特開2015-183021(P2015-183021A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-183021(P2015-183021A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】粉末状セルロース
(51)【国際特許分類】
   C08B 15/08 20060101AFI20150925BHJP
【FI】
   C08B15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-57891(P2014-57891)
(22)【出願日】2014年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】田上 歩
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA01
4C090BA24
4C090BB02
4C090BB12
4C090BB36
4C090BB52
4C090BD24
4C090BD35
4C090DA11
4C090DA27
4C090DA32
(57)【要約】
【課題】
本発明は、強度(特に引張強度)に優れた食品包装用フィルムの充填剤として使用する粉末状セルロースを提供することを目的とする。
【解決手段】
平均粒子径が30〜50μm、重合度が500〜1300、100メッシュ篩い試験通過率が85%以上であることを特徴とする食品フィルム用の粉末状セルロース。この粉末状セルロースをコラーゲン、プラスチック、再生セルロースに添加することで優れた強度を有する食品用フィルムを得ることができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が30〜50μm、重合度が500〜1300、100メッシュ篩い試験通過率が85%以上であることを特徴とする食品フィルム用の粉末状セルロース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルムの充填剤として使用する粉末状セルロースに関する。
【背景技術】
【0002】
粉末状セルロースは、粉末状セルロースは食品安全性が高いことから、食品用の添加物として様々に用途に用いられている。その用途の一つにソーセージ用のケーシングなどの食品包装用フィルムがある。このソーセージ用のケーシングはソーセージの表皮部分であり、主に動物の腸が用いられる。しかし、動物の腸を用いた場合、各種病原体などの影響が懸念されるため、コラーゲンやプラスチック、再生セルロースなどを主成分とした人工ケーシングが注目されている。この人工ケーシングに関しては、既に様々な検討かなされており、特許文献1には、ケーシングに詰める食品(ソーセージなど)の乾燥及びキュアリングの時間が短縮を目的にセルロースを含有したケーシングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-229810号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1のように、セルロースを含有させたケーシングは、乾燥及びキュアリングの時間が短縮できるが、ケーシングが破れやすくなるため、生産工程におけるトラブルの原因となっている。
【0005】
そこで、本発明は、強度(特に引張強度)に優れた食品包装用フィルムの充填剤として使用する粉末状セルロースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]を提供する。
[1] 平均粒子径が30〜50μm、重合度が500〜1300、100メッシュ篩い試験通過率が85%以上であることを特徴とする食品フィルム用の粉末状セルロース。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強度(特に引張強度)に優れた食品包装用フィルムの充填剤として使用する粉末状セルロースを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の粉末状セルロースは、平均粒子径が30〜50μm、重合度が500〜1300、100メッシュ篩い試験通過率が85%以上であることが重要である。平均粒子径が上記範囲を超えると食感が低下し、上記範囲に満たないと十分な強度を維持することができない。また、重合度が上記範囲外であると食感の低下、強度の低下といった問題が発生する。さらに、100メッシュ篩い試験通過率が低い場合、言い換えれば、粉砕しきれなかった大きな粉末状セルロースが多く残っている場合には、フィルムの強度が損なわれるといった問題がある。なお、粉末状セルロースのコラーゲン、プラスチック、再生セルロースに対する添加量は特に限定されるものではないが、通常、コラーゲンやプラスチック、再生セルロースに対して、3〜30重量%程度である。
【0009】
以下に、本発明の粉末状セルロースの製造方法を例示する。
【0010】
粉末状セルロースは、原料パルプスラリー調製工程、酸加水分解反応工程、中和・洗浄・脱液工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程を経て製造することができる。
【0011】
(原料)
