【解決手段】厚みが1.0〜10mmであり、全体密度d1に対する、表面から深さ0.2mmまでの表層密度d2の比(d2/d1)が0.8〜1.8であり、連続気泡率が9〜30体積%である、ポリスチレン系樹脂発泡板。また、該ポリスチレン系樹脂発泡板の製造方法であって、ポリスチレン系樹脂発泡シートを蒸気で加熱して発泡させ、ポリスチレン系樹脂発泡板を得る工程を有し、前記ポリスチレン系樹脂発泡シートは、厚みが0.5〜5.0mmであり、全体密度d3に対する、表面から深さ0.2mmまでの表層密度d4の比(d4/d3)が1.0〜1.8であり、連続気泡率が5〜26体積%である、ポリスチレン系樹脂発泡板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、発泡板の「表層」とは、発泡板の表面から深さ0.2mmまでの層を意味する。同様に、発泡シートの「表層」とは、発泡シートの表面から深さ0.2mmまでの層を意味する。
【0015】
<発泡板>
本発明の発泡板は、ポリスチレン系樹脂を含有する板状の発泡体、いわゆるポリスチレンペーパー(PSP)である。
本発明の発泡板は、厚みが1.0〜10mmであり、全体密度d1に対する、表面から深さ0.2mmまでの表層密度d2の比(d2/d1)が0.8〜1.8であり、連続気泡率が9〜30体積%である。ただし、表層密度d2は、発泡板の両面のそれぞれの表層密度の平均値とする。
厚み、比(d2/d1)および連続気泡率を前記範囲に制御することで、表面形状にムラが生じることが抑制され、フラットで良好な外観を有し、かつ製造後に収縮や三次発泡が起きにくく優れた寸法安定性を有する発泡板となる。また、表面硬度が高くなりすぎず、柔軟性があり、緩衝性を有する発泡板となる。
【0016】
発泡体の厚みは、1.0〜10mmであり、1.0〜8.0mmが好ましく、1.0〜7.0mmがより好ましい。発泡体の厚みが前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板となる。発泡体の厚みが前記上限値以下であれば、柔軟性があり、また軽量化が容易になる。
【0017】
発泡板の全体密度d1に対する表層密度d2の比(d2/d1)は、0.8〜1.8であり、0.8〜1.7が好ましく、0.8〜1.6がより好ましい。比(d2/d1)が前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板となる。比(d2/d1)が前記上限値以下であれば、柔軟性がある発泡板となる。
【0018】
発泡板の全体密度d1は、0.03〜0.15g/cm
3が好ましく、0.035〜0.09g/cm
3がより好ましく、0.04〜0.08g/cm
3がさらに好ましい。全体密度d1が前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板となりやすい。全体密度d1が前記上限値以下であれば、柔軟性がある発泡板となりやすい。
【0019】
発泡板の表層密度d2は、0.03〜0.15g/cm
3が好ましく、0.035〜0.12g/cm
3がより好ましく、0.04〜0.10g/cm
3がさらに好ましい。表層密度d2が前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板となりやすい。表層密度d2が前記上限値以下であれば、柔軟性がある発泡板となりやすい。
【0020】
発泡板の連続気泡率は、9〜30体積%であり、10〜28体積%が好ましく、10〜25体積%がより好ましい。発泡体の連続気泡率が前記下限値以上であれば、柔軟性があり、緩衝性を有する発泡板となる。発泡体の連続気泡率が前記範囲内であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板となる。
【0021】
発泡板の表面硬度は、50〜75が好ましく、53〜73がより好ましい。発泡板の表面硬度が前記下限値以上であれば、優れた寸法安定性が得られやすい。発泡板の表面硬度が前記上限値以下であれば、柔軟性があり、優れた緩衝性を有する発泡板となりやすい。
【0022】
発泡板の坪量は、75〜400g/m
2が好ましく、100〜350g/m
2がより好ましい。発泡板の坪量が前記下限値以上であれば、発泡板の強度を保ちやすい。発泡板の坪量が前記上限値以下であれば、柔軟性があり、緩衝性を有する発泡板となりやすい。
