移動体40は、管理サーバの配車指示によって、ユーザを出発地(S地点)から乗せて、目的地(G地点)で降ろし、降車後は、待機場所(例えば、充電ステーション90(W地点))へ向う。管理サーバは、移動体40の現在位置を特定し、目的地までの最短ルート(太い実線)を生成する。管理サーバは、生成した最短ルートから移動体40が走行する地域の道路情報を外部システムから取得し、走行ルート上で移動体40の車両状態を診断可能な診断地点を決定する。例えば、地点Aにはクランク診断地点、地点Bには点滅信号診断地点、地点CにはS字カーブ診断地点、地点Dには坂道診断地点、地点Eには直線路診断地点(速度計測用)、地点Fには一時停止診断地点、地点Zには、音響診断地点が、それぞれ存在し、管理サーバは、地点A〜地点Fまで繋ぎ、診断ルートを生成する。
前記診断地点は、所定速度以上で走行可能な直線路、所定角度以上の登坂路又は降坂路、信号のある交差点、一時停止地点、横断歩道、信号のない交差点、踏切、悪路、クランク、S字カーブ、車載音響装置の診断が可能な場所のうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両状態診断システム。
【背景技術】
【0002】
近年、交通手段である自動車の技術革新が著しく、制御機能として自動走行技術が実用化されてきた。また、通信技術の進展に伴い、個々の自動車がネットワークを介して他の機器と接続できるネットワーク機能を持つに至った。一方、環境への配慮、維持費の高騰、高齢者の増加等の問題により、個人における自動車の所有台数は、年々減少しているが、自宅から駅や店舗等への人の移動、或いは荷物の運搬等、人や物が移動する手段に対する需要が減少しているわけではない。そこで、この自動走行機能(自動運転機能)とネットワーク機能を併せ持つ自動走行車両(以下、移動体という)を、より便利で手軽な移動手段として、ユーザの都合と目的に合わせた時間と場所に、柔軟、かつ安全に運行することができる交通システムの出現が望まれている。
【0003】
しかしながら、上記した交通システムで用いられる移動体によれば、運転者がいないため、自動走行している移動体が正常に動作しているか否かを外部から確認する手段がない。したがって、自動運転に対する不安があり、このため、自動走行する移動体を普及させるためには、自動運転のための制御技術の信頼性を向上させると共に、周囲に安心を与える工夫も重要である。
【0004】
そのためには、移動体が常に正常な車両状態を維持することが必要不可欠であり、正常な車両状態を維持するには、日々の点検が必要である。一般車両の点検を行う場合、車両の運転者又は所有者は、車両状態に問題が無いことを、車両の外部及び内部の目視確認、又はテスト走行を行うことにより検査を行っていた。しかしながら、車両の知識に疎いユーザは、自身で検査することが出来ないため、例えば、メンテナンス工場等に出向き、メンテナンス業者に点検を依頼することで、車両状態が正常であるか否かの確認を行っていた。このことは、自動走行する移動体についても同様であり、日々の点検を継続して行うためには、コストと時間を要する。
【0005】
車両を診断する技術については従来から多数の出願が存在する。例えば、特許文献1に、エンジンやボディ等の車両情報を管理する電子制御機器を含む車載電子機器の診断技術が開示されている。電子制御機器には、エンジン回転数、スロットル開度等の走行状態データの他、故障診断アルゴリズムによって診断された診断データ、走行距離、部品交換情報等のメンテナンス情報が格納されており、外部の管理装置へメンテナンス情報を送信することで、外部で車の車両状態を把握することが可能となり、車両故障の早期発見や車両の部品交換時期の目安とすることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、電気制御機器の内部センサから得られる情報に基づくエンジン回転数、スロットル開度等の走行状態に関する内部診断に留まり、これをそのまま自動走行する移動体に適用するには信頼性に欠ける。すなわち、自動走行する移動体に適用するためには、上記した内部診断の他に、例えば、外部のサーバからの指示に従ったルートを走行しているか、ルート上の信号機や制限時速等の交通規則を遵守して走行しているか、サーバとの通信は正常に動作しているか等、走行環境に基づく外部診断も必要になる。また、自動走行を行う移動体の診断のための特別な施設の建設をできるだけ少なくし、既存の施設、例えば、道路の形状そのものを利用した診断や道路上の既存設備を利用して診断ができれば診断コストの大幅な低減につながる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0019】
