【課題】複数の自動取引装置を予測の基礎とすることで予測対象の自動取引装置における流出入量予測の精度をより向上させることが可能な情報処理装置及びプログラムを提案する。
【解決手段】自動取引装置における取引媒体の流出入量を予測する予測部と、前記自動取引装置が設置された施設の種別、及び開催されるイベントの類似性に基づいて少なくとも1以上の他の自動取引装置を選択する選択部と、前記選択部により選択された前記他の自動取引装置における過去のイベント開催期間中の前記取引媒体の流出入量の実績値の平均値、及び前記予測部により予測された流出入量の予測値の比較結果に基づいて、イベント開催期間中の前記予測値を補正する補正部と、を備える、情報処理装置。
前記補正部は、前記平均値から前記予測値を減算することで前記補正値を算出し、算出した前記補正値を前記予測値に加算することで前記予測値を補正する、請求項2又は3に記載の情報処理装置。
前記選択部は、前記自動取引装置が設置された地域で過去に同一のイベントが開催されておらず類似のイベントが開催されている場合、前記自動取引装置が設置された地域に設置された前記他の自動取引装置を選択する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
前記補正部は、前記自動取引装置における過去のイベント開催期間中の前記取引媒体の流出入量の実績値をさらに加えて、前記平均値を算出する、請求項5に記載の情報処理装置。
前記選択部は、前記自動取引装置が設置された地域で過去に類似のイベントが開催されていない場合、類似のイベントが開催された他の地域に設置された前記他の自動取引装置を選択する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<1.予測システムの全体構成>
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、自動取引装置における未来の取引データを予測する。本発明は、多様な形態で実施され得る。以下では、まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る予測システムの全体構成を説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る予測システムの概要を示す図である。
図1に示したように、予測システムは、予測装置1、操作端末2、自動取引装置中央管理部3、金融機関ホスト4、支店5−1、5−2、端末管理部6、自動取引装置7−1、7−2、及び専用網8を有する。なお、本明細書では、本発明の一実施形態に係る情報処理装置は予測装置1として実現されるものとして説明する。また、支店5−1、5−2を特に区別する必要が無い場合、支店5と総称する。同様に、自動取引装置7−1、7−2を特に区別する必要が無い場合、自動取引装置7と総称する。以下、予測システムが有する各構成要素について説明する。
【0024】
(支店5)
支店5は、金融機関の店舗である。
図1に示したように、支店5には、端末管理部6及び複数の自動取引装置7が設置される。なお、本明細書では、端末管理部6及び自動取引装置7が金融機関の店舗である支店5に設置される例を説明するが、コンビニエンスストア、駅構内、デパート、ホテル、オフィスビルなどの多様な施設に設置され得る。
【0025】
(端末管理部6)
端末管理部6は、同一の支店5内に設置された自動取引装置7を管理する機能を有する。具体的には、端末管理部6は、自動取引装置7が保有する取引媒体の保有量や流出入量、稼働状況、取引内容等を管理する。端末管理部6は、専用網8を介して、自動取引装置中央管理部3及び金融機関ホスト4に接続されており、管理下にある自動取引装置7における取引媒体の保有量等の情報を、自動取引装置中央管理部3及び金融機関ホスト4に送信する。
【0026】
(自動取引装置7)
自動取引装置7は、金融機関の顧客による操作に基づいて金銭の取引を実行する顧客操作型端末である。自動取引装置7は、現金や通帳、カード、レシート用紙等の多様な取引媒体が装填されており、取引処理の際に取引媒体が流出/流入する。後述の予測装置1は、自動取引装置7における未来の取引媒体の取引データを予測する。本明細書では、予測装置1は、一例として自動取引装置7における現金の流出入量を予測するものとする。流出入量とは、顧客取引により流出した現金の量を示す流出量から、顧客取引により流入した現金の量を示す流入量を差し引くことで算出される量であり、正の値は流出量の方が多いことを示し、負の値は流入量の方が多いことを示す。なお、以下では現金の流出量を流出枚数、流入量を流入枚数、流出入量を流出入枚数とも称する。
【0027】
(専用網8)
専用網8は、専用網8に接続されている装置から送信される情報の有線、または無線の伝送路である。専用網8は、金融機関のネットワークであり、例えば専用線またはIP−VPN(Internet Protocol−Virtual Private Network)により構成される。
