【解決手段】電磁シールド部材1は、主シールド体2と補助シールド体3とを備える。主シールド体2は、筒状に結集された複数の素線20を含んでいる。補助シールド体3は、シート状の導電性ゴム又は磁性ゴムを含む弾性シート材30を含んでいる。補助シールド体3は、主シールド体2における少なくとも一部の領域に沿って形成され素線20相互間の隙間を覆っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるシールド電線が曲がった経路に配線される場合、電磁シールド部材の曲げ部における編まれた素線間のすき間が大きく広がることがある。この場合、シールド電線における素線間のすき間が広がった部分のシールド性能が低下してしまう。
【0006】
本発明は、電磁ノイズを遮蔽する電磁シールド部材において、電磁シールド部材における曲げ部のシールド性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る電磁シールド部材は、主シールド体と補助シールド体とを備える。上記主シールド体は、筒状に結集された複数の素線を含む。上記補助シールド体は、シート状の導電性ゴム又は磁性ゴムを含む弾性シート材を含む。また、上記補助シールド体は、上記主シールド体における少なくとも一部の領域に沿って形成され上記素線相互間の隙間を覆っている。
【0008】
第2態様に係る電磁シールド部材は、第1態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第2態様に係る電磁シールド部材においては、上記補助シールド体は、上記主シールド体における複数の上記素線と一体に形成されている。
【0009】
第3態様に係る電磁シールド部材は、第2態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第3態様に係る電磁シールド部材においては、上記補助シールド体の上記弾性シート材は、筒状に形成され、複数の上記素線を周方向において間隔を空けて並列する状態で連結することによって複数の上記素線を筒状に結集している。
【0010】
第4態様に係る電磁シールド部材は、第3態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第4態様に係る電磁シールド部材においては、上記補助シールド体の上記弾性シート材は、その2つの縁部が連結されることによって筒状に形成された構造を有している。
【0011】
第5態様に係る電磁シールド部材は、第2態様から第4態様のいずれかに係る電磁シールド部材の一態様である。第5態様に係る電磁シールド部材においては、上記主シールド体における少なくとも一部の全周に亘る領域が、筒状に形成された上記補助シールド体に埋め込まれている。
【0012】
第6態様に係る電磁シールド部材は、第1態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第6態様に係る電磁シールド部材においては、上記補助シールド体は、自然状態において渦巻き状に曲がって形成されておりその曲がりが伸びた形状へ弾性変形可能であり、その弾性力によって上記主シールド体に巻き付いた状態を維持する。
【0013】
第7態様に係る電磁シールド部材は、第6態様に係る電磁シールド部材の一態様である。第7態様に係る電磁シールド部材においては、上記補助シールド体は、上記弾性シート材と一体に形成され自然状態において渦巻き状に曲がって形成されておりその曲がりが伸びた形状へ弾性変形可能な渦巻き部材をさらに備える。そして、上記補助シールド体は、上記渦巻き部材の弾性力によって上記主シールド体に巻き付いた状態を維持する。
【発明の効果】
【0014】
上記の各態様において、電磁シールド部材が曲がった経路に沿って取り付けられた場合を考える。この場合、弾性シート材を有する補助シールド体は、可撓性を有するため、主シールド体の曲げ変形を阻害しない。
【0015】
さらに、たとえ主シールド体の曲げ部において素線間の隙間が広がったとしても、その部分に補助シールド体が形成されていれば、導電性又は磁性を有する補助シールド体が、シールド性能の低下を抑制する。
【0016】
また、上記の第2態様において、補助シールド体は、主シールド体における複数の素線と一体に形成されている。この場合、補助シールド体が主シールド体の素線各々の位置関係を維持するため、電磁シールド部材における曲げ部において素線間の隙間の広がりが生じにくくなる。その結果、曲げ部におけるシールド性能の低下をより確実に防止できる。
【0017】
さらに、第2態様によれば、電磁シールド部材を構成する部品の数を少なくできる。また、この電磁シールド部材を含むワイヤーハーネスの組立工程において、主シールド体と補助シールド体とが個別に取り付けられる場合に比べ、作業工数を少なくできる。
