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特開2015-183837コイル成形体敷設装置、コイル成形体敷設方法、ライニング工法および更生管路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-183837(P2015-183837A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】コイル成形体敷設装置、コイル成形体敷設方法、ライニング工法および更生管路
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20150925BHJP
   F16L 55/16 20060101ALI20150925BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20150925BHJP
【FI】
   F16L1/00 J
   F16L55/16
   E03F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-63641(P2014-63641)
(22)【出願日】2014年3月26日
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】クボタシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】堀 智明
(72)【発明者】
【氏名】中村 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】越智 聡
(72)【発明者】
【氏名】西島 賢太朗
(72)【発明者】
【氏名】原田 孝知
【テーマコード(参考)】
2D063
3H025
【Fターム(参考)】
2D063EA06
3H025EA01
3H025EB21
3H025EC12
3H025ED02
3H025EE04
(57)【要約】

【構成】 コイル成形体敷設装置は、中空部を有する芯材(20)と、芯材(20)とは別体であって芯材(20)の中空部内を移動可能な拡径装置(60)を含む。第1マンホール(102)を通したロープ(108)によって、各々が縮径したコイル成形体(10)を保持した複数の芯材(20)を、連結部材(90)連結した状態で、第2マンホール(104)から既設管(100)内に引き込む。第1マンホールに近い芯材から順に、1つの拡径装置によってコイル成形体を外すことによって拡径する。先行する芯材上のコイル成形体を拡径した後、後続する芯材を、第1マンホールの方向に引き寄せて後続する芯材上の縮径しているコイル成形体の位置合わせを行う。
【効果】 コイル成形体を既設管内へ敷設する作業をより簡単に行えるようになる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管内にコイル成形体を敷設する、コイル成形体敷設装置であって、
中空形状であり、その外面上に、前記既設管の内径に対応する外径を有するコイル成形体を縮径した状態で保持する芯材、および
前記芯材とは別体であり、前記芯材の中空部内において、当該芯材から前記コイル成形体を外すことによって前記コイル成形体を拡径する拡径装置を備える、コイル成形体敷設装置。
【請求項2】
前記芯材の中空部に形成されるレール、および
前記拡径装置に設けられ、前記レールと係合して当該拡径装置を前記芯材の軸方向へ移動可能とする走行部材を備える、請求項1記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項3】
前記芯材に設けられ、縮径した状態のコイル成形体の両端を第1位置および第2位置で解放可能に保持する第1および第2保持手段、
前記拡径装置に設けられ、前記第1および第2保持手段にそれぞれ作用して前記コイル成形体の両端を解放する第1および第2解放手段を備える、請求項1または2記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項4】
前記第1および第2保持手段は、前記コイル成形体の両端において、コイル成形体の厚み内に形成された雌ねじと、前記芯材の内面から外面に突出して設けられるボルトとを含み、前記芯材の外面において前記ボルトが前記コイル成形体の雌ねじに螺合することによって前記芯材の外面に前記コイル成形体を保持し、
前記第1および第2解放手段は、前記拡径装置に設けられ、前記芯材の中空部内において前記ボルトを回して前記雌ねじから外す手段を含む、請求項3記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項5】
前記芯材および前記拡径装置の少なくとも一方に設けられて前記拡径装置を前記芯材の中空部内において所定位置に位置決めする位置決め手段をさらに備える、請求項1ないし4記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項6】
前記位置決め手段は、前記拡径装置を前記芯材の中空部内において周方向の所定位置に位置決めする第1位置決め手段、および前記拡径装置を前記芯材の中空部内において軸方向の所定位置に位置決めする第2位置決め手段を含む、請求項5記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項7】
前記第1位置決め手段は、前記芯材の中空部において軸方向に延びて設けられるレール、および前記拡径装置に設けられて前記レールに係合して前記拡径装置を前記軸方向に移動可能とする走行部材を含む、請求項6記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項8】
前記第2位置決め手段は、前記芯材の中空部に設けられる係止部および前記拡径装置に設けられて前記係止部に係合する係合部を含み、前記係合部が前記係止部に係合したとき前記拡径装置が前記芯材に対して軸方向に位置決めされる、請求項6記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項9】
前記係合部は、前記拡径装置が前記芯材の中空部を第1軸方向に移動するとき前記係止部に係合せず、前記拡径装置が前記芯材の中空部を第2軸方向に移動するとき前記係止部に係合する、請求項8記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項10】
前記芯材に設けられ、前記拡径装置によって前記コイル成形体を拡径するとき前記コイル成形体の端部の動きを規制するガイドを備える、請求項1ないし9記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項11】
前記ガイドは、コイル成形体の前端側の動きを規制する第1ガイドおよび前記コイル成形体の後端側の動きを規制する第2ガイドを含む、請求項10記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項12】
前記コイル成形体は後端側が前端側より先に芯材から外され、前記第2ガイドは前記コイル成形体が縮径されている状態での後端位置と拡径された状態での後端位置との軸方向距離の違いに応じて、拡径された状態での後端位置に設けられる、請求項11記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項13】
前記ガイドは、前記芯材の中空部から外面に出没可能に設けられたガイド片と、前記ガイド片を支持し、前記拡径装置によって押されることによって前記ガイド片を外面に突出させる支持部材を備える、請求項10ないし12のいずれかに記載のコイル成形体敷設装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載のコイル成形体敷設装置を用いて既設管内にコイル成形体を敷設する方法であって、
(a) 各々が外面上にコイル成形体を縮径した状態で保持している複数の芯材を連結部材によって連結して既設管内に引き込むステップ、
(b)先頭の芯材の中空部内の拡径装置によってその芯材からコイル成形体を外して当該先頭の芯材に保持されていたコイル成形体を拡径するステップ、
(c) ステップ(b)で用いた拡径装置を前記後続する芯材の中空部に移動させるステップ、
(d) 後続する芯材をさらに移動させることによって当該後続する芯材をステップ(b)で拡径したコイル成形体に後続する位置に位置決めするステップ、
(e) ステップ(c)で前記後続する芯材の中空部に移動させた拡径装置によって後続する芯材からコイル成形体を外すことによって当該後続する芯材に保持されていたコイル成形体を拡径するステップ、および
(f) 前記ステップ(c)および(e)を必要に応じて繰り返し、前記既設管内にコイル成形体を敷設するステップを含む、コイル成形体敷設方法。
【請求項15】
請求項14のコイル成形体敷設方法によって既設管内に敷設されたコイル成形体の内部にライニング材を敷設する、ライニング方法。
【請求項16】