【0028】
(金融機関ホスト4)
金融機関ホスト4は、自動取引装置7の上位装置として、専用網8を介して自動取引装置7と通信することにより、各種取引を制御する。例えば、金融機関ホスト4は、自動取引装置7を操作する顧客の認証や、自動取引装置7において顧客により指示された入金や振込などの金銭取引(勘定の取引処理)を実行する。また、金融機関ホスト4は、口座番号、暗証番号、氏名、住所、年齢、生年月日、電話番号、職業、家族構成、年収、預金口座残高などの顧客情報(口座の元帳)を管理する。
【0029】
(自動取引装置中央管理部3)
自動取引装置中央管理部3は、専用網8を介して自動取引装置7と通信することにより、各自動取引装置7の稼働状況を監視する。例えば、自動取引装置中央管理部3は、自動取引装置7内に残っている現金の量、取引の状況、エラー(現金切れや紙幣詰まりなど)の有り無しなどを監視している。また、後述の予測装置1によって予測された現金の流出入量、及び自動取引装置7内に残っている現金の量などから、自動取引装置7内の現金が無くなる日を予測し、事前に補充を行えるような「資金装填の計画」を立てて指示をする。また、自動取引装置中央管理部3は、自動取引装置7における取引データを、予測装置1に通知する。
【0030】
(操作端末2)
操作端末2は、予測装置1により予測された流出入量の出力を受け付けたり、予測装置1における各種パラメータを設定したりするための端末である。
【0031】
(予測装置1)
予測装置1は、自動取引装置7における現金の流出入量の将来の推移を予測する予測装置である。自動取引装置7では例えば出金取引により現金が流出するので、適切なタイミングで自動取引装置7に現金を装填する必要がある。このため、予測装置1が、自動取引装置中央管理部3により取得された自動取引装置7の過去の取引データに基づいて、将来の現金の流出入量の推移を予測する。予測装置1は、日毎の流出入量、週毎の流出入量、1時間毎の流出入量など多様な粒度で流出入量の推移を予測し得るが、本明細書では、予測装置1は、日毎の流出入量を予測するものとする。以下では、予測装置1が予測した将来のある日における流出入量の予測値を、流出入予測とも称する。
【0032】
なお、現金の流出入量は支店5ごとに異なるので、予測装置1は、支店5ごとに流出入量を予測してもよい。また、同一の支店5内の自動取引装置7であっても流出入量は異なり得る。例えば、支店5の入り口に近い自動取引装置7の流出入量は、入口から遠い自動取引装置7の流出入量より多くなる傾向にある。このため、予測装置1は、自動取引装置7ごとに流出入量を予測してもよい。
【0033】
以上、本実施形態に係る予測システムの全体構成を説明した。続いて、
図2を参照して、本実施形態に係る予測装置1の構成例を説明する。
【0034】
<2.予測装置の構成例>
図2は、本実施形態に係る予測装置1の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、予測装置1は、取得部11、予測部13、選択部15、及び補正部17を有する。
【0035】
(1)取得部11
取得部11は、自動取引装置7における過去の取引データを取得する機能を有する。具体的には、取得部11は、自動取引装置中央管理部3との通信により、自動取引装置7における過去の取引データを取得する。取引データとは、例えば自動取引装置7における日毎の流出枚数、流入枚数、流出入枚数、並びに現金が装填/回収された場合における装填枚数及び回収枚数を示す情報である。また、取得部11は、予測対象の自動取引装置7以外の複数の自動取引装置7からも取引データを取得することができる。取得部11は、取得した取引データを、予測部13、及び選択部15に出力する。
【0036】
(2)予測部13
予測部13は、予測対象とする自動取引装置7における現金の流出入量を予測する機能を有する。具体的には、予測部13は、取得部11により取得された過去の日毎の流出入枚数に基づいて、将来の日毎の流出入枚数の推移を予測する。例えば、予測部13は、一般的に流出入枚数の傾向が類似すると考えられる前年同月の流出入枚数に基づいて、将来の流出入枚数を予測する。他にも、予測部13は、予測対象日の前月同日、前々年同日等の流出入枚数に基づいて予測してもよい。なお、以下では、過去の日毎の流出入枚数を、過去実績とも称する。
【0037】
ここで、過去実績が取得された期間中に開催されていないイベントが、予測対象期間において予測対象の自動取引装置7の付近で開催される場合がある。このような場合、予測装置1は、イベントによる顧客の増加に伴う流出入枚数の変動を加味して予測を行うことにより、予測精度を向上させる。具体的には、予測装置1は、予測部13により予測された流出入予測を、選択部15により選択された予測対象とは異なる1つ以上の自動取引装置7の過去実績に基づいて、補正部17により補正する。予測部13による予測結果は補正部17に出力され、必要に応じて補正部17により補正される。
