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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-188853(P2015-188853A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】湿式微粒化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20151006BHJP
   B02C 19/06 20060101ALI20151006BHJP
   B02C 23/06 20060101ALI20151006BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20151006BHJP
   C01B 31/02 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   B01J13/00 B
   B02C19/06 A
   B02C23/06
   C01G23/047
   C01B31/02 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-69335(P2014-69335)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(74)【代理人】
【識別番号】100151356
【弁理士】
【氏名又は名称】浅香 小百合
(72)【発明者】
【氏名】村山 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】原島 謙一
【テーマコード(参考)】
4D067
4G047
4G065
4G146
【Fターム(参考)】
4D067CA01
4D067EE41
4D067GA20
4G047CA02
4G047CB08
4G047CD03
4G065AA01
4G065AA06
4G065AA08
4G065AA09
4G065AB06X
4G065AB38X
4G065AB40X
4G065BA07
4G065BA13
4G065BA15
4G065BA20
4G065BB01
4G065BB03
4G065BB04
4G065CA11
4G065DA01
4G065DA02
4G065DA03
4G065DA06
4G065DA09
4G065EA06
4G065EA10
4G065FA01
4G065FA02
4G065GA01
4G146AA11
4G146AC02B
4G146CB10
4G146CB35
4G146CB36
4G146DA07
4G146DA23
(57)【要約】
【課題】 汚染物質(コンタミ)の発生を極力抑えつつ、ナノ粒子を安定して得ることが可能な湿式微粒化方法を提供する。
【解決手段】 微粒子の凝集体が含有された原料液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて混合液とし(ステップS1)、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで前記凝集体を微粒化する(ステップS2)。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子の凝集体が含有された原料液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで前記凝集体を微粒化するステップを有することを特徴とする湿式微粒化方法。
【請求項2】
微粒子の凝集体が含有された原料液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する第1のステップと、前記第1のステップにて得られた分散液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて、それを前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで微粒化する第2のステップを有することを特徴とする湿式微粒化方法。
【請求項3】
前記原料液の溶媒が水であり、前記添加剤が酸または塩基であり、その添加によってpHを等電点からずらして前記混合液のゼータ電位を大きくすることを特徴とする請求項1または2記載の湿式微粒化方法。
【請求項4】
前記微粒子が金属酸化物であり、前記添加剤として酸の添加によってpHを2以下にすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の湿式微粒化方法。
【請求項5】
前記微粒子がバイオマスナノファイバーであり、前記添加剤として酸の添加によってpHを2以下にするか、または、前記添加剤として塩基の添加によってpHを12以上にすることを特徴とする請求項1または2記載の湿式微粒化方法。
【請求項6】
前記微粒子がバイオマスナノファイバーであり、前記添加剤として高分子分散剤を添加することを特徴とする請求項1または2記載の湿式微粒化方法。
【請求項7】
前記微粒子がカーボンナノチューブであり、前記添加剤として高分子分散剤を添加することを特徴とする請求項1または2記載の湿式微粒化方法。
【請求項8】
前記高分子分散剤を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで前記高分子分散剤を微粒化してから添加することを特徴とする請求項6または7記載の湿式微粒化方法。
【請求項9】
前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルからの圧力を100から245MPaの間で調整し、必要に応じて前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の湿式微粒化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の湿式微粒化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子、特にナノ粒子は、そのサイズがナノメートル(nm)オーダーであることで比表面積が極めて大きくなり、量子サイズ効果によって特有の物性を示すことなどから、様々な分野で研究され利用が進められている。近年、ナノ粒子は電子部品、顔料、化粧品、医薬品、食品、農薬等、各種材料分野で広範囲に利用されつつある。その一方で、ナノ粒子は凝集し易いことからナノ粒子の特性を有効活用するためには、ナノ粒子の性質に合った適切な分散処理が必要となる。
