【解決手段】本発明の診断支援装置1は、身体部位を表す図形からなる複数の異なるシェーマを記憶する記憶部36を備え、当該シェーマを用いた診断を支援する。診断支援装置1は、検査対象に対して複数回の検査が実施されたときの検査結果を取得する取得部32と、既得の検査結果から予測される疾患に関連する身体部位のシェーマを、検査の進行に伴って複数のシェーマから段階的に絞り込むシェーマ絞込部33と、シェーマ絞込部33により絞り込まれたシェーマを表示する表示部34と、を有する。
前記取得部により取得される検査結果には、血中酸素飽和度、血中酸素濃度、血中二酸化炭素濃度、ヘモグロビン量、および心内圧、のうち少なくとも一つが含まれる請求項1または2に記載の診断支援装置。
全ての検査が終了する前であっても、前記シェーマ絞込部により絞り込まれた複数のシェーマから一つのシェーマの選択を受け付ける受付部を、さらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の診断支援装置。
前記シェーマ絞込ステップにおいて絞り込まれたシェーマについて、更なる絞り込みを可能にする検査を提示する提示ステップをさらに行う請求項5に記載の診断支援方法。
前記取得ステップにおいて取得される検査結果には、血中酸素飽和度、血中酸素濃度、血中二酸化炭素濃度、ヘモグロビン量、および心内圧、のうち少なくとも一つが含まれる請求項5または6に記載の診断支援方法。
前記シェーマ絞込ステップにおいて絞り込まれたシェーマについて、更なる絞り込みを可能にする検査を提示する提示ステップをさらに前記コンピューターに実行させるための請求項8に記載の診断支援プログラム。
前記取得ステップにおいて取得される検査結果には、血中酸素飽和度、血中酸素濃度、血中二酸化炭素濃度、ヘモグロビン量、および心内圧、のうち少なくとも一つが含まれる請求項8または9に記載の診断支援プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる診断支援装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2は、診断支援装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。また、
図3は、診断支援装置1に記録されるシェーマを例示した図である。
【0015】
以下、
図1〜
図3を参照して、診断支援装置1の概略構成について説明する。
【0016】
<診断支援装置1>
診断支援装置1は、医者による診断を支援する装置であり、検査結果記録を迅速に作成し、かつ病態をわかりやすく患者に伝えるためのシェーマを作成するアプリケーションがインストールされた一般的なコンピューター装置である。なお、シェーマは、臓器などの疾患部位を模した図形からなる画像データであり、検査結果を示すデータなどを重ね合わせるような編集も可能である。
【0017】
たとえば、診断支援装置1には、デスクトップ型のPC(パーソナルコンピューター)が用いられてもよいし、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、等の携帯端末が用いられてもよい。
【0018】
診断支援装置1は、
図1に示すとおり、制御装置11と、入力装置12と、表示装置13と、を備えており、検査装置14と接続されている。
【0019】
制御装置11は、診断支援装置1全体を制御する。たとえば、制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)21と、メモリー22と、ストレージ23と、通信インターフェース(I/F)24と、を有し、これらは信号をやり取りするためのバス25を介して相互に接続されている。
【0020】
CPU21は、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行するマルチコアのプロセッサ等から構成される制御回路であり、診断支援装置1の各機能は、それに対応するプログラムをCPU21が実行することにより発揮される。
【0021】
メモリー22は、作業領域として一時的にプログラムおよびデータを記憶する高速アクセス可能な主記憶装置である。メモリー22には、たとえば、DRAM(Dymamic Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous Dymamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)等が採用される。
【0022】
ストレージ23は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを格納する大容量の補助記憶装置である。ストレージ23には、たとえば、フラッシュメモリー、ソリッドステートドライブ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等が採用される。
【0023】
通信I/F24は、検査装置14と通信するためのインターフェースであり、たとえば、USB(Universal Serial Bus)通信、BlueTooth、赤外線通信のためのインターフェースでよい。また、診断支援装置1あるいは検査装置14の製造メーカ独自のインターフェースであってもよい。
【0024】
入力装置12は、ユーザーからの各種入力を受け付ける。入力装置12には、たとえば、キーボードやマウス等が採用される。
【0025】
表示装置13は、検査装置14を用いて実施された検査の結果を取り込んで表示する画面(以下、「結果表示画面」と称する)などを表示する。表示装置13には、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)等が採用される。
【0026】
検査装置14は、医師等が治療、診断のために必要な検査を患者に対して実施するための装置である。たとえば、先天性心疾患等の患者に対して実施される心臓カテーテル検査や、心臓内部から採取された血液について血液ガス分析を行うための装置でよい。また、検査装置14には、患者の身長や体重を計測する装置なども含まれてもよい。なお、心臓カテーテル検査とは、カテーテルを経皮的に心血管に挿入し、造影剤による形態学的異常を検出したり、心臓内腔の圧力(以下「心内圧」と称する)、酸素飽和度を測定して血行動態を把握したりする検査である。また、血液ガス分析とは、血液中に含まれる酸素や二酸化炭素の量(飽和度)等、あるいはヘモグロビン量を測定する検査である。検査装置14による検査結果は診断支援装置1の通信I/F24を介して診断支援装置1へ送信される。
【0027】
以上のようなハードウェア構成からなる診断支援装置1は、機能構成として、
図2に示すとおり、制御部31と、取得部32と、シェーマ絞込部33と、表示制御部34と、推奨検査提示部35と、記憶部36と、を有する。
【0028】
制御部31は、診断支援装置1のシステム管理と、基本的なユーザー操作環境を提供する、いわゆるコンピューターの基本ソフトウェアである。
【0029】
取得部32は、検査対象に対して複数回の検査が検査装置14により実施されたときの検査結果を取得する。たとえば、取得部32は、心臓カテーテル検査によって測定された心内圧、血液ガス分析によって測定された血液中の酸素飽和度、あるいは血液のヘモグロビン量を、検査装置14から取得する。なお、取得部32は、通信I/F24を介して、検査装置14から出力される検査結果を示すデータ(以下「検査結果データ」とも称する)を読み込むことにより、検査結果を取得する。
【0030】
シェーマ絞込部33は、既得の検査結果から予測される疾患に関連する身体部位のシェーマを、検査装置14による検査の進行に伴って段階的に絞り込む。たとえば、シェーマ絞込部33は、第1検査(たとえば、心臓カテーテル検査による心臓の所定の部位の心内圧測定)が終了した段階で、全てのシェーマの中から、第1検査の結果になり得る疾患を特定し、関連する身体部位のシェーマのみを選択する。ただし、同じ身体部位であっても、特定した疾患に無関係なシェーマは除く。その後、第2検査(たとえば、第1検査が行われた上記所定の部位の血液ガス分析)が実施されると、シェーマ絞込部33は、第1検査により特定された疾患であり、さらに第2検査の結果にもなり得る疾患を特定して、その疾患に関連する身体部位のシェーマを選択する。このようにして、シェーマ絞込部33は、検査装置14による検査の進行に伴ってシェーマを段階的に絞り込める。なお、検査の回数は、第1検査と第2検査の2回に限らず、3回以上であってもよい。
【0031】
