(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-183450(P2015-183450A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20150925BHJP
H02S 40/42 20140101ALI20150925BHJP
H02S 20/22 20140101ALI20150925BHJP
【FI】
E04F13/08 ZETD
H02S40/42
H02S20/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-61368(P2014-61368)
(22)【出願日】2014年3月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(72)【発明者】
【氏名】西尾 新一
【テーマコード(参考)】
2E110
5F151
【Fターム(参考)】
2E110AA04
2E110AB04
2E110AB22
5F151JA13
5F151JA30
(57)【要約】
【課題】太陽光パネルの冷却を行うと同時に、その熱の有効利用を図る。
【解決手段】複数階建ての建物1において、その側壁2には太陽光パネルPを配置し、その裏側には、各階を貫通する縦空間部3を設ける。そして、該縦空間部3の下方には下方開口部A1を設けておき、上方には上方開口部A2を設けておく。該縦空間部3の内部には、前記太陽光パネルPの熱によって上昇気流が発生するが、その気流を利用して各太陽光パネルPの冷却を行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの太陽光パネルが側壁に取り付けられてなる複数階建ての建物において、
前記太陽光パネルの裏面に沿うと共に各階を貫通するように形成された空間部(以下、“縦空間部”とする)と、
少なくとも1つの前記太陽光パネルを間に挟むように前記縦空間部にて該太陽光パネルよりも低い位置と高い位置とにそれぞれ形成された開口部(以下、低い位置に形成された開口部を“下方開口部”とし、高い位置に形成された開口部を“上方開口部”とする)と、
を備え、
前記縦空間部内の空気が前記太陽光パネルの熱により暖められることに基づき、前記下方開口部から該縦空間部内に空気が取り込まれると共に該取り込まれた空気が前記上方開口部から放出されるように構成された、
ことを特徴とする建物。
【請求項2】
外気を取り込むように形成された外気取り込み口(以下、“第1外気取り込み口”とする)と、
該第1外気取り込み口と前記縦空間部とを連通するように形成された連通路(以下、“第1連通路”とする)と、
を備え、
前記縦空間部内の空気が前記太陽光パネルの熱により暖められることに基づき、外気が前記第1外気取り込み口及び前記第1連通路を介して前記縦空間部に導入されるように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第1外気取り込み口が建物の略北側に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の建物。
【請求項4】
建物内の部屋と前記縦空間部とを連通するように形成された連通路(以下、“第2連通路”とする)と、
該第2連通路を開閉可能とするように配置されたダンパ(以下、“部屋側ダンパ”とする)と、
該部屋側ダンパと前記上方開口部との間にて前記縦空間部を開閉可能とするように配置されたダンパ(以下、“放出側ダンパ”とする)と、
これらのダンパの開閉動作を制御するダンパ制御手段と、
を備え、
該ダンパ制御手段によって前記部屋側ダンパを開状態にすると共に前記放出側ダンパを閉状態にすることにより前記太陽光パネルによって暖められた空気が前記縦空間部から前記第2連通路を介して前記部屋に導入されるように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項5】
外気を取り込むように形成された外気取り込み口(以下、“第2外気取り込み口”とする)と、
該第2外気取り込み口と前記部屋とを連通するように形成された連通路(以下、“第3連通路”とする)と、
を備え、
前記ダンパ制御手段によって前記部屋側ダンパ及び前記放出側ダンパの両方を開状態にすることにより、前記第2外気取り込み口から取り込まれた空気が前記第3連通路及び前記部屋を介して前記縦空間部に導入されるように構成された、
ことを特徴とする請求項4に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルが側壁に取り付けられてなる複数階建ての建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の側壁に太陽光パネルを取り付ける構成については種々のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−15751号公報
