【解決手段】 上端に形成された開口22の周囲に鍔状に形成される環状のフランジ部30を有する容器本体21と、フランジ部30の上面の全周に亘ってリブ状に形成され、開口22を被う蓋材12の裏面に熱融着される熱融着部40と、を有し、熱融着部40が、開口22の内周形状と略相似形状の環状部43と、環状部43の一部に形成され、平面視において開口22側からフランジ部30の外周側に向かって略V字状に開くように形成される蒸気排出部42と、を有し、容器本体21が、低発泡のポリオレフィンシート211と、低発泡のポリオレフィンシート211の蓋材12側の表面の全域にラミネートされたバリアフィルム212との層構造となっている。
前記バリアフィルムが、ポリ塩化ビニリデンと、前記ポリ塩化ビニリデンの表裏面のそれぞれに被着されたプロピレンとの層構造となっていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用容器。
前記バリアフィルムが、エチレンビニルアルコール共重合樹脂と、前記エチレンビニルアルコール共重合樹脂の表裏面のそれぞれに被着されたプロピレンとの層構造となっていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用容器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0011】
(電子レンジ用包装体10の全体構成)
まず、電子レンジ用包装体10の全体構成を
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態の電子レンジ用包装体10(以下、「包装体10」と称する)は、内容物11を密封状態で保存するものである。包装体10は、電子レンジ用容器20(以下、「容器20」と称する)と、この容器20の開口22を塞いで容器20を密封するフィルム状の蓋材12と、を備える。
【0012】
内容物11は、各種の食品などであり、電子レンジを用いて加熱されるものであれば、種類は任意である。
【0013】
(蓋材12の構成)
次に、蓋材12の構成を
図2に基づいて説明する。
図2に示すように、蓋材12の外形は、容器20の外形に沿って形成される。蓋材12は、単層のフィルム又は多層のフィルムで構成される。このような蓋材12の少なくとも裏面は、容器20の熱融着部40(後述)に熱融着可能な合成樹脂(例えば、ポリエチレンに代表されるポリオレフィン系樹脂など)で構成される。
【0014】
(容器20の構成)
次に、容器20の構成を
図3〜
図6に基づいて説明する。
図3(a)に示すように、容器20は、凹状に形成され内容物11を収容可能なトレイ状の容器本体21と、この容器本体21の上端の開口22の周囲に鍔状に形成される環状のフランジ部30とを有する。
【0015】
ここで、容器本体21は、
図3(a)のB部拡大図である
図3(b)に示すように、たとえば2層構造となっており、低発泡のポリオレフィンシートからなる基体211の蓋材12側の表面の全域にバリアフィルム212がラミネートされて構成されている。低発泡のポリオレフィンシートは、たとえば、ポリエチレン製の発泡シート、ポリプロピレン製の発泡シート等からなり、ポリオレフィン樹脂に対し50wt%未満の他の熱可塑性樹脂を混合したものが用いられる。また、バリアフィルム212は、
図3(b)のP部拡大図である
図4に示すように、3層構造となっており、たとえばポリ塩化ビニリデンからなる基材212Aの表裏面のそれぞれにプロピレンからなる層212B、212Cが形成されて構成されている。基材212Aのポリ塩化ビニリデンの構造式は次式(1)で示される。
【数1】
【0016】
また、基材212Aとしてはポリ塩化ビニリデンに限定されることはなく、たとえばエチレンビニルアルコール共重合樹脂(エバール:商標名)等であってもよい。エチレンビニルアルコール共重合樹脂の構造式は次式(2)で示される。
【数2】
バリアフィルム212の基材212Aをポリ塩化ビニリデン、あるいはエチレンビニルアルコール共重合樹脂等とすることにより、水蒸気あるいは酸素の侵入に対する防壁層として機能するようになる。また、バリアフィルム212の基材212Aの表裏面に形成する各層212B、212Cをプロピレンとすることにより、容器本体21の基体211および蓋材12との被着を強固にすることができる。
【0017】
なお、容器本体21の基体211の厚さは0.1〜1.5mmの範囲の値となっており、バリアフィルム212の厚さは35μm〜90μmの範囲の値となっている。また、バリアフィルム2112は、その基材212Aの厚さが5〜25μm、表裏面の各層212B、212Cの厚さが10〜30μm、基材212Aと各層212B、212Cを接着する接着層の厚さが1〜5μmの値となっている。