(交通システム)
図1は、本発明が適用される交通システムの概念を説明する図である。
図2は、本発明が適用される交通システムの全体概要を説明する図である。自動運行交通システム(以下、交通システム1)は、地域における交通の利便性を向上し、当該地域における住民やサービサ(サービス提供者、例えば、公共交通機関、役所、病院、地域企業、スーパやコンビニ等の小売店等)における人や物の移動需要を喚起し、当該地域を活性化することを目的としたものである。
【0020】
交通システム1は、交通システム1の中心となる移動体管理システムは、提供する各種サービスに適合したサブシステムとして、管理サーバ等で構成される。管理サーバ10は、このサブシステムとしてのサーバの一つであり、管理サーバ10にネットワークを介して接続されたサービサにより操作されるサービサシステム20(
図1ではビルのイラストで表す)と、地域住民であるユーザにより操作されるユーザ端末30(
図1では家のイラストで表す)と、管理サーバ10の指示に基づきユーザ又は荷物を運ぶ、電気で駆動され自動走行可能な移動体40と、を備える。
【0021】
管理サーバ10は、サービサシステム20からサービサ情報を受信し、ユーザ端末30からユーザ情報を受信する。管理サーバ10は、サービサ情報及びユーザ情報を収集し、これらの情報をマッチングし、例えば、ユーザの外出を促すスケジュール情報を所定のユーザ端末30に提供し、所定のユーザ情報を所定のサービサシステム20に提供する。そして、管理サーバ10は、サービサシステム20やユーザ端末30から受信した移動体40の配車依頼情報に基づき、移動体40に、運行の日時やルートを示す配車指示情報を送信する。
【0022】
サービサシステム20は、各サービサに適したシステムで構成され(例えば、複数の端末とサーバとからなるシステム、携帯端末、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等)、各サービサの要望に基づくサービサ情報を、管理サーバ10に送信する。サービサ情報は、例えば、サービサが小売店であれば、サービサの在庫を示す在庫情報、特売品の特売日やセール時間や品目や数量や価格や想定商圏を示す特売品情報、来店して欲しい客の人数、喫煙の有無、来店時に受けられるサービスのクーポンに関する店内空き情報等が含まれる。また、サービサ情報には、移動体40の配車を依頼する配車依頼情報等も含まれる。
【0023】
ユーザ端末30は、各ユーザに適した機器で構成され(例えば、携帯端末、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、ネットワークに接続可能なテレビ、オーディオ機器、冷蔵庫等の情報家電等)、各ユーザの要望に基づくユーザ情報を、管理サーバ10に送信する。ユーザ端末30は、上記のような機器そのものであってもよいし、上記の複数の機器と家庭内等のローカルネットワークを介して、情報交信可能な制御機器(ホームコントローラ等)であってもよい。ユーザ情報は、ユーザを特定するユーザIDや名前や住所やメールアドレス等の個人情報、ユーザが購入を希望する商品を示す購入希望情報、特定の日時に乗車位置から目的地まで移動体40の運行を依頼する配車依頼情報、配車依頼情報に基づく配車の予定を確定する予定確定情報、所定の期間において所定の時間に乗車位置から目的地まで移動体40の運行を依頼するユーザ定期配車依頼情報等が含まれる。
【0024】
