(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-182890(P2015-182890A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】チタン酸バリウム粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20150925BHJP
【FI】
C01G23/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-57532(P2014-57532)
(22)【出願日】2014年3月20日
(11)【特許番号】特許第5715279号(P5715279)
(45)【特許公報発行日】2015年5月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将
(72)【発明者】
【氏名】国枝 武久
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA05
4G047CB05
4G047CB08
4G047CC02
4G047CD04
4G047CD07
(57)【要約】
【解決課題】固相法で微細なチタン酸バリウムを製造することができるチタン酸バリウムの製造方法を提供すること。
【解決手段】バリウム化合物と、平均粒子径が0.1〜0.6μmの二酸化チタンと、を混合し、焼成原料混合物を得る原料混合工程と、該焼成原料混合物を850〜1000℃で焼成し、チタン酸バリウム凝集物を得る焼成工程と、該チタン酸バリウム凝集物を粉砕して、チタン酸バリウム粉末を得る粉砕工程と、を有し、該原料混合工程における該焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)が0.992〜0.998であること、該原料混合工程で得られる該焼成原料混合物を粉砕することなく、該焼成工程で焼成すること、該粉砕工程を行い得られるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径が0.1〜1.0μmであること、を特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム化合物と、平均粒子径が0.1〜0.6μmの二酸化チタンと、を混合し、焼成原料混合物を得る原料混合工程と、
該焼成原料混合物を850〜1000℃で焼成し、チタン酸バリウム凝集物を得る焼成工程と、
該チタン酸バリウム凝集物を粉砕して、チタン酸バリウム粉末を得る粉砕工程と、
を有し、
該原料混合工程における該焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)が0.992〜0.998であること、
該原料混合工程で得られる該焼成原料混合物を粉砕することなく、該焼成工程で焼成すること、
該粉砕工程を行い得られるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径が0.1〜1.0μmであること、
を特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項2】
前記二酸化チタンの平均粒子径に対する前記チタン酸バリウム粉末の平均粒子径の比が1.05〜1.6であることを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程を行い得られるチタン酸バリウム粉末が正方晶であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体、積層セラミックコンデンサ、オプトエレクトロニクス材、誘電体、半導体、センサー等の機能性セラミックの原料として用いられるチタン酸バリウム粉末の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電体、積層セラミックコンデンサ等の機能性セラミックの原料用の材料としてのチタン酸バリウムには、高容量化、高誘電率化等、性能の向上を目的として、より微細な、平均粒子径が1μm以下のチタン酸バリウムが要求されるようになってきた。
【0003】
従来より、チタン酸バリウムは、固相法、水熱合成法、アルコキシド法、シュウ酸塩法等により製造されている。水熱合成法、アルコキシド法及びシュウ酸塩法は、固相法に比べ、原料コストが高いことや、熟成や操作が煩雑になることから、固相法に比べ、製造コストが高く、また、製造効率も悪い。そのため、従来より、安価なチタン酸バリウムの製造方法としては、固相法が用いられていた。
【0004】
そして、固相法によるチタン酸バリウムの製造では、原料に二酸化チタンとバリウム化合物を用いて、それらの混合物を焼成することにより、チタン酸バリウムを製造することが一般的に行われている。例えば、特開2004−59372号公報(特許文献1)、特開2009−1214015号公報(特許文献2)には、二酸化チタンと炭酸バリウムを湿式混合し、乾燥後、粉砕を行い、得られる粉砕物を焼成して、チタン酸バリウムを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−59372号公報(実施例)
【特許文献2】特開2009−1214015号公報(実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、近年では、性能の向上を目的として、より微細な、平均粒子径が1μm以下のチタン酸バリウムが要求されるようになってきたが、固相法により製造されるチタン酸バリウムの平均粒子径は、原料となる二酸化チタンの平均粒子径に依存するため、平均粒子径が小さいチタン酸バリウムを製造するためには、平均粒子径が小さい二酸化チタンを用意することが必要であった。
【0007】
ところが、平均粒子径が小さい二酸化チタンを得るためには、一般的にコストがかかるため、比較的コストをかけずに得られる平均粒子径の大きい二酸化チタンを用いても、微細なチタン酸バリウムを得ることができる方法が求められていた。
【0008】