【0018】
図5に示すように、容器本体21は、平面視において外形が略長円状に形成される。なお、本発明にいう「容器本体」の外形は、この例に格別に限定されるものではなく、略長円状の他、略四角形状、略多角形状、略円状など各種の形状から選択可能である。
【0019】
フランジ部30は、開口22の内周形状に沿って略一定の幅で形成される環状の基部31と、この基部31よりも外側に突出する1対の把持部32とを有する。基部31は、容器本体21の中心を挟んで対向する1対の直線状部33と、これら1対の直線状部33の対向方向と直交する方向に対向する1対の円弧状部35とからなる。各把持部32は、円弧状部35の側端に形成される。さらに、フランジ部30の基部31には、基部31の上面の全周に亘って熱融着部40が形成される。
【0020】
図3に戻る。
図3(b)に示すように、この熱融着部40は、容器本体21の基体211とバリアフィルム212の層構造からなる基部31の上面から上方に突出するようにリブ状に形成される。容器20の少なくとも熱融着部40は、蓋材12の裏面に熱融着可能な合成樹脂(例えば、ポリエチレンに代表されるポリオレフィン系樹脂)で構成されており、この熱融着部40には、蓋材12が熱融着される。なお、容器本体21のバリアフィルム212は上の層212Cがプロピレンで形成されているため蓋材12と強固な被着がなされるようになる。
【0021】
より具体的には、熱融着部40に載せた蓋材12に対して、加熱された金属製のシールバーを上から押し当てることにより、熱融着部40と蓋材12の接触面が熱融着される。この接触面における熱融着強度は、シールバーの温度、シールバーを押し当てる時間、熱融着部40の材質及び蓋材12の材質などを変更することで調整可能であり、包装体10に要求される密封強度に応じて適切な大きさに調整される。
【0022】
一方、包装体10には、蓋材12を容易に剥離させる易開封性(イージーピール性)も要求される。易開封性を得るには、熱融着部40と蓋材12の接触面において熱融着されない部分を設けることが有効である。例えば、低密度ポリエチレンで蓋材12の裏面を構成し、低密度ポリエチレンにポリプロピレンを混合した材料で熱融着部40を構成する。これにより、熱融着部40と蓋材12の接触面において、熱融着される部分と熱融着されない部分とを設けることができる。
【0023】
図5に示すように、熱融着部40は、1対の円弧状部35のそれぞれの中央に形成される開封部41と、1対の直線状部33のそれぞれの中央に設けられる蒸気排出部42とを有する。また、熱融着部40のうち開封部41及び蒸気排出部42を除いた部分には、環状部43が形成される。
【0024】
各開封部41は、平面視においてフランジ部30の外周30a側から開口22側に向かって略V字状に開くように形成される。
【0025】
このように形成される開封部41は、電子レンジから取り出した包装体10を開封する際、蓋材12を良好に剥離させる機能を有する。すなわち、把持部32において、蓋材12の縁部12a(
図1参照)を手で摘まんで引き上げると(
図1、矢印(1))、開封部41の外周30a側の端部41aに応力が集中するため、外周30a側の端部41aを起点に開口22側の一対の端部41bに向かって蓋材12が開封部41から良好に剥離する。
【0026】
図6(a)に示すように、環状部43は、開口22の内周形状と略相似形状の環状の基準線Lに沿って形成される。また、環状部43は、開口22から、フランジ部30の幅Wの50%未満の位置、つまりフランジ部30の幅方向中心C1よりも開口22側に配置される。
【0027】
各蒸気排出部42は、平面視において開口22側から外周30a側に向かって略V字状に開くように形成される。また、蒸気排出部42の開口22側の端部42aは、フランジ部30の幅方向において基準線Lよりもやや開口22側に配置される。
【0028】
一方、蒸気排出部42の外周30a側の一対の端部42bは、フランジ部30の幅方向において基準線Lよりも外周30a側に配置される。この例では、外周30a側の一対の端部42bは、開口22から、フランジ部30の幅Wの50%以上の位置、つまりフランジ部30の幅方向中心C1よりも外周30a側に配置される。そして、外周30a側の一対の端部42bは、蒸気排出部42の両側に配置される環状部43の2つの端部43aに一対の傾斜部45を介して繋がる。
【0029】
