【構成】 ライニング工法では、各々が縮径したコイル成形体(10)を保持した複数の芯材(20)を、連結部材(90)連結した状態で、既設管(100)内に引き込み、芯材(20)とは別体の拡径装置(60)を用いて各芯材から順にコイル成形体を外して拡径する。連結部材(90)は、先行する芯材の後端側連結金具(34)に対して固定的に連結され、後続する芯材の前端側連結金具(32)とは軸方向における相対的位置を変化できるように連結される。各連結金具(34,32)は、芯材において周方向に離れた2以上の第1位置および第2位置に設けられ、2以上の連結部材で連結される。
各々が筒状であり、その外面上に、既設管の内径に対応する外径を有するコイル成形体を縮径した状態で保持する複数の芯材を、前記既設管内に引き込むときに芯材どうしを連結する連結装置であって、
先行する芯材の後端の、周方向の2以上の第1位置に設けられる後端側連結金具、
後続する芯材の前端の、それぞれの前記第1位置に対応する2以上の第2位置に設けられる前端側連結金具、および
それぞれ対応する前記第1連結金具と前記第2連結金具とを連結する、剛性の高い2以上の連結部材を備える、芯材連結装置。
各連結部材は棒状体を含み、前記棒状体の前端側で対応する後端側連結金具に連結され、対応する前端側連結金具には前記棒状体が緩挿される第1の透孔が形成され、さらに前記後端側連結金具の後面側で前記棒状体が前記第1の透孔から抜けないようにする第1抜け止め部材を備える、請求項1記載の芯材連結装置。
前記後端側連結金具には前記棒状体が緩挿される第2の透孔が形成され、前記前端側連結金具の前面側で前記棒状体が前記第2の透孔から抜けないようにする第2抜け止め部材を備える、請求項4または5記載の芯材連結装置。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1を参照して、この発明の一実施例に用いられるコイル成形体10は、コイル用線材12を螺旋状に巻いたものであり、コイル成形体10の外径D1は、更生すべき老朽化した既設管100(
図1では図示せず。(
図8))の内径と同じか、それよりやや大きく設定される。
【0037】
なお、この発明のライニング工法を利用して更生すべき既設管としては種々のものが考えられるが、たとえば、上下水道、ガス、通信ケーブル保護または電力ケーブル保護等の用途の既設管路であってよいし、また、鉄筋コンクリート管(ヒューム管)、陶管、鋳鉄管、鋼管ならびに塩ビ管のような合成樹脂管等の材料でから構成されるものであってよい。
【0038】
図1に示すコイル成形体10は、十分な剛性や弾性を有する材料、たとえばアルミニウム合金、鋼またはステンレス鋼などの金属、合成樹脂、ならびにGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックを素材として形成され、この実施例では、コイル成形体10の素材としてGFRPが使用される。
【0039】
コイル成形体10は、長さ方向に直交する断面が横長の長方形状の線材12を巻芯(図示せず)などに螺旋状に巻回することによって円筒状に形成される。ただし、コイル成形体10の成形方法は特に限定されず、繊維強化プラスチック管に螺旋状に切り込みを入れることによってコイル成形体10を形成するようにしてもよいし、専用の金型に樹脂等を流し込んで成形するようにしてもよい。コイル成形体10の呼び径D1は、上述のように既設管の内径に対応するサイズに設定されるが、一例として、300‐700mmであり、その軸方向の長さL1は、300‐700mmである。
【0040】
図1に示すコイル成形体10の線材12の一方端に雌ねじ14aが形成されている。
図1では一方端だけが描かれているので図示はしていないが、他方端にも雌ねじが形成されている。後の説明で必要になるので、ここではその他方端の雌ねじを便宜上「14b」と呼ぶ。この雌ねじ14a(および14b)は、コイル成形体10を後述の芯材(
図3、
図4)上で保持するために利用される。上述のように、コイル成形体10の線材12は、たとえばGFRPであり、そのままタッピングしても雌ねじは形成されにくい。そこで、発明者等は、雌ねじを形成した金属製のチップを準備し、それを線材12の該当位置に形成した穴の中に埋め込んで接着するという方法で、コイル成形体10の線材12の両端に雌ねじ14a(および14b)を形成した。ただし、雌ねじ14a(および14b)の形成方法はこのような方法に限られるものではない。
【0041】
コイル成形体10は、その特性(剛性、弾性など)により、巻回(されている)方向へ回転させたり、伸長方向に引っ張ったりすると、その回転力や引張力に応じて縮径できる。このような特性を利用して、この発明に従った実施例のコイル成形体敷設装置を用いるライニング工法では、
図1(a)に示す外径D1、長さL1を有するコイル成形体10を、
図1(b)に示すように、外径D2(D1>D2)、長さL2(L1<L2)を有するコイル成形体10として縮径して、既設管内に導入するようにしている。
【0042】
既設管を更生するためには、さらに、既設管内に後述のようにして敷設されたコイル成形体10の内面にライニング材をライニングしなければならない。一例として、
図2に示すライニング材18は、縮径加工により周方向の一部が押し込まれた断面略ハート形状を有する縮径管である。ライニング材18は、たとえば合成樹脂(ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ナイロン、塩化ビニル等)や繊維強化プラスチックなどで形成することができるが、実施例では、ポリエチレンのライニング材18を用いる。
【0043】
ライニング材18は、所定の温度に加熱しかつ加圧されることにより円筒形に復元され、コイル成形体10の内面に密着して更生管路(ライニング管)を形成する。ライニング材18は、復元したときの外径がコイル成形体10の内径と等しいか略等しくなるように設定されている。
【0044】
このライニング材18は、公知の種々の方法によって製造することができるので、その製造方法の詳細な説明は省略するが、簡単に言えば、所定の径で押出成形された直管に対して、軟化点以上融点以下の範囲における所定の温度(この実施例では、たとえば約100℃程度)に加熱して、押し板やローラ等を用いて略U字状の押し込み部分を形成することによって製造される。したがって、ライニング材18を再び軟化点以上融点以下の温度に加熱し内部から加圧することにより、押し込み部分が外面側へ戻されて、ライニング材18は既設管内で所定形状(円筒形等)に復元する。
【0045】
図1に示すコイル成形体10を縮径して既設管内に導入するために、この実施例では、
図3および
図4に示す芯材20を用いる。芯材20は、中空の円筒形状に形成される。ただし、必ずしも円筒である必要はなく、
図1(b)のように縮径したコイル成形体10を保持できれば、4角形や6角形などの多角形の中空筒状であってよい。
【0046】
図3および
