【解決手段】  (1)コンクリート床版又は、既設舗装及び既設コンクリート床版の、撤去側と残存側への切断、(2)主桁からの、撤去側コンクリート床版又は、撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、既設伸縮装置の剥離、撤去、(3)撤去跡空間への仮設覆工版の設置、(4)残存側コンクリート床版への継手の設置、(5)仮設覆工版の撤去、(6)前記撤去跡空間へのプレキャストコンクリート付き新設伸縮装置の設置、(7)残存側コンクリート床版の継手と新設伸縮装置の継手への配筋、前記配筋箇所の外側であって、残存側コンクリート床版と新設伸縮装置のプレキャストコンクリートの間への型枠設置、(8)前記型枠内へのコンクリートの打込み、養生の作業を行い、前記(4)の作業を仮設覆工版の下で行う。
【背景技術】
【0002】
  高架道路には各種構造のものがある。コンクリート床版は設置箇所の環境温度により伸縮するため、
図44、
図45に示すように、複数本の主桁(これら図の場合はI型鋼)Aの上にコンクリート床版Bが配置され、それらコンクリート床版Bの間に伸縮装置Cを設置して、コンクリート床版B及び主桁Aの伸縮に対応(伸縮を吸収)できるようにしてある。伸縮装置Cは
図44、
図45のように、主桁Aの上のコンクリート床版B間に配置されるとは限らず、
図47に示すように、橋台Gの上の鋼製床版或いはコンクリート床版(橋台側床版)Hと、主桁Aの上のコンクリート床版Bとの間に配置されることもある。
【0003】
  伸縮装置Cには鋼製、ゴム製といった各種材質製のものがあり、フィンガータイプをはじめとする各種構造のものがある。
図46に示す伸縮装置Cはフィンガータイプの伸縮装置であり、多数本のフィンガーDがフェースプレートEに突設されており、コンクリート床版Bと伸縮装置Cの間にコンクリートFが後打ちされて間詰めされている。
【0004】
  主桁Aとコンクリート床版Bとの連結構造には、それら連結が強固な合成桁構造(以下、単に「合成桁」という)と、それら連結が合成桁に比して強固でない(軟弱である)非合成桁構造(以下、単に「非合成桁」という)がある。
【0005】
  高架道路の伸縮装置は、数十年(通常は20年)に一度、定期的に交換している。
図44、
図45のようにコンクリート床版B間に配置されている伸縮装置Cを交換するには、従来は、斫り作業をして、コンクリート床版Bの上の舗装を剥離し、伸縮装置Cの両側のコンクリート床版Bを撤去し、その後に既設伸縮装置Cを撤去し、その撤去跡空間に新設伸縮装置を設置し、その新設伸縮装置とその両側のコンクリート床版B間にコンクリートを後打ちしている。
図47に示すように橋台側床版Hと主桁上のコンクリート床版Bの間に配置されている伸縮装置Cを交換する場合も、前記の場合と同様にして交換されている。
【0006】
  従来の伸縮装置交換方法は次のような難点があった。
  1.斫り作業時に振動、騒音が発生して、近隣の迷惑になる。
  2.工事期間(施工期間)が長く、その間、交通規制(車の通行止め)をしなければならず、周辺環境、交通への影響大きくなる上、規制費が増え、通行料金も減収になる。
  3.いったん橋面のコンクリート等の斫り作業を開始すると作業が中断できず施工が完了するまで交通規制を行わねばならない。
【0007】
  前記難点解消のため、従来は、伸縮装置そのものを交換容易にしたもの(特許文献1、2)、ゴム製の伸縮装置ではあるが交換を容易にした施工方法(特許文献3)がある。しかし、これら伸縮装置や施工方法によっても前記難点が解消されるわけではない。これら特許文献に示されている伸縮装置は比較的規模の小さなものである。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
  本発明の課題は、特許文献に示されている伸縮装置よりも比較的規模の大きな鋼製伸縮装置を含む構造でも適用可能で、周辺環境、交通への悪影響を配慮し、比較的静かに夜間でも施工でき、交通量の多くなる昼間の交通開放(規制解除)が可能な伸縮装置の取替え方法と、その工事中の仮設覆工版構造を提案することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0010】
  本発明の伸縮装置の取替え方法は、合成桁、非合成桁のいずれにも施工できるが、以下の説明では先に非合成桁の場合について説明し、その後に合成桁の場合について説明する。本発明の伸縮装置の取替え方法は、主桁上のコンクリート床版間に配置されている伸縮装置を取替え可能であるのみならず、橋台の上の床版(コンクリート床版或いは鋼床版等)と主桁上のコンクリート床版の間に配置された伸縮装置の取替えも可能であるが、以下の説明は主桁上のコンクリート床版間に配置されている伸縮装置を取替える場合の説明である。
【0011】
  通常、コンクリート床版の上には舗装が施工されている。本発明の伸縮装置の取替え方法は舗装を剥離してから行うことも剥離することなく行うこともできるが、以下の説明は舗装を剥離することなく行う場合である。
【0012】
  本発明では、既設伸縮装置に替えて設置する新設伸縮装置に各種材質製、構造のものを使用することができる。以下の説明は、伸縮装置の左右にプレキャストコンクリートを備えたもの(プレキャストコンクリート付き伸縮装置)を使用する場合と、プレキャストコンクリートを備えないもの(プレキャストコンクリートなし伸縮装置)を使用する場合である。プレキャストコンクリート付き伸縮装置を使用する場合を「一部プレキャストコンクリート施工」といい、プレキャストコンクリートなし伸縮装置を使用する場合を「場所打ちコンクリート施工」という。プレキャストとは、現場ではなく、工場もしくはヤードで現場に先んじて構造を成すものである。現場での省力化につながり急速施工が可能となる。
【0013】
  [伸縮装置の取替え方法1:非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工]
  この伸縮装置の取替え方法は、非合成桁であって、既設伸縮装置が二つの伸縮部材を備えた構造の場合であり、新設伸縮装置としてプレキャストコンクリート付きのものを使用する場合である。その取替えは以下の(1)〜(8)に示す作業で行うことができる。
【0014】
  (1)コンクリート床版又は、既設舗装及び既設コンクリート床版の、撤去側と残存側への切断
  (2)主桁からの、撤去側コンクリート床版又は、撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、既設伸縮装置の剥離、撤去
  (3)撤去跡空間への仮設覆工版の設置
  (4)残存側コンクリート床版への継手の設置。この作業は仮設覆工版の下で行う。
  (5)仮設覆工版の撤去
  (6)前記撤去跡空間へのプレキャストコンクリート付き新設伸縮装置の設置
  (7)残存側コンクリート床版の継手と新設伸縮装置の継手への配筋、前記配筋箇所の外側であって、残存側コンクリート床版と新設伸縮装置のプレキャストコンクリートの間への型枠設置
  (8)前記型枠内へのコンクリートの打込み、養生。
【0015】
  [伸縮装置の取替え方法2:非合成桁、場所打ちコンクリート施工]
  この伸縮装置の取替え方法は、非合成桁の場合であって、プレキャストコンクリートなしの新設伸縮装置を使用する場合である。その手順は前記伸縮装置の取替え方法1の(1)〜(8)の作業のうち、(1)〜(3)、(5)、(8)の作業は同じであり、異なる(4)、(6)、(7)の作業は、次のとおりである。
【0016】
  1.前記(4)の残存側コンクリート床版への継手の設置に代えて、斫り作業をして残存側コンクリート床版内のアンカー(鉄筋)を当該コンクリート床版の側面に突出(露出)させ、そのアンカーに継手(例えば、機械式のもの)を連結する。
  2.前記(6)の新設伸縮装置の据付けにおいて、プレキャストコンクリートなしの伸縮装置を据付ける。
  3.前記(7)の配筋、型枠設置において、残存側コンクリート床版内の前記アンカーと新設のプレキャストコンクリートなし伸縮装置の継手に配筋をする。その配筋の外側であって、新設伸縮装置と残存側コンクリート床版の間に型枠を設置する。
【0017】
  前記1、2の伸縮装置の取替え方法は、次のようにして行うこともできる。
【0018】
  前記伸縮装置の取替え方法において、少なくとも、(6)記載の作業前に、主桁上フランジへの孔あけを行うことができる。この孔あけの目的は、次回伸縮装置を取替えしやすいようにコンクリートと結合させる止め具、例えばスタッドボルトを主桁フランジの下から差し込みナットで止める構造である。
【0019】
  前記伸縮装置の取替え方法における仮設覆工版は、仮舗装付き仮設覆工版又は仮舗装なし仮設覆工版とすることができる。(3)記載の作業後に、仮舗装なし仮設覆工版の場合は、その設置後に仮舗装を行う。いずれの場合も前記(5)の仮設覆工版の撤去においては、仮舗装も同時に撤去する。
【0020】