粉末状セルロースの原料として使用するパルプは、広葉樹由来のパルプ、針葉樹由来のパルプ、リンター由来のパルプ、非木材(ケナフ、稲わら、麦わら、竹、バガス(サトウキビバガス)、亜麻、楮、三椏、葦、大麻、マニラ麻)由来のパルプなどを例示することができる。これらのパルプのパルプ化法(蒸解法)は特に限定されるものではなく、サルファイト蒸解法、クラフト蒸解法、ソーダ・キノン蒸解法、オルガノソルブ蒸解法などを例示することができる。
【0012】
(製造)
使用できるパルプ原料は、流動状態でもシート状でも可能である。パルプ漂白工程からの流動パルプを原料とする場合は、加水分解反応槽へ投入する前に、濃度を高める必要があり、スクリュープレスやベルトフィルターなどの脱水機で濃縮され、反応槽へ所定量が投入される。パルプのドライシートを原料とする場合は、ロールクラッシャーなどの解砕機などでパルプをほぐした後、反応槽へ投入する。
次に、酸濃度0.05〜2.0N、好ましくは0.1N〜1.5Nに調整した、パルプ濃度3〜10重量%(固形分換算)の分散液を、温度80〜100℃、時間30分間〜3時間の条件で処理する。パルプの加水分解処理後、脱水工程で加水分解処理されたパルプと廃酸とに固液分離される。加水分解処理されたパルプはアルカリ剤を添加して中和し、洗浄される。その後、乾燥機で乾燥され、粉砕機で規定の大きさに機械的に粉砕・分級される。
【0013】
本発明に用いる粉砕機としては、カッティング式ミル:メッシュミル(株式会社ホーライ製)、アトムズ(株式会社山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、カッターミル(東京アトマイザー製造株式会社製)、CSカッタ(三井鉱山株式会社製)、ロータリーカッターミル(株式会社奈良機械製作所製)、ターボカッター(フロイント産業株式会社製)、パルプ粗砕機(株式会社瑞光製)シュレッダー(神鋼パンテック株式会社製)等、ハンマー式ミル:ジョークラッシャー(株式会社マキノ製)、ハンマークラッシャー(槇野産業株式会社製)、衝撃式ミル:パルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインインパクトミル(ホソカワミクロン株式会社製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン株式会社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、CUM型遠心ミル(三井鉱山株式会社製)、イクシードミル(槇野産業株式会社製)、ウルトラプレックス(槇野産業株式会社製)、コントラプレックス(槇野産業株式会社製)、コロプレックス(槇野産業株式会社製)、サンプルミル(株式会社セイシン製)、バンタムミル(株式会社セイシン製)、アトマイザー(株式会社セイシン製)、トルネードミル(日機装株式会社製)、ネアミル(株式会社ダルトン製)、HT形微粉砕機(株式会社ホーライ製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ニューコスモマイザー(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント産業株式会社製)、ギャザーミル(株式会社西村機械製作所製)、スパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)、Npaクラッシャー(三庄インダストリー株式会社製)、ウイレー粉砕機(株式会社三喜製作所製)、パルプ粉砕機(株式会社瑞光製)ヤコブソン微粉砕機(神鋼パンテック株式会社製)、ユニバーサルミル(株式会社徳寿工作所製)、気流式ミル:CGS型ジェットミル(三井鉱山株式会社製)、ミクロンジェット(ホソカワミクロン株式会社製)、カウンタジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、クロスジェットミル(株式会社栗本鐵工所製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)、ジェットミル(三庄インダストリー株式会社製)、エバラジェットマイクロナイザ(株式会社荏原製作所製)、エバラトリアードジェット(株式会社荏原製作所製)、セレンミラー(増幸産業株式会社製)ニューミクロシクトマット(株式会社増野製作所製)、クリプトロン(川崎重工業株式会社製)、竪型ローラーミル:竪型ローラーミル(シニオン株式会社製)、縦型ローラーミル(シェフラージャパン株式会社製)、ローラーミル(コトブキ技研工業株式会社製)、VXミル(株式会社栗本鐵工所)、KVM型竪形ミル(株式会社アーステクニカ)、ISミル(株式会社IHIプラントエンジニアリング)等が例示される。これらの中では、微粉砕性に優れる、トルネードミル(日機装株式会社製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)を用いることが好ましい。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本願は勿論、かかる実施例に限定されるものではない。本願の実施例における試験方法を、次に示す。
<平均粒子径測定>
マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて測定した。測定原理としてはレーザー散乱法を用いており、粒度分布の積算値が50%となる値を平均粒子径とした。
【0015】
<重合度>
第16改正日本薬局方解説書、結晶セルロース確認試験(2)記載の銅エチレンジアミンを用いた粘度測定法により、セルロース重合度を求めた。
