【解決手段】車両で用いられ、加速度センサ12と、加速度センサ12が出力した加速度検出値を取得する検出値取得部21と、検出値取得部21が取得した加速度検出値を、実効値をもとにして正規化する加速度補正部22とを備える。加速度センサ12が出力する加速度検出値は、型式の違いによる感度差や、設置姿勢等の検出条件の違いによる感度差の影響を受けた値になっている。しかし、加速度検出値を実効値をもとにして正規化するので、型式の違いによる感度差や、設置姿勢等の検出条件による感度差の影響を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の車両用センサ信号処理装置の実施形態となるスマートフォン1は、たとえば、
図1に示す位置に設置される。
図1では、スマートフォン1は、車室内に設置されている。より詳しくは、スマートフォン1は、ダッシュボード100の上面であって、車幅方向中央に設置されている。図示していないが、スマートフォン1は、周知のスマートフォン用車載ホルダーにより、ダッシュボード100に着脱可能に設置されている。
【0017】
図2は、スマートフォン1の構成を示している。なお、スマートフォン1は、多機能携帯電話機とも呼ばれ、電話機能も備えているが、
図2には、本実施形態を説明するのに必要ない構成は省略している。
【0018】
図2に示すように、スマートフォン1は、カメラ11、加速度センサ12、位置センサ13、表示部14、入力部15、記憶部16、通信部17、制御部20を備えている。
【0019】
カメラ11は、スマートフォン1の背面に設置されており、
図1に示す状態では、このカメラ11は車両前方を撮像する。加速度センサ12は、本実施形態では、3軸の加速度センサであるとする。加速度センサ12は、これら3軸それぞれの加速度の検出値である加速度検出値Ax、Ay、Azを制御部20に出力する。なお、3軸の加速度検出値を区別する必要がないときは単に加速度検出値Aと記載する。
【0020】
位置センサ13は、本実施形態では、GNSS(Global Navigation Satellite System)が備える衛星からの電波を受信するGNSS受信装置を備えている。このGNSS受信装置が受信した信号に基づいて、現在位置を逐次検出する。
【0021】
表示部14は、たとえば液晶ディスプレイであり、スマートフォン1でドライブレコーダ機能を実行させるための操作画面が表示される。また、ドライブレコーダ機能を実行中には、カメラ11が撮像した画像などが表示される。
【0022】
入力部15は、表示部14の表示画面に積層されるタッチパネルを備える。ユーザは、ドライブレコーダ機能など、種々の機能をスマートフォン1に実行させる際、この入力部15を操作する。
【0023】
記憶部16は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な記憶部であり、ドライブレコーダプログラム16a、車両用センサ信号処理プログラム16bなど、スマートフォン1に種々の機能を実行させるためのプログラムが記憶されている。ドライブレコーダプログラム16aは、スマートフォン1をドライブレコーダとして機能させるためのプログラムである。車両用センサ信号処理プログラム16bは、上記ドライブレコーダプログラムとともに用いられ、加速度センサ12が出力した加速度検出値Aの補正を行うプログラムである。
【0024】
また、記憶部16には、動画データ16cや車両挙動データ16dも記憶される。動画データ16cは、カメラ11により撮像された車両前方の動画を示すデータである。車両挙動データ16dは、その動画データ16cを撮像中に検出あるいは演算された車両挙動を示すデータである。これら動画データ16c、車両挙動データ16dは、ドライブレコーダプログラムが実行されているときに記憶部16に記憶される。
【0025】
通信部17は、公衆電話回線網を介して、他のスマートフォンと通信を行う。また、端末間で直接通信を行う近距離無線通信機能を備えていてもよい。
【0026】
