【解決手段】実施形態のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドと、タンクと、配管と、循環装置と、流動状態変化装置とを持つ。インクジェットヘッドは、ノズルを有する。ノズルは、インクを吐出する。タンクは、インクを貯留する。配管は、インクジェットヘッドとタンクとを接続して、インクの循環流路を形成する。循環装置は、循環流路でインクを循環させる。流動状態変化装置は、配管内のインクの流動状態を変化させる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のインクジェット記録装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
実施形態のインクジェット記録装置10は、
図1に示すように、インクジェットヘッド11、第1タンク12、および第2タンク13を備えている。インクジェット記録装置10は、第1〜第3配管14〜16を備えている。インクジェットヘッド11、第1タンク12、および第2タンク13は、第1〜第3配管14〜16によって接続されている。インクジェットヘッド11、第1タンク12、第2タンク13、および第1〜第3配管14〜16は、インクの循環流路17を形成している。インクジェット記録装置10は、循環ポンプ18、供給タンク19、第4配管20、および供給ポンプ21を備えている。
【0009】
インクは、例えば、顔料の大きさが所定値以上であるアルミニウム顔料などを有する金属インクである。インクは、例えば、比重が所定値以上である銅、銀、および金などの金属を有する金属インクであってもよい。インクは、例えば、比重が所定値以上である酸化チタンまたはセラミックの顔料を有する白インクまたはセラミックインクであってもよい。これらのインクは、循環流路17内で静止している状態または循環流路17内の流動状態が一定の状態において顔料が循環流路17内で徐々に沈降、および堆積し易い。
【0010】
インクジェットヘッド11は、いわゆる循環型のインクジェットヘッドであり、インクの供給口31および排出口32を備えている。インクジェットヘッド11は、
図2に示すように、圧力室33、オリフィスプレート34、ノズル35、およびアクチュエータ36を備えている。
供給口31および排出口32は、インクジェットヘッド11の内部の循環路11aを介して、圧力室33に接続する。供給口31は、インクジェットヘッド11の外部から圧力室33の内部にインクを供給する。排出口32は、圧力室33の内部からインクジェットヘッド11の外部にインクを排出する。
圧力室33は、インクジェットヘッド11の内部の循環路11aよりも狭い形状を有している。圧力室33は、内壁の一部にオリフィスプレート34を備えている。オリフィスプレート34は、圧力室33内のインクを吐出するノズル35を備えている。圧力室33は、ノズル35に対向する内壁の一部にアクチュエータ36を備えている。アクチュエータ36は、圧力室33内のインクに圧力を付与して、インクをノズル35から吐出する。
【0011】
例えば、アクチュエータ36は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電セラミックスによる圧電素子によって圧力室33を直接的または間接的に変形させる。例えば、アクチュエータ36は、静電気によって圧力室33を直接的または間接的に変形させてもよい。例えば、アクチュエータ36は、インクに直接的に作用する静電気によって、インクをノズル35から吐出してもよい。例えば、アクチュエータ36は、インク内に気泡を発生させるために、インクを加熱するヒータ(図示略)を備えてもよい。このアクチュエータ36は、インク内に発生した気泡によって、圧力室33内のインクに圧力を付与する。
【0012】
第1タンク12は、循環流路17におけるインクジェットヘッド11の上流側においてインクを貯留する。第1タンク12は、インクの第1流入口12aおよび第1流出口12bを備えている。第2タンク13は、循環流路17におけるインクジェットヘッド11の下流側においてインクを貯留する。第2タンク13は、インクの第2流入口13aおよび第2流出口13bを備えている。第1配管14は、第1タンク12の第1流出口12bとインクジェットヘッド11の供給口31とを接続する。第2配管15は、インクジェットヘッド11の排出口32と第2タンク13の第2流入口13aとを接続する。第3配管16は、第2タンク13の第2流出口13bと第1タンク12の第1流入口12aとを接続する。
【0013】
