【実施例】
【0023】
図1に示すように、多ステージプレス機10は、機台11に載せられ中央に上に開口する凹部12及びこの凹部12の底から下へ延びる第1中央穴13を有するロアプレート14と、このロアプレート14に載せられ第2中央穴15及び複数のピン穴16を有するロアホルダ17と、このロアホルダ17に載せられ第3中央穴18及び複数のリング収納穴19、19を有するベースプレート21と、このベースプレート21に載せられ複数のリング収納穴22、22及び成形凹部23、23を有するダイプレート24と、このダイプレート24を機台11に対して固定するダイホルダ25と、ダイプレート24に向かって下降するパンチ26、26とを備えている。
【0024】
ダイプレート24の成形凹部23と、パンチ26とで1つの成形型が構成される。多ステージプレス機10では、成形凹部23及びパンチ26が各々複数(多ステージ)であるため、一度に複数個の成形品51、51を得ることができる。
【0025】
ダイホルダ25は、機台11に連結されロアプレート14、ロアホルダ17、ベースプレート21及びダイプレート24を囲うホルダ本体27と、ダイプレート24に掛けるダイ掛止部材28と、このダイ掛止部材28をホルダ本体27に係止する係止部材29とからなる。係止部材29はボルトやクランパである。
【0026】
多ステージプレス機10は、更にノックアウト装置30を備えている。
ノックアウト装置30は、多ステージプレス機10の底部中央に設けられ昇降するピストン31と、このピストン31の上方にて凹部12に収納されピストン31で押し上げられるノックアウトプレート32と、このノックアウトプレート32から上に延びてピン穴16を貫通するノックアウトピン33と、このノックアウトピン33の上に配置されリング収納穴22を貫通して上に延びるノックアウトリング34と、ノックアウトプレート32が水平方向に振れないで昇降するように案内するガイド機構40とを備えている。
【0027】
ガイド機構40は、多ステージプレス機10の中央に収納され、ガイド機構40の要部は、第2中央穴15及び第3中央穴18に収納される。
【0028】
図2に示すように、ガイド機構40は、ノックアウトプレート32から上に延びるポスト41と、このポスト41に嵌合する筒状のブッシュ42と、このブッシュ42を支えるブッシュホルダ43と、ポスト41の上面を下方へ付勢する付勢部材44と、この付勢部材44を支えるキャップ部材45と、このキャップ部材45及びブッシュホルダ43を静止部材としてのロアプレート14に締結するボルト46、46とを備えている。付勢部材44は、圧縮コイルばねが好適であるが、トーションばね、ゴムブロックであってもよい。
【0029】
キャップ部材45は、上部中央に通孔47を有する。この通孔47は、ポスト41が上下する際に空気が出入りするエア通路の役割を果たすと共に鍛造時に使用する作動油を落下させてブッシュ42に注油する役割を果たす。
【0030】
図3に示すように、ブッシュホルダ43は、ブッシュ42を支えるブッシュ支持部48と、このブッシュ支持部48から下に延び、
図2に示すようにノックアウトプレート32の両側を通過する脚部49、49とを備えている。ブッシュ42はブッシュ支持部48に圧入されている。ブッシュ42が摩耗などにより寿命を迎えたときには、ブッシュホルダ43を単位にして交換する。
【0031】
ブッシュ42を引き抜いて、新しいブッシュ42を圧入するというブッシュ交換を現場で実施することは差し支えないが、交換時間が延びるため、生産計画に影響が出る。この点、本実施例のように、ブッシュホルダ43を単位にして交換するようにすると、交換時間がごく短くなり、生産性の低下を抑制することができる。
【0032】
図1にて、ダイプレート24に複数個(本例では2個)の素材を置き、パンチ26、26を下げることで成形品51、51を得る。
次に、
図4に示すように、ピストン31を上げ、このピストン31でノックアウトプレート32を上げる。すると、ノックアウトピン33が上がり、これらのノックアウトピン33によりノックアウトリング34、34が上がり、これらのノックアウトリング34、34により、成形品51、51がダイプレート24から上に外される。
【0033】
この際に、ノックアウトプレート32は、中央から上に延びるポスト41が、ブッシュ42で案内されるため、傾くことなく、水平状態を保ちつつ上下する。
上下に移動する点に着目すると、ピストン31、ノックアウトプレート32、ポスト41、ノックアウトピン33及びノックアウトリング34が、移動要素となる。
