と一致するようにデューティ指令値S5を調節する。デジタルパルス変調器106は、デューティ指令値S5に応じたデューティ比を有するパルス信号S1を生成する。補正部120は、検出データS6とフィードバックデータS2の差分にもとづいて、目標データD
少なくともスイッチングトランジスタ、誘導素子および前記スイッチングトランジスタのスイッチング動作に応じた直流の出力電圧が発生する出力ラインを有する出力回路と、
前記出力電圧にもとづいて前記スイッチングトランジスタを制御する請求項1から6のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするデジタル制御電源回路。
【背景技術】
【0002】
与えられた入力電圧よりも高い電圧あるいは低い電圧を生成するために、DC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)などの電源回路が利用される。こうした電源回路には、アナログ制御方式と、デジタル制御方式が存在する。アナログ制御方式では、電源回路の出力電圧とその目標値の誤差を、誤差増幅器によって増幅し、誤差増幅器の出力に応じてスイッチングのデューティ比を制御することで、出力電圧を目標値に安定化させる。デジタル制御方式では、電源回路の出力電圧をA/Dコンバータによってデジタル値に変換し、デジタル信号処理によってスイッチングトランジスタのデューティ比を制御する。
【0003】
デジタル制御方式の電源回路(デジタル制御電源回路、以下単に電源回路とも称する)は、制御アルゴリズムに制約が少ないため設計の自由度が高く、またソフトウェア的に制御方式を変更できるという利点がある。また、長期的な運用に際して、各種データの履歴をデジタル値として保持可能という利点もある。
【0004】
図1は、本発明者が検討したデジタル制御電源回路(単に電源回路と称する)の構成を示すブロック図である。
【0005】
電源回路2rは、制御回路10rおよび出力回路20を備える。電源回路2rは、入力ライン200の入力電圧V
INを受け、それを降圧して、出力ライン202に接続される負荷(不図示)に出力電圧V
OUTを供給する。
【0006】
出力回路20は、ドライバ204、スイッチングトランジスタM1、同期整流トランジスタM2、インダクタL1、出力キャパシタC1を含む。
図1には降圧DC/DCコンバータの出力回路が示される。ドライバ204は、制御回路10rの出力端子OUTから出力されるパルス信号S1にもとづいて、スイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2をスイッチングする。
【0007】
制御回路10rのフィードバック端子FBには、出力電圧V
OUTに応じたフィードバック電圧V
FBが入力される。制御回路10rは、A/Dコンバータ100、誤差検出器102、補償器104、デジタルパルス変調器106を備える。A/Dコンバータ100は、フィードバック電圧V
FBをデジタルのフィードバックデータS2に変換する。誤差検出器102は、フィードバックデータS2とその目標値D
REFの差分を示す誤差データS3を計算する。補償器104は、PID制御などを行い、誤差データS3がゼロに近づくように値が調節されるデューティ指令値S5を生成する。デジタルパルス変調器106は、デューティ指令値S5を受け、それに応じたデューティ比を有するパルス信号S1を生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、
図1の電源回路2rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0010】
図2は、
図1の電源回路2rの動作波形図である。A/Dコンバータ100が、スイッチング周期ごとに1回、出力電圧V
OUTをサンプリングする場合を考える。ここでは、スイッチングトランジスタM1がオフしたタイミングで出力電圧V
OUTがサンプリングされるものとする。この場合、リップルのピークで出力電圧V
OUTがサンプリングされ、出力電圧V
OUTのピーク値が目標値V
REFに近づくようにデューティ比Dが調節され、フィードバックがかかる。負荷に供給されるのは、出力電圧V
OUTの平均レベルV
OUT_AVEであり式(1)で与えられる。
V
OUT_AVE=V
REF−V
RIP/2 …(1)
つまりリップルV
RIPが増大するにしたがって、出力電圧V
