【解決手段】レーザレーダ装置1では、導光型レンズ12内に入り込んだレーザ光のうち、内面反射部87に入り込まない光が出射面82から第1レーザ光L1として照射され、内面反射部87で内面反射した光が、第1レーザ光L1とは異なる投光経路の第2レーザ光L2として出射面82から照射される。誘導部は、フォトダイオード60で受光可能となる視野範囲ARが第1レーザ光L1の投光経路及び第2レーザ光L2の投光経路のいずれとも重なるように、且つ第1レーザ光L1の投光経路と視野範囲ARとが重なる領域よりもケース3に近い位置で第2レーザ光L2の投光経路と視野範囲ARとが重なるように第1反射部21と第2反射部41とを同期させつつ回転させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のレーザレーダ装置では、偏向部から外部空間に照射されるレーザ光の照射経路上に防塵、防滴などを目的としたカバーが設けられたものが多く、一般的には、外部空間に向けて照射される投光レーザが透過し得るように、投光レーザの照射経路上に光透過性のカバー(透過板)を配置している。しかしながら、このように投光レーザの照射経路上にカバーが設けられると、偏向部からカバーを透過しようとする投光レーザの一部がカバーの内面で反射してしまい、その反射光(即ち、本来的には検出されるべきでないノイズ光)が受光センサによって検出されてしまう虞がある。特に、カバー内面で生じる上記反射光は、レーザ光源で発生した投光レーザがあまり減衰せずに近距離で反射した光であるため、非常に大きな光量のノイズ光となりやすく、このようなノイズ光が受光センサで受光されてしまうと、受光センサが飽和状態(即ち、最大の受光信号を発生させる受光量を超えた受光状態)に達しやすくなる。
【0005】
特に、レーザレーダ装置では、外部空間に存在する物体に投光レーザが照射されたときの拡散反射光を検出し得るように受光センサでの受光感度をある程度高く設定する必要があるため、このような拡散反射光と比較して光量が格段に大きいノイズ光が受光されたときには、受光センサが飽和状態となる可能性がより高くなる。そして、このように受光センサで飽和状態が生じてしまうと、その飽和の原因となったノイズ光が受光センサに入光しなくなってからも、ある程度の時間が経過するまでは受光センサから大きな受光信号が出力され続け、飽和状態が継続してしまうことになる。つまり、エネルギーの強いノイズ光によって飽和状態が生じると、ノイズ光が入光しなくなってからも、このような飽和状態が解除されるまでに時間がかかり、その間は受光センサが正常に機能しなくなるため、ノイズ光の後に到来する正規の検出光(外部空間に存在する物体からの正規の反射光)を正確に検出できなくなる虞がある。
【0006】
このような理由により、レーザレーダ装置では、仮に投光レーザの一部がカバー(光透過性カバー)で反射したとしても、その反射で生じる内部反射光(ノイズ光)が受光センサに受光されにくい構成が望まれる。
【0007】
一方、カバー内面で生じる内部反射光(ノイズ光)が受光センサに受光されにくい構成として、特許文献2の
図5のような技術が存在する。この技術では、投光用の第一ミラー44と、受光用の第二ミラー45とを上下に離して配置し、投光側の光学系と受光側の光学系とを上下に分断した構成となっている。このように構成すれば、投光用の第一ミラー44から照射された投光レーザの一部が走査経路上に位置する透光窓53の内面で反射したとしても、その内部反射光(ノイズ光)が第二ミラー45側の受光経路に入り込みにくくなり、ノイズ光に起因する上述の問題が発生しにくくなる。但し、このように、投光用の回転ミラー(第一ミラー44)と受光用の回転ミラー(第二ミラー45)とを別々に設け、上下に離して配置した構成では、装置に近い近距離範囲に死角が発生するという別の問題がある。
【0008】
例えば、
図7は、投光用の回転ミラー121と受光用の回転ミラー141とが軸C1を中心として同期して回転する同様の構成を例示しており、回転ミラー141に入り込む光が受光センサ160で受光可能となる視野範囲Lbの境界を二点鎖線Lba,Lbbで示している。なお、この例では軸C1の方向が上下方向であり、投光軸La1を中心として角度θaの範囲で広がるように投光レーザLaが照射され、受光軸Lb1を中心として角度θbの範囲で広がるように視野範囲Lbが定められている。この例のように、投光用の回転ミラー121と受光用の回転ミラー141とを別々に設けた構成では、投光側の回転ミラー121の投光面(反射面)と、受光側の回転ミラー141の受光領域(反射領域)とが上下にずれるため、必然的に、装置に近い近距離範囲(
図7では、範囲cとして図示)では投光レーザLaの投光経路が視野範囲Lbと重ならなくなる。つまり、回転ミラー121から照射される投光レーザLaの投光経路と、受光センサ160で受光可能となる視野範囲Lbとが重なる位置までの近距離範囲が死角となってしまい、この近距離範囲では、投光レーザLaが物体に照射されても、その反射光が受光センサに受光されなくなってしまうのである。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、レーザ光の投光経路上に光透過性のカバー(透過板)を配置してなるレーザレーダ装置において、カバーの内面で内部反射光(ノイズ光)が生じても、その光が受光部に入り込むことを確実に抑えることができ、且つ装置付近の近距離範囲に生じる不検出領域をより低減しやすい構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザ光を発生させるレーザ光発生部と、
前記レーザ光発生部にて発生したレーザ光を自身の所定方向一端側の入射面から入り込ませ、その入り込んだレーザ光を、自身の所定方向他端側の出射面から出射させる導光型レンズと、