【0038】
(3)選択部15
選択部15は、予測対象の自動取引装置7が設置された施設の種別(設置場所カテゴリ)、及び開催されるイベントの類似性に基づいて、少なくとも1つ以上の他の自動取引装置7を選択する機能を有する。具体的には、選択部15は、予測対象の自動取引装置7の設置場所カテゴリと同一又は類似する他の自動取引装置7の中から、予測対象期間において開催されるイベントと同一又は類似のイベントが、過去に付近で開催された自動取引装置7を1つ以上選択する。選択部15は、設置場所カテゴリの類似性をイベントの類似性に優先して、他の自動取引装置7を選択してもよい。これは、設置場所カテゴリが類似する場合の方が、イベントが類似する場合に比較して、流出入枚数が類似する傾向にあるためであり、予測精度を向上させるためである。なお、選択部15は、補正部17が複数の自動取引装置7における過去実績に基づく補正を行うことを担保するために、2つ以上の他の自動取引装置7を選択してもよい。
【0039】
なお、選択部15は、設置場所カテゴリ及び開催されるイベントが同一又は類似する自動取引装置7すべてを選択してもよいし、同一のもののみ、又は予測対象の自動取引装置7との距離が近いなどの一部を選択してもよい。イベントの開催地が自動取引装置7の付近であるか否かは、例えばイベントの開催地が自動取引装置7の設置区域(地域)内であるか否かにより判別可能であるものとする。選択部15は、選択結果を補正部17に出力する。
【0040】
下記の表1に、設置場所カテゴリの一例を示した。表中の「カテゴリNo.」は、設置場所カテゴリの識別番号を示す。「分類1」は、設置場所の上位レベルの分類を示す。「分類2」は、設置場所の下位レベルの分類を示す。例えば、選択部15は、「分類1」が同一であれば類似するカテゴリであると判定し、「分類2」が同一であれば同一のカテゴリであると判定する。
【0042】
下記の表2に、開催される得るイベントの一例を示した。表中の「イベントNo.」は、イベントの識別番号を示す。「種類」は、イベントの種類を示す。「類似イベントNo.」は、類似するイベントの識別番号を示す。例えば、選択部15は、「イベントNo.」が一致する場合は同一のイベントであると判定し、「類似イベントNo.」に該当する場合は類似のイベントであると判定する。
【0044】
(4)補正部17
補正部17は、予測対象の自動取引装置7の付近で開催されるイベントと同一又は類似のイベントが過去に開催された区域内の自動取引装置7の過去実績に基づいて、イベント期間中の流出入予測を補正する機能を有する。例えば、補正部17は、選択部15により選択された他の自動取引装置7における過去のイベント開催期間中の現金の流出入枚数の実績値の平均値、及び予測部13により予測された流出入予測の比較結果に基づいて、イベント開催期間中の流出入予測を補正する。詳しくは、まず、補正部17は、選択部15により選択された1つ以上の自動取引装置7における過去のイベント期間中の流出入枚数の平均値と、予測部13により予測された将来の流出入予測を比較して、流出入予測を補正するために用いる補正値(補正枚数)を算出する。例えば、補正部17は、平均値から予測値を減算することで、補正値を算出する。なお、補正部17は、選択部15により選択された自動取引装置7に加えて、予想対象の自動取引装置7における過去のイベント期間中の流出入枚数を、平均値の算出に用いてもよい。そして、補正部17は、算出した補正値を用いて、イベント開催期間中の流出入予測を補正する。例えば、補正部17は、予測値に補正値を加算することにより、流出入予測を補正する。
【0045】
なお、補正部17は、過去のイベント期間中の流出入枚数を単に平均する他にも、重み付け平均したり、中央値、又は最頻値をとったりしてもよい。また、補正部17は、減算により補正値を算出する以外にも、例えば平均値と予測値との比を算出したり、平均値と予測値との平均を取ったりすることにより補正値を算出してもよい。どのような統計処理を施すかは、例えば設置カテゴリ又はイベントの内容等によって変化し得る。
【0046】
ここで、補正部17は、開催されるイベントの状態に応じて補正値を調整し得る。例えば、補正部17は、開催されるイベントの規模の変化度合及び来客見込みと過去の来客実績との比較結果、又は過去のイベントとの類似性等に基づいて、補正値を増減させる。これにより、補正部17はより適切な補正値を算出することが可能となるため、予測装置1による予測精度を向上させることができる。他にも、補正部17は、イベントが中止になった場合に、補正値をゼロにしてもよい。これにより、予測装置1は、イベントの開催可否に応じて柔軟に予測を変化させることが可能となる。
【0047】