【0018】
また、上記の第3態様において、補助シールド体の弾性シート材は、筒状に形成されており、複数の素線を周方向において間隔を空けて並列する状態で連結している。これにより、複数の素線は筒状に結集されている。この場合、主シールド体の各素線をシールド対象の電線に対して概ね平行に並ぶ状態にすることができる。
【0019】
また、上記の第4態様においては、弾性シート材が、複数の素線をすだれ状に連結する連結部の役割も兼ねる。従って、複数の素線がばらけてしまうことが防がれ、複数の素線を筒状に結集させる作業が容易となる。
【0020】
また、第4態様に係る電磁シールド部材は、シールド対象の電線に対して後付けが可能である。例えば、シールド対象の電線の末端処理の後に、この電磁シールド部材を取り付けることが可能である。この場合、ワイヤーハーネスの組立工程における作業の手順の自由度を高めることが可能である。また、シールド対象の電線に電磁シールド部材を取り付ける作業をより容易にすることもできる。
【0021】
また、上記の第5態様において、主シールド体における少なくとも一部の全周に亘る領域が、筒状に形成された補助シールド体に埋め込まれている。この場合、補助シールド体は、主シールド体に水等の液体がかかることを防止する。即ち、第5態様に係る電磁シールド部材は、この電磁シールド部材を含むシールド電線に防水又は防滴の性能が要求される場合に有効である。
【0022】
また、上記の第6態様及び第7態様において、補助シールド体は、渦巻き状になろうとする弾性力により、それ自体が主シールド体に巻き付いた状態を維持する機能を有している。そのため、補助シールド体を主シールド体におけるシールドの補助が必要な部分に容易に取り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0025】
<第1実施形態>
図1〜3を参照しつつ、第1実施形態に係る電磁シールド部材1について説明する。電磁シールド部材1は、筒状の主シールド体2と主シールド体2における少なくとも一部の領域に沿って形成された補助シールド体3とを備える。
【0026】
電磁シールド部材1は、電磁シールド部材1に含まれる主シールド体2の中空部に電線9が通された状態で、使用される。電磁シールド部材1及び電線9を備えるシールド電線は、例えば、自動車などの車両に搭載されるワイヤーハーネスとして組立てられる。なお、
図1,2において、電線9は仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0027】
電線9は、例えば、銅又はアルミニウムなどを主成分とする導体と、その導体の周囲を覆う絶縁被覆と、を有する絶縁電線である。
【0028】
図1,2に示される例においては、3本の電線9の周囲を電磁シールド部材1が囲んでいる。なお、電磁シールド部材1が1本の電線9を囲む場合、2本の電線9を囲む場合又は4本以上の電線9を囲む場合も考えられる。
【0029】
<主シールド体>
主シールド体2は、筒状に結集された複数の素線20を含む。複数の素線20から構成される主シールド体2は、曲げ変形可能である。
【0030】
本実施形態において、主シールド体2に含まれる複数の素線20は、間隔を空けて、交差せずに並列に並んでいる。主シールド体2は、曲がった経路に沿って変形することが可能である。
【0031】
筒状の主シールド体2は、シールド対象の電線9の周囲を囲み、電磁ノイズを遮蔽する。本実施形態では、主シールド体2の中空部に電線9が通された状態において、複数の素線20は、それぞれ電線9の長手方向に沿っているとともに電線9の周囲に並んでいる。
【0032】
素線20は、例えば、銅又はアルミニウムを主成分とする裸線である。なお、主シールド体2が、素線20の周囲を覆う絶縁被覆がさらに形成されたエナメル線又はいわゆるビニール電線等を含む場合も考えられる。
【0033】
本実施形態において、主シールド体2における複数の素線20は、補助シールド体3と一体に形成されている。即ち、複数の素線20各々は、補助シールド体3により相互に間隔を空けて連結されている。
【0034】
主シールド体2を構成する素線20の数及びその素線20間の間隔は、例えば、この主シールド体2に要求されるシールド性能によって決められる。
【0035】
主シールド体2単体が、直線経路に沿って配線された電線9の周囲を囲む状態においては、素線20各々の間隔は、要求されるシールド性能を満たす状態に維持される。しかしながら、電線9が曲がった経路に配線された場合、主シールド体2単体では、主シールド体2の曲がった部分における素線20間の隙間が大きくなる箇所が生じ、シールド性能が悪化する恐れがある。
【0036】
<補助シールド体>
