【解決手段】ソケット13と、ソケット13を覆うように取り付けられたシェル28と、ソケット13及びシェル28とで構成される空洞にカード部材と共に抜き差し方向に移動可能なスライダー40を有し、カード部材が挿し込まれた際に、スライダー40を所定の位置で係止し、且つ、カード部材を抜き出す際に、係止の解除を行なうロック機構12を備えたカード用コネクタ10において、ロック機構12は、カム部54と、クランクピン35とで構成され、カム部54は、金属性材料で形成されている。
ソケットと、前記ソケットを覆うように取り付けられたシェルと、前記ソケット及び前記シェルとで構成される空洞にカード部材と共に抜き差し方向に移動可能なスライダーを有し、前記カード部材が挿し込まれた際に、前記スライダーを所定の位置で係止し、且つ、前記カード部材を抜き出す際に、前記係止の解除を行なうロック機構を備えたカード用コネクタにおいて、
前記ロック機構は、カム部と、クランクピンとで構成され、
前記カム部は、金属性材料で形成されていることを特徴とするカード用コネクタ。
前記カム部は、前記ソケット又は前記シェルに設けられた前記クランクピンが有するピン端部と係止される係止部を有し、前記スライダーと共に金属性材料で一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
前記クランクピンは、前記シェルと共に金属性材料で一体に成形されており、一方が前記シェルと繋がれ、他方が自由端となっており、弾性変形可能とされていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカード用コネクタ。
前記スライダーには、装着されるカード部材を位置決め固定するカード部材固定部が前記スライダーと共に金属性材料で一体に成形されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されたメモリカード用コネクタの発明に代表されるように、プッシュプッシュタイプの機構では、ループ状のカム、例えばハートカムが用いられ、このハートカムに沿ってピン部材が移動することで、カード部材の固定及び固定の解除がなされている。このとき、このハートカムは複雑な形状をしているため、樹脂材料で形成されている。そのため、カード部材が装着された時に、カード部材が無理に引き抜かれる場合等、ハートカムに大きな力が加わり、破損するおそれがある。ハートカムが破損してしまうと、カード用コネクタ全体の使用が不可能となり、修理や交換等が必要となる。
【0007】
さらに、ピン部材は、弾性変形可能であり、且つ、高い強度を必要とするため、金属性材料で形成されている。そのため、金属製のピン部材が樹脂製のハートカムを摺動すると、このピン部材によりハートカムが削られ、変形や破損のおそれがある。
【0008】
本発明はこのような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、ロック機構を構成するカムの部分を金属性材料で形成することで、カード部材が引っ張られることによる破損を抑制し、また、ピン部材が摺動しても変形等を抑制するカード用コネクタを提供することを目的とする。さらに、カムの部分が形成されるスライダーと一体に形成することで、部品点数を減らし、組み立て易いカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様のカード用コネクタは、ソケットと、前記ソケットを覆うように取り付けられたシェルと、前記ソケット及び前記シェルとで構成される空洞にカード部材と共に抜き差し方向に移動可能なスライダーを有し、前記カード部材が挿し込まれた際に、前記スライダーを所定の位置で係止し、且つ、前記カード部材を抜き出す際に、前記係止の解除を行なうロック機構を備えたカード用コネクタにおいて、
前記ロック機構は、カム部と、クランクピンとで構成され、
前記カム部は、金属性材料で形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、第2の態様のカード用コネクタは、第1の態様のカード用コネクタにおいて、前記カム部は、前記ソケット又は前記シェルに設けられた前記クランクピンが有するピン端部と係止される係止部を有し、前記スライダーと共に金属性材料で一体に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、第3の態様のカード用コネクタは、第1の態様のカード用コネクタにおいて、前記ソケットには、前記スライダーを抜き出し方向に押圧する弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、第4の態様のカード用コネクタは、第2又は第3の態様のカード用コネクタにおいて、前記カム部の前記係止部と、前記クランクピンの前記ピン端部とは、平面視で異なる軸線上に位置することを特徴とする。