前記導光型レンズで導かれたレーザ光を反射する第1反射部と、所定の上下方向の中心軸を中心として前記第1反射部を回転させる駆動部と、を備え、前記駆動部により前記第1反射部を回転させることで前記第1反射部から照射されるレーザ光の向きを変化させる走査部と、
少なくとも前記第1反射部を収容する構成をなし、前記第1反射部の周囲の少なくとも周方向一部分において前記第1反射部からのレーザ光の走査経路上を、当該レーザ光が透過可能な透過板によって閉塞してなるケースと、
光を受光する受光部と、
前記第1反射部の位置から上下方向にずれて配置されると共に前記第1反射部からのレーザ光が前記ケース外の物体で反射して生じる反射光を検出光として受ける反射面を備え、前記反射面が前記上下方向に対して傾斜し且つ前記上下方向の回転軸を中心として回転可能とされた第2反射部を備え、前記第2反射部の前記反射面が前記第1反射部からのレーザ光の照射側に面するように前記第1反射部と前記第2反射部とを同期させつつ回転させ、前記第2反射部に入り込む前記検出光を前記反射面で反射させて前記受光部に導く構成とされた誘導部と、
を備え、
前記導光型レンズは、前記入射面から入り込んで前記導光型レンズ内を通過するレーザ光の一部を内面反射させる内面反射部を備え、
前記入射面から前記導光型レンズの内部に入り込んだレーザ光のうち、前記内面反射部に入り込まない光が前記出射面から第1レーザ光として照射され、
前記入射面から前記導光型レンズの内部に入り込んだレーザ光のうち、前記内面反射部で内面反射した光が、前記第1レーザ光とは異なる投光経路の第2レーザ光として前記出射面から照射され、
前記走査部により、前記第1レーザ光が、前記上下方向と直交する水平方向に対して所定の角度で照射されつつ走査され、前記第2レーザ光が、前記水平方向に対して、前記第1レーザ光よりも前記第2反射部側に近づく角度で照射されつつ走査され、
前記誘導部は、前記受光部で受光可能となる視野範囲が前記ケースの外部において前記第1レーザ光の投光経路及び前記第2レーザ光の投光経路のいずれとも重なるように、且つ前記第1レーザ光の投光経路と前記視野範囲とが重なる領域よりも前記ケースに近い位置で前記第2レーザ光の投光経路と前記視野範囲とが重なるように前記第1反射部と前記第2反射部とを同期させつつ回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、投光用の反射部(第1反射部)と受光用の反射部(第2反射部)とを別位置にそれぞれ設け、投光用の反射部(第1反射部)からの投光経路に対して上下にずらして受光用の反射部(第2反射部)を配置している。このため、投光用の反射部(第1反射部)から放たれたレーザ光が透過板を透過する際にその一部が透過板内面で反射したとしても、その内部反射光(ノイズ光)は受光用の反射部(第2反射部)や受光部に入り込みにくくなる。よって、透過板で生じる内部反射光(ノイズ光)が受光センサに入り込むことを抑制し、このようなノイズ光が受光部で検出されることに起因する不具合(例えば、飽和状態の発生に起因する上述の問題)を効果的に抑えることができる。
但し、この構成では、受光用の反射部(第2反射部)から上下にずれた位置に投光用の反射部(第1反射部)が配置されるため、投光用の反射部(第1反射部)から外部に照射されるレーザ光の投光経路のうち、投光用の反射部(第1反射部)に近い近距離範囲が視野範囲から外れてしまい、この近距離範囲が物体を検出できない死角となってしまう。
そこで、本構成では、導光型レンズを設けると共にこの導光型レンズ内でレーザ光を投光経路の異なる第1レーザ光と第2レーザ光とに分岐させている。そして、第1レーザ光及び第2レーザ光を走査部によって走査する際に、受光部で受光可能となる視野範囲が第1レーザ光の投光経路及び第2レーザ光の投光経路のいずれとも重なるように、且つ第1レーザ光の投光経路と視野範囲とが重なる領域よりもケースに近い位置で第2レーザ光の投光経路と視野範囲とが重なるように第1反射部と第2反射部とを同期させつつ回転させている。このように構成されているため、水平方向に対し所望の角度で第1レーザ光を照射するようにレーザ走査を行いつつ、その第1レーザ光では検出できない近距離範囲において、第2レーザ光による物体検出が可能となる。
即ち、第1レーザ光の投光経路と視野範囲とが重なる領域から外れた近距離範囲は、基本的に、第1レーザ光によって検出できない不検出範囲となってしまうが、本構成では、この近距離範囲(不検出範囲)の一部で、第2レーザ光の投光経路と視野範囲とが重なるようにしているため、第1レーザ光によって検出できない近距離範囲(即ち、第1レーザ光の投光経路と視野範囲とが重なる領域よりもケースに近い位置)であっても、第2レーザ光の投光経路と視野範囲とが重なる距離範囲であれば、物体の検出が可能となる。ゆえに、装置付近の近距離範囲に生じる不検出領域をより低減しやすくなる。また、レーザ光発生部で発生したレーザ光を導光型レンズによって分岐させているため、部品点数を抑えた形でレーザ光の分岐が可能となる。しかも、第1反射部に達するまでの投光経路に配置されるレンズ部品で分岐させており、これらの間に部品公差や組立公差を生じさせる多数の部品が介在しないことになるため、レーザ光発生部と分岐部分(導光型レンズ)との位置関係や、入射するレーザ光と導光型レンズとの位置関係を高精度に調整できることになる。このため、分岐後の各レーザ光の向きや分光割合をより高精度に調整できることになる。特に、遠方側に照射するレーザ光に関しては、遠方側の狙うべき位置に所望のレベルでより正確に照射するためには、より正確な割合で分光し、より正確な向きに照射する必要があり、部品公差や組立公差の積み重ね等によって分光割合や分光後の各レーザ光の向きがばらついてしまうと、このような要求を満たすことが非常に難しくなる。これに対し、本発明では、レーザ光発生部により近い位置において、組立公差を抑えやすく、高精度な位置調整を行い易い形で分岐部品となる導光型レンズを配置しているため、より高精度な調整が可能となり、分光割合や分光後の各レーザ光の向きのばらつきを生じさせにくくすることができる。
