特開2015-187586(P2015-187586A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-187586(P2015-187586A)
(43)【公開日】2015年10月29日
(54)【発明の名称】信号解析装置及び信号解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 23/14 20060101AFI20151002BHJP
   H04B 17/00 20150101ALI20151002BHJP
【FI】
   G01R23/14 D
   G01R23/14 B
   H04B17/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-65455(P2014-65455)
(22)【出願日】2014年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 圭一
【テーマコード(参考)】
5K042
【Fターム(参考)】
5K042AA08
5K042CA02
5K042DA11
5K042EA15
5K042FA02
5K042FA03
5K042FA15
5K042HA01
(57)【要約】
【課題】外部ミキサの前段に可変フィルタを設けることなく、外部ミキサで発生したイメージレスポンス及びマルチプルレスポンスを簡易に除去することが可能な信号解析装置及び信号解析方法を提供する。
【解決手段】局部発振器11aへ2つの局部発振周波数掃引範囲を設定するための掃引範囲設定部21と、2つの局部発振周波数掃引範囲を交互に切り換えて局部発振信号を掃引するための制御信号を局部発振器11aに出力する掃引制御部22と、一方の掃引により得られる第1の測定データ、及び、他方の掃引により得られる第2の測定データを測定周波数に対応付けて記憶する記憶部23と、第1の測定データに基づいて周波数範囲の有効範囲を設定するための有効範囲設定部24と、有効範囲外の第1の測定データと有効範囲内の第2の測定データを表示部18に表示させる不要信号除去部25と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部発振信号を発生する局部発振器(11a)と、被測定信号と当該局部発振信号を周波数混合して中間周波数信号に変換するミキサ(110)と、を備え、当該中間周波数信号を信号処理することにより、前記被測定信号の周波数成分を表示部(18)に表示させる信号解析装置において、
前記被測定信号の周波数を含む所定の同一の測定周波数範囲を掃引測定するため、当該測定周波数範囲と前記中間周波数信号の周波数に基づいて、前記局部発振器へ2つの局部発振周波数掃引範囲を設定するための掃引範囲設定部(21)と、
前記2つの局部発振周波数掃引範囲を交互に切り換えて前記局部発振信号を掃引するための制御信号を前記局部発振器に出力する掃引制御部(22)と、
一方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第1の測定データ、及び、他方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第2の測定データを測定周波数に対応付けて記憶する記憶部(23)と、
前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、所定の閾値以上の値の測定データが得られた測定周波数を含む周波数範囲を有効範囲として設定するための有効範囲設定部(24)と、
前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、前記有効範囲外の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させるとともに、前記記憶部に記憶された前記第2の測定データのうち、前記有効範囲内の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させる不要信号除去部(25)と、を備えることを特徴とする信号解析装置。
【請求項2】
前記掃引制御部は、前記他方の局部発振周波数掃引範囲の掃引において、前記有効範囲に対応する周波数範囲のみで前記局部発振信号を掃引するための制御信号を、前記局部発振器に出力することを特徴とする請求項1に記載の信号解析装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の信号解析装置を用いる信号解析方法であって、
被測定信号の周波数を含む所定の同一の測定周波数範囲を掃引測定するため、当該測定周波数範囲と前記中間周波数信号の周波数に基づいて、前記局部発振器へ2つの局部発振周波数掃引範囲を設定するための掃引範囲設定段階と、
前記2つの局部発振周波数掃引範囲を交互に切り換えて前記局部発振信号を掃引するための制御信号を前記局部発振器に出力する掃引段階と、
一方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第1の測定データ、及び、他方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第2の測定データを測定周波数に対応付けて記憶する記憶段階と、