【0003】
その一方で、化学物質の安全性が議論になっている。特に化粧品、医薬品、食品の場合、微粒子が人体に直接触れ、又は人体内に直接投与されることから、微粒子の微粒化に際して不純物が微粒子に付着し、また不純物が混入すると、安全性が保障されず大きな問題となる。また、電子材料においては、微粒子への不純物混入は電気特性や磁気特性に少なからず悪影響を及ぼすこととなる。
【0004】
一般に粒子を微粒化させる方法としては、超音波振動による分散、ビーズミルなどの粉砕用媒体を使用した湿式の機械的接触式粉砕や同体摩擦粉砕による方法(機械的接触式粉砕法)が知られている。しかし、ビーズミルなどを用いた機械的接触式粉砕では、粉砕用媒体と粒子とが点接触するため粉砕のためのエネルギー密度が高くなりすぎて、粒子の構造自体が壊れ易く、粉砕用媒体と粒子との点接触箇所における過剰な温度上昇(発熱)によって、粒子の所望の機能性が劣化してしまう不具合が生じる。さらにビーズミルなどの粉砕用媒体から発生するcontaminant(汚染物質:コンタミとも呼ばれる)が混入する不具合がある。これに対して、ウォータージェット技術を用いた湿式ジェットミルは、原料溶液をチャンバーノズルから高圧噴射することで粒子自体を壊さずコンタミの混入がない微粒化工法として開発されたものであり、粒子の湿式微粒化工法として有望視され実用化が進んでいる。
【0005】
特許文献1には、チャンバー内に高圧流体を噴射するようにハウジングに取り付けられた第1と第2のノズル手段とを備え、前記第1と第2のノズル手段は、互いの噴射流同士が各々のノズル出口より先方の一点で角度を有して交差するように夫々の噴射方向が定められており、前記第1と第2のノズル手段の少なくとも一方の噴射方向を調整するための調整機構を備えていることを特徴とする噴流衝合装置、が記載されている。
【0006】
特許文献2には、チャンバー内に互いに所定衝突角度で高圧流体を噴射する第1と第2のノズル手段と、前記チャンバー外で対象材料を貯蔵すると共に、前記第1および第2のノズル手段へそれぞれ前記対象材料を供給する材料供給手段を有する材料タンクと、前記チャンバー外で混合用流体を貯蔵する流体タンクと、前記第1および第2のノズル手段へそれぞれ前記流体タンク内の混合用流体を加圧して供給する加圧手段と、を備え、前記第1および第2のノズル手段は、それぞれ前記材料タンクから供給される対象材料の導入口と、前記加圧手段から供給される高圧の混合用流体の導入口を有し、内部に形成される混合用流体の高速噴流によって発生する吸引力により、前記材料タンクから材料を前記導入口を介して吸い込み、前記高速噴流に合流させて材料と流体を混合しつつ高速スラリー混合液流を噴射するものであり、この合流部のノズル流路内壁面に沿って、該内壁面と材料流体混合噴流体とを隔てる空気層を形成するための機構を備えたことを特徴とする噴流衝合装置、が記載されている。
【0007】
特許文献3には、塑性変形し易い金属またはその化合物とセラミックスなどの弾性率が高い材料を含有する微粉体の複合粒子を、分散剤と水とに混合した後、高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記複合粒子を微粒化することを特徴とする複合粒子の粉砕及び分散方法、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3151706号公報
【特許文献2】特許第3712588号公報
【特許文献3】特開2011−20081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3記載の既知の方法によっても、ナノ粒子を安定して得ることには未だ解決すべき課題が多い。つまり、高圧噴射処理装置の物理的作用による分散のみでは、電気的凝集を分散するには限界があった。
【0010】
そこで、本願発明者は、微粒子に対して静電反発作用または立体障害作用をする添加剤を加えて混合液とし、高圧噴射分散処理を行うことで、電気的凝集を効果的に分散する方法を見出した。
【0011】
上述の課題に鑑みて、本発明の目的は、汚染物質(コンタミ)の発生を極力抑えつつ、ナノ粒子を安定して得ることが可能な湿式微粒化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の湿式微粒化方法は、微粒子の凝集体が含有された原料液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで前記凝集体を微粒化するステップを有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、凝集力の強い粒子間や濡れ性の乏しい粒子であっても、静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えてから高圧噴射分散処理を行うことで、高圧噴射により微粒化された粒子に静電反発または立体障害の作用が働くので再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上する。
【0014】
本発明の湿式微粒化方法は、微粒子の凝集体が含有された原料液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する第1のステップと、前記第1のステップにて得られた分散液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて、それを前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで微粒化する第2のステップを有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、凝集力の強い粒子間や濡れ性の乏しい粒子であっても、高圧噴射してから、静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて再度高圧噴射分散処理を行うことで、静電反発または立体障害の作用を効果的に働かせるので再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上する。
