【解決手段】ポリスチレン系樹脂発泡層の一方の面又は両面に、熱可塑性樹脂非発泡層が積層されてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、前記ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの密度(g/cm
であり、JIS K7161(1994)に準拠して測定される、押出方向(MD)及び幅方向(TD)の引っ張り伸び率が3.0〜8.0%、該引っ張り伸び率の(MD/TD)の比が0.80〜1.25であり、且つ、押出方向(MD)及び幅方向(TD)の引っ張り強度が100〜180Nである、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《ポリスチレン系樹脂積層発泡シート》
<物性>
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、単に積層発泡シートと呼ぶことがある。)は、ポリスチレン系樹脂を発泡させてなる発泡層と、該発泡層の一方の面又は両面に、熱可塑性樹脂からなる非発泡層とを備えてなる積層発泡シートである。
【0014】
前記積層発泡シートの密度(g/cm
3)は0.20超0.70以下の範囲であり、0.30〜0.60が好ましく、0.40〜0.55がより好ましく、0.45〜0.50がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、容器の耐衝撃性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、容器の軽量性をより向上させることができる。
即ち、上記範囲であると、容器の耐衝撃性及び軽量性のバランスを取ることができる。
【0015】
前記積層発泡シートの1m
2当たりの重量である坪量は420〜700g/m
2であり、450〜650g/m
2が好ましく、480〜600g/m
2がより好ましく、500〜580g/m
2がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、容器の耐衝撃性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、容器の軽量性をより向上させることができる。
即ち、上記範囲であると、容器の耐衝撃性及び軽量性のバランスを取ることができる。
【0016】
前記積層発泡シートは、JIS K7161(1994)に準拠した引っ張り試験において、以下の引張特性を有する。
前記積層発泡シートの押出方向(MD)及び幅方向(TD)の引っ張り伸び率が3.0〜8.0%、且つ、該引っ張り伸び率の(MD/TD)の比が0.80〜1.25であり、さらに、前記押出方向(MD)及び幅方向(TD)の引っ張り強度が100〜180Nである。
上記の引張特性を有すると、容器の耐衝撃性を従来よりも向上させることができる。
【0017】
前記積層発泡シートの押出方向(MD)及び幅方向(TD)の引っ張り伸び率は、4.0〜8.0%が好ましく、4.5〜8.0%がより好ましい。
前記押出方向(MD)及び幅方向(TD)の引っ張り強度は、100〜170Nが好ましく、100〜150Nがより好ましく、110〜140Nがさらに好ましい。
上記の引張特性を有すると、容器の耐衝撃性を更に向上させることができる。
【0018】
前記積層発泡シートを125℃中に150秒間、平台の上に平らに載置した状態で静置する加熱試験を行った場合、その変形が下記の範囲内であることが好ましい。
【0019】
前記積層発泡シートの押出方向の所定の2点間について、その加熱前の長さ(MD1)と加熱後の長さ(MD2)の比(MD2/MD1)が0.80〜1.00であり、
前記積層発泡シートの幅方向の所定の2点間について、その加熱前の長さ(TD1)と加熱後の長さ(TD2)の比(TD2/TD1)が0.80〜1.00であり、
且つ、前記加熱前の長さ(MD1)と(TD1)を同じ長さに設定して前記加熱試験を行った場合の、前記加熱後の長さの比(MD2/TD2)が0.90〜1.10であることが好ましい。
前記加熱試験後の変形が上記範囲であると、加熱成形により容器を製造する際に皺や破断が生じ難くなり、成形性をより向上させることができる。
【0020】
ここで、前記加熱後の長さの比(MD2/TD2)は、前記加熱前の長さ(MD1)と(TD1)が等しいという前提があるため、{(MD2)/(MD1)}/{(TD2)/(TD1)}と同義である。
【0021】
前記比(MD2/MD1)は、0.80〜1.00が好ましく、0.80〜0.90がより好ましく、0.80〜0.85がさらに好ましい。
前記比(TD2/TD1)は、0.80〜0.95が好ましく、0.80〜0.90がより好ましく、0.80〜0.85がさらに好ましい。
前記比(MD2/TD2)は、0.95〜1.10が好ましく、0.95〜1.06がより好ましく、0.98〜1.04がさらに好ましい。
前記加熱試験後の変形が上記範囲であると、加熱成形により容器を製造する際に皺や破断が生じ難くなり、成形性をより一層向上させることができる。
【0022】
前記加熱試験の具体的な方法として、次の方法が適用できる。まず、前記積層発泡シートから一辺が10cmの平面正方形状の試験片を5個、各辺が前記積層発泡シートの押出方向(MD方向)又は幅方向(TD方向)に平行な状態となるように切り出す。
しかる後、各試験片の積層発泡シート層上に、互いに対向する辺の中央部同士を結ぶ直線を二本、十字状に描く。次に、各試験片を125℃、湿度調整無しのオーブン中の平台に静置して、150秒間加熱した後、オーブンから取り出して室温にて冷却後、加熱前に描いた各方向の直線の長さを測定し、各試験片の測定長の相加平均値を加熱後の長さMD2、TD2とする。このようにして、前記加熱前後の長さ、MD1,2、TD1,2を測定できる。
【0023】