図4に示す円筒形の芯材20はたとえば鉄のような金属からなる円筒を用いて作るが、中空部に種々の構成部品を設ける必要上、必要な強度を確保しながら、円筒の適宜箇所を切除している。芯材20の外径は、縮径時のコイル成形体10の内径よりも小さく設定され、たとえば200‐600mmであり、その軸方向の長さは、コイル成形体10の縮径時の長さより長く設定され、たとえば400‐800mmである。
【0047】
この実施例では、芯材20は、軸方向に間隔を隔てた3つのリング状部22a、22bおよび22cとそれらを連結する任意数(実施例では5つ)の連結部24を含む。なお、実施例では、後端のリング状部22bの幅は他の2つのリング状部22aおよび22cの幅より大きく設定されている。
【0048】
芯材20の中空部内には、前端のリング状部22aから後端のリング状部22bまで芯材20の軸方向全長に延び、たとえばボルトなどによって各リング状部22a、22bおよび22cに固着された、2本のレール26および28が設けられる。各レール26および28の前端および後端はそれぞれ先端に向うにつれて外方に拡げられた易進入部30として形成されていて、それによって後述の拡径装置60のそり66および68(
図5)がレール26および28上に容易に進入できるようにされている。レール26および28は、実施例では断面U字形状とされ、それぞれ幅方向両端に側板26aおよび28aを有し、この側板26aおよび28aが、レール26および28上に載ったそり66および68の周方向への移動、脱落を防止する。
【0049】
なお、レール26および28は、実施例では、後述の拡径装置60(
図5)の走行の安定性を確保するために、それぞれ鉛直方向に対して45°の角度を有して、つまり芯材20の周方向に円弧角でいえばたとえば90°離れた位置に設けられている。ただし、レール26および28間の間隔はこれに限るものではない。
【0050】
芯材20の前端リング状部22aの内面には、たとえば180°離れて対向する位置(第1位置)にそれぞれ連結金具32がたとえばボルトによって固着される。連結金具32はたとえば、断面L字形状に形成され、L字の一辺がリング状部22aの内面に固着され、L字の他方辺には透孔32aが形成される。
【0051】
同じように、芯材20の後端リング状部22bの内面には、たとえば180°離れた対向する位置(上記第1位置にそれぞれ対応する第2位置)にそれぞれ連結金具34が設けられる。連結金具34はたとえば、断面L字形状に形成され、L字の一辺がリング状部22bの内面に固着され、L字の他方辺には透孔34aが形成される。
【0052】
これら連結金具32および34は、後述のように、多数の芯材10を連結するために連結部材90(
図7)と協働する。
【0053】
芯材20の上記レール26および28の中間の位置における前端リング状部22aおよび後端リング状部22bには、
図1に示すコイル成形体10を、縮径した状態で芯材20上に保持するための保持手段ないし保持機構36aおよび36bが設けられる。
【0054】
保持機構36aおよび36bは、逆U字状でかつ先端がともに外方に折り曲げられたアングル38aおよび38bを有し、アングル38aおよび38bの折り曲げ
部が前端リング状部22aおよび後端リング状部22bにボルト止めされている。アングル38aおよび38bの平坦部には雌ねじが形成されていて、この雌ねじにボルト40aおよび40bが螺合される。
【0055】
ボルト40aおよび40bの先端はリング状部22aおよび22bにそれぞれ形成された透孔(図示せず)を通して、リング状部22aおよび22cの外面上に突出可能である。ボルト40aおよび40bの後端にはハンドル42aおよび42bが固着されていて、ハンドル42aおよび42b回すことによって、ボルト40aおよび40bをリング状部22aおよび22bの外面に出没させることができる。
【0056】
このボルト40aおよび40bは、
図1に示すコイル成形体10の線材12の両端に設けた雌ねじ14a(および14b)に螺合できる。
【0057】
芯材20の中間のリング状部22cには、180°離れた対向位置(実施例では)に当たり棒44が内方に延びて取り付けられる。芯材20の中空部内を
図5の拡径装置60が移動するので、その移動空間を確保するため、当たり棒44の長さは芯材20の半径より短く設定される。
【0058】
上述のレール26および28と
図5に示す拡径装置60のそり66および68が、協働して、芯材20と拡径装置60との周方向の相対的位置の位置決め手段として機能するのに対して、当たり棒44は、
図5に示す拡径装置60の起立片74と協働して、芯材20と拡径装置60との軸方向の相対的位置の位置決め手段として機能する。このように、位置決め手段によって芯材20と拡径装置60の相対的位置の位置決めが行われるので、芯材20と拡径装置60が別体で構成されていても、拡径装置60は確実に芯材20の所要部に作用することができる。さらに、位置決め手段によって芯材20と拡径装置60の相対的周方向位置および相対的軸方向位置の位置決めが行われるので、拡径装置60を、別体で構成されている芯材20の中空部内に確実に位置決めできる。ことのき、拡径装置60を芯材20の中空部内で軸方向に移動させるための手段(実施例でいえば、レール26および28とそり66および68)が周方向の相対的位置の位置決め手段に兼用されるので、周方向位置決め手段として特別な構成を設ける必要がない。
【0059】
芯材20のリング状部22aの外面上に出没可能なガイド46a、46bおよび46cが、芯材20の周方向の適宜の位置に設けられる。一方、芯材20のリング状部22bの外面上に出没可能なガイド48aおよび48bが、ガイド46aおよび46bと対応する位置に設けられる。
【0060】
ガイド46aと48aは連結杆50aの両端に取り付けられていて、この連結杆50aは、ばね52によって定常的には芯材20の径方向内方に押された状態で、芯材20の外周内面に取り付けられている。この状態ではガイド46aと48aはリング状部22aの外面より内方に沈んだままである。そして、連結杆50aをこのばね52の弾発力に抗して芯材20の径方向外方に押すことによって、ガイド46aおよび48aがリング状部22aおよび22bの外面上に突出させられる。
【0061】
同様に、ガイド46bと48bは連結杆50bの両端に取り付けられていて、連結杆50bもばね54によって定常的には径方向内方に押されている。したがって、ガイド46bと48bはリング状部22bの外面より内方に沈んだ状態である。そして、連結杆50bをこのばね54の弾発力に抗して芯材20の径方向外方に押すことによって、ガイド46bおよび48bがリング状部22aおよび22bの外面上に突出させられる。
【0062】
ガイド46cは芯材20の前端側にのみ設けられ、ガイド46cは、連結杆50cに取り付けられる。連結杆50cは、ばね56によって定常的には芯材20の径方向内方に押された状態で、芯材20の外周内面に取り付けられている。この状態ではガイド46cはリング状部22aの外面より内方に沈んでいる。そして、連結杆50cをばね56の弾発力に抗して芯材20の径方向外方に押すことによって、ガイド46cがリング状部22aの外面上に突出させられる。