【0012】
請求項2の発明では、水平方向に対して所定の角度で照射される第1レーザ光を相対的に光量の大きい主レーザ光とし、近距離範囲を走査する第2レーザ光を相対的に光量の小さい補助的なレーザ光とするようにレーザ光を分岐させている。第1レーザ光は、より遠いエリアの物体を検出することが求められるため、この第1レーザ光の光量を相対的に大きくすることで、より遠くまで物体検出に必要な光量が維持されやすくなる。一方、第2レーザ光は、より近いエリアの物体を検出することが求められるため、この第2レーザ光の光量を相対的に小さくすることで、第2レーザ光が近距離物体で反射したときに過剰な反射光が生じることを抑えることができ、大きすぎる反射光に起因する受光部での飽和を抑制しやすくなる。
但し、このような基本思想があったとしても、使用環境や設計上の公差などによって第1レーザ光と第2レーザ光の光量の割合が大きくばらつくような光分岐構造では、第1レーザ光の光量が想定よりも小さくなってしまったり、第2レーザ光の光量が想定よりも大きくなってしまったりするため、上述した思想が十分に実現できなくなってしまう。
そこで、本構成では、投光経路に介在する部品のうち、レーザ光の発生起点(レーザ光発光部)に最も近い位置に配置される部品(導光型レンズ)内にレーザ光を分岐させる部分を設けている。このため、レーザ光が発生してからこのレーザ光を分岐させるまでの間に多数の部品が介在しなくて済み、レーザ光発生部から分岐部までに存在する誤差要因を極力減らすことができる、よって、レーザ光発光部で発生したレーザ光をより正確な割合で第1レーザ光と第2レーザ光とに分岐することができ、上述の基本思想を十分に実現しやすくなる
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明のレーザ測定装置を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(レーザレーダ装置の基本構成)
まず、
図1等を参照してレーザレーダ装置1の概要について説明する。
図1は、第1実施形態に係るレーザレーダ装置1の全体構成を概略的に例示する断面図である。なお、
図1では、レーザレーダ装置1を所定切断面(中心軸Cを通り、上下方向及び前後方向と平行な切断面)で切断した構成を概略的に示している。
【0015】
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光を受光するフォトダイオード60とを備え、装置外の走査エリアに存在する検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0016】
レーザダイオード10は、レーザ光を発生させる「レーザ光発生部」の一例に相当するものであり、例えば、赤外レーザダイオードなどによって構成され、制御回路70の制御によって駆動される駆動回路(図示略)からのパルス電流を受け、このパルス電流に応じたパルスレーザ光を所定の短時間毎に間欠的に出射している。なお、
図1等では、レーザダイオード10から照射されたレーザ光が装置外の物体(図示略)に至るまでのレーザ光の経路を符号L1にて概念的に示している。
【0017】
フォトダイオード60は、例えばアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)などによって構成されている。このフォトダイオード60は、例えば、上方側に面するように光を受光する受光領域が構成され、当該受光領域に入射する光を検出する構成となっている。このフォトダイオード60は、レーザダイオード10にてレーザ光が発生し、このレーザ光がケース3の外部に照射されて装置外に存在する検出物体(図示略)にて反射したとき、その反射光(具体的には、その反射光のうちの視野範囲ARに入り込んで上記受光領域に導かれる光)を受光して電気信号に変換するように機能している。
【0018】
本実施形態では、フォトダイオード60が光を受光する「受光部」の一例に相当し、後述する走査部によって照射されるレーザ光L1が外部空間に存在する物体で反射したときに当該物体からの反射光を検出するように機能する。
【0019】
レーザダイオード10から出射されるレーザ光の経路上には導光型レンズ12が設けられている。この導光型レンズ12は、レーザダイオード10の照射面10aから照射されたレーザ光を自身の所定方向一端側に構成された入射面81から入り込ませ、その入り込んだレーザ光を、自身の所定方向他端側の出射面82から出射させるように機能している。導光型レンズ12は、後述する中心軸Cの軸線上に配置され、入射面81から入射した光を集光するレンズとして機能し、レーザダイオード10で発生して拡散しようとするレーザ光を集光したレーザ光L1a(第1レーザ光)を、出射面82から所定角度θ1で広がる光として出射させている。また、一部のレーザ光を第1レーザ光L1aとは異なる経路に分岐させ、第2レーザ光L1bとして出射面82から出射させている。なお、導光型レンズ12から照射される第1レーザ光L1a及び第2レーザ光L1bは、投光レーザL1とも称する。
【0020】
導光型レンズ12からの投光レーザL1の経路上には、走査装置20が設けられている。走査装置20は、「走査部」の一例に相当し、レーザダイオード10で発生して導光型レンズ12で導かれた投光レーザL1を反射する第1反射部21と、所定の上下方向の中心軸Cを中心として第1反射部21を回転させるモータ30とを備えている。そして、この走査装置20は、モータ30により第1反射部21を回転させることで、第1反射部21から照射される投光レーザL1の向きを、中心軸Cと直交する平面方向(水平方向)に変化させている。