表示制御部34は、取得部32が取得した検査結果データおよびシェーマ絞込部33により絞り込まれたシェーマを表示装置13に表示する制御を行う。たとえば、表示制御部34は、患者に対する検査が実施される毎に、検査結果および絞り込まれたシェーマを表示装置13に表示する制御を行う。詳細な表示画面(結果表示画面)については後述する。
【0032】
推奨検査提示部35は、シェーマ絞込部33により絞り込まれたシェーマについて更なる絞り込みを可能にする検査を、推奨検査として提示する。たとえば、推奨検査提示部35は、第1検査および第2検査の検査結果によって絞り込まれたシェーマのうち、第1検査および第2検査とは異なる心臓の部位の心内圧測定および血液ガス分析を追加して行うことでさらに疾患を限定できて、関連するシェーマも絞れる場合等には、上記追加の検査を医師等に提示する。
【0033】
記憶部36は、複数の異なるシェーマを記憶する。たとえば、記憶部36は、
図3に例示されるように、(A)正常な心臓を描いたシェーマ、(B)肺動脈に穴が開いた異常な心臓を描いたシェーマ、(C)右心房と左心房を隔てる心房中隔が欠損した異常な心臓を描いたシェーマ、(D)右心室と左心室を隔てる心室中隔が欠損した異常な心臓を描いたシェーマ、(E)僧帽弁口が狭窄した異常な心臓を描いたシェーマ、(F)大動脈と肺動脈が連結した異常な心臓を描いたシェーマ、(G)右心室と左心室を隔てる心室中隔がない単心室の異常な心臓を描いたシェーマ、(H)肺動脈が狭窄し、心室中隔が欠損し、大動脈騎乗し、右心室が肥大した異常な心臓(ファロー四徴症)を描いたシェーマ、のような各種シェーマを記憶する。もちろん、記憶部36は、心臓を描いたシェーマに限らず、他の臓器、骨、筋肉などを描いたシェーマを記憶してもよい。
【0034】
以上のような、制御部31、シェーマ絞込部33、表示制御部34、および推奨検査提示部35は、CPU21が、ストレージ23にインストールされているプログラムをメモリー22に読み出して実行することにより実現される。また、取得部32は、ストレージ23にインストールされているプログラムをメモリー22に読み出して実行し、通信I/F24を制御することにより実現される。記憶部36は、ストレージ23やメモリー22によって実現される。
【0035】
<シェーマ作成処理>
次に、診断支援装置1の特徴的な動作について説明する。
【0036】
図4は、診断支援装置1において実行されるシェーマ作成処理の手順を示すフローチャートである。
図5〜
図11は、シェーマ作成処理の進行に伴い変化する結果表示画面の遷移例である。
図5は、シェーマ作成処理の開始時における結果表示画面の表示例である。
図6は、一部の検査が終了した段階における結果表示画面の表示例である。
図7は、推奨検査が提示された段階における結果表示画面の表示例である。
図8は、推奨検査が終了した段階における結果表示画面の表示例である。
図9は、全ての検査が終了した段階における結果表示画面の第1表示例である。
図10は、全ての検査が終了した段階における結果表示画面の第2表示例である。
図11は、シェーマに検査結果データが記入されたときの結果表示画面の表示例である。
【0037】
たとえば、検査装置14による検査開始と同時に、診断支援装置1に電源が投入されると、診断支援装置1は
図4に示すシェーマ作成処理を開始する。
【0038】
シェーマ作成処理が開始されると、表示制御部34は、たとえば、
図5に示すような結果表示画面を表示装置13に表示する。シェーマ作成処理の開始時には、まだ1回も検査が実施されていないため、検査結果(IBP、SaO
2など)を表示する欄は空欄となっている。また、予め診断支援装置1に登録されている全ての疾患を分類しておき、各分類の見出しとなるキーワード(VSD、ASD、AVSDなどの略号)を表示する。
【0039】
なお、結果表示画面中のIBPの欄には、心内圧の測定結果が表示され、SaO
2の欄には、酸素飽和度の測定結果が表示される。また、VSDは、心室中隔欠損症を意味している。ASDは、心房中隔欠損症を意味している。AVSDは、完全型心内膜欠損症を意味している。PDAは、動脈管開存症を意味している。CoAは、大動脈縮窄症を意味している。ASは、大動脈弁狭窄症を意味している。ARは、大動脈弁閉鎖不全症を意味している。PSは、肺動脈狭窄症を意味している。TOFは、ファロー四徴症を意味している。TAは、三尖弁閉鎖症を意味している。ただし、これらの検査結果の項目および疾患の分類(見出し)は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0040】
