【解決手段】車両用のダクト部材10は、車両の空調設備に連結されて空気流通路を形成する。ダクト部材10は上端が開口しており(A)、この開口を車両の構成部材2に対向させて取り付けられた状態では、構成部材2を空気流通路の一部として内部に空気流通路18を形成する(B)。ダクト部材10は、空気流通路18の壁を構成する部位として起立壁12及び片側壁14を有しており、これらは発泡樹脂材料層12a,12bの積層体を圧縮成形して成形されている。また片側壁14には、積層体の厚みを増した増厚成形領域15が含まれており、ここでの発泡倍率がその他に比較して高く設定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先に挙げた構造のダクト(特許文献1記載の例)は、適度な剛性と断熱性の確保には十分であるものの、ダクト半体を2層構造としているため、ダクト全体を軽量化することが難しいという問題がある。この点、後に挙げた構造のダクト(特許文献2記載の例)は、ダクト構成部材そのものがそれほど高い剛性を必要としないため、発泡樹脂材料による断熱性の向上や軽量化に有利である。
【0007】
しかしながら、車両用ダクトの構造は、その配置や用途に応じて様々となるため、全てのダクトを軽量化が容易な構造とすることはできない。このため、上記のような構造の違いによってダクト部材の軽量化が困難となる状況は不可避であり、さらなる技術の改良が望まれるところである。
【0008】
また、ダクト部材を軽量化が容易な構造にするとしても、発泡樹脂の成形品(フランジ部等)に充分な剛性を持たせようとすると、金型成形時に材料を圧縮(コンプレッション付与)して気泡を押しつぶす工程が必要となる。このため、ダクト部材に発泡樹脂材料を用いていても、発泡倍率の向上には限界があり、さらに断熱性を高めることは難しいという問題もある。
【0009】
そこで本発明は、ダクト部材を多様な構造とする場合であっても、軽量化や断熱性の向上を図ることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は車両用ダクト部材及びその製造方法を提供する。
本発明の車両用ダクト部材は、車両の空調設備に連結されて空気流通路を形成する。特に本発明の車両用ダクト部材は、空気流通路の壁を形成する部位として圧縮成形領域及び増厚成形領域を備える。このうち圧縮生成領域は、熱可塑性発泡樹脂材料の積層体を厚み方向に圧縮して成形したものであり、増厚成形領域は、熱可塑性発泡樹脂材料の積層体を厚み方向に圧縮して成形したものであるが、その成形過程で圧縮成形領域よりも層厚が増されることにより、熱可塑性発泡樹脂材料の発泡倍率が圧縮成形領域に比較して高く設定されている。
【0011】
このように本発明の車両用ダクト部材は、その全体が「熱可塑性発泡樹脂材料の積層体を厚み方向に圧縮して成形したものであること」を基本構成とする。その上で本発明の車両用ダクト部材は、圧縮成形の過程で積層体の層厚が増加された増厚成形領域を有することにより、その領域での発泡倍率が他の領域よりも高く設定されている。このうち、発泡樹脂材料の積層体を圧縮して成形した「圧縮成形領域」では、成形品である車両用ダクト部材に適度な剛性を確保することができるとともに、発泡樹脂のもつ断熱性をも発揮させることができる。また「増厚成形領域」では、圧縮成形による適度な剛性が得られることに加えて、「圧縮成形領域」に比較して発泡倍率が高く設定されるため、より高い断熱性能を得ることができる。これにより、基本構成となる「圧縮成形領域」による適度な剛性を確保しつつ、特に「増厚成形領域」によって断熱性能をも向上することができる。また、全体が発泡樹脂で成形されているため、容易に全体の軽量化を図ることができる。
【0012】
〔第1態様〕
本発明の車両用ダクト部材は、車両の構成部材に取り付けられた状態で、その構成部材を空気流通路の壁の一部とする態様であってもよい。
この場合、車両用ダクト部材は、ダクト壁本体及びフランジ部から構成される。ダクト壁本体は、車両の構成部材に対向する一端が開口し、他端が閉塞されている。そして、ダクト壁本体は、一端の開口から他端に向かう窪み形状(例えば断面ハット形状)をなすことで空気流通路の壁を構成する部位となる。またフランジ部は、ダクト壁本体の開口の周囲に形成されて構成部材に密着する。
【0013】
上記の態様では、圧縮成形領域はダクト壁本体及びフランジ部の両方に含まれるが、増厚成形領域はダクト壁本体に含まれることが好ましい。これにより、フランジ部による取り付け強度を確保しつつ、ダクト部材としての断熱性能を向上することができる。
【0014】
〔第2態様〕
本発明の車両用ダクト部材は、別途独立した態様であってもよい。この第2態様は、上述した第1態様と同じ一群に属していない。
すなわち、本発明の車両用ダクト部材は、一対をなすダクト半体が相互に連結された状態で内部に空気流通路を形成し、車両の空調設備に連結して使用される態様である。
この場合、一対をなすダクト半体は、それぞれダクト壁本体及びフランジ部から構成される。ダクト壁本体は、一対をなすダクト半体の連結に際して、互いに対向する一端が開口し、他端が閉塞されて一端の開口から他端に向かう窪み形状(例えば断面ハット形状)をなすことにより空気流通路の壁を構成する部位となる。フランジ部は、ダクト壁本体の一端開口の周囲に形成されており、一対をなすダクト半体の連結に際して相互に密着する。
【0015】
上記の態様において、ダクト壁本体は、少なくとも一部がその成形過程で熱可塑性発泡樹脂材料の積層体を厚み方向に圧縮して成形された圧縮成形領域を層厚及び発泡倍率が増加された増厚成形領域として成形されている。増厚成形領域は、ダクト壁本体の成形過程で圧縮成形された熱可塑性発泡樹脂材料の積層体(成形の過程で圧縮成形領域となるもの)の層厚及び発泡倍率が圧縮成形領域より増加されたものである。また、「少なくとも一部」であるから、ダクト壁本体の全部が増厚成形領域であってもよい。