【0023】
発泡板の最大点応力は、100〜650kPaが好ましく、150〜600kPaがより好ましい。発泡板の最大点応力が前記下限値以上であれば、発泡板の強度を保ちやすい。発泡板の最大点応力が前記上限値以下であれば、柔軟性があり、緩衝性を有する発泡板となりやすい。
なお、最大点応力とは、JIS K7171−2008に準拠して3点押し曲げ試験を行ったときの最大点応力を意味する。
【0024】
発泡板の弾性率は、10〜30MPaが好ましく、12〜25MPaがより好ましい。発泡板の弾性率が前記下限値以上であれば、発泡板の強度を保ちやすい。発泡板の弾性率が前記上限値以下であれば、柔軟性があり、緩衝性を有する発泡板となりやすい。
なお、弾性率とは、JIS K7171−2008に準拠して3点押し曲げ試験を行ったときの弾性率を意味する。
【0025】
ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン系単量体の単独重合体または共重合体等が挙げられる。また、ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体と、該スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体とを共重合させた、スチレン系単量体を主成分とする共重合体を用いてもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレンに基づく構成単位を全構成単位に対して50質量%以上有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0026】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
スチレン系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性単量体;等が挙げられる。
ビニル系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で製造したポリスチレン系樹脂、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる他、使用済みの発泡板、ポリスチレン系樹脂発泡成形体(食品包装用トレー等)等を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。該リサイクル原料としては、使用済みの発泡板、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料を用いることができる。
ポリスチレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の発泡体においては、ポリスチレン系樹脂が主成分である範囲で、ポリスチレン系樹脂に他の樹脂を配合してもよい。ポリスチレン系樹脂が主成分であるとは、発泡体の全樹脂成分(100質量%)に対するポリスチレン系樹脂の割合が50質量%以上であることを意味する。
【0030】
他の樹脂を配合したポリスチレン系樹脂としては、例えば、発泡板の耐衝撃性を向上させるものとして、ジエン系のゴム状重合体(ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体等)を配合したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。
また、他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0031】
また、他の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いてもよい。ポリスチレン系樹脂にポリフェニレンエーテル系樹脂を配合することで、ポリスチレン系樹脂を単独で用いる場合に比べて、より靱性に優れ、割れにくく、強度に優れ、さらに耐熱性にも優れた発泡板となる。
ポリスチレン系樹脂にポリフェニレンエーテル系樹脂を配合する場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂の割合は、全樹脂成分(100質量%)に対して、5質量%以上50質量%未満が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