従って、本発明の目的は、固相法で、原料として平均粒子径の大きい二酸化チタンを用いても、微細なチタン酸バリウムを製造することができるチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)は、バリウム化合物と、平均粒子径が0.1〜0.6μmの二酸化チタンと、を混合し、焼成原料混合物を得る原料混合工程と、
該焼成原料混合物を850〜1000℃で焼成し、チタン酸バリウム凝集物を得る焼成工程と、
該チタン酸バリウム凝集物を粉砕して、チタン酸バリウム粉末を得る粉砕工程と、
を有し、
該原料混合工程における該焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)が0.992〜0.998であること、
該原料混合工程で得られる該焼成原料混合物を粉砕することなく、該焼成工程で焼成すること、
該粉砕工程を行い得られるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径が0.1〜1.0μmであること、
を特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固相法で、原料として平均粒子径の大きい二酸化チタンを用いても、微細なチタン酸バリウムを製造することができるチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法は、バリウム化合物と、平均粒子径が0.1〜0.6μmの二酸化チタンと、を混合し、焼成原料混合物を得る原料混合工程と、
該焼成原料混合物を850〜1000℃で焼成し、チタン酸バリウム凝集物を得る焼成工程と、
該チタン酸バリウム凝集物を粉砕して、チタン酸バリウム粉末を得る粉砕工程と、
を有し、
該原料混合工程における該焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)が0.992〜0.998であること、
該原料混合工程で得られる該焼成原料混合物を粉砕することなく、該焼成工程で焼成すること、
該粉砕工程を行い得られるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径が0.1〜1.0μmであること、
を特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法である。
【0012】
原料混合工程は、バリウム化合物と二酸化チタンとを混合して、焼成原料混合物を得る工程である。
【0013】
原料混合工程に係るバリウム化合物は、バリウム原子を有する化合物であり、炭酸バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム等のバリウムの無機塩が挙げられる。これらのうち、バリウム化合物としては、炭酸バリウムが好ましい。バリウム化合物の平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、特に制限されず、適宜選択される。
【0014】
原料混合工程に係る二酸化チタンの平均粒子径は、0.1〜0.6μm、好ましくは0.1〜0.5μm、特に好ましくは0.15〜0.4μmである。二酸化チタンの平均粒子径が上記範囲であることにより、平均粒子径が0.1〜1μm、好ましくは0.15〜0.5μmのチタン酸バリウムが得られる。なお、本発明において二酸化チタンの平均粒子径とは、二酸化チタンの一次粒子の平均粒子径を指す。
【0015】
原料混合工程に係る焼成原料混合物は、バリウム化合物と二酸化チタンを、湿式又は乾式で混合することにより得られる。湿式でバリウム化合物と二酸化チタンを混合する場合は、混合後に、焼成原料混合物を乾燥してもよい。湿式でバリウム化合物と二酸化チタンを混合する場合、溶媒としては、水道水、純水、イオン交換水、工業用水、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、キシレン、アセトン等が挙げられる。
【0016】
原料混合工程において、乾式でバリウム化合物と二酸化チタンを混合するときの混合手段としては、ハイスピードミキサー、スーパーミキサー、ターボスフェアミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、リボンブレンダー等が挙げられ、また、湿式でバリウム化合物と二酸化チタンを混合するときの混合手段としては、ボールミル、ピンミル、ビーズミル、ディスパーミル、ホモジナイザー、振動ミル、アトライター等が挙げられる。
【0017】
原料混合工程における焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)は、原子換算のモル比で、0.992〜0.998、好ましくは0.993〜0.997、特に好ましくは0.994〜0.996である。焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比が上記範囲であることにより、バリウム化合物と二酸化チタンとの反応を完結させるための焼成温度を低くすることができるので、焼成温度が高くなることによるチタン酸バリウム粒子の粒成長を少なく抑えることができるため、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)を小さくすることができる。一方、焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比が、上記範囲未満だと、バリウムが不足することにより、正方晶のチタン酸バリウムが得られず、また、上記範囲を超えると、正方晶のチタン酸バリウムを得るためには、焼成温度を高くする必要があり、その影響で、チタン酸バリウム粒子が粒成長して、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)が大きくなってしまう。
【0018】
焼成工程は、原料混合工程を行い得られる焼成原料混合物を焼成することにより、チタン酸バリウム凝集物を得る工程である。
【0019】
