【解決手段】欠陥画素補正装置は、欠陥画素の周辺画素の画素値のうちの最大値又は最小値に基づいて第1の補正値を求める第1の補正部11と、周辺画素の画素値に基づいて画素値変化が最小である方向を求め、周辺画素のうちで方向に存在する画素の画素値に応じた第2の補正値を求める第2の補正部12と、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差が第1の閾値より小さい場合に第1の補正値を選択し、上記差が第1の閾値以上である第2の閾値以上である場合に第2の補正値を選択し、選択された補正値を出力する合成部16とを含む。
前記第2の閾値は前記第1の閾値より大きく、前記合成部は、前記差が前記第1の閾値以上であり前記第2の閾値より小さい場合に、前記第1の補正値と前記第2の補正値との間の値を補正値として出力する請求項1記載の欠陥画素補正装置。
前記第1の補正値と前記第2の補正値との間の前記値は、前記差と、前記第1の閾値と、前記第2の閾値とに応じた重みに基づく、前記第1の補正値と前記第2の補正値との重み付き和である請求項2記載の欠陥画素補正装置。
前記周辺画素の前記代表値に応じた基準値を出力する基準値算出部を更に含み、前記合成部は、前記基準値に応じた値として前記第1の閾値及び前記第2の閾値を求める請求項1乃至3いずれか一項記載の欠陥画素補正装置。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置において用いられる撮像素子は、複数のホトダイオードが縦横に配列された受光部を有し、これらのホトダイオードが撮像用の各画素を構成する。この画素単位で入射光が光電変換され、光電変換により得られた電荷が撮像素子外部に読み出される。受光部に形成された多数個の画素の中には、欠陥により正常に動作しないものがあり、常に暗点(黒)として現れる黒欠陥画素や明点(白)として現れる白欠陥画素等がある。
【0003】
これらの欠陥画素を補正する技術としては、注目画素の周辺の画素の値で注目画素の値を置き換える方法が知られている。この方法では、周辺画素の最大値に所定の閾値を加えた値よりも注目画素値が大きい場合、注目画素が白欠陥であると判断し、周辺画素の最大値により注目画素値を置き換える。また周辺画素の最小値から所定の閾値を減じた値よりも注目画素値が小さい場合、注目画素が黒欠陥であると判断し、周辺画素の最小値により注目画素値を置き換える。それ以外の場合には、注目画素が欠陥でないと判断し、注目画素の値をそのままの値とする。
【0004】
上記の欠陥画素補正技術では、画像が過度の補正により現状よりも悪化してしまうことはない。しかしながら、補正が不十分であるために補正された画素が画像中で目立つ場合がある。例えば、黒い領域と白い領域との境界が直線状である部分において、境界に接する黒い領域側の画素に白欠陥画素が存在したとする。このとき、当該白欠陥画素の周辺画素の最大値は白であるので、黒い領域に存在する当該欠陥画素値は白の値で置き換えられ、補正後の画素が目立ってしまう。
【0005】
以上のような場合を考えると、理想的には、エッジ方向等の画像の方向性を検出し、検出された方向性に応じて適切な補正画素値を用いることが好ましい。画像方向性に基づいた欠陥画素補正技術(例えば特許文献1)においては、例えば、上記の従来技術の場合と同様の判定方法により注目画素が欠陥画素であるか否かを判定し、欠陥画素でない場合には、注目画素の値をそのままの値とする。注目画素が欠陥画素である場合には、注目画素の周辺画素の値に基づいて画素値変化の少ない方向を特定し、特定された方向に存在する周辺画素の値に基づいて注目画素の値を補正する。そのような補正方法として、例えば、垂直方向が選択された場合には、注目画素の上隣の1画素の画素値と下隣の1画素の画素値との平均値により、注目画素の値を置き換えてよい。また水平方向が選択された場合には、注目画素の左隣の1画素の画素値と右隣の1画素の画素値との平均値により、注目画素の値を置き換えてよい。また右上がり斜め方向が選択された場合には、注目画素の右斜め上隣の1画素の画素値と左斜め下隣の1画素の画素値との平均値により、注目画素の値を置き換えてよい。また左上がり斜め方向が選択された場合には、注目画素の左斜め上隣の1画素の画素値と右斜め下隣の1画素の画素値との平均値により、注目画素の値を置き換えてよい。また方向が特定できない場合には、周辺画素の平均値により、注目画素の値を置き換えてよい。