【0063】
図5に示す拡径装置60は、芯材20の外面上に縮径された状態で保持されているコイル成形体10の両端を解放することによって、コイル成形体10を拡径するためのものである。マンホールからマンホールまでの1区間の更生工事において、芯材20は複数用いられるが、拡径装置60は、1台あればよい。
【0064】
拡径装置60は金属製のベース板62を含む。このベース板62の幅は、芯材20の中空部を移動可能な大きさに設定されている。ベース板62の前端および後端には、係止具64aおよび64bが固着される。この係止具64aおよび64bをたとえばロープ(図示せず)などで引っ張ることによって、拡径装置60を前方向または後方向に移動させることができる。
【0065】
ベース板62の下方には、ベース板62の幅方向両端において所定の角度で外方に拡がるそり66および68が設けられる。走行部材として機能するそり66および68は、たとえば、ベース板62の下面に固着された1枚の取り付け板67の端部に保持される。このそり66および68が上述のように芯材20のレール26および28に載ることによって、拡径装置60が芯材20の中空部内に留まることができ、あるいは係止具64aまたは64bが引っ張られることによって、芯材20の中空部内を軸方向に走行できる。
【0066】
ベース板62上の係止具64aおよび64bより内側には、それぞれが減速機構を内蔵する2つのエアモータ70aおよび70bが設置され、エアモータ70aおよび70bの出力軸には、ベース板62の下方において、回転板71aおよび71bが固着される。なお、エアモータは、一例として、エアー供給口から供給された圧縮空気がベーンで区切られた室に入ることによって、ロータを回転させる、そのようなモータである。
【0067】
回転板71aおよび71bは、たとえば平面矩形の長手板であり、その上面がエアモータ70aおよび70bの回転軸に固着される。回転板71aおよび71bの下面には、両端に、回転棒72aおよび72bの上端が固着される。したがって、エアモータ70aおよび70bが回転駆動されると、回転板71aおよび71bは水平面内で回転し、応じて下面に取り付けられている回転棒72aおよび72bが、モータ軸を中心として互いに180°の間隔を保持して、回転する。
【0068】
回転棒72aは、先に説明した芯材20の前側のハンドル42aに作用するもので、芯材20の中空部の所定位置に拡径装置60が位置決めされているとき、エアモータ70aによって回転板71aが回転されると、回転棒72aが回転し、この回転棒72aはハンドル42aの側面に当たる。その状態で回転板71aがさらに回転されると、回転棒72aによってハンドル42aが回される。
【0069】
回転棒72aが左に回転されると、ハンドル42aも左に回転され、したがって、ボルト40aの先端がコイル成形体10の雌ねじ14aから外れる。つまり、ボルト40aとコイル成形体10の雌ねじ14aとの螺合が解除され、コイル成形体10の前端側の保持が解放される。回転棒72bが左に回転されると、ハンドル42bも左に回転され、したがって、ボルト40bの先端がコイル成形体10の雌ねじ14bから外れる。つまり、ボルト40bとコイル成形体10の雌ねじ14bとの螺合が解除され、コイル成形体10の後端側の保持が解放される。
【0070】
したがって、エアモータ70a、70bやそれによって回転されてハンドル42a、42bに作用する回転棒72a、72bはコイル成形体の保持を解放する解放手段として機能する
ベース板62上には、軸方向のほぼ中央の幅方向両端に、起立片74が設けられる。起立片74は、断面がたとえば「U」字状とされ、平面部とその両端から前方側に立ち上がる側板を含み、その側板が前方の軸76に固着される。軸76はベース板62上に固着された保持具78によって回動可能に保持される。
【0071】
起立片74の後方のベース板62上には、ストッパ80が設けられる。ストッパ80はたとえば「L」字状金具であり、その一方辺がベース板62に固定されている。
【0072】
起立片74が固着された軸76には、ねじりばね82が装着されている。したがって、起立片74は、そのねじりばね82によって、ストッパ80に当たるまで、後方に付勢されている。ただし、ストッパ80側(後方)から起立片74を押すと、起立片74はねじりばね82の弾発力に抗して倒れる。
【0073】
図3および
図4に示す芯材20の中空部には前述のように当たり棒44が両側から内方に延びている。起立片74は起立したときの高さが、起立片74の少なくとも上端が当たり棒44に当たる高さに設定される。したがって、拡径装置60が芯材20の中空部内を、後方から前方へ移動するとき、起立片74はねじりばね82によって起立されているので、起立片74の前面上端が当たり棒44の後ろ側に当たる。そのまま拡径装置60が前方へ移動すると、起立片74が当たり棒44の後ろ側に当たった状態なので、芯材20も拡径装置60の移動につれて移動する。
【0074】
したがって、当たり棒44と起立片74は協働して、芯材20と拡径装置60の軸方向の相対的位置を固定する、位置決め手段として機能するとともに、芯材20を移動させる移動手段としても機能する。
【0075】
ただし、拡径装置60を前方から後方に移動させるときには、起立片74の後面上端が当たり棒44に当たるが、当たり棒44の当接力がねじりばね82の弾発力を超えると、起立片74は前方に倒れる。したがって、この場合には起立片74と当たり棒44は係合しない。
【0076】
つまり、拡径装置60を移動させるべきときには起立片74が倒れるので、拡径装置60は芯材20の中空部を自由に移動できる。一方、軸方向の位置決めが必要なとき、たとえば起立片74が当たり棒44に当たったままの状態になり、必要なときには確実に位置決めが行われ得る。
【0077】
拡径装置60のベース板62上には、軸方向中央部に「X」字状に交差して斜めに配置された2つのエシリンダ84aおよび84b、ならびに軸方向前方のベース板62の幅方向中央に直立した1つのエアシリンダ84cが設けられる。これらエアシリンダ84a、84bおよび84cのピストンロッドの先端は、それぞれ、先に説明した芯材20の連結杆50a、50bおよび50cに作用するように配置される。たとえば、給気ポート(図示せず)からエアシリンダ84aのピストンの後方に空気が供給されると、ピストンロッドが前方に押し出され、それによって連結杆50aが押され、この連結杆50aに固着されているガイド46aおよび48aを押し上げる。そのため、ガイド46aおよび48aが芯材20の外面上に突出する。同様に、エアシリンダ84bおよび84cの各ピストンの後方に空気を供給すると、ピストンロッドが連結杆50bおよび50cを押すので、連結杆50bおよび50cに固着されているガイド46bおよび46cが芯材20の外面上に突出する。
【0078】