請求項15のライニング方法で更生された更生管路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル成形体敷設装置、コイル成形体敷設方法、ライニング工法および更生管路に関し、特にたとえば、コイル成形体を用いて老朽化した既設管内に更生管路を形成するための、コイル成形体敷設装置、コイル成形体敷設方法、ライニング工法および更生管路に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明の背景となる背景技術の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1の技術では、既設管内を自走できるコイル成形体敷設装置を用い、この縮径した状態のコイル成形体をチャックユニットでコイル成形体敷設装置上に固定し、既設管内に車輪移動し、既設管内の所定位置でチャックユニットから取り外してコイル成形体を復元させることによって、既設管内にコイル成形体を敷設する。
【特許文献1】特開2013‐226808号[B29C 63/34 F16L 55/16, 1/00]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術では、コイル成形体敷設装置に縮径したコイル成形体を保持し、コイル成形体敷設装置が自走して既設管内でコイル成形体を拡径して敷設するので、コイル成形体の敷設作業を簡単に行えるという利点はあるものの、1つのコイル成形体を敷設するのに1つのコイル成形体敷設装置が必要で、そのためのコストがかかる。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、コイル成形体敷設装置、コイル成形体敷設方法、ライニング工法および更生管路を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、コストを抑えながら施工性を改善できる、コイル成形体敷設装置、コイル成形体敷設方法、ライニング工法および更生管路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
第1の発明は、既設管内にコイル成形体を敷設する、コイル成形体敷設装置であって、中空形状であり、その外面上に、既設管の内径に対応する外径を有するコイル成形体を縮径した状態で保持する芯材、および芯材とは別体であり、芯材の中空部内において、当該芯材からコイル成形体を外すことによってコイル成形体を拡径する拡径装置を備える、コイル成形体敷設装置である。
【0008】
第1の発明では、コイル成形体敷設装置は、芯材(20)およびこの芯材(20)とは別体の拡径装置(60)を備える。芯材(20)は、中空部を有する、たとえば円筒状に形成され、その外面上に、コイル成形体(10)を、縮径した状態で
保持する。コイル成形体(10)の外径は更生すべき既設管(100)の内径よりやや大きく設定されている。拡径装置(60)は、芯材(20)の中空部内を移動可能な大きさ形状にされている。縮径したコイル成形体を外面上に保持した芯材を既設管内に引き入れ、その芯材の中空部に拡径装置を導入して、拡径装置によって当該芯材上のコイル成形体の保持を外して、コイル成形体を拡径する。
【0009】
第1の発明によれば、拡径装置を芯材とは別体で構成しているので、それぞれにコイル成形体を縮径して保持する複数の芯材を既設管内に連続して引き込んだ後、同じ拡径装置を用いて各芯材上のコイル成形体を拡径することができる。したがって、拡径装置は1台でよく、経済的である。しかも、それぞれが縮径したコイル成形体を保持する複数の芯材を予め準備できるので、コイル成形体敷設工程が効率的に行える。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、芯材の中空部に形成されるレール、および拡径装置に設けられ、レールと係合して当該拡径装置を芯材の軸方向へ移動可能とする走行部材を備える、コイル成形体敷設装置である。
【0011】
第2の発明では、芯材(20)の中空部内に、軸方向に延びてレール(26、28)を設け、拡径装置(60)にはこのレール(26、28)上を走行可能な、たとえばそり(66、68)のような走行部材が設けられる。走行部材がレール上を走行できる。したがって、先行する芯材のコイル成形体を拡径した後、拡径装置は後続する芯材の中空部に容易に移動できる。
【0012】
第2の発明によれば、同じ拡径装置を用いて各芯材に保持されているコイル成形体を容易に拡径させることができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、芯材に設けられ、縮径した状態のコイル成形体の両端を第1位置および第2位置で解放可能に保持する第1および第2保持手段、拡径装置に設けられ、第1および第2保持手段にそれぞれ作用してコイル成形体の両端を解放する第1および第2解放手段を備える、コイル成形体敷設装置である。
【0014】
第3の発明では、芯材(20)の前端側の第1位置で、たとえば保持機構(36a)のような第1保持手段がコイル成形体(10)のたとえば前端を保持し、芯材(20)の後端側の第2位置でたとえば保持機構(36b)のような第2保持手段がコイル成形体(10)のたとえば後端を保持する。拡径装置(60)の第1および第2解放手段(70a‐72a、70b‐72b)がそれぞれ第1および第2保持手段に作用して、コイル成形体(10)を解放して拡径する。
【0015】
第3の発明によれば、拡径装置によってコイル成形体を容易に拡径して敷設することができる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明に従属し、第1および第2保持手段は、コイル成形体の両端において、コイル成形体の厚み内に形成された雌ねじと、芯材の内面から外面に突出して設けられるボルトとを含み、芯材の外面においてボルトがコイル成形体の雌ねじに螺合することによって芯材の外面にコイル成形体を保持し、第1および第2解放手段は、拡径装置に設けられ、芯材の中空部内においてボルトを回して雌ねじから外す手段を含む、コイル成形体敷設装置である。
【0017】
第4の発明では、コイル成形体の両端にコイル成形体(10)の厚み内に形成された雌ねじ(14a、14b)を形成し、たとえばハンドル(42a、42b)が固着されたボルト(40a、40b)が、芯材(20)の内面から外面に突出して設けられる。芯材の外面においてボルト(40a、40b)がコイル成形体の雌ねじ(14a、14b)に螺合することによって芯材の外面上にコイル成形体を保持することができる。これに対して、拡径装置に設けられる外し手段(70a‐72a、70b‐72b)は、芯材の中空部内においてハンドルすなわちボルト(40a、40b)を回して雌ねじ(14a、14b)からボルト(40a、40b)を外す。雌ねじとボルトによって、コイル成形体の厚みの中でコイル成形体を保持することができるので、保持手段が芯材の外面上に保持されているコイル成形体の外面に突出することがない。
【0018】
第4の発明によれば、コイル成形体の厚みの中だけで、つまりコイル成形体の外面に何も突出物を突出させることなく、コイル成形体を芯材上に保持できるので、コイル成形体を保持した芯材を既設管内に引き込む際の抵抗を可及的小さくできる。
【0019】
第5の発明は、第1ないし第4の発明のいずれかに従属し、芯材および拡径装置の少なくとも一方に設けられて拡径装置を芯材の中空部内において所定位置に位置決めする位置決め手段をさらに備える、コイル成形体敷設装置である。
【0020】
第5の発明では、たとえば、芯材(20)の中空部に設けられるレール(26、28)と拡径装置(60)に設けられるそり(66、68)が協働して位置決め手段を構成する。また、たとえば、芯材(20)の中空部に設けられる当たり棒(44)と拡径装置(60)に設けられる起立片(74)が協働して別の位置決め手段を構成する。
【0021】
第5の発明によれば、位置決め手段によって芯材と拡径装置の相対的位置の位置決めが行われるので、芯材と拡径装置が別体で構成されていても、拡径装置は確実に芯材の所要部に作用することができる。
【0022】
第6の発明は、第5の発明に従属し、位置決め手段は、拡径装置を芯材の中空部内において周方向の所定位置に位置決めする第1位置決め手段、および拡径装置を芯材の中空部内において軸方向の所定位置に位置決めする第2位置決め手段を含む、コイル成形体敷設装置である。
【0023】
第6の発明では、たとえば、芯材(20)の中空部に設けられるレール(26、28)と拡径装置(60)に設けられるそり(66、68)が協働して第1位置決め手段を構成する。また、たとえば、芯材(20)の中空部に設けられる当たり棒(44)と拡径装置(60)に設けられる起立片(74)が協働して第2位置決め手段を構成する。
【0024】
第6の発明によれば、位置決め手段によって芯材と拡径装置の相対的周方向位置および相対的軸方向位置の位置決めが行われるので、拡径装置を、別体で構成されている芯材の中空部内に確実に位置決めできる。
【0025】
第7の発明は、第6発明に従属し、第1位置決め手段は、芯材の中空部において軸方向に延びて設けられるレール、および拡径装置に設けられてレールに係合して拡径装置を軸方向に移動可能とする走行部材を含む、コイル成形体敷設装置である。
【0026】
第7の発明では、芯材(20)の中空部に設けられるレール(26、28)と拡径装置(60)に設けられるそり(66、68)のような走行部材が協働して第1位置決め手段を構成する。
【0027】
