【解決手段】板状部材WFの支持装置10は、板状部材WFを支持する支持面27を有する支持手段20と、支持面27から板状部材WFの被支持面27に吸引力を付与する減圧手段40と、支持面27で支持した板状部材WFの外方で当該板状部材WFを取り囲むことで、減圧手段40が板状部材WFを支持面27に引き寄せることを補助する外壁部材53を有する吸引補助手段50とを備えている。
前記外壁部材は、前記支持面に直交する方向であって、当該支持面から離間する方向に向かうに従って前記板状部材の中央に近づくように変形可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の板状部材の支持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の装置では、板状部材を吸引する伸縮部材を複数設ける必要があり、装置構成やその制御が複雑化するという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、装置構成やその制御が複雑化することなく、反りを有する板状部材を支持面に密着させて支持することができる板状部材の支持装置および支持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の板状部材の支持装置は、板状部材を支持する支持面を有する支持手段と、前記支持面から前記板状部材の被支持面に吸引力を付与する減圧手段と、前記支持面で支持した板状部材の外方で当該板状部材を取り囲むことで、前記減圧手段が前記板状部材を前記支持面に引き寄せることを補助する外壁部材を有する吸引補助手段とを備えている、という構成を採用している。
【0007】
この際、本発明の板状部材の支持装置では、前記外壁部材は、前記支持面に直交する方向であって、当該支持面から離間する方向に向かうに従って前記板状部材の中央に近づくように変形可能に設けられている、ことが好ましい。
また、本発明の板状部材の支持装置では、前記外壁部材は、前記支持面から突没可能に設けられている、ことが好ましい。
さらに、本発明の板状部材の支持装置では、前記外壁部材は、前記支持面に向かって接近可能に設けられている、ことが好ましい。
【0008】
一方、本発明の板状部材の支持方法は、板状部材を支持面で支持する工程と、前記支持面から前記板状部材の被支持面に吸引力を付与する工程と、前記支持面で支持した板状部材の外方を外壁部材が取り囲むことで、前記板状部材を前記支持面に引き寄せることを補助する工程とを備えている、という構成を採用している。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明によれば、吸引補助手段を設けたことで、板状部材における支持面から離間した離間部分と外壁部材と支持面とで囲まれる浮上り空間を減圧し、板状部材を支持面に引き寄せる補助が行えるので、装置構成やその制御が複雑化することなく、反りを有する板状部材を支持面に密着させて支持することができる。
【0010】
この際、外壁部材が、支持面に直交する方向であって、当該支持面から離間する方向に向かうに従って板状部材の中央に近づくように変形可能に設けられれば、板状部材の離間部分の外縁と外壁部材との間隔を小さくし、浮上り空間の減圧効果を向上させることができ、板状部材を支持面に引き寄せやすくなる。
また、外壁部材が支持面から突没可能に、または、支持面に向かって接近可能に設けられれば、外壁部材が支持面から突出していない状態または、支持面から離間した状態で、当該板状部材における被支持面の反対面に所定の処理を行うときに、外壁部材が障害となって所定の処理が行えなくなることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、各実施形態での同様の構成および動作については、詳細な説明を省略する。
また、以下において、基準となる図を挙げることなく、例えば、上、下、左、右、または、手前、奥といった方向を示した場合は、全て
図1を正規の方向(付した番号が適切な向きとなる方向)から観た場合を基準とし、上、下、左、右方向が紙面に平行な方向であり、前が紙面に直交する手前方向、後が紙面に直交する奥側方向とする。
【0013】
図1において、支持装置10は、板状部材としてのウエハWFを支持する支持面27を有する支持手段20と、支持面27からウエハWFの被支持面WF1に吸引力を付与する減圧手段40と、支持面27で支持したウエハWFの外方で当該ウエハWFを取り囲むことで、減圧手段40がウエハWFを支持面27に引き寄せることを補助する外壁部材53を有する吸引補助手段50とを備え、例えば、支持したウエハWFに接着シートの貼付や蒸着処理等の所定の処理を施すシート貼付装置や表面処理装置等の図示しない処理装置の作業領域に配置されている。
【0014】
