(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-187096(P2015-187096A)
(43)【公開日】2015年10月29日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20151002BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20151002BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20151002BHJP
A61P 11/10 20060101ALI20151002BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20151002BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20151002BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20151002BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20151002BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20151002BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20151002BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20151002BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20151002BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20151002BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20151002BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/192
A61P29/00
A61P11/10
A61P11/02
A61P43/00 121
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/02
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-41970(P2015-41970)
(22)【出願日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-49621(P2014-49621)
(32)【優先日】2014年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑田 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 裕里
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC05
4C076CC10
4C076CC15
4C076DD26Q
4C076EE32Q
4C076EE38Q
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF07
4C076FF36
4C076FF46
4C076FF66
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206JA58
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA56
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206NA03
4C206NA20
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZA34
4C206ZA63
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】
保存安定性に優れたロキソプロフェン及びカルボシステインを含有した固形製剤を提供すること。
【解決手段】
ロキソプロフェンとカルボシステインを含有する固形製剤に、特定の賦形剤を配合することにより保存安定性に優れた製剤を提供することが可能となった。
特定の賦形剤とは、デンプン、リン酸水素カルシウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。本発明の固形製剤は、好ましくは顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤又は錠剤として提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)カルボシステイン、及び(c)デンプン、リン酸水素カルシウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
(a)成分1質量部に対して、(c)成分を1.0〜15.0質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
(c)成分の配合量が、固形製剤全質量に対して5質量%〜80質量%である請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
固形製剤が、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤又は錠剤である請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン又はその塩、及びカルボシステインを含有した固形製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一般用医薬品においては、複数の薬効成分を配合した製剤が広く使用されている。例えば、総合感冒薬は、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎薬など多くの成分が配合されている。これらの薬剤は、有効性及び安全性の観点から、製剤としての安定性に優れている必要がある。
ロキソプロフェン又はその塩は、医療用医薬品として高い実績を誇る非ステロイド系解熱鎮痛剤である。本成分は胃障害などの副作用が比較的軽いといった特徴を有しており広く用いられている。
【0003】
一方、カルボシステインは上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核等の疾患における去痰作用、慢性副鼻腔炎等の疾患における排膿作用を有しており、安全性の高い去痰剤として医療用医薬品での使用実績が高い。
【0004】
ロキソプロフェンとカルボシステインが配合した固形製剤は知られており、これらを配合した際に相互作用を生じるため、相互作用を抑制する方法として、今までにトラネキサム酸を加えて混合することによって防止する方法が報告されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−246441号公報
【特許文献2】特開2011−246437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この方法によると、ロキソプロフェンとカルボシステインの相互作用を抑制するためには、医薬有効成分のトラネキサム酸を配合しなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような事情に鑑み、ロキソプロフェンとカルボシステインを含有する医薬用製剤の安定化について種々検討した結果、意外にも、特定の賦形剤を配合すると上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)カルボシステイン、及び(c)デンプン、リン酸水素カルシウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする固形製剤、