OUTの平均レベルV
OUT_AVEは低下していく。
【0011】
いま、出力電圧V
OUTのリップルV
RIPとして、出力キャパシタC1のESR(等価直列抵抗)の電圧降下に起因する成分に着目する。このときのリップルV
RIPは、式(2)で与えられる。
V
RIP=ESR×V
OUT×(1−D)/(L・f
SW) …(2)
Dはスイッチングのデューティ比であり、f
SWはスイッチング周波数、LはインダクタL1のインダクタンスである。
【0012】
出力キャパシタC1として電解コンデンサを用いた場合、経年劣化により、そのESRが時間とともに増大していく。また、温度が低下すると出力キャパシタC1のESRは増大する。したがって
図1の電源回路2rでは、ESRが増大すると、リップルV
RIPが増大し、出力電圧V
OUTの平均レベルV
OUT_AVEが低下するという問題がある。
【0013】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、出力電圧V
OUTの安定性を改善可能なデジタル制御電源回路およびその制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある態様は、デジタル制御電源回路の制御回路に関する。制御回路は、デジタル制御電源回路の出力電圧に応じた電圧レベルを有するフィードバック電圧を、出力電圧のピークまたはボトムにおいてサンプリングし、デジタルのフィードバックデータに変換するA/Dコンバータと、フィードバックデータとフィードバック電圧の目標値を示す目標データの差分を示す誤差データを生成する誤差検出器と、誤差データがゼロに近づくように値が調節されるデューティ指令値を生成する補償器と、デューティ指令値を受け、デューティ指令値に応じたデューティ比を有するパルス信号を生成するデジタルパルス変調器と、フィードバック電圧から得られる出力電圧のリップル電圧の振幅にもとづいて、目標データを補正する補正部と、を備える。
フィードバックデータは、出力電圧V
OUTのピークレベル(またはボトムレベル)を表し、ピークレベル(ボトムレベル)が基準電圧と一致するようフィードバックがかかる。そこで出力電圧のリップル電圧に応じて、基準電圧を指示する目標データを補正することにより、出力電圧の平均レベルを一定に保つことができる。
【0015】
より詳しくは本発明のある態様の制御回路は、デジタル制御電源回路の出力電圧の時間平均に応じた電圧レベルを有する検出電圧を生成する第1フィルタと、(i)デジタル制御電源回路の出力電圧に応じた電圧レベルを有するフィードバック電圧を、出力電圧のピークまたはボトムにおいてサンプリングし、デジタルのフィードバックデータに変換するとともに、(ii)検出電圧をデジタルの検出データに変換するA/Dコンバータと、フィードバックデータと、フィードバック電圧の目標値を示す目標データの差分を示す誤差データを生成する誤差検出器と、誤差データがゼロに近づくように値が調節されるデューティ指令値を生成する補償器と、デューティ指令値を受け、デューティ指令値に応じたデューティ比を有するパルス信号を生成するデジタルパルス変調器と、検出データとフィードバックデータの差分にもとづいて、目標データを補正する補正部と、を備える。
【0016】
検出データは、出力電圧V
OUTの平均レベルを表し、フィードバックデータは、出力電圧V
OUTのピークまたはボトムレベルを表し、検出データとフィードバックデータの差分はリップル振幅の1/2を表すこととなる。したがって、検出データとフィードバックデータの差分によって目標データを補正することにより、出力電圧の平均レベルを一定に保つことができる。
【0017】
補正部は、検出データとフィードバックデータの差分を示す差分データを生成する差分データ生成部と、目標データの設定値に、差分データを加算する加算器と、を含んでもよい。
【0018】
補正部は、フィードバックデータを時間平均化する第2フィルタと、検出データを時間平均化する第3フィルタと、をさらに含んでもよい。
【0019】
A/Dコンバータは、検出データを、パルス信号の周期より長い周期で更新してもよい。
【0020】
補償器は、PID(比例、積分、微分)制御を行ってもよい。
【0021】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0022】
