【課題】特に初心者等の運転者は、適切な箇所へ時宜に適った安全確認を必ずしも円滑になし得ない。この場合、アクセルペダルを不作動にすると、却って走行の安全を低下させかねない。
【解決手段】車両用装置3は、車両2の走行環境を検出し、走行環境に応じた車両2における安全確認すべき位置に指標を提示する。これにより、ユーザに適切な箇所へ時宜に適った安全確認を促すことができる。また、車両用装置3は、提示した指標に対するユーザの挙動を検出し、かかる挙動に基づき車両2を制御する。このため、安全に車両2を走行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.概要>
図1は、本実施の形態に係る車両用システム1の概要を示す。車両用システム1は、車両2に搭載され、車両用装置3とプロジェクタ4とを含んで構成される。
【0022】
車両用装置3は、車両2の走行環境を判断し、プロジェクタ4を制御して、走行環境に応じた安全確認用の指標Tr1、Tr2、Tr3、及びTr4を安全確認すべき車内の位置に投影する。安全確認すべき車内の位置は、フロントウィンドウ4a、ルームミラー4b、左サイドウィンドウ4c、及び右サイドウィンドウ4dである。これにより、ユーザに対し、車両内の適切な位置へ安全確認を促すことができる。
【0023】
指標が投影される走行環境は、近年開発されつつある自動走行システム(オートパイロットシステムとも呼称される)による自動走行から手動運転に切替わる前である。例えば、曲率半径の小さい走行路(いわゆる、急カーブ)が連続する区間等に進入する前である。このような走行路は、安全性の観点から、自動走行から手動運転に切替えることが好ましいからである。
【0024】
ユーザは、自動走行に運転を任せていると、安全確認への注意力が低下している恐れがある。したがって、自動走行から手動運転に切替わる前には、車両周囲への適切な安全確認を促すことが重要である。特に、ステアリングを握る必要がない高度な自動走行を解除する前には、ユーザは、安全確認すべき車内の位置に指を差して安全確認を行う、いわゆる指差確認が安全上効果的である。単なる目視による確認よりも確認の精度が高いからである。また、指標が投影される他の走行環境として、事故多発地点がある。事故多発地点は、複雑な地形や交通量など何らかの事故を誘発する要因があると考えられ、自動走行中であっても安全確認することが好ましい。
【0025】
したがって、車両用装置3は、自動走行の解除前や事故多発地点の進入前に、安全確認すべき位置に指標を投影し、ユーザに指差確認による安全確認を促す。指差確認の動作をカメラ5で検出し、ユーザが安全確認を怠った恐れがある場合には、車両2の減速や車間を拡大させてから自動走行を解除する。これにより、自動走行を解除しても、また事故多発地点に到っても、車両2の走行を安全に保つことができる。
【0026】
このように、車両の走行環境に応じて安全確認すべき位置に指標を投影するので、ユーザに対し、適切な箇所へ時宜に適った安全確認を促すことができる。また、投影された指標に対するユーザの挙動に基づき車両2を制御するので、安全に車両2を走行させることができる。
【0027】
次に、プロジェクタ4及びカメラ5の車両2内における配置について説明する。
図2は、プロジェクタ4及びカメラ5の車両2内での配置を説明する図であり、車両2前部の断面である。
【0028】
プロジェクタ4は、車両2の天井中央付近に設置される。プロジェクタ4は、レーザ光を照射する光源を備える。プロジェクタ4の照射するレーザ光41はフロントウィンドウ4aに指標Tr1を投影する。レーザ光42はルームミラー4bに指標Tr2を投影する。レーザ光43及び44は、ユーザから見て左サイドミラー4cm及び右サイドミラー4dmに重なる左サイドウィンドウ4c及び右サイドウィンドウ4dに、指標Tr3及び指標Tr4を投影する。
【0029】
フロントウィンドウ4a、ルームミラー4b、及び左サイドミラー4cm並びに右サイドミラー4dmには、投影用のスクリーンが貼付され、プロジェクタ4からレーザ光が照射されると可視的に各指標を映し出す。
【0030】
なお、車両2断面による説明の便宜上、レーザ光43並びに44の矢印線、左サイドミラー4cm並びに右サイドミラー4dm、及び左サイドウィンドウ4c並びに右サイドウィンドウ4dを示す枠線は、重複して図示した。
【0031】
カメラ5は、車両2のダッシュボート上に設置され、光軸51がユーザに向き、ユーザの手指UFを撮影範囲に含む。
【0032】
<1−2.構成>
車両用システム1の構成を説明する。