  前記伸縮装置の取替え方法においては、(1)の作業の後に、伸縮装置の二つの伸縮部材の上に接合材を跨がせて、その接合材と両伸縮部材を仮接合し、前記接合材の上に撤去用ビームを設置、固定し、当該接合材と、撤去側コンクリート床版、又は撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、前記伸縮装置の一体化を行う。その後に前記(2)記載の撤去作業を行うことができる。この撤去作業は、前記撤去用ビームの引き上げ又は押し上げにより、撤去側コンクリート床版又は、撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、既設伸縮装置を主桁から一体剥離、撤去することができる。前記撤去用ビームはジャッキ付きであっても、ジャッキ付きでないものであってもよい。ジャッキ付きの場合は、このジャッキの操作(ジャッキアップ)により撤去用ビームを押し上げて前記(2)記載の撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版を撤去することができる。ジャッキ付きでない場合は撤去用ビームをクレーンで吊り上げて撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版を撤去することができる。
【0021】
  [伸縮装置の取替え方法3:合成桁、一部プレキャストコンクリート施工]
  この伸縮装置の取替え方法は、合成桁の場合であって、新設伸縮装置としてプレキャストコンクリート付きのものを使用する場合である。その取替えは以下の(1)〜(11)に示す作業で行うことができる。
【0022】
  (1)主桁ウェブへの孔あけ
  (2)主桁の撤去側と残存側への切断、主桁切断箇所を跨いでの、残存側主桁と撤去側主桁への添接板の添接、仮止め
  (3)コンクリート床版又は、舗装及びコンクリート床版の撤去側と残存側への切断
  (4)添接板を取り外してからの、撤去側主桁と、撤去側コンクリート床版又は、撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、既設伸縮装置との一体撤去
  (5)主桁撤去跡空間への新設主桁の設置及び残存側主桁への新設主桁の本締め
  (6)既設伸縮装置と、撤去側コンクリート床版又は、撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版の撤去跡空間への、仮設覆工版の設置及び新設主桁への仮止め
  (7)残存側コンクリート床版への継手の設置
  (8)仮設覆工版の撤去
  (9)仮設覆工版撤去跡空間へのプレキャストコンクリート付き新設伸縮装置の据付け
  (10)残存側コンクリート床版の継手と前記新設伸縮装置の継手への配筋、配筋箇所の外側であって残存側コンクリート床版と新設伸縮装置のプレキャストコンクリートの間への型枠設置
  (11)前記型枠内へのコンクリートの打込み、養生。
【0023】
  前記(1)、(2)、(7)の作業は、交通開放時、仮設覆工版の下で行うことができる。前記(4)の一体撤去は各種方法で行うことができるが、例えば、撤去用ビームを伸縮継手と撤去側舗装の上に設置してそれらと連結し、その撤去用ビームを押し上げ或いは吊り上げ等して前記一体撤去を行うことができる。この場合も、撤去用ビームはジャッキ付きであっても、ジャッキ付きでないものであってもよい。ジャッキ付きの場合は、このジャッキの操作(ジャッキアップ)により撤去用ビームを押し上げて、ジャッキ付きでない場合は撤去用ビームもしくは切断された床版を直接クレーンで吊り上げて、撤去側舗装、撤去側コンクリート床版、撤去側主桁を撤去することができる。この場合も伸縮装置の二つの伸縮部材の上に接合材を跨がせて、その接合材と両伸縮部材を仮接合し、前記接合材の上に撤去用ビームを設置、固定し、当該接合材と、撤去側コンクリート床版、又は撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、前記伸縮装置の一体化を行う。その後に前記(4)記載の撤去作業を行うことができる。
【0024】
  [伸縮装置の取替え方法4:合成桁、場所打ちコンクリート施工]
  この伸縮装置の取替え方法は、合成桁の場合であって、プレキャストコンクリートなしの新設伸縮装置を使用する場合である。その手順は前記伸縮装置の取替え方法4の(1)〜(11)の作業のうち、(1)〜(6)、(8)、(11)の作業は同じであり、異なる(7)、(9)、(10)の作業は、次のとおりである。
【0025】
  1.前記(7)の残存側コンクリート床版への継手の設置に代えて、斫り作業をして残存側コンクリート床版内のアンカーを当該コンクリート床版の側面に突出(露出)させ、そのアンカーに継手(例えば、機械式のもの)を連結する。
  2.前記(9)の新設伸縮装置の据付けにおいて、プレキャストコンクリートなしの伸縮装置を据付ける。
  3.前記(10)の配筋、型枠設置において、残存側コンクリート床版内の前記アンカーと新設のプレキャストコンクリートなし伸縮装置が備えている継手に配筋をする。その配筋の外側であって、新設伸縮装置と残存側コンクリート床版の間に型枠を設置する。
【0026】
  前記3、4の伸縮装置の取替え方法は、次のようにして行うこともできる。
【0027】
  前記の伸縮装置の取替え方法において、少なくとも、(5)記載の作業前に、主桁上フランジへの孔あけを行うことができる。この孔あけの目的は、既設主桁上フランジとの添接と次回伸縮装置を取替えしやすいようにコンクリートと結合させる止め具、例えばスタッドボルトを主桁フランジの下から差し込みナットで止める構造である。
【0028】
  前記伸縮装置の取替え方法における仮設覆工版は、仮舗装付き仮設覆工版又は仮舗装なし仮設覆工版とすることができる。(6)記載の作業後に、仮舗装なし仮設覆工版の場合は、その設置後に仮舗装を行う。いずれの場合も前記(4)の一体撤去作業において、仮舗装も同時に撤去する。
【0029】
  前記伸縮装置の取替え方法において、少なくとも、(4)記載の作業前に、撤去側コンクリート床版又は撤去側舗装と、既設伸縮装置の上への撤去用ビームの設置、固定を行い、その後に(4)記載の撤去作業を行い、この撤去作業は、前記撤去用ビームの引き上げ又は押し上げにより、撤去側コンクリート床版又は、撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、既設伸縮装置及び撤去側主桁を一体剥離、撤去することができる。
【0030】
  前記伸縮装置の取替え方法1〜4は、
図47のように橋台G付近(橋台Gの上)に配置されている伸縮装置Cの取替えにも応用できる。この場合、前記取替え作業の一部を省略することも、必要に応じて他の作業を追加することもできる。
【0031】
  [仮設覆工版構造1:非合成桁の場合]
  本発明の仮設覆工版構造は、非合成桁の伸縮装置取替え中の仮設覆工版構造であり、撤去側コンクリート床版、又は撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、既設伸縮装置の撤去跡空間に仮舗装付き又は仮舗装なし仮設覆工版が設置されて撤去跡空間が閉塞され、その仮設覆工版が既設主桁にボルト、その他の連結具(止め具)を用いて着脱可能に仮止めされた構造でその上を車両が通行できる構造である。この場合、当該仮設覆工版の下に、路面下からの作業を可能とする作業空間が確保される。仮設覆工版の構造、形状は各種のものを使用可能であるが、少なくとも、撤去跡空間を閉塞できる形状及びサイズの閉塞板と、その閉塞板を残存側主桁に仮止め可能な連結部を備えている。閉塞板の下面は残存側コンクリート床版の上面と同じ(略同じを含む:以下において同じ)高さに揃えたものが望ましい。
【0032】
  [仮設覆工版構造2:合成桁の場合]
  本発明の仮設覆工版構造は、合成桁の伸縮装置取替え中の仮設覆工版構造であり、撤去跡主桁の撤去跡空間に新設主桁が設置され、その新設主桁と残存側主桁に添接板が切断箇所を跨いで宛がわれて新設主桁と残存側主桁に連結固定され、撤去側コンクリート床版、又は撤去側舗装及び撤去側コンクリート床版と、既設伸縮装置の撤去跡空間であって前記新設主桁の上に仮舗装付き又は仮舗装なし仮設覆工版がボルト、その他の連結具(止め具)で固定設置されて撤去跡空間が閉塞され、その仮設覆工版が前記新設主桁に脱着可能に仮止めされた構造でその上を車両が通行できる構造である。この場合も、当該仮設覆工版の下に、路面下からの作業を可能とする作業空間が確保される。仮設覆工版の構造、形状も各種のものを使用可能であるが、前記仮設覆工版構造1における仮設覆工版と同じ構造、形状のものを使用することができる。閉塞板の下面は残存側コンクリート床版の上面と同じ高さに揃えたものが望ましい。
【0033】
  [仮設覆工版構造3:非合成桁又は合成桁の場合]
  本発明の仮設覆工版構造は、前記仮設覆工版構造において、仮舗装付き又は仮舗装なし仮設覆工版が撤去跡空間を閉塞できる形状及びサイズの閉塞板と、その閉塞板を既設主桁に仮止め可能な連結部を備えたものである。
【0034】
  本発明の仮設覆工版構造は、前記仮設覆工版構造において、仮舗装付き仮設覆工版の仮舗装上面、又は仮舗装なし仮設覆工版の上に施工された仮舗装上面が既設舗装の上面と同じ又は略同じ高さのものであってもよい。また、仮設覆工版を構成する閉塞板の下面を既設コンクリート床版の上面に載せることもできる。
【0035】
  前記仮設覆工版構造1〜3は、
図47のように、橋台G付近(橋台Gの上)に配置されている伸縮装置Cの取替えにも応用できる。この場合も、仮設覆工版の形状、構造等は、橋台G付近の構造や形状にわせて変えることができる。この場合、橋台側の既設コンクリート床版にアンカーをとって留めてもよい。
 
