刃4の逃げ面10とのなす角度とも言えるが、すくい面7と逃げ面10が曲面である場合もあるため、接線7A、10Aを用いて角度θ1を特定している。
【0023】
またギャッシュ6が切れ刃部2の中心寄りにまで深く切り込まれた形にならないことで、ボール刃部40の四番面12を回転軸Oに関して外周側に向かって凸の曲面状に形成することと併せ、ボール刃部40の回転軸Oに直交する断面上、三番面11における四番面12との境界(境界線)を通る接線11Aと、四番面12における三番面11との境界(境界線)を通る接線12Aとが切れ刃部2の断面側(回転軸O側)になす角度θ2を平角に近付けることが可能になる(請求項2)。「平角に近付ける」とは、具体的にはθ2を150〜180°程度の角度にすることであるが、図示する例では165°程度になっている。角度θ2はボール刃部40を回転軸Oに直交する断面で見たときの三番面11と四番面12とのなす角度とも言えるが、四番面12は曲面であり、三番面11が曲面の場合もあるため、接線11A、12Aを用いて角度θ2を特定している。
【0024】
更にギャッシュ6が切れ刃部2の中心寄りにまで深く切り込まれた形にならないことで、ギャッシュ6の回転方向前方側の面をなすギャッシュ壁面6aにおける四番面12との境界線68を通る接線6Aと、その回転方向前方側に連続する四番面12におけるギャッシュ壁面6aとの境界線68を通る接線12Bとが切れ刃部2の断面側(回転軸O側)になす角度θ3を鈍角にすることも可能になる。このことと、三番面11における四番面12との境界(境界線)を通る接線11Aと、四番面12における三番面11との境界(境界線)を通る接線12Aとが切れ刃部2の断面側(回転軸O側)になす角度θ2を平角に近付けることが可能であることで(請求項2)、ボール刃部40の回転軸Oに直交する断面上、ボール刃部40の断面積(体積)を増大させることが可能になり、切れ刃部2の剛性を更に高めることが可能になる。
【0025】
同時に、
図1のA−A線の断面図である
図6とB−B線の断面図である
図7との対比から分かるように、ボール刃部40と外周刃部50の断面積(剛性)の差を小さくすることが可能になるため、
図8〜
図10に示す例のようにボール刃部40と外周刃部50間の境界部分が構造上の弱点になり易くなることがなくなる。
【0026】
また
図6に示すようにボール刃部40の回転軸Oに直交する断面上、ボール刃4のすくい面7がギャッシュ6側へ凸の面をなしている場合(請求項4)には、すくい面7においてもボール刃部40の断面積(体積)が増すため、切れ刃部2の剛性が更に高まることになる。すくい面7がなす凸の面は曲面と多面体がある。
【0027】
ボール刃4のすくい面7がギャッシュ6側へ凸の面をなすことは、
図2に示すようにボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界61がボール刃部40を先端部側からシャンク部3(工具本体)の軸方向(回転軸O方向)に見たときにギャッシュ壁面6a側へ突出している状態にあることでもある。この場合、ボール刃4のすくい面7がギャッシュ壁面6a側へ突出することで、ギャッシュ6内の切り屑を回転方向前方側へ押し出すように作用し、ギャッシュ6内での切り屑の貯留が生じにくくなるため、ギャッシュ6からの切り屑排出性が向上する利点も得られる。
【0028】
特にボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界61の半径方向中間部が最も回転方向前方側へ突出している場合には、すくい面7が切り屑をギャッシュ壁面6a側へ向けて放射状に分散させるようにも作用するため、切り屑のギャッシュ6内での一部への集中と停滞が生じにくくなる。ボール刃4のすくい面7をボール刃4に直交する断面で見たときには、
図6に示すようにギャッシュ底面6bにおけるすくい面7との境界67を通る接線6Bとすくい面7におけるギャッシュ底面6bとの境界67を通る接線7Bとがギャッシュ6側(回転軸Oの反対側)になす角度θ4を鈍角にすることができるため、ギャッシュ6内での、特にすくい面7とギャッシュ底面6bとの間での切り屑の詰まりを発生しにくくすることができる。
【0029】
前記のように切れ刃部2の内、外周刃部50においては各外周刃5の最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eの回転方向後方側に、ギャッシュ6の外周刃部50側に通じる外周溝9が形成される。ここで、
図3、
図4に示すように外周溝9の回転方向前方側の面を構成する外周溝面9aが外周刃5の最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eと異なる面をなしながら、この外周刃逃げ面14eに連続し、外周刃部50の外周刃逃げ面を兼ねている場合(請求項5)には、
図7に示すように外周刃部50を円柱形状に近付け得る多角柱状に形成することが可能になり、ボール刃部40の剛性に加え、外周刃部50の剛性も高めることが可能になる。