【0013】
また、第5の態様のカード用コネクタは、第1〜第4のいずれかの態様のカード用コネクタにおいて、前記カム部は、ハートカムであることを特徴とする。
【0014】
また、第6の態様のカード用コネクタは、第2〜第4のいずれかの態様のカード用コネクタにおいて、前記カム部は前記ピン端部と接触される所定長さの傾斜部と前記係止部とを有し、
前記傾斜部は、前記スライダーが挿し込み方向へ移動されるのに伴い、前記傾斜部の傾斜に沿って前記クランクピンを弾性変形させながら前記ピン端部を前記係止部に誘導させ、
前記係止部は、前記ピン端部が前記傾斜部を外れたのち、前記スライダーが抜き出し方向へ移動されるのに伴い、前記ピン端部を係止させることを特徴とする。
【0015】
また、第7の態様のカード用コネクタは、第6の態様のカード用コネクタにおいて、前記カム部は前記傾斜部の先端の位置と前記係止部の位置との間の位置に設けられた支持部を有し、
前記支持部は、前記クランクピンの前記ピン端部が前記傾斜部から外れたときに、前記ピン端部を支持し、
前記支持された前記ピン端部は、前記スライダーが抜き出し方向へ移動されるのに伴い、前記支持部から前記係止部へ移動されることを特徴とする。
【0016】
また、第8の態様のカード用コネクタは、第1〜第7のいずれかの態様のカード用コネクタにおいて、前記カム部は、前記スライダーの側面に形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、第9の態様のカード用コネクタは、第1〜第8のいずれかの態様のカード用コネクタにおいて、前記クランクピンは、前記シェルと共に金属性材料で一体に成形されており、一方が前記シェルと繋がれ、他方が自由端となっており、弾性変形可能とされていることを特徴とする。
【0018】
また、第10の態様のカード用コネクタは、第1〜第9のいずれかの態様のカード用コネクタにおいて、前記スライダーには、装着されるカード部材を位置決め固定するカード部材固定部が前記スライダーと共に金属性材料で一体に成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様のカード用コネクタによれば、ロック機構のカム部は金属材料で形成されているので、高い強度を得ることができ、カード部材が装着された際に、このカード部材に大きな負荷がかかっても、カム部の損傷や破損を抑制することができる。また、ピンがカム部を摺動しても、クランクピンにより削られることが抑制されるのでカム部の損傷や破損を抑制することができる。
【0020】
第2の態様のカード用コネクタによれば、スライダーと共に金属材料で形成されているので、高い強度を得ることができる。なお、カム部は、金属製の板体を打ち抜き加工し、折り曲げ加工をすることでスライダーと共に一体に形成することができるので、製造が容易となる。
【0021】
また、第3の態様のカード用コネクタによれば、弾性部材を設けることでカード部材の取り出しが容易となる。なお、弾性部材としては、スプリング等を使用することができる。
【0022】
また、第4の態様のカード用コネクタによれば、係止部に係止されたクランクピンのピン端部は、スライダーを挿し込み方向に移動させることで係止部から外れるようになり、容易にクランクピンのピン端部の係止を解除させることができるようになる。
【0023】
また、第5の態様のカード用コネクタによれば、ハートカムをスライダーと一体に金属性材料で形成することで、ハートカムの破損や削られることによる損傷等を抑制することができる。
【0024】
また、第6の態様のカード用コネクタによれば、カム部を金属製の板体から容易に形成することができる。
【0025】
また、第7の態様のカード用コネクタによれば、カム部を金属製の板体から容易に形成することができるようになる。さらに、支持部を設けることで、クランクピンのピン端部を係止部に係止させやすくなる。
【0026】
また、第8の態様のカード用コネクタによれば、カム部をスライダーの側面に形成することで、カード用コネクタの低背化を図ることができる。
【0027】
また、第9の態様のカード用コネクタによれば、クランクピンがシェルと一体に形成されていることで、部品点数を減らすことができ、組み立てを容易に行なうことができるようになる。
【0028】
また、第10の態様のカード用コネクタによれば、カード部材固定部がスライダーと一体に形成されているので、より部品点数を減らすことができ、組み立てを容易に行なうことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのカード用コネクタを例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではない。また、本発明は、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0031】
