(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-182503(P2015-182503A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B62J 1/12 20060101AFI20150925BHJP
B60N 2/24 20060101ALI20150925BHJP
【FI】
B62J1/12 B
B60N2/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-58898(P2014-58898)
(22)【出願日】2014年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】坪井 良充
(72)【発明者】
【氏名】矢口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達哉
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CE00
(57)【要約】
【課題】回転機構によって、跳ね上げ状態と着座状態とを切り替えが可能な車両用シートにおいて、回転機構とシートとの干渉が生じない二・三輪車用跨座式シートに好適な車両用シートを提供する。
【解決手段】本発明の車両用シートSは、ボトムプレート10と、着座部20と、サイド部30と、を有するものである。そして、表皮材Hで着座部10及びサイド部30を被覆している。この車両用シートSには、回動機構を介して、着座状態と跳ね上げ状態に切り替え可能であって、回動機構と相対するサイド部30に回動機構の逃げ部70を設けている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムプレートと、着座部と、サイド部と、を有し、表皮材で前記着座部及び前記サイド部を被覆してなる車両用シートにおいて、
該車両用シートは、回動機構を介して、着座状態と跳ね上げ状態に切り替え可能であって、
前記回動機構と相対する前記サイド部に前記回動機構の逃げ部を設けたことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記逃げ部は、前記ボトムプレートを切り欠いて形成した切欠き部であることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記逃げ部は円弧状に切り欠いた切欠き部であることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項4】
前記逃げ部の外側をカバー部材で覆ってなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記切欠き部に沿わせて表皮を取り付けることを特徴とする請求項3記載の車両用シート。
【請求項6】
前記カバー部材に延出部を設け、延出部をサイド部の内面に取り付けてなることを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シートに係り、特に、後部側が可動して跳ね上げ状態と着座状態とを切り替えが可能な二・三輪車用跨座式シートに好適な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両用シートについて、ヒンジ機構などの回動機構を介して、着座状態と跳ね上げ状態に切り替え可能になっている技術は知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回動機構の形状や大きさによっては、車両用シートの回転機構とシート、例えばシート外周部であるサイド部などが干渉する虞が生じる場合がある。なお、本明細書における「サイド部」とは着座部を除くシート外周部をいい、前後の側部、左右の側部を含んだ表現として用いる。
【0005】
回転機構の形状や大きさなど、回転機構が変わっても、サイド部などが干渉する虞のない二・三輪車用シートが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、回転機構によって、跳ね上げ状態と着座状態とを切り替えが可能な車両用シートにおいて、回転機構とシートとの干渉が生じない二・三輪車用跨座式シートに好適な車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、ボトムプレートと、着座部と、サイド部と、を有し、表皮材で前記着座部及び前記サイド部を被覆してなる車両用シートにおいて、前記車両用シートには、回動機構を介して、着座状態と跳ね上げ状態に切り替え可能であって、前記回動機構と相対する前記サイド部に前記回動機構の逃げ部を設けたこと、により解決される。