第7の発明によれば、拡径装置を芯材の中空部内で軸方向に移動させるための手段が第1位置決め手段に兼用されるので、第1位置決め手段として特別な構成を設ける必要がない。
【0028】
第8の発明は、第6の発明に従属し、第2位置決め手段は、芯材の中空部に設けられる係止部および拡径装置に設けられて係止部に係合する係合部を含み、係合部が係止部に係合したとき拡径装置が芯材に対して軸方向に位置決めされる、コイル成形体敷設装置である。
【0029】
第8の発明では、たとえば、芯材(20)の中空部に設けられる当たり棒(44)が係止部として機能し、拡径装置(60)に設けられる起立片(74)が係合部として機能する。
【0030】
第8の発明によれば、係止部と係合部で芯材と拡径装置の軸方向の相対的位置の位置決めが確実に行える。
【0031】
第9の発明は、第8の発明に従属し、係合部は、拡径装置が芯材の中空部を第1軸方向に移動するとき係止部に係合せず、拡径装置が芯材の中空部を第2軸方向に移動するとき係止部に係合する、コイル成形体敷設装置である。
【0032】
第9の発明では、係合部として機能するたとえば起立片(74)は、たとえばねじりばね(82)によってストッパ(80)方向に偏倚されているので、第1軸方向に拡径装置が移動すると、ストッパ(80)側から起立片(74)が押されるので、起立片(74)はねじりばね(82)の弾発力を超えて、起立片が倒れてしまう。第2軸方向に拡径装置が動かされるとき、起立片(74)はストッパ(80)側へ押されるので、起立片(74)はストッパ(80)によって起立状態が維持される。つまり、拡径装置を移動させるべきときには起立片が倒れるので、拡径装置は芯材の中空部を自由に移動できる。一方、軸方向の位置決めが必要なとき、たとえば起立片(74)が当たり棒(44)に当たったままの状態になり、確実に位置決めが行われ得る。
【0033】
第9の発明によれば、拡径装置が自由に移動できる反面、必要なときには確実に軸方向の位置決めができる。
【0034】
第10の発明は、第1ないし第9の発明のいずれかに従属し、芯材に設けられ、拡径装置によってコイル成形体を拡径するときコイル成形体の端部の動きを規制するガイドを備える、コイル成形体敷設装置である。
【0035】
第10の発明では、たとえば芯材(20)の前端側にたとえば第1ガイド(46a、46b、46c)が設けられ、たとえば芯材(20)の後端側にたとえば第2ガイド(48a、48b)が設けられる。
【0036】
第10の発明によれば、ガイドによって、拡径時のコイル成形体の端部の動きを規制することができる。
【0037】
第11発明は、第10の発明に従属し、ガイドは、コイル成形体の前端側の動きを規制する第1ガイドおよびコイル成形体の後端側の動きを規制する第2ガイドを含む、コイル成形体敷設装置である。
【0038】
第11の発明では、たとえば芯材(20)の前端側にたとえばガイド(46a、46b、46c)が設けられる。また、たとえば芯材(20)の後端側にたとえば第2ガイド(48a、48b)が設けられる。
【0039】
第11の発明によれば、ガイドによって、拡径時のコイル成形体の前端部および後端部の動きを規制することができる。
【0040】
第12の発明は、第11の発明に従属し、コイル成形体は後端側が前端側より先に芯材から外され、第2ガイドはコイル成形体が縮径されている状態での後端位置と拡径された状態での後端位置との軸方向距離の違いに応じて、拡径された状態での後端位置に設けられる、コイル成形体敷設装置。
【0041】
第12の発明では、第2ガイド(48a、48b)は、縮径時のコイル成形体の長さ(L2)と拡径時のコイル成形体の長さ(L1<L2)との差(L2−L1)に応じて、縮径時のコイル成形体の後端より内側に配置される。
【0042】
第12の発明によれば、第2ガイドは拡径時のコイル成形体の後端に位置するので、後端でのコイル成形体の拡径時の動きを確実に抑制または規制することができる。
【0043】
第13の発明は、第10ないし第12の発明のいずれかに従属し、ガイドは、芯材の中空部から外面に出没可能に設けられたガイド片と、ガイド片を支持し、拡径装置によって押されることによってガイド片を外面に突出させる支持部材を備える、コイル成形体敷設装置である。
【0044】
第13の発明では、ガイド(46a、46b、46c)およびガイド(48a、48b)は、たとえば連結杆(52a、52b、52c)のように支持部材に支持される。支持部材が拡径装置によって押されると、ガイド(46a、46b、46c)およびガイド(48a、48b)は、芯材(20)の外面上に突出する。したがって、拡径装置(60)によってガイドを出没させることができる。
【0045】
第13の発明によれば、拡径装置によって芯材のガイドを操作することができるので、既設管内に芯材を導入した後でも必要なときに確実にガイドを出没させることができる。
【0046】
第14の発明は、第1ないし第13の発明のいずれかのコイル成形体敷設装置を用いて既設管内にコイル成形体を敷設する方法であって、(a) 各々が外面上にコイル成形体を縮径した状態で保持している複数の芯材を連結部材によって連結して既設管内に引き込むステップ、(b) 先頭の芯材の中空部内の拡径装置によってその芯材からコイル成形体を外して当該先頭の芯材に保持されていたコイル成形体を拡径するステップ、(c) ステップ(b)で用いた拡径装置を後続する芯材の中空部に移動させるステップ、(d) 後続する芯材をさらに移動させることによって当該後続する芯材をステップ(b)で拡径したコイル成形体に後続する位置に位置決めするステップ、(e) ステップ(c)で後続する芯材の中空部に移動させた拡径装置によって後続する芯材からコイル成形体を外すことによって当該後続する芯材に保持されていたコイル成形体を拡径するステップ、および(f) ステップ(c)、(d)および(e)を必要に応じて繰り返し、既設管内にコイル成形体を敷設するステップを含む、コイル成形体敷設方法である。
【0047】
第14の発明では、縮径したコイル成形体を保持する複数の芯材(20)を準備し、それを連結部材(90)で連結して既設管(100)内に引き込む(ステップ(a))。したがって、たとえば1区間の既設管全長に亘って、コイル成形体を保持した芯材が導入される。拡径装置(60)をまず先頭の芯材の中空部に入れて、拡径装置によってその芯材上のコイル成形体を外して拡径する(ステップ(b))。そして、同じ拡径装置(60)をその後続する芯材内に移動し(ステップ(c))、ついで、後続する芯材を、その芯材に保持しているコイル成形体の前端が拡径したコイル成形体の後端に当たる程度まで、移動して位置決めする(ステップ(d))。後続する芯材内に移動した拡径装置(60)によって当該芯材からコイル成形体を外して拡径する(ステップ(e))。このようなステップ(c)‐ステップ(e)を繰り返すことによって、既設管内に引き込んだすべての芯材のコイル成形体を拡径する。このとき、同じ拡径装置を用いることができる。
【0048】
第14の発明によれば、既設管内に複数の芯材(縮径したコイル成形体を保持している。)を連続的に引き込み、その後拡径装置によって1つ1つの芯材上のコイル成形体を順次拡径するので、効率よくコイル成形体を既設管内に敷設することができる。
【0049】
第15の発明は、第14の発明に従ったコイル成形体敷設方法によって既設管内に敷設されたコイル成形体の内部にライニング材を敷設する、ライニング方法である。
【0050】
第15の発明によれば、コイル成形体を効率的に敷設できるので、ライニング工法も応じて効率よく行なえる。
【0051】
第16の発明は、第15の発明のライニング工法で更生された、更生管路である。
【発明の効果】
【0052】
この発明によれば、複数の芯材を既設管内に連続して引き込んだ後、同じ拡径装置を用いて各芯材上のコイル成形体を拡径することができるので、経済的である。しかも、コイル成形体を保持する複数の芯材を予め準備できるので、コイル成形体敷設工程が効率的に行える。
【0053】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1はこの発明の一実施例を利用したライニング工法に用いられるコイル成形体を示す概略図であり、図1(a)は縮径前のコイル成形体を示し、図1(b)は縮径した状態のコイル成形体を示す。
図2図2はライニング工法に用いられるライニング材を示す概略図であり、図2(a)はライニング材の平面図を示し、図2(b)は断面図を示す。
図3図3はこの発明の一実施例のコイル成形体敷設装置を構成する芯材の一例の概略図であり、前方から見た斜視図を示す。
図4図4図3の芯材の後方から見た斜視図を示す。
図5図5はこの発明の一実施例のコイル成形体敷設装置を構成する拡径装置の一例を示す概略図であり、図5(a)は前方上面から見た斜視図を示し、図5(b)は後方前方下面から見た斜視図を示す。
図6図6図3および図4に示す芯材の外面上に図1(a)に示すコイル成形体を縮径して保持した状態を示す概略図であり、図6(a)は芯材の前方から見た斜視図を示し、図6(b)は芯材の後方から見た斜視図を示す。る。
図7図7は2つの芯材を連結する連結部材の一例を示す概略図であり、図7(a)は2つの芯材を未だ連結していない状態を示し、図7(b)は後続する芯材の連結金具に先行する芯材の連結金具に取り付けられたITハンガの回転プレートが挿入された状態を示し、図7(c)はITハンガの回転プレートが回転して連結した状態を示す。