続いて、制御部31は、患者に対して実施された検査結果を取得したか否かを判定する(ステップS101)。たとえば、医師が患者の特定の身体部位(たとえば、肺動脈楔入PCW)に対して心臓カテーテル検査を実施したとき、取得部32は、通信I/F24を介して、検査装置14から出力される当該身体部位の検査結果(たとえば、IBP、SaO
2)を取得するので、制御部31は当該身体部位の検査結果の取得ありと判定する(ステップS101:Yes)。
【0041】
制御部31は、取得部32が検査結果を取得していないと判定した場合には(ステップS101:No)、検査結果の取得があるまで待機する。
【0042】
制御部31が検査結果の取得ありと判定した場合、シェーマ絞込部33は、取得した検査結果になり得る疾患の候補を、予め診断支援装置1に登録されている疾患の中から特定する(ステップS102)。
【0043】
たとえば、シェーマ絞込部33は、検査結果が条件1を満たす場合には、「VSD」を疾患の候補として特定する。ここで、条件1は、肺動脈PAの収縮期圧sys≧132、拡張期圧dia≧15、平均圧mean≧20、肺動脈PAの酸素飽和度SaO
2≧80、かつ、右心室RVの収縮期圧sys≧50、平均圧mean≧8とする。
【0044】
また、シェーマ絞込部33は、検査結果が条件2を満たす場合には、「ASD」を疾患の候補として特定する。ここで、条件2は、右心室RVの酸素飽和度SaO
2≧80、右心房RAの酸素飽和度SaO
2≧80、(肺動脈PAの収縮期圧sys−右心室RVの収縮期圧sys)の圧較差PG>0、−3<(右心房RAの平均圧mean−左心房LAの平均圧mean)<3、肺体血流量比(Qp/Qs)<1.5、かつ、上大静脈SVCの酸素飽和度SaO
2>下大静脈IVCの酸素飽和度SaO
2とする。
【0045】
また、シェーマ絞込部33は、検査結果が条件3を満たす場合には、「PDA」を疾患の候補として特定する。ここで、条件3は、肺動脈PAの収縮期圧sys≧30、拡張期圧dia≧30、酸素飽和度SaO
2≧80、かつ、右心室RVの収縮期圧≧30、平均圧mean≧8、酸素飽和度SaO
2≧80とする。
【0046】
また、シェーマ絞込部33は、検査結果が条件4を満たす場合には、「TOF」を疾患の候補として特定する。ここで、条件4は、−3<(右心室RVの拡張期圧dia−大動脈AOの拡張期圧dia)<3、肺動脈PAの酸素飽和度SaO
2≦70、右心室RVの酸素飽和度SaO
2≦70、右心房RAの酸素飽和度SaO
2≦70、左心房LAの酸素飽和度SaO
2≦95、上大静脈SVCの酸素飽和度SaO
2≦70、下大静脈IVCの酸素飽和度SaO
2≦70、左心室LVの酸素飽和度SaO
2≦95、かつ、大動脈AOの酸素飽和度SaO
2≦95とする。
【0047】
ただし、これらの条件1〜4は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0048】
続いて、シェーマ絞込部33は、特定した疾患の候補に関連する身体部位のシェーマを、シェーマ候補として記憶部36から抽出する(ステップS103)。たとえば、シェーマ絞込部33は、ステップS102において「VSD」が疾患の候補として特定された場合、関連するシェーマ候補として、
図3の(D)や(G)に示すようなシェーマが抽出される。また、「ASD」が疾患の候補として特定された場合、関連するシェーマ候補としては、
図3の(C)に示すようなシェーマが抽出される。また、「PDA」が疾患の候補として特定された場合、関連するシェーマ候補としては、
図3の(F)に示すようなシェーマが抽出される。また、「TOF」が疾患の候補として特定された場合、関連するシェーマ候補としては、
図3の(H)に示すようなシェーマが抽出される。
【0049】
次に、表示制御部34は、取得された検査結果と、直前のステップS103において抽出されたシェーマ候補とを、表示装置13の結果表示画面に表示する(ステップS104)。ただし、シェーマ候補が所定数(たとえば10)より多い場合には、シェーマ候補の画像は表示せず、対応する疾患の見出し(VSD、ASD、AVSD、PDAなど)を表示してもよい。