[実施形態]
図1〜
図5を参照して、実施形態のカード用コネクタ(以下、単に「コネクタ」という。)10について説明する。コネクタ10は、
図1Aに示すように、平板状のカード部材59が挿し込むことができる所定大きさの開口11を一側面に有する箱状体で形成されている。そして、コネクタ10の開口11からカード部材59を挿入し、所定の位置まで挿し込むことで、コネクタ10に備えられたロック機構12(
図6及び
図8参照)により固定され、
図1Bに示すようにカード部材59の装着が行なわれる。また、カード部材59を取り外すときは、カード部材59を挿し込み方向に押圧することで、ロック機構12の固定が解除され、コネクタ10内に設けられた弾性部材58(
図2参照)の弾性力により、コネクタ10内から押し出され、カード部材59を取り外すことができる。このような構成を有するコネクタは、いわゆるプッシュプッシュタイプと呼ばれるものである。
【0032】
なお、カード部材59としては公知のものを用いることができ、例えば、一方の面に後述するソケットが有する複数のコンタクト端子と接続される導体部(図示省略)を有した、いわゆるSIMカードやSDカード等を用いることができる。
【0033】
コネクタ10は、
図1及び
図2に示すように、ソケット13と、このソケット13を覆うように取り付けられるシェル28と、ソケット13及びシェル28により形成される空洞内を反復移動可能に設けられたスライダー40と、スライダー40をカード部材59の抜き出し方向に押圧する弾性部材としてのスプリング58とで構成されている。また、実施形態のコネクタ10には、スライダー40に設けられたカム部54とシェル28に設けられたクランクピン35とで構成されるロック機構12が備えられている。
【0034】
ソケット13は、
図2及び
図3に示されているように、カード部材59が載置される所定面積を有する矩形状の底面14と、カード部材59が挿し込まれる前面15と、この前面15と対向する背面16と、一方の側面17及び他方の側面18とで構成されている。これら背面16、一方の側面17及び他方の側面18は、底面14の3辺から立設して形成されている。
【0035】
ソケット13の底面14は、カード部材59が載置される大きさの面積を有しており、カード部材59に設けられた導電部と接続される複数のコンタクト端子19が設けられている。
【0036】
また、ソケット13の前面15は、コネクタ10として組み立てられたときにシェル28と共に、カード部材59が挿し込まれる開口11となる部分である。なお、ソケット13の前面15には、一部を立設して形成された部分を有しており、シェル28と組み合わされるようになっている。
【0037】
また、ソケット13の一方の側面17は所定高さに立設した板状体で形成されており、一方の側面17の前面15側には、立設された一部が切り欠かれた部分を有している。この切り欠かれた部分は、後述するシェル28に設けられたクランクピン35がソケット13の内部に配置されるクランクピン挿通部21となっている(
図6参照)。さらに、ソケット13の内部には、一方の側面17と近接する位置に、所定の隙間を有して一方の側面17と平行に形成された板体が設けられている。この板体は、後述するスライダー40が設けられるスライドレール24であり、このスライドレール24に板体に沿ってスライダーが移動する部分となる(
図6参照)。
【0038】
なお、スライドレール24には、前面15側から中間部分にかけて切り欠かれており、この切り欠かれた部分24aがあることにより、後述するスライダー40に形成されるカード部材固定部49(
図6参照)が弾性変形することができるようになる。また、一方の側面17とスライドレール24との間の隙間は、スプリング58が収容されるスプリング収容部25となっている。
【0039】
また、他方の側面18は、所定の高さに立設した板状体で形成されており、所定の位置が切り欠かれており、カード部材59が挿入されたことや正しく装着されたことを検知するスイッチ22や、カード部材の書き込み防止を検知するスイッチ23が設けられている。
【0040】
また、ソケット13の背面16は、所定の高さに立設された板体で形成されている。この背面16からはコンタクト端子19と連通されて、基板(図示省略)と接続される接続片20が突出している(
図3B参照)。
【0041】
なお、ソケット13の前面15、背面16、一方の側面17及び他方の側面18のそれぞれには、シェル28が取り付けられたときに係合する複数の係合突起26が形成されている
【0042】
また、ソケット13は、1枚の金属製の板体を打ち抜き、折り曲げ加工することで、複数のコンタクト端子や両側面及び背面等となる部分を立設させ、この金属製の部材を樹脂材料によりでインサート成形することにより形成される。