図8図8はこの発明の一実施例に従ったライニング工法におけるコイル成形体敷設方法の初期工程を示す概略図である。
図9図9はコイル成形体敷設方法の次の工程を示す概略図である。
図10図10はコイル成形体敷設方法の図9より後の工程を示す概略図である。
図11図11はコイル成形体敷設方法の図10より後の工程を示す概略図である。
図12図12は縮径したコイル成形体を外面上に保持している芯材の中空部に拡径装置が入った状態を示す概略図であり、図12(a)が斜視図であり、図12(b)が左側面から見た図であり、図12(c)は図12(b)の線XIIC‐XIICにおいて切断した芯材の内部を示す図である。
図13図13はコイル成形体敷設方法の図11より後の工程を示す概略図である。
図14図14図11図13の間の工程を示す概略図である。
図15図15はコイル成形体敷設方法の図13より後の工程を示す概略図である。
図16図16はコイル成形体敷設方法の最終工程を示す概略図である。
図17図17はこの実施例に従ったライニング工法におけるライニング材敷設方法を示す概略図である。
図18図18はこの発明の他の実施例に従った芯材を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1を参照して、この発明の一実施例に用いられるコイル成形体10は、コイル用線材12を螺旋状に巻いたものであり、コイル成形体10の外径D1は、更生すべき老朽化した既設管100(図1では図示せず。(図8))の内径と同じか、それよりやや大きく設定される。
【0056】
なお、この発明のライニング工法を利用して更生すべき既設管としては種々のものが考えられるが、たとえば、上下水道、ガス、通信ケーブル保護または電力ケーブル保護等の用途の既設管路であってよいし、また、鉄筋コンクリート管(ヒューム管)、陶管、鋳鉄管、鋼管ならびに塩ビ管のような合成樹脂管等の材料でから構成されるものであってよい。
【0057】
図1に示すコイル成形体10は、十分な剛性や弾性を有する材料、たとえばアルミニウム合金、鋼またはステンレス鋼などの金属、合成樹脂、ならびにGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックを素材として形成され、この実施例では、コイル成形体10の素材としてGFRPが使用される。
【0058】
コイル成形体10は、長さ方向に直交する断面が横長の長方形状の線材12を巻芯(図示せず)などに螺旋状に巻回することによって円筒状に形成される。ただし、コイル成形体10の成形方法は特に限定されず、繊維強化プラスチック管に螺旋状に切り込みを入れることによってコイル成形体10を形成するようにしてもよいし、専用の金型に樹脂等を流し込んで成形するようにしてもよい。コイル成形体10の呼び径D1は、上述のように既設管の内径に対応するサイズに設定されるが、一例として、300‐700mmであり、その軸方向の長さL1は、300‐700mmである。
【0059】
図1に示すコイル成形体10の線材12の一方端に雌ねじ14aが形成されている。図1では一方端だけが描かれているので図示はしていないが、他方端にも雌ねじが形成されている。後の説明で必要になるので、ここではその他方端の雌ねじを便宜上「14b」と呼ぶ。この雌ねじ14a(および14b)は、コイル成形体10を後述の芯材(図3図4)上で保持するために利用される。上述のように、コイル成形体10の線材12は、たとえばGFRPであり、そのままタッピングしても雌ねじは形成されにくい。そこで、発明者等は、雌ねじを形成した金属製のチップを準備し、それを線材12の該当位置に形成した穴の中に埋め込んで接着するという方法で、コイル成形体10の線材12の両端に雌ねじ14a(および14b)を形成した。ただし、雌ねじ14a(および14b)の形成方法はこのような方法に限られるものではない。
【0060】
コイル成形体10は、その特性(剛性、弾性など)により、巻回(されている)方向へ回転させたり、伸長方向に引っ張ったりすると、その回転力や引張力に応じて縮径できる。このような特性を利用して、この発明に従った実施例のコイル成形体敷設装置を用いるライニング工法では、図1(a)に示す外径D1、長さL1を有するコイル成形体10を、図1(b)に示すように、外径D2(D1>D2)、長さL2(L1<L2)を有するコイル成形体10として縮径して、既設管内に導入するようにしている。
【0061】
既設管を更生するためには、さらに、既設管内に後述のようにして敷設されたコイル成形体10の内面にライニング材をライニングしなければならない。一例として、図2に示すライニング材18は、縮径加工により周方向の一部が押し込まれた断面略ハート形状を有する縮径管である。ライニング材18は、たとえば合成樹脂(ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ナイロン、塩化ビニル等)や繊維強化プラスチックなどで形成することができるが、実施例では、ポリエチレンのライニング材18を用いる。
【0062】
ライニング材18は、所定の温度に加熱しかつ加圧されることにより円筒形に復元され、コイル成形体10の内面に密着して更生管路(ライニング管)を形成する。ライニング材18は、復元したときの外径がコイル成形体10の内径と等しいか略等しくなるように設定されている。
【0063】
このライニング材18は、公知の種々の方法によって製造することができるので、その製造方法の詳細な説明は省略するが、簡単に言えば、所定の径で押出成形された直管に対して、軟化点以上融点以下の範囲における所定の温度(この実施例では、たとえば約100℃程度)に加熱して、押し板やローラ等を用いて略U字状の押し込み部分を形成することによって製造される。したがって、ライニング材18を再び軟化点以上融点以下の温度に加熱し内部から加圧することにより、押し込み部分が外面側へ戻されて、ライニング材18は既設管内で所定形状(円筒形等)に復元する。
【0064】
図1に示すコイル成形体10を縮径して既設管内に導入するために、この実施例では、図3および図4に示す芯材20を用いる。芯材20は、中空の円筒形状に形成される。ただし、必ずしも円筒である必要はなく、図1(b)のように縮径したコイル成形体10を保持できれば、4角形や6角形などの多角形の中空筒状であってよい。
【0065】
図3および図4に示す円筒形の芯材20はたとえば鉄のような金属からなる円筒を用いて作るが、中空部に種々の構成部品を設ける必要上、必要な強度を確保しながら、円筒の適宜箇所を切除している。芯材20の外径は、縮径時のコイル成形体10の内径よりも小さく設定され、たとえば200‐600mmであり、その軸方向の長さは、コイル成形体10の縮径時の長さより長く設定され、たとえば400‐800mmである。
【0066】
この実施例では、芯材20は、軸方向に間隔を隔てた3つのリング状部22a、22bおよび22cとそれらを連結する任意数(実施例では5つ)の連結部24を含む。なお、実施例では、後端のリング状部22bの幅は他の2つのリング状部22aおよび22cの幅より大きく設定されている。
【0067】
芯材20の中空部内には、前端のリング状部22aから後端のリング状部22bまで芯材20の軸方向全長に延び、たとえばボルトなどによって各リング状部22a、22bおよび22cに固着された、2本のレール26および28が設けられる。各レール26および28の前端および後端はそれぞれ先端に向うにつれて外方に拡げられた易進入部30として形成されていて、それによって後述の拡径装置60のそり66および68(図5)がレール26および28上に容易に進入できるようにされている。レール26および28は、実施例では断面U字形状とされ、それぞれ幅方向両端に側板26aおよび28aを有し、この側板26aおよび28aが、レール26および28上に載ったそり66および68の周方向への移動、脱落を防止する。
【0068】
なお、レール26および28は、実施例では、後述の拡径装置60(図5)の走行の安定性を確保するために、それぞれ鉛直方向に対して45°の角度を有して、つまり芯材20の周方向に円弧角でいえばたとえば90°離れた位置に設けられている。ただし、レール26および28間の間隔はこれに限るものではない。
【0069】
芯材20の前端リング状部22aの内面には、たとえば180°離れて対向する位置にそれぞれ連結金具32がたとえばボルトによって固着される。連結金具32はたとえば、断面L字形状に形成され、L字の一辺がリング状部22aの内面に固着され、L字の他方辺には透孔32aが形成される。
【0070】
同じように、芯材20の後端リング状部22bの内面には、たとえば180°離れた対向する位置にそれぞれ連結金具34が設けられる。連結金具34はたとえば、断面L字形状に形成され、L字の一辺がリング状部22bの内面に固着され、L字の他方辺には透孔34aが形成される。
【0071】
これら連結金具32および34は、後述のように、多数の芯材20を連結するために連結部材90(図7)と協働する。
【0072】
芯材20の上記レール26および28の中間の位置における前端リング状部22aおよび後端リング状部22bには、図1に示すコイル成形体10を、縮径した状態で芯材20上に保持するための保持手段ないし保持機構36aおよび36bが設けられる。