図3は、車両用システム1の構成を示す。車両用システム1は、車両2に配置された車両用装置3及びプロジェクタ4を備える。
【0033】
車両用装置3は、車両2に配置され、マイクロコンピュータにより制御される電子制御装置である。車両2の走行環境を判断し、走行環境に応じた安全確認用の指標をフロントウィンドウ等に投影する。車両用装置3は、制御部31及び記憶部32を備える。また、車両用装置3は、車両2の各位置に配置された、カメラ5、ディスプレイ6、ナビゲーション装置7、車両制御装置8、スピーカ9、マイクロフォン10、通信部11と接続される。
【0034】
制御部31は、CPU、RAM、及びROMを備えたマイクロコンピュータである。制御部31は、車両用装置3が備える記憶部32と接続され、装置全体を制御する。制御部31の機能については後述する。
【0035】
記憶部32は、データを記憶する記憶媒体である。例えば、EEPROM(Electrical Erasable Programmable Read-Only memory)や、フラッシュメモリ、磁気ディスクを備えたハードディスクドライブ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、プログラム32aを記憶している。
【0036】
プログラム32aは、制御部31により読み出され、制御部31が車両用装置3を制御するために実行されるファームウェアである。
【0037】
プロジェクタ4は、ユーザが安全確認すべき車内の位置にレーザ光を照射し、指標(マーク)を投影(提示)する。プロジェクタ4の備える光源は、レーザ光を照射する安全確認すべき車内の位置の数だけプロジェクタ4に備えられる。各光源は、各々レーザ光を照射すべき方向へ向けて配置される。
【0038】
安全確認すべき車内の位置は、投影用フィルムが内側に貼付されたフロントウィンドウ、サイドウィンドウ、ルームミラーである。指標は、「○」や、「◎」、「□」等の中心点が明確な形状が好ましい。ユーザが指標を指し示し易いからである。
【0039】
カメラ5は、ダッシュボード上に設置され、主にユーザの上半身を撮影し、撮影した映像データを制御部31へ送信する。カメラ5の撮影範囲には、ユーザの指差確認動作が含まれる。なお、映像データは制御部31で解析され、ユーザの手の位置、指の指し示す方向が検出される。解析にはパターンマッチング等の既知の手法を利用すればよい。
【0040】
ディスプレイ6は、文字や図形等の各種情報を表示し、車両用装置3のユーザに視覚的に情報を提示する表示装置である。例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。
【0041】
ナビゲーション装置7は、衛星測位システムを利用して車両2の現在位置を検出し、後述の道路交通データ7a及び図示しない地図データに基づき目的地まで経路案内を行う装置である。
【0042】
道路交通データ7aは、道路状態や道路特性を含むデータテーブルである。道路状態は、道路が工事中や通行止め、冠水、タイヤチェーンが必要である旨等の道路の状態を示すデータである。道路特性は、複雑形状の交差点や高速道路の出入り口、自動走行の解除が必要となる地点や事故多発地点等の道路の特性を示すデータである。ナビゲーション装置7は、地図データと共に道路交通データ7aをユーザに提示することで、運転の支援を行う。また、ナビゲーション装置7は、車両2の走行する道路の道路交通データ7aを制御部31へ送信し、ユーザへ安全確認を促す契機とする。なお、道路交通データ7aは、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System;略称VICS)や、ナビゲーション装置7のメーカによるデータ更新サービス等により、最新のデータに常時更新される。
【0043】
車両制御装置8は、車両2に備えられたステアリング8a、スロットル8b、及びブレーキ8cを制御し、アダプティブクルーズコントロール(Adaptive Cruise Control;略称ACC)やレーンキーピングアシスト(Lane Keeping Assist;略称LKA)を実行し、自動走行を実現する装置である。
【0044】
ステアリング8aは、車両2の進行方向を転換する操舵装置である。
【0045】
スロットル8bは、エンジンを制御し、車両2の加速を行う増速装置である。
【0046】
ブレーキ8cは、車両2の減速を行う制動装置である。ステアリング8a、スロットル8b、及びブレーキ8cは、電子的に制御される。
【0047】
