【課題】割れや破断等が生じ難く、また経時によっても浮きが発生し難く良好なマーキング視認性を維持することのできる路面・床面マーキング用ラミネートシートおよび路面・床面マーキングシートを提供する。
【解決手段】基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に積層された粘着剤層12とを備えた路面・床面マーキング用ラミネートシート1であって、基材フィルム11がポリ塩化ビニル樹脂およびポリウレタン樹脂の混合樹脂を主成分とし、ポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン樹脂との配合比が質量基準で100:20〜100:250であり、基材フィルム11の粘着剤層12側とは反対側の表面におけるASTM E303に準拠して測定したBPN(British Pendulum Number)が10〜30である路面・床面マーキング用ラミネートシート1。
前記基材フィルムの前記粘着剤層側とは反対側の表面における、JIS A1454に準拠して測定した乾燥時の滑り抵抗値が0.2〜1.0であり、湿潤時の滑り抵抗値が0.2〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載の路面・床面マーキング用ラミネートシート。
前記基材フィルムの前記粘着剤層側とは反対側の表面は、エンボス加工によって高低差20〜100μmの凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の路面・床面マーキング用ラミネートシート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔路面・床面マーキング用ラミネートシート〕
図1に示すように、本実施形態に係る路面・床面マーキング用ラミネートシート1は、基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に積層された粘着剤層12と、粘着剤層12の基材フィルム11とは反対側の面に積層された剥離シート13とを備えて構成される。ただし、剥離シート13は、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の使用時に剥離されるものであり、路面・床面マーキング用ラミネートシート1において必ずしも必要ではない。
【0019】
1.基材フィルム
本実施形態に係る路面・床面マーキング用ラミネートシート1に使用される基材フィルム11は、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリウレタン樹脂の混合樹脂を主成分とする。そして、ポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン樹脂との配合比は、質量基準で100:20〜100:250であることを要する。このようにポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン樹脂とを配合した混合樹脂を主成分とすることにより、優れた衝撃緩和性および凹凸追従性を発揮し、その両立が達成される。そのため、本実施形態に係る路面・床面マーキング用ラミネートシート1をマーキングシート本体に貼付した路面・床面マーキングシート(
図2参照)を、アスファルト路面等の凹凸を有する路面にハンマー施工する場合でも、割れが生じ難く、また、歩行者の靴や傘の先端部等により衝撃が加わっても破断し難い。さらには、経時によっても路面・床面マーキング用ラミネートシート1がマーキングシート本体から浮き難く、両者の間に埃やゴミが入り込むことを抑制して、装飾層のマーキング視認性を維持することができる。
【0020】
塩化ビニル樹脂に対してポリウレタン樹脂の配合量が少な過ぎると、優れた衝撃緩和性および凹凸追従性が得られない。一方、塩化ビニル樹脂に対してポリウレタン樹脂の配合量が多過ぎると、強度が低下するとともに、基材フィルム11の表面に埃やゴミが付着し易くなり、マーキング視認性が低下する。
【0021】
上記の観点から、ポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン樹脂との配合比は、質量基準で100:20〜100:250であることが好ましく、100:25〜100:120であることが特に好ましい。
【0022】
なお、「ポリ塩化ビニル樹脂およびポリウレタン樹脂の混合樹脂を主成分とする」とは、当該混合樹脂の物性により本実施形態で目的とする効果が発揮される程度に当該混合樹脂を含有することをいい、各種添加剤を含有することや、他の樹脂を少量含有することを許容するものである。具体的には、当該混合樹脂を50質量%以上含有することが好ましく、特に65質量%以上含有することが好ましい。
【0023】
