【解決手段】入口及び出口を有するウォールフロー型フィルターと、該入口上の煤酸化層とSCR触媒成分を含んだ、該出口上に被覆されたSCR層とを含み、該SCR触媒が特定の骨格を有するモレキュラーシーブ上に、又は、特定の構造の混合相モレキュラーシーブ上に配置された銅又は鉄を含む、リーンバーン排ガスからNOx及び煤を除去するための二元機能触媒フィルター。
前記触媒成分が、アルミナ、チタニア、非ゼオライト系のシリカ−アルミナ、セリア、ジルコニア、ならびに、それらのうちの任意の2つ以上の混合物、複合酸化物および混合酸化物から成る群から選択される不動酸化物に担持される、請求項1に記載の物品。
前記SCR触媒成分が、V、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、Ni、またはCuから選択される少なくとも1つの金属を含み、前記金属が、アルミノシリケートモレキュラーシーブ、シリコアルミノホスフェートモレキュラ−シーブ、アルミナ、および混合酸化物ベースの材料から選択される担体上に配置される、請求項1に記載の物品。
前記煤酸化触媒成分および前記SCR触媒成分が、同じ配合を有し、前記入口における前記煤酸化触媒成分、および前記出口における前記SCR触媒成分が、約1:25〜約1:2の比で存在する、請求項1に記載の物品。
【背景技術】
【0002】
排ガスは、天然ガス、ガソリン、ディーゼル燃料、燃料油または石炭などの燃料の燃焼の間に発生する。エンジンまたは炉などの室内において燃焼が起きると、生じた排ガスは、排気管、排ガス煙道などを通って大気中に放出される前に一般的に処理される。排ガスの最大部分は、窒素(N
2)、水蒸気(H
2O)、および二酸化炭素(CO
2)から成るが、未処理の排ガスはまた、比較的小さい部分で、望ましくない有害および/または有毒な物質、例えば、不完全燃焼による一酸化炭素(CO)、未燃焼燃料からの炭化水素(HC)、過度の燃焼温度による窒素酸化物(NO
x)(例えば、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)、および亜酸化窒素(N
2O))、ならびに、粒子状物質(不溶性の炭素煤粒子)、液体の炭化水素(例えば、潤滑油および未燃焼燃料)、および可溶性有機画分も含有する。本発明と特に関連している排ガスは、高い空燃比(すなわち、非常に希薄な状態)を使用して一般に作動するディーゼルエンジンから排出される排ガスである。そのようなリーンバーン状態は、より無害な物質に効率的に変換することが困難であることが分かっている2つの成分、粒子状物質およびNO
xの比較的高い排出を伴う排ガスを生じさせることが多い。
【0003】
ディーゼルエンジンは、排ガスを大気中に排出する前に排ガスを処理するために別々にまたは一緒に働く、1つまたは複数の触媒成分を含む、排気システムを備えていることが多い。例えば、NO
xは、一般に選択触媒還元(SCR)と呼ばれているプロセスを介して、ある種の担持された触媒の存在下で、排ガス中のNO
xをNH
3と反応させることにより、窒素元素N
2と水に変換できることが知られている。既知のSCR触媒としては、担体上のセリア(CeO
2)とアルミナ(Al
2O
3)との混合物により支持されたバナジウム(V
2O
5)(EP0246859参照)、またはTiO
2に担持されたV
2O
5/WO
3(WO99/39809参照)が挙げられる。Fe−W/CeZrO
2(WO2009/001131)などの混合金属酸化物、ならびに、Cu:SAPO−34(US2010/0290963)などの、骨格外金属が装填されたアルミノシリケートおよびシリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブなどの他のSCR触媒も提示されている。
【0004】
NO
x処理とは違って、排ガス中の煤浄化は、一般的に、機械的ろ過を含む。例えば、煤排出は、コージエライトウォールフロー型フィルター(US2010/0170230)などのディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)に、煤を含有する排ガスを通すことによって低減することができる。しかし、フィルター上またはフィルター中での煤粒子の蓄積は、一般にエンジン性能および効率の低下を招く、フィルター全体の背圧の望ましくない上昇を引き起こし得る。フィルターを再生するためには、蓄積した、炭素を主成分とする煤を、フィルターから除去しなければならず、それは、一般的に、煤を周期的に燃焼することにより達成される。1つのそのような燃焼法は、フィルターに組み込んだ煤酸化触媒(すなわち、触媒煤フィルター(CSF))を介した、低温での煤の触媒酸化を含む(US4,902,487)。
【0005】
従来の排気システムは、NO
x処理用の構成部分(SCR)および煤処理用の構成部分(CSF)を別々に含む。しかし、排気システムが必要とする全体の空間を縮小する、コストを減らすなどのために、2つ以上の機能を行う個々の排気構成部分を設計することがしばしば望まれる。例えば、SCR触媒をフィルター基材に塗布したもの(SCRF)は、1つの基材が、2つの機能、すなわち、SCR触媒によるNO
xの触媒変換およびフィルターによる煤の除去を果たすことを可能にすることにより、排気処理システムの全体的な大きさを縮小するのに役立つ。例えば、米国特許公開第2010/0180580号は、SCR触媒をウォールフロー型DPFに塗布できることを開示している。しかし、SCRFにおける煤酸化触媒の除去は、フィルター表面に蓄積した煤を非常に高い温度で燃やすことを必要とする。高温のSCR触媒、例えば、Cu:SAPO−34は、利用可能であるが、水に不溶であるので、これらの触媒は、粘性のウォッシュコートとしてフィルターに塗布しなければならない。粘度のある触媒スラリーによりフィルターを被覆することは、背圧の著しい上昇、ならびにそれに対応する、燃料節約およびエンジン出力の低下を引き起こす。さらに、従来のSCRと酸化触媒との組み合わせは、NO