【0006】
上記の欠陥画素補正技術は、画像のエッジの方向を考慮して補正するので、補正が不十分であることは少なく、補正後の画素値が画像に馴染みやすい。しかしながら、方向判断において誤りをおかした場合には、画像が現状よりも悪化してしまうことがある。例えば、白い背景中に1画素分の太さの細い黒線が水平方向に伸びている画像を考える。注目画素が黒線上に存在し、黒線の部分の画素値が画素毎に若干変動している一方で、背景の白の部分の画素値が略一定値であるとする。このとき、注目画素の周辺画素の値に基づいて画素値変化の少ない方向を特定しようとすると、注目画素の上隣の画素値と下隣の画素値とが略同一の値であるために垂直方向に画素値変化が少ないと判断される可能性がある。この場合、注目画素の上隣の1画素(白)の画素値と下隣の1画素(白)の画素値との平均値により、黒線上に存在する注目画素の値が置き換えられてしまう。その結果、黒線が途中で途切れてしまうことになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。各図において、同一又は対応する構成要素は同一又は対応する番号で参照し、その説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、欠陥画素補正装置の実施例の構成の一例を示す図である。
図1に示す欠陥画素補正装置は、画素判定部10、第1補正部11、第2補正部12、代表値算出部13、標準偏差算出部14、距離算出部15、及び合成部16を含む。
図1に示す欠陥画素補正装置は、例えば半導体集積回路であり、撮像素子からの画像データ(画像信号)を画像処理する画像処理ユニットの一部として、デジタルカメラ等の撮像装置に内蔵される。
【0014】
図1において、各ボックスで示される各回路又は機能ブロックと他の回路又は機能ブロックとの境界は、基本的には機能的な境界を示すものであり、物理的な位置の分離、電気的な信号の分離、制御論理的な分離等に対応するとは限らない。各回路又は機能ブロックは、他のブロックと物理的にある程度分離された1つのハードウェアモジュールであってもよいし、或いは他のブロックと物理的に一体となったハードウェアモジュール中の1つの機能を示したものであってもよい。
【0015】
画素判定部10は、供給される画像データ中の注目画素が欠陥画素であるか否かを判定する。この際、注目画素の周辺画素(例えば8近傍の画素)の画素値のうちの最大値又は最小値に基づいて、欠陥画素であるか否かを判定してよい。例えば、周辺画素の最大値に所定の閾値を加えた値よりも注目画素値が大きい場合(白欠陥の場合)、又は、周辺画素の最小値から所定の閾値を減じた値よりも注目画素値が小さい場合(黒欠陥の場合)、注目画素が欠陥画素であると判定してよい。またそれ以外の場合には、注目画素が欠陥でないと判断してよい。
【0016】
図2は、注目画素及びその8近傍を示す図である。画素位置ooが注目画素の位置であるとき、それに隣接する画素位置mm、om、pm、mo、po、mp、op、ppの8つの画素が8近傍の画素となる。これら周辺画素の画素値をそれぞれAmm、Aom、Apm、Amo、Apo、Amp、Aop、Appとし、また注目画素の画素値をAooとする。また周辺画素の画素値の最大値をAmax、最小値をAminとする。更に、上記の欠陥画素判定の閾値をTHとする。このとき画素判定部10は、Amax+TH<Aooの場合、注目画素が白欠陥であると判定し、Amin−TH>Aooの場合、注目画素が黒欠陥であると判定する。なお本実施例の説明において、周辺画素は8近傍の画素である必要はなく、4近傍の画素や24近傍等の任意の近傍であってよい。
【0017】
なお欠陥画素判定の閾値THは、固定値であってよい。また或いは閾値THは、周辺画素値の代表値(例えば平均値)に応じて変化してもよい。一般に、明るい領域では欠陥画素値と本来の画素値との差が大きくても欠陥画素が目立たず、暗い領域では欠陥画素値と本来の画素値との差が小さくても欠陥画素が目立ってしまう傾向にある。このため、明るい領域(即ち上記代表値が大きい場合)では閾値を比較的大きくし、暗い領域(即ち上記代表値が小さい場合)では閾値を比較的小さくしてよい。