前記積層発泡シートの厚みは、その用途等を勘案して決定され、例えば、食品用途の容器、特に深絞り容器に用いる場合には、前記積層発泡シートの全体の坪量が、前述した範囲にあることが好ましい。
【0024】
前記積層発泡シートを構成する、前記発泡層の厚みW1と前記非発泡層の厚みW2の厚み比(W1/W2)は、特に制限されないが、成形体及び容器の軽量性及び耐衝撃性をバランスよく向上させる観点から、1.0〜8.0が好ましく、2.0〜7.0がより好ましく、3.0〜6.0がさらに好ましく、4.0〜5.0が特に好ましい。
【0025】
ここまで説明したように、前記積層発泡シートの各物性を上記の様に調整することにより、皺や割れの無い、軽量でありながら耐衝撃性に優れる容器を成形することができる。さらに、この容器を深絞り容器として成形することができる。一般に、深絞り容器の成形は、浅い容器の成形よりも難しく、熱成形による絞り加工時に皺や割れが発生し易く、成形された容器の耐衝撃性も劣り易くなるが、本発明の前記積層発泡シートにおいては上記の様に各物性を調整しているので、これらの問題を生じずに、軽量性及び耐衝撃性に優れた深絞り容器を成形することができる。勿論、深絞り容器に限らず、浅い容器も容易に成形することができる。
【0026】
前記積層発泡シートにおいて、ポリスチレン系樹脂発泡層(発泡層)の一方の面にのみ熱可塑性樹脂非発泡層(ソリッド層)が積層されていてもよいし、前記発泡層の両面に前記非発泡層が積層されていてもよい。
【0027】
本発明の成形体及び容器の構造的強度を高める観点からすると、前記発泡層の両面に前記非発泡層を備えることが好ましい。一方、本発明の成形体及び容器を軽量化する観点からすると、前記発泡層の片面にのみ前記非発泡層を備えた構成の方が好ましい。本発明においては、前記発泡層の片面にのみ前記非発泡層が備えられた場合においても、充分な耐衝撃性を有する。
【0028】
<ポリスチレン系樹脂発泡層(発泡層)>
(ポリスチレン系樹脂)
前記発泡層を構成するポリスチレン系樹脂は、特に制限されず、例えば、スチレン系単量体の単独重合体または共重合体等が挙げられる。また、ポリスチレン系樹脂として、スチレン系単量体と、該スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体とを共重合させた、スチレン系単量体を主成分とする共重合体を用いてもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレンに基づく構成単位を全構成単位に対して50質量%以上有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0029】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
スチレン系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性単量体;等が挙げられる。
ビニル系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
また、前記ポリスチレン系樹脂には、ジエン系のゴム状重合体(ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体等)がポリスチレンにグラフト重合されたゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレン(HIPS)や、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等も含まれる。
【0032】
前記発泡層においては、ポリスチレン系樹脂が主成分である範囲で、ポリスチレン系樹脂に他の樹脂を配合してもよい。ここで、ポリスチレン系樹脂が主成分であるとは、前記発泡層の全樹脂成分(100質量%)に対する前記ポリスチレン系樹脂の割合が50質量%以上であることを意味する。
【0033】
前記「他の樹脂」としては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体、及びオレフィン系モノマーを主成分とし、オレフィン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体等のポリオレフィン系樹脂や、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体等が挙げられる。
これらの他の樹脂の配合量は、前記ポリスチレン系樹脂100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、0質量部でもよい。上記上限値以下であれば、得られる発泡層が軟弱にならず、成形された容器の耐衝撃性を損なう恐れが少ない。
【0034】
また、前記「他の樹脂」として、スチレン構成単位を有さないゴム状重合体を使用してもよい。前記ゴム状重合体として、天然ゴムであってもよいし、合成ゴムであってもよい。例えば、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ハイパロン、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムが挙げられる。これらのゴム状重合体は、前述のゴム分含有率を満たす範囲で使用することができる。
【0035】
また、前記「他の樹脂」としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いてもよい。前記ポリスチレン系樹脂にポリフェニレンエーテル系樹脂を配合することで、前記ポリスチレン系樹脂を単独で用いる場合に比べて、より靱性に優れ、割れにくく、強度に優れ、さらに耐熱性にも優れた発泡層となる場合がある。