【発明の効果】
【0036】
  本発明の伸縮装置の取替え方法は、非合成桁の場合も合成桁の場合も次の効果を奏する。
  (1)従来の伸縮装置の取替え工法で行われているコンクリート床版の斫り作業がほぼ必要ないため、騒音の発生がなく、近隣への迷惑が少なくなる。
  (2)夜間工事で伸縮装置の交換ができるので、交通規制はほとんど夜間だけで済み、交通量の多い昼間の交通規制が少なくなる。
  (3)従来の取替え工法に比して急速施工ができるので、交通規制費、通行料減収を抑えることができる。
  (4)伸縮装置をプレキャストコンクリートと一体化し、プレキャストコンクリートに継手を設けておくことにより、配筋作業の容易化、迅速化が可能となる。
  (5)既設伸縮装置を撤去側コンクリート床版と一体撤去するので、取替え作業の迅速化が可能になる。
  (6)仮舗装を、工期中、毎日剥がして再舗装することで、舗装面の平坦性を確保することができ、車両の走行性が向上する。
  (7)合成桁の場合は、交通開放中(主として昼間)に、仮設覆工版の下で、主桁のウェブへの孔あけ作業、主桁の切断作業、添接板の設置作業、仮止め作業、添接板の仮止めの取外し作業、斫り作業を仮設覆工版の下で行うことができ、夜間に斫り作業を行う必要が殆どないので近隣への迷惑が低減する。
  (8)合成桁の場合は、本作業の前に、予め、コンクリート床版及び伸縮装置の下で、主桁のウェブを切断することができるので、取替え作業の迅速化が可能になる。
【0037】
  本発明の仮設覆工版構造は次の効果を奏する。
  (1)仮設覆工版で撤去跡空間が閉塞され、仮設覆工版が主桁にボルト、その他の連結具(止め具)により脱着可能に連結されているので、仮設ではあるが仮設覆工版の連結が確実であり、車両が通行しても安定する。
  (2)仮設覆工版が主桁に仮止めされ、その上に仮舗装が施工されているので、車両の走行性が良く、走行時に振動や騒音も低減し、近所迷惑になりにくい。
  (3)橋台側に設置された伸縮装置の取替えにも適用できる。
  (4)比較的薄い閉塞板を用いることができるため、閉塞板の下に作業空間を確保することができ、仮設覆工版の下の作業空間でコンクリート床版への削孔、斫り作業を行うことができる。この作業中、仮設覆工版の上を車両通行可能であるため、交通規制期間を短縮することができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の伸縮装置の取替え方法の説明図であって、(a)は非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の説明図、(b)は非合成桁、場所打ちコンクリート施工の説明図。
 
