(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-183917(P2015-183917A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】フレキシブルダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20150925BHJP
F16L 58/18 20060101ALI20150925BHJP
F16L 41/08 20060101ALI20150925BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F13/02 B
F24F13/02 H
F16L58/18
F16L41/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-59959(P2014-59959)
(22)【出願日】2014年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】中澤 元宏
(72)【発明者】
【氏名】尾形 真幸
【テーマコード(参考)】
3H019
3H024
3L080
【Fターム(参考)】
3H019DA04
3H019DA19
3H024EA04
3H024EC06
3H024ED01
3H024ED08
3L080AB04
3L080AD01
3L080AD02
3L080AD03
(57)【要約】
【課題】フレキシブルダクトにおける断熱層を構成するグラスウール等の小片が連通穴を経て飛散するのを防止するとともに、主ダクトと分岐ダクトとの接続部の美観を確保する。
【解決手段】フレキシブルダクト1の主ダクト10における分岐ダクト20との連通穴18に環状の被覆膜体30を設ける。この被覆膜体30によって、主ダクト10の内膜体12と断熱層13と外膜体14とのうち少なくとも断熱層13における連通穴18の内面13cを覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状に保形された内膜体の外周が断熱層にて囲まれ、前記断熱層の外周が外膜体にて囲まれた主ダクトと、前記主ダクトから分岐された分岐ダクトとを備え、前記主ダクトにおける前記分岐ダクトが分岐する箇所には、前記内膜体と前記断熱層と前記外膜体を厚さ方向に貫通して前記分岐ダクトの内部に連なる連通穴が形成されたフレキシブルダクトにおいて、
前記連通穴には該連通穴の周方向に沿う環状の被覆膜体が設けられ、前記被覆膜体が、前記内膜体と前記断熱層と前記外膜体とのうち少なくとも前記断熱層における前記連通穴を構成する穴部分の内面を覆っていることを特徴とするフレキシブルダクト。
【請求項2】
前記被覆膜体が、前記連通穴の内面全体を覆う環状の被覆主部と、前記被覆主部における前記分岐ダクト側の端部から径方向外側へ折り曲げられた環状の外周側被覆部と、前記被覆主部における前記主ダクト内部側の端部から径方向外側へ折り曲げられた環状の内周側被覆部とを一体に含み、
前記外周側被覆部が、前記外膜体の外周面における前記連通穴の周辺部に被さり、
前記内周側被覆部が、前記内膜体の内周面における前記連通穴の周辺部に被さることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルダクト。
【請求項3】
前記被覆膜体が、前記外膜体と同一材質の膜体にて構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の空調設備におけるフレキシブルダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィスビル等の建物には冷暖房や換気等を行なう空調設備が設けられている。空調設備は、空気を通すダクトを備えている。通常、ダクトは、冷暖房機等の空調機から延びる主ダクトと、この主ダクトから分岐する分岐ダクトとを有している。分岐ダクトが、各空調エリアへ延びている。近年、この種のダクトとして、軽量で伸縮性を備えたフレキシブルダクト(特許文献1等参照)の需要が高まっている。フレキシブルダクトの主ダクト及び分岐ダクトは、それぞれ芯材によって管状に保形された内膜体の外周をグラスウール等の断熱層にて囲み、更にその外周を外膜体にて囲むことによって構成されている。
【0003】
特許文献1のフレキシブルダクトにおいては、主ダクトの周側部における分岐ダクトが分岐する箇所に連通穴が形成されている。連通穴は、主ダクトの内膜体と断熱層と外膜体とを厚さ方向に貫通している。この連通穴を介して主ダクト内の気体流路と分岐ダクト内の気体流路とが連通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4791428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲特許文献1では、主ダクトの断熱層が連通穴に露出している。このため、断熱層を構成するグラスウールの小片が連通穴を経て主ダクトや分岐ダクトの気体流路内に飛散したり、フレキシブルダクトの外部に飛散したりするおそれがある。また、前記グラスウールが連通穴の周縁部から外部に露出して見映えが損なわれるおそれがある。そこで、連通穴の内面にコーキング剤を塗布することが考えられるが、塗布を万遍なく行なうのは容易でなく、塗布ムラがあるとそこからグラスウールの小片が飛散したり見映えが悪くなったりする。