本発明の別の態様は、デジタル制御電源回路に関する。デジタル制御電源回路は、少なくともスイッチングトランジスタ、誘導素子およびスイッチングトランジスタのスイッチング動作に応じた直流の出力電圧が発生する出力ラインを有する出力回路と、出力電圧にもとづいてスイッチングトランジスタを制御する上述のいずれかの制御回路と、を備えてもよい。誘導素子は、インダクタもしくはトランスを含む。
【0023】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、上述のデジタル制御電源回路を備える。
【0024】
本発明の別の態様は、移動体通信用の基地局に関する。基地局は、上述のデジタル制御電源回路を備える。
【0025】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のある態様によれば、出力電圧の安定性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。また、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
図3は、実施の形態に係る電源回路2の回路図である。電源回路2は、制御回路10および出力回路20を備える。
【0031】
出力回路20は、制御回路10に外付けされるいくつかの回路部品および配線を含む。出力回路20は、少なくとも、スイッチングトランジスタM1、インダクタL1および出力ライン202を有する。
図3には、降圧DC/DCコンバータの出力回路が示されており、同期整流トランジスタM2、出力キャパシタC1およびドライバ204をさらに備える。ドライバ204は、制御回路10の出力端子OUTからのパルス信号S1にもとづいてスイッチングトランジスタM1および同期整流トランジスタM2を相補的にスイッチングし、入力ライン200の入力電圧V
INを降圧し、出力ライン202に所定レベルに安定化された直流の出力電圧V
OUTを発生させる。ドライバ204はパルス信号S1がハイレベルのときにスイッチングトランジスタM1をオン、同期整流トランジスタM2をオフし、ローレベルのときにスイッチングトランジスタM1をオフ、同期整流トランジスタM2をオンする。
【0032】
なお出力回路20のトポロジーは特に限定されず、昇圧型、昇降圧型、電圧反転型のコンバータであってもよいし、インダクタに代えてトランスを利用したコンバータであってもよい。
【0033】
制御回路10は、A/Dコンバータ100、誤差検出器102、補償器104、デジタルパルス変調器106、第1フィルタ110、補正部120を備え、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。制御回路10は、汎用マイコンの一部であってもよいし、専用に設計されたASIC(Application Specific IC)であってもよい。また
図3およびその他の図面に示される各ブロックは、専用のハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサにより構成してもよい。
【0034】
第1フィルタ110は、電源回路2の出力電圧V
OUTを平滑化し、出力電圧V
OUTの時間平均に応じた電圧レベルを有する検出電圧V
DETを生成する。検出電圧V
DETは、出力電圧V
OUTの平均電圧V
OUT_AVEを用いて以下の式で与えられる。
V
DET=V
OUT_AVE×R2/(R1+R2)
【0035】
A/Dコンバータ100は、(i)デジタル制御電源回路の出力電圧V
OUTに応じた電圧レベルを有するフィードバック電圧V
FBを、出力電圧V
OUTのピークまたはボトムにおいてサンプリングし、デジタルのフィードバックデータS2に変換する。たとえばフィードバック電圧V
FBは、出力回路20の抵抗分圧回路R1、R2によって出力電圧V
OUTを分圧した電圧である。またA/Dコンバータ100は、(ii)検出電圧V
DETをデジタルの検出データS6に変換する。
【0036】
A/Dコンバータ100は、上記(i)、(ii)の機能を時分割で行う。変換部100aと、その前段に設けられたセレクタ100bを含む。セレクタ100bは、検出電圧V
DETとフィードバック電圧V
FBを受け、一方を選択する。変換部100aは、セレクタ100bが選択した電圧をアナログ−デジタル変換する。これにより単一の変換部100aを用いて2つの電圧をデジタルデータに変換でき、ハードウェア資源を節約できる。
【0037】