移動体40は、電気で駆動され自動走行可能な車両であり、かつ、自動運転に関する周知のシステムを備えた電気自動車であり、管理サーバ10から受信した配車指示情報に示された日時において、配車指示情報に示されたルートを自動運転により運行する。また、移動体40は、移動体の現在位置、目的地、電池残量を示す情報を含む移動体情報を管理サーバ10に送信する。また、移動体40は、電池残量が所定値以下となった場合、最寄りの充電ステーション90で充電する。充電ステーション90は、移動体40が配車される地域において、例えば、所定範囲毎に設けられ、複数台の移動体40が同時に充電できる構成を備える。なお、充電ステーション90は、例えば、移動体40を利用するユーザの自宅や、サービサの店舗に、1台用として簡易的に設けてもよい。なお、移動体40は、他の移動体40とも相互に無線通信が可能である。
【0025】
このような交通システム1によれば、サービサ及びユーザの都合と目的に合わせた時間と場所に、自動運転する移動体40を運行することで、移動体40の利用料を低廉にすることができる。
【0026】
上記した交通システム1のサブシステムである以下に説明する車両状態診断システム(
図5の符号100)では、移動体40の電池残量及びその他車載装備の状態を含む車両状態を車両内部のセンサに基づく診断と、走行ルート(道路)上に各種診断地点を設定し、実走行に基づく車両状態の診断を行う。
【0027】
ここでいう車両状態の診断とは、移動体の各所に実装された内部センサから得られる車両の状態情報に基づいて、移動体が正常に動作しているか否かの診断を行う内部診断と、外部に設置された管理サーバからの指示に従ったルートを走行しているか、ルート上の信号機や制限時速等の交通規則を遵守して走行しているか、管理サーバとの通信が正常になされているか否か等の走行環境に基づく外部診断をいう。
【0028】
そのため、移動体40は、車両状態を移動体40の駆動部内に設けられた複数の駆動系診断センサを用いて診断を行い、更に、自動運転車両に必要不可欠な車載装備品(例えば、ライトや充電池等)の診断を行う。また、管理サーバ10は、移動体40が有するGPSセンサ等によって得られる位置情報、稼動情報、及び自ら生成する配車情報に基づき、移動体40の位置情報、及び走行ルートを特定し、移動体40が走行する地域の道路情報を外部システム(
図5の符号60)から取得する。なお、配車情報とは、移動体40を配車する位置を示す配車位置情報と、移動体40を配車する時間を示す配車時間情報を含む情報等をいう。また、道路情報とは、道路上の交通規則(道路の制限速度、一時停止等)や信号機の状態(点灯、点滅状態)、道路状態(登坂路、降坂路、クランク、S字カーブ、悪路等)のことをいう。また、外部システムは、道路に関連する各種情報を管理しており、例えば、渋滞や交通規制の情報であれば、道路交通情報通信システムであり、信号情報であれば、交通管制センターの情報通信システムである。
【0029】
管理サーバ10は、取得した道路情報に基づき、移動体40の走行ルート上で移動体40の車両状態を診断可能な診断地点を決定し、決定した診断地点を繋いで移動体40に対する診断ルートを設定する。移動体40は、設定された診断ルートを管理サーバ10から受信し、診断ルート内の診断地点ごとに診断を行い、その診断結果を管理サーバ10へ送信する。
【0030】
図3は、地図上に設けられた診断ルート及び診断地点を示したイメージ図である。
図3に示す例では、移動体40は、管理サーバ10の配車指示によって、待機場所である充電ステーション90(W地点)を出発し、ユーザを自宅前等(S地点)から乗せて、目的地である学校前(G地点)で降ろし、ユーザが降車後は、再び充電ステーション90に帰還するものとする。管理サーバ10は、移動体40を自宅から学校まで配車するため、移動体40の現在位置を特定し、学校までの、例えば最短ルートを生成する。ここでいう最短ルートとは、距離的又は時間的に最短のルートである。当然、最短ルートに自然と診断地点が含まれることもある。
図3では、この最短ルートが太い実線で示されている。そして、管理サーバ10は、生成したルートから移動体40が走行する地域の道路情報を外部システムから取得し、走行ルート上で移動体40の車両状態を診断可能な診断地点を決定する。例えば、