【
図2】本発明の伸縮装置の取替え方法の説明図であって、(a)は合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の説明図、(b)は合成桁、場所打ちコンクリート施工の説明図
 
【
図3】既設伸縮装置であって、非合成桁の施工前説明図。
 
【
図4】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、舗装及びコンクリート床版への孔あけ、伸縮装置仮接合の説明図。
 
【
図5】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、舗装及びコンクリート床版切断の説明図。
 
【
図6】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、撤去用ビームの設置の説明図。
 
【
図7】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、主桁との剥離、撤去の説明図。
 
【
図8】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、撤去跡空間の説明図。
 
【
図9】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、主桁上フランジへの孔あけの説明図。
 
【
図10】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、仮設覆工版設置の説明図。
 
【
図11】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、仮舗装施工の説明図。
 
【
図12】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、継手設置の説明図。
 
【
図13】本発明の伸縮装置の取替え方法であって非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、仮設覆工版及び仮舗装撤去の説明図。
 
【
図14】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、新設伸縮装置据付けの説明図。
 
【
図15】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、配筋、型枠設置の説明図。
 
【
図16】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工の場合の、コンクリートの打込み、養生の説明図。
 
【
図17】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、アンカー(鉄筋)の斫り出し、機械式継手設置の説明図。
 
【
図18】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、仮設覆工版撤去の説明図。
 
【
図19】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、伸縮装置据付けの説明図。
 
【
図20】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、配筋、型枠設置の説明図。
 
【
図21】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、非合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、場所打ちコンクリートの打込み、養生の説明図。
 
【
図22】既設伸縮装置であって、合成桁の施工前説明図。
 
【
図23】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、主桁ウェブへの孔あけの説明図。
 
【
図24】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、主桁切断、添接、仮止めの説明図。
 
【
図25】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、舗装及びコンクリート床版切断の説明図。
 
【
図26】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、既設伸縮装置撤去の説明図。
 
【
図27】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、主桁上フランジへの孔あけ説明図。
 
【
図28】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、新設主桁設置、ボルト本締めの説明図。
 
【
図29】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、仮設覆工版設置の説明図。
 
【
図30】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、仮舗装施工の説明図。
 
【
図31】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、継手設置の説明図。
 
【
図32】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、仮設覆工版及び仮舗装撤去の説明図。
 
【
図33】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、伸縮装置据付けの説明図。
 
【
図34】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、配筋、型枠設置の説明図。
 
【
図35】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、一部プレキャスト施工の場合の、コンクリートの打込み、養生の説明図。
 
【
図36】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、アンカーの斫り出し、機械式継手設置の説明図。
 
【
図37】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、仮設覆工版及び仮舗装撤去の説明図。
 
【
図38】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、伸縮装置据付け説明図。
 
【
図39】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、配筋、型枠設置の説明図。
 
【
図40】本発明の伸縮装置の取替え方法であって、合成桁、場所打ちコンクリート施工の場合の、場所打ちコンクリートの打込み、養生の説明図。
 
【
図41】橋台付近での本発明の伸縮装置の取替え方法に使用する仮設覆工版の一例であり、連結部が箱型鋼であり、一本の場合の下面側斜視図。
 
【
図42】本発明の伸縮装置の取替え方法に使用する仮設覆工版の一例であり、連結部が箱型鋼であり、二本の場合の下面側斜視図。
 
【
図43】本発明の伸縮装置の取替え方法に使用する仮設覆工版の一例であり、連結部がI型鋼であり、二本の場合の下面側斜視図。
 
【
図46】高架道路の伸縮装置の配置例を示す平面説明図。
 
【
図47】橋台側床版と主桁上コンクリ−ト床版の間に設置された伸縮装置の底面側斜視図。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0039】
  (実施形態)
  本発明は既設の伸縮装置を新設の伸縮装置に替える工法である。本発明の伸縮装置の取替え方法は合成桁の場合も、非合成桁の場合も施工可能である。本発明の伸縮装置の取替え方法の一例を、図面を参照して説明する。
 
