【解決手段】金属粒子、ガラスフリット、有機バインダー及び分散媒を含む導電層前駆体をガラス基板の上に塗布して焼成した後、得られた導電層の上にメッキ層を形成して導電性積層体を製造する。前記導電層は、金属及び低融点ガラスを含み、かつ前記金属で形成された連続相を含む相分離構造を有する。前記導電層の相分離構造は共連続構造又は海島構造であり、かつ前記メッキ層は、その導電層の表面のうち、金属で形成された連続相の上に積層されていてもよい。前記導電層において、金属とガラスフリットとの質量割合は、前者/後者=93/7〜50/50程度であってもよい。前記ガラスフリットはビスマス系ガラスフリットであってもよい。前記導電層の金属は銀であってもよい。前記メッキ層はニッケルを含んでいてもよい。前記メッキ層の平均厚みは0.3〜2μm程度であってもよい。
ガラス基板と、このガラス基板の上に積層された導電層と、この導電層の上に積層されたメッキ層とを含む導電性積層体であって、前記導電層が、金属及び低融点ガラスを含み、かつ前記金属で形成された連続相を含む相分離構造を有する導電性積層体。
金属粒子及びガラスフリットを含む導電層前駆体をガラス基板の上に塗布後、焼成して導電層を形成する導電層形成工程、導電層の上に金属をメッキしてメッキ層を形成するメッキ層形成工程を含む請求項1〜9のいずれかに記載の導電性積層体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストは、印刷などにより電極など、種々のパターンを容易に形成できるため、エレクトロニクス分野で広く普及している。最近では、塗布形成したパターンを加熱焼結することにより更なる低抵抗化を図る方法が採用されている。この方法では、導電性ペーストに使用される金属粉末は、焼結の進行により金属粉末間の接触抵抗が下がり、塗布パターンとして、より良好な導電性を発現できる。
【0003】
このような方法として、特開2003−132735号公報(特許文献1)に開示されているような導電性ペースト(金属粉末、ガラス粉末、及び有機ビヒクルを含有する導体ペースト)が広く使用されており、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックスを基板としたLEDパッケージの内部又は外部電極、配線形成等に使用されている。また、特許文献1には、メッキについて記載されていないが、前記電極は、密着強度の低下や変色に対する長期信頼性を向上させるため、Ni/AuやNi/Pd/Auなどのメッキを施して使用される場合が多い。
【0004】
また、製品のコストダウンなどを目的としてセラミックス基板の代わりにケイ酸塩ガラスや硼ケイ酸ガラスなどのガラス基板の上に、導電性ペーストを用いて導電膜を形成する方法も提案されている。
【0005】
特開2013−182714号公報(特許文献2)には、金属粒子及び軟化点が500℃以下のビスマス系ガラスフリットを含む接着層を介して基板の上に、金属ナノ粒子を含み、かつ軟化点が500℃以下のビスマス系ガラスフリットを実質的に含まない被覆層が形成されている積層体を焼成し、導電接着層を介して基板の上に導電被覆層が形成された導電性積層体を製造する方法が開示されている。この文献には、導電被覆層の上に、さらにメッキ層を形成することが記載されている。
【0006】
しかし、基板としてガラス基板を用いる導電性積層体は、アルミナなどのセラミックス基板と比べて強度が低く、脆い性質を有するため、ガラス基板上に導電膜(焼結金属膜)が形成された場合、金属膜とガラス基板との線膨張係数差により生じる熱応力で金属膜直下のガラス部分に亀裂が発生しやすく、耐熱衝撃性(耐熱性)が著しく弱かった。さらに、メッキで増膜した積層体では、リフロー程度の熱衝撃であってもガラスに亀裂が生じてしまい実用的な使用は困難であった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[導電性積層体]
本発明の導電性積層体は、ガラス基板と、このガラス基板の上に積層された導電層と、この導電層の上に積層されたメッキ層とを含む。
【0017】
(ガラス基板)
ガラス基板としては、慣用のケイ酸塩ガラス(ケイ酸ガラス)、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなどで形成された基板などを利用できる。これらのガラス基板のうち、ソーダガラスや低アルカリガラスなどのアルカリガラス基板、ホウケイ酸ガラス基板が汎用される。
【0018】
ガラス基板の表面は、酸化処理[表面酸化処理、例えば、放電処理(コロナ放電処理、グロー放電など)、酸処理(クロム酸処理など)、紫外線照射処理、焔処理など]、表面凹凸処理(溶剤処理、サンドブラスト処理など)などの表面処理がされていてもよい。
