【課題】電子線照射による架橋処理によっても変色が抑制される電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。また、そのような電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の電子線の照射による架橋処理方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アセチルアセトン亜鉛0.01〜1.0重量部を変色抑制剤として含むことを特徴とする電子線照射によって架橋される電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。更に、本発明によれば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アセチルアセトン亜鉛0.01〜1.0重量部を変色抑制剤として含む電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を電子線照射することからなる電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の架橋方法が提供される。
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アセチルアセトン亜鉛を変色抑制剤として0.01〜1.0重量部を含むことを特徴とする電子線照射によって架橋される電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。
塩化ビニル系樹脂組成物が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、更に有機酸亜鉛を0.01〜2.0重量部含むものである請求項1に記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。
塩化ビニル系樹脂組成物が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、更にハイドロタルサイトを0.1〜10重量部含むものである請求項1に記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物。
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アセチルアセトン亜鉛を変色抑制剤として0.01〜1.0重量部を含む電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を電子線照射することを特徴とする電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の架橋方法。
塩化ビニル系樹脂組成物が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、更に有機酸亜鉛を0.01〜2.0重量部含むものである請求項5に記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の架橋方法。
塩化ビニル系樹脂組成物が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、更にハイドロタルサイトを0.1〜10重量部含むものである請求項5に記載の電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の架橋方法。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂組成物は、柔軟性に加えて、電気絶縁性、耐アーク性、対電圧性等の電気特性にすぐれており、従来、電線被覆材料として広く用いられてきている。このように、塩化ビニル系樹脂組成物で被覆した電線、即ち、ビニル被覆電線は、通常、塩化ビニル系樹脂組成物を溶融状態で銅線等の導体の表面に、例えば、押出法にて被覆して製造される。
【0003】
上述したような電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物としては、従来、例えば、安定剤として、ハイドロタルサイトと有機酸亜鉛を用いると共に、可塑剤として、テレフタル酸ジアルキルエステルを用いてなるものが提案されている(特許文献1参照)。
このようなビニル被覆電線は、現在、種々の用途で用いられており、加熱老化後の伸び残率で評価される残存強度、体積抵抗率で評価される絶縁性、コンゴーレッド試験で評価される耐熱性等に高い品質が求められる。なかでも、自動車、PC、家庭用電気機器等においては、使用時に被覆電線が高温に曝されやすいことから、変形や劣化を防止するために、通常、上記被覆電線に更に電子線照射して電線被覆に架橋処理を施したものが多く用いられている。
【0004】
しかし、従来、知られている電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、これに電子線照射による架橋処理を施すと、樹脂組成物、即ち、電線被覆が劣化、変色し、製品の商品価値を著しく低下させる問題があった。そこで、電子線照射による架橋処理を施しても、変色が抑制される電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物が求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による電子線照射にて架橋処理される電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、アセチルアセトン亜鉛を0.01〜1.0重量部を含む。
【0016】
本発明によれば、電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の樹脂成分である上記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの単独重合体のほか、塩化ビニルと種々の共重合性単量体との共重合体を含む。このような共重合体としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−マレイミド共重合体等を挙げることができる。これらの塩化ビニル系樹脂の製造方法は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等、いずれでもよく、重合方法によっては限定されない。