補助シールド体3は、シート状の導電性ゴム又は磁性ゴムを含む弾性シート材30を含んでいる。例えば、電線9が配線される場所のノイズの周波数によって、補助シールド体3に含まれる弾性シート材30の材料が決められる。なお、本実施形態において、補助シールド体3は、弾性シート材30そのものである。
【0037】
弾性シート材30は、導電性ゴムとして、例えば、銅又はカーボン等を含むことが考えられる。また、弾性シート材30は、磁性ゴムとして、例えば、鉄又はフェライト等を含むことが考えられる。
【0038】
電磁シールド部材1において、補助シールド体3は、主シールド体2における少なくとも一部の領域に沿って形成され素線20相互間の隙間を覆っている。これにより、主シールド体2と補助シールド体3とが重なった部分のシールド性能が向上する。
【0039】
本実施形態において、補助シールド体3は、主シールド体2の長手方向において主シールド体2の両端部29以外の領域に形成されている。従って、主シールド体2の端部29において、素線20が露出している。また、素線20にさらに絶縁被覆が形成されている場合、主シールド体2の端部29において、素線20各々を覆う絶縁被覆は、除去されている。
【0040】
また、本実施形態において、補助シールド体3は、主シールド体2の周方向において主シールド体2の全周に亘って形成されている。即ち、補助シールド体3の弾性シート材30は、筒状に形成されている。
【0041】
図1が示す例において、主シールド体2における補助シールド体3が形成されていない部分、即ち、主シールド体2の端部29は、例えば、不図示のシールドシェル部材におけるシールド接続部に接続される。シールドシェル部材は、シールド対象となる電線9の接続相手である電装機器を収容する筐体に接続される金属部材である。また、シールド接続部は、主シールド体2が接続される筒状の部分である。
【0042】
例えば、主シールド体2の端部29が、シールドシェル部材のシールド接続部に被せられた状態で、不図示のかしめ部材が、主シールド体2の端部29の外周からかしめられる。これにより、電磁シールド部材1の主シールド体2とシールドシェル部材との導通が図られる。なお、かしめ部材は、かしめリング又はかしめバンド等が考えられる。
【0043】
本実施形態では、素線20(導体)各々は、弾性部材を介さずに直接かしめ部材で締めつけられ、シールドシェル部材のシールド接続部に強く押し付けられる。そのため、素線20(導体)各々がシールドシェル部材に対して強固にかしめられ、主シールド体2とシールドシェル部材との間の電気抵抗が小さくなる。
【0044】
また、補助シールド体3が、主シールド体2の周方向における一部に形成されている場合も考えられる。この場合、主シールド体2における補助シールド体3が必要な箇所のみを補助シールド体3が覆うため、この電磁シールド部材1の製造コストを抑制できる。
【0045】
また、前述のとおり、本実施形態においては、補助シールド体3が、主シールド体2における複数の素線20と一体に形成されている。そのため、補助シールド体3は、複数の素線20を周方向において間隔を空けて並列する状態に連結する連結部の役割も兼ねている。
【0046】
また、本実施形態では、主シールド体2における少なくとも一部の全周に亘る領域が、筒状に形成された補助シールド体3に埋没した状態で埋め込まれている。従って、複数の素線20各々が、補助シールド体3の外周面と内周面との間に存在している。この場合、複数の素線20各々の位置関係は、素線20の周囲に存在する補助シールド体3により一定に保たれる。
【0047】
さらに、本実施形態では、補助シールド体3の弾性シート材30が、その2つの縁部301が連結されることによって筒状に形成された構造を有している。
【0048】
この補助シールド体3は、例えば、
図3に示されるように、直線方向に沿って並列に並んだ複数の素線20がインサート成形された平坦な弾性シート材30が筒状に曲げられることによって、得られる。この場合、比較的筒状に曲げ易い弾性シート材30が筒状に曲げられることにより、複数の素線20も筒状に形成される。
【0049】
また、
図3に示される例において、弾性シート材30の2つの縁部301が連結された部分には、接合部31が形成されている。接合部31は、例えば、接着剤によって接着された部分である。また、接合部31が、弾性シート材30の一部が溶けて接着された溶着部であることも考えられる。
【0050】
<効果>
本実施形態において、電磁シールド部材1が曲がった経路に沿って取り付けられた場合を考える。この場合、弾性シート材30を有する補助シールド体3は、可撓性を有するため、主シールド体2の曲げ変形を阻害しない。
【0051】