支持手段20は、上面22から凹んだ第1凹部23および当該第1凹部23の底面24から凹んだ第2凹部25を備えた外側テーブル21と、複数の吸気孔28によってウエハWFを吸着保持可能な支持面27を有し、底面24から延びる複数の支持軸29に支持された平面視円形状の支持台26と、支持台26内のチャンバ26Aの圧力を検知する圧力センサやロードセル等の圧力検知手段30とを備えている。
【0015】
減圧手段40は、チャンバ26Aに連通する配管40Aを介して接続された減圧ポンプや真空エジェクタ等の吸引手段から構成されている。
【0016】
吸引補助手段50は、第2凹部25内に設けられた駆動機器としての直動モータ51の出力軸51Aに支持され、支持軸29、配管40Aが挿通可能な貫通孔52A、52Bを有する円板状の支持フレーム52と、支持フレーム52の上面に配置され、外側テーブル21と支持台26との隙間を介して支持面27から突没可能に設けられた外壁部材53とを備えている。
外壁部材53は、樹脂やステンレス等の弾性変形可能な材料により形成された複数の外壁構成部材54を有し、当該複数の外壁構成部材54が支持台26の外周方向に並びかつ隣り合う外壁構成部材54の一部同士が支持台26の径方向に重なるように配置されている。また、外壁部材53は、支持面27に直交する方向であって当該支持面27から離間する方向(上方向)に向かうに従ってウエハWFの中央に近づくように変形可能に設けられている。具体的には、各外壁構成部材54は、その上端側が支持台26の中央側に傾くように癖付けされている。これにより、各外壁構成部材54は、
図1中符号AAで示すように、支持面27の外縁27Aによって、その弾性復元の量が規制され、上方向に向かうに従ってウエハWFの中央に近づくように変形するようになっている。なお、各外壁構成部材54が支持台26の径方向に重なる部分や、各外壁構成部材54の内面54Aと支持面27の外縁27Aとの接触部等は、空気が漏れないまたは、漏れにくいように密着しているが、例えば空気が漏れないまたは、漏れにくいようにゴムや樹脂等のパッキン材である漏洩防止手段を設けてもよい。
【0017】
以上の支持装置10において、支持面27でウエハWFを支持する手順を説明する。
先ず、
図1中二点鎖線で示すように、外壁部材53が支持面27から突出しない初期位置にある状態で、人手または多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が支持手段20の支持面27上にウエハWFを載置して退避すると、減圧手段40が図示しない吸引手段を駆動し、ウエハWFの吸着保持動作を行う。
この際、ウエハWFが全く反っていない場合や、ウエハWFの反り量が小さい場合、
図1中二点鎖線で示すように、被支持面WF1全面が支持面27に密着し、圧力検知手段30によってチャンバ26A内の圧力が所定圧力以下に減圧されたことが検知され、この検知結果を基に、図示しない処理装置によって被支持面WF1の反対側の被処理面WF2に所定の処理が施される。
【0018】
一方、減圧手段40が図示しない吸引手段を駆動し、ウエハWFの吸着保持動作を行っても、ウエハWFの反り量が大きい場合、
図1中実線で示すように、被支持面WF1全面が支持面27に密着しないため、圧力検知手段30によってチャンバ26A内の圧力が所定圧力以下に減圧されないことが検知される。すると、この検知結果を基に、吸引補助手段50が直動モータ51を駆動し、初期位置にある外壁部材53を
図1中実線で示すように支持面27から突出させる。これにより、ウエハWFにおける支持面27から離間した離間部分WF4と外壁部材53と支持面27とで囲まれる浮上り空間SPが減圧され、離間部分WF4が支持面27に引き寄せられて被支持面WF1全面が支持面27に密着される。このとき、外壁部材53が上方向に向かうに従ってウエハWFの中央に近づくように変形するようになっているので、反り上がったウエハWFの外縁WF3と当該外壁部材53との間隔を小さくし、浮上り空間SPの減圧効果を向上させることができる。
【0019】
次いで、チャンバ26A内の圧力が所定圧力以下に減圧されたことが検知されると、吸引補助手段50が直動モータ51を駆動し、外壁部材53を初期位置に復帰させ、上述と同様に、図示しない処理装置によって所定の処理が施される。そして、所定の処理が行われた後、減圧手段40が図示しない吸引手段の駆動を停止し、人手または図示しない搬送手段が支持面27上からウエハWFを取り去り、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0020】
以上のような第1実施形態によれば、支持装置10の装置構成やその制御が複雑化することなく、反りを有するウエハWFを支持面27に密着させて支持することができる。
【0021】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図2において、支持装置10Aは、第1実施形態の支持装置10に対し、支持手段20および吸引補助手段50の代わりに支持手段60および吸引補助手段70を設けた点が相違する。
【0022】
支持手段60は、支持台26と、圧力検知手段30とを備えている。