【0016】
<篩い試験(100メッシュ通過率)>
JIS Z 8815に準拠し、ロータップ型篩振とう機(株式会社岩田工業製)、および、100メッシュ篩(東京スクリーン株式会社製、目開き150μm)を用いて、100メッシュ篩通過試料重量を測定し、100メッシュ通過率を算出した。
【0017】
<引張り強さ>
粉末状セルロース:コラーゲンの比が、各々乾燥重量に換算して、10:90となるように配合し、厚さ1.0mmのコラーゲンフィルムを作製し、フィルムを1.5mmの幅に切り取り、引張り試験機(東洋製機製)を用いて、引張り強度を測定した
【0018】
<実施例1>
晒し木材パルプシート(LBKP、日本製紙(株)製、平均重合度1600)を原料として、パルプ濃度3.5%、塩酸濃度0.1Nにおいて、95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件化で約1日、送風乾燥し、乾燥後のサンプルを、トルネードミル(日機装株式会社製)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロースを得た。得られた粉体は、平均粒子径が46.8μm、平均重合度が1300、篩い試験100メッシュ通過率が88.9%、引張り強さが15.3kgf/cmであった。
【0019】
<実施例2>
晒し木材パルプシート(LBKP、日本製紙(株)製、平均重合度1600)を原料として、パルプ濃度3.5%、塩酸濃度0.4Nにおいて、95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件化で約1日、送風乾燥し、乾燥後のサンプルを、トルネードミル(日機装株式会社製)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロースを得た。
得られた粉体は、平均粒子径が32.4μm、平均重合度が850、篩い試験100メッシュ通過率が100%、引張り強さが11.3kgf/cmであった。
【0020】
<実施例3>
晒し木材パルプシート(LBSP、日本製紙(株)製、平均重合度1500)を原料として、パルプ濃度3.5%、塩酸濃度0.05Nにおいて、95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件化で約1日、送風乾燥し、乾燥後のサンプルを、トルネードミル(日機装株式会社製)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロースを得た。
得られた粉体は、平均粒子径が42.7μm、平均重合度が1000、篩い試験100メッシュ通過率が92.3%、引張り強さが13.2kgf/cmであった。
【0021】
<実施例4>
晒し木材パルプシート(LBSP、日本製紙(株)製、平均重合度1500)を原料として、パルプ濃度3.5%、塩酸濃度0.3Nにおいて、95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件化で約1日、送風乾燥し、乾燥後のサンプルを、トルネードミル(日機装株式会社製)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロースを得た。
得られた粉体は、平均粒子径が32.1μm、平均重合度が650、篩い試験100メッシュ通過率が100%、引張り強さが13.2kgf/cmであった。
【0022】
<比較例1>
晒し木材パルプシート(LBSP、日本製紙(株)製、平均重合度1500)を原料として、パルプ濃度3.5%、塩酸濃度0.2Nにおいて、95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件化で約1日、送風乾燥し、乾燥後のサンプルを、ナイフミル(パルマン社製)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロースを得た。
得られた粉体は、平均粒子径が44.8μm、平均重合度が750、篩い試験100メッシュ通過率が82.7%、引張り強さが9.7kgf/cmであった。
【0023】
<比較例2>
晒し木材パルプシート(LBSP、日本製紙(株)製、平均重合度1500)を原料として、パルプ濃度3.5%、塩酸濃度1.0Nにおいて、95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件化で約1日、送風乾燥し、乾燥後のサンプルを、ナイフミル(パルマン社製)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロースを得た。
得られた粉体は、平均粒子径が30.5μm、平均重合度が300、篩い試験100メッシュ通過率が100%、引張り強さが6.1kgf/cmであった。
<比較例3>
晒し木材パルプシート(LBKP、日本製紙(株)製、平均重合度1600)を原料として、パルプ濃度3.5%、塩酸濃度0.8Nにおいて、95℃で2時間反応させた。反応が終了した後、水酸化ナトリウムで中和し、十分に水洗した後、60℃の温度条件化で約1日、送風乾燥し、乾燥後のサンプルを、ナイフミル(パルマン社製)を用いて機械的に粉砕を行い、粉末状セルロースを得た。
得られた粉体は、平均粒子径が33.8μm、平均重合度が550、篩い試験100メッシュ通過率が100%、引張り強さが7.9kgf/cmであった。
【0024】
【表1】