(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189569(P2015-189569A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】自動倉庫システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/14 20060101AFI20151006BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20151006BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
B65G1/14 J
B65G1/04 501
B65G1/00 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-69109(P2014-69109)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】浜本 憲史
(72)【発明者】
【氏名】福田 修
(72)【発明者】
【氏名】本田 和男
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 正史
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ09
3F022LL02
3F022MM52
3F022MM55
3F022MM57
3F022MM67
(57)【要約】
【課題】 自動倉庫内で復旧作業する作業者を、余震等により落下する荷物からから保護する。
【構成】 自動倉庫システムは、荷物を収納する間口を、高さ方向に沿って複数段、かつ長手方向に沿って複数連、備えるラックと、ラックの長手方向に沿って配置されかつ走行レールを備える走行スペースと、走行レール上を走行するスタッカークレーンとを備える自動倉庫を有する。地震からの復旧時に、ラックに着脱自在でかつ分解自在な落下物防護バリアをラックに取り付けて走行スペースを覆い、その下方に作業者の安全通路を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を収納する間口を、高さ方向に沿って複数段、かつ長手方向に沿って複数連、備えるラックと、
ラックの長手方向に沿って配置されかつ走行レールを備える走行スペースと、
前記走行レール上を走行するスタッカークレーンとを備える自動倉庫、を有する自動倉庫システムであって、
前記ラックに着脱自在でかつ分解自在であり、ラックに取り付けた際に前記走行スペースを覆うことにより、下方に作業者の安全通路を形成する落下物防護バリア、を備えていることを特徴とする、自動倉庫システム。
【請求項2】
落下物防護バリアが、ラックの長手方向に沿って一部ずつ取り付け自在であることを特徴とする、請求項1の自動倉庫システム。
【請求項3】
前記ラックの一部に、走行スペースから作業者が出入り自在で、落下物から保護され、かつ落下物防護バリアを分解された状態で保管するシェルターが設けられていることを特徴とする、請求項1または2の自動倉庫システム。
【請求項4】
落下物防護バリアを走行スペース内のスタッカークレーンを除くエリアに取り付け自在に構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの自動倉庫システム。
【請求項5】
自動倉庫内への作業者の出入りを規制するための扉が設けられ、
前記扉として、作業者用の小さな扉と、床面を移動できる作業台車用の大きな扉の2種類の扉が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかの自動倉庫システム。
【請求項6】
前記落下物防護バリアは前記扉へ向けて突出する部分を備えていることを特徴とする、請求項5の自動倉庫システム。
【請求項7】
前記シェルター内に照明器具とその電源とが収納されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの自動倉庫システム。
【請求項8】
前記走行レール上を移動できる手動台車を備えていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの自動倉庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動倉庫システムに関し、特に地震による被害からの自動倉庫の復旧に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日の東日本大震災のため、北関東、東北地方を中心に多くの自動倉庫が機能を停止した。ラックの損傷、スタッカークレーンの脱線等のように、自動倉庫自体のハードウェアが損傷した例は少なく、ラックから落下した荷物のために、スタッカークレーンが走行不能になる例が多かった。