循環ポンプ18は、第3配管16に配置されている。循環ポンプ18は、第3配管16内においてインクを送る方向を切り替える。循環ポンプ18は、インクを循環流路17内で循環させるために、第3配管16においてインクを第2タンク13から第1タンク12に送る。循環ポンプ18は、インクジェットヘッド11に到る循環流路17内の圧力を増大させるために、インクを第2タンク13から第1タンク12に送る。循環ポンプ18は、インクジェットヘッド11に到る循環流路17内の圧力を低下させるために、インクを第1タンク12から第2タンク13に送る。
【0014】
供給タンク19は、循環流路17の外部においてインクを貯留する。供給タンク19は、インクの第3流入口19aおよび第3流出口19bを備えている。第2タンク13は、インクの第4流入口13cを備えている。第4配管20は、供給タンク19の第3流出口19bと第2タンク13の第4流入口13cとを接続する。供給ポンプ21は、第4配管20に配置されている。供給ポンプ21は、第4配管20内においてインクを送る方向を切り替える。供給ポンプ21は、インクを供給タンク19から第2タンク13に供給するために、第4配管20においてインクを供給タンク19から第2タンク13に送る。供給ポンプ21は、インクを第2タンク13または第4配管20から供給タンク19に戻すために、インクを供給タンク19に送る。
【0015】
インクジェット記録装置10は、第1圧力配管41、第1開閉弁42、および第1圧力センサ43を備えている。第1圧力配管41は、第1タンク12に接続する。第1開閉弁42は、第1圧力配管41に配置されている。第1開閉弁42は、第1タンク12の内部を、大気に対して密閉または大気に開放する。第1圧力センサ43は、第1タンク12の内部の圧力を検出する。インクジェット記録装置10は、第1タンク12の内部でインクを撹拌するマグネチックスターラーなどの撹拌装置(図示略)を備えている。
【0016】
インクジェット記録装置10は、第2圧力配管44、第2開閉弁45、および第2圧力センサ46を備えている。第2圧力配管44は、第2タンク13に接続する。第2開閉弁45は、第2圧力配管44に配置されている。第2開閉弁45は、第2タンク13の内部を、大気に対して密閉または大気に開放する。第2圧力センサ46は、第2タンク13の内部の圧力を検出する。インクジェット記録装置10は、第2タンク13の内部でインクを撹拌するマグネチックスターラーなどの撹拌装置(図示略)を備えている。
【0017】
インクジェット記録装置10は、供給タンク19の内部でインクを撹拌するマグネチックスターラーなどの撹拌装置(図示略)を備えている。
インクジェット記録装置10は、第1タンク12、第2タンク13、および供給タンク19の少なくとも何れか1つが交換されるように構成されている。
【0018】
インクジェット記録装置10は、流動状態変化装置51および制御装置52を備えている。
流動状態変化装置51は、第1配管14に配置されている。流動状態変化装置51は、循環流路17においてインクジェットヘッド11に対して上流側の位置でインクの流動状態を変化させる。流動状態変化装置51は、第1配管14およびインクジェットヘッド11内に堆積する顔料を押し流すために、インクの流動状態を変化させる。例えば、流動状態変化装置51は、インクの流量を繰り返し変動させることによって、インクに脈動を発生させる。流動状態変化装置51は、
図3に示すように、第1配管14を径方向の両側から挟み込む第1および第2部材51a,51bと、駆動機構51cと、を備えている。第1配管14は、少なくとも第1および第2部材51a,51bに接触する部位が弾性変形する。駆動機構51cは、第1配管14の径方向に第1および第2部材51a,51bの各々を駆動する。第1および第2部材51a,51bの各々は、駆動機構51cの駆動力によって第1配管14の径方向に変位する。第1および第2部材51a,51bは、第1配管14を径方向の両側から繰り返し押し潰すように変形させる。
【0019】
制御装置52は、インクジェット記録装置10を統括して制御する。
制御装置52は、アクチュエータ36、循環ポンプ18、供給ポンプ21、第1開閉弁42、第2開閉弁45、および流動状態変化装置51を制御する。例えば、制御装置52は、インクジェットヘッド11のノズル35からインクを吐出するためにアクチュエータ36を駆動する。例えば、制御装置52は、循環流路17内でインクを循環させるために循環ポンプ18を駆動する。例えば、制御装置52は、インクを供給タンク19から第2タンク13に供給するために供給ポンプ21を駆動する。例えば、制御装置52は、圧力室33の圧力を規定圧(大気圧よりも低い圧力など)に設定するために循環ポンプ18および供給ポンプ21を駆動する。例えば、制御装置52は、循環流路17内を大気から密閉するために第1開閉弁42および第2開閉弁45を閉にする。例えば、制御装置52は、第1圧力センサ43が検出する第1タンク12の内部の圧力を取得する。例えば、制御装置52は、第1タンク12の内部の圧力を制御するために、第1開閉弁42を開閉する。例えば、制御装置52は、第2圧力センサ46が検出する第2タンク13の内部の圧力を取得する。例えば、制御装置52は、第2タンク13の内部の圧力を制御するために、第2開閉弁45を開閉する。