【0043】
シェル28は、
図2及び
図4に示すように、ソケット13を覆うことができる大きさの上面29を有し、カード部材59が挿し込まれる前面30と、この前面30と対向する背面31と、一方の側面32及び他方の側面33で構成されている。
【0044】
シェル28の前面30は、ソケット13と組み合わされることでカード部材59が挿入される開口11が形成されるようになっている。また、シェル28の前面30には、カード部材59を開口11に導入しやすくするために反り部30aが形成されている。なお、シェル28の前面30には、上面29の一部が延設され、ソケット13と組み合わされる小さな板体が垂下されて形成されている。
【0045】
シェル28の背面31は、上面29の端辺から垂下された板体で形成されている。このとき、ソケット13のスプリング収容部25と対応する部分には、他の背面より後方に設けられた部分を有している。
【0046】
また、シェル28の一方の側面32は、上面29の端辺から垂下された板体で形成されている。また、一方の側面32の前面30側には、切り欠かれた部分を有しており、この切り欠かれた部分には、シェル28の内側に向かって延設されたクランクピン35が金属製のシェル28と一体に形成されている。
【0047】
クランクピン35は、シェル28の一方の側面32からシェル28の内側に向かって屈曲されて延設されたピン屈曲部36と、ピン屈曲部36から一方の側面32に沿って延設されたピン延設部37と、ピン延設部37からさらにシェル28の内側にピン延設部37に対して直角に延設されたピン端部38とで構成されている。クランクピン35は、後述するスライダー40に形成されたカム部54と共にコネクタ10のロック機構12を構成する部分となる(
図6参照)。
【0048】
また、シェル28の一方の側面32のスプリング収容部25と対応する部分は、他の上面29より低くなるように形成されており、内部に設置されたスプリング58の動きを規制するスプリング規制部34となっている。このスプリング規制部34が設けられることにより、スプリングが弾性変形する際に、直線状の動きとなるように規制することができる。
【0049】
また、シェル28の他方の側面33には、上面29から垂下された板体で形成されており、この板体にソケット13に設けられた各スイッチ22、23と対応するように切り込みが形成されている。この切れ込みにより、各スイッチが動作できるようになっている。
【0050】
なお、シェル28の前面30、背面31、一方の側面32及び他方の側面33には、ソケット13に組み合わされるとき、ソケット13に形成された係合突起26と係合される係合溝39がそれぞれ形成されている。
【0051】
また、シェル28はクランクピン35と共に、1枚の金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することで形成される。
【0052】
次に、スライダー40は、
図2及び
図5に示すように、金属性材料により略L字状に形成されており、カード部材59と当接される押動部41と、押動部41に対していて直角に形成されたスライド部45とで構成されている。
【0053】
スライダー40の押動部41は、カード部材59が挿し込まれたときには、このカード部材59の先端により押圧される部分であると共に、カード部材59を取り出す際にはカード部材59を押圧する部分となる。
【0054】
押動部41は、所定の長さの板体42で形成され、この板体42のスライド部45とは反対側の端部43は下方に垂下されて形成されている。また、板体42のカード部材59と当接する側には、傾斜した部分44が形成されている。この傾斜した部分44は、カード部材59の形状(
図1A参照)に対応しており、カード部材59が正しい向きで挿し込まれたかを確認することができる部分となっている。また、垂下された端部43は、カード部材59の先端と当接する部分を大きくし、カード部材59によりスライダー40を押圧しやすくすると共に、スライダーによりカード部材を押圧しやすくするためのものである。
【0055】
スライド部45は、コネクタ10に組み合わされる際、ソケット13に形成されたスライドレール24と対応する位置に配置され、このスライドレール24上を移動できるように形成されている。スライド部45は、中央にスライドレール24に沿って移動するガイド部46を有し、このガイド部46を挟んで、押動部41側に設けられるスライド内側面47と押動部41とは反対側に設けられるスライド外側面50とで構成されている。なお、押動部41はガイド部46と連結されている。
【0056】
スライド内側面47は、所定長さの板状部材48が押動部41とは反対側に延設されており、その端部が屈曲されている。この屈曲された部分は、カード部材59に形成された凹部60(
