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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-185336(P2015-185336A)
(43)【公開日】2015年10月22日
(54)【発明の名称】多極コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20150925BHJP
【FI】
   H01R13/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-60185(P2014-60185)
(22)【出願日】2014年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅之
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087GG13
5E087JJ08
5E087JJ09
5E087RR25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハウジングに対する端子の挿入作業を容易にすることができる多極コネクタを提供すること。
【解決手段】各々に端子が挿入される空間(キャビティ)11が形成された複数の副ハウジング10と、これら複数の副ハウジング10の外側に設けられる主ハウジング20と、を備える多極コネクタ1とする。当該多極コネクタ1の主ハウジング20には、相手方コネクタの嵌合方向における副ハウジング10の移動を規制する規制部が形成されているとよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に端子が挿入される空間が形成された複数の副ハウジングと、
前記複数の副ハウジングの外側に設けられる主ハウジングと、
を備えることを特徴とする多極コネクタ。
【請求項2】
前記主ハウジングには、相手方コネクタの嵌合方向における前記副ハウジングの移動を規制する規制部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多極コネクタ。
【請求項3】
前記複数の副ハウジングのうち、前記規制部側に配置されるものには、当該規制部に係合する第一係合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の多極コネクタ。
【請求項4】
前記複数の副ハウジングのそれぞれは、一方側に前記第一係合部が、その反対側に当該第一係合部が係合可能な第二係合部が形成された同じ形状を有し、
前記複数の副ハウジングのうち、前記規制部側に配置される副ハウジングの前記第一係合部は当該規制部に係合されており、それ以外の副ハウジングの前記第一係合部は隣接する副ハウジングの前記第二係合部に係合されていることを特徴とする請求項3に記載の多極コネクタ。
【請求項5】
前記主ハウジングは、第一主ハウジングと第二主ハウジングを有し、
前記複数の副ハウジングは、前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングに囲まれる領域内に収容されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多極コネクタ。
【請求項6】
前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングは、その内側の領域の大きさを変化させるように、一方に対して他方がスライド自在であることを特徴とする請求項5に記載の多極コネクタ。
【請求項7】
前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングによって形成される内側の領域を最も小さくすることにより、前記複数の副ハウジングが密着することを特徴とする請求項6に記載の多極コネクタ。
【請求項8】
前記第一主ハウジングには、前記副ハウジングの前記第一係合部が係合可能であり、相手方コネクタの嵌合方向における前記副ハウジングの移動を規制する第一嵌合部が形成され、
前記第二主ハウジングには、前記副ハウジングの前記第一係合部が係合可能であり、相手方コネクタの嵌合方向における前記副ハウジングの移動を規制する第二嵌合部が形成され、
前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングによって形成される内側の領域を最も小さい状態としたとき、前記第一嵌合部と前記第二嵌合部により、前記規制部が形成されることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の多極コネクタ。
【請求項9】
前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングによって形成される内側の領域が最も小さい状態から、当該領域が大きくなる方向に少なくとも一方の主ハウジングを移動させた状態において、