【0020】
制御装置52は、第1配管14内のインクの流動状態を変化させるために流動状態変化装置51を制御する。制御装置52は、インクが循環流路17内を流れているときに、流動状態変化装置51によってインクの流動状態を変化させる。制御装置52は、インクジェットヘッド11のノズル35がインクを吐出していないときに、流動状態変化装置51によってインクの流動状態を変化させる。制御装置52は、インクジェットヘッド11のノズル35が記録用にインクを吐出しているときに、流動状態変化装置51によってインクの流動状態が変化することを禁止する。
【0021】
制御装置52は、予め記憶している流動状態変化装置51の制御プログラムを用いて流動状態変化装置51の駆動を制御する。例えば、制御装置52は、規定の振動数および振幅の波形(正弦波など)によってインクの流量が変化するように、流動状態変化装置51を駆動する。例えば、制御装置52は、インクジェット記録装置10の始動時において、先ず、所定時間に亘って第1駆動状態で流動状態変化装置51を駆動する。次に、制御装置52は、所定時間の経過後に、第1駆動状態よりも抑制した第2駆動状態で流動状態変化装置51を駆動する。第1駆動状態は、例えば、インクの流動状態を変化させる度合い、および頻度のうち少なくとも何れか1つが、第2駆動状態に比べてより高い。
【0022】
制御装置52は、第1配管14内におけるインクの流動状態の変化に応じて不適切な事象が生じないように、循環ポンプ18および供給ポンプ21を制御する。例えば、制御装置52は、インクジェットヘッド11のノズル35から気泡の巻き込みが生じないように、循環ポンプ18および供給ポンプ21を制御する。例えば、制御装置52は、インクジェットヘッド11のノズル35からインクの押し出しが生じないように、循環ポンプ18および供給ポンプ21を制御する。
【0023】
以下、実施形態のインクジェット記録装置10の始動時の動作について説明する。
先ず、制御装置52は、
図4に示すように、第2タンク13の内部を大気に開放するために第2開閉弁45を開にする(ACT1)。
次に、制御装置52は、インクを供給タンク19から第4配管20を介して第2タンク13に供給するために供給ポンプ21を駆動する(ACT2)。
次に、制御装置52は、第1タンク12の内部を大気に開放するために第1開閉弁42を開にする(ACT3)。
次に、制御装置52は、インクを第2タンク13から第3配管16を介して第1タンク12に供給するために循環ポンプ18を駆動する(ACT4)。
次に、制御装置52は、第1タンク12および第2タンク13に規定量のインクを供給するために循環ポンプ18および供給ポンプ21の駆動を制御する(ACT5)。
次に、制御装置52は、第1タンク12および第2タンク13の各々の内部を密閉するために第1開閉弁42および第2開閉弁45を閉にする(ACT6)。
【0024】
次に、制御装置52は、第1タンク12の内部の圧力を増大させるために循環ポンプ18の駆動を制御する(ACT7)。制御装置52は、第1配管14および第2配管15において規定の流動状態でインクを流動させるために、循環ポンプ18および供給ポンプ21の駆動を制御する。制御装置52は、インクを第1タンク12から第1配管14を介してインクジェットヘッド11に流動させる。制御装置52は、インクをインクジェットヘッド11から第2配管15を介して第2タンク13に流動させる。制御装置52は、インクを循環流路17内に充填して、インクを循環流路17内で循環させる。制御装置52は、圧力室33の圧力を規定圧(大気圧よりも低い圧力など)に設定する。
【0025】
次に、制御装置52は、圧力室33の圧力が規定圧(大気圧よりも低い圧力など)である否かを判定する(ACT8)。
この判定結果が「NO」の場合(ACT8:NO)には、制御装置52は、ACT8の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT8:YES)には、制御装置52は、処理をACT9に進める。
次に、制御装置52は、圧力室33の圧力を規定圧に維持するために、循環ポンプ18の駆動を継続し、供給ポンプ21の駆動を停止する(ACT9)。
次に、制御装置52は、予め記憶している流動状態変化装置51の制御プログラムを用いて流動状態変化装置51の駆動を制御する(ACT10)。
以上により制御装置52は、始動時の動作を終了する。
【0026】