他の樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の発泡板には、物性を損なわない範囲内で、造核剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤(炭化水素、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸、シリコーン油、低分子ポリエチレン等のワックス等)、展着剤(流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ポリブテン等)、着色剤等の添加剤を添加してもよい。なかでも、本発明の発泡板は、造核剤を含有することが好ましい。
【0033】
造核剤としては、例えば、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カルシウム、クレー、クエン酸等が挙げられる。なかでも、造核剤としては、タルクが好ましい。造核剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
造核剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0034】
本発明の発泡板の少なくとも一方の表面には、紙または樹脂フイルムを積層することができる。発泡板の表面に紙や樹脂フイルムを積層することにより、表面をより美麗にし、また剛性をより高くすることができる。
樹脂フィルムは、着色料(顔料、染料等)を添加することで様々な色調に着色でき、また表面に印刷を施すことで様々な模様やデザインを表示できる。同様に、紙の表面に印刷を施すことで様々な模様やデザインを表示できる。
発泡板の表面に紙または樹脂フイルムを積層したものは、例えば、POP用ディスプレイ基板に使用できる。
【0035】
発泡板に積層する樹脂フィルムの材質としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0036】
発泡板に積層する紙または樹脂フィルムの厚みは、10〜100μmが好ましい。
紙の積層方法としては、ホットメルト系接着剤等の接着剤により積層する方法等が挙げられる。
樹脂フィルムの積層方法としては、溶融状態とした熱可塑性樹脂を発泡板の表面にフィルム状に押出して熱融着させる方法、樹脂フィルムを発泡板に重ね合わせ、熱融着または接着剤により接着する方法等が挙げられる。
【0037】
以上説明した本発明の発泡板は、厚み、全体密度d1に対する表層密度d2の比(d2/d1)、および連続気泡率が特定の範囲に制御されているため、外観が良好で、製造後に寸法が変化しにくく寸法安定性に優れるうえ、柔軟性があり、優れた緩衝性を有する。
【0038】
<発泡板の製造方法>
本発明の発泡板の製造方法としては、例えば、下記の一次発泡工程および二次発泡工程を有する方法が挙げられる。
一次発泡工程:少なくともポリスチレン系樹脂と発泡剤を溶融混練した溶融混練物を押出機から押出して発泡(一次発泡)させ、発泡シート(一次シート)を得る工程。
二次発泡工程:発泡シートを蒸気により加熱して発泡(二次発泡)させ、発泡板を得る工程。
【0039】
[一次発泡工程]
一次発泡工程では、例えば、ポリスチレン系樹脂、および必要に応じて用いる他の樹脂、造核剤等を押出機に供給して加熱溶融し、発泡剤を加えて混練し、押出機の先端に取り付けられた金型から押出しつつ発泡(一次発泡)させ、得られた発泡シート(一次シート)を巻き取って回収する。回収した発泡シートは、発泡板の原反となる。
【0040】
発泡剤としては、物理発泡剤が好ましい。
物理発泡剤としては、炭素数6以下の炭化水素(例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素)が好ましく、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンがより好ましい。発泡剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡剤の使用量は、使用する全樹脂成分100質量部に対して、1.0〜6.0質量部が好ましく、1.5〜5.0質量部がより好ましい。
【0041】
押出機の先端に取り付ける金型としては、例えば、環状開口を有する環状金型(サーキュラーダイ)、Tダイ等が挙げられる。