焼成工程において、焼成原料混合物を焼成するときの焼成温度は、850〜1000℃、好ましくは870〜970℃である。焼成温度が上記範囲であることにより、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)を小さくすることができる。一方、焼成温度が、上記範囲未満だと、バリウム化合物と二酸化チタンとの反応が完結しないため、正方晶のチタン酸バリウムが得られず、また、上記範囲を超えると、チタン酸バリウム粒子が粒成長するため、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)が大きくなってしまう。
【0020】
焼成工程において、焼成原料混合物を焼成するときの焼成時間は、適宜選択されるが、好ましくは1〜50時間、特に好ましくは3〜35時間である。
【0021】
焼成工程において、焼成原料混合物を焼成するときの焼成雰囲気は、特に限定されず、大気下で行うことができる。
【0022】
焼成工程を行い得られる焼成物は、チタン酸バリウム凝集物であり、チタン酸バリウムの一次粒子が凝集した二次粒子の状態であり、チタン酸バリウムの一次粒子の凝集体である。
【0023】
本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法では、原料混合工程で、バリウム化合物と二酸化チタンとを混合して、焼成原料混合物を得た後、その焼成原料混合物を粉砕することなく、焼成工程で焼成する。そして、本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法では、原料混合工程で得られる焼成原料混合物を、粉砕することなく、焼成工程で焼成することにより、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)を小さくすることができる。
【0024】
焼成原料混合物を焼成前に粉砕すると、粉砕により焼成原料混合物が解れるので、焼成中に、バリウム化合物が分解して生成するバリウム化合物由来の分解物(例えば、バリウム化合物が炭酸バリウムの場合はCO
2)が、焼成原料混合物中から抜け易くなる。そのことにより、バリウム化合物と二酸化チタンとの反応が進み易くなるため、反応の進行具合が大きくなり、粒子径制御が難しくなる。
【0025】
それに対して、バリウム化合物と二酸化チタンとを混合した後、得られる焼成原料混合物を粉砕することなく焼成すると、焼成原料混合物は原料由来の形状で焼成されるので、焼成中に、バリウム化合物由来の分解物(例えば、バリウム化合物が炭酸バリウムの場合はCO
2)が、焼成原料混合物を粉砕したときよりも、焼成原料混合物中から抜け難くなる。そのことにより、バリウム化合物と二酸化チタンとの反応が、焼成原料混合物を粉砕したときよりも、穏やかに進行するため、反応の進行具合が小さくなり、粒子径制御が容易になる。
【0026】
なお、本発明のチタン酸バリウムの製造方法において、原料混合工程で、バリウム化合物と二酸化チタンとを混合して、焼成原料混合物を得た後、焼成工程を行う前に、焼成原料混合物に対して、粉砕以外の処理を行ってもよい。例えば、原料混合工程において、湿式にて、バリウム化合物と二酸化チタンとを混合する場合、混合後、焼成原料混合物を乾燥してから、乾燥した焼成原料混合物を焼成してもよい。
【0027】
粉砕工程は、焼成工程を行い得られるチタン酸バリウム凝集物を粉砕して、チタン酸バリウム粉末を得る工程である。この粉砕工程で、粉砕されるものは、チタン酸バリウムの一次粒子が凝集した凝集物であり、また、粉砕により得られるチタン酸バリウム粉末とは、チタン酸バリウムの一次粒子である。つまり、粉砕工程では、チタン酸バリウムの一次粒子の凝集物を粉砕して、チタン酸バリウムの一次粒子を得る。
【0028】
粉砕工程において、チタン酸バリウム凝集物を粉砕する粉砕手段としては、ボールミル、ビーズミル、アルティマイザー、気流粉砕機等が挙げられる。
【0029】
本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法を行い得られるチタン酸バリウム、つまり、チタン酸バリウムの一次粒子であるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径は、0.1〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.7μm、特に好ましくは0.1〜0.5μmである。なお、本発明において、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径とは、チタン酸バリウムの一次粒子の平均粒子径を指す。
【0030】
本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法を行い得られるチタン酸バリウム、つまり、チタン酸バリウム粉末中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)は、0.992〜0.998、好ましくは0.993〜0.997、特に好ましくは0.994〜0.996である。
【0031】
原料混合工程において、バリウム化合物に混合する二酸化チタンの平均粒子径に対する本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法を行い得られるチタン酸バリウム、つまり、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径の比(チタン酸バリウムの一次粒子の平均粒子径/二酸化チタンの一次粒子の平均粒子径)は、好ましくは1.05〜1.6、特に好ましくは1.1〜1.5、更に好ましくは1.2〜1.5である。
【0032】
本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法を行い得られるチタン酸バリウム、つまり、チタン酸バリウム粉末の結晶形は、正方晶である。
【0033】
本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法を行い得られるチタン酸バリウム、つまり、チタン酸バリウム粉末は、圧電体、積層セラミックコンデンサ、オプトエレクトロニクス材、誘電体、半導体、センサー等の機能性セラミックの原料用の材料として、好適に用いられる。