吸引補助手段70は、支持台26の支持面27の上方に設けられた駆動機器としての直動モータ71の出力軸71Aに支持され、複数の貫通孔72Aを有する円板状の支持フレーム72と、この支持フレーム72の下面に配置された外壁部材73とを備えている。
外壁部材73は、弾性変形可能または弾性変形不能な部材で構成され、内径がウエハWFの直径より大きい円筒状に形成されている。
【0023】
以上の支持装置10Aにおいて、支持面27でウエハWFを支持する手順を説明する。
先ず、
図2中実線で示すように、外壁部材73が支持面27から離間した初期位置にある状態で、第1実施形態と同様にして支持面27上にウエハWFを載置すると、減圧手段40が図示しない吸引手段を駆動し、ウエハWFの吸着保持動作を行う。
この際、第1実施形態と同様に、ウエハWFの吸着保持動作を行っても、圧力検知手段30によってチャンバ26A内の圧力が所定圧力以下に減圧されないことが検知されると、この検知結果を基に、吸引補助手段70が直動モータ71を駆動し、初期位置にある外壁部材73を支持面27に向かって接近させ、
図2中二点鎖線で示すように、外壁部材73の下端を支持面27に当接させる。これにより、浮上り空間SPが減圧され、離間部分WF4が支持面27に引き寄せられて被支持面WF1全面が支持面27に密着される。このとき、ウエハWFの上面側は、貫通孔72Aによって減圧されることはない。その後、第1実施形態と同様の所定の処理が行われた後、上記同様の動作が繰り返される。
【0024】
以上のような第2実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0025】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0026】
例えば、
図1中二点鎖線で示すように、支持面27の上方に、離間部分WF4に向かって空気やガス等の気体を噴出することで、離間部分WF4を支持面27方向に付勢する付勢手段80を設けてもよい。
【0027】
さらに、吸引補助手段50、70および付勢手段80は、ウエハWFのサイズに応じて複数設けられていてもよい。
また、外壁構成部材54は、上方向に向かうに従ってウエハWFの中央に近づくように変形可能でなくてもよいし、外壁部材53を第2実施形態と同様に1の部材で円筒状に形成してもよい。
さらに、外壁部材53は、弾性変形不能な材料により形成してもよい。
さらに、外壁部材73は、第1実施形態の外壁部材53と同様に、複数の部材で円筒状に構成してもよいし、1の部材または複数の部材によって、
図2中符号BBで示すように、上方向に向かうに従ってウエハWFの中央に近づく半球ドーム形状としてもよい。
また、第1、第2実施形態において、外壁部材53、73の外周面を円筒状に形成し、内周面を半球ドーム形状にしてもよい。
さらに、第1、第2実施形態において、外壁部材53、73を支持面27に対して固定してもよいし、人手によって支持面27の周囲に着脱自在に構成してもよい。
また、第1、第2実施形態では、ウエハWFの外縁が上方に反り上がった場合を説明したが、支持装置10、10Aは、ウエハWFの中央が上方に反り上がった場合にでも上記同様に対応ができる。
さらに、吸引補助手段は、吸引補助手段50と吸引補助手段70との両方を合わせ持つものでもよく、この場合、支持面27の上方で外壁部材53の上面と外壁部材73の下面とが当接したり、支持面27の上方で外壁部材53と外壁部材73とが重なり合ったりする構成でもよい。
また、支持台26、支持フレーム52、72および外壁部材53、73の平面形状は、円形以外であってもよく、例えば、支持フレーム52、72の平面形状は、被着体の外縁形状に左右されることなく、例えば楕円形や多角形とすることができ、支持台26、外壁部材53、73の平面形状は、被着体の外縁形状に沿う形状、例えば楕円形や多角形とすることができる。
さらに、本願発明において圧力検知手段30は設けなくてもよく、例えば、減圧手段40がウエハWFの吸着保持動作を行う度に、毎回吸引補助手段50、70が直動モータ51、71を駆動し、外壁部材53を支持面27から突出させたり、外壁部材73を支持面27に接近させたりしてもよい。
【0028】
また、本発明における板状部材の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、板状部材としては、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂板等、任意の形態の部材や物品等も対象とすることができる。
【0029】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、支持手段は、板状部材を支持する支持面を有するものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(他の手段および工程についての説明は省略する)。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。