環状金型を用いる場合の具体的な態様としては、例えば、環状金型から押出した円筒状発泡体を冷却マンドレルに沿わせつつ、該円筒状発泡体の外面に冷却エアーを吹き付けて冷却し、該冷却マンドレルの先端部の両側に設けたカッターにより、該円筒状発泡体に軸方向に切れ目を入れて切開し、2枚の発泡シートとする態様が挙げられる。
【0042】
一次発泡における発泡倍率は、7〜15倍が好ましく、9〜12倍がより好ましい。一次発泡における発泡倍率が前記下限値以上であれば、発泡板の軽量化が容易になる。一次発泡における発泡倍率が前記上限値以下であれば、強度の高い発泡板が得られやすい。
【0043】
一次発泡工程では、得られる発泡シートが後述の厚み、全体密度d3に対する、表面から深さ0.2mmまでの表層密度d4の比(d4/d3)、および連続気泡率の各条件を満たすように製造条件を制御することが好ましい。
例えば、発泡剤の量を調節することで、発泡シートの厚みを制御できる。また金型の温度をより高くすることで、発泡シートの比(d4/d3)をより小さくすることができる。また、ポリスチレン系樹脂を溶融した後の温度を高くすることより、発泡シートの連続気泡率を高くすることができる。
【0044】
[二次発泡工程]
二次発泡工程では、例えば、
図1に示すように、一次発泡工程で得られた発泡シートロール10から発泡シート1を送り出し、ガイドロール12によって蒸気発泡槽14内を通過するように連続的に搬送し、蒸気発泡槽14内で蒸気により加熱して発泡(二次発泡)させる。次いで、二次発泡させて得た発泡板2を冷却ロール16により冷却し、裁断機18により所定の寸法に裁断する。
発泡シートを蒸気により加熱して二次発泡させる方法は、発泡倍率を高くしやすく低密度な発泡板が得られやすい点、より柔軟性に優れ、優れた緩衝性を有する発泡板が得られる点で有利である。本発明では、ポリスチレン系樹脂との相性が良く、発泡シートを充分に二次発泡させやすい点から、蒸気として水蒸気を用いることが特に好ましい。
【0045】
(発泡シート)
二次発泡工程に用いる発泡シートは、厚みが0.5〜5.0mmであり、全体密度d3に対する表層密度d4の比(d4/d3)が1.0〜1.8であり、連続気泡率が5〜26体積%であることが好ましい。
発泡シートを二次発泡させることでより厚みが増し、より密度が高くなり、より連続気泡率が増加した発泡板が得られる。
【0046】
発泡シートの連続気泡率を適度に高めることで発泡シート内に蒸気が均一に入りやすくなる。また、発泡シートの表層密度d4を全体密度d3に近づける、すなわち比(d4/d3)を1.0に近づけることで、発泡シート内に蒸気が均一に入りやすくなる。そのため、発泡シートが前記の条件を満たすことで該発泡シートを充分な発泡倍率で二次発泡させやすくなり、前述した厚み、比(d2/d1)および連続気泡率の各条件を満たす、外観が良好で優れた寸法安定性を有する発泡板を得ることが容易になる。
また、発泡シートが前記の条件を満たしていれば、より優れた柔軟性を有し、優れた緩衝性を有する発泡板が得られる。
【0047】
発泡シートの厚みは、0.5〜5.0mmが好ましく、0.9〜4.0mmがより好ましく、1.0〜3.7mmがさらに好ましい。発泡シートの厚みが前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板が得られやすい。発泡シートの厚みが前記上限値以下であれば、より柔軟性に優れ、優れた緩衝性を有する発泡板が得られやすく、また発泡板の軽量化が容易になる。
【0048】
発泡シートの全体密度d3に対する表層密度d4の比(d4/d3)は、1.0〜1.8が好ましく、1.0〜1.7がより好ましく、1.0〜1.6がさらに好ましい。比(d4/d3)が前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板が得られやすい。比(d4/d3)が前記上限値以下であれば、蒸気が発泡シート内により均一に入り、充分な発泡倍率で二次発泡させやすくなる。また、より柔軟性に優れ、優れた緩衝性を有する発泡板が得られやすい。
【0049】
発泡シートの全体密度d3は、0.04〜0.20g/cm
3が好ましく、0.05〜0.18g/cm
3がより好ましく、0.05〜0.15g/cm