【0016】
本発明の湿式微粒化方法は、微粒子の凝集体が含有された原料液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで前記凝集体を微粒化し、得られた分散液の微粒子に対してさらに前記添加剤を加えて、それを前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することでさらに微粒化してもよい。
【0017】
本発明によれば、上述の作用効果に加えて、段階的に前記添加剤を加えながら前記高圧噴射分散処理を行うことで、より効果的に粒子に静電反発または立体障害の作用が働くこととなる。すなわち、分散粒子の分散度合いが小さい状態のときは前記添加剤が余剰となり、この余剰分は高圧噴射処理の際に発生する熱などで変性することがある。本発明によれば、適時、必要な分だけ前記添加剤を添加することができ、より効果的に粒子に静電反発または立体障害の作用が働くこととなる。
【0018】
前記添加剤は、静電反発の作用をするものでもよいし、立体障害の作用をするものでもよいし、静電反発及び立体障害の作用をするものでもよい。前記添加剤としては、酸、塩基、高分子材料が挙げられる。前記原料液の溶媒としては、水、エタノール、これらの混合液、その他水溶液が挙げられる。
【0019】
本発明は、前記原料液の溶媒が水であり、前記添加剤が酸または塩基であり、その添加によってpHを等電点からずらして前記混合液のゼータ電位を大きくすることを特徴とする。
【0020】
ここで、ゼータ電位(zeta potential, ζ電位)は、界面動電電位であり、溶液にコロイド粒子が接触したときの界面では表面荷電に対する対イオンにより電気二重層が形成され電位差が生じ、溶液に対して接触した相が相対的に運動しているとき、接触相の表面からある厚さの層にある溶液は粘性のために接触相とともに運動することとなり、この層の滑り面と界面から充分に離れた溶液のバルク部分との電位差である。微粒子の場合、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発力が強くなり粒子の安定性が高くなる。逆に、ゼータ電位がゼロに近くなると、粒子は凝集しやすくなる。
【0021】
本発明によれば、前記添加剤の添加によって粒子間の静電反発力が強くなりナノ粒子の分散安定性が高くなる。
【0022】
本発明は、前記微粒子が金属酸化物であり、前記添加剤として酸の添加によってpHを2以下にすることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、粒子のメジアン粒径を1/2未満にすることができる。
【0024】
前記金属酸化物としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、フェライト、アルミナ、シリカ、その他既知の金属酸化物が挙げられる。
【0025】
本発明は、前記微粒子がバイオマスナノファイバーであり、前記添加剤として酸の添加によってpHを2以下にするか、または、前記添加剤として塩基の添加によってpHを12以上にすることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、バイオマスナノファイバーのメジアン繊維径を1/2未満にすることができる。
【0027】
前記バイオマスナノファイバーとしては、セルロース、キチン、キトサン、その他既知のバイオマスナノファイバーが挙げられる。
【0028】
本発明は、前記微粒子がバイオマスナノファイバーであり、前記添加剤として高分子分散剤を添加することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、立体障害の作用によってナノ粒子の分散安定性が高くなるうえ、酸や塩基の添加をしないことで適用範囲がより広範囲なものとなる。
【0030】
本発明は、前記微粒子がカーボンナノチューブであり、前記添加剤として高分子分散剤を添加することを特徴とする。
【0031】
カーボンナノチューブ(Carbon nanotube、CNT)は、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。本発明によれば、立体障害の作用によってナノ粒子の分散安定性が高くなるうえ、酸や塩基の添加をしないことで適用範囲がより広範囲なものとなる。
【0032】
ここで、高分子分散剤には、分散効果を示す最適な分子量領域があり、その分子量領域を越えて大きくなりすぎると架橋反応が生じ易くなり、架橋反応が生じると、分散効果よりもむしろ凝集効果を示す。また一方で最適な分子量領域よりも小さいと吸着速度は速くても脱着が起こりやすく、分散剤としての効果が小さくなってしまう。
【0033】
本発明は、前記高分子分散剤を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することで前記高分子分散剤を微粒化してから添加することを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、予め、高分子分散剤を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射し微粒化してから添加することで分散効果を示す最適な分子量領域での添加が容易となる。
【0035】
本発明は、前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルからの圧力を100から245MPaの間で調整し、必要に応じて前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、原料を所望のメジアン径のナノ粒子とすることが容易である。
【0037】