補正部17は、このようにして補正した流出入予測を出力する。なお、予測対象期間中にイベントが開催されない、又は全く同一のイベントが予測対象の自動取引装置7の付近で過去に開催されたなど、補正を要しない場合、補正部17は補正を行うことなく、予測部13により予測された補正前の流出入予測をそのまま出力する。
【0048】
以上、本実施形態の係る予測装置1の内部構成について説明した。
【0049】
<3.動作処理>
[3−1.動作シナリオ]
予測装置1は、予測対象の自動取引装置7の付近で同一又は類似のイベントが過去に開催されていたか否か、また他の場所で同一又は類似のイベントが過去に開催されていたか否かに応じて、異なるシナリオで動作する。下記の表3に、予測装置1の動作シナリオをまとめた表を示した。表中の「シナリオNo.」は、予測装置1の動作シナリオの識別番号を示す。「過去の同一イベント」は、予測対象の自動取引装置7の付近での同一のイベントの開催有無を示す。「過去の類似イベント」は、予測対象の自動取引装置7の付近での類似のイベントの開催有無を示す。「過去の類似イベント(他所)」は、予測対象の自動取引装置7の設置区域以外の設置区域における同一又は類似のイベントの開催有無を示す。
【0051】
(シナリオNo.1)
本シナリオは、予測対象の自動取引装置7の設置区域内で、過去に同一のイベントが開催された場合の動作シナリオである。この場合、予測装置1は、「処置A」として、予測対象の自動取引装置7の過去実績から流出入予測を作成する。予測の基礎とする過去実績に、同一のイベントによる影響が加味されているため、予測装置1は、補正部17による補正を行わず、予測部13により予測された流出入予測をそのまま出力する。
【0052】
(シナリオNo.2)
本シナリオは、予測対象の自動取引装置7の設置区域内で、過去に同一のイベントが開催されていないが、同区域内で過去に類似のイベントが開催された場合の動作シナリオである。この場合、予測装置1は、「処置B」として、同区域内に設置された自動取引装置7におけるイベント開催期間中の過去実績に基づく補正値を用いて、予測部13による流出入予測を補正して出力する。詳しくは、選択部15は、予測対象の自動取引装置7の設置区域内に設置された他の自動取引装置7を選択する。なお、選択部15は、同区域内に設置された、設置場所カテゴリが同一又は類似する自動取引装置7をすべて選択してもよいし、一部を選択してもよい。そして、補正部17は、選択部15により選択された他の自動取引装置7におけるイベント開催期間中の過去実績に基づく補正値を用いて、予測部13による流出入予測を補正する。なお、補正部17は、補正値の算出に際して、予測対象の自動取引装置7におけるイベント開催期間中の過去実績を平均値の計算に加えてもよい。
【0053】
(シナリオNo.3)
本シナリオは、予測対象の自動取引装置7の設置区域内で、過去に同一又は類似のイベントが開催されていないが、他の設置区域内で過去に同一又は類似のイベントが開催された場合の動作シナリオである。この場合、予測装置1は、「処置C」として、過去に同一又は類似のイベントが開催された設置区域内に設置された自動取引装置7におけるイベント開催期間中の過去実績に基づく補正値を用いて、予測部13による流出入予測を補正して出力する。詳しくは、選択部15は、同一又は類似のイベントが開催された他の設置区域内に設置された他の自動取引装置7を選択する。なお、選択部15は、同区域内に設置された、設置場所カテゴリが同一又は類似する自動取引装置7をすべて選択してもよいし、一部を選択してもよい。そして、補正部17は、選択部15により選択された他の自動取引装置7におけるイベント開催期間中の過去実績に基づく補正値を用いて、予測部13による流出入予測を補正する。
【0054】
(シナリオNo.4)
本シナリオは、予測対象の自動取引装置7の設置区域内及び他のどの設置区域内でも、過去に同一又は類似のイベントが開催されていない場合の動作シナリオである。この場合、予測装置1は、「処置D」として、予測対象の自動取引装置7の過去実績から流出入予測を作成して、経験則を加味するなど既知の手法によって流出入予測を補正する。
【0055】
以上、本実施形態に係る予測装置1における動作シナリオを説明した。続いて、
図3、
図4を参照して、本実施形態に係る予測装置1の処理の流れを説明する。なお、ここでは、上記説明した動作シナリオNo.2及びNo.3に着目して、処理の流れを説明する。
【0056】
[3−2.処理の流れ]
図3は、本実施形態に係る予測装置1において実行される予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0057】
図3に示すように、まず、ステップS102で、取得部11は、自動取引装置中央管理部3から日々の取引データを取得して蓄積する。
【0058】
