特開2015-189119(P2015-189119A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-189119インクジェット駆動装置及びこれを備えたインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189119(P2015-189119A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】インクジェット駆動装置及びこれを備えたインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20151006BHJP
【FI】
   B41J2/015 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-68483(P2014-68483)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門 孝
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF28
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】複雑な制御を行うことなく印字の際の不要なインク滴の発生を抑えることができるインクジェット駆動装置を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るインクジェット駆動装置は、インクが充填される圧力室と、この圧力室に連通しインクを吐出するノズルと、駆動信号に基づいて前記圧力室の容積を変化させる駆動部と、を有するインクジェット駆動装置であって、上記駆動信号は、上記圧力室内のインクの固有振動周期をTcとするとき、通電時間がTc/2近傍である上記圧力室の容積を拡大させる拡張パルスと、通電時間が(7/6〜4/3)Tcである上記圧力室の容積を収縮させる収縮パルスと、上記拡張パルスと上記収縮パルスとの間に(1/6〜1/3)Tcである通電を行わない休止時間を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが充填される圧力室と、
この圧力室に連通しインクを吐出するノズルと
駆動信号に基づいて前記圧力室の容積を変化させる駆動部と
を有するインクジェット駆動装置であって、
前記駆動信号は、
前記圧力室内のインクの固有振動周期をTcとするとき、
通電時間t1がTc/2近傍である前記圧力室の容積を拡大させる拡張パルスと、
通電時間t2が(7/6〜4/3)Tcである前記圧力室の容積を収縮させる収縮パルスと、
前記拡張パルスと前記収縮パルスとの間に(1/6〜1/3)Tcである通電を行わない休止時間t3と
を有することを特徴とするインクジェット駆動装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記圧力室の容積を前記駆動信号に基づいて変化させるアクチュエータと、
このアクチュエータに前記前記駆動信号を出力する駆動信号発生部
を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット駆動装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、圧電体材料からなることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット駆動装置。
【請求項4】
前記圧力室は、複数並設していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のインクジェット駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のインクジェット駆動装置を備えるインクジェット記録装置。
【請求項6】
インクが充填される圧力室と、
前記圧力室の容積を駆動信号に基づいて変化させるアクチュエータと、
このアクチュエータに前記駆動信号を出力する駆動信号発生部と、
前記圧力室に連通し、前記インクを吐出するノズルと、
を備えるインクジェット駆動装置の駆動方法において、
前記駆動信号発生部は、
前記圧力室内のインクの音響共振周期をTcとしたとき、
前記アクチュエータに前記圧力室の容積を拡大させる拡張パルスをTc/2の間出力し、
前記拡張パルスを出力後、(1/6〜1/3)Tcの間休止し、
その後、前記圧力室の容積を収縮させる収縮パルスを(7/6〜4/3)Tcの間出力することを特徴とするインクジェット駆動装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、インクジェット方式の記録装置に用いられるインクジェット駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像等のデータを出力する装置として、インクジェット方式を採用したインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置には、微小なインク滴を、例えば用紙等の記録媒体に吐出するインクジェット駆動装置が用いられる。
【0003】
インクジェット駆動装置としては、インクが充填された共通インク室に連通し、先端にノズルを形成した複数の圧力室を有するインクジェットヘッドと、通電波形に従って動作し圧力室の容積を変化させる複数の駆動手段を設け、駆動手段の動作によって圧力室内のインクに圧力変動を与え、該当するノズルからインク滴を吐出させるものが知られている。
【0004】