本明細書におけるポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルを必須モノマー成分として重合して得られる樹脂をいい、塩化ビニルの単独重合体であってもよいし、塩化ビニルと、当該塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、ブチレン等の1種または2種以上の混合物等が挙げられる。
【0024】
本実施形態における基材フィルム11が含有するポリ塩化ビニル樹脂は、重合度が400〜3000であるものが好ましく、特に700〜1300であるものが好ましい。
【0025】
上記のポリ塩化ビニル樹脂は、可塑剤またはポリマーブレンド等によって可塑化されていることが好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂の可塑化により、本実施形態で目的とする効果が得られるよう、ポリ塩化ビニル樹脂の物性を容易に制御することができる。
【0026】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のジアルキルエステル、アジピン酸/ブタンジオール縮合ポリエステル等のポリエステル系可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ポリブタジエン等のエポキシ系可塑剤、トリメリット酸エステル等を使用することができ、中でも、ポリエステル系可塑剤が好ましい。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
可塑剤の添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、特に10〜50質量部であることが好ましい。
【0028】
ポリウレタン樹脂は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させることによって得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーであることが好ましい。ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、トリイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
基材フィルム11は、上記のポリ塩化ビニル樹脂およびポリウレタン樹脂の混合樹脂ならびに可塑剤以外にも、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、金属石鹸、酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、充填剤、難燃剤、芳香剤、滑剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤等の添加剤を含有してもよい。ただし、基材フィルム11は、研磨粒子は含有しないことが好ましい。研磨粒子を含有すると、基材フィルム11の強度が低下するとともに、光の乱反射が生じて、装飾層の視認性が低下するおそれがある。
【0031】
安定剤としては、例えば、鉛(Pb)系、バリウム−亜鉛(Ba−Zn)系、カルシウム−亜鉛(Ca−Zn)系、錫(Sn)系等が挙げられ、中でもカルシウム−亜鉛(Ca−Zn)系の安定剤が好ましい。安定剤の添加量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、特に2〜5質量部であることが好ましい。
【0032】
基材フィルム11は、単層からなってもよいし、複層からなってもよいが、複層の場合、各層においてポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン樹脂との配合比が上記の範囲内にあることが好ましい。また、複層の場合、ポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン樹脂との配合比は、各層において同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
基材フィルム11の厚さは、50〜1000μmであることが好ましく、特に100〜800μmであることが好ましく、さらには150〜400μmであることが好ましい。基材フィルム11の厚さが50μm以上であることにより、所望の強度を発揮することが可能となる。また、基材フィルム11の厚さが800μm以下であることにより、路面・床面マーキング用ラミネートシート1、ひいては路面・床面マーキングシートの厚さを無駄に厚くすることなく、歩行者の歩行等に邪魔にならないものとすることができる。
【0034】
基材フィルム11のJIS K6732に準拠した直角形引裂強さは、8.0〜10.5MPaであることが好ましく、かつ切断時のヘッドの移動距離は、35〜90mmであることが好ましい。直角形引裂強さおよび切断時のヘッドの移動距離が上記の範囲であることにより、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の表面において、歩行者の靴や傘の先端部等により衝撃を受けても、適度にその衝撃を緩和することができ、もって基材フィルム11の破断を防ぐことができる。