図3に示す、地点Aにはクランク診断地点、地点Bには点滅信号診断地点、地点CにはS字カーブ診断地点、地点Dには坂道診断地点(登坂力、降坂時ブレーキ力診断用)、地点Eには直線路診断地点(速度計測用)、地点Fには一時停止診断地点、地点Zには、音響診断地点が、それぞれ存在する。管理サーバ10は、地点A〜地点Fまで繋ぎ、診断ルートを生成する。最短ルートから外れた診断ルートは、太い点線で示されている。また、診断地点の診断ルートへの加入採否は、道路情報の変化(道路が新設されたり、信号が増えたり、車線数が変わったりという道路自体の変化の他、大型店舗ができるなど周辺環境の変化もある)に伴い変更されてよい。また、後述するように、同じ診断地点であっても、時間帯によって、道路が混雑したり、周囲の騒音が過大となったり過小となったりし、診断地点として適不適となる場合もあるので、診断ルートへの加入採否は、時間帯によっても変更されてもよい。
【0031】
移動体40は、配車指示前に待機していた地点(地点W)から配車先(地点S)へ向かい、ユーザを乗車させた後又は荷物を積んだ後に、目的地までのルートを走行する。移動体40は、移動時間に余裕があれば、各診断地点を含むようにルートを変更し、余裕がなければ、最短ルート上にある診断地点のみを走行し、目的地(地点G)まで走行する。移動体40は、目的地にユーザを降ろした後は、充電ステーション90までの最短ルート(太い一点鎖線)から外れた診断地点Fを含んだ迂回診断ルート(太い点線)を走行する。なお、診断地点Zの診断は、移動体40が充電ステーション90から配車先のS地点まで移動する時間に余裕がないため、行なっていない。診断ルートに地点Fを加え、地点Zを加えないのは、以下の理由による。図から分かるように、地点Fと地点Zの最短経路からの迂回距離は、地点Fへ迂回する距離の方が地点Zへ迂回する距離よりも長い。しかし、この例では、地点Fが診断のための迂回の候補となるのは、充電ステーションに帰還するときであり時間的余裕がある一方、地点Zが迂回の候補となるのは、配車先に向かうときであり時間的余裕を見出すのが困難であるという判断によるものである。
【0032】
また、移動体は、刻々と変化する道路状況を加味し、サーバから指示された診断ルートを変更してもよい。例えば、加速試験や制動試験をするための十分な距離が取れないほど混雑している状況では、その試験のための診断地点が迂回ルートの場合は加速試験や制動試験を取りやめて最短ルートを走行し、音響試験が困難なほど騒音が激しい状況では音響試験を取止めることなどが考えられる。勿論、混雑が解消された場合は、元通り加速試験や制動試験をするべく迂回してサーバから最初に支持された診断ルートを走行するようにする。
【0033】
移動体40は、管理サーバ10からの配車指示に従い、配車先へ向かう途中、配車先での移動途中、又は配車先から帰還する途中に、それぞれの移動における余裕時間及び電池残量に応じて走行可能な診断地点を決定し走行する。このようにすることで、移動体40は、管理サーバ10が設定した診断ルートに従うだけでなく、自らの判断で、移動途中の各段階において、自らの移動スケジュールの余裕時間、電池残量に応じて診断地点を選択し、診断することが可能となる。このため、移動体40の実際の運行の妨げにならず、従って、効率のよい配車が可能となる。なお、移動体40は、診断ルートの走行を、管理サーバ10からの指示に従い又は自発的に、定期的に若しくは不定期に行ってもよい。このように自動走行中に診断を行うため、人による点検は必要とせず、人件費の削減、及びメンテナンスに要する時間も削減される。
【0034】
なお、診断地点は、一定速度以上で走行可能な直線路、所定角度以上の登坂路又は降坂路、信号のある交差点、一時停止地点、横断歩道、信号のない交差点、踏切、悪路、クランク、S字カーブ、車載音響装置の診断試験が可能な場所のうち少なくともいずれか1つを含むものとする。
【0035】
例えば、
図4は、上記の診断地点のうちのいくつかに地点のイメージを示した図である。
図4(a)に示すように、移動体40は、診断地点として設定された信号機が設置された道路を走行し、後述するカメラ(撮像部)でその信号機を撮影し、その撮像情報を管理サーバ10へ送信することにより、管理サーバ10からその診断結果を受信することができる。