【0017】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、アセチルアセトン亜鉛を変色抑制剤として、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部の範囲で含む。本発明によれば、上記変色抑制剤は、これを配合した電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の電子線照射を用いた架橋による変色を特異的に抑制する効果を有する。
【0018】
電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物において、上記変色抑制剤の割合が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.01重量部よりも少ないときは、得られる電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の電子線照射による架橋において変色を抑制することが困難である。しかし、上記変色抑制剤の割合が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1.0重量部よりも多いときは、得られる電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、電子線照射による架橋において変色は抑制されるが、一方において、耐熱性に劣り、また、亜鉛の溶出のおそれがある。
【0019】
本発明においては、電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記変色抑制剤を0.03〜0.8重量部の範囲で含むことが好ましい。
【0020】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、有機酸亜鉛を0.01〜2.0重量部の範囲で含み、より好ましくは、0.1〜1.0重量部の範囲で含む。
【0021】
本発明によれば、上記有機酸亜鉛は、上記変色抑制剤と協同して、電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の電子線照射による架橋処理の後、その変色を長期間にわたって抑制する効果を有する。
【0022】
電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物において、有機酸亜鉛の割合が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.01重量部よりも少ないときは、上記変色抑制剤と協力して、電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物の電子線照射による架橋処理による変色を長期間にわたって抑制する効果に乏しい。しかし、有機酸亜鉛の割合が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して2.0重量部よりも多いときは、得られる電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物が耐熱性に劣り、また、亜鉛の溶出のおそれがある。更に、成形時に外観不良等の問題が生じる。
【0023】
上記有機酸亜鉛における有機酸としては、従来、塩化ビニル系樹脂組成物において、それ自体で、又は金属塩として用いられているものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p−t−オクチルサリチル酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等の1価有機カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヒドロキシフタル酸、クロルフタル酸、アミノフタル酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸等の2価有機カルボン酸、これら2価有機カルボン酸のモノエステル又はモノアミド化合物、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の3価又は4価の有機カルボン酸のジ又はトリエステルを挙げることができる。
【0024】
これらのなかでは、炭素原子数12〜20の高級脂肪酸、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸等が好ましい。従って、例えば、パルミチン酸亜鉛やステアリン酸亜鉛が好ましく用いられる。
【0025】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、得られる塩化ビニル系樹脂組成物が耐熱性を有するように、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、ハイドロタルサイトを0.1〜10重量部の範囲で含むことが好ましく、0.3〜10重量部の範囲で含むことがより好ましい。特に、得られる樹脂組成物が実用的に必要とされる耐熱性、なかでも、加熱老化後の着色性と伸び残率からみて、ハイドロタルサイトを2〜10重量部の範囲で含むことが好ましい。
【0026】
ハイドロタルサイトは、一般式(1)
[(Mg)
x(Zn)
y]
1-z(Al)
z(OH)
2(CO
3)
z/2・mH
2O…(1)
(x、y、z及びmはそれぞれ、0.5≦x≦1、0≦y≦0.5、x+y=1、0.1≦z≦0.5及び0≦m<1を満足する数である。)
で表される層状複水酸化物の1種である。
【0027】
上記一般式(1)で表されるハイドロタルサイトにおいて、yが0であるものはMg/Al系ハイドロタルサイトと呼ばれており、yが0でなく、亜鉛を含むものは亜鉛変性ハイドロタルサイトと呼ばれている。
【0028】
本発明においては、Mg/Al系ハイドロタルサイトと亜鉛変性ハイドロタルサイトのいずれも用いることができる。しかし、亜鉛変性ハイドロタルサイトは、塩化ビニル系樹脂組成物に同じ量を配合したとき、Mg/Al系ハイドロタルサイトに比較して、塩化ビニル系樹脂組成物中の亜鉛量を多くすることから、樹脂を劣化させ、伸び残率を悪化させる傾向があるので、Mg/Al系がより好ましく用いられる。