前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、所定の閾値以上の値の測定データが得られた測定周波数を含む周波数範囲を有効範囲として設定するための有効範囲設定段階と、
前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、前記有効範囲外の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させるとともに、前記記憶部に記憶された前記第2の測定データのうち、前記有効範囲内の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させる不要信号除去段階と、を含むことを特徴とする信号解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号解析装置及び信号解析方法に関し、特に外部ミキサを接続可能な信号解析装置及び信号解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物から出力される広帯域のRF信号を被測定信号として受信し、当該被測定信号の周波数解析を行うスペクトラムアナライザなどの信号解析装置が従来から知られている。このような信号解析装置は、局部発振信号を発生する局部発振器と、被測定信号と局部発振信号を周波数混合して中間周波数信号に変換するミキサと、を備え、中間周波数信号を信号処理することにより、被測定信号の周波数成分を表示部に表示させるようになっている。
【0003】
上記のような信号解析装置は、信号解析装置本体の動作周波数を上回る高い周波数帯域までの周波数解析を可能とするために、高調波ミキサを外部ミキサとして接続可能な構成であることが多い。つまり、外部ミキサにより被測定信号がダウンコンバートされることにより、信号解析装置本体の動作周波数内での測定を可能としている。
【0004】
しかしながら、高調波ミキサは、本来の被測定信号の周波数以外にイメージレスポンスやマルチプルレスポンスなどの不要な周波数成分を多数発生させてしまう。
【0005】
そこで、局部発振信号の周波数に追従して同調周波数が可変される可変フィルタ(トラッキングフィルタ)を高調波ミキサの前段に設けて、局部発振信号に対応した周波数付近の信号成分のみを高調波ミキサに入力させる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2832749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、被測定物の動作周波数は数十GHz以上と極めて高くなっており、外部ミキサの必要性はますます高まっている。しかしながら、そのような周波数帯域の信号の周波数解析を行う信号解析装置において可変フィルタ(トラッキングフィルタ)を外部ミキサの前段に設ける場合には、可変フィルタの同調周波数を局発周波数に追従させて可変させるための構成が煩雑になるという問題があった。
【0008】
また、可変フィルタとして例えばYIG共振器で構成された高価なフィルタが必要となり、装置全体が高価になるという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、外部ミキサの前段に可変フィルタを設けることなく、外部ミキサで発生したイメージレスポンス及びマルチプルレスポンスを簡易に除去することが可能な信号解析装置及び信号解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の信号解析装置は、局部発振信号を発生する局部発振器と、被測定信号と当該局部発振信号を周波数混合して中間周波数信号に変換するミキサと、を備え、当該中間周波数信号を信号処理することにより、前記被測定信号の周波数成分を表示部に表示させる信号解析装置において、前記被測定信号の周波数を含む所定の同一の測定周波数範囲を掃引測定するため、当該測定周波数範囲と前記中間周波数信号の周波数に基づいて、前記局部発振器へ2つの局部発振周波数掃引範囲を設定するための掃引範囲設定部と、前記2つの局部発振周波数掃引範囲を交互に切り換えて前記局部発振信号を掃引するための制御信号を前記局部発振器に出力する掃引制御部と、一方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第1の測定データ、及び、他方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第2の測定データを測定周波数に対応付けて記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、所定の閾値以上の値の測定データが得られた測定周波数を含む周波数範囲を有効範囲として設定するための有効範囲設定部と、前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、前記有効範囲外の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させるとともに、前記記憶部に記憶された前記第2の測定データのうち、前記有効範囲内の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させる不要信号除去部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成により、所定の閾値以上の値の測定データが得られた有効範囲に基づいて、2回の掃引で得られた測定データの表示を制御するため、外部ミキサの前段に可変フィルタを設けることなく、外部ミキサで発生したイメージレスポンス及びマルチプルレスポンスを簡易に除去することが可能となる。