このように、逃げ部が形成されているので、この逃げ部によって、サイド部と回動機構との干渉を抑制しつつ、シートの大型化を抑制できる。
【0008】
このとき、前記逃げ部は、前記ボトムプレートを切り欠いて形成した切欠き部であると好適である。
このように、逃げ部を切欠き部で形成しており、切り欠くだけであるので逃げ部の構成が簡単である。
【0009】
また前記逃げ部は、円弧状に切り欠いた切欠き部であるとより好適である。
このように、円弧状の切欠き部にすると、サイド部、つまりシート外周部の剛性低下を抑制できる。
【0010】
そして、前記逃げ部の外側をカバー部材で覆って構成すると好適である。
このように、カバー部材で覆うことにより、逃げ部を介して異物の侵入を抑制できる。
【0011】
さらに、前記切欠き部に沿わせて表皮を取り付けると好適である。
このように切欠き部が円弧状であるので、切欠きに沿わせて表皮を取付けるときに、四角形状の切欠きに比べて、表皮の取付け作業が容易になり、シワなども少なくなる。
【0012】
また、前記カバー部材に延出部を設け、延出部をサイド部の内面に取り付けると好適である。このように延出部をサイド部の内面に取り付けると、カバー部材の安定した取付けが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、逃げ部によって、サイド部と回動機構との干渉を抑制しつつ、シートの大型化を抑制できる。また逃げ部を切欠き部で形成しており、切り欠くだけであるので逃げ部の構成が簡単である。
また、円弧状の切欠き部にすると、サイド部、つまりシート外周部の剛性低下を抑制できる。カバー部材で覆うことにより、逃げ部を介して異物の侵入を抑制できる。
欠き部が円弧状であるので、切欠きに沿わせて表皮を取付けるときに、四角形状の切欠きに比べて、表皮の取付け作業が容易になり、シワなども少なくなる。そして延出部をサイド部の内面に取り付けると、カバー部材の安定した取付けが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】二・三輪車用跨座式シートの側部側のサイド部である。
【
図4】二・三輪車用跨座式シートの前部側のサイド部である。
【
図8】跳ね上げ状態のカバー取り付け時状態の裏面側の説明図である。
【
図9】跳ね上げ状態のカバー取り外した状態の裏面側の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0016】
本実施形態では、車両用シートとして、二・三輪車用跨座式シートを例にして説明する。本実施形態の二・三輪車用跨座式シートSは、ボトムプレート10と、着座部20と、サイド部30と、を有している。なお前述したように、本明細書において「サイド部30」とは着座部20を除くシート外周部をいい、前後の側部、左右の側部を含んだ表現として用いている。また本実施形態で示す図中の記号Sfは前席用のシートであり、記号Bはベルトである。
【0017】
そして、二・三輪車用跨座式シートSは、ボトムプレート10に、クッションKを載置して、表皮材HでクッションKを被覆している。より具体的には、表皮材HでクッションKを被覆して、ボトムプレート10のサイド部30を巻き込んで、表皮材Hの端末部を、ボトムプレート10の裏側面(車体と対向する面側)の外周の位置で、タッカー等の取着具でステイプル40を打ち込んで取り付けている。このようにして、上面側が着座部20となっており、この着座部20の側部側はサイド部30として形成されている。
【0018】
表皮材Hは、大判部H1と、サイドマチH2と、中見え防止カバーH3とから構成されており、大判部H1は二・三輪車用跨座式シートSのシート形状に合わせて予め所定形状に成形された成形用ウーリーナイロンで構成し、サイドマチH2は成形されていない非成形ウーリーナイロンで構成し、中見え防止カバーH3は成形されていない非成形ウーリーナイロンで構成している。このように本実施形態では、大判部H1とサイドマチH2と中見え防止カバーH3とが同じ素材で形成されているので、表皮材Hの一体感を確保することができる。また中見え防止カバーH3は、後述する逃げ部70である切欠き部の外側を覆って外観を良好にするものである。