図4(b)では、移動体40は、診断地点として設定された踏切を走行し、カメラで該当する踏切を撮影し、画像認識を行うとともに、ブレーキセンサによるブレーキ状態を検知し、これら情報を管理サーバ10へ送信し、管理サーバ10から一時停止の診断結果を受信することができる。また、
図4(c)に示すように、移動体40は、診断地点として設定された降坂路を走行し、内蔵されている後述する駆動手段のブレーキ状態を検知し、その結果を管理サーバ10へ送信し、管理サーバ10からその診断結果を受信することができる。また、
図4(d)に示すように、移動体40は、診断地点として設定されたクランクを走行させ、後述する駆動手段のステアリング状態及びブレーキ状態を検知し、その検知結果を管理サーバ10へ送信し、管理サーバ10からその診断結果を受信することができる。また、移動体が各種診断試験をした時間と、該当する映像の記録時間を照合して、その正当性を管理サーバ10側から確認するなどしてもよい。
【0036】
なお、図示を省略したが、音響診断も可能である。音響診断とは、後述するスピーカとマイクを用いて車載音響装置(クラクション、音声認識用機器、オーディオ機器等)の診断を行うことである。例えば、地域内の静かな地点(公園等)を特定し、その地点を音響診断用の診断地点とする。この場合の診断内容は、所定の診断用の音をスピーカから出力し、マイクで検知される音響信号から、スピーカの音量、高音、低音テストを行い、その診断結果を管理サーバ10へ送信し、管理サーバ10からその診断結果を受信することができる。また、ユーザが乗車中には、自発的に又は管理サーバ10からの指示により、ユーザにより発話される音声を正確に集音し、音声として判断できるか否かの診断を行い、その結果を管理サーバ10へ送信する。なお、本説明では、診断地点として一般道路を利用して移動体40の診断をするものとしたが、一部に専用の診断地点を設置して、診断を行うようにしてもよい。
【0037】
(車両状態診断システムの構成)
図5は、本実施形態に係る車両状態診断システム(以下、本システム100という)の構成を示すブロック図である。本システム100は、移動体40を配車するための制御中枢となる管理サーバ10と、この管理サーバ10に無線通信ネットワークを介して接続され、管理サーバ10の指示に基づき自動走行する移動体40と、外部システム60とを含む。
【0038】
(移動体の構成)
移動体40は、車両状態検知部41と、駆動手段42と、移動体情報取得部43と、ライト44と、充電池45と、スピーカ46と、マイク47と、カメラ48(撮像部)と、表示部49とを備える。以下、各構成について順に説明する。
【0039】
車両状態検知部41は、電池残量及びその他車載装備の状態を含む、車両状態を検知する。車両状態検知部41は、駆動手段42に内蔵されている各種駆動系診断センサ42b、ライト44、位置情報取得部43b、充電池45、スピーカ46、及びマイク47から出力される信号に基づいて車両状態の診断を行ない、その診断結果を診断情報データベース(以降、診断情報DB101という)に格納するとともに管理サーバ10へ送信する。
【0040】
図6(a)に示すように、診断情報DB101には、移動体40にユニークに付される移動体ID、診断日時、移動体40の駆動手段42に内蔵されている各種の駆動系診断センサ42b(例えば、加速センサ、ブレーキセンサ、ステアリングセンサ、タイヤ空気圧センサ、衝突検知センサ、駆動系温度センサ等)による診断結果、及び電池残量等、及び移動体40の車両状態が格納される。例えば、移動体No.0001は、2014年2月1日の14:00に車両状態の診断を行い、加速センサ、ブレーキセンサ、ステアリングセンサ、タイヤ空気圧センサ、衝突検知センサ、駆動系温度センサが共に良好で、電池残量も通常走行に支障がないことが示されている。
【0041】
また、管理サーバ10によって設定された診断ルート内の各診断地点でも同様に車両診断を行い、その診断結果を診断情報データベース(以降、診断情報DB101)に格納するとともに、管理サーバ10へその診断結果を送信する。