前記ポリスチレン系樹脂に前記ポリフェニレンエーテル系樹脂を配合する場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂の割合は、全樹脂成分(100質量%)に対して、5質量%以上50質量%未満が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0036】
前記ポリスチレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記「他の樹脂」は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で製造したポリスチレン系樹脂、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる他、使用済みの発泡板、ポリスチレン系樹脂発泡成形体(食品包装用トレー等)等を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。該リサイクル原料としては、使用済みの発泡板、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料を用いることができる。
【0038】
(ゴム分)
前記発泡層の総質量(100質量%)に対して、該発泡層に含有されるゴム分(ゴム)は1.0〜10.0質量%の範囲で含有されることが好ましい。
前記ゴム分の含有率の範囲は、1.5〜9.6質量%が好ましく、2.0〜7.0質量%がより好ましく、2.5〜6.0質量%がさらに好ましく、3.0〜5.0質量%が特に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、耐衝撃性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、成形性をより向上させることができる。
【0039】
前記ゴムは、高分子重合体からなる弾性を有する成分であり、天然ゴムであってもよいし、合成ゴムであってもよい。
【0040】
前記発泡層のゴム分としては、前記ポリスチレン系樹脂として用いられるHIPS由来のゴム分、又は、前記ポリスチレン系樹脂とは別に配合されたジエン系のゴム状重合体に由来するゴム分(ゴム)が好ましい。
【0041】
また、前記ポリスチレン系樹脂とは別に配合されるゴム状重合体として、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ハイパロン、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0042】
(任意成分)
前記発泡層には、任意成分として、発泡核剤、造核剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。
前記添加剤の種類や添加量は、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの用途に応じて適宜決定される。
前記添加剤は、1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
(発泡層の厚み)
前記発泡層の厚みは、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの用途等を勘案して決定され、例えば、食品用途の容器、特に深絞り容器に用いる場合には、坪量が150〜1000g/m
2となる厚みが好ましく、200〜800g/m
2となる厚みがより好ましく、300〜700g/m
2となる厚みがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、成形体及び容器の耐衝撃性をより向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、成形体及び容器の軽量性をより向上させることができる。即ち、上記範囲であると、成形体の耐衝撃性及び軽量性のバランスを取ることができる。
【0044】
(発泡倍率)
前記発泡層の発泡倍率は、特に制限されず、発泡層の強度を維持しつつ軽量化する観点から、例えば、1.5〜5.0倍が好ましく、1.7〜4.5倍がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、成形体及び容器の耐衝撃性をより向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、成形体及び容器の軽量性をより向上させることができる。即ち、上記範囲であると、成形体の耐衝撃性及び軽量性のバランスを取ることができる。
【0045】
<熱可塑性樹脂非発泡層(ソリッド層)>
(熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂非発泡層(以下、単にソリッド層と呼ぶことがある。)を構成する熱可塑性樹脂は、特に制限されず、例えば、前記発泡層の材料樹脂として例示した前記ポリスチレン系樹脂、前記「他の樹脂」等が挙げられる。これらのうち、前記ソリッド層の前記発泡層に対する親和性及び吸着性を高めて、両層の物理化学的特性を調和させることにより、成形体及び容器の成形性及び耐衝撃性を向上させる観点から、前記ソリッド層は、前記ポリスチレン系樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで、ポリスチレン系樹脂が主成分であるとは、前記ソリッド層の全樹脂成分(100質量%)に対する前記ポリスチレン系樹脂の割合が50質量%以上であることを意味する。
【0046】
前記ポリスチレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記「他の樹脂」は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(ゴム分)
前記ソリッド層の総質量(100質量%)に対して、該ソリッド層に含有されるゴム分(ゴム)は2.0〜15.0質量%の範囲で含有されることが好ましい。