【0003】
自動倉庫の機能が停止したため東日本大震災では、
・ 震災からの復旧に必要な資材を自動倉庫から取り出せない、
・ 原材料、部品等を自動倉庫から取り出せないため、工場の操業が停止する、
・ 生活必需品を自動倉庫から取り出せないため、消費者の手に届けることが出来ない、等のことが生じた。従って、今後このような大規模な地震に対して、自動倉庫を早期に復旧できるようにすることが必要である。
【0004】
ここで関連する先行技術を示す。特許文献1(特開2003-292118)は、自動倉庫内での高所作業用に、スタッカークレーンの走行スペースの上部に足場を組むことを開示している。ただしこれは地震からの復旧等を意識したものではない。特許文献2(特開平08-326349)は、室内にシェルターを設けて、天井や壁等が崩れても人を保護できるようにすることを開示している。ただしこれも、自動倉庫の復旧等を意識したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-292118
【特許文献2】特開平08-326349
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
震災からの復旧作業では、高層のラックからスタッカークレーンの走行スペースへ落下した荷物を手作業等で取り除いて、スタッカークレーンを走行可能な状態にする必要がある。この作業中にラックから荷物が落下すると作業者に危害を及ぼすおそれがあり、特に余震で荷物が落下するおそれがある。そこで作業者が安全に復旧作業をできる環境を整えることが必要である。
【0007】
この発明の課題は、自動倉庫内で復旧作業する作業者を、余震等により落下する荷物から保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、荷物を収納する間口を、高さ方向に沿って複数段、かつ長手方向に沿って複数連、備えるラックと、
ラックの長手方向に沿って配置されかつ走行レールを備える走行スペースと、
前記走行レール上を走行するスタッカークレーンとを備える自動倉庫、を有する自動倉庫システムであって、
前記ラックに着脱自在でかつ分解自在であり、ラックに取り付けた際に前記走行スペースを覆うことにより、下方に作業者の安全通路を形成する落下物防護バリア、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ラックを用いて、例えばラックに固定されている棚受等により、落下物防護バリアをラックに固定する。勿論ラックの支柱に、落下物防護バリアを係止するためのフック、プレート等を設けても良い。例えば走行スペースの左右双方にラックがある場合、左右双方のラックを掛け渡すように、落下物防護バリアを固定する。落下物防護バリアは、例えばラック間を掛け渡す梁と、梁に支持される板状あるいは金網状の部材から成り、分解と組立及びラックへの着脱が自在である。落下物防護バリアの高さは例えば作業者の背よりも高い程度の高さとし、落下物防護バリアの下方を作業者の安全通路として、落下物から守られながら復旧作業ができるようにする。棚受に落下物防護バリアを取り付ける場合、例えば下から2段目の棚受を用いる。
【0010】
好ましくは、落下物防護バリアが、ラックの長手方向に沿って一部ずつ、例えば1間口ずつ、取り付け自在である。このようにすると、落下物防護バリアで守られた安全通路を延ばしながら、復旧作業を行うことができる。
【0011】
好ましくは、前記ラックの一部に、走行スペースから作業者が出入り自在で、落下物から保護され、かつ落下物防護バリアを分解された状態で保管するシェルターが設けられている。余震等が生じた際に作業者はシェルターに退避することができる。またシェルターは落下物防護バリアの収納場所を兼ね、その他の復旧用の資材の保管にも用いることができ、作業者用の飲料水等を備蓄しておくこともできる。シェルターを照らす照明器具とその電源とをシェルターに設置しておくと、便利である。なおシェルターは、例えばラックの最下段の間口内に配置する。
【0012】
落下物防護バリアは例えば、走行スペース内のスタッカークレーンを除くエリアに取り付け自在にする。即ち、走行スペースの途中で、落下物等のためスタッカークレーンが移動できない状態になっていても、走行スペースの端部等にある自動倉庫の入口から、スタッカークレーンまで安全通路を延ばすことができるようにする。そしてスタッカークレーンが復旧すれば、自動倉庫も比較的容易に復旧できる。
【0013】