さらに、たとえ主シールド体2の曲がった部分において素線20間の隙間が広がったとしても、その部分に補助シールド体3が形成されていれば、導電性又は磁性を有する補助シールド体3が、シールド性能の低下を抑制する。
【0052】
また、本実施形態において、補助シールド体3は、主シールド体2における複数の素線20と一体に形成されている。この場合、補助シールド体3が主シールド体2の素線20各々の位置関係を維持するため、電磁シールド部材1における曲がった部分において素線20間の隙間の広がりが生じにくくなる。その結果、曲がった部分におけるシールド性能の低下をより確実に防止できる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、補助シールド体3が主シールド体2における複数の素線20と一体に形成されているため、電磁シールド部材1を構成する部品の数を少なくできる。また、この電磁シールド部材1を含むワイヤーハーネスの組立工程において、主シールド体2と補助シールド体3とが個別に取り付けられる場合に比べ、作業工数を少なくできる。
【0054】
また、本実施形態において、補助シールド体3の弾性シート材30は、筒状に形成されており、複数の素線20を周方向において間隔を空けて並列する状態で連結している。これにより、複数の素線20は筒状に結集されている。この場合、主シールド体2の各素線20をシールド対象の電線9に対して概ね平行に並ぶ状態にすることができる。
【0055】
また、本実施形態においては、弾性シート材30が、複数の素線20をすだれ状に連結する連結部の役割も兼ねる。従って、複数の素線20がばらけてしまうことが防がれ、複数の素線20を筒状に結集させる作業が容易となる。
【0056】
また、本実施形態に係る電磁シールド部材1は、シールド対象の電線9に対して後付けが可能である。例えば、シールド対象の電線9の末端処理の後に、この電磁シールド部材1を取り付けることが可能である。この場合、ワイヤーハーネスの組立工程における作業の手順の自由度を高めることが可能である。また、シールド対象の電線9に電磁シールド部材1を取り付ける作業をより容易にすることもできる。
【0057】
また、本実施形態において、主シールド体2における少なくとも一部の全周に亘る領域が、筒状に形成された補助シールド体3に埋め込まれている。この場合、補助シールド体3は、主シールド体2に水等の液体がかかることを防止する。即ち、電磁シールド部材1は、この電磁シールド部材1を含むシールド電線に防水又は防滴の性能が要求される場合に有効である。
【0058】
<第2実施形態>
次に、
図4を参照しつつ、第2実施形態に係る電磁シールド部材1Aについて説明する。
図4は、電磁シールド部材1Aの断面図である。電磁シールド部材1Aにおいては、複数の素線20の周方向における一部に、補助シールド体3が存在している。なお、
図4において、
図1〜3に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Aにおける電磁シールド部材1と異なる点について説明する。
【0059】
電磁シールド部材1Aは、主シールド体2と一体に形成された補助シールド体3を備える。
【0060】
本実施形態は、主シールド体2における素線20の周方向において一部の範囲の周囲に補助シールド体3が存在している場合の事例である。
【0061】
図4に示される例は、主シールド体2に含まれる素線20各々における外周面の一部分が、補助シールド体3に埋め込まれている場合の事例である。
図4に示される例では、補助シールド体3の内周面側において素線20の一部が露出した状態となっている。
【0062】
本実施形態においても、主シールド体2の曲がった部分におけるシールド性能の低下を抑制することが可能である。
【0063】
なお、補助シールド体3が、主シールド体2の全長に亘って形成されている場合も考えられる。例えば、筒状の補助シールド体3が、主シールド体2の全長に亘って形成されている場合、主シールド体2に囲まれた電線9に水等の液体がかかってしまうこと及び飛び石等の外部からの異物が接触してしまうことが防がれる。
【0064】
<第3実施形態>
次に、
図5〜8を参照しつつ、第3実施形態に係る電磁シールド部材1Bについて説明する。電磁シールド部材1Bは、電磁シールド部材1,1Aが有する補助シールド体3と異なる構造の補助シールド体3Bを有する。なお、本実施形態においては、電磁シールド部材1Bに含まれる主シールド体2Bも、電磁シールド部材1,1Aに含まれる主シールド体2と異なる構造を有している。
【0065】
図5は、電磁シールド部材1Bの側方斜視図である。
図6は、電磁シールド部材1Bの正面図である。
図7は、電磁シールド部材1Bに含まれる補助シールド体3Bの一部分解斜視図である。
図8は、主シールド体2B及び補助シールド体3Bを示した斜視図である。
【0066】