例えば、前記高圧噴射による微粒化工程に加えて、さらに撹拌工程を有する。本発明によれば、撹拌させて前記粒子の3次元構造を広げることによって、安定的な状態を長期に亘って維持することが容易となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の湿式微粒化方法によれば、高圧噴射により微粒化された粒子に静電反発または立体障害の作用が働くので再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上する。本発明によれば、上述の作用効果に加えて、段階的に前記添加剤を加えながら前記高圧噴射分散処理を行うことで、より効果的に粒子に静電反発または立体障害の作用が働くこととなる。本発明によれば、粒子のメジアン径を1/2未満にすることができ、所望のメジアン径のナノ粒子とすることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明にて使用する高圧噴射処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】上記高圧噴射処理装置のシングルノズルチャンバーの概略構成を示す模式図である。
図3】上記高圧噴射処理装置の斜向衝突チャンバーの概略構成を示す模式図である。
図4】上記高圧噴射処理装置のボール衝突チャンバーの概略構成を示す模式図である。
図5】本発明を適用した第1の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。
図6】本発明を適用した第2の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。
図7】本発明を適用した第3の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。
図8】本発明を適用した第4の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。
図9】本発明1の酸化チタンの処理後のSEM像である。
図10】比較例1の酸化チタンの未処理のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を実施するための形態を以下に説明する。
【0041】
原料について
本発明において、原料は微粒子の凝集体である。金属酸化物の原料としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、フェライト、アルミナ、シリカ、その他既知の金属酸化物微粒子の凝集体が挙げられる。原料としては、カーボンナノチューブの凝集体が挙げられる。バイオマス原料としては、セルロース、キチン、キトサン、その他既知のバイオマスナノファイバーの凝集体が挙げられる。
本発明に係る高圧噴射処理装置で原料を高圧噴射処理すると、例えばバイオマス原料は繊維の長さを保ったまま繊維同士の絡まりがほどけて細くなる。そして、前記高圧噴射処理装置の噴射圧力や処理回数などの処理条件を変えることで、繊維の切断もしくは分子量を低下させることが可能である。本発明において、ナノファイバーとは、繊維の幅がナノサイズになったものを意味する。セルロースは、本発明の方法の実施により繊維同士がほどけて1本の最小単位の繊維になると、その直径は10〜50nm程度となる。
【0042】
本発明において、原料液は微粒子の凝集体が含有された液体である。前記原料液の溶媒は水、または既知の水溶液である。
【0043】
本発明において、添加剤は前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする物質、または当該物質が含有された液体である。前記添加剤としては、酸、塩基、高分子分散剤が挙げられる。
【0044】
高圧噴射処理装置について
図1は、本発明にて使用する高圧噴射処理装置100の概略構成を示すブロック図である。高圧噴射処理装置100は、高圧ポンプ102を油圧駆動及び制御する油圧発生・制御部101と、混合液10を加圧する高圧ポンプ102と、混合液10を投入する原料タンク103と、投入され加圧された混合液10内の粒子1aを噴射させ加速して衝突させることで粒子1aを微細化して粒子1bとするとともに分散させるチャンバー40と、チャンバー40にて微粒化され分散された粒子1bを有する懸濁液20を冷却する熱交換器105からなる。高圧噴射処理装置100は、粒子1aと添加剤と水との混合液10をチャンバーノズルから高圧噴射することで、粒子1a自体を壊さず、コンタミの混入がない状態で、微粒化して微粒子1bとするとともに均一に分散して懸濁液20とする。
【0045】
原料タンク103に混合液10を投入し、高圧ポンプ102にて混合液10を加圧して、チャンバー40内のノズルから混合液10を噴射させ加速して衝突させることで粒子1aを微細化して微粒子1bとするとともに、微粒子1bが均一に分散した懸濁液20とし、チャンバー40内の噴射によって温度が上昇した懸濁液20を、熱交換器105にて常温まで冷却して排出する(図1)。チャンバー40には、用途によって、シングルノズルチャンバー、斜向衝突チャンバー、ボール衝突チャンバー等の種類がある。
【0046】
図2は、シングルノズルチャンバー41の概略構成を示す模式図である。シングルノズルチャンバー41は、混合液10を1つのノズル411から液中に噴射させ粒子1aを加速し、出口412から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル411は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、ノズル411を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力によって、微粒化と分散を行う。シングルノズルチャンバーは、その構造上、水のキャビテーションと水の乱流の作用のみを用いている。
【0047】
図3は、斜向衝突チャンバー42の概略構成を示す模式図である。斜向衝突チャンバー42は、混合液10を対向配置された1対のノズル421から液中に噴射させ粒子1aを加速して互いに対向衝突(対面衝突)させ、出口422から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル421は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、ノズル421を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力と、粒子1a同士が対向衝突するときの衝撃力と、対向噴流での相対速度増加による剪断力によって、微粒化と分散を行う。