次いで、ステップS104で、予測部13は、取得部11により蓄積された日々の取引データから、予測の基礎となる過去実績を作成する。例えば、予測部13は、予測対象の自動取引装置7における予測対象期間の前年同月の日毎の流出入枚数を、過去実績として作成する。
【0059】
次に、ステップS106で、予測部13は、予測対象の自動取引装置7の過去実績に基づいて流出入予測を作成する。例えば、予測部13は、上記ステップS104において作成した前年同月の日毎の流出入枚数を、そのまま流出入予測として作成する。このとき、予測部13は、例えば曜日合わせを行ってもよいし、年単位又は月単位等の流出入枚数の変動傾向を加味してもよい。
【0060】
次いで、ステップS108で、補正部17は、イベントに関連する過去実績を抽出する。例えば、まず、補正部17は、上記説明した4つの動作シナリオで動作すべきかを判定し、必要に応じて選択部15が他の自動取引装置7を選択する。例えば、選択部15は、予測対象の自動取引装置7の設置区域内で、過去に同一のイベントが開催されていないが、同区域内で過去に類似のイベントが開催された場合、同区域内に設置された他の自動取引装置7を選択する(動作シナリオNo.2)。他にも、選択部15は、予測対象の自動取引装置7の設置区域内で、過去に同一又は類似のイベントが開催されていないが、他の設置区域内で過去に同一又は類似のイベントが開催された場合、同一又は類似のイベントが開催された他の設置区域内に設置された他の自動取引装置7を選択する(動作シナリオNo.3)。そして、補正部17は、選択部15により選択された他の自動取引装置7における、イベント開催期間中の過去実績をそれぞれ抽出する。なお、動作シナリオNo.2においては、補正部17は、選択部15により選択された他の自動取引装置7に加えて、予測対象の自動取引装置7における過去のイベント期間中の過去実績を抽出してもよい。
【0061】
次に、ステップS110で、補正部17は、抽出した過去実績を平均する。例えば、補正部17は、選択部15により選択された自動取引装置7における過去のイベント期間中の流出入枚数の平均値を日毎に算出する。
【0062】
次いで、ステップS112で、補正部17は、補正枚数を算出する。例えば、補正部17は、上記ステップS110において平均された過去実績が示す日毎の流出入枚数から、上記ステップS106において作成された流出入予測が示す日毎の流出入枚数を引くことにより、イベント期間中の日毎の補正枚数を算出する。
【0063】
そして、ステップS114で、補正部17は、上記ステップS112において算出された補正枚数を用いて、上記ステップS106において作成された流出入予測を補正する。例えば、補正部17は、イベント期間中の日毎の流出入予測に、日毎の補正枚数を加算することにより、流出入予測を補正する。
【0064】
次に、ステップS116で、予測装置1は、各種データを出力したり更新したりする。例えば、予測装置1は、補正部17により補正された流出入予測を出力したり、予測部13により予測された補正前の流出入予測を出力したり、選択部15により選択された自動取引装置7を示す識別情報を出力したりする。また、操作端末2は、過去又は将来のイベントに関するイベント情報を追加したり、補正枚数を照会したり、上記表1、表2等に示した各種パラメータを変更したり、予測装置1による出力に応じて帳票を出力したりする。
【0065】
以上、
図3を参照して、予測装置1による予測処理の流れをフローチャートに沿って説明した。続いて、
図4を参照して、予測装置1の内部で処理されるデータの流れを、予測処理における各ステップと対応付けながら説明する。
【0066】
図4は、本実施形態に係る予測装置1の内部で処理されるデータの流れを示す図である。
図4に示すように、まず、予測装置1は、自動取引装置中央管理部3から取引データ102を取得する(
図3ステップS102)。次いで、予測装置1は、稼働データ102から過去実績104を生成する(
図3ステップS104)。次に、予測装置1は、過去実績104に基づいて予測対象の自動取引装置7の補正前の流出入予測106を生成する(
図3ステップS106)。次いで、予測装置1は、過去実績104から、イベントに関連する過去実績108を複数抽出する(
図3ステップS108)。次に、予測装置1は、イベントに関連する過去実績108を平均して、イベントに関連する過去実績の平均110を生成する(
図3ステップS110)。次いで、予測装置1は、補正前の流出入予測106及びイベントに関連する過去実績の平均110に基づいて、補正枚数112を算出する(
図3ステップS112)。そして、予測装置1は、補正枚数112を用いて補正前の流出入予測106を補正することにより、補正後の流出入予測114を生成する(
図3ステップS114)。そして、予測装置1は、生成した補正後の流出入予測114を操作端末2に出力する(
図3ステップS116)。
【0067】