ACCは、図示しない車載レーダにより先行車を検知し、先行車と一定の車間を維持するようスロットル8b及びブレーキ8cを制御する機能である。LKAは、図示しない車載カメラにより車線を検知し、車両2が車線から逸脱しないよう、ステアリング8aを制御する機能である。自動走行には、ACCやLKAのようにユーザの運転操作を補助する機能ほか、ユーザの運転操作を必要としない自動運転システムを含む。
【0048】
スピーカ9は、声や音楽、ブザー等の音声を出力し、ユーザに音声情報を報知する。
【0049】
マイクロフォン10は、車両2内におけるユーザの声や車両用装置3周辺の音声を集音する。マイクロフォン10は、集音して得られた音声情報を制御部31に送信する。マイクロフォン10は、単一指向性が望ましい。車両2外部の道路上の騒音を不必要に集音しないためである。
【0050】
通信部11は、アンテナを備え、ネットワークを介して車両2外部に所在する後述の評価サーバ11aと無線通信を行う。通信部11は、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等の情報通信の技術を用いて評価サーバ11aと通信を行う。
【0051】
評価サーバ11aは、車両2外部に設置された情報サーバである。評価サーバ11aは、安全確認に基づく得点をユーザから収集し、得点に基づく各ユーザの順位付けを行う。評価サーバ11aは、順位付けを行うと、各ユーザに順位データを送信する。なお、順位付けは走行距離別に行ってもよい。例えば、走行距離が500km以下の順位、501kmから1000kmにおける順位、及び1001km以上での順位である。
【0052】
前述の制御部31の機能を説明する。制御部31は、検出手段として機能する走行環境検出部31a、表示制御部31b、提示手段として機能する指標提示部31c、検出手段として機能する挙動検出部31d、制御手段として機能する得点算出部31e、及び車両制御部31fを備える。
【0053】
走行環境検出部31aは、車両2の走行する環境を検出する。すなわち、車両2が走行する道路は高速道路か一般道路か、交差点が接近しているか、自動走行解除地点に接近及び到達したか、事故多発地点に接近及び通過したかを検出する。走行環境検出部31aは、ナビゲーション装置7から送信される道路交通データに基づき、車両2の走行する環境を検出する。なお、いわゆる路車間通信により、走行環境を検出してもよい。すなわち、道路上に設置された交通情報の発信装置より、車両2の走行する環境を検出してもよい。例えば、前述のVICSを利用してもよい。
【0054】
表示制御部31bは、ディスプレイ6に表示させるべき画像を生成し、生成した画像をディスプレイ6に表示させる。
【0055】
指標提示部31cは、プロジェクタ4を制御して、車両2内に指標を投影させる。すなわち、指標提示部31cは車両2内に指標を提示させる。
【0056】
挙動検出部31dは、カメラ5からの映像データに基づき、ユーザの安全確認の動作を検出する。安全確認の動作を検出する手法は、既知のパターンマッチングの手法を用いる。すなわち、ユーザが指差確認した手指のパターン画像を予め備え、カメラ5からの映像データと照合し、ユーザの手指の位置及び角度を検出する。
【0057】
得点算出部31eは、挙動検出部31dの検出結果に基づき、ユーザの安全確認の動作を点数化する。例えば、ユーザの指差確認の指先の延長線が指標の中心を所定時間だけ指している場合に、かかる指標に対する得点を満点とする。指先が指標の中心から外れる割合、及び所定時間から外れる割合に応じて満点から減点する。所定時間は、例えば1秒間である。得点算出部31eは、全指標に対して満点を獲得した場合に、ユーザの安全確認の動作に対し、10点満点を付与する。
【0058】
車両制御部31fは、車両制御装置8を制御して、自動走行の設定や解除、車両速度の増減や、先行車との車両間隔の拡縮を行う。
【0059】
<1−3.処理>
車両用システム1の処理手順を説明する。
図4及び
図5は、車両用システム1の処理手順を示す。本処理は、所定周期で繰り返し実行される。
【0060】
まず、制御部31の走行環境検出部31aが、ナビゲーション装置7から送信される道路交通データ7aに基づき、車両2が自動走行解除地点に接近しているか否か判断する(ステップS101)。
【0061】
走行環境検出部31aが自動走行解除地点に接近していると判断すると(ステップS101でYes)、表示制御部31bがディスプレイ6にメッセージを表示する(ステップS103)。メッセージは、例えば「まもなく自動運転を解除します。指標を番号順に指差確認して下さい。」である。