前記ゴム分の含有率の範囲は、2.3〜14.0質量%がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、成形体及び容器の耐衝撃性をより向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、成形体及び容器の成形性をより向上させることができる。
【0048】
前記ソリッド層のゴム分の種類は、前記発泡層と同じゴム分であってもよいし、異なるゴム分であってもよい。前記ソリッド層のゴム分は、前記ポリスチレン系樹脂として用いられるHIPS由来のゴム分、又は、前記ポリスチレン系樹脂とは別に配合されたジエン系のゴム状重合体に由来するゴム分であることが好ましい。
【0049】
(任意成分)
前記ソリッド層には、任意成分として、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。
前記添加剤として、実際には発泡しないダミーの発泡剤を添加してもよい。ダミーを添加することにより、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造時におけるソリッド層用の樹脂組成物の粘度を、発泡層の粘度に合わせて調整することができる。
前記添加剤の種類や添加量は、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの用途に応じて適宜決定される。
前記添加剤は、1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
(厚み)
前記ソリッド層の厚みは、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの用途等を勘案して決定され、例えば、食品用途の容器、特に深絞り容器に用いる場合には、坪量が40〜300g/m
2となる厚みが好ましく、70〜250g/m
2となる厚みがより好ましく、100〜200g/m
2となる厚みがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、成形体及び容器の耐衝撃性をより向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、成形体及び容器の軽量性をより向上させることができる。即ち、上記範囲であると、成形体及び容器の耐衝撃性及び軽量性のバランスを取ることができる。
【0051】
以上で説明したソリッド層は、前記発泡層の片面にのみ積層されていてもよいし、前記発泡層の両面に積層されていてもよい。両面に積層されている場合、前記発泡層の一方の面に積層された第一ソリッド層と、前記発泡層の他方の面に積層された第二ソリッド層とは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
<ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法>
前記発泡層の少なくとも一面に前記ソリッド層が積層された積層発泡シートを製造する方法は、特に制限されず、公知方法が適用できる。例えば、下記(1)〜(4)の方法が挙げられる。
[1]前記発泡層用の樹脂及び発泡剤を第一押出機に供給する一方、前記ソリッド層用の樹脂を第二押出機に供給し、第一押出機及び第二押出機を共に接続させている共押出金型に供給し共押出することによって、前記発泡層の少なくとも一面に前記ソリッド層を積層して一体化させる方法、
[2]押出機から押出された前記ソリッド層を冷却する前に、別途製造した前記発泡層上に直接、積層して一体化させる方法、
[3]前記発泡層と、前記ソリッド層をそれぞれ予め作製しておき、これとは別に押出機から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂(前記ソリッド層を構成する熱可塑性樹脂であることが好ましい。)を前記発泡層上に供給し、この熱可塑性樹脂をバインダーとして前記ソリッド層を前記発泡層上に積層して一体化させる方法、
[4]前記発泡層と、前記ソリッド層をそれぞれ予め作製しておき、前記ソリッド層を加熱しながら前記発泡層上に圧着して、前記発泡層上に前記ソリッド層を積層して一体化させる方法、などが挙げられる。
なお、前記発泡層及び前記ソリッド層の厚みは公知の方法で調整すればよい。
【0053】
前記ソリッド層の少なくとも一面に印刷を施す場合には、前記積層発泡シートを製造した後に、当該ソリッド層に印刷を施す方法の他に、上記[3][4]の製造方法においては、前記ソリッド層の少なくとも一面に印刷を施した後で、前記発泡層上に積層して一体化させてもよい。なお、前記発泡層の少なくとも一面に印刷を施す場合には、前記ソリッド層に印刷を施す方法と同様に行うことができる。
【0054】
<成形体、容器>
本発明の成形体は、上述した本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを成形してなるものである。成形方法は特に制限されないが、熱成形(加熱加工)が好ましい。
前記成形体としては、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器、冷菓食品用の深絞り容器等の種々の容器、又は容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。これらの容器は、前記積層発泡シートによって構成されているため、発泡容器と呼ぶことができる。当該容器の用途としては、食品用途が好ましい。
【0055】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートは成形性に優れるため、深絞り容器を熱成形することができる。この際、皺や割れ(破断)を起こさずに、軽量化した薄い厚みを有する深絞り容器にすることができる。
【0056】