当該領域内に位置する前記複数の副ハウジングのうち、前記第一嵌合部または前記第二嵌合部に係合する前記第一係合部を有するものは、当該第一嵌合部または第二嵌合部に対して当該第一係合部をスライドさせることにより、互いの間隔を変化させることが可能であることを特徴とする請求項8に記載の多極コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子が固定される複数の空間(キャビティ)が形成されたハウジングを備える多極コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
多極コネクタのハウジングへ端子を挿入する際、隣接する空間に既に端子が挿入されていると、その端子に取り付けられた電線が邪魔になる。下記特許文献1には、複数の端子を保持治具に保持させることにより、当該複数の端子を一括してハウジングに挿入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−57279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような保持治具を用いて多極コネクタを作製する構成とすると、予め複数の端子を保持治具に保持させる工程が必要になる。また、保持治具を作製するコストが嵩む。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ハウジングに対する端子の挿入作業を容易にすることができる多極コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかる多極コネクタは、各々に端子が挿入される空間が形成された複数の副ハウジングと、前記複数の副ハウジングの外側に設けられる主ハウジングと、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記主ハウジングには、相手方コネクタの嵌合方向における前記副ハウジングの移動を規制する規制部が形成されているとよい。
【0008】
前記複数の副ハウジングのうち、前記規制部側に配置されるものには、当該規制部に係合する第一係合部が形成されているとよい。
【0009】
前記複数の副ハウジングのそれぞれは、一方側に前記第一係合部が、その反対側に当該第一係合部が係合可能な第二係合部が形成された同じ形状を有し、前記複数の副ハウジングのうち、前記規制部側に配置される副ハウジングの前記第一係合部は当該規制部に係合されており、それ以外の副ハウジングの前記第一係合部は隣接する副ハウジングの前記第二係合部に係合されているとよい。
【0010】
前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングは、その内側の領域の大きさを変化させるように、一方に対して他方がスライド自在であるとよい。
【0011】
前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングによって形成される内側の領域を最も小さくすることにより、前記複数の副ハウジングが密着するようにするとよい。
【0012】
前記第一主ハウジングには、前記副ハウジングの前記第一係合部が係合可能であり、相手方コネクタの嵌合方向における前記副ハウジングの移動を規制する第一嵌合部が形成され、前記第二主ハウジングには、前記副ハウジングの前記第一係合部が係合可能であり、相手方コネクタの嵌合方向における前記副ハウジングの移動を規制する第二嵌合部が形成され、前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングによって形成される内側の領域を最も小さい状態としたとき、前記第一嵌合部と前記第二嵌合部により、前記規制部が形成されるとよい。
【0013】
前記第一主ハウジングと前記第二主ハウジングによって形成される内側の領域が最も小さい状態から、当該領域が大きくなる方向に少なくとも一方の主ハウジングを移動させた状態において、当該領域内に位置する前記複数の副ハウジングのうち、前記第一嵌合部または前記第二嵌合部に係合する前記第一係合部を有するものは、当該第一嵌合部または第二嵌合部に対して当該第一係合部をスライドさせることにより、互いの間隔を変化させることが可能であるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる多極コネクタのハウジングは、端子が挿入される空間(キャビティ)が形成された副ハウジングを、副ハウジングの外側に設けられる主ハウジングとは別に備える構成であるため、副ハウジング同士を離した状態で端子を挿入したり、副ハウジング一つずつに端子を挿入したりすることができるため、端子の挿入作業が容易である。
【0015】
主ハウジング部に相手方コネクタの嵌合方向における副ハウジングの移動を規制する規制部が形成されていれば、相手方コネクタが着脱される際に副ハウジングが移動してしまうことが防止される。その手法としては、複数の副ハウジングのうち、規制部側に配置されるものに、当該規制部に係合する第一係合部を形成することが例示できる。
【0016】
複数の副ハウジングの全てが第一係合部および第二係合部を有する同じ形状とした上で、当該複数の副ハウジングのうち、規制部側に配置される副ハウジングの第一係合部が規制部に係合され、それ以外の副ハウジングの第一係合部が隣接する副ハウジングの第二係合部に係合される構成とすれば、規制部側の副ハウジングが規制部によって相手方コネクタの嵌合方向に移動しないように規制され、それ以外の副ハウジングが規制部に規制された副ハウジングによって相手方コネクタの嵌合方向に移動しないように規制された状態とすることができる。