このように、拡径装置60によって芯材20のガイド46a、46b、46c、48a、48bを操作することができるので、既設管100(後述)内に芯材20を導入した後でも必要なときに確実にガイド46a‐46cおよび48a‐48bを出没させることができる。
【0079】
ガイド46a、46bおよび46cは、
図6に示すように、芯材20の外面上で縮径したコイル成形体10の前端を決めるための、前端側ガイド(第1ガイド)である。ガイド48aおよび48bもコイル成形体10の後端を決めるための、後端側ガイド(第2ガイド)であるが、このガイド48aおよび48bは、コイル成形体10を拡径するときにコイル成形体10の後端が揺動する(暴れる)のを防止するためのものである。
【0080】
図1を参照して説明したように、コイル成形体10の縮径時の長さL2は、拡径時の長さL1より長い。したがって、コイル成形体10が拡径するときコイル成形体10の後端が、距離(L2−L1)だけ前方に移動する。もしガイド48aおよび48bを、ガイド46a‐46cと同じように縮径時のコイル成形体10の後端に配置しておくと、後端ガイド48aおよび48bが拡径後のコイル成形体10の後端から離れてしまうので、結果的に、ガイド48aおよび48bがコイル成形体10の拡径時の後端規制として機能しない。
【0081】
そこで、この実施例では、
図6に示すように、ガイド48aおよび48bの位置を、拡径時にコイル成形体10の後端になると予測される位置に配置する。つまり、縮径時のコイル成形体10の後端より上記距離(L2−L1)だけ前方に配置するようにした。そうすると、コイル成形体10の拡径時の後端位置にガイド48aおよび48bが位置することになり、ガイド48aおよび48bがコイル成形体10の拡径時のコイル成形体の後端の揺動を規制または抑制することができる。
【0082】
図7に示すように、隣接する芯材20どうし、すなわち先行する芯材20と後続する芯材20は、一緒に既設管100(
図8)内に引き込む際に、連結部材90によって連結される。
【0083】
連結部材90は、
図7の実施例では、ITハンガで構成される。ITハンガすなわち連結部材90は、ねじ本体92と、ねじ本体92の先端に軸94によって回動可能に支持され、かつねじ本体92と同径の回転プレート96を含む。この実施例では、さらに、ねじ本体92と回転プレート96に跨って、金属またはプラスチックからなるカラー98が被せられ、それによって
図7(a)に示す未連結の状態では、回転プレート96がねじ本体92の軸線上で一直線の状態(アルファベットの「I」字状)に保持されている。
【0084】
ねじ本体92は、先行する芯材20の中空部後端に設けられている連結金具34の透孔34a(
図4)に挿通され、ねじ部分に連結金具34の両面からナットが螺合され、それによってねじ本体92は、先行する芯材20の後端の連結金具34に強固に固定される。
【0085】
先行する芯材20に後続する芯材20を連結する場合、
図7(a)の状態から
図7(b)に示すように、連結部材90の回転プレート96が後続する芯材20の中空部前端に設けられている連結金具32の透孔32a(
図3)中を挿通するように、後続する芯材20を先行する芯材20に近づける。このとき、カラー98は連結金具32の前面に押されてねじ本体92上に移動する。
【0086】
連結部材90の回転プレート96が後続する芯材20の連結金具32の透孔32aを通過すると、回転プレート96が自重で回転し、ねじ本体92に対して直角の状態、つまり、アルファベットの「T」字の状態になる。したがって、後続する芯材20の連結金具32に連結部材90の、垂直に回転した回転プレート96が係合する。つまり、先行する芯材20と後続する芯材20が連結部材90によって連結される。このように、連結部材すなわちITハンガ90のねじ本体92は後続する芯材の前端側連結金具32の透孔32aに緩挿されるが、回転プレート(第1の抜け止め部材)96によって、後端側連結金具32の後面側において、透孔32aから抜けるのが防止されている。つまり、前端側連結金具32の後方向への移動は禁止されるが、前方向への移動は、ねじ本体92の長さに応じた距離だけは許容される。
【0087】
この実施例では、芯材20の前端側の連結金具32および後端側の連結金具34がともに、前述のように周方向に間隔を隔てて(実施例では180°で対向して)2箇所ずつに設けられる。したがって、先行する芯材の2つの連結金具34と後続する芯材の2つの連結金具32をそれぞれ連結部材90で連結すると、周方向の2箇所での連結によって、先行する芯材20と後続する芯材20が、周方向に拘束されてずれることがない。したがって、先行する芯材のレール26および28と後続する芯材のレール26および28がずれることなく直線を形成し、それによって拡径装置60を安定してレール上を走行させることができる。
【0088】
先に説明したように、先行する芯材の連結金具34と連結部材90(のねじ本体92)とは強固に固定されている。したがって、先行する芯材20と連結部材90は剛性を持って連結されているといえる。他方、後続する芯材の連結金具32と連結部材90とは、ねじ本体92が連結金具32の透孔32aを緩く挿通するだけなので、連結金具32は連結部材90に対して可撓性を持って連結されているといえる。ここで、「可撓性がある」ということは、後続する芯材が先行する芯材に対して上下および/または左右の方向に変位または屈曲可能であるという意味である。したがって、連結部材90は連結金具32の透孔32aに対してその透孔32aの径方向に変位可能であるし、連結金具32と連結部材90は軸方向において一定長さ(連結部材90の長さに依存する。)分、相対的に変位可能である。つまり、この実施例では、先行する芯材の連結金具34と連結金具90とは相対的に変位しないが、後続する芯材の連結金具32と連結部材90とは軸方向において相対的に変位可能である。
【0089】
図1(a)に示すコイル成形体10を、上で説明した芯材20と拡径装置60を用いて
図8に示す既設管100内に敷設する。
【0090】
図8に示すように、たとえばヒューム管のような既設管100は、第1マンホール102と第2マンホール104との間(1区間)の地中に埋設される。そして、第1マンホール102内にローラ106を一時的に設置して、このローラ106を介してロープ108を地上に設置されたウィンチ(図示せず)に結ぶ。ローラ106はたとえば、第1マンホール102の上端開口縁に引っ掛けた部材にローラ106を設けておく、という方法で第1マンホール102内に一時的に設置できる。そして、ロープ108の後端には、たとえば第2マンホール104内において、先導管110が連結され、この先導管110が既設管100内に第2マンホール104から導入される。
【0091】
先導管110の後ろに、
図6で示したようにコイル成形体10を縮径した状態で外面上に保持している芯材20を連結する。そして、ウィンチ(図示せず)によってロープ108を矢印A方向(
図9)に引っ張る。応じて、まず、先導管110とそれに連結された1つの芯材20がマンホール104から既設管100内に引き込まれる。