【0029】
本発明による電子線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、特に、初期着色性の改善のために、好ましくは、β−ジケトンを含む。
【0030】
上記β−ジケトンとしては、例えば、ステアロイルアセチルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4−オクチルベンゾイル)メタン、4−メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4−カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2−カルボキシメチルベンゾイルアセチルオクチルメタン、2−ベンゾイルシクロヘキサン等のようなアルカノイルアロイルメタンやジアロイルメタンを好ましい具体例として挙げることができる。
【0031】
本発明によれば、電子線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、このようなβ−ジケトンを塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、好ましくは、5重量以下の範囲で、より好ましくは、0.1〜1.0重量部の範囲で含む。
【0032】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、可塑剤として、有機カルボン酸アルキルエステルを塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、通常、1〜100重量部の範囲で含み、好ましくは、5〜50重量部の範囲で含む。
【0033】
上記有機カルボン酸アルキルエステルとしては、従来から知られているものが適宜に用いられるが、具体例として、例えば、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等のフタル酸エステル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−デシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪酸エステル、トリメリット酸エステルやピロメリット酸エステル等を挙げることができる。
【0034】
本発明においては、上述した有機カルボン酸アルキルエステルのなかでも、加熱老化後の伸び残率を維持できることから、特に、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)が好ましく用いられる。
【0035】
更に、上記以外にも、有機カルボン酸エステル系可塑剤として、例えば、アセチルクエン酸トリヘキシル、n−ブチルクエン酸トリヘキシル等のクエン酸エステル、グリコール酸エステル、ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート、ジ−2−エチルヘキシルシクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロヘキサンジカルボキシレート等を挙げることができる。
【0036】
本発明においては、上記有機カルボン酸エステル系可塑剤以外にも、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、n−ブチルベンゼンスルホンアミド等のアルキルスルホン酸誘導体等も好ましく用いられる。
【0037】
また、本発明においては、可塑剤としてのみならず、得られる塩化ビニル系樹脂組成物に耐熱性を付与するために、必要に応じて、エポキシ化合物も塩化ビニル系樹脂組成物に配合される。
【0038】
そのようなエポキシ化合物として、例えば、ビスフェノール型及びノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化トール油脂肪酸オクチル、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸2−エチルヘキシル、エポキシステアリン酸ステアリル、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシル−6−メチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等を挙げることができる。
【0039】
上述したなかでは、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等のエポキシ化植物油が好ましく用いられる。
【0040】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、必要に応じて、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上述したようなエポキシ化合物を30重量部以下の範囲で、好ましくは、1〜10重量部の範囲で含む。
【0041】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、従来、電線被覆用樹脂組成物に用いることができることが知られている種々の添加剤を必要に応じて含むことができる。そのような添加剤として、例えば、滑剤、中和剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0042】
例えば、滑剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸等を挙げることができ、また、中和剤としては、例えば、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0043】
また、本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を使用することができる。
【0044】
以上に説明したように、本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、アセチルアセトン亜鉛を変色抑制剤として含み、その特異的な効果によって、電子線照射による架橋処理によっても、変色が抑制される。しかし、アセチルアセトン亜鉛に代えて、アセチルアセトンや、又はアセチルアセトン亜鉛以外のβ−ジケトン亜鉛、例えば、ステアロイルベンゾイルメタン亜鉛、更には、亜鉛塩以外のアセチルアセトン金属塩、例えば、カルシウム塩やマグネシウム塩を配合しても、電子線照射による架橋処理による塩化ビニル系樹脂組成物の変色を抑制する効果をもたない。