【0035】
基材フィルム11の粘着剤層12側とは反対側の表面における、ASTM E303に準拠して測定したBPN(British Pendulum Number)は、10〜30であり、好ましくは15〜25である。BPNが上記の範囲にあることにより、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の表面において、歩行者の靴等が滑り難く、かつ、歩行者の靴等が引っ掛かり難く、したがって歩き易いものとなる。この効果は、路面・床面マーキングシートをアスファルト路面等の凹凸のある路面に適用した場合に特に有効に発揮される。
【0036】
基材フィルム11の粘着剤層12側とは反対側の表面における、JIS A1454に準拠して測定した乾燥時の滑り抵抗値(C.S.R.;Coefficient of Slip Resistance)は、0.2〜1.0であることが好ましく、特に0.3〜0.9であることが好ましく、さらには0.5〜0.8であることが好ましい。また、湿潤時の滑り抵抗値は、0.2〜0.8であることが好ましく、特に0.3〜0.7であることが好ましい。C.S.R.が上記の範囲にあることにより、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の表面において、歩行者の靴等がより滑り難く、かつ、歩行者の靴等がより引っ掛かり難く、したがってより歩き易いものとなる。
【0037】
基材フィルム11の粘着剤層12側とは反対側の表面は、エンボス加工によって凹凸が形成されていることが好ましい。その凹凸の高低差は、20〜120μmであることが好ましく、特に20〜100μmであることが好ましく、さらには30〜90μmであることが好ましい。このように基材フィルム11の表面にエンボス加工によって凹凸が形成されることにより、フィルム強度や装飾層の視認性に悪影響を与え得る研磨粒子等を使用することなく、上記のBPNを所定の範囲に設定することができ、またはC.S.R.を好ましい範囲に設定することができる。なお、凹凸の高低差が120μmを超えると、その凹凸の凹部に埃やゴミが溜まり易くなり、装飾層の視認性が低下するおそれがある。また、製造時および使用時において凹部をきっかけに基材フィルム11に裂け目が生じやすくなり、基材フィルム11が破断しやすくなるおそれがある。
【0038】
ここで、エンボス加工によって、基材フィルム11の表面のBPNを35以上にしようとすると、エンボスの凹凸の高低差を120μm以上にする必要があるため、上記の通り、基材フィルム11が破断しやすくなり、路面・床面マーキングシートとして実質的に使用できないものとなる。
【0039】
基材フィルム11は、常法によって製造することができる。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂および所望により可塑剤その他の添加剤を混合した原料を、カレンダー成形法、溶融押出成形法、キャスティング成形法等によってフィルム化することにより、基材フィルム11を得ることができる。
【0040】
2.粘着剤層
本実施形態に係る路面・床面マーキング用ラミネートシート1における粘着剤層12は、特に限定されることなく、公知の粘着剤によって構成することができる。
【0041】
粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。中でも、路面・床面マーキング用ラミネートシート1として好適な粘着力、耐久性等を発揮し得るアクリル系粘着剤が好ましい。
【0042】
アクリル系粘着剤は、重合体構成モノマー成分として、粘着性を与える主モノマー成分、接着性や凝集力を与えるコモノマー成分、架橋点や接着性改良のための官能基含有モノマー成分等を含有するアクリル系重合体(共重合体の概念を含む)を主成分とする粘着剤組成物から構成することが好ましい。
【0043】
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
コモノマー成分としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
これらの各成分を重合体構成モノマー成分として含むことにより、アクリル系重合体の粘着力、凝集力等が向上する。また、このようなアクリル系重合体は、通常、分子中に不飽和結合を有しないため、光や酸素に対する安定性の向上を図ることができる。さらに、モノマーの種類や分子量を適宜選択することにより所望の物性を有する粘着剤組成物を得ることができる。
【0047】
このような粘着剤組成物には、架橋処理を施す架橋型および架橋処理を施さない非架橋型のいずれのものを用いてもよいが、架橋型のものがより好ましい。架橋型のものを用いる場合、凝集力のより優れた粘着剤層12を形成することができる。
【0048】
架橋型粘着剤組成物に用いる架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。
【0049】