【0073】
保持機構36aおよび36bは、逆U字状でかつ先端がともに外方に折り曲げられたアングル38aおよび38bを有し、アングル38aおよび38bの折り曲げ
部が前端リング状部22aおよび後端リング状部22bにボルト止めされている。アングル38aおよび38bの平坦部には透孔(これは雌ねじであってよい。)が形成されていて、この透孔にボルト40aおよび40bが挿通される。
【0074】
ボルト40aおよび40bの先端はリング状部22aおよび22bの内面に設けられたナットに螺合した後に、リング状部22aおよび22bにそれぞれ形成された透孔(図示せず)を通して、リング状部22aおよび22cの外面上に突出可能である。ボルト40aおよび40bの後端にはハンドル42aおよび42bが固着されていて、ハンドル42aおよび42b回すことによって、ボルト40aおよび40bをリング状部22aおよび22bの外面に出没させることができる。
【0075】
このボルト40aおよび40bは、図1に示すコイル成形体10の線材12の両端に設けた雌ねじ14a(および14b)に螺合できる。
【0076】
ボルト40aおよび40bの先端はリング状部22aおよび22bにそれぞれ形成された透孔(図示せず)を通して、リング状部22aおよび22cの外面上に突出可能である。ボルト40aおよび40bの後端にはハンドル42aおよび42bが固着されていて、ハンドル42aおよび42b回すことによって、ボルト40aおよび40bをリング状部22aおよび22bの外面に出没させることができる。
【0077】
このボルト40aおよび40bは、図1に示すコイル成形体10の線材12の両端に設けた雌ねじ14a(および14b)に螺合できる。
【0078】
ただし、上記のアングル38aおよび38bの平坦部の透孔は雌ねじであってもよい。その場合には、ボルト40aおよび40bは、その雌ねじに螺合された後、リング状部22aおよび22bの透孔を通して外面上に出没される。
【0079】
芯材20の中間のリング状部22cには、180°離れた対向位置(実施例では)に当たり棒44が内方に延びて取り付けられる。芯材20の中空部内を図5の拡径装置60が移動するので、その移動空間を確保するため、当たり棒44の長さは芯材20の半径より短く設定される。
【0080】
上述のレール26および28と図5に示す拡径装置60のそり66および68が、協働して、芯材20と拡径装置60との周方向の相対的位置の位置決め手段として機能するのに対して、係止部材として機能する当たり棒44は、係合部材として機能する図5に示す拡径装置60の起立片74と協働して、芯材20と拡径装置60との軸方向の相対的位置の位置決め手段として機能する。このように、位置決め手段によって芯材20と拡径装置60の相対的位置の位置決めが行われるので、芯材20と拡径装置60が別体で構成されていても、拡径装置60は確実に芯材20の所要部に作用することができる。さらに、位置決め手段によって芯材20と拡径装置60の相対的周方向位置および相対的軸方向位置の位置決めが行われるので、拡径装置60を、別体で構成されている芯材20の中空部内に確実に位置決めできる。ことのき、拡径装置60を芯材20の中空部内で軸方向に移動させるための手段(実施例でいえば、レール26および28とそり66および68)が周方向の相対的位置の位置決め手段に兼用されるので、周方向位置決め手段として特別な構成を設ける必要がない。
【0081】
芯材20のリング状部22aの外面上に出没可能なガイド46a、46bおよび46cが、芯材20の周方向の適宜の位置に設けられる。一方、芯材20のリング状部22bの外面上に出没可能なガイド48aおよび46bが、ガイド46aおよび46bと対応する位置に設けられる。
【0082】
ガイド46aと48aは連結杆50aの両端に取り付けられていて、この連結杆50aは、ばね52によって定常的には芯材20の径方向内方に押された状態で、芯材20の外周内面に取り付けられている。この状態ではガイド46aと48aはリング状部22aの外面より内方に沈んだままである。そして、連結杆50aをこのばね52の弾発力に抗して芯材20の径方向外方に押すことによって、ガイド46aおよび48aがリング状部22aおよび22bの外面上に突出させられる。
【0083】
同様に、ガイド46bと48bは連結杆50bの両端に取り付けられていて、連結杆50bもばね54によって定常的には径方向内方に押されている。したがって、ガイド46bと48bはリング状部22bの外面より内方に沈んだ状態である。そして、連結杆50bをこのばね54の弾発力に抗して芯材20の径方向外方に押すことによって、ガイド46bおよび48bがリング状部22aおよび22bの外面上に突出させられる。
【0084】
ガイド46cは芯材20の前端側にのみ設けられ、ガイド46cは、連結杆50cに取り付けられる。連結杆50cは、ばね56によって定常的には芯材20の径方向内方に押された状態で、芯材20の外周内面に取り付けられている。この状態ではガイド46cはリング状部22aの外面より内方に沈んでいる。そして、連結杆50cをばね56の弾発力に抗して芯材20の径方向外方に押すことによって、ガイド46cがリング状部22aの外面上に突出させられる。
【0085】
図5に示す拡径装置60は、芯材20の外面上に縮径された状態で保持されているコイル成形体10の両端を解放することによって、コイル成形体10を拡径するためのものである。マンホールからマンホールまでの1区間の更生工事において、芯材20は複数用いられるが、拡径装置60は、1台あればよい。
【0086】
拡径装置60は金属製のベース板62を含む。このベース板62の幅は、芯材20の中空部を移動可能な大きさに設定されている。ベース板62の前端および後端には、係止具64aおよび64bが固着される。この係止具64aおよび64bをたとえばロープ(図示せず)などで引っ張ることによって、拡径装置60を前方向または後方向に移動させることができる。
【0087】
ベース板62の下方には、ベース板62の幅方向両端において所定の角度で外方に拡がるそり66および68が設けられる。走行部材として機能するそり66および68は、たとえば、ベース板62の下面に固着された1枚の取り付け板67の端部に保持される。このそり66および68が上述のように芯材20のレール26および28に載ることによって、拡径装置60が芯材20の中空部内に留まることができ、あるいは係止具64aまたは64bが引っ張られることによって、芯材20の中空部内を軸方向に走行できる。
【0088】
ベース板62上の係止具64aおよび64bより内側には、それぞれが減速機構を内蔵する2つのエアモータ70aおよび70bが設置され、エアモータ70aおよび70bの出力軸には、ベース板62の下方において、回転板71aおよび71bが固着される。なお、エアモータは、一例として、エアー供給口から供給された圧縮空気がベーンで区切られた室に入ることによって、ロータを回転させる、そのようなモータである。
【0089】
回転板71aおよび71bは、たとえば平面矩形の平板であり、その上面がエアモータ70aおよび70bの回転軸に固着される。回転板71aおよび71bの下面には、両端に、回転棒72aおよび72bの上端が固着される。したがって、エアモータ70aおよび70bが回転駆動されると、回転板71aおよび71bは水平面内で回転し、応じて下面に取り付けられている回転棒72aおよび72bが、モータ軸を中心として互いに180°の間隔を保持して、回転する。
【0090】
回転棒72aは、先に説明した芯材20の前側のハンドル42aに作用するもので、芯材20の中空部の所定位置に拡径装置60が位置決めされているとき、エアモータ70aによって回転板71aが回転されると、回転棒72aが回転し、この回転棒72aはハンドル42aの側面に当たる。その状態で回転板71aがさらに回転されると、回転棒72aによってハンドル42aが回される。
【0091】
回転棒72aが左に回転されると、ハンドル42aも左に回転され、したがって、ボルト40aの先端がコイル成形体10の雌ねじ14aから外れる。つまり、ボルト40aとコイル成形体10の雌ねじ14aとの螺合が解除され、コイル成形体10の前端側の保持が解放される。回転棒72bが左に回転されると、ハンドル42bも左に回転され、したがって、ボルト40bの先端がコイル成形体10の雌ねじ14bから外れる。つまり、ボルト40bとコイル成形体10の雌ねじ14bとの螺合が解除され、コイル成形体10の後端側の保持が解放される。
【0092】
したがって、エアモータ70a、70bやそれによって回転されてハンドル42a、42bに作用する回転棒72a、72bはコイル成形体の保持を解放する解放手段として機能する
ベース板62上には、軸方向のほぼ中央の幅方向両端に、起立片74が設けられる。起立片74は、断面がたとえば「U」字状とされ、平面部とその両端から前方側に立ち上がる側板を含み、その側板が前方の軸76に固着される。軸76はベース板62上に固着された保持具78によって回動可能に保持される。
【0093】
起立片74の後方のベース板62上には、ストッパ80が設けられる。ストッパ80はたとえば「L」字状金具であり、その一方辺がベース板62に固定されている。
【0094】