制御部20は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータであり、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMあるいは記憶部16に記憶されているプログラムを実行することで、種々の機能を実行する。
【0027】
一例としては、CPUが、記憶部16に記憶されているドライブレコーダプログラム16a、車両用センサ信号処理プログラム16bを実行することで、制御部20は、検出値取得部21、加速度補正部22、急加速判定部23、急減速判定部24、バンプ地点判定部25、急旋回判定部26、速度算出部27、履歴保存処理部28などとして機能する。加速度補正部22は請求項の検出値補正部に相当する。なお、制御部20が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0028】
図3は、制御部20のCPUが、ドライブレコーダプログラム16a、車両用センサ信号処理プログラム16bを実行するときの処理を示すフローチャートである。この
図3の処理のうち、ステップS4の処理は
図7に詳しく示しており、この
図7の処理が、車両用センサ信号処理プログラム16bを実行することで行われる処理である。
【0029】
ステップS1〜S3、S6は、検出値取得部21、速度算出部27、履歴保存処理部28が実行する処理である。ステップS4は加速度補正部22が実行する処理であり、ステップS5は、急加速判定部23、急減速判定部24、バンプ地点判定部25、急旋回判定部26が実行する処理である。
【0030】
ステップS1では、ドライブレコーダ機能の利用を開始する操作がされたか否かを判断する。たとえば表示部14に予めドライブレコーダ機能の開始アイコンが表示されており、タッチパネルにおいて、その開始アイコンに対応する位置がタッチ操作されたことにより、ステップS1の判断がYESになる。ステップS1の判断がYESになるとステップS2へ進む。ステップS1の判断がNOであればステップS1の判断を繰り返す。
【0031】
ステップS2では、ドライブレコーダ機能を開始する。具体的には、カメラ11により連続的に画像を撮影する。撮影した画像はRAMに一時的に保存する。RAMに最新の画像を保存することに合わせて、RAMに保存している画像のうち最も古い画像を消去する。これにより、RAMには、ドライブレコーダ機能を実行中は、最新の一定期間の動画データが保存される。
【0032】
また、加速度センサ12から一定周期で加速度検出値Aを取得する。加速度検出値Aの取得は検出値取得部21が行う。加速度検出値Aの取得周期は、たとえば、100msecである。速度算出部27は、位置センサ13が逐次検出した位置の時間変化から、車両の速度を逐次算出する。
【0033】
ステップS1〜S3、S6のうち、その他の処理は、履歴保存処理部28が行う。履歴保存処理部28は、加速度検出値Aも、上記一定期間分を一時的に、RAMの所定の加速度検出値保存領域に保存する。また、速度算出部27が算出した速度も、上記一定期間分をRAMに保存する。また、表示部14にドライブレコーダ機能の実行時の画面を表示する。この画面には、機能終了ボタンが表示されている。また、カメラ11が撮影した画像が表示されるようになっていてもよい。
【0034】
ステップS3では、ドライブレコーダ機能の利用を終了する操作がされたか否かを判断する。この操作は、たとえば、タッチパネルにおいて、前述した機能終了ボタンに対応する位置をタッチする操作である。ステップS3の判断がYESであれば、
図3の処理を終了する。ステップS3の判断がNOであればステップS4に進む。
【0035】
ステップS4では、加速度リアルタイム補正処理を行う。この処理は前述したように、車両用センサ信号処理プログラム16bを実行することで行われる処理である。車両用センサ信号処理プログラム16bは、たとえば、割り込み処理により、ドライブレコーダプログラム16aと並列的に実行する。
【0036】
加速度リアルタイム補正処理は、加速度センサ12が出力する加速度検出値Aを逐次補正する処理である。この加速度リアルタイム補正処理の詳細を説明する前に、加速度センサ12が出力する加速度検出値Aを補正する必要がある理由を説明する。
【0037】