【特許文献2】特開2011−58261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、太陽光パネルの温度は太陽熱を受けて上昇すると共に、発電によっても上昇するが、該太陽光パネルの熱の有効な利用が望まれる。
【0005】
本発明は、上述の問題を解消することのできる建物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、
図1及び
図2に例示するものであって、少なくとも1つの太陽光パネル(P)が側壁(2)に取り付けられてなる複数階建ての建物(1)において、
前記太陽光パネル(P)の裏面に沿うと共に各階を貫通するように形成された空間部(
図1及び
図3の符号3参照。以下、“縦空間部”とする)と、
少なくとも1つの前記太陽光パネル(P)を間に挟むように前記縦空間部(3)にて該太陽光パネル(P)よりも低い位置と高い位置とにそれぞれ形成された開口部(以下、低い位置に形成された開口部(A1)を“下方開口部”とし、高い位置に形成された開口部(A2)を“上方開口部”とする)と、
を備え、
前記縦空間部(3)内の空気が前記太陽光パネル(P)の熱により暖められることに基づき、前記下方開口部(A1)から該縦空間部(3)内に空気が取り込まれると共に該取り込まれた空気が前記上方開口部(A2)から放出されるように構成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、
図5に例示するものであって、請求項1に係る発明において、外気を取り込むように形成された外気取り込み口(符号B1参照。以下、“第1外気取り込み口”とする)と、
該第1外気取り込み口(B1)と前記縦空間部(3)とを連通するように形成された連通路(符号C1参照。以下、“第1連通路”とする)と、
を備え、
前記縦空間部(3)内の空気が前記太陽光パネル(P)の熱により暖められることに基づき、外気が前記第1外気取り込み口(B1)及び前記第1連通路(C1)を介して前記縦空間部(3)に導入されるように構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記第1外気取り込み口(B1)が建物(1)の略北側に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、
図6に例示するものであって、請求項1に記載の発明において、建物(1)内の部屋(R)と前記縦空間部(3)とを連通するように形成された連通路(符号C2参照。以下、“第2連通路”とする)と、
該第2連通路(C2)を開閉可能とするように配置されたダンパ(符号D2参照。以下、“部屋側ダンパ”とする)と、
該部屋側ダンパ(D2)と前記上方開口部(A2)との間にて前記縦空間部(3)を開閉可能とするように配置されたダンパ(符号D1参照。以下、“放出側ダンパ”とする)と、
これらのダンパ(D1,D2)の開閉動作を制御するダンパ制御手段(不図示)と、
を備え、
該ダンパ制御手段(不図示)によって前記部屋側ダンパ(D2)を開状態にすると共に前記放出側ダンパ(D1)を閉状態にすることにより前記太陽光パネル(P)によって暖められた空気が前記縦空間部(3)から前記第2連通路(C2)を介して前記部屋(R)に導入されるように構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、外気を取り込むように形成された外気取り込み口(
図6の符号B2参照。以下、“第2外気取り込み口”とする)と、
該第2外気取り込み口(B2)と前記部屋(R)とを連通するように形成された連通路(符号C3参照。以下、“第3連通路”とする)と、
を備え、
前記ダンパ制御手段(不図示)によって前記部屋側ダンパ(D2)及び前記放出側ダンパ(D1)の両方を開状態にすることにより、前記第2外気取り込み口(B2)から取り込まれた空気が前記第3連通路(C3)及び前記部屋(R)を介して前記縦空間部(3)に導入されるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2に係る発明によれば、太陽光パネル自体の熱で上昇気流を起こし、該上昇気流を有効に利用して太陽光パネルの冷却を行うことができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、建物の南側に比べて温度が低い略北側の空気により前記太陽光パネルを冷却することができ、発電効率をより向上させることができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、太陽光パネルの熱を部屋の暖房に有効に利用することができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、太陽光パネルの熱を利用して部屋を換気できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る建物の構造の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る建物の構造の一例を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る建物の構造の一例を示す模式図(斜視図)である。
【
図4】
図4は、太陽光パネルの取り付け構造の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る建物の構造の他の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る建物の構造のさらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1乃至
図6に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明に係る建物は、
図1及び
図2に符号1で例示するような複数階建ての建物であって、その側壁(好ましくは、略南を向く側壁)2には太陽光パネルPが取り付けられている。
【0019】
そして、
図1及び
図3に例示するように、前記側壁2の内側であって前記太陽光パネルPの裏面に沿う位置には、各階を貫通する空間部(以下、“縦空間部”とする)3が形成されている。また、この縦空間部3には、少なくとも1つの太陽光パネルPを間に挟むように、
・ 該太陽光パネルPよりも低い位置と、
・ 該太陽光パネルPよりも高い位置と、
にそれぞれ開口部A1,A2が形成されている。以下、低い位置に形成された開口部A1を“下方開口部”とし、高い位置に形成された開口部A2を“上方開口部”とする。
【0020】
今、前記太陽光パネルPの温度は、太陽熱によって上昇すると共に、発電に伴って生成される熱によっても上昇する。本発明によれば、該太陽光パネルPの熱によって前記縦空間部3内の空気が暖められるので、該縦空間部3内には上昇気流が発生し、
・ 前記下方開口部A1から前記縦空間部3内に空気が取り込まれ、
・ 該取り込まれた空気は該縦空間部3内を上昇し、
・ その後、前記上方開口部A2から放出される、
こととなる。その際、前記太陽光パネルPは熱が奪われて冷却されることとなる。つまり、太陽光パネルP自体の熱で上昇気流を起こし、該上昇気流を有効に利用して太陽光パネルPの冷却を行うことができる。
【0021】
なお、
図1に示す例では、前記上方開口部A2は、建物1の外側(図示左側)に開口するように形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、その他の側(例えば、図示の右側や上側等)に開口するように形成されていても良い。また、前記上方開口部A2は、前記縦空間部3内の空気を建物外部に放出するものに限定されるものではなく、建物内部(例えば、廊下や部屋など)に放出するように構成されていても良い。さらに、
図1に示す例では、前記上方開口部A2は、前記縦空間部3の上端部付近に形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、該縦空間部3の上端から下方にある程度離れた位置に形成されていても良い。
【0022】
また、
図1に示す例では、前記下方開口部A1は、建物の外側(図示左側)に開口するように形成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、その他の側(例えば、図示の右側等)に開口するように形成されていても良い。さらに、前記下方開口部A1は、建物外部の空気を取り込むものに限定されるものではなく、建物内部の空気を取り込むように構成されていても良い。
【0023】
一方、
図1に示す例では、前記上方開口部A2と前記下方開口部A1との間(つまり、該上方開口部A2よりも低い位置であって該下方開口部A1よりも高い位置)にほぼ全ての太陽光パネルPが配置されているが、もちろんこれに限られるものではなく、太陽光パネルPが少なくとも1つ配置されていれば良い。
【0024】
なお、