【0017】
主ハウジングが第一主ハウジングと第二主ハウジングに分割された構造とすれば、主ハウジングに対する副ハウジングの組み付けが容易である。かかる構造としては、第一主ハウジングと第二主ハウジングの一方が他方に対してスライド自在とすることが例示できる。この場合、第一主ハウジングと第二主ハウジングによって形成される内側の領域を最も小さくすることにより、複数の副ハウジングが密着する構造とすれば、両主ハウジングを近づけることにより、副ハウジング同士が密着した状態となるから、主ハウジングに対する副ハウジングの組み付けが容易である。
【0018】
第一主ハウジングおよび第二主ハウジングの両方に相手方コネクタの嵌合方向における副ハウジングの移動を規制する要素(第一嵌合部、第二嵌合部)が形成されていれば、一方の主ハウジングに対し少なくとも一部の副ハウジングを係合させた状態で端子の挿入作業を行うことができる。また、第一主ハウジングと第二主ハウジングが完全に組み立てられていない状態(第一主ハウジングと第二主ハウジングによって形成される内側の領域が最小でない状態)で、端子の挿入作業を行うことができる。また、一方の主ハウジングに対し副ハウジングを位置決めすることができるから、両主ハウジングを近づけるだけで、副ハウジング同士が密着し、多極コネクタが完成することになる。
【0019】
第一主ハウジングと第二主ハウジングによって形成される内側の領域が最も小さい状態から、当該領域が大きくなる方向に少なくとも一方の主ハウジングを移動させた状態(第一主ハウジングと第二主ハウジングが完全に組み立てられていない状態)において、嵌合部のいずれかに係合する第一係合部を有する副ハウジングが、当該嵌合部に対してスライドさせることができるようにすれば、第一主ハウジングと第二主ハウジングが完全に組み立てられていない状態において副ハウジング同士の間隔を広げた上で端子の挿入作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタの外観図である。
図2】本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタの断面図(図1のA−A線断面図)である。
図3】本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタが備える副ハウジングの外観図である。
図4】本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタが備える第一主ハウジングの外観図である。
図5】本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタが備える第二主ハウジングの外観図である。
図6】本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタのハウジングが組み付けられる前の状態を示した外観図である。
図7】本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタの第一主ハウジングと第二主ハウジングの内側の領域(当該領域を最小としない状態)において、端子が挿入しやすくなるように各副ハウジング同士を離した状態を示した外観図である。
図8】本発明の第二実施形態にかかる多極コネクタの外観図である。
図9】本発明の第二実施形態にかかる多極コネクタが備える副ハウジングの外観図である。
図10】本発明の第二実施形態にかかる多極コネクタにおいて、ある副ハウジングと、その上または下に位置する副ハウジングの幅方向位置をずらした状態を示した図である。
図11】第二係合部である各凹部が幅方向に開放していない形状の副ハウジングを示した外観図である。
図12図11に示した副ハウジングを用いた多極コネクタにおいて、ある副ハウジングと、その上または下に位置する副ハウジングが一体となって幅方向にスライドする様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、特に明示した場合を除き、以下の説明において単に前後方向とは図1に示すX方向(相手方コネクタが嵌合する側を前とし、その反対側を後とする)をいい、幅方向とは図1に示すY方向をいい、上下方向(高さ方向)とは図1に示すZ方向をいうものとする。当該各方向は、多極コネクタ1の設置方向を限定するものではない。
【0022】
図1および図2に示す本発明の第一実施形態にかかる多極コネクタ1は、複数の副ハウジング10および主ハウジング20を備える。図3に外観を示す副ハウジング10は、内側に空間が形成された断面略方形状(角筒状)の部材である。副ハウジング10の内側に形成された空間は、端子90が挿入される空間(以下キャビティ11と称する)である。キャビティ11の大きさや、その内周面の形状等は、挿入される端子90に応じて決まる。各副ハウジング10に対する端子90の固定構造は、端子90をキャビティ11内に挿入することによって端子90がキャビティ11内に固定され、一旦固定された端子90が容易に抜けないような構造であればどのような構造であってもよい(公知の端子固定構造が適用できる)ため、説明を省略する。