図4は、スマートフォン1が内蔵している加速度センサ12のy軸が鉛直方向になるように、そのスマートフォン1が設置された場合を概念的に示している。なお、図示していないが、加速度センサ12のx軸方向は車両幅方向と平行になっている。この場合、
図4に示すように、加速度センサ12のz軸方向は、車両前後方向に平行になっており、かつ、水平軸110とも平行である。スマートフォン1がこの
図4に示す姿勢であれば、加速度センサ12が検出するz軸方向の加速度検出値Azは、そのまま、このスマートフォン1が設置されている車両の前後方向の加速度となる。
【0038】
しかし、実際には、スマートフォン1が
図4の姿勢で設置されることは少なく、
図4の姿勢に対して傾いた姿勢で設置される。
図5の例では、スマートフォン1は、上端が下端よりも車両前側になる姿勢になっている。そのため、加速度センサ12のy軸は、鉛直方向に対してθ1だけ傾いている。これに伴い加速度センサ12のz軸も水平軸110に対して傾いており、水平軸110とz軸との間の角度はθ1となる。
【0039】
ここで、重力加速度をgとする。なお、gは約9.8m/s
2である。
図5の姿勢の場合、加速度センサ12のz軸が水平軸110に対して傾いているため、車両が水平な地面の上で静止していても、加速度センサ12が検出するz軸方向の加速度検出値Azはgsinθ1となり、0にはならない。このように、加速度センサ12は姿勢変化により検出値が変化するセンサである。
【0040】
さらに、車両が加速や減速をする場合、車体が路面に対して傾く。したがって、車室内に設置されているスマートフォン1の水平軸110に対する傾きも変化する。
図6は、減速時のスマートフォン1の傾きの一例を説明する図である。
図6において、一点鎖線は、
図4におけるスマートフォン1の姿勢を示し、二点鎖線は
図5におけるスマートフォン1の姿勢を示している。実線は、減速時のスマートフォン1の傾きの一例である。
【0041】
減速により、車両には、車両前後方向にαの加速度が生じる。しかし、減速により、車両は車両前端が車両後端に対して下がる。そのため、スマートフォン1の姿勢は、
図5よりもさらに、上端が下がる姿勢になる。
図6における加速度センサ12のy軸方向と鉛直方向の角度をθ2とすると、θ2>θ1である。
【0042】
この姿勢においては、加速度センサ12が検出するz軸方向の重力加速度成分は、
図6に示すようにgsinθ2となり、静止時に検出する値であるgsinθ1よりも大きい。また、減速時には、減速により生じる加速度が、加速度センサ12のz軸の加速度検出値Azに含まれる。
図6の例では、加速度センサ12のz軸は水平軸110に対してθ2傾いていることから、減速により加速度αが車両に生じた場合、加速度センサ12のz軸には、αcosθ2の加速度が生じる。
【0043】
このように、車両の減速時には、加速度センサ12のz軸には、車両の傾きと重力加速度に起因してgsinθ2が生じ、車両に生じる減速度に起因してαcosθ2が生じる。したがって、車両の減速時、加速度センサ12が検出するz軸の加速度検出値Azは、gsinθ2とαcosθ2に、ノイズN加わった値、すなわち、gsinθ2+αcosθ2+Nになる。この値は、減速により車両に生じる加速度αが同じであっても、θ2により変化する。したがって、そのままの値で、急加速や急減速などの判定を行うべきではない。そこで、加速度センサ12が出力した加速度検出値Aから、スマートフォン1の姿勢により生じる影響を除去するために、加速度リアルタイム補正を行うのである。
【0044】
なお、
図4〜
図6の説明は、加速度センサ12のz軸に生じる加速度を例にして説明したが、スマートフォン1の姿勢が変化することにより、検出する加速度が変化することは、加速度センサ12のx軸、y軸でも同じである。したがって、加速度センサ12のx軸、y軸の加速度検出値Aに対しても、加速度リアルタイム補正処理を行う。
【0045】
図7に、加速度リアルタイム補正処理を示している。なお、
図7の処理は、加速度センサ12の3軸の加速度検出値Aに対して別々に行う。
【0046】
ステップS41では、最新の加速度検出値A、および過去1分間分の加速度検出値Aを、RAMの加速度検出値保存領域から取得する。すなわち、最新の時点から1分前までの加速度検出値Aを取得する。
図8に示す破線の波形は、RAMに記憶されているz軸の加速度検出値Azの一例である。なお、1分は一例であり、1分よりも長い時間、あるいは1分よりも短い時間の加速度検出値Aを取得してもよい。
【0047】
ステップS42では、ステップS41で取得した加速度検出値Aをローパスフィルタに通すことで、ステップS41で取得した加速度検出値Aから低周波成分Grav(n)を抽出する。この処理は請求項の直流成分除去処理に相当する。
【0048】
このステップS42における処理は、たとえば、下記式1を行う処理である。なお、式1において、nは信号取得毎に値が1ずつ変化する整数である。
【0049】
(式1) Grav(n)=A(n)×0.1+Grav(n−1)×0.9
このステップS42で抽出できる低周波成分Grav(n)は、車両の傾きと重力加速度に起因して加速度センサ12に生じている加速度とみなすことができる。
図8に示す一点鎖線の波形は、
図8の破線の波形に、このステップS42を実行することで得られる低周波成分Grav(n)を示している。
【0050】
ステップS43では、ステップS41で取得した加速度検出値Aから、ステップS42で抽出した低周波成分Gravを減算する。減算した値を、加速度交流成分A
ACと呼ぶことにする。
図8に示す実線の波形は、この加速度交流成分A
ACの波形を示している。ステップS43の処理により、最新の1分間分の加速度交流成分A
ACが得られる。
【0051】
ステップS44では、加速度交流成分A
ACの実効値A
ACe(n)を更新する。以下では、実効値A
ACe(n)の(n)は省略する。この実効値A
ACeは二乗平均平方根ともいい、一定期間の加速度交流成分A
ACの二乗平均平方根を算出する。この実効値A
ACeの算出に、直前のステップS43で算出した最新の過去1分間分の加速度交流成分A
ACを用いる。式2は、実効値A
ACeを算出する式の一例である。
【数1】
【0052】
続くステップS45では、最新の加速度交流成分A
ACに対して正規化を行う。具体的には、最新の加速度交流成分A
ACをステップS44で更新した実効値A
ACeで割る。
【0053】
続くステップS46では、今回のステップS45の処理で得た値および過去のステップS45の処理で得た値からなる波形に対して、ハイカットフィルタ処理を行って、高周波ノイズ成分を除去する。このステップS46の処理は、請求項の高周波除去処理に相当する。
図9に実線で示す波形は、このステップS46の処理で得られた波形の一例である。なお、
図9において、破線の波形、一点鎖線の波形は、
図8と同じである。
【0054】
ステップS47では、ステップS46の処理で得た波形における最新の値を、補正後加速度として、急加速判定部23、急減速判定部24、バンプ地点判定部25、急旋回判定部26に出力する。
【0055】
急加速判定部23、急減速判定部24、バンプ地点判定部25、急旋回判定部26は、それぞれ、急加速、急減速、バンプ地点、急旋回と判定するための閾値を備えている。
【0056】
図3のステップS5では、これら急加速判定部23、急減速判定部24、バンプ地点判定部25、急旋回判定部26が、予め設定されている閾値と、ステップS4で決定された補正後加速度とを比較する。なお、急加速判定部23、急減速判定部24は、z軸の補正後加速度を閾値と比較し、バンプ地点判定部25はy軸の補正後加速度を閾値と比較し、急旋回判定部26は、x軸、軸の補正後加速度を閾値と比較する。比較の結果、急加速判定部23、急減速判定部24、バンプ地点判定部25、急旋回判定部26の少なくとも一つが、補正後加速度が閾値を超えていると判断した場合には、ステップS5の判断がYESになる。ステップS5の判断がYESであればステップS6に進み、NOであればステップS3に戻る。
【0057】
ステップS6では、RAMに記憶されている動画データから、予め設定された期間分の動画データを記憶部16に保存する。この期間は、たとえば、ステップS6の判断がYESになった時点を基準として前後20秒などである。また、RAMに記憶されている車両挙動データから、動画データと同じ期間のデータも、動画データと関連付けて記憶部16に保存する。車両挙動は、ここでは、加速度と速度である。ステップS6の処理を実行後は、ステップS3に戻る。