2に対する局所的な競合をもたらし、それにより、SCR触媒の変換効率を低下させるので適切ではない。
【0006】
したがって、リーンバーン排ガス中の煤およびNOxを処理するための効率的なシステムの必要性が依然として存在する。本発明は、とりわけその必要性を満たす。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ある種の実施形態では、本発明は、リーンバーン排ガスから煤およびNO
xを除去できる二重目的触媒フィルターを対象とする。
図1を参照すると、フィルターを通る排ガス流13の方向に対する入口14および出口15を有する、煤フィルター10、例えば、ディーゼル微粒子捕集フィルターを含む、本発明の実施形態が示されている。フィルター入口は、煤酸化ゾーン14を含む一方で、フィルター出口は、SCRゾーン15を含む。本明細書で使用する場合、用語「ゾーン」は、フィルター基材内および/またはフィルター基材上の別個の触媒領域を意味する。例えば、ゾーンは、触媒が浸透しているフィルター基材の領域、またはフィルター基材の上部および/またはフィルター基材内に存在する触媒層であり得る。ゾーンは、他のゾーンと完全に分離した別々の領域であり得るし、他のゾーンと隣接するか、重なり得るし、他のゾーンと部分的に融合し得る。用語「入口」は、排ガスが、外部の供給源から一般に流入する、フィルターの側面、前面、表面、チャンネル、および/または部分を意味する。用語「出口」は、排ガスがフィルターを一般に出る、フィルターの側面、前面、表面、チャンネル、および/または部分を意味する。触媒ゾーンおよびフィルター基材の位置付けに関する、語句「入口上の」または「出口上の」は、基材面の上部および/または基材壁内(すなわち、基材壁の細孔内)に存在する触媒を含むものとする。
【0017】
図2は、気体透過性壁27と、気体不透過性の入口キャップ25および出口キャップ26とにより画定された入口チャンネル23および出口チャンネル24を有する、ウォールフロー型フィルター20を示す。流動方向29を有する排ガスは、1つまたは複数の入口チャンネル23を通ってフィルター20に入り、入口チャンネルおよび出口チャンネルを隔てる気体透過性壁27を通過し、次いで、出口チャンネル24を通ってフィルターを出る。入口チャンネルに入る排ガスは、典型的には、煤、NO
xを含み、好ましくは、SCR反応を介してNO
xを他の気体に変換するのに使用される、NH
3などの窒素系還元剤も含有する。排ガスが、気体透過性壁を通過したとき、排ガス中の少なくとも一部の粒子状物質が、煤酸化ゾーンと接触する入口で捕捉される。煤酸化ゾーンは、煤の固体状炭素質粒子をCO
2および水蒸気などの気体に変換させる低温酸化反応を容易にし、次いで、それらの気体は、気体透過性フィルター壁を通過する。排ガスがSCR触媒ゾーンを通過するとき、少なくとも一部のNO
xが、SCR触媒の存在下でNH
3と反応し、NO
xが、還元されてN
2および他の気体になる。
【0018】
煤酸化ゾーンおよびSCRゾーンの各位置付けは、大部分の標的粒子状物質が、煤燃焼に十分な方法で煤酸化ゾーンと接触するのであれば、特に制限されない。したがって、ある種の実施形態では、2つのゾーンは、部分的または完全に重なる。他の実施形態では、2つのゾーンは、入口と出口の間にまとまる一方で、他の実施形態では、それらは、空間的に分離する。入口および出口上のゾーンは、フィルター基材の表面での被覆物として存在し得るし、フィルター基材のすべてまたは一部に拡散または浸透し得る。特に好ましい実施形態では、煤酸化ゾーンおよびSCRゾーンは、ウォールフロー型フィルターの壁の反対側に浸透する。すなわち、煤酸化ゾーンは、壁の入口チャンネル側から壁に浸透する煤酸化触媒により作り出され、SCRゾーンは、壁の出口チャンネル側から壁に浸透するSCR触媒により作り出される。
【0019】
ある種の好ましい実施形態では、煤酸化触媒成分は、セリウムおよびジルコニウムから成る担体材料としての、混合酸化物もしくは複合酸化物またはそれらの混合物上に分散されている少なくとも1つの遷移金属、あるいは、少なくとも1つの遷移金属が分散した不動酸化物(inert oxide)担体材料上に分散されている、単独の酸化物としての酸化セリウムおよび酸化ジルコニウム、もしくはそれらの複合酸化物、またはそれらの単独の酸化物と複合酸化物との混合物を含む。好ましくは、触媒中の酸化物としてのセリウムおよびジルコニウム(CeO
2−ZrO
2)の内容物は、Ce
xZr
1−xO
2であり、式中、xは、約0.01〜約0.90である。好ましくは、xは、0.5未満、例えば、約0.1〜約0.49、約0.1〜約0.4、または約0.1〜約0.2である。
【0020】
混合酸化物は、固溶体中の混合酸化物であり得る。ここで定義する「複合酸化物」は、少なくとも2種の元素から成る純粋な混合酸化物ではない、少なくとも2種の元素の酸化物を含む、大部分が非晶質の酸化物材料を意味する。
【0021】
1つまたは複数の遷移金属は、第VIB族金属、第IB族金属、第IVA族金属、第VB族金属、第VIIB族金属、第VIII族金属、希少金属、およびそれらのうちの任意の2つ以上の混合物から成る群から選択することができる。遷移金属成分は、酸化物、水酸化物、または遊離金属(すなわち、ゼロ価)の形態で存在することができる。第VIII族金属は、Ni、CoおよびFeの任意の1つまたは複数であり得;本発明において利用する第IVA族金属の実例は、SnおよびPbであり;第VB族金属としては、SbおよびBiが挙げられ;第VIIB族金属として、Mn、TcおよびReの1つまたは複数を使用することができ;希少金属としては、Ceが挙げられ;第IB族金属としては、Cuを挙げることができ;Cr、MoおよびWの1つまたは複数を、第VIB族金属に使用することができる。第VIII族の貴金属は、卑金属よりも高価であるからだけでなく、非選択的な反応、例えば、4NH