【0023】
副ハウジング10には第一係合部12が形成されている。本実施形態における第一係合部12は、キャビティ11を形成する一側壁(本実施形態では下側壁)の外面から突出して形成された二つの凸部である。各凸部は、所定の間隔を隔てて位置する。前後方向における当該凸部間の隙間(互いの凸部に近い方の面同士の距離)の大きさは、後述する第一嵌合部331の大きさと略等しい。また、当該凸部の外側の面同士の距離(互いの凸部に遠い方の面同士の距離)は、後述する第二嵌合部431の大きさと略等しい。
【0024】
本実施形態にかかる多極コネクタ1が備える複数の副ハウジング10は、全てが同じ形状である。副ハウジング10は端子90が挿入される部分であるため、多極コネクタ1は、その極数分、同形状の副ハウジング10を備える。
【0025】
主ハウジング20は、複数の副ハウジング10の外側に設けられる部材である。本実施形態における主ハウジング20は、第一主ハウジング30および第二主ハウジング40を有する。両主ハウジングは、前後方向から見て略「コ」の字(略「U」字)状に形成された部材である。
【0026】
図4に外観を示す第一主ハウジング30は、第一上壁部31、第一側壁部32、および第一下壁部33を有する。第一上壁部31は、平板状の部分であって、その前後方向における両側に、下方に向かって突出した第一ガイド部311が形成されている。第一側壁部32は、第一上壁部31の一側から下方に向かって延びる平板状の部分である。第一下壁部33は、第一側壁部32の下側から第一上壁部31に対向するように(上下方向で第一上壁部31に重なるように)延びる平板状の部分である。第一下壁部33は、前後方向における大きさが、第一ガイド部311を含めた第一上壁部31の前後方向における大きさよりも小さい。また、前後方向における第一下壁部33の上面中央からは、上方に向かって突出した突起である第一嵌合部331が形成されている。前後方向における第一嵌合部331の大きさは、第一係合部12である二つの凸部間の隙間と略等しい。また、第一嵌合部331の突出高さは、第一係合部12である二つの凸部の突出高さと略等しい。また、上下方向における第一上壁部31(下面)と第二下壁部43における第一嵌合部331(上面)の間隔は、第一係合部12である突起部を除く副ハウジング10(角筒状の部分)の大きさと略等しい。
【0027】
図5に外観を示す第二主ハウジング40は、第二上壁部41、第二側壁部42、および第二下壁部43を有する。第二上壁部41は、平板状の部分であって、その前後方向における大きさが、上記第一上壁部31の第一ガイド部311間の隙間と略等しい。また、その上下方向の大きさ(厚み)は、上記第一上壁部31のガイド部の突出高さと略等しい。第二側壁部42は、第一上壁部31の一側から下方に向かって延びる平板状の部分である。第二下壁部43は、第二側壁部42の下側から第二上壁部41に対向するように(上下方向で第二上壁部41に重なるように)延びる平板状の部分である。第二下壁部43の前後方向における中央には、大きく切り欠かれた第二嵌合部431が形成されている。前後方向における第二嵌合部431の大きさは、上記第一嵌合部331の大きさよりも大きい。また、上下方向における第二嵌合部431の大きさは、第一嵌合部331の突出高さと略等しい。また、第二下壁部43の前後方向における両側には、下方に向かって突出した第二ガイド部432が形成されている。前後方向における第二ガイド部432間の隙間の大きさは、上記第一下壁部33の大きさと略等しい。また、上下方向における第二上壁部41(下面)と第二下壁部43(上面)の間隔は、第一係合部12である突起部を除く副ハウジング10(角筒状の部分)の大きさと略等しい。
【0028】
後述するように第一主ハウジング30と第二主ハウジング40が組み付けられた状態において、第一嵌合部331を前後方向に二分する平面と第二嵌合部431を前後方向に二分する平面は一致する。前後方向における第二嵌合部431の大きさは、上記第一嵌合部331の大きさよりも大きいのであるから、第一嵌合部331と第二嵌合部431の間には幅方向に長い隙間(以下規制部21と称する)が二つ生ずる。前後方向における当該各規制部21の大きさは、第一係合部12である各凸部の大きさと略等しい。また、前後方向における各規制部21の間隔は、第一係合部12である各凸部の間隔と略等しい。つまり、第一係合部12である二つの凸部は、各規制部21内に入り込むことが可能である。
【0029】
このように構成される副ハウジング10と主ハウジング20(両ハウジングによって構成されるハウジングと端子90付き電線91)は次のように組み立てられる。まず、第一主ハウジング30と第二主ハウジング40が、それぞれの開口する側(第一側壁部32や第二側壁部42の反対側)を近づけるようにして組み合わされる。具体的には、第二主ハウジング40の第二上壁部41を第一主ハウジング30の第一ガイド部311の内側に、第一主ハウジング30の第一下壁部33を第二主ハウジング40の第二ガイド部432の内側に挿入するようにして組み合わせる。つまり、一方の主ハウジングは他方の主ハウジングに対して幅方向にスライド自在である。第一主ハウジング30の第一上壁部31と第二主ハウジング40の第二上壁部41、および第一主ハウジング30の第一下壁部33と第二主ハウジング40の第二下壁部43の上下方向に重なる領域が大きくなればなるほど、両主ハウジングによって囲まれる内側の領域(空間)が小さくなる。つまり、少なくともいずれか一方の主ハウジングをスライドさせることによって、両該領域の大きさを変化させることができる。