【0016】
ダクト壁本体の一部が増厚成形領域として成形されている場合、フランジ部は圧縮成形領域として成形されているものとする。圧縮成形領域は熱可塑性発泡樹脂材料の積層体を圧縮成形しているので、ある程度の剛性を確保することができる。ダクト壁本体についても、一部を圧縮成形領域とすることで適度な剛性を有しつつ、増厚成形領域による断熱性の向上を図ることができる。これにより、フランジ部によるダクト半体相互の連結を強固なものにしつつ、ダクト壁本体に発泡倍率を高めた増厚成形領域を含むことにより、全体としての断熱性能を向上することができる。また、ダクト半体全体が発泡樹脂で成形されているため、容易に全体の軽量化を図ることができる。
【0017】
〔第3態様〕
第3態様は、上記の独立した態様(第2態様)と異なり、第1態様と同じ一群に属するものである。
すなわち、本発明の車両用ダクト部材は、「圧縮成形領域」及び「増厚成形領域」の他に空気流通路の壁を構成する部位として「中空成形領域」をさらに備えることができる。「中空成形領域」は、熱可塑性発泡樹脂材料の層を積層することなく、間に中空部を存して成形されることで内部に空気流通路を形成するものである。この場合、「中空成形領域」により単独で内部に空気流通路を形成する態様と、車両の構成部材に取り付けられた状態でこれを空気流通路の壁の一部とする態様とを混在させた構造とすることができる。
【0018】
そして、構成部材を空気流通路の壁の一部とする態様では、ダクト部材はダクト壁本体及びフランジ部から構成される。ダクト壁本体は、車両の構成部材に対向する一端が開口し、他端が閉塞されている。そして、ダクト壁本体は、一端の開口から他端に向かう窪み形状(例えば断面ハット形状)をなすことで空気流通路の壁を構成する部位となる。またフランジ部は、ダクト壁本体の開口の周囲に形成されて構成部材に密着する。
【0019】
上記の態様においても、圧縮成形領域はダクト壁本体及びフランジ部の両方に含まれるが、増厚成形領域はダクト壁本体に含まれることが好ましい。これにより、フランジ部による取り付け強度を確保しつつ、ダクト部材としての断熱性能を向上することができる。また、ダクト部材単独で空気流通路を形成する部位と、車両の構成部材への取り付けにより空気流通路を形成する部位の両方を備えることにより、車両用ダクト部材としての機能性をも向上させることができる。
【0020】
また本発明は、車両の空調設備に連結されて空気流通路を形成する車両用ダクト部材の製造方法を提供する。製造方法は、以下の工程を有する。
【0021】
〔配置工程〕
先ず、溶融状態で発泡剤を含有した熱可塑性樹脂の材料を筒状又は一対のシート状にして押し出し、複数の分割された成形型の間に配置する。
〔成形工程〕
次に、複数の成形型を型締めすることにより、成形型の成形面に沿って材料の積層体を圧縮成形する。
〔減圧工程〕
そして、上記の成形工程で行われる圧縮成形の過程で成形面の少なくとも一部を材料から後退させることにより、この後退させた領域内を減圧する。「少なくとも一部」であるから、成形面の全域を材料から後退させ、全域内を減圧することとしてもよい。
【0022】
本発明の製造方法によれば、成形型の間に配置される材料が筒状又は一対のシート状であるため、成形工程での圧縮成形により熱可塑性発泡樹脂材料の積層体が成形される。また、積層体の圧縮成形に伴い、上述した圧縮成形領域を形成することができる。また本発明の製造方法では、減圧工程で成形面を後退させた一部の領域(又は成形面の全域)を減圧することにより、この領域(又は全域)内で積層体の層厚を増し、発泡倍率を高めることができる。これにより、圧縮成形領域よりも発泡倍率を高く設定した増厚成形領域を形成することができる。
【0023】
本発明の製造方法は、上述した第1〜第3態様の全ての車両用ダクト部材の製造に適用することができる。
【0024】
すなわち、第1態様に適用する場合であれば、ダクト部材を成形するための成形型において、成形面を後退させる領域をダクト壁本体となる部位に対応させておけばよい。これにより、増厚成形領域がダクト壁本体に含まれた態様のダクト部材を得ることができる。
【0025】
また、第2態様に適用する場合であれば、個々のダクト半体を成形するための成形型において、成形面を後退させる領域をダクト壁本体となる部位に対応させておけばよい。これにより、増厚成形領域がダクト壁本体に含まれた態様のダクト半体を得ることができる。
【0026】
あるいは、第3態様に適用する場合であれば、ダクト部材を成形するための成形型において、成形面を後退させる領域をダクト壁本体となる部位に対応させておけばよい。これにより、中空成形領域を備えたダクト部材においても、増厚成形領域がダクト壁本体に含まれた態様とすることができる。
【0027】
なお好ましくは、本発明の製造方法として以下の態様1,2を提供することができる。
すなわち、製造方法の態様1は、成形工程及び減圧工程を通じて互いに一対をなすダクト半体を成形した後、これら一対のダクト半体を相互に連結して内部に空気流通路を形成する形態の車両用ダクト部材を得る連結工程をさらに有するものである。
【0028】
この場合、成形工程では、ダクト半体の全体を材料の積層体で構成される圧縮成形領域として成形する。また減圧工程では、成形面の全体を材料から後退させてダクト半体の全体にわたり材料の積層体の層厚を増すことにより、ダクト半体の全体を材料の発泡倍率が圧縮成形領域に比較して高く設定された増厚成形領域として成形する。そして連結工程では、全体が増厚成形領域である一対のダクト半体を相互に連結して車両用ダクト部材とする。
態様1によれば、上述した第2態様の車両用ダクト部材を好適に製造することができる。
【0029】
上記の態様1と異なり、製造方法の態様2は連結工程を必須としない。