3+5O
2→4NO+6H
2Oを不必要に促進するので好ましくない。好ましい遷移金属は、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、Ni、WおよびCuから成る群から選択され、Fe、W、CeおよびCuがより好ましく、FeおよびWが特に好ましい。
【0022】
別の実施形態では、卑金属触媒は、2種以上の遷移金属から成る。好ましい実施形態では、卑金属触媒の遷移金属成分は、鉄およびタングステンから成る。セリアベースの触媒の問題点は、セリアベースの触媒が、硫黄によって不活性化され得ることである。しかし、例えば、タングステンと鉄などの、タングステンを含む遷移金属の2成分組み合わせは、組み合わせにおける非タングステン遷移金属(この場合では、鉄)の耐硫黄性を高める。
【0023】
触媒に存在する遷移金属の全濃度は、触媒の総重量に対して、約0.01〜約50wt%、例えば、約0.1〜約30wt%、約0.5〜約20wt%、約1〜約10wt%、約5〜約15wt%、または約2〜約5wt%であり得る。
【0024】
煤酸化ゾーンにおける煤酸化触媒成分の総量は、具体的な用途に左右されるであろうが、約0.1〜約15g/in
3、約1〜約7g/in
3、約1〜約5g/in
3、約2〜約4g/in
3、または約3〜約5g/in
3の煤酸化触媒成分を含み得る。
【0025】
ある種の実施形態では、煤酸化触媒成分は、アルミナ、チタニア、非ゼオライト系のシリカ−アルミナ、セリア、ジルコニア、ならびに、それらのうちの任意の2つ以上の混合物、複合酸化物、および混合酸化物から成る群から選択される不動酸化物担体に担持される。
【0026】
煤酸化触媒組成物は、水溶液として、またはウォッシュコートスラリーとして、フィルター基材に塗布することができる。煤酸化触媒のための好ましいウォッシュコート装填量は、約0.1〜約0.5g/in
3である。
【0027】
本発明による方法で使用する触媒は、水性遷移金属塩の担体材料への含浸、インシピエントウェットネス(incipient wetness)法、または共沈法を含めた当業者に既知の方法により得ることができる。例えば、煤酸化触媒成分は、タングステン、セリウムおよびジルコニウムの塩を共沈させることにより得ることができる。さらなる実施形態では、該触媒は、セリウムおよびジルコニウムの塩を共沈させ、次いで、得られた生成物をタングステン塩にのみ含浸し、600℃未満の間の温度で仮焼することによって得られる。どの準備手段が選択されても、既存の環境中で(例えば、空気中で)、高温、例えば、600℃超、例えば、650℃以上、または700℃以上に、適切な時間加熱することにより、触媒を活性化させることが望ましい。この加熱活性化ステップは、ジルコニア上に分散する鉄およびタングステンから成る触媒にとって特に望ましい。
【0028】
ディーゼル微粒子捕集フィルター上で使用するSCR触媒は、特に限定されない。好ましいSCR触媒組成物は、触媒担体材料および金属を含む。適切な触媒担体材料の例としては、アルミナ、アルミノシリケート(例えば、ゼオライト、シリコアルミノホスフェート)、アルミノホスフェートもしくは他のモレキュラーシーブ、または混合相モレキュラーシーブ(例えば、AEI/CHA、AEI/SAV、AEN/UEI、AFS/BPH、BEC/ISV、ITE/RTH、KFI/SAV、lMTT/TON、SBS/SBT、およびSSF/STF)、チタニア、セリア、ジルコニア、バナジウム酸塩、ランタナ、または混合酸化物ベースの材料が挙げられる。特に好ましい担体材料としては、CHA、LEV、ERI、AEI、UFIまたはDDR骨格を有する、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートモレキュラーシーブが挙げられる。適切な金属の例としては、触媒担体材料によって分散した、Cu、Pb、Ni、Zn、Fe、Sb、W、Ce、Mo、Tn、Mg、Co、Bi、Cd、Ti、Zr、Sb、Mg、Cr、V、Ni、Ga、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Re、Ir、Pt、およびそれらの混合物が挙げられる。ある種の実施形態では、好ましい金属としては、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、および銅(Cu)、ならびに、それらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましいSCR触媒は、Cu:SSZ−13およびCu:SAPO−34を含めた、骨格外(例えば、イオン交換した)銅または遊離銅を有するチャバサイトなどの銅装填小細孔モレキュラーシーブが挙げられる。他の有用なSCR触媒としては、Fe:Beta、Cu:ZSM5、およびCu:ZSM−34が挙げられる。ある種の実施形態では、Cu:CHAのSCR触媒が特に好ましい。
【0029】
本発明にとって特に好ましいSCR触媒は、W−CeO
2−ZrO
2またはFe−W−CeO
2−ZrO
2である。出願人らは、そのような触媒を改変することにより、C−O
2反応の点火温度を下げながら、触媒がNH
3−SCR反応を行うことが可能になることを見出した。特に、Ce
xZr
1−xO
2(式中、xは、約0.1〜約0.99である)が、C−O