3がさらに好ましい。全体密度d3が前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板が得られやすい。全体密度d3が前記上限値以下であれば、蒸気が発泡シート内により均一に入り、充分な発泡倍率で二次発泡させやすくなる。また、より柔軟性に優れ、優れた緩衝性を有する発泡板が得られやすい。
【0050】
発泡シートの表層密度d4は、0.04〜0.25g/cm
3が好ましく、0.05〜0.23g/cm
3がより好ましく、0.05〜0.20g/cm
3がさらに好ましい。表層密度d4が前記下限値以上であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板が得られやすい。表層密度d4が前記上限値以下であれば、蒸気が発泡シート内により均一に入り、充分な発泡倍率で二次発泡させやすくなる。また、より柔軟性に優れ、優れた緩衝性を有する発泡板が得られやすい。
【0051】
発泡シートの連続気泡率は、5〜26体積%が好ましく、5〜23体積%がより好ましく、5〜20体積%がさらに好ましい。発泡シートの連続気泡率が前記下限値以上であれば、発泡シート内に蒸気が入りやすく、充分な発泡倍率で二次発泡した充分な厚みの発泡板を得ることが容易になる。また、より柔軟性に優れ、優れた緩衝性を有する発泡板が得られやすい。発泡シートの連続気泡率が前記上限値以下であれば、外観が良好で、優れた寸法安定性を有する発泡板が得られやすい。
【0052】
二次発泡工程では、一次発泡工程で得られた発泡シートを大気圧条件下に置いて熟成させた後に二次発泡に用いることが好ましい。一次発泡直後の発泡シートでは、形成された気泡内に存在する気体状の発泡剤の体積が冷却によって収縮するために、気泡内が減圧状態になり、二次発泡を起こしにくい。発泡シートを熟成することで、シート外部から気泡内に空気が侵入し、気泡内が大気圧状態となる。これにより、発泡シートを充分な発泡倍率で二次発泡させやすくなる。また、二次発泡後に発泡板の気泡が収縮しにくくなるため、発泡板の寸法安定性がより良好になる。
【0053】
蒸気発泡槽内の温度は、80〜120℃が好ましく、90〜110℃がより好ましい。
【0054】
以上説明した本発明の発泡板の製造方法では、厚み、全体密度d1に対する表層密度d2の比(d2/d1)、および連続気泡率が特定の範囲に制御した発泡板とするため、得られる発泡板は外観が良好で、寸法安定性に優れるうえ、優れた緩衝性を有する。
【0055】
なお、本発明の発泡板の製造方法は、前記した製造方法には限定されない。
本発明の発泡板の製造方法では、二次発泡させた発泡板の表面に紙または樹脂フィルムを積層してもよい。
具体的には、例えば、以下のような方法としてもよい。
図2に示すように、発泡シートロール10から発泡シート1を送り出し、ガイドロール12によって蒸気発泡槽14内を通過させつつ、蒸気により加熱して発泡(二次発泡)させる。その後、接着剤付きの紙3を一対の紙ロール20から送り出して発泡板2の両面にそれぞれ重ね、接着用熱ロール22により加熱接着して積層体4とし、冷却ロール16により冷却し、裁断機18により所定の寸法に裁断する。樹脂フィルムを積層する場合は、紙ロール20の代わりに、発泡板と同素材の樹脂フィルムを用いるか、あるいは接着剤付きの樹脂フィルムが巻き回された樹脂フィルムロールを用いることで、前記した紙の場合と同様の方法で積層が行える。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[坪量の測定]
発泡シートの幅方向の両端20mmを除いた部分を、幅方向に等間隔に10cm×10cmに切り取り、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定した。各切片の質量(g)の平均値を1m
2当たりの質量に換算した値を、発泡シートの坪量(g/m
2)とした。発泡板の坪量についても同様に測定した。
【0057】
[厚みの測定]
発泡シートにおける、その幅方向の両方の縁から20mmの端部領域を除いた部分において、ダイヤルシックネスゲージSM−112(テクロック社製)を用いて、幅方向に等間隔に9点以上厚みを測定し、それらの相加平均を厚みとした。発泡板の厚みについても同様に測定した。
【0058】
[連続気泡率の測定]
発泡シートの連続気泡率は、ASTM D−2856−87に準拠して1−1/2−1気圧法にて測定した。