図6には、検査結果と、疾患の見出しと、が表示された例が示されている。
【0050】
そして、推奨検査提示部35は、ステップS102、S103において絞り込まれたシェーマ(候補)について、更なる絞り込みを可能にする検査があるか否かを判別し、推奨検査がある場合は推奨検査の提示を行う(ステップS105)。具体的には、推奨検査提示部35は、上記の条件1〜4のような、一つの疾患(候補)を特定するための条件と、既得の検査結果と、を比較して、追加の検査により一つの疾患を特定するための条件を満たす可能性がある検査を検索する。
【0051】
たとえば、第1検査により肺動脈楔入PCWと肺動脈PA、右心室RVに対して心臓カテーテル検査が実施されている場合に、さらにシェーマの絞り込みを可能にする右心房RAに対する測定検査などが検索される。
【0052】
推奨検査提示部35は、ステップS105において、シェーマをさらに絞り込むことが可能な検査がある場合には、
図7に示すように推奨検査を提示するためのメッセージ(たとえば「RAPの測定を行ってください」等の文字列)を結果表示画面に表示する。
【0053】
このとき、制御部31は、推奨検査あるいは予め計画されていた検査等がさらに実施され、取得部32が検査結果を取得したか否かを判別する(ステップS106)。たとえば、制御部31は、検査装置14によって推奨した検査が実施され、出力された検査結果データを取得部32が取得したときに、検査結果の取得ありと判別する。
【0054】
制御部31は、検査結果の取得ありと判別すると(ステップS106:Yes)、処理をステップS102に戻し、再びステップS102、S103の処理を実行する。
【0055】
続いて、表示制御部34は、表示装置13の結果表示画面に、ステップS106において取得された検査結果を追加表示すると共に、再度のステップS102、S103において絞り込まれたシェーマ候補を表示する(ステップS104)。
【0056】
制御部31は、ステップS106において、さらに検査結果の取得ありと判別される限り、ステップS102〜ステップS106の処理を繰り返す。
【0057】
たとえば、1巡目の検査で肺動脈楔入PCWに対して心臓カテーテル検査を実施し、結果の取得ありと判別される(ステップS101 :Yes)と、ステップS102、ステップS103の処理によって、シェーマ候補の絞り込みを行う。ステップS104において、ステップS101で検査結果の取得ありと判別された検査結果データとステップS103において抽出されたシェーマ候補とを、表示装置13の結果表示画面に表示する。続いて、ステップS105によって肺動脈PA、右心室RV、右心房RAに対する心臓カテーテル検査の推奨を提示する。
【0058】
さらに、2巡目の検査で肺動脈PAに対する心臓カテーテル検査が実施され、結果の取得ありと判別される(ステップS106 :Yes)と、ステップS102に戻る。2巡目のステップS102、ステップS103の処理によって、疾患の候補および関連するシェーマ候補がさらに絞り込まれる。ステップS104において、直前のステップS106で取得した検査結果データを追加して表示すると共に、直前のステップS102、S103において絞り込まれたシェーマ候補とを、表示装置13の結果表示画面に表示する。続いて、ステップS105によって右心室RV、右心房RAに対する心臓カテーテル検査の推奨を提示する。
【0059】
さらに、3巡目の検査で右心室RVに対する心臓カテーテル検査が実施され、結果の取得ありと判別される(ステップS106 :Yes)と、ステップS102に戻り、ステップS102〜ステップS106の処理を再度繰り返す。
【0060】
診断支援装置1は、上記例のように、ステップS101と複数回のステップS106において検査結果が取得され、ステップS102、ステップS103において特定されたシェーマ候補が少数に絞り込まれた場合、ステップS104において、より詳細な病態を示すシェーマ候補および見出しを表示装置13の結果表示画面に表示してもよい。ただし、シェーマ候補が所定数(たとえば10)より多い場合には、シェーマ候補の画像は表示せず、対応する詳細な見出し(膜様部、漏斗部、筋性部など)を表示してもよい。
【0061】
図8には、検査結果と、疾患の詳細な見出しとが、表示された例が示されている。ただし、これらの表示は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0062】