【0019】
ガラス基板の厚み(平均厚み)は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、0.001〜10mm、好ましくは0.01〜5mm、さらに好ましくは0.05〜3mm(特に0.1〜1mm)程度であってもよい。
【0020】
(導電層)
導電層は、金属及びガラス成分を含み、かつ前記金属で形成された連続相を含む相分離構造を有する。本発明では、導電層がこのような相分離構造を有することにより、導電層の表面において、金属で形成された連続相(金属相)に対して、低融点ガラスや空隙で形成された相(非金属相)が分散相及び/又は連続相として存在する。そのため、金属で形成された連続相の上に、容易に網目状のメッキ層を形成できるが、このような構造のメッキ層は、全面が被覆された従来のメッキ層に比べてクッション性(耐衝撃性)に優れたメッキ層である。メッキ層の空隙により、ガラス基板との線膨脹係数差により生じる熱応力を空隙により緩和(吸収)できるためである。
【0021】
金属相を含む相分離構造には、両連続構造、海島構造が含まれる。非金属相は、低融点ガラスを含む相であり、通常、低融点ガラスで形成された相(ガラス相)に加えて、フリット原料の焼結による収縮やバインダーなどの消失による空隙部(空隙相)を含む。
【0022】
導電層表面の相分離構造(導電層の全表面)において、金属相が占める面積割合は、例えば、40〜90%、好ましくは50〜80%、さらに好ましくは55〜75%程度である。金属相の面積割合が小さすぎると、金属で連続相を形成するのが困難となり、導電性積層体の導電性が低下する虞がある。一方、大きすぎると、網目状メッキ層を形成するのが困難となり、導電層の略全面にメッキ層が形成されるため、応力を緩和するのが困難となり、導電性積層体の耐熱衝撃性が低下する虞がある。
【0023】
金属(金属原子)としては、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。これらの金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、合金であってもよい。これらの金属のうち、導電性などの点から、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、銀、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウムなど)及び周期表第4B族金属(スズなど)などが汎用され、導電性金属、特に銀が好ましい。
【0024】
低融点ガラス(溶融性ガラス)としては、慣用のガラスフリット(溶融性ガラス粉又は粒子)の焼成物を利用できる。慣用のガラスフリットとしては、例えば、ホウケイ酸系ガラスフリット、ホウケイ酸亜鉛系ガラスフリット、亜鉛系ガラスフリット、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリットなどが挙げられる。これらのガラスフリットは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのガラスフリットのうち、軟化し易く、焼結助剤として作用し、硬質な金属をガラス基板に密着できる点から、ビスマス系ガラスフリットが好ましい。
【0025】
ビスマス系ガラスフリットは酸化ビスマス(Bi
2O
3)を含んでいればよく、酸化ビスマスに加えて、他の酸化物を含んでいてもよい。他の酸化物としては、例えば、他の金属酸化物(例えば、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物;酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの周期表第4A族金属酸化物;酸化クロムなどの周期表第6A族金属酸化物;酸化鉄などの周期表第8族金属酸化物;酸化亜鉛などの周期表第2B族金属酸化物;酸化アルミニウムなどの周期表第3B族金属酸化物;酸化スズ、酸化鉛などの周期表第4B族金属酸化物など)、酸化ケイ素、酸化ホウ素などが挙げられる。これら他の酸化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これら他の酸化物のうち、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化ケイ素、酸化ホウ素などを含有している場合が多い。酸化ビスマスの割合は、ガラスフリット全体に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは15質量%以上(例えば、15〜95質量%)、さらに好ましくは20〜90質量%(特に30〜80質量%)程度であってもよい。