【0048】
図4は、ボール衝突チャンバー43の概略構成を示す模式図である。ボール衝突チャンバー43は、混合液10を1つのノズル431から液中に噴射させ粒子1aを加速してセラミックボール433に衝突させ、出口432から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル431は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、セラミックボール433は窒化珪素等からなる。ノズル431を粒子1aが通過チャンバー剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力と、粒子1aがセラミックボール433に衝突するときの衝撃力によって、微粒化と分散を行う。
【0049】
本発明では、出願人である株式会社スギノマシンが開発したウォータージェットを用いた高圧噴射処理装置を用いて、前記混合液をノズルより高圧噴射することによって、微粒化と分散を行う。高圧噴射の圧力は、100〜245MPaである。噴射速度は、440〜700m/sである。
【0050】
第1の実施形態
図5は、本発明を適用した第1の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。第1の実施形態は、混合及び攪拌処理(ステップS1)と、高圧噴射処理(ステップS2)からなる。第1の実施形態では、微粒子の凝集体が含有された原料液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて混合及び攪拌処理(ステップS1)を行って混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する高圧噴射処理(ステップS2)を行うことで前記凝集体を微粒化する。前記混合及び撹拌処理は撹拌棒などで混合撹拌してもよいし、市販の撹拌機で撹拌してもよい。前記高圧噴射処理は上述のウォータージェットによる高圧噴射処理装置を用いて行う。そして、前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルからの圧力を100から245MPaの間で調整し、必要に応じて前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返す。
【0051】
本実施形態によれば、凝集力の強い粒子間や濡れ性の乏しい粒子であっても、静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えてから高圧噴射分散処理を行うことで、高圧噴射により微粒化された粒子に静電反発または立体障害の作用が働くので再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上する。
【0052】
第2の実施形態
図6は、本発明を適用した第2の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。第2の実施形態は、第1の混合及び攪拌処理(ステップS1)と、第1の高圧噴射処理(ステップS2)と、第2の混合及び攪拌処理(ステップS3)と、第2の高圧噴射処理(ステップS4)からなる。第2の実施形態では、微粒子の凝集体が含有された原料液に、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて混合及び攪拌処理(ステップS1)を行って混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する高圧噴射処理(ステップS2)を行うことで前記凝集体を微粒化し、前記ステップにて得られた分散液の微粒子に対してさらに前記添加剤を加えて混合及び攪拌処理し(ステップS3)、それを前記高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射することでさらに微粒化する(ステップS4)。上記の添加剤を加えて混合撹拌し高圧噴射処理する作業は、必要に応じて複数回繰り返すことができる。
【0053】
本実施形態によれば、上述の作用効果に加えて、段階的に前記添加剤を加えながら前記高圧噴射分散処理を行うことで、粒子により効果的に静電反発または立体障害の作用が働くこととなる。
【0054】
第3の実施形態
図7は、本発明を適用した第3の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。第3の実施形態は、高分子分散剤を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する高圧噴射処理(ステップS11)を行うことで前記高分子分散剤を微粒化したうえで、微粒子の凝集体が含有された原料液に加えて混合及び攪拌処理(ステップS21)を行って混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する高圧噴射処理(ステップS22)を行うことで前記凝集体を微粒化する。
【0055】
本実施形態によれば、予め、高分子分散剤を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射し微粒化してから添加することで分散効果を示す最適な分子量領域での添加が容易となる。
【0056】
第4の実施形態
図8は、本発明を適用した第4の実施形態の微粒子を分散させた分散液の製造手順を示す製造工程フロー図である。第4の実施形態は、微粒子の凝集体が含有された原料液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する高圧噴射処理(ステップS12)を行ったうえで、その液に前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて混合及び攪拌処理(ステップS21)を行って、それを高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する高圧噴射処理(ステップS22)を行うことで前記凝集体を微粒化する。