図6参照)と嵌合し、カード部材59を固定するためのカード部材固定部49となっている。このカード部材固定部49は、従来、スライダーとは別部材で形成されていたが、これらを一体に形成することで、部品点数を少なくすることができ、また、組み立てを容易にすることができる。
【0057】
また、スライド外側面50は、スライド内側面47より長い板状部材51が押動部41とは反対側に延設されている。スライド外側面50の押動部41側には、ソケット13に設けられたスプリング収容部25に載置されるとともに、スプリング58が設置されるスプリング設置部52を有している。このスプリング設置部52には、スプリング58が当接されるスプリング押圧片53がスプリング設置部52から立設して形成されている。
【0058】
また、スライド外側面50の押動部41とは反対側の端部には、カム部54が設けられている。このカム部54は、スライダー40の移動に伴い、シェル28に形成されたクランクピン35のピン端部38が摺動すると共に、ピン端部38を係止する部分となる。カム部54の構成は、スライド部45の延在方向に対して所定の角度を有する傾斜部55と、クランクピン35のピン端部38が係止される係止部56と、傾斜部55の頂部と係止部56との間の位置に設けられた支持部57とを有している。
【0059】
この傾斜部55は、一方の端部は係止部56より下方となる位置まで形成され、他方の端部は、係止部56より高い位置であり、係止部56を越える位置まで形成されている。また、係止部56は、ピン端部38が係止される垂直部と、ピン端部38が摺動する水平部とを有するL字状で形成されている。このとき、係止部56の垂直部の頂部が傾斜部と近接して形成されている。支持部57は、ピン端部38を支持する水平部と水平部を形成するために屈曲された屈曲部とで形成されている。なお、カム部の形状は、これに限らず、いわゆるハートカム式のループ状の形状であればよい。
【0060】
なお、このカム部54を含むスライダー40は、1枚の板体を打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されている。特にカム部54は、従来、樹脂材料で形成されたが、このような形状とすることで金属製のスライダーと一体に形成することができるようになり、高い強度を得ることができる。
【0061】
また、スライダー40がソケット13に組み合わされたとき、カム部54の係止部56は、ソケット13の底面14を基準としたときシェル28に設けられたクランクピン35のピン端部38が配置される位置より高い位置に形成されている(
図8参照)。
【0062】
なお、スライダー40のカム部54は、シェル28のクランクピン35と組み合わされて、コネクタ10のロック機構12が構成されるようになる。
【0063】
また、スプリング58は、
図2に示すように、所定の長さであって、ソケット13のスプリング収容部25に収容可能な径を有するものとなっている。そして、スプリング58は、ソケット13に設けられたスプリング収容部25の背面16側とスライダー40に形成されたスプリング設置部52のスプリング押圧片53との間に設置される。なお、スプリングは、これに限らず他の弾性部材を使用することができる。
【0064】
次に、コネクタ10の組み立てについて
図2及び
図6を参照して説明する。まず、ソケット13を用意する。ソケット13は、上述したように、1枚の金属製の板状体を打ち抜き、折り曲げ加工を行い、複数のコンタクト端子19及び側面等となる部分を形成し、その後、加工後の板状体に樹脂材料をインサート成形することで形成される(
図3参照)。
【0065】
次に、ソケット13にスライダー40を取り付ける。この取り付けは、スライダー40のガイド部46をソケット13のスライドレール24に合わせることで行なわれる。スライダー40が取り付けられたら、スライダー40のスプリング設置部52及びソケット13のスプリング収容部25にスプリング58を設置させる。このとき、スプリング58の各端部は、一方がソケット13のスプリング収容部25の背面16側に当接し、他方が、スライダー40のスプリング設置部52のスプリング押圧片53に当接するように設置される。
【0066】
その後、シェル28をソケット13に取り付けることでコネクタ10の組み立てが完了する。このとき、ソケット13に形成された係合突起26とシェル28に形成された係合溝39とがそれぞれ係合される。なお、
図8に示すように、ソケット13にシェル28を取り付けたとき、シェル28に設けられたピン端部38は、スライダー40のカム部54の係止部56より低い位置に設けられるようになり、また、カム部54の傾斜部55の下方の一方の端部より高い位置に配置されるようになる。
【0067】