【0026】
低融点ガラスの軟化点は、例えば、導電膜の焼成温度よりも低ければよく、換言すれば、ガラス基板の耐熱温度(軟化点)よりも低い軟化点であればよい。具体的には、低融点ガラスの軟化点は、例えば、350〜600℃程度の範囲から選択でき、例えば、380〜580℃、好ましくは400〜580℃、さらに好ましくは420〜580℃(特に450〜550℃)程度であってもよい。軟化点が高すぎると、溶融流動性が低下するため、共連続構造や海島構造の形成も困難となる上に、ガラス基板との密着性も低下する。
【0027】
金属と低融点ガラスとの体積割合は、例えば、金属/低融点ガラス=93/7〜50/50、好ましくは90/10〜55/45、さらに好ましくは80/20〜60/40程度である。金属の体積割合が小さすぎると、網目状メッキ層を形成するのが困難となり、導電性積層体の耐熱衝撃性が低下する虞がある。なお、金属相は金属粒子焼結で形成されるため、低融点ガラスが無くても7体積%程度の空隙(ポーラス)を発生する。しかし、この状態でメッキ層を形成すると、メッキ液が容易に空隙に侵入するため、導電層の内部までメッキ膜が成膜され、高い応力が発生する。そのため、空隙へのメッキ液の浸入を防ぐために、金属と低融点ガラスとの総量に対して所定量の低融点ガラスが必要となる。一方、金属の体積割合が大きすぎると、導電性積層体の導電性が低下する虞がある。
【0028】
導電層の平均厚みは、導電層前駆体(塗布液)に含まれる原料金属粒子の粒径以上の厚みであればよく、例えば、2〜20μm、好ましくは3〜15μm、さらに好ましくは5〜10μm程度である。導電層の厚みは、蛍光X線膜厚計を用いて測定でき、任意の5点の厚みを測定して平均値を算出する。
【0029】
(メッキ層)
前記導電層の上には、さらにメッキ層が積層されている。メッキ層の製造工程では、前記導電層のうち、金属で形成された連続相の上に選択的にメッキ核が発生して成長し、低融点ガラスの表面や空隙部にはメッキ膜は形成されないため、メッキ層は、前記連続相に略対応した網目形状(ポーラス状)を有している。
【0030】
導電層の全表面に対してメッキ層が占める面積割合であるメッキ層の空隙率(単位面積当たり空隙の面積の比率)は、例えば、40〜90%、好ましくは50〜80%、さらに好ましくは55〜75%程度である。メッキ層の空隙率が大きすぎると、導電性積層体の導電性が低下する虞がある。一方、小さすぎると、導電性積層体の耐熱衝撃性が低下する虞がある。
【0031】
メッキ層のメッキ種は金属(特に導電性金属)で形成されていればよい。導電性金属としては、前記導電層の項で例示された金属を利用できる。前記金属のうち、導電性などの点から、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、銀、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウムなど)及び周期表第4B族金属(スズなど)などが汎用され、導電性などの点から、ニッケル、パラジウム、金が好ましく、半田付け性及び耐変色性などの耐久性も向上できる点から、ニッケルが特に好ましい。
【0032】
これらの導電性金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、複数種のメッキ膜を組み合わせてもよく、例えば、ニッケルメッキ膜と他の導電性金属膜(金やパラジウムなどのメッキ膜)との積層構造であってもよく、特に、導電層に対して、ニッケルメッキ膜を積層した後、他の金属で形成された金属メッキ膜を積層するのが特に好ましい。ニッケルメッキ膜は、半田付けの際における半田との結合層としての機能に加え、下地の金属への半田の浸食を防ぐ浸食防止層としての役割を担う。
【0033】
なお、本発明では、導電層の金属相に選択的にメッキを行うため、メッキ用下地層は形成しなくてもよい。
【0034】
メッキ層の平均厚み(積層構造の場合は総厚み)は、例えば、0.3〜3μm(例えば、0.3〜2μm)、好ましくは0.35〜2μm、さらに好ましくは0.4〜2μm程度である。メッキ層がニッケルメッキ膜を含む場合、ニッケルメッキ膜の平均厚みは、例えば、0.2〜2μm、好ましくは0.25〜1.5μm、さらに好ましくは0.3〜1.5μm程度である。メッキ層の厚みが大きくなると、導電層の非金属相にまでメッキ膜が生成して、メッキ層の空隙が減少し、最終的には隙間の埋まった(網目状でない)メッキ層となる虞がある。一方、メッキ層の厚みが小さすぎると、一般的に使用する半田付けの際に、浸食防止層としての機能が低下する虞がある。メッキ層の厚みも、蛍光X線膜厚計を用いて測定でき、任意の5点の厚みを測定して平均値を算出する。