以上説明した実施形態によれば、インクの流動状態を変化させる流動状態変化装置51を持つことにより、循環流路17内で沈降または堆積した顔料を押し流すことができる。これによりインクジェット記録装置10は、均一の濃度のインクをインクジェットヘッド11に供給することができる。インクジェット記録装置10は、均一の濃度のインクをインクジェットヘッド11のノズル35から適正に吐出することができる。
さらに、インクジェットヘッド11の上流側に位置する流動状態変化装置51を持つことにより、圧力室33に供給するインクの濃度を効率良く均一化することができる。
さらに、第1配管14を変形させる流動状態変化装置51を持つことにより、複雑な装置を必要とせずに、インクの流量を容易に繰り返し変動させることができる。
さらに、ノズル35がインクを吐出していないときにインクの流動状態を変化させる流動状態変化装置51を持つことにより、インクの不安定な吐出を防ぐことができる。これによりインクジェット記録装置10は、ノズル35から吐出するインクによって均一な記録を行なうことができる。
さらに、インクが第1配管14内を流れているときにインクの流動状態を変化させる流動状態変化装置51を持つことにより、インクの濃度を的確に均一化することができる。
【0027】
以下、変形例について説明する。
上述した実施形態の変形例のインクジェット記録装置10は、
図5に示すように、第1の変形例の流動状態変化装置61を備えている。
この変形例の流動状態変化装置61は、第1配管14を径方向の両側から挟み込む回転体61aおよび支持部材61bと、モータ61cと、を備えている。第1配管14は、少なくとも回転体61aおよび支持部材61bに接触する部位が弾性変形する。モータ61cは、回転体61aを回転軸O周りに回転駆動する。回転体61aは、外周面61A上において外方に突出する複数の突出部61dを備えている。回転体61aは、回転軸O周りの回転によって、複数の突出部61dの何れかを断続的に第1配管14に接触させる。複数の突出部61dの各々は、第1配管14を径方向で支持部材61bに向かい押し潰すように変形させる。
以上説明した変形例によれば、流動状態変化装置61は単純な構成でインクの流動状態を変化させることができる。
【0028】
以下に他の変形例について説明する。
上述した実施形態の他の変形例のインクジェット記録装置10は、流動状態変化装置51の代わりに、第1配管14を開閉する流動状態変化装置を備えてもよい。この流動状態変化装置は、例えば、第1配管14に配置された開閉弁などである。この開閉弁は、インクの流量を繰り返し変動させるために、第1配管14の開閉を断続的に繰り返す。
上述した実施形態の他の変形例のインクジェット記録装置10は、流動状態変化装置51の代わりに、第1配管14を断続的に屈曲させる流動状態変化装置を備えてもよい。この流動状態変化装置は、インクの流量を繰り返し変動させるために、第1配管14を断続的に繰り返し屈曲させる。
上述した実施形態の他の変形例のインクジェット記録装置10は、流動状態変化装置51の代わりに、インクに振動または乱流を発生させる流動状態変化装置を備えてもよい。
【0029】
上述した実施形態の他の変形例のインクジェット記録装置10は、第1圧力配管41および第2圧力配管44の各々に圧力を調整するためのポンプを備えてもよい。このポンプは、例えば、インクジェット記録装置10の停止時などにおいて、圧力室33の圧力を規定圧(大気圧よりも低い圧力など)に維持する。
【0030】
上述した実施形態の他の変形例のインクジェット記録装置10は、供給タンク19を、第2タンク13の代わりに第1タンク12に接続してもよい。
上述した実施形態の他の変形例のインクジェット記録装置10は、流動状態変化装置51を、第1配管14の代わりに他の配管(例えば第2配管15など)に備えてもよい。
【0031】
上述した実施形態の他の変形例のインクジェット記録装置10において、制御装置52は、ソフトウェア機能部、またはLSIなどのハードウェア機能部であってもよい。制御装置52は、上述した制御装置52の機能全体または一部を実現するためのプログラムを実行する処理装置(CPUなど)を備えてもよい。
【0032】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、流動状態変化装置51を持つことにより、循環流路17内で沈降または堆積した顔料を押し流すことができる。これによりインクジェット記録装置10は、均一の濃度のインクをインクジェットヘッド11に供給することができる。インクジェット記録装置10は、均一の濃度のインクをインクジェットヘッド11のノズル35から適正に吐出することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。