また、たとえば、1巡目の検査により「VSD」が疾患の候補として特定され、2巡目の検査によりさらに(右心室RVまたは肺動脈PAの収縮期圧sys/大動脈AOまたは左心室LVの収縮期圧sys)<0.75、かつ、肺体血流量比(Qp/Qs)<1.5、という追加条件を満たす検査結果が得られた場合には、欠損口が中程度以下のシェーマ(
図3の(D))に絞り込まれる。
【0063】
また、たとえば、1巡目の検査により「VSD」が疾患の候補として特定され、2巡目の検査によりさらに(右心室RVまたは肺動脈PAの収縮期圧sys/大動脈AOまたは左心室LVの収縮期圧sys)≧0.75、かつ、肺体血流量比(Qp/Qs)≧1.5、という追加条件を満たす検査結果が得られた場合には、欠損口が大きいシェーマ(
図3の(G))に絞り込まれる。
【0064】
また、たとえば、1巡目の検査により「VSD」が疾患の候補として特定され、2巡目の検査によりさらに(右心室RVの流入部inflow−右心室RVの流出部outflow)の圧較差PG<−3、または、(右心室RVの流入部inflow−右心室RVの流出部outflow)のPG>3、という追加条件を満たす検査結果が得られた場合には、右室二腔症のシェーマ(図なし)に絞り込まれる。
【0065】
また、たとえば、1巡目の検査により「PDA」が疾患の候補として特定され、2巡目の検査によりさらに(肺動脈PAの拡張期圧dia−大動脈AOの拡張期圧dia)の圧較差PG>−3、または(肺動脈のPAの拡張期圧dia−大動脈AOの拡張期圧dia)のPG<3、かつ、左心室LVの拡張末期圧edp≧10、という追加条件を満たす検査結果が得られた場合には、動脈管の開存が大きいシェーマ(図なし)に絞り込まれる。
【0066】
ただし、これらの絞り込みは、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0067】
以上のような推奨検査の実施により、シェーマ候補をさらに絞り込むことができ、医師にとって必要度の高いシェーマを素早く選択できるようになる。
【0068】
ステップS105において推奨検査が提示されていない場合、またはステップS105において推奨検査が提示されてもステップS106において検査結果の取得なしと判別された場合には(ステップS106:No)、診断支援装置1は、処理をステップS107に進める。
【0069】
そして、表示制御部34は、
図9、
図10に示すように、シェーマの絞り込みに用いられた全検査結果と、それ以外の検査結果と、を結果表示画面に表示する。さらに、診断支援装置1は、最終的に絞り込まれたシェーマ候補の画像(
図9)、および対応する疾患の見出し(
図9、
図10)の少なくともいずれか一つを結果表示画面に表示する。
【0070】
このとき、制御部31は、少なくとも一つ以上あるシェーマ候補の中から一つのシェーマを選択する指示を受け付けた場合、患者の診断等に用いるシェーマを決定する(ステップS108:Yes)。たとえば、診断支援装置1は、
図9、
図10に示す結果表示画面の表示中に、一つのシェーマを選択する操作が入力装置12によりなされたときに、選択されたシェーマを患者の診断等に用いるシェーマとして決定する。
【0071】
診断支援装置1は、ステップS108において、シェーマを選択する指示がない場合(ステップS108:No)は、ステップS106に戻り、ステップS106〜ステップS108を繰り返す。
【0072】
診断支援装置1は、ステップS108において一つのシェーマが選択された(ステップS108:Yes)後、医師等からの指示に基づき、決定されたシェーマを編集する(ステップS109)。たとえば、
図11に示すように、検査結果データをシェーマに重ね合わせるような編集を行う。
【0073】
その後、編集済みのシェーマと検査結果とが組み合わされて印刷されるなどして、検査結果記録が完成する。
【0074】
そして、診断支援装置1は、シェーマ作成処理を終了する。
【0075】
以上のシェーマ作成処理が診断支援装置1において実行されることにより、複数回の検査の進行に伴って、患者の疾患候補が段階的に絞り込まれる。これと共に、絞り込まれた疾患候補に関連するシェーマ候補あるいは疾患の見出しが表示される。これにより、医師は、全ての検査が完了していなくても、シェーマ候補あるいは疾患の見出しから、ある程度シェーマの完成図を推測できるようになる。そのため、医師は、全ての検査が終了する前に、シェーマに記入すべき記録結果を整理する作業など進めることができ、結果的に、検査結果の記録完了までにかかる時間を短縮できる。