起立片74が固着された軸76には、ねじりばね82が装着されている。したがって、起立片74は、そのねじりばね82によって、ストッパ80に当たるまで、後方に付勢されている。ただし、ストッパ80側(後方)から起立片74を押すと、起立片74はねじりばね82の弾発力に抗して倒れる。
【0095】
図3および図4に示す芯材20の中空部には前述のように当たり棒44が両側から内方に延びている。起立片74は起立したときの高さが、起立片74の少なくとも上端が当たり棒44に当たる高さに設定される。したがって、拡径装置60が芯材20の中空部内を、後方から前方へ移動するとき、起立片74はねじりばね82によって起立されているので、起立片74の前面上端が当たり棒44の後ろ側に当たる。そのまま拡径装置60が前方へ移動すると、起立片74が当たり棒44の後ろ側に当たった状態なので、芯材20も拡径装置60の移動につれて移動する。
【0096】
したがって、当たり棒44と起立片74は協働して、芯材20と拡径装置60の軸方向の相対的位置を固定する、位置決め手段として機能するとともに、芯材20を移動させる移動手段としても機能する。
【0097】
ただし、拡径装置60を前方から後方に移動させるときには、起立片74の後面上端が当たり棒44に当たるが、当たり棒44の当接力がねじりばね82の弾発力を超えると、起立片74は前方に倒れる。したがって、この場合には起立片74と当たり棒44は係合しない。
【0098】
つまり、拡径装置60を移動させるべきときには起立片74が倒れるので、拡径装置60は芯材20の中空部を自由に移動できる。一方、軸方向の位置決めが必要なとき、たとえば起立片74が当たり棒44に当たったままの状態になり、必要なときには確実に位置決めが行われ得る。
【0099】
拡径装置60のベース板62上には、軸方向中央部に「X」字状に交差して斜めに配置された2つのエシリンダ84aおよび84b、ならびに軸方向前方のベース板62の幅方向中央に直立した1つのエアシリンダ84cが設けられる。これらエアシリンダ84a、84bおよび84cのピストンロッドの先端は、それぞれ、先に説明した芯材20の連結杆50a、50bおよび50cに作用するように配置される。たとえば、給気ポート(図示せず)からエアシリンダ84aのピストンの後方に空気が供給されると、ピストンロッドが前方に押し出され、それによって連結杆50aが押され、この連結杆50aに固着されているガイド46aおよび48aを押し上げる。そのため、ガイド46aおよび48aが芯材20の外面上に突出する。同様に、エアシリンダ84bおよび84cの各ピストンの後方に空気を供給すると、ピストンロッドが連結杆50bおよび50cを押すので、連結杆50bおよび50cに固着されているガイド46bおよび46cが芯材20の外面上に突出する。
【0100】
このように、拡径装置60によって芯材20のガイド46a、46b、46c、48a、48bを操作することができるので、既設管100(後述)内に芯材20を導入した後でも必要なときに確実にガイド46a‐46cおよび48a‐48bを出没させることができる。
【0101】
ガイド46a、46bおよび46cは、図6に示すように、芯材20の外面上で縮径したコイル成形体10の前端を決めるための、前端側ガイド(第1ガイド)である。ガイド48aおよび48bもコイル成形体10の後端を決めるための、後端側ガイド(第2ガイド)であるが、このガイド48aおよび48bは、コイル成形体10を拡径するときにコイル成形体10の後端が揺動する(暴れる)のを防止するためのものである。
【0102】
図1を参照して説明したように、コイル成形体10の縮径時の長さL2は、拡径時の長さL1より長い。したがって、コイル成形体10が拡径するときコイル成形体10の後端が、距離(L2−L1)だけ前方に移動する。もしガイド48aおよび48bを、ガイド46a‐46cと同じように縮径時のコイル成形体10の後端に配置しておくと、後端ガイド48aおよび48bが拡径後のコイル成形体10の後端から離れてしまうので、結果的に、ガイド48aおよび48bがコイル成形体10の拡径時の後端規制として機能しない。
【0103】
そこで、この実施例では、図6に示すように、ガイド48aおよび48bの位置を、拡径時にコイル成形体10の後端になると予測される位置に配置する。つまり、縮径時のコイル成形体10の後端より上記距離(L2−L1)だけ前方に配置するようにした。そうすると、コイル成形体10の拡径時の後端位置にガイド48aおよび48bが位置することになり、ガイド48aおよび48bがコイル成形体10の拡径時のコイル成形体の後端の揺動を規制または抑制することができる。
【0104】
図7に示すように、隣接する芯材20どうし、すなわち先行する芯材20と後続する芯材20は、一緒に既設管100(図8)内に引き込む際に、連結部材90によって連結される。
【0105】
連結部材90は、図7の実施例では、ITハンガで構成される。ITハンガすなわち連結部材90は、ねじ本体92と、ねじ本体92の先端に軸94によって回動可能に支持され、かつねじ本体92と同径の回転プレート96を含む。この実施例では、さらに、ねじ本体92と回転プレート96に跨って、金属またはプラスチックからなるカラー98が被せられ、それによって図7(a)に示す未連結の状態では、回転プレート96がねじ本体92の軸線上で一直線の状態(アルファベットの「I」字状)に保持されている。
【0106】
ねじ本体92は、先行する芯材20の中空部後端に設けられている連結金具34の透孔34a(図4)に挿通され、ねじ部分に連結金具34の両面からナットが螺合され、それによってねじ本体92は、先行する芯材20の後端の連結金具34に強固に固定される。
【0107】
先行する芯材20に後続する芯材20を連結する場合、図7(a)の状態から図7(b)に示すように、連結部材90の回転プレート96が後続する芯材20の中空部前端に設けられている連結金具32の透孔32a(図3)中を挿通するように、後続する芯材20を先行する芯材20に近づける。このとき、カラー98は連結金具32の前面に押されてねじ本体92上に移動する。
【0108】
連結部材90の回転プレート96が後続する芯材20の連結金具32の透孔32aを通過すると、回転プレート96が自重で回転し、ねじ本体92に対して直角の状態、つまり、アルファベットの「T」字の状態になる。したがって、後続する芯材20の連結金具32に連結部材90の、垂直に回転した回転プレート96が係合する。つまり、先行する芯材20と後続する芯材20が連結部材90によって連結される。
【0109】
この実施例では、芯材20の前端側の連結金具32および後端側の連結金具34がともに、前述のように周方向に間隔を隔てて(実施例では180°で対向して)2箇所ずつに設けられる。したがって、先行する芯材の2つの連結金具34と後続する芯材の2つの連結金具32をそれぞれ連結部材90で連結すると、周方向の2箇所での連結によって、先行する芯材20と後続する芯材20が、周方向に拘束されてずれることがない。したがって、先行する芯材のレール26および28と後続する芯材のレール26および28がずれることなく直線を形成し、それによって拡径装置60を安定してレール上を走行させることができる。
【0110】
先に説明したように、先行する芯材の連結金具34と連結部材90(のねじ本体92)とは強固に固定されている。したがって、先行する芯材20と連結部材90は剛性を持って連結されているといえる。他方、後続する芯材の連結金具32と連結部材90とは、ねじ本体92が連結金具32の透孔32aを緩く挿通するだけなので、連結金具32は連結部材90に対して可撓性を持って連結されているといえる。したがって、連結部材90は連結金具32の透孔32aに対してその透孔32aの径方向に変位可能であるし、連結金具32と連結部材90は軸方向において一定長さ(連結部材90の長さに依存する。)分、相対的に変位可能である。つまり、この実施例では、先行する芯材の連結金具34と連結金具90とは相対的に変位しないが、後続する芯材の連結金具32と連結部材90とは相対的に変位可能である。
【0111】
図1(a)に示すコイル成形体10を、上で説明した芯材20と拡径装置60を用いて図8に示す既設管100内に敷設する。
【0112】
図8に示すように、たとえばヒューム管のような既設管100は、第1マンホール102と第2マンホール104との間(1区間)の地中に埋設される。そして、第1マンホール102内にローラ106を一時的に設置して、このローラ106を介してロープ108を地上に設置されたウィンチ(図示せず)に結ぶ。ローラ106はたとえば、第1マンホール102の上端開口縁に引っ掛けた部材にローラ106を設けておく、という方法で第1マンホール102内に一時的に設置できる。そして、ロープ108の後端には、たとえば第2マンホール104内において、先導管110が連結され、この先導管110が既設管100内に第2マンホール104から導入される。
【0113】
先導管110の後ろに、図6で示したようにコイル成形体10を縮径した状態で外面上に保持している芯材20を連結する。そして、ウィンチ(図示せず)によってロープ108を矢印A方向(図9)すなわち第1マンホール102の方向に引っ張る。応じて、まず、先導管110とそれに連結された1つの芯材20がマンホール104から既設管100内に引き込まれる。
【0114】