【0021】
走査装置20のうち、回転体は、回転可能に構成された第1反射部21と、この第1反射部21に連結された軸部23とによって構成され、この軸部23を回転可能に支持する軸受(ケース3の内部の所定位置に固定保持される軸受であり、
図1では図示略)が設けられることで、回転機構が構成されている。そして、第1反射部21により、レーザダイオード10からのレーザ光(具体的には導光型レンズ12で導かれた投光レーザL1)をケース3の外側の空間に向けて反射させるように機能している。
【0022】
第1反射部21は、導光型レンズ12から出射された投光レーザL1の経路上に配置される平坦な反射面21aを備えており、上下方向に延びる中心軸Cを中心として回転可能に配設されている。第1反射部21の回転中心となる中心軸Cの軸線方向は、導光型レンズ12から第1反射部21に入射する第1レーザ光L1aの光軸の方向と略一致しており、この第1レーザ光L1aが第1反射部21に入射する入射位置(より具体的には、第1レーザ光L1aの光軸と反射面21aとが重なる位置)が、反射面21aにおける中心軸Cの軸線上の位置P1とされている。
【0023】
また、本構成では、第1反射部21の反射面21aにおいて位置P1及びこの周辺の部分が、上下方向に対して例えば45°の角度で傾斜した平坦面となっている。なお、本明細書では、中心軸Cの軸線と平行な方向を上下方向とし、この上下方向と直交する平面方向を水平方向としている。従って、第1反射部21の反射面21aに入射する前の第1レーザ光L1aの光軸方向は上下方向であり、反射面21aで反射した後の第1レーザ光L1aの光軸L1a’(
図2)の方向は、水平方向となる。そして、
図2のように、反射面21aで反射した後の第1レーザ光L1aは、水平方向の光軸L1a’を中心として所定角度θ1で広がるように照射されるようになっている。
【0024】
なお、本明細書では、上下方向を縦方向又は垂直方向とも称することとし、
図1では上下方向をY軸方向として示している。また、上下方向(Y軸方向)と直交する所定方向を前後方向とし、
図1、
図3では、この前後方向をX軸方向として示している。また、上下方向及び前後方向と直交する方向を左右方向とし、
図3では、この左右方向をZ軸方向として示している。
【0025】
本構成では、第1反射部21は、当該第1反射部21に入射しようとする第1レーザ光L1aの光軸の方向と一致した方向の中心軸Cを中心として回転するため、第1反射部21の回転位置(回転角度)に関係なく、反射面21aへの第1レーザ光L1aの入射角度が常に45°で維持され、反射面21a上の位置P1から照射されるレーザ光L1aの光軸L1a’(
図2)の向きが絶えず水平方向(中心軸Cと直交する方向)に維持されるように動作する。
【0026】
第1反射部21を回転させるモータ30は、「駆動部」の一例に相当し、軸部23を回転させることで、軸部23と連結された第1反射部21を回転駆動している。なお、モータ30の具体的構成としては、例えば直流モータ、交流モータ、ステップモータなど公知の様々なモータを使用できる。
【0027】
次に、同期部40について説明する。
本構成では、軸部23と、この軸部23を回転可能に支持する軸受(図示略)と、軸部23を回転駆動するモータ30と、第2反射部41とによって同期部40が構成されている。同期部40は、「誘導部」の一例に相当し、第2反射部41の反射面が第1反射部21からのレーザ光L1の照射側に面するように第1反射部21と第2反射部41とを同期させつつ回転させ、第2反射部41に入り込む検出光(投光レーザL1が外部物体で反射して生じる光)を反射面41aで反射させてフォトダイオード60(受光部)に導く構成となっている。
【0028】
第2反射部41は、上述した第1反射部21の位置から上下方向にずれて配置されると共に第1反射部21から照射された投光レーザL1がケース外の物体で反射して生じる反射光を検出光として受ける反射面41aを備えている。そして、反射面41aが上下方向に対して傾斜し且つ上下方向の回転軸(中心軸C)を中心として回転可能とされている。また、
図1等に示す第2反射部41は、反射面41aが例えば放物面として構成された凹面鏡として機能しており、所定方向(受光光軸AR1を中心とした視野範囲ARの方向)且つ所定領域(視野範囲ARの境界ARaと境界ARbの間の領域)の反射光を中心軸Cの軸線方向一方側(下方)に向けて反射させつつ集光し、集光される反射光の焦点位置が例えば中心軸Cの軸線上且つフォトダイオード60の受光面上になるように形状が調整されている。
【0029】
本構成では、モータ30の駆動軸となる軸部23は、上下方向に延びており、モータ30の下方側にまで延びている。そして、この軸部23の下端部には、第2反射部41が固定されており、第1反射部21、軸部23、第2反射部41が、図示しない軸受によって回転可能に支持されつつ一体的に回転するようになっている。このような構成により、第2反射部41の反射面41aが第1反射部21からの投光レーザL1の照射側に面するように(即ち、反射面41aから各投光レーザL1の投光光軸が向かう側に反射面41aからの受光光軸AR1が向かうように)、第1反射部21と第2反射部41とが同期しつつ回転することになる。より具体的には、軸部23がどのような回転位置(回転角度)であっても、位置P1から装置外に向かうおうとする第1レーザ光L1aの光軸L1a’と中心軸Cとを通る仮想平面(投光方向平面)上に、第2反射部41によって定められる視野範囲ARの受光光軸AR1が位置するように第1反射部21と第2反射部41とを同期させつつ回転させている。
【0030】
また、本構成では、