このようなインクジェット駆動装置において、1画素を印字するためのインク滴の吐出を行った際に、ノズルからサテライトと呼ばれる不要なインク滴が吐出する場合がある。このようなサテライトは、ノズルへの付着によるインクの不吐出や画像ムラ等の画像品質の低下を引き起こす。このため、駆動手段から出力される駆動パルスに補助パルスを追加する方法や、次の印字周期のドット情報が不吐出である場合に印字周期よりも所定時間遅らせて駆動パルスを出力する方法などを採用してサテライトの発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−1479号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−234198号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような、補助パルスを駆動パルスに追加する方式や次の印字周期のドット情報が不吐出である場合に印字周期よりも所定時間遅らせて駆動パルスを出力する方式では、制御が複雑化するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、複雑な制御を行うことなくサテライトの発生を抑えることができるインクジェット駆動装置およびこれを備えたインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係るインクジェット駆動装置は、インクが充填される圧力室と、この圧力室に連通しインクを吐出するノズルと、駆動信号に基づいて前記圧力室の容積を変化させる駆動部と、を有するインクジェット駆動装置であって、上記駆動信号は、上記圧力室内のインクの固有振動周期をTcとするとき、通電時間t1がTc/2近傍である上記圧力室の容積を拡大させる拡張パルスと、通電時間t2が(7/6〜4/3)Tcである上記圧力室の容積を収縮させる収縮パルスと、上記拡張パルスと上記収縮パルスとの間に(1/6〜1/3)Tcである通電を行わない休止時間t3を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係るインクジェットヘッドをノズル配列方向の直交方向から見た断面図である。
図3図2のA−A'線に沿った断面図である。
図4】本実施形態に係る駆動信号発生部から出力される駆動信号の一例を示す波形図である。
図5】駆動電圧とサテライトの発生との関係を示す図である。
図6】駆動信号と評価指標との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係るインクジェット駆動装置をノズル配列の直交方向から見た断面図である。図3は、図2におけるA−A'線に沿った断面図である。
【0012】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェット駆動装置2と、画像情報等を記録する記憶部3と、インクジェット記録装置1の処理全般を制御する制御部4とを備える。インクジェット駆動装置2は、インクジェットヘッド5と、インクジェットヘッド駆動部6(単に「駆動部6」とも言う。)を備える。インクジェット記録装置1は、例えばPCや携帯電話といった外部装置Xからの印字命令と印字データ(画像情報)とを受け取って記録を開始する。記憶部3は、外部装置Xからの印字命令と印字データを格納する。記憶部3へと格納された印字データは、制御部4により生成された制御情報と共に後述するインクジェット駆動装置2の駆動信号発生部17へ転送される。
【0013】
インクジェットヘッド5は、図2図3に示すように、インクを収容する圧力室11と、圧力室11を仕切る隔壁12と、インク滴を吐出するノズル13と、共通インク室14と、インク供給口15を備える。複数の並設された圧力室11は、それぞれインク供給口15を介して共通インク室14と接続されている。共通インク室14には、図示しないインク供給手段からインクが供給される。即ち、インクジェットヘッド5は、シェアモード型であり、共通インク室14、圧力室11およびノズル13をインクで満たす構造となっている。圧力室11およびノズル13がインクで満たされることでノズル13にインクのメニスカスが形成される。
【0014】
インクジェットヘッド駆動部6は、圧電体材料からなるアクチュエータ16と、アクチュエータ16に駆動信号を発生する駆動信号発生部17から構成される。アクチュエータ16の電極は、駆動信号を発生する駆動信号発生部17の出力端子に電気的に接続されている。
【0015】
駆動信号発生部17は、記憶部3に格納された印字命令と印字データに基づいてアクチュエータ16を動作させる。アクチュエータ16の動作により圧力室11の容積が変化することで、圧力室11内に満たされたインクの圧力が変化し、ノズル13よりインクが吐出する。
【0016】
インクジェット駆動装置2によるインクの吐出動作は、具体的には以下のように行われる。先ず、インクジェットヘッド駆動部6内のアクチュエータ16の電極に拡張パルスp1の電圧+Vaaを印加するとアクチュエータ16は、圧力室11の容積を急激に拡張するように変形する。このとき、圧力室11内には、負の圧力が瞬間的に発生する。この圧力は、固有の振動周波数を有しており、固有振動周波数の逆数である固有振動周期をTcとすると、Tc/2の時間経過で圧力の正負は反転する。固有振動周期Tcは、圧力室の形状とインクの物性とによって決定される。
【0017】
固有振動周期Tcについては、例えば市販のインピーダンスアナライザーによって、インクを入れたインクジェット駆動装置2のアクチュエータ16のインピーダンスを測定し、圧力室11内のインクの共振によってアクチュエータ16のインピーダンスが低下する周波数から求めることができる。また、シンクロスコープなどによりインク圧力振動がアクチュエータ15に誘起する電圧を測定し、その電圧の振動周期を調べることにより求めることができる。