【0030】
図面では外周刃部50の外周刃逃げ面14a〜14eを5面、形成しているが、外周刃逃げ面14a〜14eの数は任意であり、5面には限定されない。只、外周刃逃げ面14a〜14eの数を多くする程、多角柱状の側面の数が多くなるため、外周刃部50を円柱形状に近付けることが可能である。外周刃逃げ面14a〜14eは平面の場合と曲面の場合があり、回転軸Oに関して外周側に向かって凸の曲面をなす場合には外周刃部50の体積が増すため、剛性も上昇する。外周刃逃げ面14a〜14eは回転軸Oに関して外周側に向かって凹の曲面であることもある。
【0031】
図1、
図5に示すようにギャッシュ6は切れ刃部2の内、ボール刃部40の四番面12の回転方向後方側と、その側に隣接するボール刃4の回転方向前方側との間に、ボール刃4が切削した切り屑を排出するために形成される。ギャッシュ6は前記の通り、シャンク部3の軸方向(ボールエンドミル1の回転軸O方向)には外周刃部50の切り屑排出用の溝である外周溝9に通じる。ギャッシュ6は四番面12の回転方向後方側に形成されるギャッシュ壁面6aとその回転方向後方側に連続するギャッシュ底面6b、及びその回転方向後方側に連続するボール刃4のすくい面7から構成される。外周溝9は
図3に示すように外周刃5の最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eの回転方向後方側に連続する外周溝面9aと、その回転方向後方側に位置する外周刃5のすくい面8から構成される。
【0032】
請求項5における「外周溝面9aが外周刃5の外周刃逃げ面を兼ねる」とは、
図7に示すように外周刃部50を回転軸Oに直交する断面で見たとき、互いに角度が付いて形成される外周刃5の外周刃逃げ面14a〜14eの周方向に隣接する外周刃逃げ面14a、14b(14b、14c等)間の関係と同様に、外周溝面9aが外周刃5の最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eとの間で互いに角度をなしながら、この外周刃逃げ面14eに連なることを言う。結果として外周溝面9aは見かけ上、外周刃逃げ面14eに隣接する外周刃逃げ面(14f)として形成され、外周溝面9aは外周刃逃げ面14a〜14eと共に多角柱形状の1面を構成する。
【0033】
前記のように外周刃逃げ面14a〜14eは平面の場合と曲面状の場合があるため、外周溝面9aも平面の場合と曲面状の場合があり、曲面状は曲面と多面体がある。外周溝面9aは外周溝9を構成するため、基本的には回転軸Oに関して外周側に向かって凹の曲面であるが、周方向に連続する外周刃5のすくい面8が凹の曲面状であれば、外周溝面9aが凹の曲面状である必要はない。
【0034】
外周溝9を構成する外周溝面9aが外周刃5の外周刃逃げ面(14f)を兼ねる形で形成されることで、外周刃5の回転方向後方側に形成される外周刃逃げ面の数を一外周刃5当たり、実際の形成数より1面、多く形成したことと同等になり、図示するように外周刃5が2枚であれば、外周刃逃げ面を実際の形成数より2面、多く形成したことになる。但し、外周刃5は2枚とは限らない。
【0035】
外周溝面9aの回転方向後方側には周方向に隣接し、外周溝面9aと共に外周溝9を構成する外周刃5のすくい面8が連続するが、この外周刃5の回転方向後方側にも複数の外周刃逃げ面14a〜14eが連なるため、外周溝面9aが外周刃5の外周刃逃げ面を兼ねることで、外周刃部50は
図7に示すように周方向には外周刃5のすくい面8以外の面において多面体を構成し得る立体形状になる。結果として外周刃部50が外周刃5のすくい面8を除き、外周溝9の部分においても多角柱状を形成することになるため、外周刃部50を円柱形状に近付けることが可能になり、外周刃部50の剛性が高められる。
【0036】
なお、外周刃部50において周方向に隣接する外周刃逃げ面14a、14b(14b、14c)間等の凸の稜線は回転軸Oに平行な直線を描く場合と、
図1に示すように切れ刃部2の先端側からシャンク部3側へかけて回転方向後方側へ傾斜する直線、もしくは曲線を描く場合があるため、外周刃逃げ面14a〜14eは正多角柱(直角柱)形状を形成する場合と斜角柱形状を形成する場合がある。
【0037】
前記のようにギャッシュ6の外周刃部50側には外周溝9が通じるが、
図3に示すようにギャッシュ6の回転方向前方側の面を構成するギャッシュ壁面6aの外周刃部50側に、少なくとも外周刃5の最も回転方向後方側に位置し、ギャッシュ壁面6aと異なる面をなす外周刃逃げ面14eを連続(位置)させ、ギャッシュ壁面6aに回転方向後方側に連続するギャッシュ底面6bの外周刃部50側に、ギャッシュ底面6bと異なる面をなす外周刃逃げ面14eと外周溝面9aを連続(位置)させれば(請求項6)、ボール刃4が発生させ、ギャッシュ6内に入り込んだ切り屑を外周刃部50から周方向(回転方向)に複数の面に分散させて排出させることが可能になる。
【0038】