【0092】
最初の芯材20が既設管100内に導入される前または後で、
図7を参照して説明したように、最初の芯材20の後端側の連結金具34に固着されたたとえばITハンガのような連結部材90を、後続する芯材20の前端側の連結金具32に連結することによって、たとえば第2マンホール104内において、最初の芯材20と第2番目の芯材20を連結する。
【0093】
以後同様にして、先行する芯材20が既設管100内に導入される前または後で、その芯材20の後端側の連結金具34に固着されたたとえばITハンガのような連結部材90を、後続する芯材20の前端側の連結金具32に連結することによって、たとえば第2マンホール104内において、先行する芯材20と後続する芯材20を連結する。このような連結作業を繰り返すことによって、
図9および
図10に示すように、ロープ108を第1マンホール102側から引っ張ることによって、複数の芯材20(コイル成形体10を保持している。)を第2マンホール104側から既設管100内に引き込む。
【0094】
このとき、先行する芯材20の後端連結金具34と連結部材90は剛性を持って接続されているが、後続する芯材20の前端連結金具32と連結部材は可撓性を持って連結されている。したがって、連結部材90で連結した芯材20、20、…をロープ108で引っ張るとき、後続する芯材の前端は先行する芯材の後端に追従し易い。そのため、たとえば先行する芯材20が存在する既設管100の部位と後続する芯材20が存在する部位との間にたとえば上り段差があったとしても、後続する芯材の前端は、先行する芯材の後端連結金具34に強固に連結されている連結部材90によって引き上げられるので、後続する芯材は容易にその上り段差を越えることができる。
【0095】
ただし、連結部材90による連結方法は、先行する芯材とは剛性を持って連結し後続する芯材とは可撓性を持って連結するという実施例の方法以外にも、連結部材は先行する芯材および後続する芯材の両方とも可撓性を持って連結する方法が採用されてもよい。
【0096】
重要なことは、連結部材34と32との間において、
図7の実施例の連結部材90(ITハンガ)のように剛性の高い部材を用いることである。そうすれば、連結部材90が連結金具34および32と可撓性を持って連結したとしても、後続する芯材の前端は先行する芯材の後端に追従できるので、上述のような上り段差だけでなく、既設管100が部分的に左右に振っていても、後続する芯材は容易にその部分を越えて引き込まれ得る。
【0097】
図9に示すように新たな芯材を先行する芯材に連結してロープ108を引っ張ることによって、コイル成形体10を保持しかつ連結された多数の芯材20が連続的に既設管100内に引き込まれる。そして、
図10に示すように、既設管100の全長に亘って、つまり1区間すべてに、縮径したコイル成形体10を装荷した芯材20を連結部材90で連結した状態で引き込む。
【0098】
その後、第2マンホール104内にもローラ112を一時的に設置し、それを介してロープ114の先端を、第2マンホール104から各芯材20の中空部を通して、第1マンホール102内にもたらす。そして、第1マンホール102内において、芯材とは別体の、
図5に示すような拡径装置60の後端側の係止具64bにロープ114の先端を係止し、ロープ114を矢印B方向に引っ張って、拡径装置60を、後端側から、先頭の(第1マンホール102側に最も近い)芯材20の中空部に引き入れる(
図11)。
【0099】
図12は縮径したコイル成形体10を外面上に保持している芯材20の中空部に拡径装置60が入った状態を示し、
図12(a)が斜視図であり、
図12(b)が左側面から見た図であり、
図12(c)は
図12(b)の線XIIC‐XIICにおいて切断した芯材20の内部を示す図である。
【0100】
拡径装置60が芯材20に作用してコイル成形体10を拡径するためには、前述の周方向の位置決め手段(実施例ではレール26および28とそり66および68)によって芯材20の中空部において拡径装置60が芯材20に対して適正な周方向の相対的位置に位置決めされ、かつ軸方向の位置決め手段(実施例では当たり棒44と起立片74)によって芯材20の中空部において拡径装置60が芯材20に対して適正な軸方向の相対的位置に位置決めされる必要がある。
【0101】
周方向の位置決めは、レール26および28上にそり66および68を進入させることによって達成できる。
【0102】
軸方向の位置決めは、ロープ114で第2マンホール104の方向に拡径装置60の後端側を引き込んだ後、拡径装置60上の起立片74が芯材20の当たり棒44に当たるまで、拡径装置60の前端側を第1マンホール102から引き寄せることによって達成できる。
【0103】
適正な相対的位置の位置決めがなされたとき、拡径装置60のエアシリンダ72a、72bおよび72cのピストンロッドの先端が、芯材20の連結杆50a、50bおよび50cに作用できる位置に位置決めされる。したがって、エアシリンダ72aおよび72bの各給気ポートに給気すると、連結杆50aおよび50bがばね52および54の弾発力に抗して押され、連結杆50aおよび50bに固着されているガイド46a、48aおよび46b、48bが芯材20の外面上に突出する。また、アシリンダ72cの給気ポートに給気すると、連結杆50cがばね56の弾発力に抗して押され、連結杆50cに固着されているガイド46cが芯材20の外面上に突出する。
【0104】
つまり、芯材20上に保持されているコイル成形体10の前端にガイド46a、46bおよび46cが当接し、同じくコイル成形体10の後端より内側(前述の距離(L2−L1)に依存する。)において、ガイド48aおよび48bが突出する。その状態で次に、芯材20上のコイル成形体10を拡径する。
【0105】
拡径装置60が芯材20に対して適正に位置決めされたとき、
図12に示すように、拡径装置60の回転棒72aおよび72bが芯材20のハンドル42aおよび42bの位置に存在する。そして、回転棒72aおよび72bでハンドル42aおよび42bを回すことによって、コイル成形体10を芯材20から解放して拡径する。
【0106】
コイル成形体10を拡径するのは、最初に後端側の固定(保持)を解放し、次いで前端側の固定(保持)を解放するという順序で行う。
【0107】
したがって、まず、エアモータ70bを回転して回転棒72bを左に回転させると、回転棒72bがハンドル42bの側面に当たり、ハンドル42bすなわちハンドル42bが固着されているボルト40bが左回転される。そのため、ボルト40bがコイル成形体10の雌ねじ14bから脱落し、コイル成形体10の後方端における芯材20上での固定、保持が解放される。このとき、ガイド48aおよび48bによって、コイル成形体10の後端の「暴れ」を抑制することができる。
【0108】