ここで、「深絞り容器」とは、[容器底面の最も深い部位の深さ]/[容器の口径(直径)]で表される絞り比(最深部の深さ÷口径)が0.9以上である容器を意味する。容器の口径は、容器の開口部に内接する円の直径であり、容器の最深部の深さは、容器の開口部の擦り切り面から底面の最深部までの距離であると定義することができる。
【0057】
前記深絞り容器の前記絞り比は、0.9〜1.8であることが好ましい。該絞り比が1.8以下であることにより、当該深絞り容器の成形性及び耐衝撃性をより確実に維持することができる。
【0058】
前記成形体の平均厚みは、用途等を勘案して決定され、例えば、500μm〜5000μmが好ましく、700μm〜2000μmがより好ましく、900μm〜1500μmがさらに好ましい。
上記範囲であると、成形体及び容器の軽量化と耐衝撃性の向上とをバランスよく両立することができる。
【0059】
前記成形体の全体密度は、用途等を勘案して決定され、前記積層発泡シートの全体密度と同様である。
【0060】
前記積層発泡シートが、前記発泡層の片面にのみ前記ソリッド層が積層された2層型のシートである場合、前記ソリッド層は、容器の内壁面を形成してもよいし、容器の外壁面を形成してもよいが、容器の内壁面を形成することが好ましい。前記ソリッド層が容器の内壁面を形成することにより、成形時に破断や皺が生じ難くなり、成形された容器の耐衝撃性を向上できるとともに、容器内壁面の水分不透過性を向上できるため、食品用の容器として好適となる。
【0061】
前記積層発泡シートによって構成される容器の側壁のテーパー角度は、特に制限されないが、例えば0〜10°の範囲にすることができる。
ここで、「テーパー角度」は、容器の口径を構成する水平面(容器開口部の擦り切り面)に対して、容器側面が成す角度(勾配角度)の2倍に相当する角度である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されない。
【0063】
[実施例1]
<ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(積層発泡シート)の作成>
発泡層用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンA,B,Cである、ポリスチレンGPPS樹脂(東洋スチレン社製「HRM12N」)30質量%、ポリスチレンGPPS樹脂(DIC社製「HP−250」)40質量%、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「H350」)30質量%、を含む混合樹脂組成物100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク2.5質量部を混合し、発泡層内のゴム分含有率が1.5質量%となるように調製した。得られた混合原料を、内径90mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が連結されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)0.98質量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を166℃に調整して、150kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0064】
非発泡層(ソリッド層)用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンB,Cである、ポリスチレンGPPS樹脂(DIC社製「HP−250」)55質量%と、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「H350」)45質量%を混合し、ソリッド層内のゴム分含有率を2.3質量%となるように調製した。得られた混合物を、内径120mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)0.84質量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を190℃に調整して、38kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0065】
合流金型で合流された上記2種の樹脂を、口径280mmの環状金型に注入し、厚み0.6mmのスリットより円筒状の積層発泡材として押出し、口径670mmの冷却用マンドレルに沿わせて2.95m/minの速度で引き取り、マンドレル後部に取り付けた2枚のカッターで円筒状の積層発泡材を切開して、上下に切り分けられた2枚の積層発泡シートを得た。スリットから出た直後の積層発泡シートの内および外にエアーを吹付けて積層発泡シート表面を冷却した。得られた積層発泡シートは、発泡シートの片面にソリッド層が積層された2層構造のシートであった。
【0066】
得られた積層発泡シートの<坪量>、<厚み>、<平均密度>、<引っ張り伸び率>、<引っ張り強度>、<加熱変形>、<成形性>、<耐落下衝撃性>の各測定、評価を下記の方法、条件で実施した。
【0067】
<坪量の測定>
・全体坪量:積層発泡シートの幅方向に等間隔に8点以上、10cm×10cmに切り取り、各切片の質量を測定し、この値を相加平均によって平均坪量を求めた。
・発泡層とソリッド層の坪量:上記で測定された全体坪量と、発泡層及びソリッド層の各々の押出吐出量の比率から、各層の坪量を計算した。
【0068】
<厚みの測定>
積層発泡シートの幅方向の両端20mmを除いた部分を、幅方向に等間隔9点以上について、ダイヤルシックネスゲージSM−112(テクロック社製)を使用して厚みを測定し、この値を相加平均によって平均厚みを求めた。
【0069】
<シートの平均密度の測定>
積層発泡シートの全体坪量と厚みから、以下の計算式にて算出した。
シートの平均密度(g/cm
3)=全体坪量(g/m