以上、本実施形態に係る予測装置1の予測処理の流れについて説明した。続いて、予測装置1の予測処理の具体例について説明する。
【0068】
[3−3.具体例]
予測装置1に、例えば下記の表4に示した過去に開催されたイベントに関する情報、及び下記の表5に示した、将来に開催されるイベントに関する情報が入力された例を考える。表中の「ATMNo.」は、自動取引装置7の識別番号を示す。「設置場所カテゴリ」は、表1を参照して上記説明した設置場所カテゴリの識別番号(カテゴリNo.)を示す。「設置区域」は、自動取引装置7の設置場所の地理的な区分を示す。「イベント名」は、開催されるイベントの名称を示す。「イベント種別」は、表2を参照して上記説明したイベントの識別番号(イベントNo.)を示す。「イベント開催期間」は、イベントが過去に開催された/将来開催される期間である。
【0071】
以下では、上記表5に示したイベントが将来に開催される場合に、予測装置1が、上記4に示した過去のイベントに関する過去実績を用いて流出入予測を作成する例を説明する。ここでは特に、
図5、
図6を参照して、上記説明した「処置B」「処置C」の具体的な処理の流れを説明する。
【0072】
図5は、本実施形態に係る予測装置1による予測処理の具体例を説明するための図である。具体的には、
図5では、上記説明した「処置B」の具体的な処理の流れを示している。
【0073】
例えば、上記表5に示した、「A001」又は「A002」の自動取引装置7を予測対象として、「○○食品博覧会」のイベント開催期間中の流出入予測を作成する際に、「処置B」を行う例を考える。上記表4に示すように、「A001」「A002」の自動取引装置7の設置区域では、イベント「○○食品即売会」が、過去に開催されている。イベント「○○食品即売会」のイベント種別は「4」であり、イベント「○○食品博覧会」のイベント種別は「7」であるので、上記表2を参照すると、両イベントは類似する。また、上記表5に示すように、「A001」「A002」の自動取引装置7の設置場所カテゴリは同一である。そこで、予測装置1は、「処置B」を行う際には、
図5に示すように、「A001」及び「A002」の流出入予測を、「A001」及び「A002」の過去実績に基づいて補正する。
【0074】
続いて、上記表5に示した、「A003」又は「A004」の自動取引装置7を予測対象として、「○○食品博覧会」のイベント開催期間中の流出入予測を作成する際に、「処置B」を行う例を考える。上記表4に示すように、「A003」「A004」の自動取引装置7の設置区域では、イベント「○○食品即売会」が、過去に開催されている。イベント「○○食品即売会」のイベント種別は「4」であり、イベント「○○食品博覧会」のイベント種別は「7」であるので、上記表2を参照すると、両イベントは類似する。また、上記表4に示すように、「A003」「A004」の自動取引装置7の設置場所カテゴリは同一である。そこで、予測装置1は、「処置B」を行う際には、
図5に示すように、「A003」及び「A004」の流出入予測を、「A003」及び「A004」の過去実績に基づいて補正する。
【0075】
図6は、本実施形態に係る予測装置1による予測処理の具体例を説明するための図である。具体的には、
図6では、上記説明した「処置C」の具体的な処理の流れを示している。
【0076】
例えば、上記表5に示した、「A001」又は「A002」の自動取引装置7を予測対象として、「○○食品博覧会」のイベント開催期間中の流出入予測を作成する際に、「処置C」を行う例を考える。上記表4に示すように、「B001」「B002」及び「B003」の自動取引装置7の設置区域では、イベント「○○食品即売会」が過去に開催されている。イベント「○○食品即売会」のイベント種別は「4」であり、イベント「○○食品博覧会」のイベント種別は「7」であるので、上記表2を参照すると、両イベントは類似する。また、上記表4に示すように、「A001」「A002」「B001」「B002」及び「B003」の自動取引装置7の設置場所カテゴリは同一であり、設置区域は「A」と「B」とで異なる。そこで、予測装置1は、「処置C」を行う際には、
図6に示すように、「A001」及び「A002」の流出入予測を、「B001」「B002」及び「B003」の過去実績に基づいて補正する。
【0077】
続いて、上記表5に示した、「A003」又は「A004」の自動取引装置7を予測対象として、「○○食品博覧会」のイベント開催期間中の流出入予測を作成する際に、「処置C」を行う例を考える。上記表4に示すように、「B004」及び「B005」の自動取引装置7の設置区域では、イベント「○○食品即売会」が過去に開催されている。イベント「○○食品即売会」のイベント種別は「4」であり、イベント「○○食品博覧会」のイベント種別は「7」であるので、上記表2を参照すると、両イベントは類似する。また、上記表4に示すように、「A003」「A004」「B004」及び「B005」の自動取引装置7の設置場所カテゴリは同一であり、設置区域は「A」と「B」とで異なる。そこで、予測装置1は、「処置C」を行う際には、