ついで、エアモータ70aを回転して回転棒72aを左に回転させると、回転棒72aがハンドル42aの側面に当たり、ハンドル42aすなわちハンドル42aが固着されているボルト40aが左回転される。そのため、ボルト40aがコイル成形体10の雌ねじ14aから脱落し、コイル成形体10の前方端における芯材20上での固定、保持が解放される。
【0109】
このようにして、コイル成形体の両端での固定(保持)を解放することによって、コイル成形体10は自身の弾性によって、
図1(b)の縮径状態から
図1(a)の状態に拡径される。先に述べたように、拡径時のコイル成形体10の外径は既設管の内径よりやや大きくしているので、拡径されたコイル成形体10は、それを保持していた芯材20があった場所において、既設管100の内面にコイル成形体10の外周が密接するように敷設される。つまり、拡径装置60によってコイル成形体10を容易に拡径して敷設することができる。
【0110】
なお、最初にコイル成形体10の後端側を解放し、その後、前端側を解放するように時間差を設けることによって、先に解放されるコイル成形体の後端側が、未解放のために未だ固定されている前端側に引き寄せられる。したがって、コイル成形体の前端側の位置決めを確実に行えば、コイル成形体を隙間なく、既設管内に敷設することができる。
【0111】
このようにして、1区間全長に亘って連続的に引き込まれた芯材20のうち先頭の芯材20からコイル成形体10が解放され、コイル成形体10が
図13に示すように、その位置にとどまる。
【0112】
図13に示すように、先行する芯材20からコイル成形体10を解放して拡径した状態が、
図14(a)に示される。
図14(a)では、先行する芯材から解放されて拡径したコイル成形体10の外面が既設管100の内面に密接して敷設されていることがわかる。そのとき、コイル成形体10の後端は、後端側のガイド48b(および48a)に規制されて、それより前にある。拡径されたコイル成形体を保持していた芯材20は元の位置にとどまっている。その先行する芯材20には連結部材90によって、後続する芯材20が連結されていて、後続する芯材20上にコイル成形体10が縮径されて保持されている。
【0113】
次に、後続する芯材20からコイル成形体10を解放して拡径する訳であるが、
図14(a)の状態のまま後続する芯材20上のコイル成形体10を拡径すると、未拡径のコイル成形体10の前端と拡径済みのコイル成形体の後端との間が開いてしまう。コイル成形体を拡径するとき、後端をまず解放するので、前端側のガイド46b、46c(および46a)で位置を規制されている前端側は動かないからである。
【0114】
そこで、この実施例では、先行する芯材20からコイル成形体を解放して拡径した後、
図14(b)に示すように、拡径済みのコイル成形体の後端と、後続する芯材20上の縮径した状態のコイル成形体10の前端との隙間を詰めるようにしている。
【0115】
具体的には、
図14(a)の状態から、ロープ108を第1マンホール102側から引くことによって、後続する芯材20上のガイド46、46c(46aも)が拡径済みのコイル成形体10の後端に当接するまで、拡径済みのコイル成形体を保持していた先行する芯材を、それに連結されている後続する芯材とともに、第1マンホール102の方へ引き寄せる。つまり、先行する芯材からコイル成形体を解放して拡径した後、拡径していないコイル成形体を保持している後続する芯材を軸方向に位置合わせする。
【0116】
上述したように、連結部材(ITハンガ)90と連結金具32とは軸方向において相対的に変位可能に連結されているので、後続する芯材を第1マンホール102の方に引き寄せるとき、まず、後続する芯材だけが移動して先行する芯材に接近して当たり、ついで先行する芯材と後続する芯材が一緒に第1マンホール102の方に引き寄せられる。
【0117】
このような後続する芯材20の位置合わせを行うと、既にコイル成形体10を解放拡径した先行する芯材20は、たとえば
図15に示すように後続する芯材20に押されて、その先頭部分が第1マンホール102内に入る。
【0118】
ただし、
図14(b)の位置合わせをする前に、
図15のように、拡径装置60をロープ114によって第2マンホール104側から引っ張って、拡径装置60を後続する芯材つまり次に拡径するコイル成形体を保持している芯材の中空部内に移動させておく。このとき、拡径装置60は、そり66および68によってレール26および28上を移動する。
【0119】
このように、芯材20どうしが連結された状態で拡径装置60のそり(走行部材)66および68が芯材20のレール26および28上を移動するのであるから、先行する芯材のレールと後続する芯材のレールのずれは、拡径装置60のそり66お68が先行する芯材のレールから後続する芯材のレール上へスムーズに乗り移れる程度のずれ(これは基本的にはレール26および28の前後端に形成された易進入部30による)に抑えられるべきである。したがって、連結部材90を前端側連結金具32および後端側連結金具34に連結したときに芯材の周方向のずれはあってもよいが、そのずれは、拡径装置60の走行部材(そり)66および68が、前後の芯材20のレール26および28を移動可能な相対位置許容範囲内である必要がある。
【0120】
その後、
図15の状態で、先に
図13を参照して説明したような方法で、先行する(先頭の)芯材に後続する(2番目の)芯材20上からコイル成形体10を解放して拡径する。
【0121】
そして、
図14を参照して説明した、後続する芯材の位置合わせを行う工程と、その後続する芯材上のコイル成形体を拡径する工程を繰り返し実行して、最終的に、第1マンホール102から第2マンホール104までの1区間内のすべてのコイル成形体を拡径する。その状態が
図16に示される。
【0122】
先頭から2番目の芯材上のコイル成形体を拡径し、つぎに3番目の芯材上のコイル成形体を拡径するために、3番目の芯材を、2番目の芯材上で既に拡径したコイル成形体の後端に位置合わせするとき、先頭の芯材は2番目の芯材に押されて第1マンホール102内に出てくる。そこで、連結部材90による先頭の芯材と2番目の芯材との連結を解除すれば、先頭の芯材を位置マンホール102の上部開口から地上に回収することができる。
【0123】
以後、同様に、空になった芯材を順次第1マンホール102から取り出せばよい。
【0124】
図16では、第1マンホール102から最後の芯材20が引き上げられ、第2マンホール104から拡径装置60が引き上げられて、コイル成形体敷設工程が終了する。
【0125】
上述の実施例によれば、拡径装置60を芯材20とは別体で構成しているので、それぞれにコイル成形体10を縮径して保持する複数の芯材20を既設管100内に連続して引き込んだ後、同じ拡径装置60を用いて各芯材20上のコイル成形体10を拡径することができる。したがって、拡径装置は1台でよく、経済的である。しかも、それぞれが縮径したコイル成形体10を保持する複数の芯材20を予め準備できるので、コイル成形体敷設工程が効率的に行える。
【0126】
その後、
図17に示すように、既設管100内に敷設したコイル成形体の内面に、