2)÷厚み(mm)÷1000
【0070】
<ゴム分の含有率の算出>
・発泡層のゴム分含有率;スライサー(フォーチュナ社(ドイツ)製スプリッティングマシン、型式AB−320−D)を使用して、積層発泡シートの発泡層側の表面から0.5mmの厚みにスライスした試験片を試料として、前述のゴム分含有率の測定方法により試験片のゴム分含有率を測定した。
・ソリッド層のゴム分含有率;上記スライサーを使用して、積層発泡シートのソリッド層側の表面から0.05mmの厚みにスライスした試験片を試料として、前述のゴム分含有率の測定方法により試験片のゴム分含有率を測定した。
【0071】
得られた積層発泡シートを上記方法で測定したところ、全体坪量が500g/m
2(発泡層の坪量=400g/m
2、ソリッド層の坪量=100g/m
2)、厚みが1.05mm、ソリッド層のゴム分含有率/発泡層のゴム分含有率=2.3/1.5、シート平均密度は0.48g/cm
3であった。これらの結果を表1に示す。
【0072】
<引っ張り伸び率及び強度>
得られた積層発泡シートについて、JIS K7161(1994)に準拠して、その引っ張り伸び率、及び引っ張り強度を以下のように測定した。
試験片については、MD方向、TD方向ともに、JIS K7127記載のタイプ5の型を用いて、積層発泡シートのTD方向に沿って、シート両端50mmを除いた等間隔の5箇所より切り抜き、テンシロン万能試験機 UCT−10T(オリエンテック社製)を用い、つかみ間距離を80mmに設定し、引張速度500mm/minで測定した。この時の引っ張り伸び率は、試験片が破断したときの伸びの平均値(単位:%)とし、引っ張り強度は最大引張荷重の平均値を引張強度(単位:N)、とした。
【0073】
<加熱試験>
得られた積層発泡シートを125℃中に150秒間静置する加熱試験を行った。その加熱前後の当該シートの2点間の距離を以下のように測定した。
積層発泡シートから一辺が10cmの平面正方形状の試験片を5個、各辺が前記積層発泡シートの押出方向(MD方向)又は幅方向(TD方向)に平行な状態となるように切り出す。このとき、加熱前の長さはMD1、TD1は10cmとなる。
しかる後、各試験片の積層発泡シート層上に、互いに対向する辺の中央部同士を結ぶ直線を二本、十字状に描く。次に、各試験片を125℃、湿度調整無しのオーブン中の平台に静置して、150秒間加熱した後、オーブンから取り出して室温にて冷却後、加熱前に描いた各方向の直線の長さを測定し、各試験片の測定長の相加平均値を加熱後の長さとする。
得られた加熱後の長さMD2、TD2と、加熱前の長さMD1、TD1から、押出方向の加熱前の長さ(MD1)と加熱後の長さ(MD2)の比(MD2/MD1)、幅方向の加熱前の長さ(TD1)と加熱後の長さ(TD2)の比(TD2/TD1)を算出した。
その結果を表1に示す。
【0074】
<容器の作成>
得られた積層発泡シートを用い、そのソリッド層が容器の内側になるように成形を行なった。成形条件は、炉内雰囲気温度155〜175℃、成形時間15〜18秒で加熱した後、直径75mm×深さ75mmの丸型容器製造用の金型を使用して熱成形を行った。ここで成形した容器は深絞り容器であり、そのテーパー角度は2°であった。
【0075】
<成形性評価>
○:きれいな成形品が得られた。
△:成形品に皺(シワ)が確認された。もしくは局部的に極端に厚みが薄かった。
×:成形品が得られなかった。
【0076】
<容器の落下衝撃試験>
得られた容器に75gの水を入れ、シールを行って密封したものを10個作成し、テストサンプルとした。これを高さ100cmからコンクリート床面に容器底面が下となるよう自由落下させた。
落下衝突後、容器から水が漏れなかったものを合格、漏れたものを不合格とし、合格した個数をカウントした。その結果を以下のように評価した。
【0077】
<耐落下衝撃性評価>
○:8個以上が合格であった。
×:7個以下が不合格であった。
【0078】
[実施例2]
発泡層用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンB,Cである、ポリスチレンGPPS樹脂(DIC社製「HP−250」)40質量%、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「H350」)60質量%、を含む混合樹脂組成物100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク3.0質量部を混合し、発泡層内のゴム分含有率が3.0質量%となるように調製した。得られた混合原料を、内径90mmの第一押出機と、内径150mmの第二押出機が連結されたタンデム押出機の第一押出機のホッパーに供給した。押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)0.70質量部を圧入、混練して、第二押出機にて発泡性溶融混合物を冷却し、樹脂温度を167℃に調整して、160kg/hrの押出量で合流金型に流入した。
【0079】
非発泡層(ソリッド層)用の樹脂として、表1のポリスチレンCである、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「H350」)100質量%を使用し、ソリッド層内のゴム分含有率を5.0%とした。この樹脂を、内径120mmの単軸押出機のホッパーに供給し、押出機のシリンダー温度は最高230℃とし、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30)0.92質量部を圧入、混練、冷却して、発泡性溶融混合物の樹脂温度を190℃に調整して、40kg/hrの押出量で合流金型に流入した。発泡層/ソリッド層の坪量(g/m
2)が400/100となるようにした。
【0080】