【0012】
また、上記の有効範囲は測定周波数を含む所定の周波数幅を有しているため、レベルや周波数が時間的に変動する被測定信号に対しても測定が可能となる。
【0013】
また、本発明の請求項2の信号解析装置においては、前記掃引制御部は、前記他方の局部発振周波数掃引範囲の掃引において、前記有効範囲に対応する周波数範囲のみで前記局部発振信号を掃引するための制御信号を、前記局部発振器に出力することを特徴とする。
【0014】
この構成により、2回目の掃引に要する時間を短縮できるため、どちらか一方の極性の掃引のみが行われる通常の掃引と同程度の測定時間で被測定信号のスペクトラムを得ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の請求項3の信号解析方法は、上記の信号解析装置を用いる測定方法であって、上記の信号解析装置を用いる信号解析方法であって、被測定信号の周波数を含む所定の同一の測定周波数範囲を掃引測定するため、当該測定周波数範囲と前記中間周波数信号の周波数に基づいて、前記局部発振器へ2つの局部発振周波数掃引範囲を設定するための掃引範囲設定段階と、前記2つの局部発振周波数掃引範囲を交互に切り換えて前記局部発振信号を掃引するための制御信号を前記局部発振器に出力する掃引段階と、一方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第1の測定データ、及び、他方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第2の測定データを測定周波数に対応付けて記憶する記憶段階と、前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、所定の閾値以上の値の測定データが得られた測定周波数を含む周波数範囲を有効範囲として設定するための有効範囲設定段階と、前記記憶部に記憶された前記第1の測定データのうち、前記有効範囲外の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させるとともに、前記記憶部に記憶された前記第2の測定データのうち、前記有効範囲内の測定周波数に対応付けられた測定データを前記表示部に表示させる不要信号除去段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、外部ミキサの前段に可変フィルタを設けることなく、外部ミキサで発生したイメージレスポンス及びマルチプルレスポンスを簡易に除去することが可能な信号解析装置及び信号解析方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態としての信号解析装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態としての信号解析装置の制御部が実行する処理を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の実施形態としての信号解析装置による2回の掃引で得られたスペクトラムの一例を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態としての信号解析装置を用いて不要信号除去処理を行ったスペクトラムの一例を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態としての信号解析装置の制御部が実行する他の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る信号解析装置及び信号解析方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態としての信号解析装置1は、外部ミキサ100が接続されることにより、高周波の被測定信号の周波数成分を測定することができるものであり、局部発振器11a,11b、スイッチ16、A/D変換部17、表示部18、操作部19、及び制御部20を主に備える。
【0020】
また、信号解析装置1は、例えば数GHz程度の周波数の被測定信号を入力するための端子31に加えて、数十GHz以上の高周波の被測定信号を外部ミキサ100を介して入力するための端子32,33を筐体40に備える。
【0021】
外部ミキサ100は、例えば高調波次数nに対応した高調波ミキサ110と、バンドパスフィルタ120とを有し、筐体40に設けられた端子32,33に接続可能となっている。高調波ミキサ110は、筐体40内の局部発振器11aから出力される周波数FLOの局部発振信号の基本波及び高調波と、端子130から入力される周波数FRFの被測定信号とを乗算して周波数混合するようになっている。