あるいはA/Dコンバータ100は、検出電圧V
DETを検出データに変換する変換部と、フィードバック電圧V
FBをフィードバックデータに変換する変換部を備えてもよい。この場合、上記(i)、(ii)の機能を同時並列的に行ってもよい。
【0038】
A/Dコンバータ100は、フィードバック電圧V
FBをパルス信号S1の周期(スイッチング周期)T
SWごとに取り込んで更新する。一方A/Dコンバータ100は、検出電圧V
DETをスイッチング周期T
SWより長い周期(更新周期T
UD)ごとに取り込み、検出データS6を更新周期T
UDごとに更新する。更新周期T
UDは、リップル電圧V
RIPの変動に追従できればよいため、スイッチング周期T
SWよりも長くてよい。たとえば出力キャパシタC1のESRの変動は、月あるいは年という時間スケールで発生する。したがって更新周期T
UDは、スイッチング周期T
SWに対して十分に長い数百ms〜数秒、たとえば1秒としてもよい。
【0039】
誤差検出器102は、フィードバックデータS2と、フィードバック電圧V
FBの目標値を示す目標データD
REFの差分を示す誤差データS3を生成する。補償器104は、誤差データS3がゼロに近づくように値が調節されるデューティ指令値S5を生成する。補償器104の演算処理は特に限定されないが、たとえばPID制御を行ってもよい。あるいはPI制御などが採用される場合もある。
【0040】
デジタルパルス変調器106はデューティ指令値S5を受け、デューティ指令値S5に応じたデューティ比Dを有するパルス信号S1を生成する。本実施の形態においてデジタルパルス変調器106はパルス幅変調(PWM)を行うものとする。パルス信号S1は、所定の周期(以下、スイッチング周期という)Tpを有しており、そのハイレベルの区間をオン時間T
ON、ローレベルの区間をオフ時間T
OFFと称する。
T
ON=D×Tp
T
OFF=(1−D)×Tp
【0041】
たとえばデジタルパルス変調器106は、フリーランカウンタとデジタルコンパレータで構成することができる。フリーランカウンタは、周期的に値が遷移するキャリアを生成する。デジタルコンパレータは、キャリアの値とデューティ指令値S5のクロス点においてパルス信号S1を遷移させる。なおデジタルパルス変調器106の構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。
【0042】
補正部120には、検出データS6とフィードバックデータS2の差分が入力される。補正部120は、それらの差分にもとづいて、目標データD
REFを補正する。
【0043】
以上が制御回路10の基本構成である。本発明の範囲は、
図3のブロック図によって把握されるさまざまな回路に及ぶが、以下ではその中の具体的なひとつについて説明する。
【0044】
図4は、
図3の制御回路10のより具体的な構成例を示すブロック図である。
バッファ114は、フィードバック電圧V
FBを受け、A/Dコンバータ100に出力する。A/Dコンバータ100の入力インピーダンスが十分に高い場合、バッファ114は省略可能である。
【0045】
第1フィルタ110は、たとえば能動素子を用いたローパスフィルタ、すなわちアクティブローパスフィルタで構成してもよい。あるいは第1フィルタ110はパッシブフィルタであってもよい。第1フィルタ110のカットオフ周波数は、フィードバック電圧V
FBに重畳されるリップルを除去できるように、パルス信号S1の周波数(スイッチング周波数)より低く設定される。
【0046】
なお第1フィルタ110の出力インピーダンスが高い場合には、第1フィルタ110の出力段に、バッファを挿入してもよい。
【0047】
補正部120は、差分データ生成部122および加算器124を含む。
差分データ生成部122は、検出データS6とフィードバックデータS2の差分を示す差分データS7を生成する。差分データ生成部122は、セレクタ126、減算器128、第2フィルタ130、第3フィルタ132を含む。セレクタ126は、A/Dコンバータ100からフィードバックデータS2が出力されるとき(φ1)、フィードバックデータS2を第2フィルタ130に出力する。またセレクタ126は、A/Dコンバータ100から検出データS6が出力されるとき(φ2)、検出データS6を第3フィルタ132に出力する。第2フィルタ130はフィードバックデータS2の時間平均を演算し、第3フィルタ132は検出データS6の時間平均を演算する。第2フィルタ130、第3フィルタ132によってノイズの影響を除去でき、安定的な制御が可能となる。