多くの自動倉庫では、例えば端部に自動倉庫内への作業者の出入りを規制するための扉が設けられている。ここで、作業者用の公知の小さな扉の他に、床面を移動できる手動等の作業台車用に、大きな扉を設けることが好ましい。すると、ラックから落下した荷物、あるいは復旧用の資材等を作業台車で運ぶことができる。この作業台車は自動倉庫内に保管しても、自動倉庫の外部に保管して、復旧時に大きな扉から自動倉庫内に入れても良い。
【0014】
ラックの側方から荷物が落下するおそれもある。そこで落下物防護バリアに扉へ向けて突出する部分を設けると、ラックの側方から落下する荷物等から作業者を保護することができる。
【0015】
地震後の自動倉庫内は暗闇である場合が多い。そこでシェルター内に照明器具とその電源とを収納しておくと、例えば安全通路に照明器具を取り付けることができる。またラックを照らし、スタッカークレーンを照らすこともできる。
【0016】
スタッカークレーンの走行スペースには走行レールが固定されており、通常の手動台車が移動するには、レールが邪魔になる。そこで走行レール上を移動する手動台車を設け、例えばこの台車をシェルターに保管しておく。走行レール上を移動できる台車が有れば、復旧資材の運搬、落下した荷物の片づけ、荷物の搬出等が容易になる。なお、走行スペースの端部等の大きな扉を通過できる作業台車とこの手動台車は基本的に別のものであるが、走行レールの側面でガイドされるように、作業台車に退避自在なガイドローラを設けると、2種類の台車を兼用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】実施例の自動倉庫での、ラック内のシェルターを示す図
【
図3】実施例の自動倉庫で、スタッカークレーンの走行スペースに設けられた、落下物防護バリアを示す平面図
【
図5】実施例の自動倉庫で、スタッカークレーンの走行レールと、手動台車とを示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0019】
図1〜
図5に実施例の自動倉庫システムを示す。
図1は復旧作業中の自動倉庫2を示し、自動倉庫2に復旧用の資材(手動台車38等)を合わせたものを、自動倉庫システムとする。4はラックで、荷物を収納する間口を高さ方向に沿って多段に、かつラック4の長手方向に沿って多連に備えている。そして例えば左右一対のラック4,4の間に走行スペース6が設けられ、走行スペース6には走行レール12が固定され、スタッカークレーン8が走行する。
【0020】
ラック4と走行スペース6の一端にはステーション10が設けられ、他端には安全柵32と安全扉34,35が設けられている。なおステーション10にはローラコンベヤ等が設けられて、スタッカークレーン8と図示しない有軌道台車等の間で、荷物を受け渡しできるようにされている。
図1では、スタッカークレーン8が2台の自動倉庫2を示すが、スタッカークレーン8を10台以上備える大規模な自動倉庫でも、スタッカークレーン8が1台の小規模な自動倉庫でも良い。
【0021】
スタッカークレーン8は、スライドフォーク16等の移載装置を備える昇降台14をマスト18に沿って昇降させ、走行レール12に沿って走行する。そしてステーション10及び任意の間口との間で、荷物を受け渡しできる。20はラック4の支柱で、棚受24が固定され、一対の棚受24,24間のスペースが間口22である。
【0022】
自動倉庫2での、ステーション10とは反対側に安全柵32が設けられ、自動倉庫2の側面は外壁33で覆われている。安全柵32を外壁に変えても良く、逆に外壁33を安全柵32に変えても良い。安全柵32には施錠された2種類の安全扉がある。安全扉34は大きく、走行スペース6に面し、手動台車38が通るためのもので、手動台車38はキャスター車輪等を備え、作業者が手押しで移動できる手動台車である。安全扉35は小さく、作業者が通るためのもので、それ自体としては公知である。安全柵32とラック4との間のスペースを、作業者の通路31とする。また36は走行レール12上を移動する手動台車である。
【0023】
自動倉庫2が大地震を経験すると、ラック4から走行スペース6へ落下した荷物のため、スタッカークレーン8は走行不能になることが多い。ラック4に不安定な状態で残っている荷物は余震で落下するおそれがあり、また自動倉庫2内の照明も消えている場合が多い。そこで安全にかつ効率的に復旧作業を行う必要がある。そして復旧作業での第1の課題は、走行スペース6を片づけ、スタッカークレーン8を動作させることである。
【0024】