【0022】
バンドパスフィルタ120は、高調波ミキサ110で周波数混合された信号の中間周波数FIFの周波数成分(以下、これを「中間周波数信号」という。)を抽出し、抽出した中間周波数信号を端子32,33を介して筐体40内のミキサ14aに出力するようになっている。また、バンドパスフィルタ120は、操作部19を介して制御部20に与えられた値の中間周波数FIFの信号を出力できるように構成されていてもよい。
【0023】
なお、外部ミキサ100は、高調波ミキサ110の代わりに基本波ミキサ(不図示)を有し、筐体40内の局部発振器11aからの局部発振信号を逓倍器(不図示)で周波数逓倍して当該基本波ミキサに出力するようになっていてもよい。
【0024】
局部発振器11aは、例えばPLL回路(不図示)により構成されており、後述の掃引制御部22からの制御信号を受けて、局部発振周波数FLOの局部発振信号を発振して、外部ミキサ100内の高調波ミキサ110へ送るようになっている。
【0025】
スイッチ16は、制御部20により制御され、A/D変換部17への入力信号を切り換えるようになっている。
【0026】
A/D変換部17は、スイッチ16が端子32,33側のバンドパスフィルタ15a側に接続された場合に、局部発振器13a、ミキサ14a、及びバンドパスフィルタ15aによりダウンコンバートされた外部ミキサ100からの中間周波数信号を、所定のクロックでサンプリングしてデジタルデータに変換し、後述の記憶部23に出力するようになっている。
【0027】
また、A/D変換部17は、スイッチ16が端子31側のバンドパスフィルタ15c側に接続された場合に、局部発振器11b,13b、ミキサ12,14b、及びバンドパスフィルタ15b,15cによりダウンコンバートされた被測定信号の中間周波数信号を、所定のクロックでサンプリングしてデジタルデータに変換し、表示部18に出力するようになっている。
【0028】
制御部20は、例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータで構成され、信号解析装置1を構成する上記各部の動作を制御するとともに、所定のプログラムを実行することにより、掃引範囲設定部21、掃引制御部22、記憶部23、有効範囲設定部24、及び不要信号除去部25をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0029】
また、制御部20は、外部ミキサ100が端子32,33を介して筐体40に接続されたことを認識できるようになっている。
【0030】
掃引範囲設定部21は、被測定信号の周波数FRFを含む所定の同一の測定周波数範囲を掃引測定するため、操作部19によって指定された測定周波数範囲、中間周波数信号の周波数FIF、高調波次数nに基づいて、局部発振周波数FLOに関する2種類の掃引範囲(以下、これを「局部発振周波数掃引範囲」という。)を掃引制御部22に設定するようになっている。
【0031】
具体的には、掃引範囲設定部21は、局部発振器11aから発振される局部発振周波数の局部発振周波数掃引範囲を、下記の式を満たすように決定する。
【0032】
RF=n×FLO±FIF ・・・(1)
ここで、nは、局部発振信号の高調波次数を表している。以下、FRF=n×FLO−FIFに従って行われる掃引を「極性−の掃引」と呼び、FRF=n×FLO+FIFに従って行われる掃引を「極性+の掃引」と呼ぶ。
【0033】
例えば、被測定信号の周波数FRFが60GHz、測定周波数の掃引範囲が46GHz〜74GHz、中間周波数FIFが1.875GHz、高調波次数nが8であるとすると、極性+の掃引における局部発振周波数掃引範囲は、5.984GHz〜9.484GHzとなる。一方、極性−の掃引における局部発振周波数掃引範囲は、5.516GHz〜9.016GHzとなる。
【0034】
掃引制御部22は、掃引範囲設定部21により設定された2種類の局部発振周波数掃引範囲を交互に切り換えて局部発振信号を周波数掃引するための制御信号を、局部発振器11aに出力するようになっている。
【0035】
記憶部23は、一方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第1の測定データ、及び、他方の局部発振周波数掃引範囲の掃引により得られる第2の測定データを測定周波数に対応付けて記憶するようになっている。
【0036】
具体的には、記憶部23は、例えば、第1の測定データとしてのスペクトラムを記憶するためのメモリ23aと、第2の測定データとしてのスペクトラムを記憶するためのメモリ23bとを有する。
【0037】
有効範囲設定部24は、記憶部23に記憶された第1の測定データのうち、所定の閾値A以上の値の測定データが得られた測定周波数を含む周波数範囲を有効範囲Cとして、不要信号除去部25に設定するようになっている。
【0038】
ここで、閾値Aは、例えばノイズフロアよりも10dB程度高い値として自動的に設定されるものであってもよく、あるいは、操作部19により任意の値が設定されるものであってもよい。
【0039】