【0076】
また、手書き作業によってシェーマを作成する場合に比べて、シェーマ作成にかかる操作性は格段に改善しており、検査結果の記入ミスや、医師の見間違いによる誤診などを防ぐことができる。そのため、医療の質の向上にもつながる。
【0077】
また、
図7に示すように、更なるシェーマの絞り込みを可能にする推奨検査を医師に提示することもできる(ナビゲーション機能)。そのため、次にどのような検査を実施すればよいのかという医師の判断を支援でき、医師による判断ミスも軽減される。
【0078】
なお、上記した各フローチャートの各処理単位は、診断支援装置1の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本願発明が制限されることはない。診断支援装置1で行われる処理は、さらに多くの処理ステップに分割することもできる。また、一つの処理ステップが、さらに多くの処理を実行してもよい。
【0079】
<変形例>
また、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。多くの代替物、修正、変形例は当業者にとって明らかである。
【0080】
たとえば、上記実施形態では、通信I/F24を、BlueTooth、赤外線通信、USB通信のためのインターフェースとして説明している。しかし、本発明は、これに限定されず、通信I/F24は、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのコンピューターネットワークを介して検査装置14と通信を行うためのインターフェースであってもよい。この場合には、イーサネット(登録商標)、Wi−Fi(Wireless Fidelity)、トークンリング、FDDI等の規格が用いられる。
【0081】
上記実施形態では、心臓に関連する心疾患を対象として説明しているが、本発明は他の部位、疾患についても含まれることは当然である。
【0082】
また、上記実施形態では、検査装置14は、診断支援装置1とは独立している装置として説明しているが、この形態に限られない。たとえば、検査装置14は、診断支援装置1に含まれる装置であってもよい。また、検査装置14に診断支援装置1の機能を組み込んでもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、検査装置14を用いて実施された検査の結果は、取得部32が検査装置14から出力された検査結果データを受信することにより診断支援装置1に入力される。しかし、本発明は、これに限定されず、コンピューターネットワークを介して、サーバ、NASなどの外部のストレージへ、検査装置14から出力された検査結果データを、通信I/F24を介して取得部32が取得するようにしてもよい。また、ユーザーが検査装置14に格納されている検査結果データを、USBメモリー等の可搬型メモリーに移して診断支援装置1に入力してもよいし、ユーザーが入力装置12を用いて手入力することによって、検査結果を診断支援装置1に入力してもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、シェーマ作成処理実施中は表示装置13へ結果表示画面を表示するようにしているが、本発明は、これに限定されない。診断支援装置1を動作させるプログラムの動作中は表示装置13へ結果表示画面を表示しているか否かに関わらず、ステップS101〜106を繰り返し実行できるようにしてもよい。また、いずれの段階においてもユーザーの入力装置12を用いた指示により、随時結果表示画面を表示装置13へ表示できるようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では特定された疾患が少数に絞り込まれた場合、より詳細な病態を示すシェーマ候補および見出しを表示装置13の結果表示画面に表示してもよいと説明しているが、本発明は、これに限定されない。疾患が特定されない段階や特定された疾患が多くある場合においても、入力装置12による指示により、特定された疾患のうち任意の見出しにおいて、より詳細な病態を示すシェーマ候補および見出しを表示装置13の結果表示画面に表示できるようにしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、シェーマをさらに絞り込むことが可能な検査がある場合には、