上記粘着剤組成物は、アクリル系重合体以外にも、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0050】
粘着剤層12の厚さは、特に限定されないが、20〜150μmであることが好ましく、40〜100μmであることがより好ましい。
【0051】
3.剥離シート
本実施形態に係る路面・床面マーキング用ラミネートシート1に使用される剥離シート13としては、特に限定されることなく、公知の剥離シートを使用することができる。
【0052】
剥離シート13としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0053】
剥離シート13の厚さは、通常10〜250μm程度であり、好ましくは20〜200μm程度である。また、剥離シート13における剥離剤の厚さは、通常0.05〜5μmであり、好ましくは0.1〜3μmである。
【0054】
4.路面・床面マーキング用ラミネートシートの製造方法
路面・床面マーキング用ラミネートシート1は、公知の方法によって製造することができる。例えば、最初に、剥離シート13の剥離処理面に、粘着剤層12を形成する。粘着剤層12を形成するには、粘着剤層12を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって剥離シート13の剥離処理面に塗布して乾燥させればよい。
【0055】
次に、粘着剤層12の露出面に基材フィルム11を圧着することにより、基材フィルム11と粘着剤層12と剥離シート13とを順に積層してなる路面・床面マーキング用ラミネートシート1が得られる。
【0056】
〔路面・床面マーキングシート〕
図2に示すように、本実施形態に係る路面・床面マーキングシート3は、路面または床面(以下、包括して「路面4」という。)に接着可能なマーキングシート本体2と、マーキングシート本体2の路面4側とは反対側の表面に貼付された路面・床面マーキング用ラミネートシート1(ただし、剥離シート13は剥離済み)とから構成される。路面・床面マーキング用ラミネートシート1は、路面・床面マーキング用ラミネートシート1が有する粘着剤層12を介して、マーキングシート本体2の上記表面に貼付されている。
【0057】
本実施形態におけるマーキングシート本体2は、路面4側から順に、第1の粘着剤層21と、金属層22と、第2の粘着剤層23と、基材24と、装飾層25とを積層して構成されるが、これに限定されるものではない。
【0058】
1.第1の粘着剤層
第1の粘着剤層21は、路面・床面マーキングシート3を路面4に接着させるためのものであり、したがって、路面4に対して所望の接着力を発揮する粘着剤から構成される。
【0059】
第1の粘着剤層21を構成する粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。中でも、アスファルト路面等の凹凸を有する路面4に対しても好適な粘着力、耐久性等を発揮し得るアクリル系粘着剤が好ましい。
【0060】
第1の粘着剤層21の厚さは、特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、40〜80μmであることがより好ましい。
【0061】
2.金属層
金属層22は、路面・床面マーキングシート3を、アスファルト路面等の凹凸を有する路面4に対して追従させ、その形状を保持するためのものである。凹凸を有する路面4に対する追従は、ハンマー施工により実施することができる。したがって、金属層22は、路面4に貼付した路面・床面マーキングシート3をハンマー(好ましくはゴムハンマー)で叩いたときに、路面4の凹凸に応じて変形し、かつその形状を保持することのできる材料および厚さであることが好ましい。
【0062】
かかる金属層22の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレススチール等の鉄合金、銅等が挙げられ、中でもハンマー施工により変形し易いアルミニウムであることが好ましい。また、金属層22の厚さは、10〜100μmであることが好ましく、30〜80μmであることがより好ましい。
【0063】
3.第2の粘着剤層
第2の粘着剤層23は、基材24と金属層22とを接着するためのものであり、したがって、その両者に対して所望の接着力を発揮する粘着剤から構成される。
【0064】
第2の粘着剤層23を構成する粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。中でも、路面・床面マーキングシート3内にて好適な粘着力、耐久性等を発揮し得るアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の粘着剤層12にて使用され得るアクリル系粘着剤と同様のものを使用することができる。
【0065】
第2の粘着剤層23は、粘着剤以外にも、例えば着色剤を含有していてもよい。着色剤を含有することにより、装飾層25の発色を良好にすることが可能となる。
【0066】