2反応を促進するのに有効であることが発見されており、これらの材料をWでドープすることにより、SCR反応に対するそれらの活性が高まる。したがって、ある種の実施形態では、本発明は、NH
3によるNO
x還元反応とO
2による煤酸化の両方を行うことが可能なW−CeO
2−ZrO
2および/またはFe−W−CeO
2−ZrO
2触媒システムに関する。これらの材料上のW、Fe、およびZr担持量は、この二元機能性を実現するために最適化することができる。
【0030】
ある種のSCR触媒組成物は、典型的には、ウォッシュコートスラリーとしてフィルターに塗布される。他のSCR触媒組成物は、水溶液としてフィルターに塗布することができる。
【0031】
SCRゾーンにおけるSCR触媒成分の総量は、具体的な用途に左右されるであろうが、約0.1〜約15g/in
3、約1〜約7g/in
3、約1〜約5g/in
3、約2〜約4g/in
3、または約3〜約5g/in
3のSCR触媒を含み得る。SCR触媒にとって好ましいウォッシュコート装填量は、約0.1〜約0.5g/in
3である。
【0032】
好ましい実施形態では、煤酸化触媒およびSCR触媒は、約1:25〜約1:2、例えば、約1:10〜約1:5の比で存在する。そのような煤酸化触媒対SCR触媒の比を有するある種の実施形態では、煤酸化触媒およびSCR触媒は、同一または類似の配合を有する。例えば、煤酸化触媒およびSCR触媒は共に、W−CeO
2−ZrO
2および/またはFe−W−CeO
2−ZrO
2であり得、そこでは、フィルターの入口側が、フィルターの出口側と比較してより少ない触媒組成物で被覆される。ある種の他の実施形態では、煤酸化触媒およびSCR触媒は、W:Feおよび/またはCeO
2:ZrO
2の相対比が異なる以外、類似の配合を有する。
【0033】
煤触媒およびSCR触媒は、他の非触媒性成分、例えば、担体、結合剤、安定化剤、および促進剤を含むことができる。これらの追加の成分は、必ずしも所望の反応に触媒作用を及ぼさないが、その代わり、例えば、触媒材料の作動温度の範囲を拡大すること、触媒の接触表面積を増大させることなどにより、触媒材料の有効性を向上させる。したがって、触媒成分を含む触媒ゾーンも同様に、追加の非触媒性成分を含むことができる。そのような任意選択の非触媒性成分の例としては、触媒組成物に存在するが、1つまたは複数の非触媒目的を果たす、非ドープアルミナ、チタニア、非ゼオライト系のシリカ−アルミナ、セリア、およびジルコニアを挙げることができる。
【0034】
本発明において使用するDPF基材の種類は、フィルターが、本明細書に記述した煤酸化ゾーンおよびSCRゾーンに適した基材であり、煤酸化ゾーンおよびSCRゾーンに適合する適切な物理的特性、例えば、多孔性、平均細孔径などを有していれば、特に限定されない。適切なDPFとしては、不織布フィルター、および金属製またはコージエライトハニカム、ならびに他の種類のディーゼル微粒子捕集フィルターを挙げることができる。自動車用途に使用するのに好ましいフィルター基材は、複数の隣接した平行チャンネルを含むいわゆるハニカム形状を有するモノリスであり、各チャンネルは、四角形、円形、六角形、または三角形の断面を一般に有する。ハニカム形は、最小の全体的サイズおよび圧力降下とともに、広い触媒表面をもたらす。他の基材は、例えば、中心軸のまわりに積み重ねる、丸める、または並べることを含めた、任意の適切な方式で区分できるシートまたはスクリーンを含む。他の基材は、好ましくは、結合体(cohesive mass)を形成するように、結合剤で結び付けられたまたは焼結された、吸着剤のペレットで形成できる充填層を含む。
【0035】
本発明において使用する煤フィルターは、焼結金属、セラミックまたは金属繊維などを含めた様々な材料を使用して製造することができる。好ましい種類のフィルターは、フィルター本体の長さの大部分にわたりほぼ平行に通る多数の小さなチャンネルのモノリシック配列の形態の、多孔性セラミックまたは他の材料でできている、いわゆる「ウォールフロー」型フィルターであり、そこで、それらのチャンネルは、市松状で、交互の末端に蓋をされる。ウォールフローモノリスの具体的な構築材料としては、コージエライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカ−マグネシアもしくはケイ酸ジルコニウム、セラミック複合繊維、または多孔性耐熱金属が挙げられる。好ましい材料としては、コージエライト、炭化ケイ素、およびチタン酸アルミナが挙げられる。
【0036】
ウォールフロー型フィルターのチャンネルの交互の末端に蓋をする、またはそれらをふさぐことにより、排ガスが、多孔性のセラミックチャンネルの壁に強制的に通される。多孔性であるが、これらの壁は、ほとんどの微粒子が通過するのを妨げる。すなわち、触媒フィルターにより処理されなかった排ガスは、基材チャンネル(すなわち、フィルター入口)に流入し、そこで、基材壁の上流側と接触する。エンジンが作動している間、基材の入口面と出口面との間に圧力差(出口面よりも入口面での圧力が高い)が存在し、したがって、基材壁の上流側と下流側の間にも圧力差が存在する。この圧力差は、壁の気体透過性に沿って、入口面に開いているチャンネルに流入する排ガスを、多孔性の壁の上流側から、その壁の下流を通り、次いで、排気システムの下流部分に開いている隣接のチャンネル(すなわち、フィルター出口)に入る。本発明において有用なウォールフロー型フィルターは、断面の平方インチ当たり、約700個までのチャンネル(セル)を有する。一実施形態では、ウォールフロー型フィルターは、平方インチ当たり約100〜400個のセル(「cpsi」)を含む。
【0037】