【0040】
  本発明は新設の伸縮装置として、伸縮部材の外側にプレキャストコンクリートが連結されているプレキャストコンクリート付きのものでも、プレキャストコンクリートが連結されていないプレキャストコンクリートなしのものでも使用可能である。以下に、非合成桁の場合であって、新設の伸縮装置がプレキャストコンクリート付き(一部プレキャストコンクリート施工)の場合と、プレキャストコンクリートなし(場所打ちコンクリート施工)の場合、合成桁の場合であって、新設の伸縮装置がプレキャストコンクリート付き(一部プレキャストコンクリート施工)の場合と、プレキャストコンクリートなし(場所打ちコンクリート施工)の場合、の四つの場合について説明する。
 
【0041】
  (伸縮装置の取替え方法の実施形態1:非合成桁、一部プレキャストコンクリート施工)
  この実施形態は、非合成桁の場合であって、一部プレキャストコンクリート施工の場合である。
図3は非合成桁の施工前の側面説明図である。
図3では主桁1の上にコンクリート床版2が設置され、左右のコンクリート床版2の間に伸縮装置(伸縮継手)3が設置されている。非合成桁における伸縮装置3の取替え作業はコンクリート床版の上の舗装を剥離してから行うことも剥離することなく行うこともできるが、次の説明は剥離することなく行う場合である。この交換は
図1(a)及び
図4〜
図16の手順で行うことができる。
 
【0042】
  (1)舗装及びコンクリート床版への孔あけ、伸縮装置仮接合
  交通規制時に、路上において、
図4のように、舗装4及びコンクリート床版2に孔5をあける。孔あけ位置は伸縮装置3の左右とする。交通規制時に、路上において、
図4のように、接合材6を伸縮装置3の左右の伸縮部材3a、3bの上に跨がせて設置して、両伸縮部材3a、3bを仮接合する。仮接合はロープ、ワイヤー等の索条での連結、その他任意の接合手段で行うことができる。
  (2)舗装及びコンクリート床版切断
  交通規制時に、路上において、
図5のように、既設舗装4及び既設コンクリート床版2の前記孔5の外側部分を、切断ライン7に沿って切断機器(例えば、円盤カッター)で縦方向に切断して、撤去側舗装4a及び撤去側コンクリート床版2aに分断(分離)する。
  (3)ジャッキ付き撤去用ビームの設置
  交通規制時に、路上において、
図6のように、前記接合材6の上に撤去用ビーム8を設置する。撤去用ビーム8はその両端部を、左右の撤去側コンクリート床版2aの上まで跨がせて設置する。この撤去用ビームと前記孔5に連結バー(例えば、ゲビンデスタープ)9を通して、撤去用ビーム8と撤去側舗装4a及び撤去側コンクリート床版2aを連結固定する。この撤去用ビーム8により、撤去側コンクリート床版2aに連結されている伸縮部材3a、3bに連結する。
図6の撤去用ビーム8は油圧ジャッキ10を備えている。
  (4)ジャッキアップ:主桁との剥離、撤去
  交通規制時に、路上において、
図7のように、前記油圧ジャッキ10を操作して(ジャッキアップして)、前記撤去用ビーム8を持ち上げて、撤去側舗装4a及び撤去側コンクリート床版2aと既設伸縮装置3を一体にして、主桁1から強引に剥離(分離)して撤去する。撤去跡には撤去跡空間11(
図8)ができる。
  (5)主桁上フランジへの孔あけ
  交通規制時に、
図9の撤去跡空間11において、主桁1の上フランジ1aに孔12をあける。孔あけには孔あけ工具(例えば、電気ドリル)を使用することができる。
  (6)仮設覆工版設置
  交通規制時に、
図10のように、撤去跡空間11に仮設覆工版(仮設鋼床版)13を設置する。仮設覆工版13は閉塞板14の下に連結部(箱鋼:箱桁)15を取付けたもの(
図41、
図42)、閉塞板14の下に連結部(I型鋼:I桁)15を取付けたもの(
図43)、その他の各種形状、構造のものを使用することができる。前記連結部15を主桁1にボルト、ナット等の止め具17で仮止めする。
  (7)仮舗装施工
  交通規制時に、
図11のように、前記仮設覆工版13の上に仮舗装18を施工して、仮舗装18の上面を既設舗装4の上面と同一面(略同一面を含む:以下同じ)にする。この施工は通常の仮舗装の施工と同様に行うことができる。また、予め仮舗装が施工されている仮舗装付き仮設覆工版を使用することもできる。
  (8)継手設置
  交通開放時(車両通行中)に、
図12のように、残存側コンクリート床版2に継手19を取付ける。当該継手19を残存側コンクリート床版2の側面(切断面)2bよりも内側に突出させる。継手19はループ継手とか他の構造のものとすることができる。
  (9)仮設覆工版及び仮舗装撤去
  交通規制時に、
図13のように、仮設覆工版13(仮想線部分)を撤去する。この撤去作業は仮設覆工版13をクレーンで吊り上げるなどして行う。この場合、先に仮舗装18を剥離してから行うことも、剥離せずに同時に行うこともできる。撤去跡には空間(撤去後空間11)ができる。
  (10)新設伸縮装置据付け
  
図14のように、撤去跡空間11の主桁1の上に新設伸縮装置20を据付ける。この場合、既設主桁1の上フランジ1aと新設伸縮装置20の間に高さ調整フィラプレート21を挟んで新設伸縮装置20の高さを調節する。高さ調節された新設伸縮装置20は止め具17により主桁1に本締し、場所打ちコンクリートとの結合をスタッドボルト23により主桁1に連結固定する。
図14の新設伸縮装置20は外側にプレキャストコンクリート24を備え、プレキャストコンクリート24の外側にループ状の継手22を備えたものである。継手22はループ状以外のものであってもよい。新設伸縮装置の構造は既存のものと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。異なる場合の構造は、例えば、
図3に示すゴム製の伸縮装置も適用することができる。
  (11)配筋、型枠設置
  交通規制時に、
図15のように、交差させた継手19、22の内側に鉄筋25を配筋して、新設伸縮装置20のプレキャストコンクリート24を既設コンクリート床版2に連結する。配筋箇所の外側であって、プレキャストコンクリート24と残存側コンクリート床版2の間に型枠(図示しない)を設置する。
  (12)コンクリートの打込み、養生
  交通規制中に、
図16のように、前記型枠内にコンクリート(
図16の斜線部分)26を場所打ちして間詰めし、養生する。
 