着色剤としては、有機顔料、無機顔料、または染料が使用できる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、ハンザエロー、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキ等が用いられる。橙色顔料としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKM等が用いられる。赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が用いられる。紫色顔料としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が用いられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等が用いられる。緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が用いられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が用いられる。体質顔料としては、例えば、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が用いられる。
【0067】
また、染料としては、例えば、塩基性染料、酸性染料、分散染料、直接染料等が用いられる。このような染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等が例示される。
【0068】
着色剤の配合量は、第2の粘着剤層23中、0.2〜1.5質量%であることが好ましく、特に0.5〜1.0質量%であることが好ましい。
【0069】
第2の粘着剤層23の厚さは、特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。
【0070】
4.基材
基材24は、路面・床面マーキングシート3にて装飾層25を形成するための基材であり、したがって、装飾層25を形成することのできる材料から構成される。
【0071】
基材24としては、特に限定されないが、路面・床面マーキングシート3として好適な強度および耐候性を有する樹脂フィルムまたは不織布から構成されることが好ましく、特に樹脂フィルムから構成されることが好ましい。
【0072】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルなどから構成された樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、安価でかつ加工が比較的容易であり、また、優れた耐候性を発揮する観点から、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分として構成された樹脂フィルムであることが好ましい。
【0073】
ポリ塩化ビニル樹脂は、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の基材フィルム11が含有するポリ塩化ビニル樹脂と同様に、可塑化されていてもよい。
【0074】
上記樹脂フィルムは、樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂のみを含有するものであってもよいが、その他の樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等をさらに含有するものであってもよい。
【0075】
上記樹脂フィルムは、着色剤を含有することが好ましい。着色剤を含有することにより、装飾層25の発色を良好にすることが可能となる。着色剤としては、第2の粘着剤層23が含有し得る着色剤と同様のものを使用することができる。
【0076】
着色剤の配合量は、基材24(樹脂フィルム)中、10〜80質量%であることが好ましく、特に20〜40質量%であることが好ましい。
【0077】
また、上記樹脂フィルムは、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の基材フィルム11と同様に、公知の添加剤を含有してもよい。
【0078】
基材24(樹脂フィルム)は、単層からなってもよいし、複層からなってもよい。
【0079】
基材24の厚さは、特に限定されないが、30〜150μmであることが好ましく、40〜80μmであることがより好ましい。
【0080】
5.装飾層
装飾層25は、所望の広告や案内表示等のマーキングを行うべく、路面・床面マーキングシート3に所望の図形、色、文字等を付与するためのものである。
【0081】