【0035】
[導電性積層体の製造方法]
導電性積層体は、金属粒子及びガラスフリットを含む導電層前駆体をガラス基板の上に塗布後、焼成して導電層を形成する導電層形成工程、導電層の上に金属をメッキしてメッキ層を形成するメッキ層形成工程を経て製造される。
【0036】
導電層形成工程では、まず、導電層前駆体として、金属粒子及びガラスフリットを含む導電性ペースト(塗布液)が調製される。
【0037】
金属原料である金属粒子の形状は、特に限定されず、球状(真球状又は略球状)、楕円体(楕円球)状、多角体状(多角錘状、正方体状や直方体状など多角方体状など)、板状(扁平、鱗片又は薄片状など)、ロッド状又は棒状、繊維状、不定形状などであってもよい。金属粒子の形状は、通常、球状、楕円体状、多角体状、不定形状などである。
【0038】
金属粒子の粒径は、特に制限されないが、多量の非導電性成分(無機バインダー成分及び抵抗調整成分)が配合されているため、例えば、銅粒子とニッケル粒子とをそれぞれ別個の金属粒子として使用する場合、均一な分散性及び焼成時の合金化の点から、小粒径の金属粒子を使用する方が有利である。一方、銅とニッケルとの合金粒子を使用する場合、合金化の均一性に問題はないものの、分散性の点から、同様に小粒径の合金粒子を使用するのが有利である。
【0039】
金属粒子の中心一次粒径(D50)は、例えば、5nm〜10μm程度の範囲から選択でき、ナノメータサイズの粒子であってもよいが、取り扱い性や経済性などの点から、例えば、0.05〜10μm、好ましくは0.08〜8μm、さらに好ましくは0.1〜5μm(特に0.2〜3μm)程度である。金属粒子の粒径が小さすぎると、取り扱い性や経済性に加えて、ペースト中での分散性も低下し、大きすぎると、ペースト塗布性及び分散性、均一性が低下する虞がある。
【0040】
低融点ガラス原料であるガラスフリットの形状も、前記金属粒子の項で例示された形状などが挙げられ、通常、球状、楕円体状、多角体状、不定形状などである。
【0041】
ガラスフリットの中心一次粒径は、例えば、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜8μm、さらに好ましくは0.3〜5μm(特に0.5〜3μm)程度であってもよい。ガラスフリットの粒径が大きすぎると、例えば、スクリーン印刷などにおいて目詰まりが発生し易くなる。一方、粒径が小さすぎると、ガラスフリットの分散性が低下するため、ガラスフリットの使用量が増加し、導電性が低下する虞がある。
【0042】
導電層ペーストは、さらに有機バインダーを含んでいてもよい。有機バインダーとしては、慣用のバインダー樹脂、例えば、水溶性高分子系バインダー(例えば、水溶性アクリル系樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、天然高分子、ポリエチレンスルホン酸又はその塩、ポリスチレンスルホン酸又はその塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ポリアルキレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミンなど)、ホットメルト樹脂(例えば、脂肪族又は非晶性ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂など)、熱硬化性樹脂(例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂など)などが挙げられる。
【0043】
これらのバインダー樹脂のうち、高分子分散剤としても作用する点から、セルロース誘導体などの水溶性高分子系バインダー、例えば、セルロースエーテル(例えば、ニトロセルロース;エチルセルロースなどのアルキルセルロース;エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロースなど)が好ましく、エチルセルロースなどのアルキルセルロースが特に好ましい。
【0044】
有機バインダーの割合は、金属粒子100質量部に対して、例えば、200質量部以下であってもよく、例えば、1〜150質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部(特に30〜60質量部)程度である。
【0045】