【0030】
両主ハウジングを組み合わせる前、図6に示すように、両主ハウジングの内側に、複数の副ハウジング10が幅方向に並んで位置するようにする。第一係合部12である突起同士の隙間には第一主ハウジング30の第一嵌合部331が嵌まり込むことが可能であり、第二主ハウジング40の第二嵌合部431には第一係合部12である二つの突起が嵌まり込むことが可能である。つまり、各副ハウジング10は、その第一係合部12を一方の主ハウジングの嵌合部に係合させることができる。より具体的には、第一嵌合部331または第二嵌合部431に対して第一係合部12をスライドさせることが可能である。
【0031】
第一主ハウジング30の第一上壁部31と第二主ハウジング40の第二上壁部41、および第一主ハウジング30の第一下壁部33と第二主ハウジング40の第二下壁部43の上下方向に重なる領域が小さい状態、すなわち両主ハウジングによって形成される内側の領域が最も小さい状態でないときには、その内側に位置する各副ハウジング10が当該領域の大きさ分幅方向に動きうる。したがって、両主ハウジングによって形成される内側の領域を最小としない状態では、各副ハウジング10を幅方向にスライドさせることにより、副ハウジング10同士の間隔を広げること(各副ハウジング10同士を離すこと)が可能である。図7に示すように、第一主ハウジング30の第一上壁部31と第二主ハウジング40の第二上壁部41、および第一主ハウジング30の第一下壁部33と第二主ハウジング40の第二下壁部43を上下方向にわずかに重ならせた状態とすれば、その分、各副ハウジング10同士の間隔を広げることが可能である。
【0032】
かかる状態で、端子90付き電線91の端子90を、各副ハウジング10に形成されたキャビティ11に挿入し、固定する。副ハウジング10同士の間隔が広げられているため、ある端子90をある副ハウジング10に固定した後も、それに隣接する副ハウジング10に端子90を挿入する作業が行いやすい。つまり、隣接する副ハウジング10に固定された端子90に接続された電線91が、端子挿入作業の邪魔になるのを抑制することができる。また、各副ハウジング10に形成された第一係合部12は、第一主ハウジング30の第一嵌合部331、および第二主ハウジング40の第二嵌合部431の少なくともいずれか一方に係合されており、前後方向の動きが規制されている。そのため、端子90を副ハウジング10に挿入した後、端子90の固定が確実になされているかを確認する作業(例えば、電線91を引っ張り、端子90がキャビティ11から抜け出ないか)を行うことができる。つまり、第一係合部12は、第一嵌合部331および第二嵌合部431の両方に係合可能な構造であるため、副ハウジング10を幅方向にスライドさせ、各副ハウジング10同士の間隔を調整することができるし、端子90の固定が確実になされているかを確認する作業を行うこともできる。
【0033】
全ての副ハウジング10のキャビティ11に端子90を固定したあと、第一主ハウジング30と第二主ハウジング40の少なくとも一方を他方に近づけるように幅方向にスライドさせることにより、副ハウジング10同士(側壁部同士)が近づいていく。両主ハウジングを最大限近づけ、両主ハウジングによって形成される内側の領域が最小となる状態とすると、各副ハウジング10が密着した状態となる。また、主ハウジングを最大限近づけると、第一嵌合部331と第二嵌合部431の間には上述した二つの規制部21が形成されることになるが、副ハウジング10の第一係合部12である二つの突起のそれぞれは、当該規制部21内に入り込んだ状態となる。このように、二つの主ハウジングの少なくとも一方を他方に近づけるだけで、両副ハウジング10が密着して多極コネクタ1が完成するため、組立作業が容易である。なお、図示しないが、第一主ハウジング30と第二主ハウジング40を最大限近づけた状態としたとき、両ハウジングが離れないようにするためのロック機構を設けておくとよい。
【0034】
このようにして主ハウジング20と複数の副ハウジング10によって構成される多極コネクタ1が作製される。第一主ハウジング30と第二主ハウジング40によって形成される内側の領域に収容された各副ハウジング10の前後方向の動きは、それぞれの第一係合部12が規制部21に係合されることによって規制されている。したがって、相手方コネクタを着脱させたときに、副ハウジング10が前後方向に動いてしまうこと(第一主ハウジング30と第二主ハウジング40によって形成される内側の領域外に出てしまうこと)はない。
【0035】
なお、主ハウジング20(第一主ハウジング30と第二主ハウジング40の少なくともいずれか一方)には、本実施形態にかかる多極コネクタ1と相手方コネクタとを嵌合させる(嵌合状態を維持する)ための構造が設けられているが、公知の構造を設ければよいため、説明および図示を省略する。