図4に示すように、前記太陽光パネルPは、前記側壁2に対して傾けて取り付けておいて より多くの太陽光を受光できるようにしておくと良い。その場合、該太陽光パネルPの下縁P1や側縁P2が前記側壁2から離間してしまうが、該下縁P1や該側縁P2と該側壁2との間に板状や蛇腹状のような何らかの部材(以下、“閉塞部材”とする)4を設けておいて、該下縁P1や該側縁P2と該側壁2との間から前記縦空間部3の内部に空気が入らないようにすると良い。また、前記太陽光パネルP及び前記閉塞部材4を可動可能にしておいて、太陽の位置に応じて該太陽光パネルPの向きを変更できるようにしておくと良い。
【0025】
さらに、該太陽光パネルPの裏面には熱放散性の良いもの(例えば、アルミニウムで形成した物とか、ラジエータ装置など)を配置しておいて該太陽光パネルPの熱が効率良く前記縦空間部3に放散されるようにしても良い。
【0026】
一方、
図5に例示するように、建物10には、
・ 外気を取り込むように形成された外気取り込み口(以下、“第1外気取り込み口”とする)B1と、
・ 該第1外気取り込み口B1と前記縦空間部3とを連通するように形成された連通路(以下、“第1連通路”とする)C1と、
を設けておいて、前記縦空間部3内の空気が前記太陽光パネルPの熱により暖められることに基づき、外気が前記第1外気取り込み口B1及び前記第1連通路C1を介して前記縦空間部3に導入されるように構成しても良い。この場合、該第1連通路C1には符号D4,D5に示すようなダンパを適宜設けておいて、該第1外気取り込み口B1からの外気導入を制御できるようにしておくと良い。
【0027】
また、前記第1外気取り込み口B1を建物10の略北側に形成すると良い。そのようにした場合には、建物10の南側に比べて温度が低い略北側の空気により前記太陽光パネルPを冷却することができ、発電効率をより向上させることができる。なお、上述した下方開口部A1が外気を取り込めるように構成しておいて、該下方開口部A1を前記第1外気取り込み口B1と兼用するようにしても良いが、該第1外気取り込み口B1を該下方開口部A1とは別に設けるようにしても良い。
【0028】
ところで、前記第1連通路C1は、前記第1外気取り込み口B1から前記縦空間部3に外気を導入するためだけの専用のダクトとしても良いが、建物10の一部(例えば、機械室とか、廊下とか)を第1連通路C1として利用しても良い。
【0029】
一方、
図6に例示するように、建物20内の少なくとも1つの部屋Rと前記縦空間部3とを連通するように連通路(以下、“第2連通路”とする)C2を形成しておき、該第2連通路C2を開閉可能とするダンパ(以下、“部屋側ダンパ”とする)D2を配置しておくと良い。また、別のダンパ(以下、“放出側ダンパ”とする)D1を、前記部屋側ダンパD2と前記上方開口部A2との間にて前記縦空間部3を開閉可能とするように配置しておき、これらのダンパD1,D2の開閉動作を制御するダンパ制御手段(不図示)を設けておいて、該ダンパ制御手段(不図示)によって前記部屋側ダンパD2を開状態にすると共に前記放出側ダンパD1を閉状態にすることにより前記太陽光パネルPによって暖められた空気が前記縦空間部3から前記第2連通路C2を介して前記部屋Rに導入されるように構成すると良い。そのように構成した場合には、太陽光パネルPの熱を部屋Rの暖房に有効に利用することができる。なお、上述したダンパD1〜D5には、スライド式や揺動式などの公知のダンパを用いると良いが、空調機自体が備えたダンパ機能を利用しても良く、さらには、電動ファンを利用しても良い。
【0030】
また一方、
・ 外気を取り込むように形成された外気取り込み口(前記第1外気取り込み口B1とは別の取り込み口であって、以下、“第2外気取り込み口”とする)B2と、
・ 該第2外気取り込み口B2と前記部屋Rとを連通するように形成された連通路(以下、“第3連通路”とする)C3と、
を設けておいて、前記ダンパ制御手段(不図示)によって前記部屋側ダンパD2及び前記放出側ダンパD1の両方を開状態にすることにより、前記第2外気取り込み口B2から取り込まれた空気が前記第3連通路B3及び前記部屋Rを介して前記縦空間部3に導入されるように構成すると良い。そのようにした場合には、部屋Rに外気を導入して部屋の換気等をすることができる。この場合、前記第2外気取り込み口B2は、太陽光が当たりにくい部分(例えば、北側を向く側壁等)に形成しておくと良い。そのようにした場合には、部屋Rに冷気を導入することが可能となる。なお、前記第3通路C3を開閉可能とするダンパD3を設けておいて、外気取り込み量を調整できるようにしておくと良い。
【符号の説明】
【0031】
1 建物
2 側壁
3 縦空間部
10 建物
20 建物
A1 下方開口部
A2 上方開口部
B1 第1外気取り込み口
B2 第2外気取り込み口
C1 第1連通路
C2 第2連通路
C3 第3連通路
D1 放出側ダンパ
D2 部屋側ダンパ
P 太陽光パネル
R 部屋