導電性ペーストには、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、分散媒(オクタノールなどの飽和又は不飽和C
6−20脂肪族アルコール、エチレングリコールなどの脂肪族多価アルコール、テルピネオールなどの脂環族アルコールなど)、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、染料定着剤、光沢付与剤、金属腐食防止剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤又は分散剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤など)、分散安定化剤、増粘剤又は粘度調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、消泡剤、殺菌剤、充填剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
導電性ペーストは、このような組成のペーストを得ることができる限り特に限定されないが、通常、前記金属粒子及びガラスフリットを、前記有機バインダーを用いて分散させることにより調製できる。
【0047】
導電性ペーストの塗布方法(コーティング方法)としては、慣用のコーティング方法、例えば、フローコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法、フォトリソグラフィ法、インクジェット法などを利用できる。前記コーティング方法のうち、塗膜でパターンを形成(描画)してもよく、形成されたパターン(描画パターン)を焼成処理することにより焼結パターン(焼結膜又は焼結体層)を形成できる。パターン(塗布層)を描画するための描画法(又は印刷法)としては、パターン形成可能な印刷法であれば特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法(例えば、グラビア印刷法など)、オフセット印刷法、凹版オフセット印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。これらの方法のうち、スクリーン印刷法などが好ましい。
【0048】
塗布後は、乾燥せずに焼成してもよいが、均一な導電膜を形成し易い点から、乾燥するのが好ましい。乾燥方法は、自然乾燥であってもよく、加熱して乾燥してもよい。加熱温度は、例えば、50〜300℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは100〜150℃程度である。加熱時間は、例えば、1分〜3時間、好ましくは5分〜2時間、さらに好ましくは10分〜1時間程度である。
【0049】
焼成温度は、ガラスフリットの軟化点以上であり、かつガラス基板の耐熱温度未満の温度である。焼成温度(ピーク温度)は、例えば、400℃以上(例えば、400〜1000℃)、好ましくは450〜800℃、さらに好ましくは500〜700℃(特に550〜650℃)程度である。熱処理時間(加熱時間)は、熱処理温度などに応じて、例えば、1分〜3時間、好ましくは5分〜1時間、さらに好ましくは10〜30分程度であってもよい。
【0050】
メッキ層の形成方法としては、慣用のメッキ方法を利用でき、導電層の金属相に選択的にメッキ層を形成し易い点から、電気メッキ、無電解メッキなどが好ましい。電気メッキの方法としては、特に限定されず、メッキ種に応じて従来のメッキ薬品メーカの推奨条件で行なえばよい。無電解メッキの方法としては、特に限定されず、メッキ種に応じて慣用の条件で行なえばよい。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。用いた材料及び器具を以下に示す。
【0052】
[用いた材料及び器具]
ガラス基板:Schott社製「D263T」
銀粉末(SPN20J):三井金属鉱業(株)製「SPN20J」、平均粒径D50:1.82μm
Bi系ガラスフリット(GF3535):Bi
2O
3−SiO
2−R
2O(式中、R
2O=Li
2O,Na
2O,K
2Oを総称した表記)、奥野製薬工業(株)製「GF3535」、比重4.9
Bi系ガラスフリット(GF3440):Bi
2O
3−ZnO
2−B
2O
3、奥野製薬工業(株)製「GF3440」、比重6.6
有機バインダー:エチルセルロース、日進化成(株)販売「EC−200FTD」
スクリーン印刷機:(株)ムラカミ製、ステンレスメッシュ(メッシュカウント:325、乳剤10μm)
熱風循環オーブン:ADVANTEC社製「FC−410」
ベルト炉:光洋サーモシステム(株)製。
【0053】