【0062】
一方、走行環境検出部31aは、自動走行解除地点に接近していないと判断すると(ステップS101でNo)、ナビゲーション装置7から送信される道路交通データ7aに基づき、車両2が事故多発地点に接近しているか否か判断する(ステップS102)。
【0063】
走行環境検出部31aが事故多発地点に接近していると判断すると(ステップS102でYes)、表示制御部31bがディスプレイ6にメッセージを表示する(ステップS103)。この場合のメッセージは、例えば「まもなく事故多発地点に進入します。指標を番号順に指差確認して下さい。」である。
【0064】
一方、走行環境検出部31aが、自動走行解除地点に接近していないと判断すると(ステップS101でNo)、処理は終了する。車両2が自動走行解除地点及び事故多発地点のいずれにも接近していない場合は、もはや安全確認のための指標の投影は必要ないからである。したがって、車両2が自動走行解除地点及び事故多発地点のいずれかに接近した場合(ステップS101でYes及びステップS102でYes)、処理は継続する。
【0065】
表示制御部31bがディスプレイ6にメッセージを表示すると、指標提示部31cがプロジェクタ4を制御し、フロントウィンドウ4aに指標Tr1を投影する(ステップS104)。
【0066】
指標提示部31cがフロントウィンドウ4aに指標Tr1を投影すると、挙動検出部31dがユーザの挙動、すなわち安全確認の動作を検出する(ステップS105)。
【0067】
なお、挙動検出部31dがユーザの安全確認の動作の検出時に、「正面よし」、「左よし」等の音声をスピーカ9から報知してもよい。この場合、ユーザは自らの確認動作に加え、音声でも確認できるため、いわゆる「指差称呼」を行った場合と同様の効果がある。すなわち、安全確認に対する意識水準が高まり、確認漏れを低減でき、指差確認の効果を向上できる。
【0068】
次に、指標提示部31cは、安全確認すべき車両2内の全ての位置に指標を投影したか否か判断する(ステップS106)。安全確認すべき車両2内の位置とは、フロントウィンドウ4a、ルームミラー4b、左サイドウィンドウ4c、及び右サイドウィンドウ4dである。指標提示部31cは、各位置に時間的に等間隔で順次指標を投影する。投影間隔は、例えば2秒毎である。すなわち、指標Tr1を2秒間投影したら、かかる指標の投影を終了し、指標Tr2の投影を開始する。指標提示部31cは、このような指標の投影の開始と終了を指標Tr1から指標Tr4まで順次行う。
【0069】
指標提示部31cは、安全確認すべき車両2内の全ての位置に指標を投影しないと判断すると(ステップS106でNo)、次の指標の投影を行う(ステップS104)。以下、指標提示部31cが安全確認すべき車両2内の全ての位置に指標を投影したと判断するまで、すなわち指標Tr1から指標Tr4を全て投影したと判断するまで、ステップS104からステップS106の処理が繰り返し実行される。
【0070】
一方、指標提示部31cが安全確認すべき車両2内の全ての位置に指標を投影したと判断すると(ステップS106でYes)、得点算出部31eがユーザの安全確認の点数化を行う得点処理を実行する(ステップS107)。得点処理の詳細な実行内容は後述する。
【0071】
得点算出部31eは、得点処理を実行すると、算出された得点が何点であるか判断する(ステップS108)。
【0072】
得点算出部31eが、得点が8点以上と判断すると(ステップS108で8点以上)、処理はステップS112を実行する。
【0073】
一方、得点算出部31eが、得点が6点以上8点未満と判断すると(ステップS108で6点以上8点未満)、車両制御部31fが車両制御装置8を制御して、車両速度の減速を行う(ステップS109)。得点が6点以上8点未満は必ずしも高得点でなく、ユーザは安全確認を怠った可能性がある。このため、車両2を減速させることにより、走行の安全を図ることができる。
【0074】
減少させる速度は、制限速度や交通量に応じて決めればよい。例えば、制限速度で走行していた場合は速度を制限速度の2割減とし、交通量が多い場合は速度を制限速度の3割減とすればよい。
【0075】
他方、得点が6点未満と判断すると(ステップS108で6点未満)、車両制御部31fが車両制御装置8を制御して、車両速度の減速(ステップS110)及び先行車との車両間隔の拡大(ステップS111)を行う。得点が6点未満は低得点となり、ユーザは安全確認を怠った可能性が高い。このため、車両2の減速のみならず、先行車との車両間隔を拡大させて、走行の安全を図ることができる。