なお、この例では、蒸気排出部42及び傾斜部45を曲線状に形成した構成を示すが、蒸気排出部42及び傾斜部45は、略直線状に形成してもよい。また、蒸気排出部42の端部42aの開き角度、蒸気排出部42と傾斜部45がなす角度及び環状部43と傾斜部45がなす角度の大きさは、任意に設定可能である。
【0030】
このように構成される蒸気排出部42においては、電子レンジによって内容物11(
図1参照)の水分が加熱されて内圧が上昇し、蓋材12(
図1参照)が押し上げられる際、押し上げられた蓋材12の縁部12a(
図1参照)を自動的に剥離させる機能を有する。すなわち、蒸気排出部42では、蓋材12(
図1参照)が押し上げられると、蒸気排出部42の開口22側の端部42aに応力が集中するため、この開口22側の端部42aを起点に蓋材12の縁部12a(
図1参照)が自動的に剥離される。その結果、密封性が失われ、蒸気排出部42から蒸気が排気される。なお、蒸気排出部42の奥行きd1は、要求される蒸気の排出機能に応じて適切な大きさに設定される。
【0031】
(実施形態の効果)
以上、説明した実施形態の効果について述べる。
本実施形態では、熱融着部40において、蒸気排出部42の外周30a側の一対の端部42bを基準線Lよりも外周30a側に配置した。また、蒸気排出部42の外周30a側の一対の端部42bを一対の傾斜部45を介して環状部43の端部43aに繋げるようにした。これにより、蒸気排出部42の必要な奥行きd1を確保しつつ、容器本体21の開口22に環状部43を近づけて配置することができる。
【0032】
ここで、仮に、蒸気排出部の一対の端部と環状部の端部とを直接繋げた場合について考える。
【0033】
図6(b)は、
図6(a)に示される熱融着部40の比較例を示す図である。
図6(b)に示すように、この比較例に係る熱融着部100では、蒸気排出部101の一対の端部101aをフランジ部102の幅方向において環状部103と略同じ位置に配置する。すなわち、傾斜部を設けずに、蒸気排出部101の一対の端部101aと環状部103の端部103aとを直接繋げる。このように構成される熱融着部100においては、環状部103は、蒸気排出部101の奥行きd1に相当する分だけ必然的に容器本体105の開口106から離れた位置になる。このため、開口106から環状部103までの距離P3が長くなる。その結果、フランジ部102の上面において内容物が入り込む隙間が広くなる。
【0034】
この点、
図6(a)に示される熱融着部40においては、容器本体21の開口22に環状部43を近づけて配置できるので、開口22から環状部43までの距離P1を短くすることができる。したがって、本実施形態によれば、蒸気排出部42によって自動的に蒸気を排出する機能を維持しつつ、フランジ部30の上面において内容物11が入り込む隙間を狭く形成することができる。
【0035】
また、容器本体21は、低発泡のポリオレフィンシートからなる基体211を有することから、レンジアップ後の包装体10を取り出す際に包装体10を熱くない状態で取り出すことができる。この場合、基体211の蓋材12側の表面にはバリアフィルム212がラミネートされているため、水蒸気、酸素の侵入を防ぐことができ、蓋材12との密着性も確保することができる。
【0036】
(熱融着部の変形例)
続いて、熱融着部の変形例を
図7〜
図10に基づいて説明する。
図7は、第1変形例に係る熱融着部の説明図であり、
図6(a)に対応する図である。
図8は、第2変形例に係る熱融着部の説明図であり、
図6(a)に対応する図である。
図9は、第2変形例に係る熱融着部の使用例を説明する図であり、
図10は、第2変形例に係る熱融着部の他の使用例を説明する図である。なお、前述した熱融着部40(
図6(a)参照)と共通する要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0037】
(第1変形例)
前述した熱融着部40(
図6(a)参照)では、蒸気排出部42の開口22側の端部42aを基準線Lよりもやや開口22側に配置した例を示したが、本発明にいう「蒸気排出部」の開口側の端部の位置は、任意に変更可能である。
【0038】
例えば、
図7に示される熱融着部40Aのように、蒸気排出部42Aの開口22側の端部42aを基準線Lが通る位置に配置してもよい。
【0039】
この熱融着部40Aによれば、蒸気排出部42Aの開口22側の端部42aを基準線L上に配置したので、環状部43を開口22の際に配置することができる。これにより、開口22から環状部43までの距離P2をより短くすることができる。したがって、フランジ部30の上面において内容物11が入り込む隙間をより一層狭く形成することができる。