【0042】
図6(b)に示すように、例えば、所定速度以上で走行可能な直線路では、駆動部42aに内蔵の速度センサ及び画像認識機能をもつ、カメラ48によって診断される。診断上問題なければ、「OK」と表示され、異常の場合は「NG」と表示される。
【0043】
駆動手段42は、駆動部42aと、駆動系診断センサ42bから構成される。駆動部42aは、移動体40が電気で駆動するために必要な構成部品(バッテリー、インバータ、モータ、ブレーキ等)を有している。また、駆動手段42は、自動運転に必要な、GPS(Global Positioning Systems)センサ、移動体40の走行環境を検知する周囲監視センサ、GPSセンサ及び周囲監視センサからの情報に基づき車輪を操舵するアクチュエータ等を備える。
【0044】
駆動系診断センサ42bは、駆動部42aの各構成部品のそれぞれに設けられており、駆動系診断センサ42bによって検知される信号が示す車両状態情報を車両状態検知部41に出力する。
【0045】
移動体情報取得部43は、移動体40の移動スケジュールを管理するスケジュール管理部43aと、GPSセンサ等により移動体40の位置情報を検出する位置情報取得部43bとから構成される。
【0046】
スケジュール管理部43aは、稼動状況や稼働スケジュール、例えば稼動の有無(運行中、待機中、充電ステーションで充電中等)、運行時に関しては目的地及び目的地到着時間等を管理する。位置情報取得部43bは、GPSセンサ等により移動体40の現在地を検出(取得)する。
【0047】
ライト44は、走行中に道路を照射する機能を有し、道路走行中に使用する他、光の照射角度及び明度状態を車両状態検知部41へ送信する。
【0048】
充電池45は、移動体40の自動走行に必要な電力源であり、内蔵センサにより電池残量を計測して車両状態検知部41に出力する。
【0049】
スピーカ46は、例えば、ナビゲーション音声や音響機器により生成される音を出力する。マイク47は、移動体40の周囲の音声や乗車中のユーザが発話する音声等を集音する。また、マイク47は、ユーザの音声を認識する音声認識装置を構成し、ユーザが発話により移動体40に稼働を指示することで、移動体40は、その指示内容に応じて稼働する。例えば、走行中の行き先の変更や緊急一時停止等、即時に移動体に指示をしたいような場合は、移動体40への指示を端末で操作する以外に、音声認識により行うことで端末操作に慣れていないユーザも対応が容易となる。
【0050】
カメラ48は、診断地点で設定された対象物を撮影し、撮影の結果、得られる撮像情報を管理サーバ10へ送信する。
【0051】
表示部49には、エンジン起動後、又はユーザの乗車時に最新の診断結果が表示される。例えば、
図10(a)に示すように、車両状態検知部41で診断した結果と、診断ルートを走行して得られた診断結果とが表示され、したがって、ユーザは、車両状態を目視確認できるため、自動走行する移動体40に対する信頼度が増大する。
【0052】
(管理サーバの構成)
例えば、
図5に示すように、管理サーバ10は、道路情報取得部11と、診断地点決定部12と、診断ルート設定部13と、車両状態収集部14と、診断結果収集部15と、移動体情報収集部16と、配車指示部17とを備える。
【0053】
道路情報取得部11は、通信により、移動体40が走行する地域の道路情報を外部システム60から取得する。
【0054】
診断地点決定部12は、取得した道路情報から、移動体40の走行ルート上で移動体40の車両状態を診断可能な診断地点を決定する。例えば、移動体40の走行ルート上の交差点の一時停止線、速度を診断する場合には、所定速度以上で走行可能な直線路を診断地点として決定する。
【0055】
診断ルート設定部13は、決定された診断地点を繋いで移動体40に対する診断ルートを設定する。移動体40は、時間に応じて診断ルート内に存在する診断地点を走行する。
【0056】
車両状態収集部14は、移動体40の車両状態検知部41によって受信された各移動体40の車両状態情報を取得し、その情報から移動体40の車両状態の正常性を判定し、結果を併せて診断情報データベース201(以降、診断情報DB201という)へ格納する。