有効範囲Cの周波数幅は、例えば、第1の測定データの各スペクトラムの中心周波数を基準とした±Bの幅である。Bの値は、自動的に設定されるものであってもよく、あるいは、操作部19により任意の値が設定されるものであってもよい。
【0040】
不要信号除去部25は、メモリ23aに記憶された第1の測定データのうち、有効範囲C外の測定周波数に対応付けられた測定データを読み込んで、それらを表示部18に表示させるようになっている。さらに、不要信号除去部25は、メモリ23bに記憶された第2の測定データのうち、有効範囲C内の測定周波数に対応付けられた測定データを読み込んで、それらを表示部18に表示させるようになっている。
【0041】
なお、掃引制御部22は、一方の極性の掃引により決定された有効範囲Cに対応する周波数範囲のみで他方の極性の掃引を行うための制御信号を、局部発振器11aに出力するようになっていてもよい。この場合には、メモリ23bは、第2の測定データとして、有効範囲Cの周波数範囲の測定データのみを記憶することとなる。
【0042】
以下、外部ミキサ100を使用する場合に生じる不要信号について説明する。外部ミキサ100においては、局部発振周波数FLOの全ての高調波と被測定信号が周波数混合され、式(1)の関係が成り立つ全ての信号が発生する。このうち、高調波次数が同じで極性が反転した信号は、イメージレスポンスと呼ばれる。また、所望の高調波次数ではない信号は、マルチプルレスポンスと呼ばれる。
【0043】
ここでの説明では、局部発振器11aの局部発振周波数FLOが5GHz〜10GHzの範囲であるとする。高調波ミキサ110の内部では、局部発振器11aによって掃引された局部発振周波数FLOの局部発振信号がn倍(n=1,2,3,4,・・・)に逓倍されて発振周波数FnLOの信号となった上で周波数FRFの被測定信号と周波数混合され、バンドパスフィルタ120(中間周波数=1.875GHz=FIF)で中間周波数FIFが検出されるようになっている。
【0044】
被測定信号の周波数FRFが60GHzであり、外部ミキサ100が局部発振信号の高調波次数n=8に対応したものである場合を考える。このとき、極性−と極性+で掃引した場合に表示されるスペクトラムの周波数(測定周波数)は、それぞれ表1,2に示すようになる。
【0045】
表1,2には1次から9次の高調波に関するスペクトラムの周波数(測定周波数)が記載されている。外部ミキサ100からの出力周波数には、周波数FRF,FnLOの和又は差が含まれるが、和FRF+FnLOについては不図示のローパスフィルタ(LPF)でカットされるとし、差FRF−FnLOとFnLO−FRFの周波数成分のみを考える。
【0046】
表1,2に示されているように、n=8の高調波のFRF−FnLOとFnLO−FRFの周波数成分に関しては、極性−の掃引と極性+の掃引とで測定周波数がそれぞれ2×FIFだけずれるようになっている。それゆえに、n=8以外の高調波次数のFRF−FnLOとFnLO−FRFの周波数成分に関しては、極性−の掃引と極性+の掃引とで測定周波数が2×FIFではない周波数でそれぞれずれることになる。このため、n=8以外の高調波次数については、測定周波数で見たときのスペクトラムの周波数は、極性+の掃引と極性−の掃引とで一致しない。
【0047】
実際に、表1に示すように、極性−の掃引で、53.54GHz、56.88GHz、60GHz、63.75GHz、68.3GHz、72.47GHz、79.4GHzの周波数(測定周波数)のスペクトラムが見えることになる。
【0048】
また、表2に示すように、極性+の掃引で、49.79GHz、53.13GHz、56.25GHz、60GHz、64.55GHz、68.72GHz、75.65GHzの周波数(測定周波数)のスペクトラムが見えることになる。
【0049】
このように、極性+の掃引と極性−の掃引で、n=8に対応する60GHzのスペクトラムのみが同一の測定周波数に存在するため、イメージレスポンス及びマルチプルレスポンスを排除して、本来の被測定信号の周波数60GHzを抽出できることが分かる。
【表1】
【表2】
【0050】
以下、本実施形態の信号解析装置1を用いた信号解析方法について説明する。ここでは、本実施形態の信号解析装置1の制御部20が図2のフローチャートの不要信号除去プログラムを実行するものとして説明する。
【0051】
まず、ステップS1で操作者により、外部ミキサ100が端子32,33を介して筐体40に接続されたことが制御部20に認識される。
【0052】
次に、ステップS2で制御部20は各種の初期設定を行う。ここでは、例えば操作部19によって指定された測定周波数範囲、中間周波数信号の周波数FIF、高調波次数nが、掃引範囲設定部21に設定される。
【0053】
次に、ステップS3で掃引範囲設定部21は、式(1)に従って、極性+の掃引に関する局部発振周波数掃引範囲を掃引制御部22に設定する(掃引範囲設定段階)。そして、掃引制御部22の制御により、局部発振器11aが設定された局部発振周波数掃引範囲で極性+の掃引を行う(掃引段階)。
【0054】
次に、ステップS4で記憶部23は、ステップS3の掃引で得られた第1の測定データとしてのスペクトラムを測定周波数に対応付けてメモリ23aに記憶する(記憶段階)。ステップS4で得られるスペクトラムは例えば図3(a)の実線のようになる。なお、被測定信号の周波数は47GHzである。