具体的には、発泡シートを一辺25mmの平面正方形状に切断し、この切断片を厚み方向に複数枚重ね合わせ、厚みが約25mmの試験片を作製した。同じ要領で合計5個の試験片を作製し、空気比較式比重計(東京サイエンス社製、商品名「1000型」)を用いて、1−1/2−1気圧法により各試験片の連続気泡率を測定した。1−1/2−1気圧法により測定した試験片の体積Vと、ノギスで測定した寸法から算出した同じ試験片の体積V
0から、下式(1)より各試験片の連続気泡率Z(体積%)を算出し、それらの相加平均値を発泡シートの連続気泡率とした。
Z=(V
0−V)/V
0×100 ・・・(1)
発泡板の連続気泡率についても同様に測定した。
【0059】
[全体密度の測定]
発泡シートにおける、その幅方向の両方の縁から20mmの端部領域を除いた部分から、10cm×10cmの矩形の切片を、シートの幅方向に等間隔に9個以上切り出し、各切片の質量W
A(g)を測定した。また、ダイヤルシックネスゲージSM−112(テクロック社製)を用いて各切片の厚みを測定し、各切片の体積V
A(mm
3)を算出した。下式(2)により各切片の密度d
A(g/cm
3)を算出して、各切片の密度d
Aを相加平均した値を発泡シートの全体密度d3とした。
d
A=W
A/V
A×10
3 ・・・(2)
発泡板の全体密度d1についても同様に測定した。
【0060】
[表層密度の測定]
スライサー(フォーチュナ社(ドイツ)製スプリッティングマシン、型式AB−320−D)にて、発泡シートの両面の表層(厚み0.2mm)を切り取り、さらに幅25mm、長さ150mmにカットして測定用試験片とした。全体密度の測定の場合と同様に該測定用試験片の質量W
B(g)と体積V
B(mm
3)を測定し、下式(3)より発泡シートの表層密度d4(g/cm
3)を算出した。
d4=W
B/V
B×10
3 ・・・(3)
ただし、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した発泡シートから切り取り、23±2℃、50±5RH%、または27±2℃、65±5RH%の雰囲気条件に16時間以上放置したものを測定に使用した。
発泡板の表層密度d2についても同様に測定した。
【0061】
[表面硬度の測定]
各例で得られた発泡板の表面硬度を以下の方法で測定した。
発泡板から幅130cm×長さ50cmの試験片を切り出し、アスカー表面硬度測定器(型式:「CS型」、アスカー社製)を用いて、表面硬度測定器を試験片表面に押し付けた際の値を表面硬度として測定した。また、測定は試験片において幅方向に20cmごと、押出方向に15cmごとに行い、それらの算術平均を表面硬度とした
【0062】
[外観評価]
得られた発泡板を目視で確認し、以下の基準で外観を評価した。
○(良好):凹凸ムラがなく、平滑性がある。
×(不良):凹凸ムラがあり、平滑性がない。
【0063】
[最大点応力、弾性率の測定]
JIS K7171−2008に準拠して、発泡板の最大点応力および弾性率を測定した。
具体的には、テンシロン万能試験機(エー・アンド・デイ社製、商品名「RTG−1310」)を用いて3点押し曲げ試験を行った。測定条件を以下に示す。
試験片サイズ:50mm×150mm。
治具間距離:100mm。
圧縮治具:先端寸法(R)が5mmである圧子と、試験片と接する部分を起点に5°の
傾斜を有する幅100mmの支持台。
圧縮速度:50mm/分。
押し曲げ距離:30mm。
エー・アンド・デイ社製の汎用試験器用データ処理システム MSAT0002RTF/RTGのプログラム中に試験片の厚み、幅、長さを入力した状態で前記3点押し曲げ試験を行い、自動的に算出されるデータとして最大点応力(kPa)、弾性率(MPa)を求めた。
【0064】
[寸法変化の評価]
蒸気発泡(二次発泡)直後の発泡板の表面に、長さ100mmの二本の直線を互いに直交した状態となるように描いた。なお、何れか一本の直線は押出方向に平行となるようにした。次に、発泡板を23℃±3℃、湿度60%±5%の雰囲気下にて1週間に亘って放置した後、二本の直線の長さLをそれぞれ測定し、各直線について下記式に基づいて寸法変化率(%)を算出し、二本の寸法変化率の相加平均値を寸法変化率とした。
寸法変化率(%)=100×(L−100)/100
寸法変化の評価は、以下の基準で行った。
○(良好):蒸気発泡から1週間後で寸法変化率が1%以下。
×(不良):蒸気発泡から1週間後で寸法変化率が1%を超える。