最初の芯材20が既設管100内に導入される前または後で、図7を参照して説明したように、最初の芯材20の後端側の連結金具34に固着されたたとえばITハンガのような連結部材90を、後続する芯材20の前端側の連結金具32に連結することによって、たとえば第2マンホール104内において、最初の芯材20と第2番目の芯材20を連結する。
【0115】
以後同様にして、先行する芯材20が既設管100内に導入される前または後で、その芯材20の後端側の連結金具34に固着されたたとえばITハンガのような連結部材90を、後続する芯材20の前端側の連結金具32に連結することによって、たとえば第2マンホール104内において、先行する芯材20と後続する芯材20を連結する。このような連結作業を繰り返すことによって、図11および図12に示すように、ロープ108を第1マンホール102側から引っ張ることによって、複数の芯材20(コイル成形体10を保持している。)を第2マンホール104側から既設管100内に引き込む。
【0116】
このとき、先行する芯材20の後端連結金具34と連結部材90は剛性を持って接続されているが、後続する芯材20の前端連結金具32と連結部材は可撓性を持って連結されている。したがって、連結部材90で連結した芯材20、20、…をロープ108で引っ張るとき、後続する芯材の前端は先行する芯材の後端に追従し易い。そのため、たとえば先行する芯材20が存在する既設管100の部位と後続する芯材20が存在する部位との間にたとえば上り段差があったとしても、後続する芯材の前端は、先行する芯材の後端連結金具34に強固に連結されている連結部材90によって引き上げられるので、後続する芯材は容易にその上り段差を越えることができる。
【0117】
ただし、連結部材90による連結方法は、先行する芯材とは剛性を持って連結し後続する芯材とは可撓性を持って連結するという実施例の方法以外にも、連結部材は先行する芯材および後続する芯材の両方とも可撓性を持って連結する方法が採用されてもよい。
【0118】
重要なことは、連結部材34と32との間において、図7の実施例の連結部材90(ITハンガ)のように剛性の高い部材を用いることである。そうすれば、連結部材90が連結金具34および32と可撓性を持って連結したとしても、後続する芯材の前端は先行する芯材の後端に追従できるので、上述のような上り段差だけでなく、既設管100が部分的に左右に振っていても、後続する芯材は容易にその部分を越えて引き込まれ得る。
【0119】
図9に示すように新たな芯材を先行する芯材に連結してロープ108を引っ張ることによって、コイル成形体10を保持しかつ連結された多数の芯材20が連続的に既設管100内に引き込まれる。そして、図10に示すように、既設管100の全長に亘って、つまり1区間すべてに、縮径したコイル成形体10を装荷した芯材20を連結部材90で連結した状態で引き込む。
【0120】
その後、第2マンホール104内にもローラ112を一時的に設置し、それを介してロープ114の先端を、第2マンホール104から各芯材20の中空部を通して、第1マンホール102内にもたらす。そして、第1マンホール102内において、芯材とは別体の、図5に示すような拡径装置60の後端側の係止具64bにロープ114の先端を係止し、ロープ114を矢印B方向すなわち第2マンホール104の方向に引っ張って、拡径装置60を、後端側から、先頭の(第1マンホール102側に最も近い)芯材20の中空部に引き入れる。
【0121】
図12は縮径したコイル成形体10を外面上に保持している芯材20の中空部に拡径装置60が入った状態を示し、図12(a)が斜視図であり、図12(b)が左側面から見た図であり、図12(c)は図12(b)の線XIIC‐XIICにおいて切断した芯材20の内部を示す図である。
【0122】
拡径装置60が芯材20に作用してコイル成形体10を拡径するためには、前述の周方向の位置決め手段(実施例ではレール26および28とそり66および68)によって芯材20の中空部において拡径装置60が芯材20に対して適正な周方向の相対的位置に位置決めされ、かつ軸方向の位置決め手段(実施例では当たり棒44と起立片74)によって芯材20の中空部において拡径装置60が芯材20に対して適正な軸方向の相対的位置に位置決めされる必要がある。
【0123】
周方向の位置決めは、レール26および28上にそり66および68を進入させることによって達成できる。
【0124】
軸方向の位置決めは、まず、拡径装置60をロープ114で引っ張って第2マンホール104の方向に移動させて、起立片74が倒れた状態で当たり棒44を通過させ、次いで、拡径装置60上の起立片74が芯材20の当たり棒44に当たるまで、拡径装置60をロープ114で引っ張って第1マンホール102の方向に移動させることによって達成できる。
【0125】
適正な相対的位置の位置決めがなされたとき、拡径装置60のエアシリンダ72a、72bおよび72cのピストンロッドの先端が、芯材20の連結杆50a、50bおよび50cに作用できる位置に位置決めされる。したがって、エアシリンダ72aおよび72bの各給気ポートに給気すると、連結杆50aおよび50bがばね52および54の弾発力に抗して押され、連結杆50aおよび50bに固着されているガイド46a、48aおよび46b、48bが芯材20の外面上に突出する。また、アシリンダ72cの給気ポートに給気すると、連結杆50cがばね56の弾発力に抗して押され、連結杆50cに固着されているガイド46cが芯材20の外面上に突出する。
【0126】
つまり、芯材20上に保持されているコイル成形体10の前端にガイド46a、46bおよび46cが当接し、同じくコイル成形体10の後端より内側(前述の距離(L2−L1)に依存する。)において、ガイド48aおよび48bが突出する。その状態で次に、芯材20上のコイル成形体10を拡径する。
【0127】
拡径装置60が芯材20に対して適正に位置決めされたとき、図12に示すように、拡径装置60の回転棒70aおよび70bが芯材20のハンドル42aおよび42bの位置に存在する。そして、回転棒70aおよび70bでハンドル42aおよび42bを回すことによって、コイル成形体10を芯材20から解放して拡径する。
【0128】
コイル成形体10を拡径するのは、最初に後端側の固定(保持)を解放し、次いで前端側の固定(保持)を解放するという順序で行う。
【0129】
したがって、まず、エアモータ66bを回転して回転棒70bを左に回転させると、回転棒70bがハンドル42bの側面に当たり、ハンドル42bすなわちハンドル42bが固着されているボルト40bが左回転される。そのため、ボルト40bがコイル成形体10の雌ねじ14bから脱落し、コイル成形体10の後方端における芯材20上での固定、保持が解放される。このとき、ガイド48aおよび48bによって、コイル成形体10の後端の「暴れ」を抑制することができる。
【0130】
ついで、エアモータ66aを回転して回転棒70aを左に回転させると、回転棒70aがハンドル42aの側面に当たり、ハンドル42aすなわちハンドル42aが固着されているボルト40aが左回転される。そのため、ボルト40aがコイル成形体10の雌ねじ14aから脱落し、コイル成形体10の前方端における芯材20上での固定、保持が解放される。
【0131】
このようにして、コイル成形体の両端での固定(保持)を解放することによって、コイル成形体10は自身の弾性によって、図1(b)の縮径状態から図1(a)の状態に拡径される。先に述べたように、拡径時のコイル成形体10の外径は既設管の内径よりやや大きくしているので、拡径されたコイル成形体10は、それを保持していた芯材20があった場所において、既設管100の内面にコイル成形体10の外周が密接するように敷設される。つまり、拡径装置60によってコイル成形体10を容易に拡径して敷設することができる。
【0132】
なお、最初にコイル成形体10の後端側を解放し、その後、前端側を解放するように時間差を設けることによって、先に解放されるコイル成形体の後端側が、未解放のために未だ固定されている前端側に引き寄せられる。したがって、コイル成形体の前端側の位置決めを確実に行えば、コイル成形体を隙間なく、既設管内に敷設することができる。
【0133】
このようにして、1区間全長に亘って連続的に引き込まれた芯材20のうち先頭の芯材20からコイル成形体10が解放され、コイル成形体10が図13に示すように、その位置にとどまる。
【0134】
図13に示すように、先行する芯材20からコイル成形体10を解放して拡径した状態が、図14(a)に示される。図14(a)では、先行する芯材から解放されて拡径したコイル成形体10の外面が既設管100の内面に密接して敷設されていることがわかる。そのとき、コイル成形体10の後端は、後端側のガイド48b(および48a)に規制されて、それより前にある。拡径されたコイル成形体を保持していた芯材20は元の位置にとどまっている。その先行する芯材20には連結部材90によって、後続する芯材20が連結されていて、後続する芯材20上にコイル成形体10が縮径されて保持されている。
【0135】
次に、後続する芯材20からコイル成形体10を解放して拡径する訳であるが、図14(a)の状態のまま後続する芯材20上のコイル成形体10を拡径すると、未拡径のコイル成形体10の前端と拡径済みのコイル成形体の後端との間が開いてしまう。コイル成形体を拡径するとき、後端をまず解放するので、前端側のガイド46b、46c(および46a)で位置を規制されている前端側は動かないからである。