フィルター基材の実際の形および寸法、ならびに、チャンネルの壁の厚さ、多孔性などの特性は、対象の具体的な用途に左右される。しかし、ある種の実施形態では、排ガスが通過する、セラミックのウォールフロー型フィルターのフィルターチャンネルの壁における細孔の平均寸法は、約5〜約50μm、例えば、約15〜約30μmの範囲である。他の実施形態では、フィルターの平均細孔径は、約10〜約200nmである。ある種の実施形態では、ウォールフロー型フィルターは、約30〜40%の多孔率を有する。他の実施形態では、ウォールフロー型フィルターは、少なくとも5ミクロン(例えば、5〜30ミクロン)の平均細孔径を有する、少なくとも40%(例えば、45%〜75%)、好ましくは少なくとも55%(例えば、55%〜75%)の多孔率を有する。
【0038】
本発明により使用されるウォールフロー型フィルターは、好ましくは、少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の効率を有する。ある種の実施形態では、効率は、約75〜約99%、約75〜約90%、約80〜約90%、または約85〜約95%である。ここで、効率は、一般に従来のディーセル排ガスに見られる、煤および他の同様の大きさの粒子、ならびに、微粒子濃度に関連する。例えば、ディーゼル排気中の微粒子は、大きさが、0.05ミクロンから2.5ミクロンの範囲であり得る。したがって、効率は、この範囲または、0.1〜0.25ミクロン、0.25〜1.25ミクロン、もしくは1.25〜2.5ミクロンなどの部分的範囲に基づくものであり得る。コージエライトにとって好ましいた多孔率は、約60〜約75%である。
【0039】
排気システムの通常の作動の間、煤および他の微粒子は、壁の上流側に蓄積し、そのことは、背圧の上昇につながる。この背圧の上昇を軽減するために、フィルター基材は、蓄積した煤を燃焼することにより、連続的または周期的に再生される。燃焼プロセスは、煤酸化触媒ゾーンにより促進される。多孔性の基材壁を通過する排ガスはまた、壁に統合されたSCR触媒と接触し、したがって、排ガスからのNO
x成分の大部分を除去する。
【0040】
煤酸化ゾーンおよびSCRゾーンは、任意の実用的手段により、煤フィルターに組み込むことができる。例えば、ウォールフロー型煤フィルターの入口チャンネルは、煤酸化触媒組成物を、ある深さおよび/または濃度まで、フィルターの壁に浸透させる深さに、かつその時間の間、煤酸化触媒組成物に浸すことができる。圧力または真空の適用などのさらなる技法を、特定の被覆剤の適切で一様なおよび/またはより速い浸透を促進するのに使用することができる。煤酸化触媒組成物が、ウォールフロー型フィルターの入口に浸透した後、フィルターは、乾燥され、次いで、フィルターの出口チャンネルは、SCR触媒組成物を、ある深さおよび/または濃度まで、フィルターの壁に浸透させる深さに、かつその時間の間、SCR触媒組成物に浸すことができる。再度、圧力または真空の適用などのさらなる技法を、特定の被覆剤の適切で一様なおよび/またはより速い浸透を促進するのに使用することができる。次いで、SCRゾーンは、乾燥される。所望の被覆レベルを達成するために、浸漬プロセスの1つまたは複数を繰り返すことができる。許容される触媒装填量が得られた後、触媒被覆は、好ましくは、約100℃〜約300℃の温度で、約1〜約3時間活性化される。活性化したフィルターは、さらなる水分を取り除くために、約450℃〜約550℃で、約1〜約3時間仮焼される。好ましい適用方法は、AIDである。乾燥および仮焼ステップは、好ましくは、標準のCSFの準備条件の通りに行われる。
【0041】
本発明の別の態様は、リーンバーン排ガスを処理するためのシステムを対象とする。そのような排ガスシステムは、2種以上の別々の装置または構成部分の配置であり、それぞれは、他のもの(複数可)とは関係なく、排ガスの組成を変えることができるが、他のもの(複数可)と相互に作用して、排ガスを処理するための統一のとれたスキームを形成する。好ましくは、排ガスシステムの構成部分の1つまたは複数は、相互に作用して、相乗的結果を生じる。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明のシステムは、フィルターの上流に配置される、排ガスに窒素系還元剤を導入するための注入器または他の装置と流体連通する、本明細書で記述した二元機能触媒煤フィルターを含む。本発明者らは、フィルターの煤酸化ゾーンが、下流のSCR反応に必要な窒素ベースの還元剤(尿素、アンモニアなど)を消費しないことを発見した。したがって、本発明は、煤酸化触媒を含有するフィルターの上流で、排ガスに還元剤を与えることを可能にする。ある種の実施形態では、該システムは、リーンバーン内燃エンジンにより発生する排ガス流、流れる排ガスを運ぶための1つまたは複数の導管であって、排気システムの構成部分の少なくともいくつかと流体接続する導管、および/または窒素系還元剤の供給源をさらに含む。
【0043】
注入器は、連続的、周期的または断続的に、還元剤(例えば、気体のアンモニア、アンモニア水溶液、水性尿素、またはアンモニア発生器からのアンモニア)を、下流のSCR反応の最適化に有効な用量で、排ガスに導入する。注入器は、排ガス流と流体連通し、排ガスシステムの少なくとも一部によって排気を誘導するための導管、例えば、パイプに取り付ける、接続する、および/または一体化することができる。注入器はまた、還元剤を繰り返し注入するために、還元剤供給タンクと流体連通することができる。
【0044】
特定の実施形態では、計量は、(適切なNOxセンサーを使用して)直接的に、または、エンジンの状態の指標である上述の入力の任意の1つまたは複数と、排ガスの予想されるNO