【0018】
図1に戻り、上記判定方法の代わりに、画素判定部10は、メモリ17に予め格納された欠陥画素の位置に関する情報に基づいて、注目画素が欠陥画素であるか否かを判定してよい。この場合、予め検出した各欠陥画素の位置を、予めメモリ17に登録しておく。画素判定部10は、注目画素の位置とメモリ17に登録されている各位置とを比較し、両者が一致する場合に注目画素が欠陥画素であると判定してよい。
【0019】
画素判定部10が欠陥画素であると判定した注目画素及びその周辺画素の画像データは、画素判定部10から第1補正部11、第2補正部12、代表値算出部13、及び距離算出部15に供給される。画素判定部10が欠陥画素でないと判定した注目画素の画像データは、そのまま欠陥画素補正装置の出力として出力される。
【0020】
第1補正部11は、欠陥画素の周辺画素の画素値のうちの最大値又は最小値に基づいて第1の補正値を求める。第1補正部11は、周辺画素の最大値に所定の閾値を加えた値よりも注目画素値が大きい場合、周辺画素の最大値に応じた値(当該最大値そのものであってよい)を、注目画素値を置き換える補正値として出力してよい。第1補正部11は、周辺画素の最小値から所定の閾値を減じた値よりも注目画素値が小さい場合、周辺画素の最小値に応じた値(当該最小値そのものであってよい)を、注目画素値を置き換える補正値として出力してよい。即ち、第1補正部11は、注目画素が白欠陥の場合に注目画素の画素値AooをAmaxで置き換え、注目画素が黒欠陥の場合に注目画素の画素値AooをAminで置き換えてよい。上記以外の場合、第1補正部11は、注目画素の画素値をそのまま補正値として出力してよい。この注目画素の画素値をそのまま補正値として出力するという事象は、画素判定部10での欠陥画素判定に用いる閾値と第1の補正部11で用いる閾値とが異なる場合や、欠陥画素メモリ17の情報に基づいて欠陥画素判定をした場合に発生し得る事象である。
【0021】
第2補正部12は、周辺画素の画素値に基づいて画素値変化が最小である方向を求め、周辺画素のうちで上記の方向に存在する画素の画素値に応じた第2の補正値を求める。例えば、まず画素値変化が最小である方向を求めるため、
図2の8近傍の周辺画素の場合、以下のように垂直、水平、左上がり斜め、右上がり斜め方向の各々について、当該方向において注目画素に隣接する2つの画素の画素値間の差の絶対値を求める。
【0022】
absV = abs(Aom - Aop)
absH = abs(Amo - Apo)
absN = abs(Amm - App)
absZ = abs(Amp - Apm)
ここでabs(x)は、値xの絶対値を求める関数である。上記のようにして求めた値に基づいて、absVが単独で最小の場合、画素値変化が最小である方向は垂直方向であると判定する。absHが単独で最小の場合、画素値変化が最小である方向は水平方向であると判定する。absNが単独で最小の場合、画素値変化が最小である方向は左上がり斜め方向であると判定する。absZが単独で最小の場合、画素値変化が最小である方向は右上がり斜め方向であると判定する。それ以外の場合には、画素値変化が最小である方向は定まらない。
【0023】
第2補正部12は、上記のようにして画素値変化が最小である方向を求めると、当該方向おいて注目画素に隣接する2つの画素の画素値の平均値を求め、当該平均値を第2の補正値として出力する。例えば、第2補正部12は、垂直方向が画素値変化の最小である方向である場合、注目画素の上隣の1画素の画素値と下隣の1画素の画素値との平均値、即ち(Aom+Aop)/2を出力してよい。また第2補正部12は、水平方向が画素値変化の最小である方向である場合、注目画素の左隣の1画素の画素値と右隣の1画素の画素値との平均値、即ち(Amo+Apo)/2を出力してよい。また第2補正部12は、右上がり斜め方向が画素値変化の最小である方向である場合、注目画素の右斜め上隣の1画素の画素値と左斜め下隣の1画素の画素値との平均値、即ち(Apm+Amp)/2を出力してよい。更に第2補正部12は、左上がり斜め方向が画素値変化の最小である方向である場合、注目画素の左斜め上隣の1画素の画素値と右斜め下隣の1画素の画素値との平均値、即ち(Amm+App)/2を出力してよい。なお画素値変化が最小である方向が定まらない場合、第2補正部12は、周辺画素の画素値の平均値を出力してよい。