合流金型で合流された上記2種の樹脂を、口径215mmの環状金型に注入し、厚み0.7mmのスリットより円筒状の積層発泡材として押出し、口径553mmの冷却用マンドレルに沿わせて、3.8m/minの速度で引き取った。これ以外は実施例1と同様に行い、積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートは、発泡層の片面にソリッド層が積層された2層構造のシートであった。
【0081】
得られた積層発泡シートは、全体坪量が500g/m
2(発泡層の坪量400g/m
2、ソリッド層の坪量=100g/m
2)、厚みが0.95mm、ソリッド層のゴム分含有率/発泡層のゴム分含有率=5.0/3.0シート平均密度は0.53g/cm
3であった。
【0082】
得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に引っ張り試験及び加熱試験を行った。その結果を表1に示す。
また、得られた積層発泡シートを使用して、実施例1と同様に容器サンプルを作成し、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
[実施例3]
発泡層用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンB,C,Eである、ポリスチレンGPPS樹脂(DIC社製「HP−250」)40質量%、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「H350」)27質量%、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「EX−7」)33質量%、を含む混合樹脂組成物を使用し、発泡層内のゴム分含有率が5.0質量%となるように調製した以外は実施例2と同様に行い、積層発泡シートを得た。
【0084】
得られた積層発泡シートは、全体坪量が500g/m
2(発泡層の坪量400g/m
2、ソリッド層の坪量=100g/m
2)、厚みが1.05mm、ソリッド層のゴム分含有率/発泡層のゴム分含有率=5.0/5.0、シート平均密度は0.48g/cm
3であった。
【0085】
得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に引っ張り試験及び加熱試験を行った。その結果を表1に示す。
また、得られた積層発泡シートを使用して、実施例1と同様に容器サンプルを作成し、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0086】
[比較例1]
発泡層用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンC,Dである、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「H350」)18質量%、ポリスチレンGPPS樹脂(東洋スチレン社製「HRM10N」)82質量%、を含む混合樹脂組成物100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク2.3質量部を混合し、発泡層内のゴム分含有率が0.9質量%となるように調製した。また、非発泡層(ソリッド層)用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンF,Gである、ポリスチレンGPPS樹脂(東洋スチレン社製「G200C」)55質量%、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「E640N」)45質量%、を含む混合樹脂組成物を調製し、ソリッド層内のゴム分含有率を2.7%とした。これらの変更以外は実施例1と同様に行い、積層発泡シートを得た。
【0087】
得られた積層発泡シートは、全体坪量が480g/m
2(発泡層/ソリッド層の各層の坪量は、順に、400/80)、厚みが1.00mm、ソリッド層のゴム分含有率/発泡層のゴム分含有率=2.7/0.9、シート平均密度は0.48g/cm
3であった。また、得られた積層発泡シートを使用して、実施例1と同様に容器サンプルを作成し、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0088】
得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に引っ張り試験及び加熱試験を行った。その結果を表1に示す。
また、得られた積層発泡シートを使用して、実施例1と同様に容器サンプルを作成し、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
[比較例2]
非発泡層(ソリッド層)用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンB,Cである、ポリスチレンGPPS樹脂(DIC社製「HP−250」)50質量%、ポリスチレンHIPS樹脂(東洋スチレン社製「H350」)50質量%、を混合した混合樹脂組成物を調製し、ソリッド層内のゴム分含有率を2.5%とした。更に、60kg/hrの押出量で合流金型に流入した。これらを変更した以外は実施例2と同様に行い、積層発泡シートを得た。
【0090】
得られた積層発泡シートは、全体坪量が500g/m
2(発泡層/非発泡層の各層の坪量は、順に、400/100)、厚みが0.95mm、非発泡層のゴム分含有率/発泡層のゴム分含有率=2.5/3.0、シート平均密度は0.53g/cm
3であった。
【0091】
得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に引っ張り試験及び加熱試験を行った。その結果を表1に示す。
また、得られた積層発泡シートを使用して、実施例1と同様に容器サンプルを作成し、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
[比較例3]