図1に示すように、モータ30によって駆動される軸部23の回転角度位置(即ち、第1反射部21及び第2反射部41の回転角度位置)を検出する回転角度センサ32が設けられている。回転角度センサ32は、ロータリエンコーダなど、軸部23の回転角度位置を検出しうるものであれば公知の様々なセンサを使用できる。この回転角度センサ32は、例えば、軸部23が所定の基準角度(第1レーザ光L1aの光軸L1a’が所定基準方向に向かうときの軸部23の回転角度)からどの程度回転したかを検出する構成となっており、水平方向における上記投光方向平面の向き(即ち、水平方向における第1レーザ光L1aの光軸L1a’の向き)を特定するように機能する。
【0031】
また、本構成のレーザレーダ装置1では、
図1、
図3に示すように、レーザダイオード10、導光型レンズ12、走査装置20、フォトダイオード60、第2反射部41等がケース3の内部に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。なお、
図3は、
図1のA−A位置の断面構造を概念的に示すものであり、モータ30を保持するフレームや軸部23を保持する軸受などは省略して概略的に示している。
【0032】
図1、
図3のように、ケース3は、主ケース部4と透過板5とを備えており、全体として箱状に構成されている。主ケース部4は、上壁部4a及び下壁部4bが上下に対向して配置され、周壁部4cが外周壁として構成されている。周壁部4cは、上壁部4aと下壁部4bとの間に配置される各種部品を、中心軸Cを中心とした周方向に取り囲むように配置されており、このように構成される周壁部4cの一部が窓部4eとして導光可能に開放している。窓部4eは、主ケース部4において光の出入りを可能とするように開放した部分であり、第1反射部21及び第2反射部41の周囲において周方向所定領域(
図3に示す方向Faから方向Fbまでの間の周方向領域)に亘って形成され、この周方向所定領域全体を通して上下方向所定領域(一定の高さ範囲)を開放する構成で設けられている。そして、この開放形態の窓部4eを閉塞するように透明の樹脂板、ガラス板などからなる透過板5が配置されている。このように、第1反射部21及び第2反射部41の周囲の周方向一部分において、第1反射部21からの投光レーザL1の走査経路上を、投光レーザL1が透過可能な透過板によって閉塞した構成となっている。なお、
図1、
図3では、投光レーザL1のうち、第1レーザ光L1aの光軸L1a’が正面方向(X軸正方向)を向くときの状態を概念的に示しており、この回転角度では、第1反射部21から照射された第1レーザ光L1aが位置P2にて透過板5に入り込み、透過板5を通過して外部に照射されるようになっている。また、第2レーザ光L2は、位置P2よりも下位置P3で透過板P5に入り込み、透過板5を通過して外部に照射されるようになっている。
【0033】
(導光型レンズの詳細構造)
次に、導光型レンズ12について詳述する。
上述したように、レーザダイオード10から出射されるレーザ光の経路上には導光型レンズ12が設けられている。この導光型レンズ12は、中心軸Cの軸線方向に延びる長手状に構成され、例えば
図4、
図5のように、略四角錐状に構成されており、導光型レンズ12における長手方向(Y軸方向)と直交する断面は、下方側となるにつれて大きくなるように徐々に広がる構成となっている。この導光型レンズ12における長手方向一端部の端面(上端面)は、長手方向(Y軸方向)と直交する平坦面として構成されており、この上端面が入射面81として機能している。そして、この入射面81が、レーザダイオード10の発光側の外面10aと対向して配置されている。また、長手方向他端部の端面(下端面)は、
図4〜
図6のようにやや下方側に膨張した曲面として構成されており、この下端面が出射面82として機能している。また、入射面81と、出射面82の間には、前後方向両側に配置される壁部83,84と、左右方向両側に配置される壁部85、86とが設けられている。
【0034】
本構成では、導光型レンズ12の入射面81を、レーザダイオード10の発光側の外面10aに押し当てた状態で互いに支持し合っている。例えば、図示しない保持部材(フレームなど)により、
図4のように、外面10aと入射面81とが互いに接触し合うようにレーザダイオード10を保持する基板(図示略)と導光型レンズ12とが一体的に保持されており、入射面81と外面10aとが互いに接触した状態で位置決めされている。具体的には、例えば、レーザダイオード10の発光側の外面10aの全体が導光型レンズ12の入射面81に当接しており、レーザダイオード10から照射される光がほぼ全て入射面81から導光型レンズ12の内部に入射するようになっている。
【0035】
本構成では、導光型レンズ12の周壁部を構成する壁部83,84,85,86のうち、前後両側に配置される壁部83,84の壁面が、X軸方向及びY軸方向と平行な仮想平面と直交する外面となっており、これら壁部83,84の壁面と上下方向(Y軸方向)とのなす角度は、同程度の所定角度となっている。そして、壁部83,84の間隔は、下方側となるにつれて徐々に広がるようになっている。また、
図5、
図6(B)のように、左右両側に配置される壁部85,86の壁面は、Y軸方向及びZ軸方向と平行な仮想平面と直交する外面となっており、これら壁部85,86の壁面と上下方向(Y軸方向)とのなす角度は、同程度の所定角度となっている。そして、壁部85,86の間隔は、下方側となるにつれて徐々に広がるようになっている。また、
図4〜
図6等に示すように、導光型レンズ12の後壁部において、出射面82に隣接する位置(壁部83の下方側の位置)には、入射面81から入り込んで導光型レンズ12内を通過するレーザ光の一部を内面反射させる内面反射部87が形成されている。この内面反射部87の外面は、X軸方向及びY軸方向と平行な仮想平面と直交する外面となっており、これら内面反射部87の壁面と上下方向(Y軸方向)とのなす角度α2は、壁部83と上下方向とのなす角度α1よりも小さい角度となっている。