すなわち、成形工程では、車両用ダクト部材となる部位の全体を材料の積層体で構成される圧縮成形領域として成形し、減圧工程では、減圧した領域内で材料の積層体の層厚が増されることにより、材料の発泡倍率が圧縮成形領域に比較して高く設定された増厚成形領域を部位の一部として成形する。
【0030】
したがって、態様2によれば、上述した第1態様及び第3態様の車両用ダクト部材を好適に製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によれば、ダクト部材を多様な構造とする場合であっても、軽量化や断熱性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の車両用ダクト部材及びその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、各種実施形態の車両用ダクト部材10,20,30が適用された車両1を概略的に示す平面図である。車両1には、例えば車室内に2つのダクト部材10,30が設置されている他、車体内部(エンジンルーム内、インストルメントパネル内等)に1つのダクト部材20が設置されている。ここで挙げた3つのダクト部材10,20,30は、それぞれ異なる態様で車両1に取り付けられている。
【0035】
このうち、第1実施形態となるダクト部材10は、車両1の構成部材(例えばルーフトリム)に取り付けられた状態で、その構成部材を壁の一部として空気流通路を形成する態様である。第2実施形態となるダクト部材20は、単独で空気流通路を形成する態様である。また、第3実施形態となるダクト部材30は、それ自身が空気流通路を形成する態様と、車両1の構成部材に取り付けられた状態で、その構成部材を壁の一部として空気流通路を形成する態様とを混在させた構造である。以下、各実施形態のダクト部材10,20,30について順番に説明する。
【0036】
〔第1実施形態〕
図2は、第1実施形態のダクト部材10を示す図である。
図2中(A)にはダクト部材10の全体的な形状が斜視図で示されており、
図2中(B)にはダクト部材10の構造が取り付け時の断面図にて示されている。
【0037】
図2中(A):上記のようにダクト部材10は、車両1の構成部材に取り付けられる態様である。ダクト部材10は、その取り付け方向(図中に矢印で示す方向)となる上端が全体的に開放されており、上端の開口から下端に向けて窪んだ構造をなしている。この例では、上面視で開口が略L字型(へ字型)をなしているが、開口はその他の形状であってもよい。
【0038】
ダクト部材10は、開口縁に沿って起立した起立壁12を有する他、下端を閉塞する片側壁14を有する。起立壁12は、上端の開口から下端に向かって適度な高さを有しており、開口縁に沿う周方向では、開口の形状(上面視でL字型)に合わせて直線状又は曲線状をなして延びている。また片側壁14は、上端の開口に対応して上面視で略L字型(へ字型)をなし、ここでは下端を閉塞する平板状をなしている。なお、周方向でみて起立壁12は一部(L字の一端に相当する部分)が開放されており、この開放部分はダクト部材10の吹き出し口となる。
【0039】
またダクト部材10は、その開口縁の周囲にフランジ部16を有しており、フランジ部16は開口の外側に適度な幅を有して広がっている。フランジ部16もまた、開口縁に沿う周方向では、開口の形状に合わせて直線状又は曲線状をなして延びている。
【0040】
このような構造のダクト部材10は、起立壁12及び片側壁14がダクト壁本体となり、車両1の構成部材への取り付け状態では、起立壁12及び片側壁14が構成部材とともに空気流通路の壁を構成する。またフランジ部16は、構成部材に密着することでダクト部材10全体を固定する。なお、ここではフランジ部16の密着面が平坦なものとして示されているが、密着面には長手方向に沿って凹溝や突条が形成されていてもよい。
【0041】
図2中(B):上記のようにダクト部材10は、ルーフトリム2等の構成部材に取り付けられた状態で空気流通路18を形成する。このとき起立壁12及び片側壁14は、ルーフトリム2の一部とともに空気流通路18の壁を構成している。またダクト部材10は、空気の流通方向でみた断面が逆ハット形状をなしている。特に図示されていないが、空調設備(エアコン)から送出される空気はルーフトリム2の開口部から空気流通路18内に供給され、流通方向でみた一端の吹き出し口から送出(送風)される。
【0042】
〔圧縮成形領域〕
ここで、ダクト部材10は、2つの発泡樹脂材料層10a,10bを重ね合わせて積層体となし、これを厚み方向に圧縮成形して製造されたものである。このためダクト部材10の起立壁12、片側壁14及びフランジ部16の各部位は、いずれも発泡樹脂材料層10a,10bの積層体から構成されている。このうち、特に起立壁12及びフランジ部16については、発泡樹脂材料層10a,10bの積層体が圧縮成形された領域(圧縮成形領域)を含むことで適度な剛性を有するとともに、発泡樹脂による断熱性をも有している。
【0043】
〔増厚成形領域〕
また、片側壁14については、他の起立壁12に比較して厚みが大きく、発泡樹脂材料層10a,10bの積層体が厚みを増された(増厚された)状態にある。このような積層体の厚みを増された領域(「増厚成形領域15」として示す)は片側壁14の長手方向の全域に亘って延びており、これにより片側壁14は、その他の起立壁12に比較して増厚による発泡倍率の向上が図られている。例えば、起立壁12での発泡樹脂材料層10a,10bの発泡倍率が2倍〜5倍程度であるとすると、片側壁14の増厚成形領域15での発泡倍率は10倍〜20倍程度まで高く設定されている。このような増厚成形領域15が片側壁14に含まれていることにより、発泡樹脂材料層10a,10bの圧縮成形による適度な剛性を維持しつつ、増厚成形領域15での断熱性をより高くして、ダクト部材10全体としての断熱性能を向上することができる。