発泡層用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンA,SBSである、ポリスチレンGPPS樹脂(東洋スチレン社製「HRM12N」)80質量%、ポリブタジエン−ポリスチレン共重合体樹脂(旭化成工業社製「タフプレン125A」)20質量%、を含む混合樹脂組成物100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク7.5質量部を混合し、発泡層内のゴム分含有率が12.0質量%となるように調製した。また、非発泡層(ソリッド層)用の樹脂組成物として、表1のポリスチレンA,SBSである、ポリスチレンGPPS樹脂(東洋スチレン社製「HRM12N」)95質量%、ポリブタジエン−ポリスチレン共重合体樹脂(旭化成工業社製「タフプレン125A」)5質量%、を含む混合樹脂組成物を調製し、ソリッド層内のゴム分含有率を3%とした。これら以外は実施例1と同様に行い、積層発泡シートを得た。
【0093】
得られた積層発泡シートは、全体坪量が500g/m
2(発泡層/ソリッド層の各層の坪量は、順に、400/100)、厚みが0.95mm、ソリッド層のゴム分含有率/発泡層のゴム分含有率=3.0/12.0、シート平均密度は0.53g/cm
3であった。
【0094】
得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に引っ張り試験及び加熱試験を行った。その結果を表1に示す。
また、得られた積層発泡シートを使用して、実施例1と同様に容器サンプルを作成し、その評価を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1の結果から、引っ張り伸び率及び引っ張り強度等が前述したように調整された実施例1〜3の積層発泡シートからなる深絞り容器は、同じ形状で成形された比較例1〜3の容器よりも、成形性及び耐衝撃性に優れていることが確認された。
また、実施例1〜3は、発泡層の片面にのみ非発泡層が形成された2層型の積層発泡シートを材料として使用した容器であり、従来の3層型(非発泡層/発泡層/非発泡層)のシートを材料とした容器よりも軽量化されていることは明らかである。
また、実施例1〜3の2層型の積層発泡シートにおいては、発泡層の厚み(坪量)が非発泡層の厚み(坪量)の約4倍以上であるため、充分に軽量化されている。
【0097】
なお、比較例1は、幅方向(TD)の引っ張り伸び率が規定外であるため、評価が劣っている。比較例2は、引っ張り伸び率の(MD/TD)の比が規定外であるため、評価が劣っている。比較例3は、押出方向(MD)の引っ張り伸び率、及び幅方向(TD)の引っ張り強度が規定外であるため、評価が劣っている。
【0098】
実施例及び比較例において使用した熱可塑性樹脂のゴム分含有率を後述する方法で測定し、以下の結果を得た。なお、以下のゴム分含有率の測定単位(%)は特に明記しない限り、質量基準(質量%)である。
<汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)>
東洋スチレン社製GPPS:商品名「HRM12N」のゴム分含有率=0%
東洋スチレン社製GPPS:商品名「HRM10N」のゴム分含有率=0%
東洋スチレン社製GPPS:商品名「G200C」のゴム分含有率=0%
DIC社製GPPS:商品名「HP−250」のゴム分含有率=0%
【0099】
<対衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)>
PSジャパン社製HIPS:商品名「E640N」のゴム分含有率=6.0%
PSジャパン社製HIPS:商品名「H350」のゴム分含有率=5.0%
PSジャパン社製HIPS:商品名「EX−7」のゴム分含有率=11.0%
【0100】
<ブタジエン−スチレン共重合体>
旭化成工業社製ブタジエン−スチレン共重合体:商品名「タフプレンA」のゴム分含有率=60%
【0101】
表1のポリスチレンA〜E及びSBSは、以下の通りである。
ポリスチレンA:商品名「HRM12N」のゴム分含有率=0%
ポリスチレンB:商品名「HP−250」のゴム分含有率=0%
ポリスチレンC:商品名「H350」のゴム分含有率=5.0%
ポリスチレンD:商品名「HRM10N」のゴム分含有率=0%
ポリスチレンE:商品名「EX−7」のゴム分含有率=11.0%
ポリスチレンF:商品名「G200C」のゴム分含有率=0%
ポリスチレンG:商品名「E640N」のゴム分含有率=6.0%
SBS:商品名「タフプレン125A」のゴム分含有率=60%
【0102】
<ゴム分含有率の測定>
試料を0.1〜0.5mg精秤し、キューリー点が590℃の強磁性金属体(パイロホイル;日本分析工業社製)に圧着するように包み、キューリーポイントパイロライザーJPS−700型装置(日本分析工業社製)にて分解させて生成したブタジエンモノマーと4-ビニルシクロヘキサンをガスクロマトグラフGC7820(アジレント・テクノロジー社製)(検出器:FID)を用いて測定し、合計ピーク面積を使用して予め準備した絶対検量線に基づき、試料中のゴム分含有率を算出した。
【0103】
(測定条件)
・加熱:590℃、5sec
・オーブン温度:300℃
・ニードル温度:300℃
・カラム:Inter Cap5(φ0.25mm×30m、膜厚0.25μm)、ジーエルサイエンス社製
【0104】
(カラム温度条件)
・温度条件:50℃で0.5分保持後、200℃まで10℃/分で昇温し、さらに320℃まで20℃/分で昇温し、320℃にて0.5分保持
・キャリアーガス:He
・He流量:25ml/分
・注入口圧力:100KPa
・注入口温度:300℃
・検出器温度:300℃
・スプリット比:1/30
【0105】
検量線作成用標準試料として、POLYSCIENCES.INC社製のSt/BD=85/15(CAT#07073)樹脂を使用した。