[実施例1]
(導電層用導電性ペースト作製)
銀粉末100g、Bi系ガラスフリット(GF3535)20g、有機バインダー51gを自動乳鉢で練り、導電性ペーストを作製した。銀粉末とBi系ガラスフリットとの総量に対して、Biガラスフリットの体積割合は30体積%である。
【0054】
(導電層の形成)
得られた導電性ペーストを、ガラス基板上にスクリーン印刷し、熱風循環オーブン中で、120℃で30分間乾燥を行った後、ピーク温度600℃で10分(In−Out60分間)に設定したベルト炉で焼成し、ガラス基板上に導電性ペーストの焼結膜(平均厚み5μm)が形成された積層体を得た。走査型電子顕微鏡による表面観察を行った結果、
図1に示すように、金属とBi系ガラス及び空隙とが「海島構造」又は「共連続構造」を形成していた。なお、写真中で黒く見える部分が空隙である。
【0055】
(メッキ層の形成)
得られた積層体の導電層の上に、Niメッキ膜(平均厚み0.3μm)、Pdメッキ膜(平均厚み0.1μm)、Auメッキ膜(平均厚み0.05μm)の順に無電解メッキを施し、導電性積層体を得た。走査型電子顕微鏡による表面観察を行った結果、
図2に示すように、最表面の金が「網目構造」を形成していることが確認された。
【0056】
得られた導電性積層体を、260℃に設定したホットプレート上で30秒間加熱した後、ホットプレートから取出し、室温まで急冷した。裏面から、導電性積層体を確認したところ、ガラスにクラックなどは発生しなかった。
【0057】
更に、熱衝撃試験(−55℃〜150℃、300サイクル)を行った後、裏面から、積層体を確認したところ、ガラスにクラック等は発生しなかった。
【0058】
[実施例2]
実施例1と同様の方法でガラス基板の上に導電性ペーストの焼結膜を形成した積層体の導電層の上に、Niメッキ膜(平均厚み1.5μm)、Pdメッキ膜(平均厚み0.1μm)、Auメッキ膜(平均厚み0.05μm)の順に無電解メッキを施し、導電性積層体を得た。走査型電子顕微鏡による表面観察を行った結果、実施例1と同様に、最表面の金が「網目構造」を形成していることが確認された。
【0059】
得られた導電性積層体を、260℃に設定したホットプレート上で30秒間加熱した後、ホットプレートから取出し、室温まで急冷した。裏面から、導電性積層体を確認したところ、ガラスにクラックなどは発生しなかった。
【0060】
更に、熱衝撃試験(−55℃〜150℃、300サイクル)を行った後、裏面から、積層体を確認したところ、ガラスにクラック等は発生しなかった。
【0061】
[比較例1]
(導電層用導電性ペースト作製)
銀粉末100g、Bi系ガラスフリット(GF3440)1g、有機バインダー10gを自動乳鉢で練り、導電性ペーストを作製した。銀粉末とBi系ガラスフリットとの総量に対して、Biガラスフリットの体積割合は1.55体積%である。
【0062】
(導電層の形成)
得られた導電性ペーストを用いて、実施例1と同様の方法でガラス基板上に導電性ペーストの焼結膜(5μm)が形成された積層体を得た。走査型電子顕微鏡による表面観察を行った結果、
図3に示すように、焼結膜において、金属とBi系ガラスとの海島構造は見られなかった。写真中において、穴部は空隙であり、その他の領域が金属及びBi系ガラスが均一的に焼結した領域である。
【0063】
(メッキ層の形成)
得られた積層体の導電層の上に、実施例1と同様の方法で無電解メッキを施し、導電性積層体を得た。走査型電子顕微鏡による表面観察を行った結果、
図4に示すように、網目構造のない均一なニッケルメッキ膜(表面が金で被覆されたニッケルメッキ膜)が形成されていることが確認された。
【0064】
得られた導電性積層体を、260℃に設定したホットプレート上で30秒間加熱した後、ホットプレートから取出し、室温まで急冷した。導電性積層体の状態を確認したところ、ガラスにクラックが発生しており、時間の経過とともにクラックが伸展したことから、回路基板としての実用は困難であった。
【0065】
[参考例1]
実施例1と同様の方法でガラス基板の上に導電性ペーストの焼結膜を形成した積層体の上に、Niメッキ膜(平均厚み5μm)、Pdメッキ膜(平均厚み0.1μm)、Auメッキ膜(平均厚み0.05μm)の順に無電解メッキを施し、導電性積層体を得た。走査型電子顕微鏡による表面観察を行った結果、網目構造のない均一なニッケルメッキ膜(表面が金で被覆されたニッケルメッキ膜)が形成されていることが確認された。すなわち、ニッケルメッキ膜を厚く成長させすぎて、導電層の空隙やBi系ガラス部位にまでメッキ膜が生成して、空隙が減少し、最終的には隙間の埋まった(網目でない)メッキ膜となってしまった。