特開2015-189059(P2015-189059A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189059(P2015-189059A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】ライニング工法および更生管路
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20151006BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   B29C63/32
   F16L1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-67413(P2014-67413)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】クボタシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】堀 智明
(72)【発明者】
【氏名】中村 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】越智 聡
(72)【発明者】
【氏名】西島 賢太朗
(72)【発明者】
【氏名】原田 孝知
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD12
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD01
4F211SD04
4F211SD06
4F211SD19
4F211SP01
4F211SP21
(57)【要約】

【構成】 既設管(100)内にコイル成形体(10)を敷設し、コイル成形体の内面にホットメルト接着剤(16)を塗布する。その後、コイル成形体の内面にライニング材(14)をライニングすることによって、既設管を更生する。
【効果】 コイル成形体が既設管内でずれるのが防止できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) コイル用線材を螺旋状に成形したコイル成形体を既設管内に敷設するステップ、
(b) 前記既設管内に敷設されたコイル成形体の、少なくとも隣接するコイル用線材どうしを固定するステップ、および
(c) 前記コイル成形体の内部にライニング材をライニングするステップを含む、更生方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)は、(b1) 少なくとも隣接するコイル用線材どうしを接着するステップを含む、請求項1記載の更生方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、(b2) 前記コイル用線材と前記既設管または樹脂シートとを接着するステップを含む、請求項1または2記載の更生方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの更生方法で更生された、更生管路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ライニング工法および更生管路に関し、特にたとえば、コイル成形体を用いて老朽化した既設管内に更生管路を形成する、ライニング工法および更生管路に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明の背景となる背景技術の一例が、特許文献1‐4などに開示されている。この特許文献1‐4の技術では、既設管内にコイル成形体を敷設し、コイル成形体の内部にライニング材をライニングすることによって、既設管を更生する。
【特許文献1】特開2011‐158087号[F16L 1/00 B29C 63/34 F16L 55/16]
【特許文献2】特開2013‐202887号[B29C 63/32 F16L 1/00]
【特許文献3】特開2013‐204703号[F16L 1/00 B29C 63/34]
【特許文献4】特開2013‐226808号[B29C 63/34 F16L 55/16, 1/00]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1‐4などのようにコイル成形体を用いる技術では、更生管の管壁にたとえば分岐用の孔を形成するとき、孔の位置でコイル用線材が切断されることがある。コイル用線材が部分的に切断されると、その部分ではコイル用線材が完全な円形から「C」字状になり、コイル用線材が周方向にずれて、端部が孔を塞ぐ可能性がある。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、ライニング工法および更生管路を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、コイル用線材のずれを回避できる、ライニング工法および更生管路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
第1の発明は、(a) コイル用線材を螺旋状に成形したコイル成形体を既設管内に敷設するステップ、(b) 既設管内に敷設されたコイル成形体の、少なくとも隣接するコイル用線材どうしを固定するステップ、および(c) コイル成形体の内部にライニング材をライニングするステップを含む、更生方法である。
【0008】
第1の発明では、ステップ(a)で、既設管(100)の内面にコイル成形体(10)の外面が密着するようにコイル成形体(10)を敷設する。ステップ(b)では、たとえば、コイル成形体(10)の内面に接着剤(16)を塗布する、あるいはクリップ(20)によって隣接するコイル用線材どうしを両側から挟む、などして、少なくとも隣接するコイル用線材(12)どうしを固定する。その後、ステップ(c)において、コイル成形体の内部にライニング材(14)をライニングする。
【0009】
第1の発明によれば、コイル成形体の少なくとも隣接するコイル用線材どうしを固定するので、コイル用線材の既設管内での少なくとも周方向の位置ずれを回避できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、ステップ(b)は、(b1) 少なくとも隣接するコイル用線材どうしを接着するステップを含む、更生方法である。