【0076】
減少させる速度は、ステップS109での処理と同様でよい。拡大させる先行車との車両間隔は、走行道路の種別や交通量に応じて決めればよい。例えば、高速道路を走行していた場合は車両間隔を得点判定時の2割増とし、交通量が多い場合は車両間隔を得点判定時の3割増とすればよい。
【0077】
次に、走行環境検出部31aが、車両2が自動走行解除地点に到達したか否か判断する(ステップS112)。
【0078】
走行環境検出部31aが自動走行解除地点に到達したと判断すると(ステップS112でYes)、車両制御部31dが自動走行を解除する(ステップS113)。すなわち、設定していたACCやLKAを解除し、車両2の運転操作をユーザの手に委ねる。車両制御部31dが自動走行を解除すると、処理は終了する。
【0079】
一方、走行環境検出部31aは、自動走行解除地点に接近していないと判断すると(ステップS112でNo)、車両2が事故多発地点に通過したか否か判断する(ステップS114)。
【0080】
走行環境検出部31aが事故多発地点を通過したと判断すると(ステップS114でYes)、減速させていた車両速度及び拡大させていた車両間隔を得点処理時に復帰させる(ステップS115)。すなわち、減速及び拡大前の車速及び車間とする。なお、自動走行は続行される。事故多発地点の通過であり、自動走行解除地点への到達でないからである。また、得点に基づく減速又は拡大を行っていない場合は、車速又は車間を維持すればよい。車速及び車間を復帰させると、処理は終了する。
【0081】
なお、ステップS101において自動走行解除地点に接近した(ステップS101でYes)と判断された場合は、ステップS114において事故多発地点を通過した(ステップS114でYes)と判断されることはない。ステップS102において事故多発地点に接近した(ステップS102でYes)と判断された場合は、ステップS112において自動走行解除地点に到達した(ステップS112でYes)と判断されることはない。自動走行解除地点及び事故多発地点のいずれかに接近したと判断された後、処理がステップS112及びステップS114まで続行されるからである。
【0082】
次に、ステップS107における、ユーザの安全確認を点数化する得点処理の詳細を説明する。
図5は、得点処理の詳細を示す。
【0083】
まず、得点算出部31eが、前述の手法によりユーザの安全確認の得点を算出する(ステップS201)。
【0084】
得点算出部31eは、得点を算出すると、算出した得点を通信部11を介して評価サーバ11aへ送信する(ステップS202)。
【0085】
得点算出部31eは、算出した得点を評価サーバ11aへ送信後、評価サーバ11aから返信される順位データを受信する(ステップS203)。
【0086】
得点算出部31eは、算出した得点及び評価サーバ11aから受信した順位をディスプレイ6に表示する(ステップS203)。
【0087】
得点算出部31eが、得点及び順位をディスプレイ6に表示すると、処理は
図4の処理に戻る。すなわち、
図4のステップS108以下の処理が実行される。
【0088】
次に、
図5のステップS204における得点及び順位の表示例を説明する。
図6は、ディスプレイ6に表示された得点及び順位の表示例である。
【0089】
ユーザが安全確認の動作により獲得した得点を示す得点メッセージSc、及び得点に基づく順位を示す順位メッセージRkが、ディスプレイ6に表示される。
【0090】
得点メッセージScは、例えば「7.99点です。」である。得点メッセージScは、得点算出部31eが算出した得点に基づいて作成される。
【0091】
順位メッセージRkは、例えば「全国で5,433位です。」である。順位メッセージRkは、評価サーバ11aから送信される順位データに基づいて作成される。
【0092】
ユーザは得点メッセージScを参照することで、自らの安全確認の良否を認識でき、今回の安全確認動作の反省、及び次回の安全確認動作の向上に役立てることができる。
【0093】
ユーザは順位メッセージRkを参照することで、自らの安全確認の良否を他者と比較でき、次回の安全確認動作の向上の励みにできる。
【0094】
以上の通り、本実施の形態の車両用システム1の車両用装置3は、車両2の走行環境を検出し、走行環境に応じた車両2における安全確認すべき位置に指標を提示する。これにより、ユーザに適切な箇所へ時宜に適った安全確認を促すことができる。また、車両用装置3は、提示した指標に対するユーザの挙動を検出し、かかる挙動に基づき車両2を制御する。特に、ユーザが安全確認を怠った恐れのある場合は、車両2の減速や車間を拡大させる。このため、安全に車両2を走行させることができる。