【0044】
〔製造方法(その1)〕
図3から
図5は、第1実施形態のダクト部材10の製造方法における各工程を示す図である。第1実施形態のダクト部材10は、以下の製造方法を用いて製造することができる。
【0045】
〔
図3:配置工程〕
溶融状態で発泡剤を含有した熱可塑性樹脂の材料を筒状パリソン100にして押し出し、分割された成形型102,102の間に配置する。なお、ここでは筒状パリソン100を例に挙げているが、熱可塑性樹脂の材料を一対のシート状にして押し出してもよい。また、筒状パリソン100の押し出しには公知の手法を用いることができるので、ここでは図示を省略する。
【0046】
〔成形型〕
成形型102,104は、予めダクト部材10の成形に適した形状に加工されたものとして用意されている。このうち、一方の成形型102がダクト部材10の下端側に対応した形状(凹状成形面)を有しており、他方の成形型104が上端の開口側に対応した形状(凸状成形面)を有している。また、一方の成形型102はスライドコア106及び可動空間108を有しており、スライドコア106が可動空間108内にてスライド可能となっている。
【0047】
〔
図4:成形工程〕
2つの成形型102,104を型締めする。これにより、素材であった筒状パリソン100がつぶれて発泡樹脂材料の積層体110となる。さらに、型締めで積層体110に圧縮(コンプレッション)を加えることにより、成形型102,104の成形面に沿って積層体110が圧縮成形される。なお、圧縮成形の開始時において、スライドコア106は最も前進した初期位置(成形面が周囲と連なる位置)にある。
【0048】
〔
図5:減圧工程〕
図5中(A):積層体110を圧縮成形する過程で、スライドコア106を可動空間108内に後退(いわゆる「コアバック」)させる。これにより、型締めされた状態の成形型102,104内でスライドコア106に対応する領域内が減圧され、スライドコア106の後退に追従して積層体110の厚みが増加する。その結果、スライドコア106に対応する領域内で積層体110の発泡倍率をその他の領域に比較して高くすることができる。
【0049】
図5中(B):成形工程及び減圧工程の後、成形型102,104を開いてバリ部分を除去すると、上記のダクト部材10が得られる。得られたダクト部材10は、発泡樹脂材料層10a,10bの積層体から構成されており、フランジ部16や起立壁12については主に圧縮成形領域を含む構造であるが、片側壁14は増厚成形領域15を含んだ構造となる。なお、ここでは片側壁14が増厚成形領域15を含む構造の例を示しているが、起立壁12に増厚成形領域15を含む構造としてもよい。
【0050】
図6は、他方の成形型104にスライドコア106を配置した場合の製造方法を示す図である。他方の成形型104は、上記のように成形品としてのダクト部材10における開口側に対応する。この場合、減圧工程は以下の態様により進行する。
【0051】
図6中(A):ここでも同様に、積層体110を圧縮成形する過程で、スライドコア106を可動空間108内に後退させる。これにより、型締めされた状態の成形型102,104内でスライドコア106に対応する領域内が減圧され、スライドコア106の後退に追従して積層体110の厚みが増加する。その結果、スライドコア106に対応する領域内で積層体110の発泡倍率をその他の領域に比較して高くすることができる。ただし、スライドコア106が他方の成形型104に設けられているため、減圧による積層体110の厚みの増加方向が上記(
図5中(A))と逆になる。
【0052】
図6中(B):成形型102,104を開いてバリ部分を除去すると、上記の例(
図5中(B))と別形状のダクト部材10が得られる。ここで得られたダクト部材10についても、発泡樹脂材料層10a,10bの積層体から構成されており、フランジ部16や起立壁12については主に圧縮成形領域を含む構造であるが、片側壁14は増厚成形領域15を含んだ構造となる点は同様である。ただし、増厚成形領域15での増厚の方向がダクト部材10の開口側となっている点が上記の例と異なっている。なお、ここでも片側壁14が増厚成形領域15を含む構造の例を示しているが、起立壁12に増厚成形領域15を含む構造としてもよい。
【0053】
上記の製造方法(その1)は、主に片側壁14が増厚成形領域15を含む構造に適したものであるが、起立壁12、片側壁14及びフランジ部16を含む全体を増厚成形領域15とした構造のダクト部材10を製造する場合、以下の製造方法(その2)が適している。
【0054】
〔製造方法(その2)〕
図7から
図10は、製造方法(その2)における各工程を示す図である。第1実施形態のダクト部材10は、製造方法(その2)を用いて製造することもでき、その場合の構造は上記と異なったものとなる。なお、以下の説明では、製造方法(その1)と共通する事項には図示も含めて同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略するものとする。
【0055】
〔
図7:配置工程〕
ここでも同様に、溶融状態で発泡剤を含有した熱可塑性樹脂の材料を筒状パリソン100にして押し出し、分割された成形型102,102の間に配置する。ここでも同様に、熱可塑性樹脂の材料を一対のシート状にして押し出してもよい。
【0056】
〔成形型〕
スライドコア106は、ダクト部材10の全体(ピンチオフ部、バリ部分を除く成形品全域)に対応した形態となっており、その分、製造方法(その1)で用いたものに比較して大きくなっている。可動空間108についても同様である。
【0057】
〔
図8:成形工程〕