【0057】
本実施形態によれば、凝集力の強い粒子間や濡れ性の乏しい粒子であっても、高圧噴射してから、静電反発または立体障害の作用をする添加剤を加えて再度高圧噴射分散処理を行うことで、静電反発または立体障害の作用を効果的に働かせるので再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上する。
【実施例】
【0058】
本発明の実施例を以下に説明する。
【0059】
高圧噴射処理装置は、硬質球体に対してスラリー溶液噴流を衝突させる方式のスターバーストミニHJP25001(株式会社スギノマシン製)を用いた。噴射圧力は245MPa,噴射流量は1.67×10−6/s(100mL/min.)とした。
粒径およびゼータ電位測定は、動的光散乱式粒径測定装置 ゼータサイザー ナノZS(MALBERN社製)を用いた。
pH測定は、pHメータ D-51(HORIBA社製)を用いた。
【0060】
実施例1(酸化チタンの微粒化)
原料の酸化チタン(TiO)はP25(Evonik Degussa社製)である。
本実施例では、イオン交換水に硝酸を添加し、所定pHの水溶液とした。この水溶液50gに酸化チタン粉末2gを加えて撹拌し、さらに硝酸を添加して再度所定のpHとし、希釈して、2質量%の原料濃度の混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を10回繰り返し、本発明1の分散液を得た。硝酸を添加しないで、同様に高圧噴射処理を行ったものを比較例1とした。測定結果を次の表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示す通り、硝酸を加えてpH4からpH2に調整した混合液を高圧噴射処理した本発明1の分散液のメジアン粒径は122nmとなった。比較例1として硝酸を加えずに高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は1340nmとなった。本実施例によれば、比較例1に対して1/10以下のメジアン粒径の分散液となることが判った。
【0063】
図9は、本発明1の酸化チタンの処理後のSEM像である。図10は、比較例1の酸化チタンの未処理のSEM像である。未処理の状態では、微粒子が凝集体となっているが(図10)、硝酸を加えてpH調整し高圧噴射処理することで、微粒化され、粒子が安定して分散していることがわかる(図9)。
【0064】
酸化チタンの等電点はpH5〜pH7程度である。本実施例によれば、硝酸を加えてpH4からpH2に調整することで、ゼータ電位が3.8mVから40.5mVまで大きくなり、粒子間の静電反発力が強くなりナノ粒子の分散安定性が高くなったことを裏付けている。微粒子の場合、理論的には、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発力が強くなり粒子の安定性が高くなる。よって、酸を加えてpH4からpH2以下に調整することでゼータ電位がある程度以上大きくなり、再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上する。または、塩基を加えてpH4からpH14に調整することでゼータ電位の絶対値がある程度以上大きくなり、再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上すると考えられる。
【0065】
実施例2(酸化チタンの微粒化)
原料の酸化チタン(TiO)はST−01(石原産業株式会社製)である。
本実施例では、イオン交換水に硝酸を添加し、所定pHの水溶液とした。この水溶液50gに酸化チタン粉末2gを加えて撹拌し、さらに硝酸を添加して再度所定のpHとし、希釈して、2質量%の原料濃度の混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を20回繰り返し、本発明2の分散液を得た。硝酸を添加しないで、同様に高圧噴射処理を行ったものを比較例2とした。測定結果を次の表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
表2に示す通り、硝酸を加えてpH4からpH2に調整した混合液を高圧噴射処理した本発明2の分散液のメジアン粒径は78nmとなった。比較例2として硝酸を加えずに高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は1660nmとなった。本実施例によれば、比較例2に対して1/20以下のメジアン粒径の分散液となることが判った。
【0068】
実施例3(酸化チタンの微粒化)
原料の酸化チタン(TiO)はMT−150A(ティカ株式会社製)である。
本実施例では、イオン交換水に硝酸を添加し、所定pHの水溶液とした。この水溶液50gに酸化チタン粉末2gを加えて撹拌し、さらに硝酸を添加して再度所定のpHとし、希釈して、2質量%の原料濃度の混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を20回繰り返し、本発明3の分散液を得た。硝酸を添加しないで、同様に高圧噴射処理を行ったものを比較例3とした。測定結果を次の表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3に示す通り、硝酸を加えてpH4からpH2に調整した混合液を高圧噴射処理した本発明3の分散液のメジアン粒径は187nmとなった。比較例3として硝酸を加えずに高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は984nmとなった。本実施例によれば、比較例に対して1/5以下のメジアン粒径の分散液となることが判った。
【0071】
実施例4(セルロースの微粒化)
原料のセルロースはKCフロックW−100GK(日本製紙株式会社製)である。