以上のように、実施形態のコネクタによれば、カード部材固定部がスライダーと一体に形成され、クランクピンがシェルと一体に形成されていることで、これらが別部材で形成されていたものより、組み立てが容易に行なうとことができる。
【0068】
次に、コネクタ10へのカード部材59の装着及びコネクタ10からのカード部材59の取り外しについて
図1及び
図6〜
図8を参照して説明する。
【0069】
カード部材59をコネクタ10へ装着させる場合は、
図1Aに示すように、向きを合わせたカード部材59を、コネクタ10の開口11に挿入する。このとき、
図7Aに示すように、カード部材59の先端がスライダー40の押動部41に当接するまで挿し込まれる。その際、カード部材59が押動部41に当接される前にスライダー40が移動しないようするために、カード部材59が挿し込まれたとき、ソケット13の一方の側面17に形成された突起片27にスライダー40のスプリング押圧片53の一部が接触した状態となり、カード部材59の先端がスライダー40の押動部41を所定の力で押圧されるまでスライダー40の移動が規制されるようになっている(
図6参照)。このとき、クランクピン35のピン端部38は
図8Aの位置(a)にある。
【0070】
次に、カード部材59を挿し込み方向に押圧することで、スライダー40がスプリング58を弾性変形させながら移動する。スライダー40が移動すると、
図8Aに示すように、まず、シェル28に設けられたクランクピン35のピン端部38が配置された位置(a)に向かってスライダー40に設けられたカム部54の傾斜部55が接近し、接触される(
図8Aの位置(b))。このとき、ソケット13の底面を基準として、クランクピン35及びピン端部38の位置は、カム部54の係止部56より低い位置に配置されているので、係止部56より低い位置まで延設された傾斜部55もピン端部38と接触されるようになっている。
【0071】
その後、さらに、スライダー40が移動すると、ピン端部38は傾斜部55の傾斜を摺動しながら上方へ向かい、位置(c)まで移動する。このとき、ピン端部38と一体に形成されたピン延設部37が徐々に弾性変形され、弾性力が蓄えられている状態となっている。そして、ピン端部38が傾斜部55の頂部を越えた位置(d)まで移動すると、ピン端部38は、ピン延設部37の蓄えられた弾性力により下方に向かい、カム部54の支持部57に支持される位置(e)に移動することになる。このとき、カード部材59が最も押し込まれた状態となり、スライダーの挿し込み方向への移動が終了する。
【0072】
次に、カード部材59の押圧をやめることで、
図8Bに示すように、スライダー40はカード部材59と共にスプリング58の弾性力によりカード部材59の抜き出し方向へ移動される。そして、スライダー40の移動に伴い、ピン端部38も支持部57上を係止部56の方向に摺動し、支持部57から外れる位置(f)から、ピン延設部37の弾性力によりピン端部38は下方に向かい、位置(g)に移動し、係止部56に係止されるようになる。ピン端部38が係止部56に係止されることで、スライダー40の移動がロックされ、カード部材59がコネクタ10に装着された状態となる。
【0073】
次に、カード部材59をコネクタ10から取り外す場合について説明する。
図1B及び
図7Bのコネクタ10にカード部材59が装着された状態から、カード部材59を挿し込み方向に押圧すると、スライダー40が挿し込み方向に移動すると共に、
図8Cに示すように、ピン端部38が位置(g)の状態から係止部56を支持部57の方向に摺動して係止部56から外れる位置(h)に移動する。そして、ピン端部38はピン延設部37が有する弾性力により下方の位置(i)に移動する。
【0074】
その後、カード部材59の押圧を止めることで、スプリング58の弾性力によりスライダー40と共にカード部材59が抜き出し方向に押し出されるようになり、カード部材59をコネクタ10から取り外すことが可能となる。このとき、ピン端部38は、
図8Dに示すように、スライダー40の移動に伴い、ピン端部38は傾斜部55と当接し(
図8Dの位置(j))、その後、傾斜部55に沿って弾性変形し(
図8Dの位置(k))、位置(a)に配置されることになる。以上の工程により、実施形態のコネクタへのカード部材の装着と取り外しが行なわれる。
【0075】
実施形態のようなコネクタの構成とすることで、コネクタへのカード部材の装着及び取り外しにより、スライダーに設けられたカム部をクランクピンのピン端部が摺動したり、係止したりするが、実施形態のカム部は金属製のスライダーと一体に形成されているので、従来の樹脂で形成されたカム部のように、削られることがない。また、カム部にピン端部が係止された状態で、カード部材に外力が加わっても、カム部が金属製であるので、高い強度を有し、破損することが抑制される。なお、カム部は、いわゆるハートカムとしてもよい。