【0036】
このように構成される導光型レンズ12では、レンズ内部において透過しようとするレーザ光による内部での反射が繰り返され、
図6のように、出射面82からは所定の形に整形された状態で主となる第1レーザ光L1aが出射されるようになっている。具体的には、入射面81から導光型レンズ12の内部に入り込んだレーザ光のうち、
図6(A)の光D1のように、内面反射部87に入り込まないで出射面82に達した光が出射面82から第1レーザ光L1aとして照射される。そして、この第1レーザ光L1aが、
図6(A)(B)のように、前後方向及び上下方向と平行な平面方向において所定の角度θ11で広がるように出射面82から照射され、左右方向及び上下方向と平行な平面方向において所定の角度θ12で広がるように出射面82から照射されることになる。具体的には、
図6(A)のように、中心軸Cの軸線上のXY平面において、第1レーザ光L1aの外縁の角度が所定角度θ11となり、
図6(B)のように、中心軸Cの軸線上のYZ平面において、第1レーザ光L1aの角度が所定角度θ12となり、断面(第1レーザ光L1aの光軸と直交する断面)の外形が略矩形状(例えば、正方形状、長方形状)となるような形で、出射面82から第1レーザ光L1aが照射される。なお、
図6(A)は、中心軸Cを通るXY平面を切断面とした導光型レンズ12の断面と、出射される第1レーザ光L1aの当該XY平面での外縁等を概念的に示す図であり、
図6(B)は、中心軸Cを通るYZ平面を切断面とした導光型レンズ12の断面と、出射される第1レーザ光L1aの当該YZ平面での外縁等を概念的に示す図である。また、
図6(A)における第1レーザ光L1aの外縁の角度θ11は0°であってもよく、予め定められた角度の鋭角であってもよい。また、
図6(B)における第1レーザ光L1aの外縁の角度θ12は、0°であってもよく、予め定められた角度の鋭角であってもよい。なお、角度θ11は、
図2に示す角度θ1と同程度である。このようにして、主レーザ光となる第1レーザ光L1aが成形されつつ照射される。
【0037】
一方、
図6(A)の光D2のように、入射面81から導光型レンズ12の内部に入り込んだレーザ光のうちの内面反射部87で内面反射した光は、第1レーザ光L1aとは異なる投光経路の第2レーザ光L1bとして出射面82から照射されるようになっている。具体的には、出射面82において第2レーザ光L1bの光量よりも第1レーザ光L1aの光量のほうが大きくなるように、所定の光量の割合で、入射面81から入り込んだレーザ光を第1レーザ光L1aと第2レーザ光L1bとに分岐させている。
図6の例では、出射面82からの出射直後において、第1レーザ光L1aの光軸が上下方向と平行であるのに対し、第2レーザ光L1bは、光軸が上下方向に対して所定角度(所定の鋭角)で傾くように照射されるようになっている。本構成では、出射面82からXY平面に沿って前方且つ下方に向けて第2レーザ光L1bが照射されるようになっているため、少なくとも第1レーザ光L1aの照射方向がX軸正側となる範囲(
図3に示す方向Fcから方向Fdまでの回転範囲)において、第1反射部21から斜め下方側に第2レーザ光L1bが照射されることになる。具体的には、
図2のように、第1レーザ光L1aの光軸L1a’が前方(正面方向)を向いたときに、第1レーザ光L1aの光軸L1a’と第2レーザ光L1bの光軸b’とが所定角度となるように、出射面82から第2レーザ光L1bが照射されるようになっている。
【0038】
本構成では、
図4のように、レーザダイオード10から照射されるレーザ光のXY平面方向における広がり角度βが、前後方向の両壁部83,84のなす角度γよりも小さい構成(即ち、β<γ)、若しくは広がり角度βが角度γと同程度(即ちβ=γ)となっている。より具体的には、レーザダイオード10から照射されるレーザ光のXY平面方向における半値全角が角度γ以下(望ましくは、角度γ未満)となっている。これにより、導光型レンズ12の内部界面での反射を極力抑えることができ、希望しない方向に出射される光を極力低減することができる。なお、レーザダイオード10の前後方向(X軸方向)中心位置は、入射面81における前後方向中心位置とほぼ一致している。
【0039】
また、レーザ光を内面反射部87で内面反射させ、その内面反射光を直接出射面82に入射させてレンズ外に出射する場合、スネルの法則に従い、レーザダイオード10から照射されたレーザ光の一部を内面反射部87の面に臨界角以上の入射角で入射させて内面反射部87で全反射させ、その全反射した光が出射面82から外部に放出されるようにすればよい。この場合、内面反射部87で反射した光が出射面82に入り込むときの入射角が臨界角未満であれば出射面82で全反射せずに外部に放出されることになる。つまり、このような条件を満たす範囲で、内面反射部87や出射面82の角度を調整することができる。
【0040】
(検出処理)
このように構成されるレーザレーダ装置1では、走査装置20(走査部)により、第1レーザ光L1aが、上下方向と直交する水平方向に対して所定の角度(
図1、
図2等の例では、0°の角度)で照射されつつ走査され、上述の所定回転角度範囲(第1レーザ光L1aの光軸La1’の向きがX軸正側となる回転角度)では、第2レーザ光L1bが、水平方向に対して、第1レーザ光L1aよりも下側(第2反射部41側)に近づく角度で照射されつつ走査されることになる。また、同期部40(誘導部)の動作により、少なくとも上記所定回転角度範囲では、