【0043】
  前記(1)の接合材6の仮接合は必ずしも行う必要はない。仮接合しない場合は、撤去用ビーム8を既設伸縮装置3の上に直に設置する。
 
【0044】
  前記(4)において、ジャッキアップに代えてクレーンで撤去用ビームを引き上げることもできる。この場合は前記(3)のジャッキの設置は必要ない。
 
【0045】
  前記実施形態の作業手順はあくまでも一例であり、その手順は、本発明の目的を達成可能な範囲で入れ替え可能である。また、作業に使用する機器も既存のものを適宜選択使用することができる。例えば、前記(1)〜(12)の作業のうち(2)、(4)、(6)、(8)〜(12)の作業は必ず必要な作業(必須作業)であるが、(1)、(3)、(5)、(7)の作業は必ずしも必要がない。しかし、実際の施工に当たっては、これら(1)、(3)、(5)の作業を行うと施工し易くなり、(7)の作業を行うと仮覆工版構造であっても車両が通行し易くなる。
 
【0046】
  (伸縮装置の取替え方法の実施形態2:非合成桁、場所打ちコンクリート施工)
  この実施形態2は非合成桁であって、プレキャストコンクリートなしの新設伸縮装置を使用して、
図1(b)及び
図17〜
図21の手順で行うことができる。その手順を次に説明する。
 
【0047】
  図1(b)の(1)〜(7)、(9)、(12)の作業は、
図1(a)の(1)〜(7)、(9)、(12)の作業と同じであり、異なるのは
図1(b)の(8)、(10)、(11)の作業である。
 
【0048】
  図1(b)の(8)の作業はアンカーの斫り出し作業である。この斫り出し作業は、
図17のように、残存側コンクリート床版2内のアンカー(鉄筋)27を斫り出して残存側コンクリート床版2の切断面2bの内側に突出させ、そのアンカー27の斫り出し部分に機械式継手28を連結する作業である。この斫り作業は、交通開放時(仮設覆工版の上を車両通行中)に、仮設覆工版13の下で行うことができる。斫り作業の方法は特に限定されないが、既設コンクリート床版の接合面を傷めないようにウォータージェットで行うことが望ましい。また、ここでは機械式継手を用いたが、溶接による継手を使用することもできる。
 
【0049】
  図1(b)の(10)の作業は、
図18の撤去跡空間11に、
図19のように、プレキャストコンクリートなしの新設伸縮装置29を据付けることである。この場合も、既設の主桁1の上フランジ1aと新設伸縮装置29の間に高さ調整フィラプレート21を挟んで新設伸縮装置29の高さを調節する。高さ調節された新設伸縮装置29は止め具17により主桁1の上フランジ1aに本締めする。新設伸縮装置29の構造は既存のものと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
 
【0050】
  図1(b)の(11)の作業は配筋、型枠設置作業である。配筋作業は、
図19のように、既設のコンクリート床版2に取付けた機械式継手28と、新設伸縮装置29の連結継手30の間に、
図20のように鉄筋31を配筋することである。この場合、鉄筋31の一端を機械式継手28に連結し、鉄筋31の他端を新設伸縮装置29の連結継手30に連結する。配筋後、その外側であって、新設伸縮装置29と残存側コンクリート床版2の間に型枠(図示しない)を設置する。この作業は、交通規制時に行う。また、機械式継手を用いない場合、配筋作業に合わせて斫り出した鉄筋と溶接による継手を使用してもよい。
 
【0051】
  図1(b)の(12)の作業はコンクリートの打込みと養生である。交通規制時に、
図21のように、前記型枠内にコンクリート(
図21の斜線部分)32を場所打ちして間詰めし、養生する。
 
【0052】
  この実施形態2でも、実施形態1における(1)〜(12)の作業のうち(2)、(4)、(6)、(8)〜(12)の作業は必須作業であるが、(1)、(3)、(5)、(7)の作業は必ずしも必要がない。
 
【0053】
  (伸縮装置の取替え方法の実施形態3:合成桁、一部プレキャストコンクリート施工)
  この実施形態は合成桁の場合であり、新規伸縮装置としてプレキャストコンクリート付きのものを使用する場合である。この取替え作業も、予め、舗装を剥離してから行うことも、剥離することなく行うこともできるが、次の説明も剥離することなく行う方法である。この取替え方法は
図2(a)及び
図23〜
図35のようにして施工することができる。
 