【0058】
<変形例1>
上記実施形態では、加速度検出値Aから低周波成分Gravを減算して加速度交流成分A
ACを求め(S43)、その加速度交流成分A
ACの実効値A
ACeにより加速度検出値Aを正規化していた(S44、S45)。しかし、先に正規化を行い、次いで、低周波成分Gravの減算を行ってもよい。すなわち、低周波成分Gravを減算する前の加速度検出値Aの実効値Aeを更新し、その実効値Aeで加速度検出値Aを正規化した後、正規化後の低周波成分Gravを求め、その低周波成分Gravを正規化後の値から減算してもよい。正規化と、低周波成分Gravの減算の順序を入れ替えても、前述の実施形態と同じ効果が得られる。
【0059】
図10は、この変形例1における効果を説明するグラフである。このグラフは、同一の車両に、機種の異なる2つのスマートフォン1を設置して、同時に加速度検出値Azを検出した結果、および、その加速度検出値Azを補正した補正後加速度を示している。
【0060】
図10の上段は、z軸の加速度検出値Azと、加速度検出値Azをその加速度検出値Azの実効値で正規化した正規化加速度の変化を示すグラフである。下段は、その正規化加速度、正規化加速度の低周波成分GravZ、補正後加速度の変化を示すグラフである。上段、下段とも、右側のグラフと左側のグラフは、互いにスマートフォン1の機種が異なる。
【0061】
上段の左右のグラフを比較すると分かるように、同じ車両において同時に測定しているにもかかわらず、z軸の加速度検出値Azは、左のグラフではピーク値が10を越えているのに対して、右のグラフではピーク値は9程度である。すなわち、ピーク値が異なっている。また、これらのピーク値を検出している時間Tも異なっている。この相違が生じている第1の理由は、スマートフォン1の設置姿勢が異なるためである。第2の理由は、スマートフォン1の機種により用いられている加速度センサ12の型式が異なり、加速度センサ12の型式が異なると、同じ加速度に対する感度が異なるためである。第3の理由は、スマートフォン1が異なれば、混入するノイズが異なるからである。
【0062】
しかし、下段のグラフに示すように、変形例1では、この加速度検出値Azを、実効値で正規化して正規化加速度とし、さらに、この正規化加速度の低周波成分GravZを抽出している。そして、正規化加速度から低周波成分GravZを減算して求めた補正後加速度は、左右のグラフでほぼ同じ波形となっている。そして、ピーク値は左右のグラフとも約5.5になっており、また、そのピーク値になっている時間Tもほぼ同じになっている。
【0063】
<実施形態、変形例1の効果>
以上、説明した実施形態、変形例1によれば、加速度センサ12は、車両に生じる加速度により変化する加速度検出値Aを出力する。この加速度検出値Aは、加速度センサ12の型式の違いによる感度差や、スマートフォン1の設置姿勢の違いによる感度差の影響を受けた値になっている。しかし、上述した実施形態や変形例1では、加速度補正部22が、加速度検出値Aを、過去1分間の加速度検出値Aから演算した実効値A
ACeで割ることにより正規化する。この正規化により、型式の違いによる感度差や、設置姿勢等の検出条件による感度差の影響を低減できる。
【0064】
また、前述の実施形態では、加速度検出値Aから低周波成分Gravを除去している(S42、S43)。これにより、補正後加速度(S47)は、スマートフォン1の設置姿勢の影響がより低減された値となる。なお、この効果は、実施形態とは、正規化と、低周波成分Gravの減算の順序を入れ替えた変形例1でも得られる。
【0065】
また、前述の実施形態では、加速度検出値Aから低周波成分Gravを除去する処理として、加速度検出値Aから低周波成分Gravを減算している(S43)。これにより、よりスマートフォン1の設置姿勢の影響を低減できる。この処理は変形例1でも行っているので、
図10を例にして、スマートフォン1の設置姿勢の影響を低減できていることを説明する。
【0066】