【0095】
また、本実施の形態の車両用システム1の車両用装置3は、自動走行状態が解除される際に指標を提示する。このため、ユーザが自動走行中に安全確認に対する注意力が低下していた場合であっても、安全に自動走行を解除できる。
【0096】
また、本実施の形態の車両用システム1の車両用装置3は、指標に対するユーザの挙動として、ユーザの指差確認の動作を検出する。このため、ユーザが確実な安全確認を行ったか検出でき、適切に車両2を制御できる。
【0097】
また、本実施の形態の車両用システム1の車両用装置3は、指標を安全確認すべき複数の位置に順次提示する。このため、指標を安全確認すべき位置に順次提示するので、ユーザに適切な順序で安全確認を促すことができる。
【0098】
また、本実施の形態の車両用システム1の車両用装置3は、車両2に備わるフロントウィンドウ、サイドウィンドウ、及びルームミラーのいずれかに指標を提示する。このため、ユーザに適切な位置の安全確認を促すことができる。
【0099】
<2.変形例>
以上、本発明の実施の形態を示した。しかし、本発明は上記実施の形態に限定されることはない。変形可能である。以下、変形例を説明する。なお、上記及び以下に説明される実施の形態は、適宜組み合わせできる。
【0100】
上記実施の形態は、ユーザの安全確認の挙動に基づき車両2を制御した。しかし、車両2の制御を伴わなくともよい。自動走行中でなくともよい。適切な箇所へ時宜に適った安全確認を行えば、ユーザ自ら適切に車両2を制御できるからである。
【0101】
すなわち、車両2の発進時や走行中における適切な時期において、適切な位置に安全確認の指標を投影すればよい。これにより、運転経験の浅い初心者や、判断力の低下した高齢者の運転支援に効果的である。なお、手動運転中の安全確認は、ステアリングから手を放す必要のある指差確認ではなく、目視を促すべきである。なお、適切な時期とは、高速道路の昇り降り時、車線の変更時、交差点通過の直前等である。適切な位置とは、車両2内におけるフロントウィンドウ、サイドウィンドウ、ルームミラー等である。
【0102】
また、安全確認の指標の投影は、音声によるユーザへの報知と共に行うことが好ましい。音声による報知とは、例えば、「まもなく交差点を右折です。指標位置の安全を目視にて確認して下さい。」や、「次の順序で安全確認して下さい。正面、ルームミラー、左サイドウィンドウ、右サイドウィンドウ。」である。この場合、ユーザは、指標が投影されることを事前に認識し、心身の準備を整えることができる。ユーザに対し適切な箇所へ時宜に適った安全確認を促すことができるので、ユーザは、車両2内のどの箇所を目視すべきか容易に把握でき、目視すべき位置や時期に迷うことがない。
【0103】
他の変形例を示す。上記実施の形態では、カメラ5で指を解析するとしたが、モーションセンサを用いてもよい。この場合、ユーザの手指UFの動きの軌跡や速度も検出でき、安全確認の適切さをより詳細に検出できる。
【0104】
また、上記実施の形態では、指標を番号順に投影したが、全ての指標を同時に投影してもよい。
【0105】
また、上記実施の形態では、プロジェクタにより指標をウィンドウやミラーに投影したが、ウィンドウやミラーに表示機能を付加し、ウィンドウやミラーが指標を表示してもよい。指標は、投影や表示等により、ユーザに提示されればよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、安全確認すべき車両2内の位置は、フロントウィンドウ4a、ルームミラー4b、左サイドウィンドウ4c、及び右サイドウィンドウ4dとした。しかし、これらの位置には限られない。ディスプレイ6でもよい。ダッシュボートや天井に設置されたヘッドアップディスプレイでもよい。リアウィンドウでもよい。車両2外のサイドミラーでもよい。車両2外の障害物でもよい。要するに、安全確認すべき車両2内外の位置であればよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、車両用システム1は、車両に搭載されると説明したが、車両には自動車のほか二輪車、鉄道、航空機、及び船舶等の輸送用機器を含む。また、車両には民生用のほか軍事用を含み、自家用のほか業務用を含む。また、車両用システム1は、車両のみならずエレベータやエスカレータ等の昇降機に設置してもよい。要するに、安全確認が必要となる場所に設置すればよい。