(2)(a)成分1質量部に対して、(c)成分を1.0〜15.0質量部含有することを特徴とする(1)に記載の固形製剤、
(3)(c)成分の配合量が、固形製剤全質量に対して5質量%〜80質量%である(1)又は(2)に記載の固形製剤、
(4)固形製剤が、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤又は錠剤である(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形製剤は、ロキソプロフェンとカルボシステインの相互作用を抑制できる。従って、長期にわたって製剤の着色及び固結が防止されたロキソプロフェンとカルボシステインを含有する固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の固形製剤に用いられるロキソプロフェン又はその塩には、ロキソプロフェンのみならず、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒和物が含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、ロキソプロフェンナトリウム2水和物が好ましい。
【0010】
また、本発明の固形製剤に用いられるカルボシステインは、第16改正日本薬局方に記載されているL−カルボシステインであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0011】
本発明の固形製剤中におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、固形製剤全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で8〜30質量%が好ましい。
【0012】
本発明の固形製剤中におけるカルボシステインの含有量は、固形製剤全質量に対して2〜50質量%が好ましい。
【0013】
本発明における特定の賦形剤とは、(c)成分として示すデンプン、リン酸水素カルシウム及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される1種以上の成分を意味する。
【0014】
本発明におけるデンプンとは、トウモロコシデンプン、バレイショデンプンが挙げられる。
【0015】
トウモロコシデンプン、バレイショデンプンは、第16改正日本薬局方(JP16)に記載されている公知の化合物であり、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤として用いられる。
【0016】
リン酸水素カルシウムはリン酸水素カルシウム水和物と無水リン酸水素カルシウムがあり、どちらも第16改正日本薬局方(JP16)に記載されている公知の化合物であり、賦形剤、結合剤、コーティング剤、分散剤として用いられる。
【0017】
本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは崩壊剤として公知のものである。高温で酸化プロピレンとアルカリセルロースを反応させて製造されたものであり、105℃、1時間乾燥したものはヒドロキシプロピル基を5.0〜16.0%含む。本発明の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの例としては、例えば信越化学工業社製の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースL−HPC(LH−21、31、32)などが挙げられる。
【0018】
また、上記(c)成分の含有量は固形製剤全質量に対して5質量%〜80質量%が好ましく、25〜50質量%がさらに好ましい。
【0019】
また、本発明の固形製剤中における(a)成分と(c)成分の含有比率は、好ましくは(a)成分1質量部に対して(c)成分1.0〜15.0質量部、特に好ましくは1.0〜5.0質量部である。(c)成分の含有比率が(a)成分1質量部に対して1質量部未満であると、本発明の効果が十分発揮できない場合があるからである。
【0020】
また、本発明の固形製剤中における(a)成分と(b)成分の含有比率は、(a)成分1質量部に対して(b)成分1.0〜10.0質量部が好ましい。
【0021】
本発明の固形製剤の剤形としては散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤(フィルムコーティング錠、糖衣錠、積層錠を含む)、カプセル剤、ドライシロップ剤、トローチ剤等の経口製剤や外用剤などの非経口製剤が挙げられるが、特に顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤又は錠剤が好ましい。
【0022】
本発明の医薬製剤には、ロキソプロフェン又はその塩及びカルボシステインと、デンプン、リン酸水素カルシウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース以外にも、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤等を混合し、湿式造粒法、直接打錠法、乾式造粒法もしくは溶融造粒法により製造してもよい。なお、結合剤として用いるヒドロキシプロピルセルロースは、本発明の低置換度ヒドロキシプルセルロースとは区別されるものである。このようなヒドロキシプロピルセルロースの例としては、例えば日本曹達社製のヒドロキシプロピルセルロースHPC(L、SL、M、H)などが挙げられる。ヒドロキシプピルセルロースを結合剤として使用する場合は、製剤中0.1〜15質量%未満の配合となる。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づき、さらに詳細に説明する。尚、本発明の固形製剤の製造方法は実施例に記載された処方例に限定されるものではない。
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
(1)製剤の製造方法
表1に示す各成分及び分量を秤量、混合し製剤を得た。得た製剤は、ガラス瓶に入れて密閉し、65℃条件下に1週間保存させた後に製剤の外観評価を行った。
(2)外観評価
実施例及び比較例で得られた錠剤について、専門パネラー2名による外観評価を実施した。65℃条件下に1週間保存したサンプルの固結状態と変色を比較例1との相対比較により、以下に記す4段階で評価した。結果を表2に示す。
<固結状態判定基準>
− :変化なし
+ :わずかに凝集を認める
++ :固結を認める
+++:明らかな固結を認める
<変色判定基準>
− :変化なし
+ :わずかに変色を認める
++ :変色を認める
+++:明らかな変色を認める
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
試験結果から明らかなように、ロキソプロフェンとカルボシステインのみを混合したものは変色及び著しい固結が見られた(比較例1)。これに対し、デンプン、リン酸水素カルシウム又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加した固形製剤は変色及び固結が抑制された(実施例1〜4)。一方、他の賦形剤である乳糖(比較例2)を添加した製剤は比較例1よりも著しい変色及び固結が見られ、結晶セルロース(比較例3)を添加した製剤は固結の抑制はできたが、変色を抑制することはできず、全体が褐色へと変色した上に斑点状の濃い変色があった。また、D‐マンニトール(比較例4)を添加した製剤も変色及び固結を抑制することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、保存安定性に優れたロキソプロフェン及びカルボシステインを含有した固形製剤を提供することができ、総合感冒薬、又はかぜ薬として有用である。