【0024】
代表値算出部13は、周辺画素の画素値の代表値を求める。この代表値としては、周辺画素の画素値の平均値であってよい。或いは、周辺画素の画素値の重みづけ平均値であってもよい。或いは、周辺画素の画素値の中間値であってもよい。
【0025】
標準偏差算出部14は、周辺画素の代表値に応じた基準値を出力する。この基準値は、画素値のノイズの標準偏差であってよい。またこの基準値は、後程説明するように、代表値が増加すると増加する値であってよい。
【0026】
図3は、標準偏差算出部14が算出する標準偏差値の一例を示す図である。
図3において、横軸は画素値Aであり、縦軸は画像に重畳されるノイズの標準偏差の値である。一般に、画素値に重畳されるノイズの大きさは画素値の大きさに依存し、画素値が大きくなるほどノイズの振幅も大きくなる場合が多い。即ち、画素値に重畳されるノイズの標準偏差は、画素値が増加すると増加する値となる。
図3は、そのようなノイズの標準偏差の一例を、特性曲線21として示してある。なお、
図1の欠陥画素補正装置を搭載する撮像装置を用いて種々の画像を撮像し、撮像された画像データにおいて重畳されるノイズ量を予め実測する等により、特性曲線21を求めてよい。
【0027】
標準偏差算出部14は、特性曲線21に相当する画素値と標準偏差の値とをルックアップテーブルとして保持し、代表値算出部13から供給される代表値(画素値)に対応する標準偏差の値をルックアップテーブルから抽出して出力してよい。或いは標準偏差算出部14は、特性曲線21に相当する計算式を保持し、代表値算出部13から供給される代表値(画素値)に対応する標準偏差の値を計算式に基づいて計算して出力してよい。
【0028】
図4は、標準偏差算出部14が算出する標準偏差値の別の一例を示す図である。
図4において、横軸は画素値Aであり、縦軸は画像に重畳されるノイズの標準偏差の値である。
図4に示す特性折れ線22は、
図3に示す特性曲線を折れ線関数で近似したものである。標準偏差算出部14は、特性折れ線22に相当する計算式を保持し、代表値算出部13から供給される代表値(画素値)に対応する標準偏差の値を計算式に基づいて計算して出力してよい。また更に単純化し、特性曲線21を直線で近似してもよい。
【0029】
図1に戻り、距離算出部15は、欠陥画素の画素値Aooと周辺画素の代表値との差Gを求める。距離算出部15が求めた差Gと、標準偏差算出部14が求めた標準偏差(基準値)と、第1補正部11が求めた第1の補正値と、第2補正部12が求めた第2の補正値とは、合成部16に供給される。合成部16は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差Gが第1の閾値Th1より小さい場合に第1の補正値を選択し、差Gが第1の閾値以上である第2の閾値Th2以上である場合に第2の補正値を選択し、選択された補正値を出力してよい。この際、合成部16は、基準値に応じた値として第1の閾値Th1及び第2の閾値Th2を求めてよい。この場合、第1の閾値Th1と第2の閾値Th2とが同一値であってよい。この場合、合成部16は、差Gが一つの閾値より小さい場合に第1の補正値を選択し、差Gが当該一つの閾値以上である場合に第2の補正値を選択することになる。
【0030】
また第2の閾値Th2は第1の閾値Th1より大きくてよい。この場合、合成部16は、差Gが第1の閾値Th1以上であり第2の閾値Th2より小さい場合に、第1の補正値と第2の補正値との間の値を出力してよい。この出力値は、差Gと、第1の閾値Th1と、第2の閾値Th2とに応じた重みに基づく、第1の補正値と第2の補正値との重み付き和であってよい。具体的には、合成部16の出力値OUTは、第1の補正値をH1、第2の補正値をH2として、以下の式により計算されてよい。
【0031】