【0048】
減算器128は、フィードバックデータS2から検出データS6を減算し、差分データS7を生成する。差分データS7は、出力電圧V
OUTのリップルの振幅V
RIPの1/2を示す。
【0049】
加算器124は、目標データの設定値(定数)D
REF0に差分データS7を加算し、目標データD
REFを生成する。こうして生成された目標データD
REFが示す目標電圧V
REFは、式(3)で表される。
V
REF=V
REF0+(V
FB−V
DET)=V
REF0+V
RIP/2 …(3)
【0050】
制御回路10は、フィードバックデータS2が目標データD
REFに近づくように、言い換えればフィードバック電圧V
FBが基準電圧V
REFに近づくように、出力回路20を制御する。
【0051】
以上が電源回路2の構成である。続いてその動作を説明する。
図5は、
図4の制御回路10の動作波形図である。
出力電圧V
OUTのピークごとに、フィードバック電圧V
FBがデジタルのフィードバックデータS2に変換される。また出力電圧V
OUTの平均レベルを示す検出電圧V
DETは、更新周期T
UDごとに少なくとも1回、もしくは複数回、取り込まれ、検出データS6に変換される。そして第2フィルタ130、第3フィルタ132により移動平均されたデータS2’、S6’にもとづいて差分データS7が生成され、目標データD
REFが補正される。
【0052】
図6は、
図3の電源回路2全体の動作波形図である。
ESRが増大すると、それに比例してリップル電圧V
RIPが増大する。この電源回路2では、基準電圧V
REFが、上述の式(3)にしたがって、リップル電圧V
RIPに追従して変化し、フィードバック電圧V
FBのピークレベルV
FB_PEAKが、式(3)の基準電圧V
REFと一致するように、つまり式(4)が成り立つようにフィードバックがかかる。
V
FB_PEAK=V
REF=V
REF0+V
RIP/2 …(4)
【0053】
出力ライン202に接続される負荷には、フィードバック電圧V
FB(実際は出力電圧V
OUT)の平均電圧V
FB_AVEが供給されることとなる。フィードバック電圧のピークV
FB_PEAKと平均V
FB_AVEの間には、式(5)の関係が成り立つ。
V
FB_PEAK=V
FB_AVE+V
RIP/2 …(5)
式(4)と(5)を対比すると、式(4)が成り立つようにフィードバックがかかることは、V
FB_AVEがV
REF0に近づくようにフィードバックがかかることと等価であることがわかる。
【0054】
ここで目標電圧V
REF0は、ESRや時間によらない定数である。したがって電源回路2によれば、出力電圧V
OUTのリップル電圧V
RIPが変化しても、出力電圧V
OUTの平均値を、所定の目標電圧V
REF0に応じた電圧レベル(V
REF0×(R1+R2)/R2)に安定化できる。
【0055】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0056】
(第1変形例)
実施の形態では、降圧コンバータについて説明したが本発明はそれには限定されない。
図7は、第1変形例に係る電源回路2aの回路図である。
図7の電源回路2aは、いわゆるアクティブクランプ方式のフォワードコンバータである。出力回路20aは、トランスT1によって1次側と2次側に分けられる。1次側には、トランスT1の1次巻線W1と、1次巻線W1と接続されたスイッチングトランジスタM1a、補助トランジスタM1b、クランプキャパシタC2、ドライバ204a、204bが設けられる。トランスT1の1次側と2次側の絶縁が要求される用途では、アイソレータ206が追加される。
【0057】
2次側には、トランスT1の2次巻線W2と、2次巻線W2と接続された整流用のトランジスタM2a、M2b、キャパシタC1、インダクタL1およびドライバ204cが受けられる。抵抗R1、R2は、出力電圧V
OUTを分圧し、フィードバック電圧V
FBを生成する。
【0058】
制御回路10aは、そのフィードバック端子FBに入力されたフィードバック電圧V
FBにもとづいて、パルス信号S1を生成し、パルス信号S1およびそれから派生するパルス信号を利用して、トランジスタM1a、M1b、M2a、M2bを駆動する。
【0059】