【0034】
本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法では、焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)を、0.992〜0.998、好ましくは0.993〜0.997、特に好ましくは0.994〜0.996とし、且つ、バリウム化合物と二酸化チタンとを混合した後、得られる焼成原料混合物を粉砕することなく焼成することにより、バリウム化合物と二酸化チタンとの反応を完結させるために必要な焼成温度を低くすることができ、且つ、焼成中のバリウム化合物と二酸化チタンとの反応を穏やかに進行させることができるので、焼成中にチタン酸バリウム粒子が粒成長するのを小さく抑えることができる。そのため、固相法により微細なチタン酸バリウム粉末を得る際に、本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法では、従来法に比べて平均粒子径が大きな二酸化チタンを用いても、微細なチタン酸バリウム粉末を得ることができる。言い換えると、同じ平均粒子径の二酸化チタンを原料に用いた場合に、本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法は、従来法に比べ、焼成中のチタン酸バリウム粒子の粒成長が小さいので、生成するチタン酸バリウム粉末の平均粒子径が、従来法に比べ小さくなる。このことから、本発明のチタン酸バリウム粉末の製造方法では、固相法により微細なチタン酸バリウム粉末を得る際に、比較的安価に得られる粒径の大きな二酸化チタンを使用しても、微細なチタン酸バリウム粉末を得ることができるため、製造コストを低くすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の特性は以下の方法により測定した。
(1)BET比表面積
BET法により求めた。
(2)平均粒子径
走査型電子顕微鏡(SEM)写真により任意に抽出した一次粒子1000個について径を測定し、それらの平均値を平均粒子径とした。
(3)結晶相
線源としてCu−Kα線を用いてX線回折装置(日本フィリップス株式会社製、形式X’PartMPD)により、c軸とa軸の比c/aを測定した。
<炭酸バリウム試料>
BET比表面積3.93m
2/g、平均粒子径0.35μm(一次粒子)の物性を有する市販の炭酸バリウムを使用した。
<二酸化チタン試料>
BET比表面積7.26m
2/g、平均粒子径0.22μm(一次粒子)の物性を有する市販の二酸化チタンを使用した。
【0036】
(実施例1〜5及び比較例1〜5)
前記炭酸バリウム試料及び前記二酸化チタン試料を、表1に示すBa/Tiモル比で秤量し、これらに純水を添加して、ボールミル(ビーズ径が1mmのジルコニアビーズ)により6時間、湿式混合した。混合処理後、130℃で2時間乾燥して焼成原料混合物の乾燥物を得た。
次いで、得られた焼成原料混合物の乾燥物100gを、大気下で、表1に示す温度で6時間保持して焼成し、室温まで冷却後、ボールミル(ビーズ径が0.1mmのジルコニアビーズ)により2時間、粉砕を行ってチタン酸バリウム粉末を得た。得られたチタン酸バリウム粉末のBET比表面積、平均粒子径(一次粒子)、二酸化チタン試料との粒子径の比(粒子径比)、及び結晶相の評価を表1に示す。
【0037】
(比較例6)
前記炭酸バリウム試料及び前記二酸化チタン試料を、表1に示すBa/Tiモル比で秤量し、これらに純水を添加して、ボールミル(ビーズ径が1mmのジルコニアビーズ)により6時間、湿式混合した。混合処理後、130℃で2時間乾燥して焼成原料混合物の乾燥物を得た。
次いで、得られた焼成原料混合物の乾燥物をジェットミルにより気流粉砕し、乾燥して、焼成原料混合物の粉砕物を得た。
次いで、得られた焼成原料混合物の粉砕物100gを、大気下で、表1に示す温度で6時間保持して焼成し、室温まで冷却後、ボールミル(ビーズ径が0.1mmのジルコニアビーズ)により2時間、粉砕を行ってチタン酸バリウム粉末を得た。得られたチタン酸バリウム粉末のBET比表面積、平均粒子径(一次粒子)、二酸化チタン試料との粒子径の比(粒子径比)、及び結晶相の評価を表1に示す。
【0038】
【表1】
1)粒子径比:チタン酸バリウム/二酸化チタン試料
【0039】
実施例1〜5では、正方晶のチタン酸バリウム微粒子が得られた。一方、比較例1、2、及び4では正方晶のものが得られなかった。また、比較例3、5及び6では、正方晶のチタン酸バリウムが得られているものの、原料二酸化チタンとの粒子径の比(粒子径比)が大きくなり、粒成長していることが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2015年2月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリウム化合物と、平均粒子径が0.1〜0.6μmの二酸化チタンと、を混合し、焼成原料混合物を得る原料混合工程と、
該焼成原料混合物を850〜1000℃で焼成し、チタン酸バリウム凝集物を得る焼成工程と、
該チタン酸バリウム凝集物を粉砕して、チタン酸バリウム粉末を得る粉砕工程と、
を有し、
該原料混合工程における該焼成原料混合物中のチタン原子に対するバリウム原子のモル比(Ba/Ti)が0.992〜0.998であること、
該原料混合工程で得られる該焼成原料混合物を粉砕することなく、該焼成工程で焼成すること、
該粉砕工程を行い得られるチタン酸バリウム粉末の平均粒子径が0.1〜1.0μmであること、
を特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項2】
前記二酸化チタンの平均粒子径に対する前記チタン酸バリウム粉末の平均粒子径の比が1.05〜1.6であることを特徴とする請求項1記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程を行い得られるチタン酸バリウム粉末が正方晶であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のチタン酸バリウム粉末の製造方法。