図2のように、フォトダイオード60(受光部)で受光可能となる視野範囲ARがケース3の外部において第1レーザ光L1aの投光経路及び第2レーザ光L1bの投光経路のいずれとも重なるように、且つ第1レーザ光L1aの投光経路と視野範囲ARとが重なる領域よりもケース3に近い位置で第2レーザ光L1bの投光経路と視野範囲ARとが重なるように第1反射部21と第2反射部41とが同期しつつ回転することになる。
【0041】
レーザレーダ装置1において物体検出動作を行う場合、第1反射部21及び第2反射部41の回転角度θ(所定の基準回転位置(例えば、ロータリエンコーダが原点を示す位置)からの各回転角度)が定まれば装置からの第1レーザL1a及び第2レーザ光L1bの照射方向が特定される。そして、レーザレーダ装置1が所望の傾斜状態(例えば、第1レーザ光L1aの走査方向が常に鉛直方向と直交する方向となるような状態等)で設置されていれば、フォトダイオード60が物体からの反射光を受光したときの第1反射部21及び第2反射部41の回転角度を回転角度センサ32によって検出することで、物体の方位を正確に検出できる。なお、フォトダイオード60が物体からの反射光を受光したか否かは、例えばフォトダイオード60での受光量(即ち、フォトダイオード60からの出力)が閾値を超えたか否かによって判断することができ、「フォトダイオード60にて閾値を超える反射光が受光されたとき」が「物体からの反射光を受光したとき」となる。
【0042】
また、レーザダイオード10にてレーザ光(パルスレーザ光)が発生してからフォトダイオード60によって当該レーザ光に対応する反射光(投光レーザL1が物体に当たって生じる反射光)が検出されるまでの時間Tを検出すれば、この時間Tと光速cとに基づいて、例えば、La=T×cの式によりレーザ光の発生から反射光受光までの光経路の長さLaを算出することができ、レーザレーダ装置1の所定基準位置(例えば位置P1)から検出物体までの距離Lも正確に求めることができる。つまり、レーザレーダ装置1から検出物体までの距離及び方位をいずれも正確に検出することができる。なお、本構成では、レーザダイオード10にてレーザ光が発生した後、第1レーザ光L1aが物体に照射されたときの反射光と第2レーザ光L1bが物体に照射されたときの反射光とがほぼ同時期に受光される場合があり、この場合、フォトダイオード60での受光波形は1つの山となる。この場合、レーザダイオード10にてレーザ光(パルスレーザ光)が発生してからフォトダイオード60によって反射光が検出されるまでの時間Tを検出すれば、両レーザ光が照射された物体までの距離L1を求めることができる。一方、第1レーザ光L1aが物体に照射されたときの反射光と第2レーザ光L1bが物体に照射されたときの反射光とが別々のタイミングで受光される場合もあり、この場合、フォトダイオード60での受光波形は2つの山となる。この場合、レーザダイオード10にてレーザ光(パルスレーザ光)が発生してからフォトダイオード60によって第1レーザ光L1aの反射光が検出されるまでの時間T1を検出すれば、第1レーザ光L1aが照射された物体までの距離L11を求めることができる。また、レーザダイオード10にてレーザ光(パルスレーザ光)が発生してからフォトダイオード60によって第2レーザ光L1bの反射光が検出されるまでの時間T2を検出すれば、第2レーザ光L1bが照射された物体までの距離L12を求めることができる。
【0043】
(本構成の主な効果)
本構成では、投光用の反射部(第1反射部21)と受光用の反射部(第2反射部41)とを別位置にそれぞれ設け、投光用の反射部(第1反射部21)からの投光経路に対して上下にずらして受光用の反射部(第2反射部41)を配置している。このため、投光用の反射部(第1反射部21)から放たれたレーザ光が透過板5を透過する際にその一部が透過板5の内面で反射したとしても、その内部反射光(ノイズ光)は受光用の反射部(第2反射部41)や受光部(フォトダイオード60)に入り込みにくくなる。よって、透過板で生じる内部反射光(ノイズ光)が受光センサに入り込むことを抑制し、このようなノイズ光が受光部で検出されることに起因する不具合(例えば、飽和状態の発生に起因する上述の問題)を効果的に抑えることができる。特に、上下方向の所定位置(例えば、
図1に示す二点鎖線Wの位置等)に、投光光学系(第1反射部21等)を収容する空間と、受光光学系(第2反射部41やフォトダイオード60等)を収容する空間とを仕切る遮光性の壁部を配置すれば、ノイズ光の抑制効果が一層高くなる。
【0044】
但し、この構成では、受光用の反射部(第2反射部41)から上下にずれた位置に投光用の反射部(第1反射部21)が配置されるため、何ら措置を講じなければ、投光用の反射部(第1反射部21)から外部に照射されるレーザ光の投光経路のうち、投光用の反射部(第1反射部21)に近い近距離範囲が視野範囲から外れてしまい、この近距離範囲が物体を検出できない死角となってしまう。そこで、本構成では、導光型レンズ12を設けると共にこの導光型レンズ12の内部でレーザ光を投光経路の異なる第1レーザ光L1aと第2レーザ光L1bとに分岐させている。そして、第1レーザ光L1a及び第2レーザ光L1bを走査装置20(走査部)によって走査する際に、フォトダイオード60(受光部)で受光可能となる視野範囲ARが第1レーザ光L1aの投光経路及び第2レーザ光L1bの投光経路のいずれとも重なるように、且つ第1レーザ光L1aの投光経路と視野範囲ARとが重なる領域よりもケース3に近い位置で第2レーザ光L1bの投光経路と視野範囲ARとが重なるように第1反射部21と第2反射部41とを同期させつつ回転させている。このように構成されているため、水平方向に対し所望の角度で第1レーザ光L1aを照射するようにレーザ走査を行いつつ、その第1レーザ光L1aでは検出できない近距離範囲において、第2レーザ光L1bによる物体検出が可能となる。
【0045】