【0011】
第2の発明では、たとえばホットメルト接着剤を用いて少なくとも隣接するコイル用線材どうしを接着する。
【0012】
第2の発明によれば、コイル成形体の少なくとも隣接するコイル用線材どうしを接着するので、コイル用線材の既設管内での少なくとも周方向の位置ずれをより一層効果的に回避できる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、ステップ(b)は、(b2) コイル用線材と既設管または樹脂シートとを接着するステップを含む、更生方法である。
【0014】
第3の発明では、コイル成形体のコイル用線材の外面と既設管の内面あるいは摩擦軽減用樹脂シートとを、たとえばホットメルト接着剤によって接着する。
【0015】
第3の発明によれば、コイル成形体と既設管または樹脂シートとを接着するので、コイル用線材の既設管内での周方向だけでなく軸方向の位置ずれをさらに効果的に回避できる。
【0016】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかの更生方法で更生された、更生管路である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、少なくとも隣接するコイル用線材どうしを固定するので、コイル用線材の既設管内での位置ずれが回避できる。
【0018】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1はこの発明の一実施例を利用したライニング工法に用いられるコイル成形体を示す概略図であり、既設管内に敷設されるコイル成形体を示す。
図2図2は実施例のライニング工法において図1のコイル成形体を既設管内に敷設した状態を示す概略図である。
図3図3は実施例のライニング工法に用いられるライニング材を示す概略図であり、図3(a)はライニング材の平面図を示し、図3(b)は断面図を示す。
図4図4は実施例のライニング工法において図3のライニング材をコイル成形体の内部に敷設した状態を示す概略図である。
図5図5は実施例のライニング工法において図2の工程と図4の工程との間でコイル成形体の内面から接着剤を塗布した状態を示す概略図であり、図5(a)は部分斜視図を示し、図5(b)は部分断面図を示す。
図6図6はこの発明の他の実施例を示す概略図であり、図6(a)は固定用部材を示し、図6(b)は固定用部材を用いてコイル成形体の端部を固定した状態を示し、図6(c)は固定用部材によってコイル成形体のコイル用線材どうしが固定されている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照して、この発明の一実施例のライニング工法に用いられるコイル成形体10は、コイル用線材12を螺旋状に巻いたものであり、コイル成形体10の外径は、更生すべき老朽化した既設管100(図1では図示せず。(図2))の内径と同じか、それよりやや大きく設定される。
【0021】
なお、この発明のライニング工法を利用して更生すべき既設管としては種々のものが考えられるが、たとえば、上下水道、ガス、通信ケーブル保護または電力ケーブル保護等の用途の既設管路であってよいし、また、鉄筋コンクリート管(ヒューム管)、陶管、鋳鉄管、鋼管ならびに塩ビ管のような合成樹脂管等の材料でから構成されるものであってよい。
【0022】
図1に示すコイル成形体10すなわちコイル用線材12は、十分な剛性や弾性を有する材料、たとえばアルミニウム合金、鋼またはステンレス鋼などの金属、合成樹脂、ならびにGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックを素材として形成され、この実施例では、コイル成形体10の素材としてGFRPが使用される。
【0023】
コイル成形体10は、長さ方向に直交する断面が横長の長方形状のコイル用線材12を巻芯(図示せず)などに螺旋状に巻回することによって円筒状に形成される。ただし、コイル成形体10の成形方法は特に限定されず、繊維強化プラスチック管に螺旋状に切り込みを入れることによってコイル成形体10を形成するようにしてもよいし、専用の金型に樹脂等を流し込んで成形するようにしてもよい。コイル成形体10の呼び径は、上述のように既設管の内径に対応するサイズに設定される。
【0024】
図2に示すように、第1マンホール102と第2マンホール104との間の地中に埋設されている既設管100の内面に図1に示すコイル成形体10を隙間なく敷設する。詳しくいうと、コイル成形体10は、その特性(剛性、弾性など)により、巻回(されている)方向へ回転させたり、伸長方向に引っ張ったりすると、その回転力や引張力に応じて縮径できる。このような特性を利用して、この発明に従った実施例のライニング工法では、図1に示すコイル成形体10を縮径して、既設管100内に導入し、その後縮径した状態のコイル成形体を既設管内で順次拡径することによって、コイル成形体を図2のように既設管の内面に密接して配置する(敷設する)。
【0025】
ただし、この発明では、図1に示す定尺のコイル成形体10の他、たとえば特許文献2のような長尺の(連続する)コイル成形体を利用することができる。したがって、既設管100内にコイル成形体を敷設するためには、定尺のコイル成形体を縮径して既設管内に導入した後に既設管内で拡径する方法や、長尺のコイル成形体を縮径しながら既設管内に導入して拡径する方法など、任意の方法が採用されてよい。
【0026】
既設管を更生するためには、既設管内に敷設されたコイル成形体10の内面にさらにライニング材をライニングしなければならない。一例として、図3に示すライニング材14は、縮径加工により周方向の一部が押し込まれた断面略ハート形状を有する縮径管である。ライニング材14は、たとえば合成樹脂(ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ナイロン、塩化ビニル等)や繊維強化プラスチックなどで形成することができるが、実施例では、ポリエチレンのライニング材14を用いる。
【0027】
