(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-182491(P2015-182491A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】シートベルト用リトラクタ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/44 20060101AFI20150925BHJP
【FI】
B60R22/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-58479(P2014-58479)
(22)【出願日】2014年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【復代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【復代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(74)【復代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】松木 培
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018LA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品点数を増加することなく、巻き取りばねの内端部とスピンドルの軸部とを容易、且つ確実に連結することができるシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】シートベルト用リトラクタは、互いに対向する一対の側板を有するリトラクタフレームと、リトラクタフレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドル12と、スピンドル12をウェビングの巻き取り方向に付勢する巻き取りばね25と、スピンドル12のウェビング引き出し方向の回転をロックするロック機構と、を備える。リトラクタフレームの側板から突出するスピンドル12の軸部40には、径方向外面に凹部44が形成され、巻き取りばね25の内端部28は、凹部44内に収容されるように、略円形状に形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の側板を有するリトラクタフレームと、
該リトラクタフレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記スピンドルを前記ウェビングの巻き取り方向に付勢する巻き取りばねと、
前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック機構と、
を備えるシートベルト用リトラクタであって、
前記リトラクタフレームの側板から突出する前記スピンドルの軸部は、前記巻き取りばねの内端部を係止する巻き取りばね係止部を備え、
前記巻き取りばねの内端部は、略円形状に形成された丸端部を備え、
前記巻き取りばね係止部には、前記スピンドルの軸部の径方向外面に向かって開口し、前記丸端部が収容される凹部が形成されていることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記巻き取りばね係止部には、複数の前記凹部が形成され、
隣接する前記凹部の間には、鉤部が形成され、
前記鉤部が、前記巻き取りばねの丸端部を引っ掛ける構造であることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記鉤部は、径方向外面に向かうにつれて根元部に近づくように傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記鉤部は、軸中心部からそれぞれ径方向に延出した後、周方向一方側にそれぞれ折れ曲がっており、
前記巻き取りばねは、前記凹部に収容される前記巻き取りばねの内端部から周方向他方側に延びることを特徴とする請求項2または3に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト用リトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートベルト用リトラクタにおいては、ウェビングを巻き取るスピンドルを常時付勢する巻き取りばねと、巻き取りばねの内端が係止されるとともに、巻き取りばねの付勢力をスピンドルに伝達するブッシュと、巻き取りばね及びブッシュを収容するとともに、巻き取りばねの外端を係止するスプリングケースと、スプリングケースを覆うカバーとで、サブアッセンブリし、サブアッセンブリされた巻き取りばね装置をフレームに取り付けて組み立て、さらに、巻き取りばねを巻上状態にするように工夫したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−254389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のシートベルト用リトラクタでは、ブッシュを用いてサブアッセンブリを行っており、巻き取りばねの内端部をブッシュに確実に嵌めこむことができるが、部品点数が増加するという課題がある。また、サブアッセンブリのブッシュとスピンドルの軸部とは、目視しながら組み立てる必要がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、部品点数を増加することなく、巻き取りばねの内端部とスピンドルの軸部とを容易、且つ確実に連結することができるシートベルト用リトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、下記の構成によって達成される。