この場合、ギャッシュ壁面6aの外周刃部50側(回転軸O方向)に外周刃逃げ面14eがギャッシュ壁面6aと異なる面をなして連続し、ギャッシュ底面6bの外周刃部50側に外周刃逃げ面14eと外周溝面9aがギャッシュ底面6bと異なる面をなして連続することで、
図3に示すように最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eは周方向(回転方向)にギャッシュ壁面6aとギャッシュ底面6bに跨り、ギャッシュ底面6bは最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eと外周溝面9aに跨る。請求項6における「少なくとも最も回転方向後方側の外周刃逃げ面14eを連続させ、」とは、ギャッシュ壁面6aの外周刃部50側に2面以上の外周刃逃げ面14e、14dが連続する場合があることを言う。
【0039】
ギャッシュ底面6bが周方向に最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eと外周溝面9aに跨ることで、ボール刃4が発生させ、ギャッシュ6に入り込んだ切り屑は周方向に外周刃逃げ面14eと外周溝面9aとに分散して排出されることになる。また最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eが周方向にギャッシュ壁面6aとギャッシュ底面6bに跨ることで、ギャッシュ6内においてギャッシュ壁面6aに反射した切り屑も外周刃逃げ面14eと外周溝面9aとに分散して排出されることになる。
【0040】
ギャッシュ6に入り込んだ切り屑が少なくとも最も回転方向後方側に位置する外周刃逃げ面14eと外周溝面9aとに分散して排出されることで、ギャッシュ6を経由する切り屑がギャッシュ6から外周溝9へ排出させられる分と、各外周刃5の回転方向後方側に位置する1面以上の外周刃逃げ面14eへ排出させられる分とに周方向(回転方向)に分散するため、ボール刃4が生成した切り屑がギャッシュ6内で貯留(停滞)しにくくなり、ギャッシュ6内からの切り屑の排出性が向上する。
【0041】
またギャッシュ壁面6aと共にギャッシュ6を構成し、ギャッシュ底面6bに連続するボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界61が、外周溝9を構成する外周刃5のすくい面8に入り込んでいる場合には、ボール刃4から外周刃5に移行する区間の刃(ボール刃4と外周刃5)が発生させた切り屑を直接、外周溝9へ排出させる分と、ギャッシュ6を経由させてから外周溝9へ排出させる分とに分散させることができるため、ギャッシュ6と外周溝9内での切り屑排出性が更に向上する。
【0042】
「ボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界61」は凹の稜線である場合のように境界線として明確に表れる場合と、凹曲面をなす場合のように境界線として明確に表れない場合がある。すくい面7とギャッシュ底面6bが互いに異なる面を形成する場合には境界61は境界線として明確に表れるが、すくい面7とギャッシュ底面6bが、曲率が連続的に変化する曲面のように連続した曲面を形成している場合には境界線は表れない。同様にギャッシュ壁面6aとギャッシュ底面6bとの境界67も凹の稜線である場合のように境界線として明確に表れる場合と、凹曲面をなす場合のように境界線として明確に表れない場合がある。
【0043】
「ボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界61が外周刃5のすくい面8に入り込んでいること」は
図3に示すように「ボール刃4のすくい面7と外周刃5のすくい面8との境界線62と、外周刃5のすくい面8とギャッシュ底面6bとの境界線63の交点64が、境界線62とボール刃4との交点65、及びすくい面8と外周溝面9aとの境界91とギャッシュ底面6bとの交点66よりシャンク部3側に入り込んで(位置して)いる」と言い換えられる。すくい面8と外周溝面9aとの境界91も凹の稜線である場合のように境界線として明確に表れる場合と、凹曲面をなす場合のように境界線として明確に表れない場合がある。
【0044】
ボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界61が外周刃5のすくい面8に入り込んでいることで、ギャッシュ6を構成するすくい面7とギャッシュ底面6bが外周溝9にギャッシュ6側からシャンク部3側に向かって食い込んでいる状態になる。
【0045】
請求項7ではボール刃4のすくい面7とギャッシュ底面6bとの境界61が外周刃5のすくい面8に入り込むことで、ボール刃4と外周刃5が発生させた切り屑がギャッシュ6と外周溝9のいずれか一方に集中することがなくなるため、いずれかの溝内での切り屑の詰まり(停滞)が生じにくくなる結果として、ギャッシュ6と外周溝9内での切り屑排出性が向上することになる。