即ち、第1レーザ光L1aの投光経路と視野範囲ARとが重なる領域から外れた近距離範囲は、基本的に、第1レーザ光L1aによって検出できない不検出範囲となってしまうが、本構成では、この近距離範囲(不検出範囲)の一部で、第2レーザ光L1bの投光経路と視野範囲ARとが重なるようにしているため、第1レーザ光L1aによって検出できない近距離範囲(即ち、第1レーザ光L1aの投光経路と視野範囲ARとが重なる領域よりもケースに近い位置)であっても、第2レーザ光L1bの投光経路と視野範囲ARとが重なる距離範囲であれば、物体の検出が可能となる。ゆえに、装置付近の近距離範囲に生じる不検出領域をより低減しやすくなる。
【0046】
また、本構成では、水平方向に対して所定の角度で照射される第1レーザ光L1aを相対的に光量の大きい主レーザ光とし、近距離範囲を走査する第2レーザ光L1bを相対的に光量の小さい補助的なレーザ光とするようにレーザ光を分岐させている。第1レーザ光L1aは、より遠いエリアの物体を検出することが求められるため、この第1レーザ光L1aの光量を相対的に大きくすることで、より遠くまで物体検出に必要な光量が維持されやすくなる。一方、第2レーザ光L1bは、より近いエリアの物体を検出することが求められるため、この第2レーザ光L1bの光量を相対的に小さくすることで、第2レーザ光L1bが近距離物体で反射したときに過剰な反射光が生じることを抑えることができ、大きすぎる反射光に起因する受光部での飽和を抑制しやすくなる。
【0047】
但し、このような基本思想があったとしても、使用環境や設計上の公差などによって第1レーザ光L1aと第2レーザ光L1bの光量の割合が大きくばらつくような光分岐構造では、第1レーザ光L1aの光量が想定よりも小さくなってしまったり、第2レーザ光L1bの光量が想定よりも大きくなってしまったりするため、上述した思想が十分に実現できなくなってしまう。そこで、本構成では、投光経路に介在する部品のうち、レーザ光の発生起点(レーザ光発光部)に最も近い位置に配置される部品(導光型レンズ12)内にレーザ光を分岐させる部分を設けている。このため、レーザ光が発生してからこのレーザ光を分岐させるまでの間に多数の部品が介在しなくて済み、レーザ光発生部から分岐部までに存在する誤差要因を極力減らすことができる、よって、レーザ光発光部で発生したレーザ光をより正確な割合で第1レーザ光L1aと第2レーザ光L1bとに分岐することができ、上述の基本思想を十分に実現しやすくなる
【0048】
また、本構成では、導光型レンズ12によって第1レーザ光L1aの照射範囲を整えた上で当該第1レーザ光L1aを第1反射部21で反射させて主レーザ光としてレーザ走査を行っている。このように、主レーザ光の照射範囲を複数の方向(導光型レンズ12での透過直後においてX軸方向及びZ軸方向)において精度高く調整可能な導光型レンズ12を設けているため、多数のレンズを組み合わせて複数方向の照射範囲調整を行う必要が無くなる。従って、製品出荷時やメンテナンス時などにおいて作業者に必須となっていた手間(複数のレンズの位置関係や姿勢を細かく微調整する作業負担)を大幅に削減することができる。しかも、導光型レンズ12の長手方向一端部の入射面81をレーザダイオード10の発光側の外面10aに当てる構成としており、これにより、レーザダイオード10から導光型レンズ12までの距離を調整する作業を省略可能としている。つまりこの構成では、レーザダイオード10及び導光型レンズ12を部品段階で高精度に形成できれば、これらの相対関係としては、互いに適正な位置に当接させればよく、よって、レーザダイオード10とレンズの位置関係の調整を格段に簡略化されることとなる。
【0049】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
上記実施形態では、第2反射部41として凹面鏡を例示したが、凹面鏡構造でない公知の偏向部(例えば傾斜した平面ミラーとして構成される偏向部など)を用いた公知構造を採用してもよい。
【0051】
上記実施形態では、レーザ光発生部として赤外レーザダイオードなどのレーザダイオード10を例示したが、これ以外の公知のレーザダイオードやその他の光源であってもよい。
【0052】
上記実施形態では、受光部としてアバランシェフォトダイオードなどのフォトダイオード60を例示したが、これ以外の公知の受光センサ(他種のフォトダイオードやその他の受光センサ)であってもよい。
【0053】
上記実施形態では、凹面鏡として構成される第2反射部41によって集光される光をレンズ64で集光して受光部(フォトダイオード60)で受光する例を示したが、凹面鏡として構成される第2反射部41によって集光される光を、レンズを介さずに直接受光部で受光する構成であってもよく、ミラー等の他の光学部品を介して受光する構成であってもよい。
【0054】
上記実施形態では、第1反射部21を支持する軸部と、第2反射部31を支持する軸部とが一体である例を示したが、これらが別体として構成されていてもよい。この場合、
図1のモータ30の構成に代えて、例えば、モータからの回転駆動力を、歯車やプーリなどの伝達機構によって第1反射部21を支持する軸部と、第2反射部41を支持する軸部とにそれぞれ伝達し、これら両軸部を同期させて回転させればよい。また、第1反射部21を支持する軸部と、第2反射部41を支持する軸部とをそれぞれ別々のモータによって同期させて回転させる構成であってもよい。
【0055】
上記実施形態では、導光型レンズ12の入射面81とレーザダイオード10の発光側の外面10aとが直接接触し合う例を示したが、外面10aの一部と入射面81とが接着材等の接着媒体等によって接合されていてもよい。或いは、外面10aと入射面81とが僅かに離れた近接位置で対向し合うように導光型レンズ12及びレーザダイオード10がケース内に固定されていてもよい。