(1) 互いに対向する一対の側板を有するリトラクタフレームと、
該リトラクタフレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記スピンドルを前記ウェビングの巻き取り方向に付勢する巻き取りばねと、
前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック機構と、
を備えるシートベルト用リトラクタであって、
前記リトラクタフレームの側板から突出する前記スピンドルの軸部は、前記巻き取りばねの内端部を係止する巻き取りばね係止部を備え、
前記巻き取りばねの内端部は、略円形状に形成された丸端部を備え、
前記巻き取りばね係止部には、前記スピンドルの軸部の径方向外面に向かって開口し、前記丸端部が収容される凹部が形成されることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(2) 前記巻き取りばね係止部には、複数の前記凹部が形成され、
隣接する前記凹部の間には、鉤部が形成され、
前記鉤部が、前記巻き取りばねの丸端部を引っ掛ける構造であることを特徴とする(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(3) 前記鉤部は、径方向外面に向かうにつれて根元部に近づくように傾斜する傾斜面を有していることを特徴とする(2)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(4) 前記鉤部は、軸中心部からそれぞれ径方向に延出した後、周方向一方側にそれぞれ折れ曲がっており、
前記巻き取りばねは、前記凹部に収容される前記巻き取りばねの内端部から周方向他方側に延びることを特徴とする(2)または(3)に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシートベルト用リトラクタによれば、リトラクタフレームの側板から突出するスピンドルの軸部は、巻き取りばねの内端部を係止する巻き取りばね係止部を備え、巻き取りばねの内端部は、略円形状に形成された丸端部を備え、巻き取りばね係止部には、スピンドルの軸部の径方向外面に向かって開口し、丸端部が収容される凹部が形成される。これにより、部品点数を増加することなく、巻き取りばねの内端部とスピンドルの軸部とを容易、且つ確実に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係るシートベルト用リトラクタを示す斜視図である。
【
図2】
図1のシートベルト用リトラクタの断面図である。
【
図3】巻き取りばね、巻き取りばねカバー、及びスピンドルの斜視図である。
【
図4】巻き取りばねの内端部と、スピンドルの軸部との関係を示す正面図である。
【
図5】本発明の変形例に係る、巻き取りばねの内端部と、スピンドルの軸部との関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るシートベルト用リトラクタについて図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本実施形態のシートベルト用リトラクタ10は、
図1及び
図2に示すように、互いに対向する第1の側板11a及び第2の側板11bを有するリトラクタフレーム11と、リトラクタフレーム11に回転可能に支持され、シートベルト(図示せず)を巻き取るスピンドル12と、スピンドル12をシートベルトの巻き取り方向に付勢する巻き取りばね装置17と、車両の水平方向の加速度を検出する加速度センサ13と、加速度センサ13によって検出される加速度に応じてシートベルトの引出動作をロックするロック機構14と、を備える。
【0011】
巻き取りばね装置17は、スピンドル12の軸方向一端側に配置されて、リトラクタフレーム11に取り付けられる。一方、加速度センサ13及びロック機構14は、スピンドル12の軸方向他端側に配置され、リトラクタフレーム11の第1の側板11aに取り付けられるシステムカバー19内に収容される。
【0012】
巻き取りばね装置17は、巻き取りばね25、及び、巻き取りばね25を収納し、リトラクタフレーム11の第2の側板11bに取り付けられる巻き取りばねカバー26、27を備え、巻き取りばね25の内端部28がスピンドル12の先端部に取り付けられ、外端部29が巻き取りばねカバー26に取り付けられる。
【0013】
ロック機構14は、公知の種々の構成を採用することができる。本実施形態の場合には、ロック機構14は、リトラクタフレーム11の第1の側板11aと、該側板11aに取り付けられるベアリング板31との間に、WSレバー(図示せず)、ステアリングホイール33、慣性体34、及びスプリング35を備える。慣性体34は、ステアリングホイール33に若干相対回転可能に取り付けられており、また、WSレバーは、ステアリングホイール33にスプリング35によって付勢された状態で、回転可能に取り付けられている。WSレバーは、慣性体34とステアリングホイール33が相対回転すると、スプリング35の付勢力に抗して回転することで、ベアリング板31の内歯31aと係合する。
【0014】
また、車両衝突等で水平方向の加速度が所定値より大きいとき、加速度センサ13のセンサウェイト21が移動し、センサレバー(図示せず)を上方に回動する。続いてセンサレバーが上方に回動して、ステアリングホイール33と係合する。そして、ステアリングホイール33の引き出し方向の回転が阻止された状態でシートベルトがリトラクタ10から引き出されると、ステアリングホイール33がスピンドル12に対して回転遅れを生じ、ステアリングホイール33に回動可能に取り付けられたロック片16が径方向外方に移動してリトラクタフレーム11の側板11aの内側に形成されたロック歯11fと係合し、スピンドル12によるシートベルトの引き出し動作がロックされる。
【0015】