【0057】
診断結果収集部15は、診断ルート内の診断地点を走行する移動体40からの診断結果情報を取得し、その情報から移動体40の診断地点で稼動する各機能についての正常性を判定し、診断情報DB201へ格納する。
【0058】
図7(a)に示すように、診断情報DB201は、各移動体の移動体ID、移動体40の駆動手段42に内蔵されている各種の駆動系診断センサ42b、電池残量、各項目から判別する移動体40の車両状態が格納されている。なお、車両状態欄には、例えば、「正常」、「注意」、「警告」等の診断結果情報が設定される。「正常」とは、自動走行に支障がない状態を意味し、「注意」とは、現在のところは走行には問題はないが、近いうちに走行不良になる虞がある状態を意味し、「警告」とは、単体で走行するには支障がある状態を意味し、至急メンテナンスを行わなければならないレベルの状態をいう。このようにすることで、各移動体40の車両状態を一括で管理することが可能となり、配車指示時若しくは、移動体40のメンテナンス時期の目安とすることが可能となる。
【0059】
また、
図7(b)に示すように、診断情報DB201は、各移動体40の移動体ID、診断地点の走行時に必要とする各機能センサの車両状態が記憶される。例えば、
図6(b)に示す、診断地点を走行した結果、全てが正常に稼動していると判定された場合、移動体No.0001は、速度センサ、ブレーキセンサ、ステアリングセンサ、サスペンションセンサ、音響状態、画像認識が全て「OK」と表示される。なお、移動体No.0003のように、ブレーキセンサがNGと判定された場合は、直ちに管理サーバ10の指示の元、メンテナンス工場に出向する。
【0060】
移動体情報収集部16は、各移動体40と通信を行い、移動体40ごとの移動体情報を取得し、移動体情報データベース202(以降、移動体情報DB202という)へ格納する。
【0061】
図8に示すように、移動体情報DB202は、各移動体の移動体ID、位置情報、走行ルート、稼動状況、電池残量のデータを格納する。例えば、移動体No.0001は、緯度35°32´5.10″、経度139°10´3.80″に位置し、出発地は、A−1−2番地であり、目的地がAデパートである。現在、Aデパートまで運行中で16:00に運行終了予定であり、現在の電池残量は80%であることが分かる。移動体情報DB202に、各移動体40の移動体情報を格納することで、スムーズな配車指示が可能となる。
【0062】
図5に戻り、配車指示部17は、各移動体40から受信した移動体情報と、配車要求のあるユーザのスケジュール状況から各移動体40との無線通信によって、移動体40に対し、配車情報を生成し、配車を行う。
【0063】
上記の車両状態診断システム100の構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割し、あるいは複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成してもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、逐次実行することによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インタフェース装置)を制御することによって実現される。また、本実施形態におけるデータベースは、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0064】
図9は、本発明の実施形態に係る処理の流れを示すシーケンス図である。移動体40は、定期的に、又は、管理サーバ10の指示に従い、自らの移動体情報取得部43から移動体情報である位置情報及び稼動情報を取得し、移動体情報DB202に格納する。(ステップS101)。次に、車両状態検知部41によって、自らの電池残量及びその他車載装備の状態を含む、車両状態を検知する(ステップS102)。すなわち、駆動系の診断であれば、駆動系診断センサ42bにより駆動部42a内の機能の診断を行い、その他車載装備の場合は、各車載装備品から診断結果の信号を車両状態検知部41へ送信する。例えばライト44は、光の照射角度及び明度状態を車両状態検知部41に送信することで、正常判定を行う。なお、電池残量については、ステップS101のタイミングで情報を送ってもよい。