装飾層25の形成方法は装飾層25の種類によって異なるが、例えば、装飾層25をインク層(印刷層)で構成する場合には、フレキソ印刷等の凸版印刷、グラビア印刷等の凹版印刷、オフセット印刷等の平板印刷、シルクスクリーン等のスクリーン印刷、インクジェットプリンタ等の各種プリンタによる印刷などによって装飾層25を形成することができる。また、装飾層25を塗料層で構成する場合には、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スプレーガン等の塗工機によって装飾層25を形成することができる。さらに、装飾層25を転写シートからの転写で構成する場合には、転写シートの種類に応じて、基材24の表面に積層した転写シートに圧力を印加することや、基材24の表面に積層した転写シートを加熱すること等によって装飾層25を形成することができる。さらに、装飾層25を金属薄膜で構成する場合には、蒸着、スパッタリング等によって装飾層25を形成することができる。
【0082】
装飾層25は、単層からなってもよいし、複数層からなってもよい。また、装飾層25は、必ずしも基材24の全面に形成する必要はなく、基材24の所定のエリアのみに形成してもよい。
【0083】
装飾層25の厚さは、特に限定されないが、0.5〜3μmであることが好ましく、0.7〜1.5μmであることがより好ましい。
【0084】
6.剥離シート
本実施形態におけるマーキングシート本体2においては、図示はしないが、第1の粘着剤層21の金属層22とは反対側の面に剥離シートが積層されていてもよい。この剥離シートとしては、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の剥離シート13と同様のものを使用することができる。
【0085】
7.路面・床面マーキングシートの製造方法
路面・床面マーキングシート3は、公知の方法によって製造することができる。例えば、マーキングシート本体2および路面・床面マーキング用ラミネートシート1をそれぞれ製造し、路面・床面マーキング用ラミネートシート1から剥離シート13を剥離し、露出した粘着剤層12をマーキングシート本体2の装飾層25上に重ね合わせ、路面・床面マーキング用ラミネートシート1(基材フィルム11と粘着剤層12との積層体)とマーキングシート本体2とを圧着することにより製造することができる。
【0086】
マーキングシート本体2は、公知の方法によって製造することができる。例えば、金属層22および第1の粘着剤層21を有する積層体Aと、装飾層25、基材24および第2の粘着剤層23を有する積層体Bとをそれぞれ製造し、積層体Bの第2の粘着剤層23を積層体Aの金属層22に重ね合わせ、積層体Aと積層体Bとを圧着することにより製造することができる。また、積層体Aおよび積層体Bの製造時にも、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の製造時と同様に剥離シートを使用することができる。
【0087】
8.路面・床面マーキングシートの施工方法
本実施形態に係る路面・床面マーキングシート3を施工するには、一例として、第1の粘着剤層21を露出した状態にし、当該第1の粘着剤層21が路面4に接触するように、路面・床面マーキングシート3を所望の路面4に載置する。そして、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の基材フィルム11側から、路面・床面マーキングシート3をハンマー(好ましくはゴムハンマー)で叩き、金属層22の変形により路面・床面マーキングシート3を路面4の表面形状に追従させて、路面・床面マーキングシート3(第1の粘着剤層21)を路面4に密着させる。
【0088】
このとき、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の基材フィルム11は、優れた衝撃緩和性を有するため、上記のハンマー施工においても割れが生じ難い。また、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の基材フィルム11は、凹凸追従性に優れるため、他の層と一体的に、路面4の表面形状に追従することが可能である。
【0089】
上記のように路面4に施工した路面・床面マーキングシート3は、路面・床面マーキング用ラミネートシート1の基材フィルム11が高い衝撃緩和性を有するため、歩行者の靴や傘の先端部等により衝撃が加わっても破断し難い。
【0090】
また、経時によっても路面・床面マーキング用ラミネートシート1がマーキングシート本体2から浮き難いため、両者の間に埃やゴミが入り込むことが抑制され、装飾層25の良好な視認性(マーキング視認性)を維持することができる。さらに、マーキングシート本体2から浮いた路面・床面マーキング用ラミネートシート1(マーキングシート本体2が凹状になっている部分)に上記のように歩行者の靴や傘の先端部等により衝撃が加わって破断するということが防止される。
【0091】
上記のように路面4に施工した路面・床面マーキングシート3は、その露出面である表面が、所定のBPNとなるように設定されているため、歩行者の靴等が滑り難く、かつ、歩行者の靴等が引っ掛かり難く、したがって歩き易いものとなっている。
【0092】