本実施例では、イオン交換水に硝酸(または水酸化ナトリウム)を添加し、所定pHの水溶液とした。この水溶液50gにセルロース粉末2gを加えて撹拌し、さらに硝酸(または水酸化ナトリウム)を添加して再度所定のpHとし、希釈して、2質量%の原料濃度の混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を20回繰り返し、本発明4−1,本発明4−2の分散液を得た。硝酸や水酸化ナトリウムを添加しないで、同様に高圧噴射処理を行ったものを比較例4とした。測定結果を次の表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
表4に示す通り、硝酸を加えてpH7からpH2に調整した混合液を高圧噴射処理した本発明4−1の分散液のメジアン繊維径は19400nmとなった。また、水酸化ナトリウムを加えてpH7からpH12に調整した混合液を高圧噴射処理した本発明4−2の分散液のメジアン繊維径は18210nmとなった。比較例4として硝酸や水酸化ナトリウムを加えずに高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は23850nmとなった。本実施例によれば、比較例に対して約18%〜24%小さなメジアン繊維径の分散液となることが判った。
【0074】
実施例5(セルロースの微粒化)
原料のセルロースはKCフロックW−100GK(日本製紙株式会社製)である。
添加剤である高分子分散剤はDISPERBYK−199(BYK−Chemie 社製)である。
本実施例では、イオン交換水にセルロース粉末2gと、高分子分散剤0.66gを加えて撹拌し、希釈して、全体が100gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を10回繰り返し、本発明5の分散液を得た。高分子分散剤を添加しないで、同様に高圧噴射処理を行ったものを比較例5とした。測定結果を次の表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
表5に示す通り、高分子分散剤を加えて調整した混合液を高圧噴射処理した本発明5の分散液のメジアン繊維径は26102nmとなった。比較例5として分散剤を加えずに高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は32084nmとなった。本実施例によれば、比較例に対して約19%小さなメジアン繊維径の分散液となることが判った。また、本発明5の分散液の粘度は3500cpであり、比較例5の粘度1591cpの約2.2倍となった。メジアン繊維径が小さくなるほど分散液の粘度が高くなる性質があるので、この粘度が増大することからも良好な分散結果となっていることがわかる。
【0077】
本実施例によれば、凝集力の強い粒子間や濡れ性の乏しい粒子であっても、立体障害の作用をする高分子分散剤を加えてから高圧噴射分散処理を行うことで、高圧噴射により微粒化された粒子に立体障害の作用が働くので再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上することを裏付けている。
上記実施例では、高分子分散剤を用いた例で説明したが、これに限定されるものではなく、高分子分散剤に代えてイオン性界面活性剤を用いてもよい。イオン性界面活性剤の場合には、粒子に効果的に静電反発の作用が働くこととなる。
【0078】
実施例6(セルロースの微粒化)
原料のセルロースはKCフロックW−100GK(日本製紙株式会社製)である。
添加剤である高分子分散剤はDISPERBYK−199(ビックケミー社製)である。
本実施例では、イオン交換水にセルロース粉末2gと、高分子分散剤0.22gを加えて撹拌し、希釈して、全体が99.56gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を5回繰り返し、引き続き、高分子分散剤0.44gを加えて撹拌し、全体が100gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を5回繰り返し、本発明6の分散液を得た。すなわち、本発明6は、合計で、高圧噴射処理を10回行っていることとなる。測定結果を次の表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
表6に示す通り、高分子分散剤を最初に0.22g添加して5回高圧噴射処理した後に、高分子分散剤を0.44g添加して5回高圧噴射処理した本発明6の分散液のメジアン繊維径は19200nmとなった。上述の本発明5として高分子分散剤を最初に0.66g添加して10回高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は26102nmとなったので、本発明6によれば、本発明5に対して約26%小さなメジアン繊維径の分散液が得られたことになる。また、本発明6の分散液の粘度は4200cpであり、上述の本発明5の粘度3500cpの1.2倍となった。メジアン繊維径が小さくなるほど粘度が高くなる性質があるので、この粘度が増大することからも良好な分散結果となっていることがわかる。
【0081】
本実施例によれば、適時、必要な分だけ高分子分散剤を添加することができ、より効果的に粒子に静電反発または立体障害の作用が働くこととなる。
【0082】
実施例7(セルロースの微粒化)
原料のセルロースはKCフロックW−100GK(日本製紙株式会社製)である。
添加剤である高分子分散剤はDISPERBYK−199(BYK−Chemie 社製)である。
本実施例では、イオン交換水に高分子分散剤0.66gを加えて撹拌し、それを高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を5回繰り返し、そして引続き、イオン交換水にセルロース粉末2gと、さきほど微粒化した高分子分散剤を0.66g加えて撹拌し、希釈して、全体が100gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射し、その高圧噴射処理を10回繰り返し、本発明7の分散液を得た。測定結果を次の表7に示す。
【0083】
【表7】
【0084】