x含有量とを相関する、前もって相関されたルックアップテーブルまたはマップ(制御手段で保存されたもの)を使用してなど間接的に決定される、排ガス中の窒素酸化物の量に応じて制御される。窒素系還元剤の計量は、1:1NH
3/NOおよび4:3NH
3/NO
2で計算して、理論上のアンモニアの60%〜200%が、SCR触媒に入る排ガスに存在するように決めることができる。制御手段は、前もってプログラムされたプロセッサー、例えば、電子制御ユニット(ECU)を備えることができる。計量の制御は、SCR触媒が、例えば、100℃超、150℃超、または175℃超など、所望の効率で、またはそれを超えて、NO
x還元を触媒することができることが決定された場合にのみ、窒素系還元剤の流動排ガスへの導入を制限することを含む。制御手段による決定は、排ガス温度、触媒床温度、アクセル開度、システムにおける排ガスの質量流量、吸気管圧力、点火時期、エンジン速度、排ガスのλ値、エンジンに注入した燃料の量、排ガス再循環(EGR)バルブの位置、ならびにそれによるEGRおよび昇圧の量から成る群から選択される、エンジンの状態の指標である、1つまたは複数の適切なセンサー入力により補助され得る。
【0045】
ある種の好ましい実施形態では、注入器は、注入器とフィルターとの間にSCRまたは他の触媒成分が介在することなく、二元機能触媒フィルターの上流に配置される。すなわち、排気流中のNH
3は、それが、排ガス流に入った後、およびフィルターのSCRゾーンに接触する前に消費されないか、さもなければ利用されない。
【0046】
別の実施形態では、窒素ベースの還元剤、特にNH
3のすべてまたは少なくとも一部は、二元機能触媒フィルターの上流に配置される、NO
X吸着触媒(NAC)、リーンNO
Xトラップ(LNT)、またはNO
X貯蔵/還元触媒(NSRC)によって供給され得る。本発明におけるNACの機能の1つは、下流のSCR反応のためのNH
3源を与えることである。したがって、NACは、該システムにおいて、注入器のものと同じように、すなわち、NACとフィルターとの間にSCRまたは他の触媒成分が好ましくは介在することなく、二元機能触媒フィルターの上流で構成される。本発明において有用なNAC成分としては、塩基性物質(アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、およびそれらの組み合わせを含めた、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または希少金属など)と、貴金属(白金など)と、場合により還元触媒成分(ロジウムなど)との触媒組み合わせが挙げられる。NACに有用な塩基性物質の具体的な種類としては、酸化セシウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。貴金属は、好ましくは、約10〜約200g/ft
3、例えば、20〜60g/ft
3で存在する。あるいは、触媒の貴金属は、約40〜約100グラム/ft
3であり得る平均濃度を特徴とする。
【0047】
ある種の条件下で、周期的なリッチ再生事象の間、NO
x吸着触媒上で、NH
3が発生され得る。NO
x吸着触媒の下流のSCR触媒は、システム全体のNO
x還元効率を高めることができる。組み合わせシステムにおいて、SCR触媒は、リッチ再生事象の間にNAC触媒から放出されたNH
3を貯蔵することができ、貯蔵したNH
3を利用して、通常のリーン作動状態の間にNAC触媒を通りぬけるNO
xの一部またはすべてを選択的に還元する。
【0048】
ある種の実施形態では、該システムは、ディーゼル排気の炭化水素ベースの可溶性有機成画分(SOF)および一酸化炭素内容物を単純な酸化により酸化する、すなわち、
CO+1/2O
2→CO
2
[HC]+O
2→CO
2+H
2O
のためのディーゼル酸化触媒(DOC)をさらに含む。DOCはまた、NOを酸化してNO
2にする役割を果たすことができ、NO
2は、微粒子捕集フィルター中の粒子状物質を酸化するために使用され得る。加えて、DOCは、排ガス中の粒子状物質(PM)を減らす役割を果たすこともできる。
【0049】
好ましくは、DOCは、二元機能触媒フィルターの上流の上流、より好ましくは、SCRの還元剤注入器またはNACの上流に配置される。
【0050】
さらなる実施形態では、排ガス中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素にするための酸化触媒は、排ガスへの窒素系還元剤を計量する箇所の上流に位置することができる。一実施形態では、酸化触媒は、例えば、250℃〜450℃という酸化触媒入口での排ガス温度で、NO対NO
2の比が体積で約4:1〜約1:3である、SCRゼオライト触媒に入るガス流をもたらすように適合される。別の実施形態では、該システムは、DOCの上流に、クローズドカップル型触媒(Closed Coupled Catalyst)(CCC)をさらに含む。
【0051】
酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上に被覆される、少なくとも1つの白金族金属(またはこれらのある組み合わせ)、例えば、白金、パラジウム、またはロジウムを含むことができる。DOCにおいて使用できる他の金属触媒は、アルミニウム、バリウム、セリウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希少金属、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態では、該少なくとも1つの白金族金属は、白金、パラジウム、または白金とパラジウム両方の組み合わせである。白金族金属は、高表面積のウォッシュコート構成部分、例えば、アルミナ、アルミノシリケートゼオライトなどのゼオライト、シリカ、非ゼオライト系のシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、またはセリアとジルコニアの両方を含有する混合もしくは複合酸化物に担持させることができる。好ましい実施形態では、ディーゼル酸化触媒組成物は、高表面積の耐熱性酸化物担体(例えば、γ−アルミナ)上に分散されている、約10〜120g/ft