【0018】
拡張パルスp1の後、アクチュエータ16の電極に電圧を印加しない時間を設けると、アクチュエータ16は、圧力室11の容積を拡張した状態から急激に収縮するように変形し、圧力室11内には正の圧力が瞬間的に発生する。この圧力により発生する圧力波は、拡張パルスp1で発生した圧力波に対して位相が一致するので、圧力波の振幅は急激に増大される。
【0019】
また、アクチュエータ16の電極に収縮パルスp2の電圧−Vaaを印加すると、アクチュエータ16は、圧力室11の容積を急激に収縮するように変形し、圧力室11内には正の圧力が瞬間的に発生する。この圧力はTc/2が経過すると負の圧力に反転する。
【0020】
収縮パルスp2の後、アクチュエータ16の電極に電圧を印加しない時間を設けると、アクチュエータ16は、圧力室11の容積を収縮した状態から急激に拡張するように変形し、圧力室11内には負の圧力が瞬間的に発生する。この圧力により発生する圧力波は、収縮パルスp2によって発生した圧力波に対して位相が一致するので、圧力波の振幅は急激に増大される。
【0021】
即ち、駆動信号発生部17から駆動信号が出力され対応するアクチュエータ16に印加されると、対応するアクチュエータ16には変位が起こる。アクチュエータ16が変位を起こすと対応する圧力室11の容積が変化し、これにより、圧力室11内に圧力波が発生し、圧力室11に設けられたノズル13からインク滴が吐出される。ここで、拡張パルスp1と収縮パルスp2は、その位相が180°異なる。言い換えると、拡張パルスp1によって生じた圧力波による振動(残留振動)は、収縮パルスp2により打ち消される。残留振動の打ち消しは、1画素を複数のドロップで駆動するいわゆるマルチドロップ駆動には必須である。残留振動の低減については、例えば特開2003−246055号公報の記載の技術などを採用することができる。
【0022】
図3に、駆動信号発生部17から出力される駆動信号の波形図を示す。図3に示すように、駆動信号発生部17から出力される駆動信号は、圧力室11の容積を拡張させる拡張パルスp1と圧力室11の容積を収縮させる収縮パルスp2とこれらのパルスの間に何れのパルスも出力しない休止時間から構成される。
【0023】
拡張パルスp1は、+Vaaの正の電圧振幅を有する矩形パルスで通電時間がt1である。収縮パルスp2は、−Vaaの負の電圧振幅を有する矩形パルスで通電時間はt2である。拡張パルスp1の通電時間t1は圧力室11内のインク圧力の固有振動周期Tc/2近傍であり、収縮パルスp2の通電時間t2は7Tc/6〜4Tc/3である。拡張パルスp1と収縮パルスp2は同じ電圧振幅で極性が異なるパルスである。休止時間t3はTc/6〜1Tc/3である。
【0024】
拡張パルスp1と収縮パルスp2と休止時間t3とから構成される駆動信号毎に、ノズル13から1つのインク滴が吐出される。即ち、ノズル13から1つのインク滴を吐出するのに要する時間(ドロップ周期)Tdは、t1とt2とt3の和である。
【0025】
図4は、インク吐出の様子を表す図である。図中、縦軸は、駆動電圧を示し、横軸は、ノズル13の面からの距離を示す。また、左端部分はインクジェットヘッド5のノズル面を表す。
【0026】
図4に示すように、ノズル13から吐出されたインク滴は、駆動電圧が低いものはノズル面の近い位置に観察され、駆動電圧が高いものはノズル面から遠い位置に観察される。このように、インク滴の吐出を行いながら駆動電圧を低い方から高い方へと変化させた場合、駆動電圧の変化に伴ってインク滴の吐出速度は変化する。このとき、ある閾値以上でサテライト(図中S)が発生する。ここでサテライトが発生し始めるときのインク滴の吐出速度をサテライトフリー速度と定義する。
【0027】
一般に、サテライトは駆動電圧が高い時に発生することが知られている。従って、サテライトフリー速度が大きな値を示した方が広い駆動電圧でサテライトの発生なくインク滴の吐出が可能となる。本実施形態ではサテライトフリー速度の値を評価の指標とする。
【0028】
図5に、駆動信号と上述した指標との関係を示す。横軸は収縮パルスp2の通電時間t2であり、縦軸は休止時間t3である。図中、右に示す指標値(サテライトフリー速度)の範囲に応じて異なる模様となっている。不吐出や小さな指標値を示す部分は黒や網目で表示され、大きな指標値を示す部分は、斜線で表示されている。
【0029】
本実施形態では、Tc/2は2.4μsであった。この固有振動周期Tcに基づいて駆動信号発生部17から出力される駆動信号を拡張パルスp1の通電時間t1をTc/2近傍に設定し、収縮パルスp2の通電時間t2を7Tc/6〜4Tc/3に設定し、休止時間t3をTc/6〜1Tc/3の値に設定することでサテライトの発生なくインク滴の吐出を行うことができる。
【0030】
このように、本実施形態に係るインクジェット駆動装置によれば、駆動信号(通電波形)を、拡張パルス、収縮パルス及び休止時間で構成し、拡張パルスおよび収縮パルスの通電時間並びに休止時間を上記した値に設定するだけで、制御が複雑化することなくサテライトの発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…インクジェット記録装置; 2…インクジェット駆動装置; 5…インクジェットヘッド; 6インクジェットヘッド駆動部; 11…圧力室; 12…隔壁; 13…ノズル; 14…共通インク室; 15…インク供給口; 16…アクチュエータ; 17…駆動信号発生部;
図1
図2
図3
図4
図5
図6