表7に示す通り、高分子分散剤を予め微粒化したものを0.66g添加して10回高圧噴射処理した本発明7の分散液のメジアン繊維径は23000nmとなった。上述の本発明5として高分子分散剤を最初に0.66g添加して10回高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は26102nmとなったので、本発明7によれば、本発明5に対して約12%小さなメジアン繊維径の分散液が得られたことになる。また、本発明7の分散液の粘度は4200cpであり、上述の本発明5の粘度3500cpの1.2倍となった。メジアン繊維径が小さくなるほど粘度が高くなる性質があるので、この粘度が増大することからも良好な分散結果となっていることがわかる。
【0085】
本実施例によれば、予め、高分子分散剤を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射し微粒化してから添加することで分散効果を示す最適な分子量領域での添加が容易となる。
【0086】
実施例8(カーボンナノチューブの微粒化)
原料のカーボンナノチューブは多層CNT(和光純薬工業株式会社製)である。
添加剤である高分子分散剤はDISPERBYK−199(BYK−Chemie 社製)である。
本実施例では、イオン交換水に多層CNT粉末0.5gを加えて撹拌し、それを高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を10回繰り返し、そして引続き、高分子分散剤を0.5g加えて撹拌し、希釈して、全体が50gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射し、その高圧噴射処理を20回繰り返し、本発明8−1の分散液を得た。
本実施例では、イオン交換水に多層CNT粉末0.5gと、高分子分散剤0.5gを加えて撹拌し、希釈して、全体が50gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから200MPaの圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を20回繰り返し、本発明8−2の分散液を得た。
本実施例では、イオン交換水に多層CNT粉末0.5gと、高分子分散剤0.17gを加えて撹拌し、希釈して、全体が49.67gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を10回繰り返し、引き続き、高分子分散剤0.33gを加えて撹拌し、全体が50gの混合液とし、前記混合液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射して微粒化し、その高圧噴射処理を10回繰り返し、本発明8−3の分散液を得た。すなわち、本発明8−3は、合計で、高圧噴射処理を20回行っていることとなる。そして、高分子分散剤を添加しないで、同様に高圧噴射処理を行ったものを比較例8とした。測定結果を次の表8に示す。
【0087】
【表8】
【0088】
表8に示す通り、原料を高圧噴射処理してから高分子分散剤を加えて調整した混合液を高圧噴射処理した本発明8−1の分散液のメジアン径は150nmとなった。また、高分子分散剤を最初に加えて調整した混合液を高圧噴射処理した本発明8−2の分散液のメジアン径は351nmとなった。そして、高分子分散剤を最初に適量加えて調整した混合液を高圧噴射処理し、引き続き、高分子分散剤を適量加えて調整した混合液を高圧噴射処理した本発明8−3の分散液のメジアン径は291nmとなった。比較例8として分散剤を加えずに高圧噴射処理した分散液のメジアン粒径は4808nmである。本発明8−1、本発明8−2、本発明8−3によれば、比較例8に対して1/10以下であるか、1/30以下の小さなメジアン径の分散液が得られたことになる。特に、本発明8−1が良好な結果となっており、このことは、ナノ粒子の凝集体に対して、高圧噴射処理することでナノ粒子全体の表面積を増大させて高分子分散剤の吸着面を増やすこととなり、立体障害の作用をする高分子分散剤を加えてから高圧噴射分散処理を行うことで、高圧噴射により微粒化されたナノ粒子に立体障害の作用が効率的に働くので再凝集が防止されるとともに分散安定性が向上することを裏付けている。
【0089】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。上述の酸化チタンの微粒化は一例であって、チタン酸バリウム、フェライト、アルミナ、シリカ、その他既知の金属酸化物微粒子の凝集体に適用できる。上述の多層CNTの微粒化は一例であって、CNT全般に対して有効である。高分子分散剤を用いた微粒化は、バイオマスナノファイバーの凝集体やCNTの凝集体のみならず、既知の金属酸化物微粒子の凝集体に適用できる。各種実施例は、適宜組み合わせて使用することが可能である。
【0090】
本発明は上述した実施例に限定されるものではない。例えば、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を、そのまま添加する場合と、微粒化してから添加する場合がある。例えば、前記微粒子に対して少なくとも静電反発または立体障害の作用をする添加剤を、原料液に加えて高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する場合と、原料液を高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射したものに加える場合と、原料液に加えて高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射したものに加えてさらに高圧噴射処理装置のチャンバーノズルから所定圧力で高圧噴射する場合がある。そして、段階的に前記添加剤を加えながら前記高圧噴射分散処理を行うことで、より効果的に粒子に静電反発または立体障害の作用が働くこととなる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
10 混合液、
20 分散液、
1a 微粒子の凝集体、
1b 微粒子、
40 チャンバー、
41 シングルノズルチャンバー、
100 高圧噴射処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10