3の白金族金属(例えば、白金、パラジウム、またはロジウム)を含有する。
【0052】
ある種の実施形態では、1つまたは複数の追加のSCR触媒成分は、排ガス中のNO
x濃度をさらに低下させるために、該システムに、好ましくは、二元機能触媒フィルターの下流に含めることができる。例えば、排ガスは、二元機能触媒フィルターから出ると、SCR触媒で被覆されたフロースルー基材を通過する。したがって、フロースルーSCR触媒は、二元機能触媒フィルターの下流に配置される。排ガスのNO
x濃度は、排ガスが、二元機能触媒フィルターを通過したときに低下し、排ガスが、1つまたは複数のSCRフロースルー基材を連続して通過したときにさらに低下する。別の実施形態では、該システムは、SCRフロースルー触媒の上流、および二元機能触媒フィルターの下流に追加の還元剤注入器をさらに含む。ある種の実施形態では、該1つまたは複数の下流のSCRフロースルー触媒は、押出し物品である。
【0053】
追加のSCR触媒フロースルー構成部分の数は、任意の実際的な数、例えば、1つ、2つ、3つ、または4つであり得る。下流のSCR触媒(複数可)は、二元機能触媒フィルター上に被覆されたSCR触媒と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ある種の実施形態では、好ましいSCR触媒としては、Cu:SSZ−13およびCu:SAPO−34を含めた、骨格外銅または遊離銅を有するチャバサイトなどの銅装填小細孔モレキュラーシーブが挙げられる。
【0054】
ある種の実施形態では、該システムは、二元機能触媒フィルターの下流に、いくつかの実施形態では、フロースルーSCR構成部分の下流に配置されるアンモニアスリップ触媒をさらに含む。ASCは、大気中に排ガスを排出する前に、または、排ガスがエンジンに入る/再び入る前に排ガスを再循環ループに通す前に、すべてではないにしても、ほとんどのアンモニアを酸化する役割を果たす。したがって、ASCは、SCR反応からのアンモニアスリップ、急速な温度上昇の間の触媒表面からのアンモニアの放出による、または化学量論的に過剰な還元剤の使用によるアンモニアスリップの濃度を低下させる。好ましくは、ASC材料は、NO
xまたはN
2Oの形成ではなく、アンモニアの酸化に有利に働くように選択されるべきである。好ましい触媒材料は、白金、パラジウム、またはそれらの組み合わせを含み、白金、または白金/パラジウムの組み合わせが好ましい。好ましくは、触媒は、これに限定されないがアルミナを含めた、高表面積の担体上に配置される。ある種の実施形態では、ASCは、基材、好ましくは、背圧が最小である広い接触表面を与えるように設計された基材、例えば、フロースルーの金属性またはコージエライトハニカムに塗布される。例えば、好ましい基材は、低い背圧を確実にするために、1平方インチ当たり約25から約300の間のセル(CPSI)を有する。低い背圧を実現することは、低圧EGR性能へのASCの影響を最小限に抑えるために特に重要である。ASCは、約0.3〜2.3g/in
3の装填量を好ましくは実現するために、ウォッシュコートとして、基材に塗布することができる。さらなるNO
x変換をもたらすために、基材の前部は、SCR被覆剤のみで被覆することができ、後部は、SCRと、PtまたはPt/Pd担持アルミナなどのNH
3酸化触媒とで被覆することができる。
【0055】
本発明の別の態様は、窒素酸化物が、好ましくは、少なくとも100℃の温度、例えば、約150℃〜750℃で、窒素系還元剤で還元される方法に関する。ある種の実施形態では、該方法は、煤と、NO
xと、窒素系還元剤、好ましくはNH
3とを含有するリーンバーン排ガスを、本発明の二元機能触媒フィルターに流すステップであって、該フィルターを出る排ガスが、該フィルターに流入する排ガスと比較して低い濃度の煤およびNO
xを有するステップを含む。該方法は、以下のステップの1つまたは複数をさらに含むことができる:(a)二元機能触媒フィルターの入口と接触する煤を蓄積および/または燃焼するステップ;(b)NO
xおよび還元剤の処理を含む触媒ステップが好ましくは介在することなく、窒素系還元剤を排ガス流に導入してから、二元機能触媒フィルターに接触させるステップ; (c)NO
x吸着触媒上でNH
3を発生させ、好ましくは、そうしたNH
3を、下流のSCR反応における還元剤として使用するステップ;(d)排ガス流をDOCと接触させて、炭化水素ベースの可溶性有機画分(SOF)および/または一酸化炭素を酸化してCO
2にする、および/または、NOを酸化してNO
2にし、NO
2が、微粒子捕集フィルター中の粒子状物質を酸化する、および/または、排ガス中の粒子状物質(PM)を減らすために使用され得るステップ;(e)排ガスを、還元剤の存在下で、1つまたは複数のフロースルーSCR触媒装置(複数可)と接触させて、排ガス中のNOx濃度をさらに低下させるステップであって、該1つまたは複数のフロースルーSCR触媒装置(複数可)が、好ましくは、二元機能触媒フィルターの下流に配置されるステップ;ならびに(f)排ガスを、好ましくは二元機能触媒フィルターの下流にある、アンモニアスリップ触媒、および存在する場合、該1つまたは複数のフロースルーSCR触媒装置と接触させて、すべてではないにしても、ほとんどのアンモニアを酸化してから、大気中に排ガスを排出するか、排ガスがエンジンに入る/再び入る前に再循環ループに排ガスを通すステップ。