【0054】
  (1)主桁ウェブへの孔あけ
  
図22は合成桁の伸縮装置付近の施工前の側面図である。この実施形態では、交通開放中に、
図22のコンクリート床版2及び既設伸縮装置3の下で、
図23のように、主桁1のウェブ1bに孔33をあける。
  (2)主桁切断、添接、仮止め
  交通規制前に、コンクリート床版2及び既設伸縮装置3の下で、
図24のように、主桁1を切断ライン34に沿って撤去側主桁1cと残存側主桁1とに切断し、その撤去側主桁1cと残存側主桁1に跨がせて切断箇所に添接板35を添え、その添接板35を止め具で残存側主桁1と撤去側主桁1cに連結(仮添接)する。添接板35は残存側主桁1及び撤去側主桁1cの両面又は片面に仮添接する。
  (3)舗装及びコンクリート床版切断
  交通規制時に、路上において、
図25のように、舗装4及びコンクリート床版2を切断ライン36に沿って切断して、残存側舗装4と撤去側舗装4a、残存側コンクリート床版2と撤去側コンクリート床版2aに分ける。ここで上フランジ1aも残存側と撤去側に切断して分ける。
  (4)既設伸縮装置撤去:主桁と一体撤去
  交通規制時に、路上において、前記(2)で添接した添接板35を取り外してから、既設伸縮装置3と前記撤去側舗装4a(
図25)と撤去側コンクリート床版2a(
図25)と撤去側主桁1c(
図25)を一体に、クレーン等の機器で引き上げて、既設主桁1から取り外す(撤去する)。撤去跡には撤去跡空間37(
図26)ができる。
  (5)主桁上フランジへの孔あけ
  交通規制時に
図27のように、前記撤去跡空間37における残存側主桁1の上フランジ1aに孔38をあける。
  (6)新設主桁設置、本締め
  交通規制時に、
図28のように、前記撤去跡空間37に新設主桁39を設置する。新設主桁39の形状、構造は種々考えられるが、一例として
図28に示すものは、上フランジとなる横板40の下に、ウェブとなる縦板41を備えた側面視T字状である。この新設主桁39の縦板41を、撤去側主桁1cのウェブ撤去跡空間42(
図26)に配置して、横板40が撤去側主桁1cの上フランジ跡43(
図26)に位置するように配置する。この新設主桁39と残存主桁1に跨がせて添接板44を添接して止め具で連結固定(本締め)する。添接板44は鋼板が適する。
  (7)仮設覆工版設置
  交通規制時に、前記撤去跡空間11(
図28)に、
図29のように仮設覆工版13を設置し、新設主桁39に止め具17で仮固定する。仮設覆工版13は実施形態1で使用したものと同じもの或いは異なる構造、形状のものを使用することができる。この場合も、仮固定された仮設覆工版13は閉塞板14の下面が既設コンクリート床版2の上面と同じか、それよりも少し低くなるようにするのがよい。
  (8)仮舗装施工
  交通規制時に、
図30のように、前記仮設覆工版13の上に仮舗装18を施工する。仮舗装18はその上面が既設舗装4の上面と同じ高さになるようにするのが望ましい。
  (9)継手設置
  交通規制時に、
図31のように、残存側コンクリート床版2に継手45を設置する。この継手45にはル―プ継手が適するが、他の形状、構造の継手を使用することもできる。
  (10)仮設覆工版及び仮舗装撤去
  交通規制時に、前記(7)で設置した仮設覆工版13(
図32の仮想線部分)を撤去する。撤去跡には撤去跡空間11ができる。
  (11)伸縮装置据付け
  交通規制時に、
図32の撤去跡空間11にプレキャストコンクリート付き新設伸縮装置46(
図33)を据付ける。この場合も、新設主桁39の上フランジ40と、新設伸縮装置46の間に高さ調整フィラプレート21を挟んで新設伸縮装置46の高さを調節する。高さ調節された新設伸縮装置46は止め具17により新設主桁39の上フランジ40に本締めする。このとき、残存側コンクリート床版2に設置した継手(ル―プ継手)45と、プレキャストコンクリート47(
図33)の継手48を交差させる。
  (12)配筋、型枠設置
  交通規制時に、
図34のように両継手45と48の内側に鉄筋49を配筋する。この配筋箇所の外側で、プレキャストコンクリート47と残存側コンクリート床版2の間に型枠(図示しない)を設置する。
  (13)コンクリートの打込み、養生
  交通規制時に、
図35のように、前記型枠内にコンクリート(
図35の斜線部分)50を場所打ち(間詰め)して養生する。
 
【0055】
  前記(1)〜(13)の作業においても、(1)〜(7)、(9)、(11)〜(13)の作業は必須作業であるが、(8)、(10)の作業は必ずしも必要がない。しかし、実際の施工に当たっては、これら(8)の作業を行うと施工し易くなり、(10)の作業を行うと仮覆工版構造であっても車両が通行し易くなる。
 
【0056】
  (伸縮装置の取替え方法の実施形態4:合成桁、場所打ちコンクリート施工)
  この実施形態は合成桁であって、プレキャストコンクリートなしの新設伸縮装置を使用する場合であり、
図2(b)及び
図36〜
図40のようにして施工することができる。
図2(b)のうち(1)〜(8)、(10)、(13)の作業は、
図2(a)の(1)〜(8)、(10)、(13)の作業と同じであり、異なるのは
図2(b)の(9)、(11)、(12)の作業である。
 
【0057】
  図2(b)の(9)の作業は、アンカーの斫り出し作業である。この斫り出し作業は、
図36のように、残存側コンクリート床版2内のアンカー27を斫り出し、そのアンカー27の突出部分に機械式継手28を連結する作業である。この作業は、交通開放時(仮設覆工版の上を車両通行中)に、仮設覆工版13の下で行う。この斫り出し作業も既設コンクリート床版の接合面を傷めないようにウォータージェットで行うことが望ましい。また、ここでは機械式継手を用いたが、溶接による継手を使用することもできる。
 
【0058】
  図2(b)の(11)の作業は、撤去跡空間(
図37の仮想線部分)11にプレキャストコンクリートなしの新設伸縮装置51(
図38)を据付ける作業である。この場合も、新設主桁39の上フランジ40と新設伸縮装置51の間に高さ調整フィラプレート21を挟んで新設伸縮装置51の高さを調節する。高さ調節された新設伸縮装置51は止め具17により新設主桁39(
図38)の上フランジ40に本締めする。新設伸縮装置51の構造は既存のものと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
 
【0059】
  図2(b)の(12)の作業は配筋、型枠設置作業である。この作業は、
図39のように、機械式継手28と新設伸縮装置51の連結継手30の間に鉄筋31を配筋する作業である。この場合、鉄筋31の一端を機械式継手28に連結し、鉄筋31の他端を新設伸縮装置51の連結継手30に連結する。配筋後、その外側箇所であって、新設伸縮装置51と既設コンクリート床版2の間に型枠(図示しない)を設置する。この作業は、交通規制時に行うことができる。また、機械式継手を用いない場合、配筋作業に合わせて斫り出した鉄筋と溶接による継手を使用してもよい。
 
【0060】
  図2(b)の(13)の作業はコンクリートの打込みと養生である。
図40のように、交通規制時に、前記型枠内にコンクリート(
図40の斜線部分)32を場所打ち(間詰め)して養生する。
 
【0061】
  前記(1)〜(13)の作業においても、(1)〜(7)、(9)、(11)〜(13)の作業は必須作業であるが、(8)、(10)の作業は必ずしも必要がない。
 