【0065】
次に、管理サーバ10の配車指示部17は、ユーザ又は荷物の運搬による配車依頼に基づき、移動体40ごとの移動体情報から配車する移動体40を選出し、配車情報を送信する(ステップS103)。配車情報を受信した移動体40は、配車情報に基づき、自動走行する(ステップS104)。
【0066】
次に、外部診断を行う流れについて説明する。管理サーバ10の道路情報取得部11は、移動体40から取得した移動体情報取得部43の位置情報から走行する地域の道路情報を外部システム60へ取得要求する(ステップS105)。道路情報の取得要求を受信した外部システム60は、診断に必要とする道路情報を管理サーバ10へ送信する(ステップS106)。
【0067】
管理サーバ10の診断地点決定部12は、取得した道路情報から走行ルート上の診断地点を決定する(ステップS107)。次に、診断ルート設定部13は、決定された診断地点を繋いで移動体40に対する診断ルートを設定する(ステップS108)。管理サーバ10は、決定した診断ルート及び診断ルート内の診断地点を移動体40へ送信し(ステップS109)、移動体40は、取得した診断ルートの情報を受信し、走行することで診断地点ごとに診断を行う(ステップS110)。移動体40は、診断地点ごとに診断結果を診断情報DB101に格納し、その診断結果を管理サーバ10へ送信する(ステップS112)。診断結果を受信した診断結果収集部15は、その診断結果を診断情報DB201に格納する。次に、管理サーバ10は、移動体40が診断ルートの情報を元に走行することにより、移動体情報収集部16で取得した位置情報とカメラ48の映像によって得られた情報に基づき、管理サーバ10側から見た診断結果を生成する。
図10(b)に示すように、移動体40の位置情報とカメラの画像認識機能を用いることで、各診断地点の診断が可能となるため、管理サーバ10上のディスプレイに各診断結果が表示される。このようにすることで、移動体40の内部診断と管理サーバ10側からの外部診断が可能となり、自動走行車両の信頼性の向上に繋がる。
【0068】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態の車両状態診断システム100によれば、管理サーバ10が、取得した道路情報から移動体40の走行ルート上で移動体40の車両状態を診断可能な診断地点を決定し、当該決定された診断地点を繋いで診断ルートを設定して移動体40に送信し、診断ルートを受信した移動体40が検知した車両状態を管理サーバ10へ送信して診断を依頼する。したがって、自動走行する移動体40の車両状態を道路上に設定された診断地点によって、診断することができる。具体的には、各種センサから得られる情報に基づくエンジン回転数、スロットル開度等の走行状態に関する内部診断は勿論のこと、例えば、配車指示に従うルートを走行しているか、ルート上の信号機や制限時速を遵守して走行しているか等、走行環境に基づく外部診断も可能になり、自動走行車両の信頼性の向上が図れる。
【0069】
また、移動体40は、管理サーバ10からの配車指示に従い、配車先へ向かう途中、配車先での移動途中、又は配車先から帰還する途中に、それぞれの移動における余裕時間及び電池残量に応じて走行可能な診断地点を決定し走行する。このようにすることで、移動体40は、管理サーバ10が設定した診断ルートに従うだけでなく、自らの判断で、移動途中の各段階において、自らの移動スケジュールの余裕時間、電池残量に応じて診断地点を選択し、診断を受けることが可能となる。よって、移動体40の実際の運行の妨げにならないため、効率のよい配車が可能となる。
【0070】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として捉え、車両状態診断システム100の主に移動体40について説明したが、本発明は、移動体40の車両状態診断方法の発明として捉えることもできる。