OUT = (1-α)H1 + αH2
ここでαは、差Gと、第1の閾値Th1と、第2の閾値Th2とに応じた重みである。
【0032】
図5は、合成部16による出力値計算に用いられる重みαの一例を示す図である。
図5において、横軸は画素値間距離G(欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差)であり、縦軸は重みαの値である。
図5に示されるように、第2の閾値Th2は第1の閾値Th1より大きくてよい。差Gが第1の閾値Th1より小さい場合、αは0であり、合成部16の出力値OUTの計算値は第1の補正値H1に等しくなる。差Gが第2の閾値Th2以上である場合、αは1であり、合成部16の出力値OUTの計算値は第2の補正値H2に等しくなる。また差Gが第1の閾値Th1以上であり第2の閾値Th2より小さい場合、差Gと第1の閾値Th1との差の値に比例して、αは0から1の間で線形に増加する値を有する。これにより、合成部16は第1の補正値と第2の補正値とを合成した値を計算することができる。
【0033】
なお
図5に示す重みの値は一例に過ぎず、重みの値はこの例に限定されるものではない。例えば、
図5に示すような折れ線ではなく、曲線により画素値間距離Gと重みαとの関係が定義されていてもよい。
【0034】
なお第1の閾値Th1及び第2の閾値Th2は、注目画素が白欠陥の場合と黒欠陥の場合とで異なる値としてよい。即ち、注目画素が白欠陥の場合、第1の閾値Th1a及び第2の閾値Th2aを用い、注目画素が黒欠陥の場合、第1の閾値Th1a及び第2の閾値Th2aとは異なる第1の閾値Th1b及び第2の閾値Th2bを用いてもよい。
【0035】
図6は、第1の閾値と第2の閾値との決定方法について説明するための図である。
図6において、横軸は画像上の画素位置を示し、縦軸は各画素の画素値を示す。画像データ曲線31は、横軸に示される各画素位置に存在する画素の値を示す。画像データ曲線31の値の変動は、画素値に重畳されるノイズによる変動を表している。直線34は、画素値の平均値に標準偏差σを加算した値の位置を模式的に示している。
【0036】
第1の閾値Th1及び第2の閾値Th2としては、例えば、以下のように設定してよい。
【0037】
Th1 = k1×σ
Th2 = k2×σ
ここでk1及びk2は閾値を決定するための係数であり、例えばk1=1.0であり、k2=1.5であってよい。これらの係数の値は、欠陥画素補正装置を搭載する撮像装置の調整者が決定してよい。適宜係数の値を決定することにより、例えば
図6に示す画素値32を有する注目画素については第1の補正値により補正し、画素値33を有する注目画素については第2の補正値により補正する等の適切な補正が可能となる。
【0038】
前述のように、合成部16は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差Gが第1の閾値Th1より小さい場合に第1の補正値を選択し、差Gが第1の閾値以上である第2の閾値Th2以上である場合に第2の補正値を選択し、選択された補正値を出力してよい。これは即ち、より一般的に表現すれば、差Gが比較的大きいときには、画像方向を考慮した第2の補正値を選択し、差Gが比較的小さいときには、周辺画素の最大値又は最小値に基づく第1の補正値を選択するということである。
【0039】
以下に、差Gの大きさに応じて選択する補正値をこのように変えることの合理性について説明する。なお以下の説明において、注目画素の理想画素値は、周辺画素の画素値の最大値と最小値との間に存在することを仮定している。また以下の説明では、白欠陥の場合を想定しているが、黒欠陥の場合も同様に考えることができる。
【0040】
図7は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差が大きい状態の一例を示す図である。
図7において、横軸は画素値を表し、横軸上の縦線は各画素の画素値の横軸座標上での位置を示してある。Aorgは注目画素の元の画素値(補正前の画素値)、Aideは注目画素の理想的な画素値、Smaxは周辺画素の最大画素値、Sminは周辺画素の最小画素値、Srepは周辺画素の代表値、Ac1は第1の補正値である。なお第2の補正値は、