図6に示すように、「A003」及び「A004」の流出入予測を、「B004」及び「B005」の過去実績に基づいて補正する。
【0078】
以上、「処置B」「処置C」の具体的な処理の流れを説明した。以下、表6〜表20を参照しながら、「処置B」及び「処置C」の具体的な計算例を説明する。なお、下記の表では、現金の一例として万券、千券を対象とし、日毎の流出入枚数をそれぞれ示している。
【0079】
(処置Bの計算例)
ここでは、「A001」の自動取引装置7を予測対象として、将来の「2013年11月9日(土)〜10日(日)」開催される「○○食品博覧会」を予測対象期間に含んだ流出入予測を、「処置B」により行う例を説明する。
【0080】
例えば、予測部13は、下記の表6に示す2012年の過去実績に基づいて、下記の表7に示す2013年の流出入予測を作成する。ここで、予測部13は、予測対象期間を2013年10月31日(木)〜11月13日(水)として、曜日合わせを行っている。例えば、2013年11月1日(金)の流出入枚数は、前年同月の同じ金曜日である、2012年11月2日(金)の流出入枚数である。他も同様である。なお、下記表6は、
図4に示した過去実績104に相当し、下記表7は、
図4に示した補正前の流出入予測106に相当する。
【0083】
次いで、補正部17は、予測対象の自動取引装置7の設置区域内の、同一の設置場所カテゴリに設置された自動取引装置7の、類似するイベントの開催期間中の過去実績から、日毎の流出入枚数の平均を算出する。上記表4を参照すると、「A002」は、予測対象の「A001」と同一の設置区域「A」及び同一の設置場所カテゴリ「4」に設置されており、上記表2に示したようにイベント種別「7」と類似するイベント種別「4」のイベントが過去に開催されている。このため、補正部17は、下記の表8に示す「A001」の過去実績、及び下記の表9に示す「A002」の過去実績を平均して、下記の表10に示す日毎の流出入枚数の平均を算出する。下記表8、9は、
図4に示したイベントに関連する過去実績108に相当し、下記表10は、
図4に示したイベントに関連する過去実績の平均110に相当する。
【0087】
次に、補正部17は、上記表10に示した過去実績の平均の日毎の流出入枚数から、上記表7に示した流出入予測における日毎の流出入枚数を引くことにより、イベント期間中の日毎の補正枚数を算出する。上記表5を参照すると、イベントは将来の11月9日(土)〜10日(日)に開催される。また、上記表4を参照すると、類似するイベントは10月5日(土)〜10月6日(日)に開催された。このため、補正部17は、表10の2012年10月5日(土)の流出入枚数から、表7の2013年11月9日(土)の流出入枚数を引くことにより、2013年11月9日(土)の補正枚数を算出する。同様に、補正部17は、表10の2012年10月6日(日)の流出入枚数から、表7の2013年11月10日(日)の流出入枚数を引くことにより、2013年11月10日(日)の補正枚数を算出する。この計算結果を、下記の表11に示す。下記表11は、
図4に示した補正枚数112に相当する。
【0089】
そして、補正部17は、上記表7に示した補正前の流出入予測に、上記の表11に示した日毎の補正枚数を加算することにより、流出入予測を補正する。具体的には、補正部17は、上記表7の2013年11月9日(土)の流出入枚数に、上記表11の2013年11月9日(土)の流出入枚数を足すことにより、2013年11月9日(土)の流出入枚数を補正する。同様に、補正部17は、上記表7の2013年11月10日(日)の流出入枚数に、上記表11の2013年11月10日(日)の流出入枚数を足すことにより、2013年11月10日(日)の流出入枚数を補正する。この計算結果を、下記の表12に示す。下記表12は、
図4に示した補正後の流出入予測114に相当する。
【0091】
(処置Cの計算例)
ここでは、「A001」の自動取引装置7を予測対象として、将来の「2013年11月9日(土)〜10日(日)」開催される「○○食品博覧会」を予測対象期間に含んだ流出入予測を、「処置C」により行う例を説明する。
【0092】
例えば、予測部13は、下記の表13に示す2012年の過去実績に基づいて、下記の表14に示す2013年の流出入予測を作成する。ここでの処理は、上記表6で説明した通りであるので、詳細な説明は省略する。なお、下記表13は、
図4に示した過去実績104に相当し、下記表14は、
図4に示した補正前の流出入予測106に相当する。
【0095】