2つの成形型102,104を型締めし、素材であった筒状パリソン100がつぶれて発泡樹脂材料の積層体110となる。ここでも同様に、型締めで積層体110に圧縮(コンプレッション)を加え、成形型102,104の成形面に沿って積層体110を圧縮成形する。これにより、成形過程においてダクト部材10となる予定の部位全体が一時的に圧縮成形領域として成形されることになる。
【0058】
〔
図9:減圧工程〕
図9中(A):同様に、スライドコア106を可動空間108内にコアバックさせる。これにより、スライドコア106に対応する積層体110の全体(全域内)が減圧され、スライドコア106の後退に追従して積層体110全体の厚みが増加する。その結果、一時的に圧縮成形領域として成形されていた積層体110は、その全体の層厚及び発泡倍率が増加されて増厚成形領域15として成形されることになる。
【0059】
図9中(B):成形工程及び減圧工程の後、成形型102,104を開いてバリ部分を除去すると、全体が増厚成形領域15で形成された構造のダクト部材10が得られる。
【0060】
図10は、他方の成形型104にスライドコア106を配置した場合の製造方法(その2)を示す図である。スライドコア106は、他方の成形型104においてダクト部材10の全体(ピンチオフ部、バリ部分を除く成形品全域)に対応した形態となっており、その分、やはり製造方法(その1)で用いたものに比較して大きくなっている。可動空間108についても同様である。
【0061】
図10中(A):ここでも同様に、積層体110を圧縮成形する過程で、スライドコア106を可動空間108内に後退(コアバック)させる。これにより、スライドコア106に対応してダクト部材10となる予定の部位全体が減圧され、スライドコア106の後退に追従して積層体110の厚みが全体的に増加する。その結果、一時的に圧縮成形領域として成形されていた積層体110は、その全体の層厚及び発泡倍率が増加されて増厚成形領域15として成形されることになる。ただし、スライドコア106が他方の成形型104に設けられているため、減圧による積層体110の厚みの増加方向が上記(
図9中(A))と逆になる。
【0062】
図10中(B):成形型102,104を開いてバリ部分を除去すると、上記の例(
図9中(B))と略同様に、全体が増厚成形領域15で形成された構造のダクト部材10が得られる。
【0063】
〔第2実施形態〕
図11は、第2実施形態のダクト部材20を示す図である。
図11中(A)には、完成状態でのダクト部材20の形状が斜視図で示されており、
図11中(B)にはダクト部材20の構成部品が分解斜視図で示されている。
【0064】
図11中(A):第2実施形態のダクト部材20は、単独で空気流通路を構成する形態である。この例では、ダクト部材20の両端が開口しており、一端の開口から他端の開口に向けてダクト部材20の内部に空気流通路が形成されている。また、空気の流通方向でみて、ダクト部材20は全体的にクランク形状(S字型)をなしている。なお、ここではダクト部材20の両端が開口した例を挙げているが、いずれか一端が閉塞されていてもよい。
【0065】
図11中(B):ダクト部材20は、一対をなすダクト半体21が相互に連結された状態で内部に空気流通路を形成する態様である。一対のダクト半体21は互いに対称の形状をなしており、これらダクト半体21は、空気流通路を挟み込むようにして相互に連結され(貼り合わせられ)ている。個々のダクト半体21は、連結方向でみて互いに対向する一端が開口し、その他端が閉塞されることで、一端の開口から他端に向かう窪み形状をなしている。なお、各ダクト半体21の窪み形状をなす部分は、これらの連結状態ではダクト部材20としての空気流通路の壁を構成する。
【0066】
より詳細には、各ダクト半体21は、一端の開口縁に沿って起立した起立壁22を有する他、他端を閉塞する片側壁24を有する。起立壁12は、各一端の開口から他端に向かって適度な高さを有しており、開口縁に沿う周方向では、開口の形状(平面視でクランク形状)に合わせて直線状又は曲線状をなして延びている。また片側壁24は、各一端の開口に対応して平面視でクランク形状をなし、ここではそれぞれの他端を閉塞する平板状をなしている。なお、周方向でみて起立壁22は2箇所(ダクト部材20の両端に相当する部分)が開放されている。
【0067】
また、各ダクト半体21は、その開口縁の周囲にフランジ部26を有しており、フランジ部26は開口の外側に適度な幅を有して広がっている。フランジ部26もまた、開口縁に沿う周方向では、開口の形状に合わせて直線状又は曲線状をなして延びている。一対のダクト半体21は、互いのフランジ部26を密着させた状態で連結され、ダクト部材20を構成する。なお、ここではフランジ部26の密着面が平坦なものとして示されているが、密着面には長手方向に沿って凹溝や突条が形成されていてもよい。この場合、いずれか一方のダクト半体21ではフランジ部26に凹溝が形成されており、他方のダクト半体21ではフランジ部26に突条が形成されていてもよい。
【0068】
〔圧縮成形領域〕
図12は、空気の流通方向でみたダクト部材20の縦断面図である。第2実施形態のダクト部材20においては、各ダクト半体21が2つの発泡樹脂材料層21a,21bを重ね合わせて積層体となし、これを厚み方向に圧縮成形して製造されたものとなっている。このため各ダクト半体21の起立壁22、片側壁24及びフランジ部26の各部位は、いずれも発泡樹脂材料層21a,21bの積層体から構成されている。このうち、特に起立壁22及びフランジ部26については、発泡樹脂材料層21a,21bの積層体が圧縮成形された領域(圧縮成形領域)を含むことで適度な剛性を有するとともに、発泡樹脂による断熱性をも有している。
【0069】
〔増厚成形領域〕