図7に明示的に示されていないが、SminとSmaxとの間の何れかの位置に存在することになる。なお
図7は、理想的な画素値AideがSmaxよりもSminに近い場合が示されている。
【0041】
注目画素の理想的な画素値Aideと補正前の画素値Aorgとの差がC1である。第1の補正値Ac1により補正した場合、補正後の画素値はAc1となり、この補正後の画素値と理想的な画素値Aideとの差(補正残り)はC21である。また第2の補正値により補正した場合、補正後の画素値はSminとSmaxとの間となり、この補正後の画素値と理想的な画素値Aideとの差(補正残り)は最大でもC22である。ここでC22は、理想的な画素値AideとSminとの差と理想的な画素値AideとSmaxとの差のうちの大きい方である。
【0042】
図7に示す位置関係において、第1の補正値Ac1を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残りC21は小さくなる。また第2の補正値を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残りは小さくなる。従って、第1の補正値及び第2の補正値の何れを用いても、補正により現状よりも画質は向上する。一方、第1の補正値を用いた時の補正残りC21は、必ず、第2の補正値を用いた時の補正残り(最大でもC22)以上である。従って、第1の補正値よりも第2の補正値を用いることが好ましい。
【0043】
図8は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差が大きい状態の別の一例を示す図である。
図8で用いる表記は
図7で用いた表記と同一である。なお
図8には、
図7と同一の位置に注目画素の画素値Aorgが位置しており、但し、理想的な画素値AideがSminよりもSmaxに近い場合が示されている。
【0044】
図8に示す位置関係において、第1の補正値Ac1を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残りC21は小さくなる。また第2の補正値を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残りは小さくなる。従って、第1の補正値及び第2の補正値の何れを用いても、補正により現状よりも画質は向上する。一方、第1の補正値を用いた時の補正残りC21は、第2の補正値を用いた時の補正残りよりも、大きい場合もあれば小さい場合もある。この場合、第1の補正値と第2の補正値との何れを用いることが好ましいかは、周辺画素値が分からない限り確定できない。
【0045】
上記のように、理想的な画素値AideがSmaxよりもSminに近い場合には、必ず第2の補正値を用いることが好ましく、理想的な画素値AideがSminよりもSmaxに近い場合には、第1の補正値と第2の補正値との何れが好ましいかは不明である。理想的な画素値AideがSmaxよりもSminに近いか或いはSminよりもSmaxに近いかは、五分五分の確率である。従って、
図7又は
図8に示すように注目画素の画素値Aorgと周辺画素の代表値Srepとの差Gが比較的大きい場合には、第2の補正値を用いれば、少なくとも50%以上の確率で好ましい結果となり、また、現状よりも補正により画質が悪化することがない。即ち、注目画素の画素値Aorgと周辺画素の代表値Srepとの差Gが比較的大きい場合には、第2の補正値を用いて補正をすることが好ましい。
【0046】
図9は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差が小さい状態の一例を示す図である。
図9には、注目画素の画素値Aorgと周辺画素の代表値Srepとの差Gが小さいが、AorgがSmaxよりも大きい状態であり、且つ、理想的な画素値AideがSmaxよりもSminに近い場合が示されている。
図9で用いる表記は
図7で用いた表記と同一である。但し、AorgがそれほどSmaxから離れていないために、注目画素の元々の画素値Aorgがそのまま第1補正部11(