本実施形態に係る路面・床面マーキングシート3は、アスファルト路面等の凹凸を有する路面4に対して施工したときに、上記の効果が有効に発揮される。したがって、本実施形態に係る路面・床面マーキングシート3は、アスファルトの路面4に接着されることが好ましい。また、本実施形態に係る路面・床面マーキングシート3は、歩行者が通行する路面4に対して施工したときに、上記の効果が有効に発揮される。したがって、本実施形態に係る路面・床面マーキングシート3は、歩行者が通行する路面4に接着されることが好ましい。
【0093】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0094】
例えば、マーキングシート本体2は、他の層を備えたものであってもよいし、金属層22および第2の粘着剤層23が省略されたものであってもよい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、符号を有する部材については、
図1および
図2を参照するものとする。
【0096】
〔実施例1〕
(1)基材フィルムの作製
ポリ塩化ビニル(PVC)(重合度800)100質量部、アジピン酸系ポリエステル可塑剤35質量部、カルシウム−亜鉛(Ca−Zn)系安定剤3質量部および熱可塑性ポリウレタンエラストマー(PU)90質量部からなる混合物を160℃の熱ロールにて5分間混練し、厚さ200μmのシートに成形した後、130℃程度に加熱した深さ80μmの凹凸のあるエンボスロールに通して、基材フィルム11を作製した。
【0097】
(2)路面・床面マーキング用ラミネートシートの作製
ポリエチレンラミネート紙をシリコーン系の剥離剤で剥離処理した剥離シート13(リンテック社製,製品名「SP−10NL RB−5」,厚さ150μm)の剥離処理面に、アクリル系溶剤型粘着剤(リンテック社製,P−240A)を乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させた。このようにして形成した粘着剤層12に、上記の基材フィルム11を圧着し、路面・床面マーキング用ラミネートシート1を得た。
【0098】
(3)路面・床面マーキングシートの作製
ポリエチレンラミネート紙をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−10NL RB−5」,厚さ150μm)の剥離処理面に、無機顔料を含むアクリル系溶剤型着色粘着剤(リンテック社製,製品名「PKGRN」)を乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させた。このようにして第2の粘着剤層23を形成した。この第2の粘着剤層23に、基材24として厚さ50μmのポリ塩化ビニルフィルムを圧着し、さらにポリ塩化ビニルフィルムの粘着剤層とは反対側の表面に、インクジェットプリンタにより厚さ1μmの装飾層25を印刷し、積層体Bとした。
【0099】
次に、ポリエチレンラミネート紙をシリコーン系の剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−10NL RB−5」,厚さ150μm)の剥離処理面に、アクリル系溶剤型粘着剤(リンテック社製,製品名「SK」)を乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させた。このようにして第1の粘着剤層21を形成した。この第1の粘着剤層21に、金属層22として厚さ50μmのアルミ箔を圧着し、積層体Aとした。
【0100】
さらに、積層体Bの剥離シートを剥がして、露出した第2の粘着剤層23を積層体Aのアルミ箔に重ね合わせ圧着させることで、マーキングシート本体2を作製した。最後に、上記の路面・床面マーキング用ラミネート1の剥離シート13を剥がして、露出した粘着剤層12をマーキングシート本体2の装飾層25に重ね合わせ圧着させることで、路面・床面マーキングシート3を作製した。
【0101】
〔実施例2〕
基材フィルム11の材料として、ポリ塩化ビニル(重合度800)100質量部、アジピン酸系ポリエステル可塑剤35質量部、カルシウム−亜鉛系安定剤3質量部および熱可塑性ポリウレタンエラストマー210質量部からなる混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして路面・床面マーキングシートを作製した。
【0102】
〔実施例3〕
基材フィルム11の材料として、ポリ塩化ビニル(重合度800)100質量部、アジピン酸系ポリエステル可塑剤35質量部、カルシウム−亜鉛系安定剤3質量部および熱可塑性ポリウレタンエラストマー35質量部からなる混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして路面・床面マーキングシートを作製した。
【0103】
〔比較例1〕
基材フィルム11の材料として、ポリ塩化ビニル(重合度800)100質量部、アジピン酸系ポリエステル可塑剤35質量部およびカルシウム−亜鉛系安定剤3質量部からなる混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして路面・床面マーキングシートを作製した。