【0040】
(第2変形例)
前述した熱融着部40(
図6(a)参照)では、蒸気排出部42と傾斜部45とを滑らかに繋げた例を示したが、蒸気排出部42と傾斜部45とがなす角部の形態は、任意に変更可能である。
【0041】
例えば、
図8に示される熱融着部40Bのように、蒸気排出部42Bと傾斜部45Bとをフランジ部30の外周30a側に角張るように繋げてもよい。
【0042】
この熱融着部40Bにおいては、蒸気排出部42B及び一対の傾斜部45Bが略M字状に連なることにより、蒸気排出部42Bの両側に一対の開封部41Bが形成される。これら一対の開封部41Bは、それぞれ、平面視において外周30a側から開口22側に向かって略V字状に開くように形成される。これにより、蒸気排出機能と開封機能を兼ね備える多機能部51を、フランジ部30に省スペースで設けることができる。
【0043】
この多機能部51では、蒸気排出部42Bと傾斜部45Bが角張るように繋がるため、奥行きd2が比較的大きくなる。このように奥行きd2が大きい多機能部51は、フランジ部30のうち比較的幅広に形成される部位に設けることが好ましい。
【0044】
例えば、
図9に示される容器20Cのように、蒸気排出機能と開封機能を兼ね備えた多機能部51を、一対の把持部32のそれぞれに省スペースで設けることができる。あるいは、
図10(a)に示すように、外形が角型(例えば、略矩形状)の容器20Dであって、上端の開口に鍔状に形成されるフランジ部30において、4隅のコーナー部52が他の部分より幅広になっているものにも適用できる。すなわち、
図10(a)の一点鎖線枠Pの拡大図である
図10(b)に示すように、多機能部51をフランジ部30のうち幅広部であるコーナー部52に省スペースで設けることができる。このように、蒸気排出機能と開封機能を兼ね備える多機能部51を把持部32やコーナー部52に集約することによって、フランジ部30の他の部分の幅W1,W2をより狭く形成することができる。その結果、よりコンパクトな容器20C,20Dを得ることができる。
【0045】
(容器の他の構成例)
次に、容器の他の構成例を
図11に基づいて説明する。
図11は、容器の他の構成例を示す平面図である。なお、前述した容器20(
図5参照)と共通する要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0046】
前述した容器20(
図5参照)では、内容物11を収容する1つの収容部を有する容器本体21を示したが、本発明にいう「容器本体」は、この他、複数の収容部を有するものでもよい。
【0047】
例えば、
図11に示すように、容器20Eでは、容器本体21Eが2つの収容部53を有する。これら2つの収容部53は、仕切り壁55で仕切られる。この仕切り壁55の上面には、環状部43の対向部間を連結する連結部56が形成される。2つの収容部53は、連結部56を含む熱融着部40Eに蓋材(図示省略)が熱溶着されることにより、それぞれが密封される。
【0048】
さらに、熱融着部40Eは、平面視において容器20Eの対角方向に配置される2つの蒸気排出部42Eを有する。これら2つの蒸気排出部42Eは、2つの収容部53のそれぞれに対応して設けられる。各熱融着部40Eにおいては、蒸気排出部42Eの外周30a側の一対の端部42bが、基準線Lよりも外周30a側に配置される。また、蒸気排出部42Eの端部42bが、傾斜部45Eを介して環状部43の端部43aに繋がる。
【0049】
このように構成される容器20Eによれば、2つの蒸気排出部42Eによって、2つの収容部53のそれぞれから自動的に蒸気を排出することができ、しかも、容器本体21Eの開口22に環状部43を近づけて配置することができる。
【0050】
なお、この容器本体21Eにおいても、上述したと同様、低発泡のポリオレフィンシートからなる基体の蓋材12側の表面の全域にバリアフィルムがラミネートされて構成され、バリアフィルムはポリ塩化ビニリデン(あるいはエチレンビニルアルコール共重合樹脂)からなる基材の表裏面のそれぞれにプロピレンからなる層が形成されて構成されている。
【0051】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0052】
例えば、実施形態では、熱融着部40,40A,40B,40Eを示したが、本発明にいう「熱融着部」は、これら熱融着部40A,40B,40Eを適宜組み合わせたものでもよい。