図2示すライニング材18をライニングする。具体的には、
図2(b)のようにたとえばハート形に折り畳んだライニング材18をコイル成形体の内部に導入し、そのライニング材18内に高温高圧の蒸気を圧送することによって、ライニング材18の形状記憶特性を利用して、管状に復元したライニング材18をコイル成形体10の内面に敷設する。
【0127】
つまり、既設管100の更生は、
図8‐
図16のコイル成形体敷設工程と、それに続く
図17に示すライニング工程を実施することによって行われる。
図17が既設管内にコイル成形体を敷設し、さらにライニング材をライニングした更生管路を示す。
【0128】
図18は後続する芯材の前端側連結金具32の他の例を示す概略図である。
図3に示す芯材の例では、前端側連結金具32の透孔32aは連結部材90が緩挿できる円形であった。したがって、
図3の実施例の芯材を
図7の連結部材90で連結した場合、連結部材90と前端側連結金具32とは、軸方向の相対的位置は変位可能である。そのため、先行する芯材に対して後続する芯材を水平面内で屈曲させるときには、左右どちらかの側において連結部材90と前端側連結金具32との軸方向の相対的位置を変化させて連結長さを短くできるので、後続する芯材を水平面内で屈曲(曲げ)させながら、引き込むことができる。
【0129】
しかしながら、透孔32aが円形であるため、連結部材90がその透孔32a内で変位する余地は小さく、屈曲性(可撓性)があまり大きいとは言えない。
【0130】
これに対して、
図18の実施例では、前端側金具32の透孔32aが、水平方向に延びた長孔として形成される。したがって、
図18で点線で示すように、連結部材90はその透孔32aで大きく変位できる。つまり、先行する芯材に対して後続する芯材を水平面内で大きく変位させる(曲げる)ことができる。したがって、既設管100が水平面内で大きく屈曲していても、後続する芯材を容易にその屈曲に添わせることができ、連結部材90で連結した芯材を既設管100内にスムーズに引き込むことができる。
【0131】
これに対して、
図19の実施例では、前端側金具32の透孔32aが、垂直方向に延びた長孔として形成される。したがって、
図19で点線で示すように、連結部材90はその透孔32aで大きく変位できる。つまり、先行する芯材に対して後続する芯材を上下方向に大きく変位させる(曲げる)ことができる。したがって、既設管100が上下方向に大きな段差を有していていても、後続する芯材を容易にその段差に添わせることができ、連結部材90で連結した芯材を既設管100内にスムーズに引き込むことができる。
【0132】
なお、前端側連結金具32の透孔32aは、
図20および
図21に示すように、斜めの長孔として形成されてもよい。長孔が斜めに形成されると特定の方向において、後続する芯材は容易に屈曲(変位)できる。ただし、1つの芯材に2つの連結金具32を使用するわけであるが、
図20または
図21のような透孔32aが斜めの長孔の連結金具を用いる場合には、2つの連結金具の長孔の傾斜方向を同じにする必要がある。もし、逆の傾斜の長孔の連結金具を用いれば、反対の傾斜によって互いの変位が制限されるので、必要な屈曲性(可撓性)が得られないからである。
【0133】
図23はこの発明の他の実施例の連結装置の連結部材90である、通称デンデンボルト、ロットボルトなどと呼ばれるリング付ボルト190を示す概略図である。リング付ボルト190は、ねじ本体192を含み、このねじ本体192の先端にはリング194が形成される。この先端リング194は、その外形が後続する芯材の先端側連結金具32の透孔32a(
図3、
図18‐
図21)に挿通可能な大きさにされる。そして、この先端リング194の中空部に挿通可能な外径を有する抜け止めボルト194とこの抜け止めボルト194に螺合するナット196を用いる。
【0134】
ねじ本体192は、先行する芯材20の中空部後端に設けられている連結金具34の透孔34a(
図4)に挿通され、ねじ部分に連結金具34の両面からナットが螺合され、それによってねじ本体192は、先行する芯材20の後端側連結金具34に固定される。
【0135】
先行する芯材20に後続する芯材20を連結する場合、
図23(a)の状態から
図23(b)に示すように、連結部材すなわちリング付ボルト190の先端リング194が後続する芯材20の中空部前端に設けられている連結金具32の透孔32a(
図3、
図18‐
図21)中を挿通するように、後続する芯材20を先行する芯材20に近づける。
【0136】
連結部材すなわちリング付ボルト190の先端リング194が後続する芯材20の連結金具32の透孔32aを通過すると、
図23(c)に示すように、先端リング194に抜け止めボルト196を挿通して、反対側をナット196で止める。したがって、ねじ本体192の先端リング194は後続する芯材20の連結金具32から抜けることがない。つまり、先行する芯材20と後続する芯材20が連結部材すなわちリング付ボルト190によって連結される。
【0137】
この
図22‐
図23の実施例においても、連結部材すなわちリング付ボルト190のねじ本体192は後続する芯材の前端側連結金具32の透孔32aに緩挿されるが、抜け止めボルト(第1の抜け止め部材)196によって、後端側連結金具32の後面側において、透孔32aから抜けるのが防止されている。つまり、前端側連結金具32の後方向への移動は禁止されるが、前方向への移動は、ねじ本体92の長さに応じた距離だけは許容される。
【0138】
なお、
図22‐
図23の実施例においても、前端側連結金具32の透孔32aを
図18‐
図21に示すような長孔として形成することもでき、同様の効果を期待できる。
【0139】
さらに、上述の実施例では、ITハンガ90やリング付ボルト190の前端側は、先行する芯材の後端側連結金具34に対して固定的に剛性を持って連結された。しかしながら、ITハンガ90やリング付ボルト190の前端側を、先行する芯材の後端側連結金具34に対して可撓性ないし屈曲性を持って連結することもできる。
【0140】
具体的には、
図7のITハンガに代えて、両端に回転プレート96が設けられたITハンガ(図示せず)を用いる。そして、
図7のITハンガ90と後続する芯材の前端側連結部材32との連結方法と同じ連結方法を採用すればよい。つまり、先行する芯材の後端側連結部材34に透孔を形成し、その透孔にITハンガの前端を緩挿して回転プレート(第2の抜け止め部材として機能する)で抜け止めすればよい。このとき、透孔(図示せず)が円形であれば、主として、連結部材と後端側連結部材の軸方向の相対的位置が変位できる。長孔に形成した場合には、連結部材と後端側連結金具との連結状態は、先に
図18‐
図21を参照して説明したと同様の変位が可能である。
【0141】
図22のリング付ボルトに代えて、前端と後端の両方にリング196が形成されてリング付ボルト(図示せず)を用いることもできる。そして、