また、各ダクト半体21の片側壁24については、その他の起立壁22に比較して厚みが大きく、発泡樹脂材料層21a,21bの積層体が厚みを増された(増厚された)状態にある。このような積層体の厚みを増された領域(「増厚成形領域25」として示す)は片側壁24の長手方向の全域に亘って延びており、これにより片側壁24は、その他の起立壁22に比較して増厚による発泡倍率の向上が図られている。例えば、起立壁22での発泡樹脂材料層21a,21bの発泡倍率が2倍〜5倍程度であるとすると、片側壁24の増厚成形領域25での発泡倍率は10倍〜20倍程度まで高く設定されている。各ダクト半体21において、このような増厚成形領域25が片側壁24に含まれていることにより、発泡樹脂材料層21a,21bの圧縮成形による適度な剛性を維持しつつ、増厚成形領域25での断熱性をより高くして、ダクト部材20全体としての断熱性能を向上することができる。
【0070】
〔製造方法(その1)〕
第2実施形態のダクト部材20は、一対のダクト半体21を個別に成形し、これらを相互に連結して製造することができる。なお、ここでは図示を省略しているかわり、適宜、第1実施形態で用いた
図4〜
図6等を参考にするものとする。
【0071】
〔配置工程(
図3等参考)〕
個々のダクト半体21を成形するため、溶融状態で発泡剤を含有した熱可塑性樹脂の材料を筒状パリソンにして押し出し、分割された2つの成形型の間に配置する。ここでも同様に、熱可塑性樹脂の材料を一対のシート状にして押し出してもよい。
【0072】
〔成形型(
図3等参考)〕
2つの成形型は、予めダクト半体21の成形に適した形状に加工されたものとして用意されているものとする。このうち、一方の成形型がダクト半体21の他端側に対応した形状(凹状成形面)を有しており、他方の成形型が一端の開口側に対応した形状(凸状成形面)を有しているものとする。また、一方の成形型はスライドコア及び可動空間を有するものとし、スライドコアが可動空間内にてスライド可能となっている。このときスライドコアは、成形品としてのダクト半体21でみて片側壁24に対応する部位に配置されているものとする。
【0073】
〔成形工程(
図4等参考)〕
2つの成形型を型締めする。これにより、素材であった筒状パリソンが型内つぶれ、発泡樹脂材料の積層体となる。さらに、型締めで積層体に圧縮(コンプレッション)を加えることにより、各成形型の成形面に沿って積層体が圧縮成形される。なお、圧縮成形の開始時において、スライドコアは最も前進した初期位置(成形面が周囲と連なる位置)にあるものとする。
【0074】
〔減圧工程(
図5等参照)〕
積層体を圧縮成形する過程で、スライドコアを可動空間内に後退させる。これにより、型締めされた状態の成形型内でスライドコアに対応する領域内が減圧され、スライドコアの後退に追従して積層体の厚みが増加する。その結果、スライドコアに対応する領域内で積層体の発泡倍率をその他の領域に比較して高くすることができる。
【0075】
成形工程及び減圧工程の後、成形型を開いてバリ部分を除去すると、単品としてのダクト半体21が得られる。ダクト半体21は、一対となるものをそれぞれ別個に成形する。また、得られたダクト半体21は、発泡樹脂材料層21a,21bの積層体から構成されており、フランジ部26や起立壁22については主に圧縮成形領域を含む構造であるが、片側壁24は増厚成形領域25を含んだ構造となる。なお、ここでは片側壁24が増厚成形領域25を含む構造の例を示しているが、起立壁22に増厚成形領域25を含む構造としてもよい。
【0076】
〔連結工程〕
そして、上記のようにして得られた一対のダクト半体21を互いに連結し、ダクト部材20を完成させる。
【0077】
なお、第2実施形態のダクト部材20の製造方法(その1)においても、他方の成形型にスライドコアを配置することができる。これにより、各ダクト半体21においては、片側壁24が空気流通路28の内側に積層体の厚みを増された構造となる。あるいは、一対をなすダクト半体21の一方は、片側壁24が空気流通路28の内側に積層体の厚みを増された構造とし、他方は片側壁24が空気流通路28の外側に積層体の厚みを増された構造としてもよい。
【0078】
さらに第2実施形態のダクト部材20は、以下の製造方法(その2)により製造することができる。
【0079】
〔製造方法(その2)〕
ここでも図示を省略しているかわり、適宜、第1実施形態の製造方法(その2)で用いた
図7〜
図10等を参考にするものとする。
【0080】
〔配置工程(
図7等参考)〕
個々のダクト半体21を成形するため、溶融状態で発泡剤を含有した熱可塑性樹脂の材料を筒状パリソンにして押し出し、分割された2つの成形型の間に配置する。ここでも同様に、熱可塑性樹脂の材料を一対のシート状にして押し出してもよい。
【0081】
〔成形型(
図7等参考)〕
例えば、一方の成形型はスライドコア及び可動空間を有するものとする。このときスライドコアは、成形品としてのダクト半体21の全部(全域)に対応しているものとする。
【0082】
〔成形工程(
図8等参考)〕
2つの成形型を型締めする。これにより、素材であった筒状パリソンが型内つぶれ、発泡樹脂材料の積層体となる。さらに、型締めで積層体に圧縮(コンプレッション)を加えることにより、各成形型の成形面に沿って積層体が圧縮成形される。これにより、積層体の全体が一時的に圧縮成形領域として成形されることになる。
【0083】
〔減圧工程(
図9等参照)〕
積層体を圧縮成形する過程で、スライドコアを可動空間内に後退(コアバック)させる。これにより、型締めされた状態の成形型内でスライドコアに対応する積層体の全体(全域内)が減圧され、スライドコアの後退に追従して積層体の厚みが全体的に増加する。その結果、一時的に圧縮成形領域として成形されていた積層体は、その全体の層厚及び発泡倍率が増加されて増厚成形領域25として成形されることになる。
【0084】
成形工程及び減圧工程の後、成形型を開いてバリ部分を除去すると、同じく単品としてのダクト半体21が得られる。得られたダクト半体21は、その全体が増厚成形領域25で形成された構造となる。