ライニング材14は、所定の温度に加熱しかつ加圧されることにより円筒形に復元され、コイル成形体10の内面に密着して更生管路(ライニング管)を形成する。ライニング材14は、復元したときの外径がコイル成形体10の内径と等しいか略等しくなるように設定されている。
【0028】
このライニング材14は、公知の種々の方法によって製造することができるので、その製造方法の詳細な説明は省略するが、簡単に言えば、所定の径で押出成形された直管に対して、軟化点以上融点以下の範囲における所定の温度(この実施例では、たとえば約100℃程度)に加熱して、押し板やローラ等を用いて略U字状の押し込み部分を形成することによって製造される。したがって、ライニング材14を再び軟化点以上融点以下の温度に加熱し内部から加圧することにより、押し込み部分が外面側へ戻されて、ライニング材14は既設管内で所定形状(円筒形等)に復元する。
【0029】
この実施例のライニング工法では、既設管100内にコイル成形体10を敷設した後、上述の方法で、図4に示すように、ライニング材14をコイル成形体10の内部にライニングする。
【0030】
ただし、この実施例では、図2の工程(コイル成形体の敷設完了)と図4の工程(ライニング材のライニング)との間に、図5に示す、コイル成形体10の内面に接着剤を塗布する工程を挿入する。つまり、図5(a)に示すように、既設管100の内面にコイル成形体10が密に接して敷設された状態で、コイル成形体10の内面に、接着剤16を塗布する。この接着剤16は、図5(b)からよくわかるように、コイル成形体10の隣接するコイル用線材12の間に入り込むことによって、隣接するコイル用線材12どうしを接着するだけでなく、コイル成形体10の外面側に回り込み、コイル成形体10の外面と既設管100の内面も接着する。
【0031】
接着剤16を塗布する手段としては、作業者がコイル成形体の内部に入って、スプレイや刷毛(いずれも図示せず)によって塗布するようにしてもよい。
【0032】
実施例では、ホットメルト技術を利用する。ホットメルト技術では、たとえばホットメルトガンと呼ばれる装置で、固形の樹脂(たとえば、オレフィン重合体)をたとえば80‐100℃に加熱して溶融させ、溶融した樹脂をスプレイガンで噴射して塗布する。ホットメルト接着剤は溶剤を用いる必要がないので、環境や人体に悪影響を及ぼす恐れが小さいという利点がある。しかしながら、接着剤は、ホットメルト接着剤に限られるものではない。
【0033】
遠隔操作可能なホットメルトガン(図示せず)を利用する場合であれば、ホットメルトガンをカメラとともに台車(図示せず)上に搭載し、台車を図2のように既設管100内に敷設したコイル成形体10の内部に引き込み、第1マンホール102や第2マンホール104からワイヤやロープで牽引して、コイル成形体10の内部を軸方向に走行させる。カメラによって位置を確認したうえで、遠隔操作によって、所定の場所に所定量の接着剤を塗布することができる。
【0034】
図5に示すように、コイル成形体10の内面に接着剤を塗布することによって、少なくとも隣接するコイル用線材12どうしが接着されるので、コイル用線材が周方向にずれるのが防止できる。そして、コイル成形体10と既設管100とが接着されれば、コイル用線材12すなわちコイル成形体10が既設管100に対して軸方向にずれるのが防止できる。
【0035】
たとえば分岐管を取り付けるための取り付け孔を更生管に開けたときでも、部分的に分断されたコイル用線材が周方向にずれて孔を塞ぐなどの不都合は生じない。
【0036】
また、1つのコイル成形体を既設管内の基準位置に保持する必要がある場合、コイル用線材すなわちコイル成形体の既設管に対する軸方向のずれを防止できるので、コイル成形体を安定的に基準位置に保持することができる。
【0037】
なお、上述の実施例では、少なくとも隣接するコイル用線材どうしを固定する手段として接着剤を用いた。しかしながら、図6に示すようなクリップ20が用いられてもよい。
【0038】
図6(a)に示すように、クリップ20はたとえばアルミニウムやステンレスのような金属もしくはプラスチックからなり、コイル成形体10の複数のコイル用線材12の幅と等しいかほぼ等しい幅を有する平板部22と、この平板部22の両端に平板22に直交する方向に延びて形成される、コイル用線材12の厚みよりわずかに長い脚部24を含む。脚部24は内方にやや傾斜して形成され、外方に開いたときに弾性を発揮するようにされている。脚部24の先端にはごく短い返し部26が形成される。ただし、返し部26はなくてもよい。
【0039】
図6(a)のようなクリップ20を、図6(b)および図6(c)に示すように、既設管100内に敷設されているコイル成形体10の端部において、複数の(実施例では平板22の幅が2本分なので、2本であるが、平板22の幅によって変わる。)コイル用線材12に跨って被せる。クリップ20の脚部24の弾性によって複数のコイル用線材12を両側から内側へ押すため、隣接するコイル用線材12どうしがクリップ20によって固定または拘束される。
【0040】
また、上述の実施例では説明しなかったが、縮径したコイル成形体を装荷した芯材を連続的に既設管100内に引き込むときに、既設管100の内面にたとえば樹脂シート(図示せず)を予め設けておき、コイル成形体と既設管の内面との間の摩擦を軽減するようにしてもよい。この場合、接着剤を用いれば、コイル成形体10のコイル用線材どうしの間と、コイル成形体および摩擦軽減用の樹脂シートの間が接着されることになる。
【0041】
したがって、この発明では、接着剤は、摩擦軽減用の樹脂シートを用いない場合にはコイル成形体と既設管を接着するが、樹脂シートを用いる場合には、コイル成形体と樹脂シートを接着することになる。
【0042】
また、接着剤やクリップなどによるコイル用線材どうしの固定手段は、管底部に限定されるものではなく、コイル成形体の内周面における適切な場所に施せばよい。
【0043】
さらに、そのような固定手段によるコイル用線材どうしの固定や、コイル成形体(コイル用線材)と既設管との接着は、既設管の軸方向の全長に施してもよいし、必要な場所にだけ施すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 …コイル成形体
12 …線材
14 …ライニング材
16 …接着剤
20 …クリップ
100 …既設管
図1
図2
図3
図4
図5
図6