本発明は、前記事情に鑑み、簡易な手段によってフレキシブルダクトにおける断熱層を構成するグラスウール等の小片が連通穴を経て飛散するのを防止するとともに、主ダクトと分岐ダクトとの接続部の美観を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明は、管状に保形された内膜体の外周が断熱層にて囲まれ、前記断熱層の外周が外膜体にて囲まれた主ダクトと、前記主ダクトから分岐された分岐ダクトとを備え、前記主ダクトにおける前記分岐ダクトが分岐する箇所には、前記内膜体と前記断熱層と前記外膜体を厚さ方向に貫通して前記分岐ダクトの内部に連なる連通穴が形成されたフレキシブルダクトにおいて、前記連通穴には前記連通穴の周方向に沿う環状の被覆膜体が設けられ、前記被覆膜体が、前記内膜体と前記断熱層と前記外膜体とのうち少なくとも前記断熱層における前記連通穴を構成する穴部分の内面を覆っていることを特徴とする。これによって、前記断熱層を構成するグラスウール等の小片が連通穴を経て主ダクト内や分岐ダクト内に飛散したり、フレキシブルダクトの外部に飛散したりするのを防止できる。また、前記断熱層がフレキシブルダクトの外部に露出するのを防止でき、フレキシブルダクトの見映えが損なわれるのを回避できる。
【0007】
前記被覆膜体が、前記連通穴の内面全体を覆う環状の被覆主部と、前記被覆主部における前記分岐ダクト側の端部から径方向外側へ折り曲げられた環状の外周側被覆部と、前記被覆主部における前記主ダクト内部側の端部から径方向外側へ折り曲げられた環状の内周側被覆部とを一体に含み、前記外周側被覆部が、前記外膜体の外周面における前記連通穴の周辺部に被さり、前記内周側被覆部が、前記内膜体の内周面における前記連通穴の周辺部に被さることが好ましい。これによって、前記断熱層を構成するグラスウール等の小片がフレキシブルダクトの内外に飛散するのを一層確実に防止できる。また、前記断熱層がフレキシブルダクトの外部に露出するのを確実に防止でき、フレキシブルダクトの見映えが損なわれるのを確実に回避できる。
【0008】
前記被覆膜体が、前記外膜体と同一材質の膜体にて構成されていることが好ましい。これによって、フレキシブルダクトの美観を一層向上できる。また、材料コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フレキシブルダクトの主ダクトの少なくとも断熱層における連通穴の内面を被覆膜体にて覆うことによって、前記断熱層を構成するグラスウール等の小片が連通穴を経てフレキシブルダクトの内外に飛散するのを防止できる。また、主ダクトと分岐ダクトとの接続部の美観を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を示し、フレキシブルダクトの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記フレキシブルダクトの主ダクトと分岐ダクトとの分岐部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び
図2は、例えばオフィスビル等の建物の空調設備の配管として用いられるフレキシブルダクト1を示したものである。フレキシブルダクト1は、アルミダクトより軽量で、柔軟かつ伸縮可能な空調用配管であり、主ダクト10と、分岐ダクト20とを備えている。図示しない冷暖房機や換気装置から主ダクト10が延びている。この主ダクト10から分岐ダクト20が分岐している。この分岐ダクト20が各空調エリア(図示せず)へ延びている。
【0012】
主ダクト10は、芯材11と、内膜体12と、断熱層13と、外膜体14とを備えている。芯材11は、鋼、鉄等の金属にて構成され、螺旋状になっている。内膜体12は、不織布や樹脂シートにて構成されている。この内膜体12の外周に芯材11が止着されることによって、内膜体12が管状に保形されている。内膜体12の内部に気体流路19が画成されている。気体流路19内を、温調(冷暖房)された空気や換気対象の空気等の気体が通される。
【0013】
断熱層13は、柔軟なグラスウールにて構成され、管状になっている。この断熱層13が、内膜体12及び芯材11の外周を囲んでいる。
【0014】
外膜体14は、例えばポリエチレン等の樹脂単層又はポリエチレンテレフタレート等の樹脂層とアルミニウム等の金属層とを積層することによって構成され、管状になっている。この外膜体14が、断熱層13の外周を囲んでいる。
なお、
図2において、内膜体12及び外膜体14の厚さは、断熱層13の厚さに対して誇張されている。
【0015】
図1及び
図2に示すように、主ダクト10の周側部から分岐ダクト20が分岐されている。主ダクト10の周側部における分岐ダクト20が分岐する箇所には、概略円形の連通穴18が形成されている。
図2に示すように、連通穴18は、内膜体12、断熱層13、及び外膜体14を厚さ方向(
図2において上下方向)に貫通している。したがって、内膜体12には穴部分12bが形成され、断熱層13には穴部分13bが形成され、外膜体14には穴部分14bが形成されている。これら穴部分12b,13b,14bが、主ダクト10の厚さ方向に連なることによって、連通穴18が構成されている。穴部分12bの内面12cと、穴部分13bの内面13cと、穴部分14bの内面14cとによって、連通穴18の内面18cが構成されている。
【0016】
詳細な図示は省略するが、分岐ダクト20は、主ダクト10と同様に、内膜体と、芯材と、断熱層と、外膜体とを有している。この分岐ダクト20の基端部(
図1及び