加速度検出値Aをハイパスフィルタに通しても、低周波成分Gravはある程度は除去できる。しかし、この場合には、加速度検出値Aの波形が鈍るのみで、波形のレベルが、
図10の補正後加速度のレベルまで低下しない可能性がある。波形のレベルが、
図10の補正後加速度のレベルまで低下しないことは、低周波成分Gravの影響を十分に除去できていないことを意味する。これに対して、前述の実施形態のように、加速度検出値Aから低周波成分Gravを減算すれば、低周波成分Gravの影響を十分に除去できる。その結果、
図10に示すように、左右のグラフで加速度検出値Azの波形は大きく相違しているにも関わらず、補正後加速度の波形は、左右のグラフでほぼ形状が一致するようになる。
【0067】
このように、前述の実施形態や変形例1によれば、よりスマートフォン1の設置姿勢の影響を低減できる。スマートフォン1は、携帯型の装置であることから、着脱可能に車室内に設置される。このため、スマートフォン1は、設置姿勢の変化が使用ごとに異なる可能性が高い。したがって、前述の実施形態や変形例1のようにして設置姿勢の影響を低減する意義が大きい。
【0068】
また、前述の実施形態では、ハイカットフィルタ処理(S46)を行っているため、加速度検出値Aから高周波ノイズも除去される。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0070】
<変形例2>
たとえば、前述の実施形態では、センサとして加速度センサ12を例示したが、本発明が適用できるセンサは加速度センサに限られない。たとえば、物理量として角速度を検出する角速度センサを用いることもできる。角速度センサを用いる場合、バンプ地点判定部25、急旋回判定部26は、前述の実施形態や変形例1と同様にして補正した角速度を補正後加速度にとともに用いて、あるいは、補正後加速度に代えて用いて判定を行う。また、加速度センサ12、角速度センサ以外のセンサ、たとえば、ジャイロセンサなどを用いることもできる。
【0071】
<変形例3〜5>
前述の実施形態では、車両用センサ信号処理装置としてスマートフォン1を例示したが、ドライブレコーダを車両用センサ信号処理装置として用いてもよい。このドライブレコーダは、車室内に、車両のユーザが設置するものでもよく(変形例3)、また、荷室など、車両内の車室外の部分に、車両出荷時に設置されているものでもよい(変形例4)。なお、前者の場合には、設置姿勢が車両ごとに異なる可能性が高いので、本発明を適用する意義が大きい。
【0072】
また、タブレット型コンピュータを車両用センサ信号処理装置として用いてもよい(変形例5)。なお、タブレット型コンピュータやスマートフォン1は、ユーザがプログラムをインストールすることで種々の機能を実現できる。したがって、車両用センサ信号処理プログラム16bをインストールすれば、種々の機種のタブレット型コンピュータやスマートフォン1を車両用センサ信号処理装置として用いることができる。しかし、これらタブレット型コンピュータやスマートフォン1に内蔵されている加速度センサ等のセンサは型式が様々である可能性が高い。また、車両で用いられる際の設置姿勢も、車両に設置するごとに変化する可能性が高い。よって、型式の違いによる感度差や、設置姿勢等の検出条件による感度差の影響を低減できる本発明を適用する意義が特に大きい。
【0073】
<変形例6>
前述の実施形態では、ハイカットフィルタ処理(S45)を、正規化した後の値に対して行っていたが、ハイカットフィルタ処理を正規化の前に行ってもよい。
【0074】
<変形例7>
前述の実施形態では、正規化(S44)は、実効値を用いて行っていたが、実効値以外の代表値を、実効値に代えて用いて正規化を行ってもよい。実効値以外の代表値としては、たとえば、中央値、最頻値、平均値などがある。
【0075】
<変形例8>
前述の実施形態では、式1により、加速度検出値Aから低周波成分Grav(n)を抽出していたが、フーリエ変換などの周波数解析手法により、低周波成分Grav(n)を抽出してもよい。
【0076】
<変形例9>
前述の実施形態では、低周波成分Gravの除去と、ハイカットフィルタ処理とを別々に行っていたが、バンドパスフィルタを使って、低周波成分および高周波成分を同時に除去してもよい。