なお、
図5〜8において、
図1〜4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。また、
図5,8において、素線20は、簡略化して描かれている。以下、電磁シールド部材1Bにおける電磁シールド部材1,1Aと異なる点について説明する。
【0067】
主シールド体2Bは、筒状に結集された複数の素線20を含む。本実施形態において、主シールド体2Bは、複数の素線20が編み込まれて筒状に形成された構造を有する。
【0068】
補助シールド体3Bは、弾性シート材30と、この弾性シート材30と一体に形成された渦巻き部材30Bと、を備える。
【0069】
渦巻き部材30Bは、自然状態において、渦巻き状の形状を有する。なお、自然状態とは、外力が加えられていない状態のことを指す。例えば、自然状態における渦巻き部材30Bは、外力が加えられていない状態の渦巻き部材30Bを意味する。
【0070】
また、渦巻き部材30Bは、この渦巻き部材30Bに外力を加えることにより、渦巻き形状からその曲がりが伸びた形状へ弾性変形させることが可能な部材である。以下、曲がりが伸びた形状を伸張形状と称する。なお、伸張形状の渦巻き部材30Bに加えられている外力が除去されると、この渦巻き部材30Bは、再び、渦巻き状の形状に戻る。
【0071】
渦巻き部材30Bは、例えば、金属製又は樹脂製の部材である。例えば、渦巻き部材30Bが、金属製又は樹脂製のぜんまいバネであることが考えられる。
【0072】
図7に示される例において、渦巻き部材30Bは、弾性シート材30の内部に埋め込まれている。即ち、
図7に示される例においては、補助シールド体3Bは、弾性シート材30と弾性シート材30の内部に埋め込まれることにより一体に形成された渦巻き部材30Bとを備える。
【0073】
例えば、平坦な帯状に伸張された渦巻き部材30Bをインサート品として、弾性シート材30をインサート成形することにより補助シールド体3Bが得られる。この補助シールド体3Bは、自然状態において、弾性シート材30に埋め込まれた渦巻き部材30Bにより、渦巻き状の形状を有する。
【0074】
なお、補助シールド体3Bの製造工程において、平坦な帯状に伸張された渦巻き部材30Bが、予め成形された弾性シート材30に接着されることも考えられる。また、平坦な帯状に伸張された渦巻き部材30Bが、予め成形された弾性シート材30における帯状の空間に挿入されることも考えられる。これらの場合も、補助シールド体3Bは、自然状態において、渦巻き状の形状を有する。
【0075】
図8には、補助シールド体3Bが、主シールド体2Bに取り付けられる際に伸張形状にされた様子が示されている。
【0076】
例えば、
図8に示されるように、補助シールド体3Bに外力が加えられ、補助シールド体3Bが伸張形状に変形させられる。そして、伸張形状の補助シールド体3Bが、主シールド体2Bに近付けられる。補助シールド体3Bに加えられていた外力が除去されると、補助シールド体3Bは、渦巻き部材30Bの弾性力によって、伸張形状から再び渦巻き状の形状に戻ろうとする。この渦巻き状に戻ろうとする弾性力を利用して、補助シールド体3Bが、主シールド体2Bに取り付けられる。
【0077】
従って、電磁シールド部材1Bにおいては、
図6に示されるように、補助シールド体3Bは、渦巻き部材30Bの弾性力によって主シールド体2Bに巻き付いた状態を維持する。
【0078】
本実施形態においては、補助シールド体3Bが、渦巻き状になろうとする弾性力により、主シールド体2Bに巻き付いた状態を維持する機能を有している。そのため、補助シールド体3Bを主シールド体2Bにおけるシールドの補助が必要な部分に容易に取り付けることができる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、
図9,10を参照しつつ、第4実施形態に係る電磁シールド部材1Cについて説明する。電磁シールド部材1Cは、電磁シールド部材1,1Aが有する補助シールド体3及び電磁シールド部材1Bが有する補助シールド体3Bと異なる構造の補助シールド体3Cを有する。
【0080】
図9は、電磁シールド部材1Cの側方斜視図である。
図10は、電磁シールド部材1Cに含まれる主シールド体2Bに補助シールド体3Cが取り付けられる様子を示した斜視図である。なお、
図9,10において、
図1〜8に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Cにおける電磁シールド部材1,1A,1Bと異なる点について説明する。
【0081】
電磁シールド部材1Cが有する補助シールド体3Cは、弾性シート材30Cを含む。本実施形態において、補助シールド体3Cは、弾性シート材30Cそのものである。
【0082】