【0085】
〔連結工程〕
そして、上記のようにして得られた一対のダクト半体21を互いに連結し、ダクト部材20を完成させる。
【0086】
なお、第2実施形態のダクト部材20の製造方法(その2)においても、他方の成形型にスライドコアを配置することができる。また、ダクト半体21の一方は全体が圧縮成形領域24から形成されているが、他方のダクト半体21は片側壁24だけに圧縮成形領域25を含む構造としてもよい。
【0087】
〔第3実施形態〕
図13は、第3実施形態のダクト部材30を示す斜視図である。なお、
図13ではダクト部材30が実際の取り付け方向と逆向き(上下反転)の状態で示されているものとする。
【0088】
第3実施形態のダクト部材30は、上記のように自身が空気流通路を形成する態様と、車両1の構成部材(ルーフトリム2等)に取り付けられた状態で空気流通路を形成する態様とを混在させた構造である。このためダクト部材30は、発泡樹脂材料の積層体で一体成形されたものであっても、その一部に中空部40を含んでおり、この中空部40が単独で管状の空気流通路を形成している(図中に破線矢印で示す)。
【0089】
中空部40と別の部位は、第1実施形態のダクト部材10と同様に空気の流通方向でみて断面ハット形状をなしており、図中に実線矢印で示されているように、この例では空気流通路が2方向に分岐して形成されている。以下、より詳細に説明する。
【0090】
ダクト部材30は、平面視で略T字形状(ト字形状)をなしており、その一端部に中空部40が形成されている。このため中空部40を除いてみた場合、断面ハット形状をなす部位は略L字形状をなしている。
【0091】
中空部40は、ダクト部材30の一端において屈曲して形成されている。なお、中空部40の屈曲形状は、例えば車両1の構成部材(図示しないピラートリム等)の形状に沿わせて成形されたものである。また中空部40の一端の開口42には、車両1への取り付け状態において、図示しない別のダクトを連結可能となっている。また、中空部40の他端の開口44は、断面ハット形状をなす部位で形成される空気流通路に通じている。
【0092】
中空部40以外の断面ハット形状をなす部位は、これまでの第1,第2実施形態と同様に、構成部材への取り付け方向でみた一端(実際には下端)が開口し、他端(実際には上端)が閉塞されて一端の開口から他端に向かう窪み形状をなしている。この例では、平面視で開口が略L字型(へ字型)をなしているが、開口はその他の形状であってもよい。
【0093】
ダクト部材30の断面ハット形状をなす部位は、一端の開口縁に沿って起立した起立壁32を有する他、他端を閉塞する片側壁34を有する。起立壁32は、一端の開口から他端に向かって適度な高さを有しており、開口縁に沿う周方向では、開口の形状(平面視でL字型)に合わせて直線状又は曲線状をなして延びている。また片側壁34は、一端の開口に対応して平面視で略L字型をなし、ここでは他端を閉塞する平板状をなしている。なお、周方向でみて起立壁32は複数の箇所(L字の両端にそれぞれ相当する部分)が開放されており、この開放部分はダクト部材30の吹き出し口となるか、もしくは別のダクト(図示しない)に連結されるものとなっている。
【0094】
またダクト部材30の断面ハット形状をなす部位は、その開口縁の周囲にフランジ部36を有しており、フランジ部36は開口の外側に適度な幅を有して広がっている。フランジ部36もまた、開口縁に沿う周方向では、開口の形状に合わせて直線状又は曲線状をなして延びている。なお、断面ハット形状の部位と中空部40とが連結される部位からは、フランジ部36が中空部40の両側に回り込むようにして広がっている。
【0095】
ダクト部材30においても、断面ハット形状をなす部位は、起立壁32及び片側壁34がダクト壁本体となり、車両1の構成部材(ルーフトリム2等)への取り付け状態では、起立壁32及び片側壁34が構成部材とともに空気流通路の壁を構成する。またフランジ部36は、構成部材に密着することでダクト部材30全体を固定する。なお、ここでもフランジ部36の密着面には長手方向に沿って凹溝や突条が形成されていてもよい。
【0096】
〔圧縮成形領域〕
図14は、空気の流通方向でみたダクト部材30の縦断面図(
図13中のIX−IX線に沿う断面図)である。ダクト部材30の取り付け状態で断面ハット形状をなす部位は、起立壁32及び片側壁34がルーフトリム2の一部とともに空気流通路18の壁を構成している。ここでも同様に、ダクト部材30は2つの発泡樹脂材料層30a,30bを重ね合わせて積層体となし、これを厚み方向に圧縮成形して製造されたものである。このため起立壁32、片側壁34及びフランジ部36の各部位は、いずれも発泡樹脂材料層30a,30bの積層体から構成されている。このうち、特に起立壁32及びフランジ部36については、発泡樹脂材料層30a,30bの積層体が圧縮成形された領域(圧縮成形領域)を含むことで適度な剛性を有するとともに、発泡樹脂による断熱性をも有している。
【0097】
〔増厚成形領域〕
また、片側壁34については、その他の起立壁32に比較して厚みが大きく、発泡樹脂材料層30a,30bの積層体が厚みを増された(増厚された)状態にある。このような積層体の厚みを増された領域(「増厚成形領域35」として示す)は片側壁34の長手方向の全域に亘ってL字形状に延びており、これにより片側壁34は、その他の起立壁32に比較して増厚による発泡倍率の向上が図られている。例えば、起立壁32での発泡樹脂材料層30a,30bの発泡倍率が2倍〜5倍程度であるとすると、片側壁34の増厚成形領域35での発泡倍率は10倍〜20倍程度まで高く設定されている。このような増厚成形領域35が片側壁34に含まれていることにより、発泡樹脂材料層30a,30bの圧縮成形による適度な剛性を維持しつつ、増厚成形領域35での断熱性をより高くして、ダクト部材30全体としての断熱性能を向上することができる。