【0104】
〔比較例2〕
基材フィルム11の材料として、ポリ塩化ビニル(重合度800)100質量部、アジピン酸系ポリエステル可塑剤35質量部、カルシウム−亜鉛系安定剤3質量部および熱可塑性ポリウレタンエラストマー330質量部からなる混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして路面・床面マーキングシートを作製した。
【0105】
〔比較例3〕
基材フィルム11の材料として、ポリ塩化ビニル(重合度800)100質量部、アジピン酸系ポリエステル可塑剤35質量部、カルシウム−亜鉛系安定剤3質量部、熱可塑性ポリウレタンエラストマー15質量部からなる混合物を使用した以外は、実施例1と同様にして路面・床面マーキングシートを作製した。
【0106】
〔比較例4〕
基材フィルム11のBPNを35以上にすべく、凹凸の深さが150μmのエンボスロールを使用したこと以外は、実施例1と同様に基材フィルム11を作製したところ、巻き取り時にエンボスの凹部をきっかけに基材フィルム11に多数の裂け目が発生し、路面・床面マーキング用ラミネートシート(路面・床面マーキングシート)の基材フィルムとして使用することができなかった。
【0107】
なお、各実施例または比較例で作製した基材フィルム11の原料の配合比等を表1に示す。
【0108】
〔試験例1〕(BPNの測定)
実施例および比較例で作製した路面・床面マーキング用ラミネートシートにおける基材フィルムの粘着剤層とは反対側の表面におけるBPNを、ASTM E303に準拠して測定した。測定装置としては、英国式ポータブル・スキッド・レシジタンス・テスター(WESSEX社製,振り子式 摩擦係数試験機)を使用した。結果を表2に示す。
【0109】
〔試験例2〕(滑り抵抗値の測定)
実施例および比較例で作製した路面・床面マーキング用ラミネートシートにおける基材フィルムの粘着剤層とは反対側の表面における滑り抵抗値(C.S.R.)を、乾燥時および湿潤時の両者について、JIS A1454に準拠して測定した。測定装置としては、携帯型滑り試験機(東北測器社製,ONO・PPSM測定器)を使用した。結果を表2に示す。
【0110】
〔試験例3〕(衝撃緩和性試験)
実施例および比較例で作製した路面・床面マーキング用ラミネートシートの基材フィルムについて、JIS K6732に準拠して、直角形引裂強さ(MPa)および切断時のヘッドの移動距離(mm)を測定した。測定装置としては、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンRTA−T−2M」)を使用した。結果を表2に示す。
【0111】
〔試験例4〕(実貼付試験)
実施例および比較例で作製した路面・床面マーキングシートを屋外の路面(アスファルト)に施工した。半年後の路面・床面マーキング用ラミネートシートについて、路面・床面マーキング用ラミネートシートの粘着剤とは反対側における表面を目視し、浮きの有無、破断の有無、およびマーキング視認性を確認して、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0112】
<浮きの有無>
◎…路面・床面マーキング用ラミネートシートはマーキングシート本体から全く浮いていなかった。
○…路面・床面マーキング用ラミネートシートが一部の端部でマーキングシート本体から浮いていたが、使用上問題のないレベルであった。
×…路面・床面マーキング用ラミネートシートが多数の箇所でマーキングシート本体から浮いていたか、あるいは剥がれ落ちた部分があった。
<破断の有無>
◎…路面・床面マーキング用ラミネートシートには破断箇所は全くなかった。
○…路面・床面マーキング用ラミネートシートに所々破断箇所があったが、使用上問題のないレベルであった。
×…路面・床面マーキング用ラミネートシートに多数破断箇所があった。
<マーキング視認性>
◎…路面・床面マーキング用ラミネートシートとマーキングシート本体との間には埃やゴミが入り込んでおらず、装飾層を完全に視認することができた。
○…路面・床面マーキング用ラミネートシートの表面に一部汚れがあったが、装飾層は十分に視認することができた。
×
1…路面・床面マーキング用ラミネートシートとマーキングシート本体との間に埃やゴミが入り込み、装飾層を視認することができなかった。
×
2…路面・床面マーキング用ラミネートシートの表面の汚れにより、装飾層を視認することができなかった。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表2から分かるように、実施例で作製した路面・床面マーキング用ラミネートシートの基材フィルムは、優れた衝撃緩和性を有するものであった。また、実施例で作製した路面・床面マーキングシートを屋外のアスファルトに長期間貼付した場合であっても、路面・床面マーキング用ラミネートシートのマーキングシート本体からの浮きがほとんどなく、両者の間に埃やゴミが入り込むことが抑制され、装飾層の良好な視認性が維持された。