【0056】
特定の実施形態では、SCR反応の温度範囲は、175〜550℃である。別の実施形態では、その温度範囲は、175〜400℃である。さらに別の実施形態では、その温度範囲は、450〜900℃、好ましくは、500〜750℃、500〜650℃、450〜550℃、または650〜850℃である。特定の実施形態では、窒素酸化物の還元は、酸素の存在下で行われる。本発明による方法では、窒素系還元剤の添加は、1:1NH
3/NOおよび4:3NH
3/NO
2で計算して、触媒入口でのNH
3が、理論上のアンモニアの60%〜200%になるよう制御されるように制御することができる。ある種の実施形態では、触媒入口のガスにおける一酸化窒素対二酸化窒素の比は、体積で4:1〜1:3である。この点について、そのガスにおける一酸化窒素対二酸化窒素の比は、触媒の上流に位置する酸化触媒を使用して、一酸化窒素を酸化して二酸化窒素にすることにより調整することができる。
【0057】
窒素系還元剤は、アンモニア自体、ヒドラジン、または、尿素((NH
2)
2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、およびギ酸アンモニウムから成る群から選択されるアンモニア前駆物質を含めた、任意の適切な供給源から得ることができる。NH
3はまた、二元機能触媒フィルターの上流に配置される、リーンNOxトラップまたは同様の装置により供給することもできる。
【0058】
該方法は、燃焼プロセスから、例えば、内燃エンジン(可動式でも固定式でも)、ガスタービン、および石炭または石油火力発電所から得られるガスで実施することができる。該方法はまた、精製などの工業的プロセス、精油所ヒーターおよびボイラー、加熱炉、化学処理工業、コーク炉、市のごみ処理場、および焼却炉からのガスを処理するために使用することができる。特定の実施形態では、該方法は、自動車のリーンバーン内燃エンジン、例えば、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン、または液化石油ガスもしくは天然ガスで動くエンジンからの排ガスを処理するために使用される。
【0059】
実施例
本発明のある種の実施形態の特定の態様をさらに明示するために、非限定的な実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0060】
疑似のディーゼル排ガス煤と、コージエライト、CeO
2−ZrO
2、W−CeO
2−ZrO
2(5wt.%W)、W−CeO
2−ZrO
2(15wt.%W)の各組成物との物理的混合物を、粉末として調製した。これらの粉末を、混合物をHeおよび5%O
2を含有する気体混合物中で傾斜させるTPOタイプの実験で試験した。煤点火温度を、CO
2形成により測定する。これらの試験の結果を、
図4に示す。特に、Ce
xZr
1−xO
2(x=1.0)は、煤の酸化を促進し、点火温度は、触媒の非存在下での約600℃の温度から、約450℃の温度に低下する。Wの存在は、わずかに反応性を弱める。
【実施例2】
【0061】
CeO
2−ZrO
2、W−CeO
2−ZrO
2(5wt.%W)、W−CeO
2−ZrO
2(15wt.%W)の各組成物を、粉末として調製した。これらの粉末を、マイクロリアクターで試験して、CeO
2−ZrO
2のNO
x還元活性へのタングステンの効果を決定した。これらの試験の結果を、
図5に示す。結果が示す通り、Wの存在は、CeO
2−ZrO
2のNO
x還元活性を高める。
【実施例3】
【0062】
W−CeO
2−ZrO
2およびW−CeO
2の各組成物を、粉末として調製した。これらの粉末を、マイクロリアクターで試験して、NO
x還元活性へのZrO
2の効果を決定した。これらの試験の結果を、
図6に示す。結果が示す通り、W−CeO
2触媒は、NO
x還元に有効である。
【実施例4】
【0063】
CeO
2−ZrO
2およびW−CeO
2−ZrO
2の各組成物を、1立方インチ当たり約0.3gの装填量で、別個のSiCフロースルーフィルターコア(直径1インチおよび長さ7インチ)に被覆した。これらの被覆されたフィルターの煤酸化活性を、US06ディーゼル燃料の燃焼の間に生成する煤を、まずそれらに装填することにより測定した。そのフィルターに、1立方インチ当たり約10〜20mgの煤を装填した。煤酸化実験を、背圧をモニタリングしながら、GHSV約60Khr
−1で、N
2と10%O
2との気体混合物中で行った。触媒を全く含有せず、かつ、煤を少しも有さない被覆されていないフィルターは、気体の運動エネルギーの変化による、温度の上昇に伴う背圧の上昇を示す。煤を装填した被覆されていないフィルターは、きれいなフィルターよりも高い初期背圧、次いで、煤の酸化により引き起こされる、約550℃の温度での背圧の低下を示した。この背圧の低下は、CeO
2−ZrO
2およびW−CeO
2−ZrO
2触媒で被覆されたフィルターについて、より低い温度で起きる。なぜなら、CeO
2−ZrO
2およびW−CeO
2−ZrO
2触媒が、煤燃焼プロセスを促進するからである。この実施例の結果を、
図7に示す。
【実施例5】
【0064】
実施例4で調製したコアを、それらのNH
3SCR活性について測定した。被覆されたフィルターの触媒を、500ppmのNO、500ppmのNH
3、5%CO
2、5%H
2O、10%O
2および300ppmのCOを含有するガス混合物中で測定した。CeO
2−ZrO
2は、NO
XとNH
3との反応について不活性であり、非選択的であったが、W−CeO
2−ZrO
2触媒は、NH
3−SCR反応について、高い反応性を示す。この実施例の結果を、
図8に示す。