【0065】
[総合評価]
総合評価は、以下の基準で行った。
○:全ての項目において良好(○)であった場合、総合評価良好。
×:1つの項目でも不良(×)があった場合、総合評価不良。
【0066】
[実施例1]
ポリスチレン系樹脂(東洋スチレン社製、商品名「HRM−26」)97.8質量%と、造核剤としてタルクマスターバッチ(竹原化学社製、商品名「MO−60」、PS/タルク(質量比)=40/60)2.2質量%とをドライブレンドした。得られた混合物を第1および第2の2台の押出機を有するタンデム押出機(口径65mm−90mm)のホッパーに供給し、第1押出機内で溶融、混練しつつ、発泡剤としてブタン(イソブタン/ノルマルブタン(質量比)=30/70)をポリスチレン系樹脂100質量部あたり1.2質量部圧入した。さらに溶融混練した溶融混練物を第1押出機から第2押出機に連続的に供給し、第2押出機内の樹脂温度t
1を発泡に適する166℃まで冷却し、第2押出機先端に接続された口径φ124mmの環状金型から押出した。金型先端温度t
2は120℃であった。押出された円筒状発泡体をプラグ径403mm、長さ500mmの冷却マンドレルの外周面に沿わせ、冷却マンドレルの左右に設けたカッターで該円筒状発泡体を切開して2枚の発泡シート(一次シート)とした。得られた発泡シート(一次シート)は、厚みが1.2mm、全体密度d3が0.112g/cm
3、表層密度d4が0.115g/cm
3、比(d4/d3)が1.03、連続気泡率が5.0体積%であった。
図1に例示した、全長11m、内部温度113℃、蒸気圧0.016MPaのトンネル型蒸気発泡槽内を連続的に通過するように、引取速度13.5m/分の条件で発泡シート(一次シート)を搬送した。該蒸気発泡槽内では、該発泡シートを100℃の水蒸気で加熱して発泡(二次発泡)させた。その後、直径300mm、表面温度35℃の冷却ロールの間を通過させて冷却し、幅620mm、長さ1000mmに裁断して厚み1.85mmのフラットな発泡板を得た。
【0067】
[実施例2〜5]
原料配合、樹脂温度t
1、金型先端温度t
2、金型口径、および冷却マンドレルのプラグ径を表1に示すとおりに変更し、蒸気発泡工程の条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして発泡板を得た。
【0068】
[実施例6]
以下のように条件を変更した以外は、実施例1と同様にして発泡板を得た。
原料配合、樹脂温度t
1、金型先端温度t
2、金型口径、および冷却マンドレルのプラグ径は表1に示すとおりに変更した。蒸気発泡工程の条件は表2に示すように変更した。さらに
図2に例示したように、蒸気発泡槽から出た発泡板の両面に、ホットメルト接着剤(商品名「ヒロダイン7558、ヤスハラケミカル社製)を表面にコーティングしたクラフト紙(厚み0.1mm)をホットメルト接着剤層が発泡板側に来るように積層した。接着用熱ロールの温度は100℃とした。
【0069】
[比較例1〜4]
原料配合、樹脂温度t
1、金型先端温度t
2、金型口径、および冷却マンドレルのプラグ径を表1に示すとおりに変更し、蒸気発泡工程の条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして発泡板を得た。
【0070】
各例における発泡シート(一次シート)の各測定結果を表1、発泡板の各測定結果および評価結果を表2に示す。
なお、表1における発泡剤の配合量は、ポリスチレン系樹脂100質量部あたりの量を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示すように、厚み、比(d2/d1)および連続気泡率がいずれも本発明の条件を満たす実施例1〜6の発泡板は、外観が良好で、製造後の寸法変化が抑制され寸法安定性に優れ、また表面硬度も小さく柔軟性があり、緩衝性を有していた。
一方、連続気泡率が30体積%超で比(d2/d1)が0.8未満である比較例1の発泡板は、表面にムラが生じて外観が不良で、また製造後に寸法が変化してしまい寸法安定性が劣っていた。
連続気泡率が30体積%超である比較例2の発泡板も、外観が不良で、また製造後に寸法が変化してしまい寸法安定性が劣っていた。
連続気泡率が9体積%未満で比(d2/d1)が1.8超である比較例3、4の発泡板は、外観が良好で、寸法安定性に優れるものの、表面硬度が高くなりすぎて柔軟性が劣っていた。