【0062】
  (伸縮装置の取替え方法の実施形態5:合成桁、一部プレキャストコンクリート施工又は場所打ちコンクリート施工)
  本発明では、合成桁の場合であって、一部プレキャストコンクリート施工又は場所打ちコンクリート施工の場合に、コンクリート床版2又は既設舗装4の上に撤去用ビーム8を設置固定し、その撤去用ビーム8の押し上げ、吊り上げ等により、撤去側コンクリート床版2a及び既設伸縮装置3を主桁1から剥離、撤去することもできる。この場合の撤去用ビーム8もジャッキ付きのものでも、ジャッキ付きでないものでもよい。コンクリート床版2又は既設舗装4の上への撤去用ビーム8の設置は、主桁1、コンクリート床版2等を切断してから行っても、切断する前に行ってもよい。
 
【0063】
  前記伸縮装置の取替え方法の実施形態1〜5は、
図47のように橋台G付近の配置されている伸縮装置Cの取替えにも応用できる。この場合、前記取替え作業の一部を省略することも、他の作業を追加することもできる。
 
【0064】
  (仮設覆工版構造の実施形態1:非合成桁の場合)
  この仮設覆工版構造は、非合成桁の場合であり、既設コンクリート床版2及び既設伸縮装置3、撤去跡空間11(
図9)に仮設覆工版13(
図10)が設置されて撤去跡空間11が閉塞され、その仮設覆工版13が既設主桁1に着脱可能に仮止めされた構造である。仮設覆工版13の仮止めはボルト、その他の連結具(止め具)で行うことができる。仮止めすることにより仮設覆工版13が安定し、その上を車両が通行できる。また、当該仮設覆工版13の下に、路面下からの作業を可能とする作業空間が確保される。
 
【0065】
  仮設覆工版13の構造、形状は各種のものを使用可能であるが、例えば、撤去跡空間11を閉塞できる形状及びサイズの閉塞板14(
図10)と、その閉塞板14を既設主桁1に仮止め可能な連結部15(
図10)を備え、連結部15が閉塞板14の裏側に突出しているものを使用し、仮設覆工版13を撤去跡空間11に設置して当該連結部15を既設主桁1に連結すると、閉塞板14の下面が既設コンクリート床版2の上面と同じ高さになり、その上に仮舗装18(
図11)を施工すると、仮舗装18の上面が既設舗装4の上面と略同じ高さに揃い、車両が通行し易くなる。
 
【0066】
  (仮設覆工版構造の実施形態2:合成桁の場合)
  この仮設覆工版構造は、合成桁の場合であり、既設主桁1の撤去跡空間37(
図27)に新設主桁39(
図28)が設置され、その新設主桁39と既設主桁1に添接板44(
図28)が宛がわれて連結固定され、前記撤去跡空間37であって前記新設主桁39の上に仮設覆工版13(
図29)が設置されて撤去跡空間37が閉塞され、その仮設覆工版13が前記新設主桁39に脱着可能に仮止めされた構造である。この場合も、仮設覆工版13の仮止めはボルト、その他の連結具(止め具)で行うことができる。仮止めすることにより仮設覆工版13が安定し、その上を車両が通行できる。また、当該仮設覆工版13の下に、路面下からの作業を可能とする作業空間が確保される。
 
【0067】
  仮設覆工版13の構造、形状は各種のものを使用可能であるが、前記仮設覆工版構造1における仮設覆工版13と同じ構造、形状のものを使用することができる。この場合も、閉塞板(横板)14(
図29)を新設主桁39に止め具17で仮止めすると、閉塞板14の下面が既設コンクリート床版2の上面と略同じ高さになり、その上に仮舗装18(
図30)を施工すると、仮舗装18の上面が既設舗装4の上面と略同じ高さに揃うようにするのがよい。
 
【0068】
  (仮設覆工版構造の実施形態3:非合成桁又は合成桁の場合)
  本発明の仮設覆工版構造は、前記仮設覆工版構造における仮設覆工版13の上に、仮舗装が施工されて、仮舗装上面が既設舗装の上面と同じ高さのものであってもよい。仮設覆工版は橋軸直角方向に二以上に分割されたものを並設することもできる。仮設覆工版13は閉塞板14と連結部15からなる。閉塞板14は薄板14aの底面にリブ14bを取付けたり、リブ14bの上下に薄板14aを取付けて、両薄板14aとリブ14bで囲われたセルを備えたセル構造としてもよい。
 
【0069】
  前記1〜3の仮設覆工版構造では、閉塞板14の下に連結部15を備えている。連結部15は箱断面でもH断面でもよい。前記1〜3の仮設覆工版構造では連結部15を主桁1上に設置して仮止めすると、閉塞板14の下(閉塞板14と主桁1の間)に、路面下からの作業を可能とする作業空間S(
図10、
図11、
図29、
図30)が形成されるようにしてある。作業空間Sは高い(深い)方が作業し易い。
図10、
図30では仮設覆工版13の閉塞板14の下面が既設コンクリート床版2の上面よりも低くなっており、その閉塞板14の上面に施工した仮舗装18(
図11、
図30)の上面が既設舗装4の上面と同じ高さになっているが、本発明では仮設覆工版13を
図43のように、既設コンクリート床版2の上に被せることもできる。
 
【0070】
  例えば、路面下でのコンクリート床版への加工作業のための空間を広く設けるには、閉塞板14の下面を既設コンクリート床版2の上面に合わせることがよい。この場合、閉塞板14と仮舗装18の厚さ比率は任意に選択可能であるが、例えば、6〜7:4〜3とし、既設コンクリート床版2の上フランジ厚と既設舗装との合計厚80mmの場合に、それに合わせて、仮設覆工版13の閉塞板14と仮舗装18の合計厚を80mmとした場合、閉塞板厚48mm〜56mm、仮舗装厚32mm〜24mm程度にすると、通行車両に対する強度の確保、快適な通行性が確保される。また、仮舗装18の上面が既設舗装4の上面と同じ(略同じ)になる。
 
【0071】
  前記実施形態1〜3のいずれの場合も仮設覆工版13は、予め工場やヤードで仮舗装を備えたものでもよいし、現場で仮舗装を施工してもよい。また、仮設覆工版は、橋軸直角方向に二以上に分割されたものが並設することもできる。
 
【0072】
  前記した実施形態はあくまでも一例であり、本発明における仮設覆工版、新設伸縮装置、新設主桁の構造、形状、サイズ等は用途に適合したものであれば前記以外のものであってもよい。