図2において下端)が、直接又はダクト接続部材(図示省略)を介して主ダクト10における連通穴18の周辺部に接続されている。主ダクト10の気体流路19が、連通穴18の内部を介して分岐ダクト20の内部の気体流路29に連なっている。気体流路19の気体が、連通穴18の内部を経て、気体流路29へ分流される。
【0017】
図2に示すように、連通穴18に被覆膜体30が設けられている。被覆膜体30の概略形状は、連通穴18の周方向に沿う環状になっている。被覆膜体30の材質は、外膜体14と同一材質の膜体にて構成されている。すなわち、被覆膜体30は、ポリエチレン等の樹脂単層又はポリエチレンテレフタレート等の樹脂層とアルミニウム等の金属層との積層構造になっている。また、被覆膜体30の外表面の色や質感等も外膜体14と同じになっている。
なお、外膜体14及び被覆膜体30の材質は、前記に限られず、不織布、樹脂シートなどの膜体であってもよく、テープ、パッキンのようなシール材であってもよく、アルミ、亜鉛めっき、ステンレスのような金属類等であってもよい。
図2において、被覆膜体30の厚さは、断熱層13の厚さに対して誇張されている。
【0018】
被覆膜体30は、被覆主部31と、内周側被覆部32と、外周側被覆部34とを一体に含む。被覆膜体30の軸方向(
図2において上下方向)の中間部が被覆主部31を構成している。被覆主部31は、連通穴18の周方向に沿う筒環状になっている。この被覆主部31が、連通穴18の内面18c全体すなわち穴部分12b,13b,14bの内面12c,13c,14cを覆っている。
【0019】
被覆膜体30における主ダクト10内部側(気体流路19側、
図2において下側)の端部は、全周にわたって被覆主部31から径方向外側へ折り曲げられ、内周側被覆部32を構成している。内周側被覆部32は、平環状になっている。この内周側被覆部32が、内膜体12の内周面における連通穴18の周辺部に被さっている。内周側被覆部32と内膜体12とは、接着剤やステープル等の接合手段によって接合されている。
内周側被覆部32の幅W
32は、好ましくはW
32=5mm〜100mm程度である。
【0020】
被覆膜体30における分岐ダクト20側(
図2において上側)の端部は、全周にわたって被覆主部31から径方向外側へ折り曲げられ、外周側被覆部34を構成している。外周側被覆部34は、平環状になっている。この外周側被覆部34が、外膜体14の外周面における連通穴18の周辺部に被さっている。外周側被覆部34と外膜体14とは、接着剤やステープル等の接合手段によって接合されている。
外周側被覆部34の幅W
34は、好ましくはW
34=5mm〜100mm程度である。
【0021】
前記フレキシブルダクト1によれば、被覆膜体30を連通穴18に差し入れ、この被覆膜体30の外周側被覆部34となる部分を径方向外側へ折り曲げて主ダクト10の外周面に接合するとともに、被覆膜体30の内周側被覆部32となる部分を径方向外側へ折り曲げて主ダクト10の内周面に接合することによって、被覆膜体30を主ダクト10に簡単に設置することができる。この被覆膜体30によって連通穴18の内面18c全体を覆うことができ、ひいては、断熱層13の穴部分13bの内面13c全体を確実に覆うことができる。よって、断熱層13における前記内面13cを構成するグラスウールが連通穴18に露出しないようにできる。これによって、前記グラスウールの小片が、連通穴18を経て主ダクト10の気体流路19や分岐ダクト20の気体流路29内に飛散したり、フレキシブルダクト1の外部に飛散したりするのを防止できる。更には、内周側被覆部32が内膜体12の外周面に被さるとともに、外周側被覆部34が外膜体14の外周面に被さることによって、前記グラスウールの小片がフレキシブルダクト1の内外に飛散するのを一層確実に防止できる。
【0022】
また、被覆主部31が連通穴18の内面18cを覆うことによって、外部からは断熱層13が見えないようにすることができる。さらに、外周側被覆部34が外膜体14の外周面に被さることによって、外部から断熱層13が見えるのを一層確実に防止できる。これによって、フレキシブルダクト1の見映えが損なわれるのを回避できる。
加えて、被覆膜体30を外膜体14と同一材質の膜体にて構成することによって、フレキシブルダクト1の美観を一層向上できる。また、材料コストを抑えることができる。
【0023】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、被覆膜体30は、内膜体12と断熱層13と外膜体14とのうち少なくとも断熱層13における穴部分13bの内面13cを覆っていればよく、内膜体12や外膜体14の穴部分12b,14bの内面12c,14cについては、必ずしも被覆膜体30にて覆われている必要はない。内周側被覆部32が、断熱層13と芯材11及び内膜体12との間に挟まれていてもよい。外周側被覆部34が、断熱層13と外膜体14との間に挟まれていてもよい。
本発明の主ダクト及び分岐ダクトは相対的であり、分岐ダクト20から更に第2の分岐ダクトが分岐されている場合は、分岐ダクト20が、第2の分岐ダクトに対して「主ダクト」となり得、第2の分岐ダクトが「分岐ダクト」となり得る。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、例えばオフィスビルの空調配管として利用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 フレキシブルダクト
10 主ダクト
12 内膜体
13 断熱層
13c 内面
14 外膜体
18 連通穴
18c 内面
20 分岐ダクト
30 被覆膜体
31 被覆主部
32 内周側被覆部
34 外周側被覆部