本実施形態では、表皮材Hの大判部H1及びサイドマチH2の厚さは同じものを用いており、中見え防止カバーH3の厚さは大判部H1及びサイドマチH2の厚さより薄いものを用いている。
【0019】
本実施形態の中見え防止カバーH3は、
図1で示すように、着座部20の前方位置で、着座部20を被覆する大判部H1と縫合ライン50で縫合されて、前側の側部のサイド部30を被覆するものである。なお、この縫合ライン50は、前述したベルトBを配置することにより、覆われて外観から見えないように構成されている。このため、大判部H1とサイドマチH2と中見え防止カバーH3が同一素材で形成されているのと相俟って、表皮材Hとしての一体感を確保している。
【0020】
この表皮材Hの着座部20とサイド部30との縫合は、
図11の(a)〜(c)で示すように大判部H1とサイドマチH2と中見え防止カバーH3の縫合により行われる。すなわち、
図11は
図1のa−a断面に相当する縫合方法を説明するものであるが、先ず、大判部H1と、サイドマチH2と、中見え防止カバーH3の三枚を第1縫合部51で合わせ縫いを行う。次に、大判部H1と中見え防止カバーH3とを第2縫合部52で仮縫いする。そして、サイドマチH2の縫合部51で、中見え防止カバーH3側に位置するサイドマチH2の縫合部51より下側の部分(切除部54)を切断する。そして、大判部H1とサイドマチH2、中見え防止カバーH3、を第3縫合部53で三枚を同時にシングルステッチ縫製する。
【0021】
このように、サイドマチH2の一部を切除部54でカットすると、通常であれば、シングルステッチでの第3縫合部53が表皮の4枚重ねになってしまい、外観に凹凸が発生しやすくなるが、本実施形態のように、第1縫合部51での合わせ縫い後に、サイドマチH2の縫い代部分(切除部54)を1枚カットすることにより、第3縫合部53で縫合したときに、外観に凹凸がでないようにして、外観に影響を及ぼさないようにできる。
【0022】
図10は、固定用表皮H4の説明図であるが、この固定用表皮H4は中見え防止カバーH3のバタツキを抑えるものであり、中見え防止カバーH3と一体で端部側の中心位置(センター)に形成されている。そして、固定用表皮H4は、ステイプル40によってボトムプレート10に固定されている。
【0023】
本実施形態のボトムプレート10は樹脂製(例えばPP;ポリプロピレンなど)の一枚の板体から構成されており、所定箇所に強度向上のためのビード、凹凸部などが適宜形成されており、車体側と対向する前方側の位置には、後述する回転機構60が取付けられるものであり、車体側と対向する後方側の位置には、車体側と着脱可能に連結される連結部80(
図3参照)が形成されている。連結部80は門型の係合部で車体側のキャッチ部(不図示)などによって着脱可能に形成されている。
またボトムプレート10のサイド部30である前側の側部には、逃げ部70を形成するためボトムプレート10を切り欠いて形成した切欠き部となっている。
本実施形態の切欠き部は、円弧状に切り欠いたもので、この円弧状の切欠き部が逃げ部70を形成している。
【0024】
図8は跳ね上げ状態のカバー90を取り付け時状態の裏面側の説明図、
図9は
図8のカバー90を取り外した状態の裏面側の説明図である。これらの図では回転機構の詳細は省略している。そして、車両用シートである二・三輪車用跨座式シートSは、回動機構60を介して、着座状態と跳ね上げ状態に切り替え可能となっている。
【0025】
そして、回動機構60と相対する前側のサイド部30には、回動機構60の逃げ部70が設けられている。この逃げ部70は前述したように、ボトムプレート10を切り欠いた切欠き部にサイドマチH2を沿わせて被覆しており、この逃げ部70である切欠き部が円弧状の場合には、切欠きに沿わせて、表皮(サイドマチH2)を取付けるときに、四角形状の切欠きに比べて、表皮の取付け作業が容易になり、シワなども少なくなる。
そして、逃げ部の外側をカバー部材である中見え防止カバーH3で覆っているので、着座状態となる前側のサイド部30が露見しても、外観に逃げ部が露見しないで、外観が良好となる。
【符号の説明】
【0026】
10 ボトムプレート
20 着座部
30 サイド部
40 ステイプル
50 縫合ライン
51 第1縫合部
52 第2縫合部
53 第3縫合部
54 切除部
60 回転機構
70 逃げ部
80 連結部
90 カバー
K クッション
H 表皮材
H1 大判部
H2 サイドマチ
H3 中見え防止カバー
H4 固定用表皮
Sf 前席用のシート
B ベルト
S 二・三輪車用跨座式シート