図1参照)による補正後の画素値として用いられる場合がある。これを鑑み、補正後の画素値Ac1がSmaxに等しい場合とAorgに等しい場合との両方が示されている。
【0047】
図9に示す位置関係において、第1の補正値Ac1を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残りC21は小さいか等しくなる。また第2の補正値を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残りは小さくなる。従って、第1の補正値及び第2の補正値の何れを用いても、補正により現状よりも画質が悪化することはない。一方、第1の補正値を用いた時の補正残りC21は、必ず、第2の補正値を用いた時の補正残り(最大でもC22)以上である。従って、第1の補正値よりも第2の補正値を用いることが好ましい。
【0048】
図10は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差が小さい状態の別の一例を示す図である。
図10で用いる表記は
図9で用いた表記と同一である。なお
図10には、
図9と同一の位置に注目画素の画素値Aorgが位置しており、但し、理想的な画素値AideがSminよりもSmaxに近い場合が示されている。
【0049】
図10に示す位置関係において、第1の補正値Ac1を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残りC21は小さいか等しくなる。一方、第2の補正値を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残り(最大でC22)は大きくなる場合がある。従って、第2の補正値を用いた場合、補正により現状よりも画質は悪化する場合がある。
【0050】
図9又は
図10に示す画素値の関係において、理想的な画素値Aideが何れの位置に存在するのかは不明であり、理想的な画素値AideがSminよりもSmaxに近い場合(
図10に示す位置関係の場合)があり得る。この場合、第2の補正値を用いると、補正により現状よりも画質が悪化してしまう可能性がある。従って、
図9又は
図10に示すように注目画素の画素値Aorgと周辺画素の代表値Srepとの差Gが比較的小さいときで、AorgがSmaxよりも大きい場合には、画質が現状よりも悪化する可能性を排除するために、第2の補正値ではなく、第1の補正値を用いて補正をすることが好ましい。
【0051】
図11は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差が小さい状態の一例を示す図である。
図11には、注目画素の画素値Aorgと周辺画素の代表値Srepとの差Gが小さく、AorgがSmaxよりも小さい状態であり、且つ、理想的な画素値AideがSmaxよりもSminに近い場合が示されている。
図11で用いる表記は
図9で用いた表記と同一である。
【0052】
図11に示す位置関係において、第1の補正値Ac1を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1と、補正後の補正残りC21は等しくなる。一方、第2の補正値を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残り(最大でC22)は大きくなる場合がある。従って、第2の補正値を用いた場合、補正により現状よりも画質は悪化する場合がある。
【0053】
図12は、欠陥画素の画素値と周辺画素の代表値との差が小さい状態の別の一例を示す図である。
図12で用いる表記は
図9で用いた表記と同一である。なお
図12には、
図11と同一の位置に注目画素の画素値Aorgが位置しており、但し、理想的な画素値AideがSminよりもSmaxに近い場合が示されている。
【0054】
図12に示す位置関係において、第1の補正値Ac1を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1と、補正後の補正残りC21は等しくなる。一方、第2の補正値を用いた場合、補正前の画素値と理想値との差C1よりも、補正後の補正残り(最大でC22)は大きくなる場合がある。従って、第2の補正値を用いた場合、補正により現状よりも画質は悪化する場合がある。