図7に示すように、推奨検査を提示するためのメッセージを結果表示画面に表示している。しかし、本発明は、これに限定されない。推奨検査の提示または測定値(検査結果)の手入力を促すメッセージの少なくともいずれか一つを表示してもよい。
図12は、シェーマをさらに絞り込むことが可能な測定値(検査結果)の手入力を促すメッセージが表示された結果表示画面の表示例である。診断支援装置1は、
図12に示すように、シェーマをさらに絞り込むことが可能な測定値の手入力を促すためのメッセージを結果表示画面に表示してもよい。たとえば、診断支援装置1は、「PV SaO
2またはLV SaO
2またはAO SaO
2の測定値を入力して下さい」等のメッセージを結果表示画面に表示してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、シェーマをさらに絞り込むことが可能な検査がある場合には、
図7および
図12に示すように、推奨検査を提示または測定値(検査結果)の手入力を促すためのメッセージを結果表示画面に表示し、推奨検査結果または求める測定値の取得を判別している。しかし、本発明は、これに限定されない。取得する検査結果データは推奨検査または求める測定値以外の検査結果データについても取得してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、既得の検査結果に基づいて疾患候補を特定してから、その疾患候補に関連するシェーマ候補を抽出している。しかし、本発明は、これに限定されず、疾患候補を特定せずに、既得の検査結果から直接的にシェーマ候補を抽出してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、シェーマの編集作業として、ステップS108において検査結果データをシェーマに重ね合わせることしか説明していない。しかし、本発明は、これに限定されず、身体部位を表す図形の一部を加工する作業や、酸素飽和度などの検査結果の値に応じて図形を色分けする作業や、簡易的な血流を表す矢印などをシェーマに重ね合わせる作業なども編集作業に含めてよい。
【0090】
また、上記実施形態では、診断支援装置1は、全ての検査が終了した段階(上記のステップS107)において、一つのシェーマを選択する指示を受け付けている。しかし、本発明は、これに限定されず、全ての検査が終了する前(たとえば、第1検査が終了した時点など、検査の途中)であっても、一つのシェーマを選択する指示を受け付けてもよい。これにより、全ての検査が終了する前に、既に選択すべきシェーマが明確であるときは、医師は、全ての検査の終了を待たなくても、すぐに一つのシェーマを選択できる。結果的に、検査結果のシェーマへの記録完了までにかかる時間をさらに短縮できる。
【0091】
また、上記した診断支援装置1の各機能構成は、各機能構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。各機能構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、一つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0092】
また、診断支援装置1を動作させるプログラムは、USBメモリー、フレキシブルディスク、CD−ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、メモリー22やストレージ23等に転送され記憶される。また、このプログラムは、例えば、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、診断支援装置1の一機能としてその各装置のソフトウェアに組み込んでもよい。
【0093】
また、上記の各構成要素の処理は、専用のハードウェア回路によっても実現することもできる。この場合には、一つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。