弾性シート材30Cは、自然状態において、渦巻き状に曲がって形成されており、その曲がりを伸ばす形状へ弾性変形可能である。
【0083】
補助シールド体3Cは、弾性シート材30Cの弾性力によって、主シールド体2Bに巻き付いた状態を維持する。
【0084】
本実施形態においても、補助シールド体3Cが、渦巻き状になろうとする弾性力により、主シールド体2Bに巻き付いた状態を維持する機能を有している。そのため、補助シールド体3Cを主シールド体2Bにおけるシールドの補助が必要な部分に容易に取り付けることができる。
【0085】
<第5実施形態>
次に、
図11を参照しつつ、第5実施形態に係る電磁シールド部材1Dについて説明する。電磁シールド部材1Dは、電磁シールド部材1が有する主シールド体2と異なる構造の主シールド体2Dを有する。
【0086】
図11は、電磁シールド部材1Dの側方斜視図である。なお、
図11において、
図1〜10に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電磁シールド部材1Dにおける電磁シールド部材1,1A,1B,1Cと異なる点について説明する。
【0087】
本実施形態において、主シールド体2Dは、主シールド体2Bと同様、複数の素線20が編み込まれて筒状に形成された構造を有する。
【0088】
また、本実施形態では、主シールド体2Dにおける少なくとも一部の全周に亘る領域が、筒状に形成された補助シールド体3に埋没した状態で埋め込まれている。従って、複数の素線20各々が、補助シールド体3の外周面と内周面との間に存在している。この場合、複数の素線20各々の位置関係は、素線20の周囲に存在する補助シールド体3により一定に保たれる。
【0089】
本実施形態においても、主シールド体2Dの曲がった部分におけるシールド性能の低下を抑制することが可能である。
【0090】
<その他>
第1実施形態に係る電磁シールド部材1と第3実施形態に係る電磁シールド部材1Bとは、シールド性能の要求仕様に応じて使用することが考えられる。例えば、シールド性能の要求仕様が厳しい箇所で、第3実施形態に係る電磁シールド部材1Bを採用し、シールド性能の要求仕様が緩い箇所で、第1実施形態に係る電磁シールド部材1を採用する場合等が考えられる。
【0091】
<応用例>
電磁シールド部材1Bにおける補助シールド体3Bが、弾性シート材30の代わりに、弾性シート材30Cを備える場合も考えられる。
【0092】
また、第1実施形態において、主シールド体2における複数の素線20が、間隔を空けずに、交差せずに並列に並んでいる場合も考えられる。例えば、複数の素線20が、素線20各々の端部でのみ溶接等により溶着されている場合或いは素線20各々の端部でのみ接着剤によって接着されている場合である。この場合も、主シールド体2は、曲がった形状を有することが可能である。
【0093】
また、第3実施形態及び第4実施形態において、電磁シールド部材1B,1Cが、主シールド体2Bの代わりに、主シールド体2を備える場合も考えられる。
【0094】
また、第2実施形態において、補助シールド体3の外周面側において素線20の一部がむき出した状態となっている場合も考えられる。
【0095】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、接合部31の代わりに、弾性シート材30の2つの縁部301が貼り合わされることによって連結されている場合も考えられる。
【0096】
また、各実施形態において、2つの縁部301が重なった状態で、弾性シート材30,30B,30Cに粘着テープが巻き付けられることによって、補助シールド体3,3A,3B,3Cが筒状に形成されている場合も考えられる。
【0097】
また、弾性シート材30が、押出成形で筒状に形成されている場合も考えられる。
【0098】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、直線方向に沿って並列に並んだ複数の素線20が、接着剤によって弾性シート材30に接着され、一体に形成されている場合も考えられる。
【0099】
また、第5実施形態において、主シールド体2Dに含まれる素線20各々における外周面の一部分が、補助シールド体3に埋め込まれている場合も考えられる。例えば、補助シールド体3の内周面側において素線20の一部が露出した状態であること又は補助シールド体3の外周面側において素線20の一部が露出した状態であることが考えられる。
【0100】
なお、本発明に係る電磁シールド部材は、各請求項に記載された発明の範囲において、以上に示された各実施形態及び応用例を自由に組み合わせること、或いは各実施形態及び応用例を適宜、変形する又は一部を省略することによって構成されることも可能である。