【0055】
図11又は
図12に示す画素値の関係において、理想的な画素値Aideの位置に関わらず、第2の補正値を用いると、補正により現状よりも画質は悪化してしまう場合がある。従って、
図11又は
図12に示すように注目画素の画素値Aorgと周辺画素の代表値Srepとの差Gが比較的小さいときで、AorgがSmaxよりも小さい場合には、画質が現状よりも悪化する可能性を排除するために、第2の補正値ではなく、第1の補正値を用いて補正をすることが好ましい。
【0056】
以上の考察から、一般に、差Gが比較的大きいときには、画像方向を考慮した第2の補正値を選択し、差Gが比較的小さいときには、周辺画素の最大値又は最小値に基づく第1の補正値を選択することが好ましいことが分かる。理想的な画素値Aideについて、第2の補正値にとって最も厳しい条件を考えると、白欠陥の場合には、理想的な画素値AideがSmaxに等しいという条件である。何故ならこのとき、補正残りC22が取り得る値の最大値が、最も大きな値であるSmax−Sminとなるからである。この最も厳しい条件において、第2の補正値を用いたときに現状よりも画質が悪化しないためには、理想的な画素値Aideと注目画素の画素値Aorgとの間の距離が、補正残りC22の最大値よりも長ければよい。そうすれば、注目画素の画素値Aorgと理想的な画素値Aideとの差が補正残りC22よりも必ず大きいことになり、第2の補正値を用いた時に現状より画質が悪化することがない。即ち、理想的な画素値Aide(=Smax)と注目画素の画素値Aorgとの間の距離が、Smax−Sminよりも長ければよい。言い換えれば、注目画素の画素値Aorgが、Smax+[Smax−Smin]よりも大きければよい。従って、注目画素の画素値Aorgが、Smax+[Smax−Smin]よりも大きいか否かに応じて、第2の補正値を選択することが好ましいか、或いは第1の補正値を選択することが好ましいか、についての条件が切り替わることになる。
【0057】
但し、現実には周辺画素に欠陥画素が存在する場合もあるので、上記の条件で第1の補正値の使用と第2の補正値の使用とを切り替えることは、あまり得策ではない。実際には、前述の
図6に関連して説明したように、画素値に重畳されるノイズの大きさに応じて、第1の補正値の使用と第2の補正値の使用とを切り替えることが好ましい。
【0058】
図13は、撮像装置の構成の一例を示す図である。
図13に示す撮像装置は、画像処理ユニット40、撮像素子60、画像データ保持部70、及び画像表示部80を含む。画像処理ユニット40は、デフォルトで機能する処理部として、欠陥画素補正部41、オフセット調整部42、WBゲイン調整部43、色補間処理部44、色補正処理部45、ガンマ補正部46、及びYC変換部47を含む。画像処理ユニット40は更に、オプションで機能する処理部として、階調補正部48、ノイズ抑制部49、エッジ強調部50、解像度変換部51、及びデータ圧縮部52を含む。
【0059】
画像処理ユニット40において、欠陥画素補正部41は、
図1に示す構成を有し、前述のような補正処理を実行することにより、撮像素子60からの画像中の欠陥画素を補正する。欠陥画素が補正された画像データを対象として、オフセット調整部42によりオフセットが調整され、WBゲイン調整部43によりホワイトバランスが調整され、色補間処理部44によりRGBベイヤ配列の色情報から各画素の色データを求める色補間が実行される。また更に、色補正処理部45による色補正、ガンマ補正部46によるガンマ補正、及びYC変換部47による輝度信号と色差信号とへの変換が実行される。
【0060】
画像処理ユニット40により処理された画像データは、画像データ保持部70に保持されると共に、画像表示部80に表示される。これにより、画像表示部80は、欠陥画素補正部41により欠陥画素が補正され、更に種々の処理が施された画像を表示する。
【0061】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。