図22のリング付ボルト190と後続する芯材の前端側連結部材32との連結方法と同じ連結方法を採用すればよい。つまり、先行する芯材の後端側連結部材34に透孔を形成し、その透孔にリング付ボルトの前端側のリングを緩挿して
図22のような抜け止めボルト(第2の抜け止め部材として機能する)で抜け止めすればよい。このとき、透孔(図示せず)が円形であれば、主として、連結部材と後端側連結部材の軸方向の相対的位置が変位できる。長孔に形成した場合には、連結部材と後端側連結金具との連結状態は、先に
図18‐
図21を参照して説明したと同様の変位が可能である。
【0142】
さらに、上述のいずれの実施例でも、縮径した状態でコイル成形体を保持している芯材を既設管100内に引き込むときには、その都度、第1マンホール102や第2マンホール104内において、後続する芯材を先行する芯材に連結部材90で連結している。
【0143】
しかしながら、第1マンホール102や第2マンホール104を通して既設管100内に引き込む前に、複数の芯材(いずれも縮径したコイル成形体を保持している。)を地上で連結していてもよい。そうすれば、複数の芯材を既設管100内に引き込む際にその都度マンホール内で後続する芯材を連結する必要がなく、複数の芯材をより効率的に既設管内に引き込むことができる。ただし、このように複数の芯材を地上で連結し、その連結された複数の芯材を地上からマンホール内に搬入するときには、芯材どうしの間隔が長い方が扱い易いので、連結部材90は比較的長い方がよい。これに対して、マンホールから既設管内に引き込むときには、芯材どうしの間隔が短い方が扱い易いので、連結部材90は比較的短い方がよい。
【0144】
そのため、このような要求を満足するためには、たとえば
図24に示すような、連結長さを伸縮可能な連結部材90を用いる。
【0145】
図24に示す連結部材90は、細長い長手板290を含み、この長手板290の一方端側には孔291が形成され、他方端側から一方端側へ延びる長孔292が形成される。
【0146】
このような連結部材90すなわち長手板290を用いて連結金具34および32を連結する方法が
図25に示される。
【0147】
図25を参照して、先行する芯材の後端側の連結金具34には、ボルト33aおよびナット33bを用いて、「L」字状の補助金具34Aが、L字の一辺が連結金具34の取り付け面に添い、他辺が上面となるように、取り付けられる。この補助金具34Aの上面には孔34Aaが形成される。後続する芯材の前端側の連結金具32には、ボルト31aおよびナット31bを用いて、「L」字状の補助金具32Aが、L字の一辺が連結金具32の取り付け面に添い、他辺が上面となるように、取り付けられる。この補助金具32Aの上面には孔32Aaが形成される。
【0148】
長手板290の孔291が上記孔34Aaと重なるように配置して、ボルト294およびナット296を用いて、補助金具34Aの上面に長手板290を固着する。このとき、必要ならボルト294に対してワッシャを装着してもよい。他方、長孔292を補助金具32Aの孔32Aaに合わせ、ボルト294およびナット296を用いて、補助金具32Aの上面に長手板290を取り付ける。ただし、ボルト294の頭と長手板290の上面との間において、ボルト294が緩挿されるようにコイルばね298を設置する。コイルばね298の弾発力に抗してボルト294の頭を押えることによって、ボルト294およびナット296による長手板290の固定を一時的に解除できる。そのため、ボルト294の頭を押した状態で、ボルト294およびナット296で固定する位置を変更することによって、
図25に示す連結部材90すなわち長手板290による連結長さを伸縮できる。
【0149】
図26(a)はボルト294が長孔292の他方端に位置されていて、連結長さが最大にされた状態を示す。
図26(b)はボルト294が長孔292の一方端に位置されていて、連結長さが最小にされた状態を示す。ボルト294およびナット296による固定位置を変更することで、連結長さを、上記最大から最小までの範囲で伸縮できる。
【0150】
図27に示す実施例では、このような連結長さが可変の連結部材を用いて、各々が縮径したコイル成形体10を保持している複数の芯材20をたとえば地上で予め連結しておいて、その状態のままマンホールから既設管100内に引き込む。詳しくいうと、連結部材90を用いて、地上で、先行する芯材と後続する芯材を順次連結しておく。そして、たとえば第2マンホール104から既設管100に引き込むまでは、
図26(a)のように連結長さを長くしておき、既設管100内に引き込むときに
図26(b)のように結長さを短くする。連結長さが長いまま既設管100内に引き込んでもよいが、そうすると既設管100内に一度に引き込める芯材の数が少なくなる。これに対して、既設管100内に引き込むときに連結長さを短くして引き込むようにすれば、既設管100内に一度に引き込む芯材の数を少なくすることがない。
【0151】
このように、
図27の実施例では、縮径した状態のコイル成形体を保持している複数の芯材どうしを連結する作業が地上でできるので、施工の効率が上がる。
【0152】
図28に、連結装置を構成する連結部材のさらに他の例が示されていて、この実施例は、
図24に示す実施例の変形例である。
【0153】
詳しく説明すると、長手板290には、
図24の長手板のものより長い長孔292が形成されるとともに、長手板290の上面には、特に
図28(b)からよくわかるように、付着板290aが付着される。この付着板290aは長手板290の長手方向において部分的に厚みを変化させるためのものである。つまり、長手板290の左端部は長手板だけの厚みであるが、それ以外の部分では、長手板290と付着板290aの合計の厚みとなり、長手板290の上面に段差が形成されている。
【0154】
そして、右側のボルト294の周囲に被せられたコイルばね298の下端と付着板290aの上面との間にワッシャ295aが介挿されている。右のボルト294は、付着板290a上をワッシャ295aとともに、自由にスライド可能である。
【0155】
ただし、右のボルト294(およびワッシャ295a)が付着板290aより左側の長手板290の肉薄部分にまで移動すると、ワッシャ295aが肉薄部分に落ち込んでコイルばね298の弾発力によって下方(長手板290側)へ押し付けられる。したがって、右のボルト294は再び付着板290aの上には戻れない。したがって、この場合には、右のボルト294は
図30(b)のx1‐x2の範囲内でのみスライド可能となる。
【0156】
この実施例の連結部材290を用いて
図27のように芯材20を連結するとき、地上から第2マンホール104内に入るまでは右のボルト294を付着板290a上だけで動かし、第2マンホール104から既設管100内に引き込むときに、付着板290a上から外して
図30(b)のx1‐x2の範囲だけで伸縮できるようにすればよい。
【0157】
また、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。