次いで、補正部17は、他の設置区域内の同一の設置場所カテゴリに設置された自動取引装置7の、類似するイベントの開催期間中の過去実績から、日毎の流出入枚数の平均を算出する。上記表4を参照すると、「B001」「B002」「B003」は、予測対象の「A001」と異なる設置区域「B」であって同一の設置場所カテゴリ「4」に設置されており、上記2に示したようにイベント種別「7」と類似するイベント種別「4」のイベントが過去に開催されている。このため、補正部17は、下記の表15、16、17に示す「B001」「B002」「B003」の過去実績を平均して、下記の表18に示す日毎の流出入枚数の平均を算出する。下記表15、16、17は、
図4に示したイベントに関連する過去実績108に相当し、下記表18は、
図4に示したイベントに関連する過去実績の平均110に相当する。
【0100】
次に、補正部17は、上記表18に示した過去実績の平均の日毎の流出入枚数から、上記表14に示した流出入予測における日毎の流出入枚数を引くことにより、イベント期間中の日毎の補正枚数を算出する。上記表5を参照すると、イベントは将来の11月9日(土)〜10日(日)に開催される。また、上記表4を参照すると、類似するイベントは11月10日(土)〜11月11日(日)に開催された。このため、補正部17は、曜日合わせを考慮して、表18の2012年11月10日(土)の流出入枚数から、表14の2013年11月9日(土)の流出入枚数を引くことにより、2013年11月9日(土)の補正枚数を算出する。同様に、補正部17は、表18の2012年11月11日(日)の流出入枚数から、表14の2013年11月10日(日)の流出入枚数を引くことにより、2013年11月10日(日)の補正枚数を算出する。この計算結果を、下記の表19に示す。下記表19は、
図4に示した補正枚数112に相当する。
【0102】
そして、補正部17は、上記表14に示した補正前の流出入予測に、上記の表19に示した日毎の補正枚数を加算することにより、流出入予測を補正する。具体的には、補正部17は、上記表14の2013年11月9日(土)の流出入枚数に、上記表19の2013年11月9日(土)の流出入枚数を足すことにより、2013年11月9日(土)の流出入枚数を補正する。同様に、補正部17は、上記表14の2013年11月10日(日)の流出入枚数に、上記表19の2013年11月10日(日)の流出入枚数を足すことにより、2013年11月10日(日)の流出入枚数を補正する。この計算結果を、下記の表20に示す。下記表20は、
図4に示した補正後の流出入予測114に相当する。
【0104】
<4.まとめ>
上記説明したように、本実施形態によれば、複数の自動取引装置を予測の基礎とすることで予測対象の自動取引装置における流出入量予測の精度をより向上させることが可能である。具体的には、本実施形態に係る予測装置1は、予測対象の自動取引装置7の過去実績に基づいて作成した流出入予測を、将来に開催されるイベントに関連する複数の過去実績に基づいて生成した補正枚数によって補正することができる。これにより、将来開催されるイベントと同一のイベントが過去に付近で開催されていない場合であっても、イベントによる変動を加味した予測精度の高い流出入予測を行うことが可能となる。また、複数の過去実績を平均して補正枚数が算出される場合、例えば過去実績に異常値が含まれる場合又は他の要因による変動が含まれる場合であっても、平均することでこの変動を希釈化して、予測精度を維持することが可能となる。
【0105】
また、予測装置1は、開催されるイベントの状態に応じて補正枚数を調整することが可能である。例えば、予測装置1は、イベントが中止になった場合やイベント規模の変化等の事情に応じて補正枚数を調整することが可能である。このため、予測装置1は、補正枚数をゼロにして補正を中止したり、補正枚数をイベント規模に応じて増減させたりする等、柔軟な予測を行うことが可能となる。
【0106】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0107】
例えば、上記実施形態では、将来にイベントが開催される場合に、流出入予測を補正する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、過去に開催されていたイベントが将来開催されなくなった場合、予測装置1は、イベントが開催されていない期間中の過去実績を用いて、流出入予測を補正してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、現金を対象として流出入予測を行う例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、通帳、カード、レシート用紙等の多様な取引媒体を対象として、流出入予測が行われてもよい。
【0109】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0110】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。