本発明は、このようなアクティブクランプ方式のフォワードコンバータにおいても有効である。そのほか、通常のフォワードコンバータにおいても本発明は有効であり、また2次側の整流用トランジスタM2a、M2bをダイオードに置換したトポロジーにおいても有効である。
【0060】
またフォワードコンバータではなく、フライバックコンバータ、ハーフブリッジ型、フルブリッジ型のコンバータにも本発明は適用可能である。当業者によれば、本発明は、特定の出力回路20のトポロジーに限定されることなく適用可能であることが理解される。
【0061】
(第2変形例)
実施の形態では、フィードバック電圧V
FBを出力電圧V
OUTのピークのタイミングでサンプリングし、フィードバック電圧V
FBのピークを目標電圧V
REFと一致させる場合を説明したが本発明はそれには限定されない。第2変形例において、制御回路10は、フィードバック電圧V
FBのボトムV
FB_BOTが基準電圧V
REFと一致するようにフィードバック制御する。この場合、A/Dコンバータ100は、フィードバック電圧V
FBを出力電圧V
OUTのボトムのタイミングでサンプリングし、フィードバックデータS2を生成する。補正部120は、式(3’)にしたがって基準電圧V
REFを補正する。
D
REF=D
REF0−(S2−S6)
V
REF=V
REF0−(V
FB−V
DET)=V
REF0−V
RIP/2 …(3’)
【0062】
(第3変形例)
実施の形態では、ESRの変化にともなう出力電圧V
OUTの変動を抑制する場合について説明したが、本発明はそれには限定されない。たとえば入力電圧V
INが変化すると、リップル電圧V
RIPは変化し、出力電圧V
OUTの平均レベルが変動しうる。本発明によれば、入力電圧V
INの変動にともなう出力電圧V
OUTの変動も抑制できる。この場合、検出電圧V
DETの更新周期T
UDをさらに短くし、更新頻度を高めることで、入力電圧変動に追従できる。
【0063】
(第4変形例)
実施の形態では、デジタルパルス変調器106が電圧モードのパルス幅変調を行う場合を説明したが、変調方式は特に限定されない。パルス幅変調に代えてその他の変調方式、たとえばピーク電流モードや平均電流モードの変調器を備える制御回路においても本発明は有効である。
【0064】
(第5変形例)
実施の形態では第1フィルタ110によって出力電圧V
OUT(フィードバック電圧V
FB)の平均レベルを検出し、出力電圧V
OUT(フィードバック電圧V
FB)のピーク(またはボトム)と平均レベルの差分にもとづいてリップル電圧V
RIP/2を検出したが、本発明はそれには限定されない。たとえば第1フィルタ110を省略し、A/Dコンバータ100によって、フィードバック電圧V
FBのピークとボトムの一方をフィードバックデータS2とし、その他方を検出データS6としてもよい。この場合、フィードバックデータS2と検出データS6の差分を演算することでリップル電圧V
RIPを検出できる。この場合、式(4)にもとづいて基準データD
REFを補正すればよい。
D
REF=D
REF0+(S2−S6)/2 (S2がフィードバック電圧のピーク)
D
REF=D
REF0−(S2−S6)/2 (S2がフィードバック電圧のボトム)
【0065】
(電源回路の用途)
最後に、電源回路2の用途を説明する。
図8(a)、(b)は、電源回路2を備える電子機器を示すブロック図である。
図8(a)の電子機器1aは、商用交流電源4からの交流電圧を整流するブリッジ回路6と、平滑キャパシタ8と、上述の電源回路2と、負荷9を備える。この場合、電源回路2としては、非絶縁型の降圧、昇圧、あるいは昇降圧コンバータなどが好適に利用できる。電子機器1aは、たとえば移動体通信用の基地局、テレビやPC、冷蔵庫などの家電製品、ファクシミリやコピー機などのOA機器、工作機械、などが例示される。
【0066】
図8(b)の電子機器1bは、電池3と、電池の電圧を受ける上述の電源回路2と、負荷9を備える。こうした電子機器1bとしては、携帯電話端末、タブレットPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのが例示される。たとえば負荷9は、マイコンやメモリ、液晶ドライバや、液晶バックライト用LED、カメラのフラッシュ用LEDなどであってもよい。
【0067】
実施の形態にもとづき、特定の語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。