【0136】
そこで、この実施例では、先行する芯材20からコイル成形体を解放して拡径した後、図14(b)に示すように、拡径済みのコイル成形体の後端と、後続する芯材20上の縮径した状態のコイル成形体10の前端との隙間を詰めるようにしている。
【0137】
具体的には、図14(a)の状態から、ロープ108を第1マンホール102側から引くことによって、後続する芯材20上のガイド46、46c(46aも)が拡径済みのコイル成形体10の後端に当接するまで、拡径済みのコイル成形体を保持していた先行する芯材を、それに連結されている後続する芯材とともに、第1マンホール102の方へ引き寄せる。つまり、先行する芯材からコイル成形体を解放して拡径した後、拡径していないコイル成形体を保持している後続する芯材を軸方向に位置合わせする。
【0138】
上述したように、連結部材(ITハンガ)90と連結金具32とは軸方向において相対的に変位可能に連結されているので、後続する芯材を第1マンホール102の方に引き寄せるとき、まず、後続する芯材だけが移動して先行する芯材に接近して当たり、ついで先行する芯材と後続する芯材が一緒に第1マンホール102の方に引き寄せられる。
【0139】
このような後続する芯材20の位置合わせを行うと、既にコイル成形体10を解放拡径した先行する芯材20は、たとえば図15に示すように後続する芯材20に押されて、その先頭部分が第1マンホール102内に入る。
【0140】
ただし、図14(b)の位置合わせをする前に、図15のように、拡径装置60をロープ114によって第2マンホール104側から引っ張って、拡径装置60を後続する芯材つまり次に拡径するコイル成形体を保持している芯材の中空部内に移動させておく。このとき、拡径装置60は、そり66および68によってレール26および28上を移動する。
【0141】
その後、図15の状態で、先に図12を参照して説明したような方法で、先行する(先頭の)芯材に後続する(2番目の)芯材20上からコイル成形体10を解放して拡径する。
【0142】
そして、図14を参照して説明した、後続する芯材の位置合わせを行う工程と、その後続する芯材上のコイル成形体を拡径する工程を繰り返し実行して、最終的に、第1マンホール102から第2マンホール104までの1区間内のすべてのコイル成形体を拡径する。その状態が図16に示される。
【0143】
先頭から2番目の芯材上のコイル成形体を拡径し、つぎに3番目の芯材上のコイル成形体を拡径するために、3番目の芯材を、2番目の芯材上で既に拡径したコイル成形体の後端に位置合わせするとき、先頭の芯材は2番目の芯材に押されて第1マンホール102内に出てくる。そこで、連結部材90による先頭の芯材と2番目の芯材との連結を解除すれば、先頭の芯材を位置マンホール102の上部開口から地上に回収することができる。
【0144】
以後、同様に、空になった芯材を順次第1マンホール102から取り出せばよい。
【0145】
図16では、第1マンホール102から最後の芯材20が引き上げられ、第2マンホール104から拡径装置60が引き上げられて、コイル成形体敷設工程が終了する。
【0146】
上述の実施例によれば、拡径装置60を芯材20とは別体で構成しているので、それぞれにコイル成形体10を縮径して保持する複数の芯材20を既設管100内に連続して引き込んだ後、同じ拡径装置60を用いて各芯材20上のコイル成形体10を拡径することができる。したがって、拡径装置は1台でよく、経済的である。しかも、それぞれが縮径したコイル成形体10を保持する複数の芯材20を予め準備できるので、コイル成形体敷設工程が効率的に行える。
【0147】
その後、図17に示すように、既設管100内に敷設したコイル成形体の内面に、図2示すライニング材18をライニングする。具体的には、図2(b)のようにたとえばハート形に折り畳んだライニング材18をコイル成形体の内部に導入し、そのライニング材18内に高温高圧の蒸気を圧送することによって、ライニング材18の形状記憶特性を利用して、管状に復元したライニング材18をコイル成形体10の内面に敷設する。
【0148】
つまり、既設管100の更生は、図8図16のコイル成形体敷設工程と、それに続く図17に示すライニング工程を実施することによって行われる。図17が既設管内にコイル成形体を敷設し、さらにライニング材をライニングした更生管路を示す。
【0149】
先に説明したように、既設管内には種々の段差が存在するので、図18に示す他の実施例の芯材20Aでは、芯材20の前端からさらに前方に延びかつ前方に延びるに従って内方に傾斜した、任意数の(図18の実施例では8個の)そり21を、周方向に適宜の間隔を隔てて、たとえば溶接によって取り付ける。これらのそり21は全体として先細り形状であるので、仮に既設管の内面に段差があっても、そり21でその段差を容易に乗り越えられる。
【0150】
なお、図14(b)に示すように、先行する芯材の後端に後続する芯材の前端を当てて位置合わせする必要があるので、そり21を設けた芯材20Aの後端には、先行する芯材の後端に後続する芯材の前端を接近させたとき、そり21を受け入れる受容部としてのスリット23を、そり21の位置に対応する位置に形成しておく。そうすれば、先行する芯材の後端に後続する芯材の前端を接近させたとき、図18(b)に示すようにスリット23がそり21を受け入れるので、後続する芯材の前端を隙間なく先行する芯材の後端に当接して位置合わせすることができる。
【0151】
なお、上述の実施例では、縮径したコイル成形体10を芯材20上に、解放可能に保持する保持手段として、コイル成形体10の両端に形成した雌ねじ14aおよび14bと、それらに螺合するボルト40aおよび40bを用いた。この雌ねじ14aおよび14bとボルト40aおよび40bとの組み合わせは、コイル成形体10の厚みの中だけで固定(保持)できるので、つまり、コイル成形体10の外面上突出するものは何もないので、縮径したコイル成形体10を保持した芯材20を既設管100内に引き込むとき、コイル成形体10の外面上の何かが既設管100の内面に引っ掛かることがなく、スムーズに芯材を引き込むことができる。つまり、コイル成形体を保持した芯材を既設管内に引き込む際の抵抗を可及的小さくできる。
【0152】
しかしながら、保持手段は実施例のものに限られるものではなく、任意の構成のものを採用することができる。
【0153】
たとえば、「ワインキャップ」または「ワインストッパー」のように、ハンドルを倒したとき径方向に膨らみ、ハンドルを戻したときその膨らみが解除できるゲル状物を用いることも考えられる。コイル成形体の端部に孔を形成しておき、そのゲル状物を孔に挿入してハンドルを倒すことによって、ゲル状物を径方向に膨らませて保持し、解放するときはハンドルを戻してゲル状物の膨らみを解除するようにすればよい。
【0154】
さらに、芯材の外面との間でコイル成形体の端部を挟み込むような保持手段を用いてもよい。
【0155】
また、上述の実施例では説明しなかったが、縮径したコイル成形体を装荷した芯材を連続的に既設管100内に引き込むときに、既設管100の内面にたとえば樹脂シートを予め設けておき、コイル成形体と既設管の内面との間の摩擦を軽減するようにしてもよい。
【0156】
また、上述の実施例では、ガイド46a、46bおよび46cならびにガイド48aおよび48bをいずれも芯材20に設けて拡径装置60側でそれを操作するようにした。しかしながら、これらガイドは拡径装置60に設け、芯材20上のコイル成形体10の前端や後端を規制するようにしてもよい。
【0157】
さらに、連結部材90として、実施例ではITハンガを用いたが、これに限るものではなく、他の任意の形状、構造の連結部材が利用可能である。
【0158】
上述の実施例ではまた、エアモータ70aおよび70bやエアシリンダ84a、84b、84cのように、エア駆動のものを用いた。しかしながら、これらは電気駆動のものでも、油圧駆動のものでもよい。
【0159】
また、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0160】
10 …コイル成形体
12 …線材
14a、14b …雌ねじ
18 …ライニング材
20、20A …芯材
26、28 …レール
26a、26b、28a、28b …側板
32 …(前端側)連結金具
34 …(後端側)連結金具
32a、34a …透孔
36a、36b …保持手段(保持機構)
40a、40b …ボルト
42a、42b …ハンドル
44 …当たり棒
46a、46b、46c …(前端側)ガイド
48a、48b …(後端側)ガイド
50a、50b、50c …連結杆
52、54、56 …ばね
60 …拡径装置
64a、64b …係止具
66、68 …そり
70a、70b …エアモータ
72a、72b …回転棒
74 …起立片
80 …ストッパ
82 …ねじりばね
84a、84b、84c …エアシリンダ
90 …連結部材(ITハンガ)
92 …ねじ本体
96 …回転プレート
98 …カラー
100 …既設管
102 …第1マンホール
104 …第2マンホール
108、114 …ロープ
110 …先導管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18