【0055】
次に、ステップS5で掃引範囲設定部21は、式(1)に従って、極性−の掃引に関する局部発振周波数掃引範囲を掃引制御部22に設定する(掃引範囲設定段階)。そして、掃引制御部22の制御により、局部発振器11aが設定された局部発振周波数掃引範囲で極性−の掃引を行う(掃引段階)。
【0056】
次に、ステップS6で記憶部23は、ステップS5の掃引で得られた第2の測定データとしてのスペクトラムを測定周波数に対応付けてメモリ23bに記憶する(記憶段階)。ステップS6で得られるスペクトラムは例えば図3(b)の実線のようになる。
【0057】
次に、ステップS7で有効範囲設定部24は、第1の測定データのうち、所定の閾値A以上の値の測定データが得られた測定周波数を含む幅2×Bの周波数範囲を、図3(a),(b)の破線で示すように有効範囲Cとして不要信号除去部25に設定する(有効範囲設定段階)。図3(b)においては、被測定信号の周波数のみが有効範囲Cに含まれていることが分かる。
【0058】
次に、ステップS8で不要信号除去部25は、メモリ23aに記憶された第1の測定データのうち、有効範囲C外の周波数に対応付けられた測定データを読み込んで、それらを表示部18に表示させる。さらに、不要信号除去部25は、メモリ23bに記憶された第2の測定データのうち、図3(b)の破線で示す有効範囲C内の周波数に対応付けられた測定データを読み込んで、それらを表示部18に表示させる(不要信号除去段階)。
【0059】
この結果、図4に示すように、イメージレスポンス及びマルチプルレスポンスが排除され、被測定信号の周波数に対応するスペクトラムのみが得られることとなる。
【0060】
なお、図2のフローチャートの処理では、極性+の掃引と極性−の掃引を全て終えてから不要信号の除去が行われているが、例えば図5のフローチャートに示すように、極性+の掃引を終えた段階で有効範囲Cが決定され、当該有効範囲Cについてのみ極性−の掃引が行われてもよい。
【0061】
図5において、ステップS11〜S14までの処理は、図2のフローチャートにおけるステップS1〜S4までの処理と同様であるので説明を省略する。
【0062】
ステップS15で有効範囲設定部24は、第1の測定データのうち、所定の閾値A以上の値の測定データが得られた測定周波数を含む幅2×Bの周波数範囲を、図3(a)の破線で示すように有効範囲Cとして不要信号除去部25に設定する(有効範囲設定段階)。
【0063】
次にステップS16で掃引範囲設定部21は、ステップS15で得られた有効範囲Cを、極性−の掃引に関する局部発振周波数掃引範囲として掃引制御部22に設定する(掃引範囲設定段階)。そして、掃引制御部22の制御により、局部発振器11aが設定された局部発振周波数掃引範囲で極性−の掃引を行う(掃引段階)。
【0064】
次に、ステップS17で記憶部23は、ステップS16の掃引で得られた第2の測定データとしてのスペクトラムを測定周波数に対応付けてメモリ23bに記憶する(記憶段階)。ステップS17で得られるスペクトラムは例えば図3(b)の破線で囲まれた部分のようになる。
【0065】
次に、ステップS18で不要信号除去部25は、メモリ23aに記憶された第1の測定データのうち、有効範囲C外の周波数に対応付けられた測定データを読み込んで、それらを表示部18に表示させる。さらに、不要信号除去部25は、メモリ23bに記憶された第2の測定データを読み込んで、それらを表示部18に表示させる(不要信号除去段階)。
【0066】
なお、図2,5のフローチャートの処理では、極性+の掃引を行った後に極性−の掃引を行っているが、逆に極性−の掃引を行った後に極性+の掃引を行ってもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、所定の閾値以上の値の測定データが得られた有効範囲に基づいて、2回の掃引で得られた測定データの表示を制御するため、外部ミキサの前段に可変フィルタを設けることなく、外部ミキサで発生したイメージレスポンス及びマルチプルレスポンスを簡易に除去することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態によれば、極性+の掃引と極性−の掃引を交互に繰り返すことにより、外部ミキサを使用している場合であっても、どちらか一方の極性の掃引のみが行われる通常の測定と同様の操作及び画面表示で測定することを可能とする。測定結果は、1回の極性+の掃引と1回の極性−の掃引を一組として、通常の測定における1回の掃引と同等の結果として扱うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 信号解析装置
11a,11b,13a,13b 局部発振器
12,14a,14b ミキサ
15a,15b,15c バンドパスフィルタ
16 スイッチ
17 A/D変換部
18 表示部
19 操作部
20 制御部
21 掃引範囲設定部
22 掃引制御部
23 記憶部
23a,23b メモリ
24 有効範囲設定部
25 不要信号除去部
31,32,33 端子
40 筐体
100 外部ミキサ
110 高調波ミキサ
120 バンドパスフィルタ
130 端子
図1
図2
図3
図4
図5