【0036】
また、上記組立の手順は、第一主ハウジング30と第二主ハウジング40の間に副ハウジング10を位置させた状態で端子90を副ハウジング10に固定するものであることを説明したが、予め複数の副ハウジング10のそれぞれに端子90を固定したもの(電線91・端子90・副ハウジング10組)を作製しておき、各副ハウジング10を両主ハウジングによって形成される内側の領域に収容する手順としてもよい。このような場合であっても、一つのキャビティ11のみが形成された副ハウジング10と端子90とを固定する作業が、別の端子90が固定された電線91に妨げられることはないから、従来に比して作業性が向上することになる。
【0037】
以下、本発明の第二実施形態にかかる多極コネクタ2について、上記第一実施形態にかかる多極コネクタ1と異なる点を中心に説明する。上記第一実施形態にかかる多極コネクタ1は、複数の副ハウジング10が幅方向に一列に並んだもの(一段のもの)であることを説明したが、図8に示す本実施形態にかかる多極コネクタ2は、複数の副ハウジング10aが上下方向にも並ぶもの(複数段のもの)である。
【0038】
図9に示すように、本実施形態における副ハウジング10aには第二係合部13aが形成されている。第二係合部13aは、キャビティ11を形成する一側壁であって、第一係合部12とは反対側の側壁(本実施形態では上側壁)の外面から突出して形成された二つの凹部である。当該凹部は、上記第一係合部12である凸部がほぼ隙間なく係合可能な大きさである。つまり、第二係合部13aである二つの凹部は、第一係合部12である二つの凸部と同じ間隔で形成されており、各凹部内に各凸部が嵌まり込むことができる(図9(b)参照)。本実施形態では、各凹部は幅方向に開放している。
【0039】
本実施形態にかかる多極コネクタ2では、主ハウジング20の規制部21側に配置される副ハウジング10a、すなわち一段目(最も下方)に配置される一または複数の副ハウジング10aは、その第一係合部12が規制部21に係合される。一方、それ以外の副ハウジング10a、すなわち二段目以上に配置される一または複数の副ハウジング10aは、その第一係合部12が、それに隣接する(下方に位置する)副ハウジングの第二係合部13aに係合される。主ハウジング20の規制部21側に配置される一段目の副ハウジング10aは、第一係合部12が規制部21に係合されることによってその前後方向の動きが規制される。二段目の副ハウジング10aは、第一係合部12が一段目の副ハウジング10aの第二係合部13aに係合され、当該一段目の副ハウジング10aの前後方向の動きは規制されているのであるから、それとともに前後方向の動きが規制される。つまり、二段目の副ハウジング10aは、一段目の副ハウジング10aを介して前後方向の動きが規制されているといえる。三段目以上の副ハウジング10aが設けられる場合には、それより下に配置される副ハウジング10aを介して前後方向の動きが規制されることになる。
【0040】
このように、本実施形態における各副ハウジング10aには、第一係合部12が係合可能な第二係合部13aが形成されているため、上下方向に複数段の副ハウジング10aが配置された多極コネクタ2が得られる。最も上方(上段)に配置される副ハウジング10aの第二係合部13aは使用しないことになるが、通常は全ての副ハウジング10aを同一形状とした方がコスト面において有利(副ハウジング10aを成形する型が一種類で済む)であるし、最も上方(上段)に配置される副ハウジング10aに第二係合部13aが形成されていてもコネクタの品質上問題がないため、全てのハウジングを同一形状とすることが望ましい。
【0041】
また、本実施形態のように、第二係合部13aである各凹部が幅方向に開放している形状であれば、図10に示すように、端子90を固定する際、ある副ハウジング10aと、その上または下に位置する副ハウジング10aの幅方向位置をずらすことができる。したがって、各副ハウジング10aに端子90を挿入する作業が容易になるという利点がある。
【0042】
これに対し、図11に示す副ハウジング10bのように、第二係合部13bである各凹部が幅方向に開放していない形状であり、第一係合部12である各凸部が各凹部に入り込むことが可能な形状(図11(b)参照)とすれば、上下方向に並ぶ複数の副ハウジング10bが一体となってスライドする。したがって、図12に示すように、第一主ハウジング30と第二主ハウジング40を近づける際、上下方向に並ぶ複数の副ハウジング10bが一体となって幅方向にスライドするから、全ての副ハウジング10bが密着するように第一主ハウジング30と第二主ハウジング40の組み立てる作業が容易になるという利点がある。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1、2 多極コネクタ
10、10a、10b 副ハウジング
11 キャビティ
12 第一係合部
13a、13b 第二係合部
20 主ハウジング
21 規制部
30 第一主ハウジング
331 第一嵌合部
40 第二主ハウジング
431 第二嵌合部
90 端子
91 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12