走行スペース6に沿って、落下物防護バリア26を間口毎に設置する。安全柵32の内側の通路31側から走行スペース6内へ落下物防護バリア26を設置し、例えば1間口ずつスタッカークレーン8側へ延長する。また落下物防護バリアの張出部27,28を設け、ラック4の側万から落下する荷物等に備える。同様にステーション10側からも、走行スペース6内に落下物防護バリア26を例えば1間口ずつ設置し、スタッカークレーン8まで延長する。また通路31側に落下物防護バリアの張出部29を設け、ラック4の側面から落下する荷物等に備える。落下物防護バリアの材料は例えばラック4内のシェルター30に備蓄してあるので、取り出して棚受24に支持させるように組み立てることにより、落下物防護バリア26とする。なお図には示さないが、ラック4の端部の第1段の間口をシェルター30とすると便利である。
【0025】
シェルター30は
図2の構造体40から成り、41は柱、42は梁、43は斜材で、その上部に鋼板47が並べられて、落下する荷物等に耐えるようにしてある。シェルター30は、ラック4の最下段の間口に設けられ、かつ内部の作業者等を落下する荷物等から保護でき、落下防護バリア26等の復旧用の資材を収納できるものであれば良く、構造は任意である。またシェルター30は、数間口毎〜10間口毎等のように、ラック4内に間隔を置いて設ける。
【0026】
シェルター30内には照明器具44と、バッテリー、自家発電機等の電源45が設けられ、保管枠46等に落下物防護バリア26の部品等の資材48が保管され、また飲料水、工具、安全通路内の照明器具とその電源、等の資材50も保管されている。さらに36は走行レール12上を移動する手動台車で、走行スペース6内での運搬に用いる。なおWは荷物で、例えばパレット上に積まれた段ボールである。
【0027】
図3は落下物防護バリア26を示し、例えば棚受24に梁52が載せられ、必要に応じて棚受24に固定されている。例えば一対の梁52,52上に鉄板53が載せられて、必要に応じて梁52に固定されている。そして電池等の電源を内蔵する、もしくはシェルター30の電源45に接続された照明器具54により安全通路を照らす。落下物防護バリア26の下方のスペースを安全通路と呼ぶ。落下物防護バリア26を1つの間口22毎に設置して行くと、比較的短い鉄板53を用い、作業の進捗に応じて設置できる。また鉄板53は側部を互いに嵌合して、落下物等から受ける衝撃を分散しても良く、また穴の有る鉄板等でも、鉄板53に変えて溶接金網等でも良い。
【0028】
梁52と鉄板53の構造は任意で有るが、例えば
図4に示すように、梁52を2重に重ねた角筒55,56と端部のフック57,57とで構成しても良い。フック57により棚受24に嵌合し、2重の角筒55,56を伸ばして、一対のラック4,4を掛け渡せる長さにする。同様に鉄板53を2重に重ねた板材58,59により構成し、内側の板材59を引き出して、間口22の幅分の長さにしても良い。2重の角筒55,56は互いに固定して強度を増し、同様に板材58,59も互いに固定して強度を増すことが好ましい。
【0029】
自動倉庫2の復旧作業では、安全扉35を通って作業者が出入りし、安全扉34を通って手動台車38が出入りして、荷物の搬出、資材の搬入等を行う。走行スペース6には走行レール12とその枕木等があって、手動台車38は通行しにくい。そこで走行レール12上を移動する手動台車36を用い、常時はこれをシェルター30に保管しておく。
【0030】
手動台車36の構造を
図5に示し、60は走行車輪、62はガイドローラで、90°揺動自在な取付部63に支持され、取付部63を揺動させると
図6の鎖線の位置へ退避する。64は荷台で、66は手で押しあるいは引くためのバーである。
【0031】
以上のようにして、スタッカークレーン8の位置まで、ステーション10側と通路31側とから、落下物防護バリア26を1間口ずつ延長し、安全通路を形成する。そしてこの間に、落下した荷物等を搬出すると共に復旧資材を搬入し、必要であればスタッカークレーン8を補修する。この間に余震等が有ると、シェルター30に一時避難する。そしてスタッカークレーン8が復旧すると、ラック4の整理、荷物の搬出等が容易になる。
【符号の説明】
【0032】
2 自動倉庫
4 ラック
6 走行スペース
8 スタッカークレーン
10 ステーション
12 走行レール
14 昇降台
16 スライドフォーク
18 マスト
20 支柱
22 間口
24 棚受
26 落下物防護バリア
27〜29 張出部(突出する部分)
30 シェルター
31 通路
32 安全柵
33 外壁
34 安全扉(作業台車用の大きな扉)
35 安全扉(作業者用の小さな扉)
36 手動台車(走行レール上を移動する手動台車)
38 手動台車(作業台車)
40 構造体
41 柱
42 梁
43 斜材
44 照明器具(シェルター用の照明)
45 電源
46 保管枠
47 鋼板
48,50 資材
52 梁
53 鉄板
54 照明器具(安全通路用の照明)
55,56 角筒
57 フック
58,59 板材
60 走行車輪
62 ガイドローラ
63 取付部
64 荷台
66 バー
W 荷物