【0098】
なお、車両1の構成部材としては、上記のルーフトリム2やピラートリム等の各種内装材であってもよいし、ルーフパネルやピラーパネル等の構造材であってもよい。例えば、上述したルーフトリム2の裏面に断面ハット形状の部位を取り付け、中空部40を各種のピラー等に配管される別のダクトに連結してもよい。
【0099】
〔製造方法〕
図15から
図17は、第3実施形態のダクト部材30の製造方法における各工程を示す図である。第3実施形態のダクト部材30は、以下の製造方法を用いて製造することができる。
【0100】
〔
図15:配置工程〕
溶融状態で発泡剤を含有した熱可塑性樹脂の材料を筒状パリソン100にして押し出し、分割された成形型202,202の間に配置する。なお、筒状パリソン100とは別に、熱可塑性樹脂の材料を一対のシート状にして押し出してもよい点はこれまでと同様である。
【0101】
〔成形型〕
成形型202,204は、予めダクト部材30の成形に適した形状に加工されたものとして用意されている。このうち、一方の成形型202がダクト部材30の取り付け状態でみた上端側に対応する形状(凹状成形面202a)を有しており、他方の成形型204が下端の開口側に対応した形状(凸状成形面204a)を有している。凹状成形面202a,204aは、ダクト部材30のうち断面ハット形状をなす部位を成形するためのものである。
【0102】
成形型202,204は、中空部40の成形に対応してそれぞれブロー成形面202b,204bを有している。これらブロー成形面202b,204bは、成形型202,204を型締めした状態でブロー成形用のキャビティを形成する。また、ブロー成形面202b,204bの周囲には、フランジ部36の成形に対応してフランジ成形面202c,204cが設けられている。
【0103】
そして、一方の成形型202はスライドコア206及び可動空間208を有しており、スライドコア206が可動空間208内にてスライド可能となっている。なお、他方の成形型204には、上述したキャビティに通じるブローピン203が設けられている。また、各成形型202,204には、成形品の周囲に対応してピンチオフ部202d,204dが設けられている。
【0104】
〔
図16:成形工程〕
2つの成形型202,204を型締めする。これにより、凹状成形面202a、凸状成形面204a及びフランジ成形面202c,204cに対応する領域では、素材であった筒状パリソン100がつぶれて発泡樹脂材料の積層体となる。さらに、型締めで積層体に圧縮(コンプレッション)を加えることにより、各成形面202a,204a,202c,204cに沿って積層体が圧縮成形される。なお、圧縮成形の開始時において、スライドコア206は最も前進した初期位置(成形面が周囲と連なる位置)にある。
【0105】
一方、ブロー成形面202b,204bに対応する領域では、筒状パリソン100がキャビティ内に収容された状態となる。この状態で、ブローピン203から空気を吹き込み、中空部40となる部位をブロー成形する。
【0106】
〔
図17:減圧工程〕
凹状成形面202a及び凸状成形面204aに対応する領域において、積層体を圧縮成形する過程でスライドコア206を可動空間208内に後退させる。これにより、型締めされた状態の成形型202,204内でスライドコア206に対応する領域内が減圧され、スライドコア206の後退に追従して積層体の厚みが増加する。その結果、スライドコア206に対応する領域内で積層体の発泡倍率をその他の領域に比較して高くすることができる。
【0107】
特に図示していないが、成形工程及び減圧工程の後、成形型202,204を開いてバリ部分を除去すると、上記のダクト部材30が得られる。得られたダクト部材30は、中空部40が中空成形体で構成されるとともに、その他の断面ハット形状となる部位については発泡樹脂材料層30a,30bの積層体で構成されたものとなる。断面ハット形状となる部位は、フランジ部36や起立壁32については主に圧縮成形領域を含む構造であるが、片側壁34は増厚成形領域35を含んだ構造となる(
図14参照)。なお、ここでは片側壁34が増厚成形領域35を含む構造の例を示しているが、起立壁32に増厚成形領域35を含む構造としてもよい。
【0108】
また、第3実施形態のダクト部材30の成形において、他方の成形型204にスライドコア306を設けてもよい。この場合、
図14でみて増厚成形領域35は空気流通路38内に向けて厚みが増された状態となる。
【0109】
上述した各種実施形態のダクト部材10,20,30等によれば、ダクト壁本体となる部分が主に発泡樹脂材料の積層体を圧縮成形した圧縮成形領域で構成されることにより、適度な剛性を確保しつつ、発泡樹脂による断熱性をも発揮させることができる。さらにダクト壁本体が増厚成形領域を含むことにより、より高い断熱性能を有した車両用ダクト部材を提供することができる。
【0110】
また、材料である筒状パリソン100から圧縮成形領域と増厚成形領域を一体に成形しているため、増厚成形領域内の厚みを増しても質量を増加させることがなく、相対密度を低下させて全体の軽量化に寄与することができる。
【0111】
そして、各種実施形態とともに挙げた製造方法によれば、第1〜第3実施形態のように多様な構造を有するダクト部材10,20,30を車両1に取り付ける場合であっても、それぞれの形態について軽量化や断熱性の向上を図った発泡樹脂成形品を得ることができる。
【0112】
本発明は上述した各種実施形態に制約されることなく、変形して実施することができる。各種実施形態であげたダクト部材10,20,30等の形状はいずれも一例であり、本発明の車両用ダクト部材はその他の様々な形状として実現することができる。