したがって、減速度やウェビングWの急な引き出しによってロック機構14が作動すると、スピンドル12がリトラクタフレーム11にロックされ、スピンドル12のウェビング引出し方向の回転が阻止されて、ウェビングWの引出し動作がロックされる。
【0016】
ここで、本実施形態では、
図2〜
図4に示すように、スピンドル12の軸方向両端部には、リトラクタフレーム11の第1及び第2の側板11a、11bの穴部からそれぞれ突出する軸部40、41が設けられる。第1の側板11aから突出するスピンドル12の軸部41は、ベアリング板31に回転自在に支持される。
【0017】
一方、
図4に示すように、第2の側板11bから突出するスピンドル12の軸部40は、巻き取りばねカバー27の円孔27aからさらに突出する。該軸部40は、巻き取りばね25の内端部28を係止する巻き取りばね係止部45を備える。巻き取りばね係止部45には、スピンドル12の軸部40の径方向外面に向かって開口する複数(本実施形態では、3つ)の凹部44が設けられる。複数の凹部44は、隣接する凹部44の間にそれぞれ設けられた複数(本実施形態では、3つ)の鉤部43によって形成されている。鉤部43は、軸中心部42からそれぞれ径方向に延出した後、周方向一方側(
図4では、時計方向)にそれぞれ折れ曲がっている。これにより、軸部40の径方向外面は、複数の鉤部43によって部分的に構成され、また、隣接する鉤部43の間に、複数の凹部44が設けられる。
【0018】
一方、巻き取りばね25の内端部28は、内端縁28aが鉤部43と接触しないように、略円形状に丸められた丸端部46を形成している。巻き取りばね25は、丸端部46を凹部44内に収容しつつ鉤部43によって引っ掛けられ、スピンドル12の軸部40の径方向外面を覆うようにして、渦巻き状に形成される。これにより、巻き取りばね25の内端縁28aがバリなどにより、鉤部43に引っ掛かって、凹部44内に収容されない状態となるのを防止することができる。
【0019】
また、巻き取りばね25は、凹部44に収容される巻き取りばね25の内端部28から周方向他方側(
図4では、反時計方向)に延びるので、くさび状に形成された鉤部43の先端部が、巻き取りばね25の円形状の丸端部46の付け根部分に嵌り込み、巻き取りばね25とスピンドル12とを確実に連結させることができる。
【0020】
さらに、軸部40の各鉤部43は、径方向外面に向かうにつれて根元部47に近づくように傾斜する傾斜面43aを有している。このため、巻き取りばねカバー26、27内に巻き取りばね25が収容された状態で、巻き取りばねカバー27の円孔27a内にスピンドル12の軸部40を挿入して回すことで、巻き取りばね25の内端部28は、鉤部43の傾斜面43aに当接した場合でも、確実に凹部44へと移動して、凹部44内に収容することができる。即ち、巻き取りばね25の内端部28は、目視せずに、凹部44内に確実に収容することができる。
なお、根元部47は、スピンドル12の本体部分から延びる軸部40の付け根部分である。
また、傾斜面43aは、本実施形態のように若干湾曲していてもよいし、直線状であってもよい。
【0021】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ10によれば、リトラクタフレーム11の第2の側板11bから突出するスピンドル12の軸部40は、巻き取りばね25の内端部28を係止する巻き取りばね係止部45を備え、巻き取りばね25の内端部48は、略円形状に形成された丸端部46を備え、巻き取りばね係止部45には、スピンドル12の軸部40の径方向外面に向かって開口し、丸端部46が収容される凹部44が形成されている。これにより、巻き取りばね25の内端縁28aがスピンドル12の軸部40と接触する可能性のある構成と比べて、内端縁28aのバリなどによる影響を受けず、巻き取りばね25の内端部28とスピンドル12の軸部40とを確実に連結することができる。
【0022】
また、巻き取りばね係止部45には、複数の凹部44が形成され、隣接する凹部44の間には、鉤部43が形成され、鉤部43が、巻き取りばね25の丸端部46を引っ掛ける構造であるので、凹部44に収容される巻き取りばね25とスピンドル12とを確実に連結させることができる。
【0023】
また、鉤部43は、径方向外面に向かうにつれて根元部47に近づくように傾斜する傾斜面43aを有しているので、巻き取りばね25の内端部28を目視せずに、該内端部28をいずれかの凹部44に確実に収容することができる。
【0024】
さらに、鉤部43は、軸中心部42からそれぞれ径方向に延出した後、周方向一方側にそれぞれ折れ曲がっており、巻き取りばね25は、凹部44に収容される巻き取りばね25の内端部28から周方向他方側に延びるので、巻き取りばね25とスピンドル12とをより確実に連結させることができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態のものに限定されるものでなく、適宜、改良または変形などが可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
たとえば、スピンドルの軸部の径方向外面に形成された凹部は、本実施形態のものに限定されず、巻き取りばねの略円形状の内端部が収容される形状であればよい。
また、上記実施形態では、巻き取りばね係止部45は、3つの鉤部43によって3つの凹部44が設けられているが、これに限らず、例えば、
図5に示すように、4つの鉤部43によって4つの凹部44が設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 シートベルト用リトラクタ
12 スピンドル
14 ロック機構
19 システムカバー
25 巻き取りばね
26、27 巻き取りばねカバー
28 巻き取りばねの内端部
40 軸部
42 軸中心部
43 鉤部
43a 傾斜面
44 凹部