【0045】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物は、従来、知られている方法によって製造することができる。例えば、上述した各種の成分をヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等を用いて所定の割合で混合し、得られた混合物をロール、バンバリーミキサー、押出機等を用いて均一に混練して、例えば、ペレット状の樹脂組成物を得ることができる。
【0046】
本発明による電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物を架橋させるには、上述したように、銅線のような導体を上記樹脂組成物にて被覆した後、既によく知られている手段を用いて電線被覆である上記電線被覆用塩化ビニル系樹脂組成物に電子線を照射すればよく、これによって、変色が抑制された被覆電線を得ることができる。
【0047】
塩化ビニル系樹脂組成物の電子線照射による架橋処理のための線量は、通常、20〜60kGy程度であるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0049】
以下の実施例及び比較例において用いた各種の成分の詳細を以下に示す。
【0050】
塩化ビニル樹脂
信越化学工業(株)製TK−1000(平均重合度1000)
TOTM
(株)ジェイプラス製TOTM
エポキシ化大豆油
(株)ADEKA製O−130P
ステアリン酸亜鉛
堺化学工業(株)製SZ−2000
アセチルアセトン亜鉛
東京化成工業(株)製試薬
ステアロイルベンゾイルメタン
ロディア(Rhodia)社製ロディアスタブ50
アセチルアセトン
東京化成工業(株)製試薬
アセチルアセトンカルシウム
ロディア(Rhodia)社製ロディアスタブ77
アセチルアセトンマグネシウム
堺化学工業(株)合成品
ステアロイルベンゾイルメタン亜鉛
堺化学工業(株)合成品
Mg/Al系ハイドロタルサイト
堺化学工業(株)製STABIACE HT−1([Mg
0.66Al
0.33(OH)
2] [(CO
3)
0.16・0.5H
2O])で表される。
亜鉛変性ハイドロタルサイト
堺化学工業(株)製STABIACE HT−7([Mg
0.86Zn
0.12]
0.67Al
0.33(OH)
2(CO
3)
0.16・0.5H
2O)で表される。
【0051】
実施例1〜14及び比較例1〜5
表1及び表2に示す配合にて各成分を混合した後、8インチロールを用いて、温度170℃で5分間混練して、0.3mm厚さのシートとした。
【0052】
得られたそれぞれのシートを以下の試験に供して、変色の度合いを目視にて観察して評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0053】
(1)プレス初期着色性
電気プレスを用いてシートを170℃で5分間予熱した後、圧力50kgf/cm
2で5分間プレスし、かくして得られたシートの変色の度合いを評価した。
【0054】
(2)静的オーブン耐熱性
シートを3cm×4cm角に裁断し、180℃のギアオーブン中で120分まで老化させて、変色の度合いを評価した。
【0055】
(3)電子線架橋して24時間後(室温)の変色
加速電圧4.8MeV、照射強度60kGyにてシートに電子線照射による架橋処理を施し、その後、室温で24時間放置したときのシートの変色の度合いを評価した。
【0056】
(4)電子線架橋して168時間後(室温)の変色
加速電圧4.8MeV、照射強度60kGyにてシートに電子線照射による架橋処理を施し、その後、室温で168時間放置したときのシートの変色の度合いを評価した。
【0057】
(5)電子線架橋して50℃で168時間放置したときの変色
加速電圧4.8MeV、照射強度60kGyにてシートに電子線照射による架橋処理を施し、その後、50℃の恒温オーブン中、168時間放置したときのシートの変色の度合いを評価した。
【0058】
(6)加熱老化後の伸び残率
電気プレスを用いてシートを170℃で5分間予熱した後、圧力50kgf/cm
2で5分間プレスして、厚み1mmのシートを作成し、このシートに加速電圧4.8MeV、照射強度60kGyにて電子線を照射して架橋させた。かくして得られたシートをJIS−K6723に準拠して裁断してダンベルを得、これを158℃で168時間加熱老化させた後、引張試験機にて伸び率Eを測定した。また、加熱老化前のダンベルについて伸び率E
0を測定し、下記式から158℃で168時間加熱老化させた後の伸び残率を求めた。
【0059】
伸び残率=(E/E
0)x100(%)
【0060】
(7)熱安定性
JIS−K6723に準拠したコンゴーレッド試験において、180℃での塩酸発生時間、即ち、塩化ビニル系樹脂組成物が分解して塩酸が発生するまでの時間を測定した。
【0061】
(8)体積抵抗率
電気プレスを用いてシートを170℃で5分間予熱した後、圧力50kgf/cm
2で5分間プレスして、厚み1mmのシートを作成した。かくして得られたシートをJIS−K6723に準拠して測定した。
【0062】
上記各試験後のシートの変色の度合いについての評価基準は次のとおりである。変色が殆どみられないときを◎とし、変色が僅かにみられるときを○とし、変色がみられるが、許容できるレベルであるときを△とし、変色が著しいときを×とした。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1及び表2に示すように、本発明に従って、塩化ビニル系樹脂にアセチルアセトン亜鉛を変色抑制剤として配合してなる塩化ビニル系樹脂組成物は、電子線照射による架橋処理によっても、変色が抑制されている。
【0066】
これに対して、表2に示すように、比較例1〜5による塩化ビニル系樹脂組成物は、アセチルアセトン亜鉛に代えて、それぞれステアロイルベンゾイルメタン、アセチルアセトン、アセチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンマグネシウム及びステアロイルベンゾイルメタン亜鉛を含むが、電子線照射架橋による塩化ビニル系樹脂組成物の変色を抑制することができない。