その他の機台11、ロアプレート14、ロアホルダ17、ベースプレート21、ダイプレート24、ノックアウトリング34、ダイホルダ25、ブッシュ42及びキャップ部材45等は、静止要素となる。
【0034】
そして、ガイド機構40は、ノックアウトプレート32の中央から延びるため、静止要素(ロアプレート14)に側面へ貫通する空洞部を設ける必要はなく、静止要素の剛性を維持することができる。加えて、ガイド機構40が筒状のブッシュ42とポスト41からなり、構成が極めて簡単である。
【0035】
また、
図2において、ブッシュホルダ43は、脚部49、49を備えているため、ブッシュ42を静止要素(ロアプレート14)から十分に上へ離した位置に配置することができる。ブッシュホルダ43が傾斜しようとするとポスト41に曲げモーメントが掛かり、この曲げモーメントがブッシュ42に加わる。曲げモーメントは、力と長さの積となるため、ポスト41を長くすればブッシュ42に加わる力が小さくなり、ブッシュ42の摩耗を低減することができる。
【0036】
図1に示すように、ポスト41は、ノックアウトプレート32が最下位置にあるときであっても、上端がブッシュ42から上に突出するように、長さが設定されている。すなわち、ブッシュ42の筒長さ全域にポスト41が常時接触するため、ブッシュ42に偏荷重が加わる心配が無く、面圧を下げることができる。面圧が下がるとブッシュ42の摩耗を低減することができると共にノックアウトプレート32及びノックアウトピン33の円滑な昇降が可能となる。
【0037】
次に、ノックアウトプレート32の構造を詳しく説明する。
図5に示すように、ノックアウトプレート32は、水平方向で中央に貫通穴52を有し、ポスト41は貫通穴52に嵌合され、ポスト41の一端面(下端面)がピストン31の端面(上端面)に当接するように、ピストン31が位置決めされ、且つピストン31の外径Dよりポスト41の外径dが小さく設定されている
【0038】
ピストン31の外径Dよりポスト41の外径dが小さく設定されているため、ピストン31の軸力を、ノックアウトプレート32に掛けることができ、ポスト41の下端面の摩耗を防止することができる。
【0039】
また、ポスト41はノックアウトプレート32に圧入されるため、ノックアウトプレート32とポスト41を異なる材料で構成することができる。例えば、ノックアウトプレート32を、ポスト41より硬度が高くすると、ノックアウトプレート32の摩耗を抑えることができる。
【0040】
さらには、ピストン31をポスト41に当てない構造としては、
図6(a)、(b)に示すように、ピストン31の上端面とポスト41の下端面との間に、所定の隙間cを確保する構造が推奨される。
図6(a)では、ポスト41の下端面をノックアウトプレート32の下面より上げる。
図6(b)では、ピストン31の上部に凹部53を設ける。
【0041】
次に、多ステージプレス機10の変更例を説明する。
図7に示す多ステージプレス機10Bは、
図4に示す多ステージプレス機10にサブガイド機構55、55を追加したものである。その他の要素は同一であるため、
図4の符号を流用し、詳細な説明は省略する。
サブガイド機構55は、ノックアウトプレート32に圧入した筒状のサブブッシュ56と、このサブブッシュ56を貫通して上下に延び一端がロアプレート14で支持され他端がロアホルダ17で支持されるサブポスト57とからなる。
【0042】
図1の構造では、ノックアウトプレート32がポスト41を中心に旋回する場合、この旋回はロアホルダ17とノックアウトピン33の嵌合で抑制される。この際にノックアウトピン33に僅かではあるが曲がる心配がある。
この点、
図7の構造であれば、サブガイド機構55、55がノックアウトプレート32の旋回を抑制するため、ノックアウトピン33が曲がる心配ない。
結果、より円滑にノックアウトプレート32及びノックアウトピン33を昇降させることができる。
【0043】
尚、ガイド機構40は、実施例では、ロアプレート14に着脱可能に取付けたが、ロアホルダ17に取り付けることも可能である。また、ロアプレート14、ロアホルダ17、ベースプレート21及びダイプレート24に分割し、これらを積層したが、分割の数を増減することは任意である。
【0044】
また、実施例では、成形品51とノックアウトピン33との間に、ノックアウトリング34を介在させたが、ノックアウトリング34を省いて、ノックアウトピン33で直接成形品51をノックアウトするようにしても良い。