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特開2015-189849ゴム組成物、及びそれから得られるシール材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189849(P2015-189849A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びそれから得られるシール材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20151006BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20151006BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20151006BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   C08L23/16
   C08K3/04
   C08K5/14
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 Q
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-67569(P2014-67569)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086759
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 喜平
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智和
(72)【発明者】
【氏名】山下 晶広
(72)【発明者】
【氏名】窪山 剛
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA03
4H017AA29
4H017AB01
4H017AB07
4H017AC01
4H017AC02
4H017AC03
4H017AC07
4H017AC08
4H017AC14
4H017AC15
4H017AC17
4H017AD01
4J002AE052
4J002BB151
4J002DA036
4J002EG077
4J002EK018
4J002EK038
4J002EK058
4J002EK068
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD148
4J002FD150
4J002FD207
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】耐熱性と耐薬品性に優れたシール材の原料となるゴム組成物を提供する。
【解決手段】エチレン−プロピレン共重合ゴム及び/又はエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴムであるエチレン−プロピレンゴムポリマー、並びにサーマルブラックであるカーボンブラックを含む組成物であって、前記組成物中のカップリング剤の含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して、0〜0.4重量部であるゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−プロピレン共重合ゴム及び/又はエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴムであるエチレン−プロピレンゴムポリマー、並びにサーマルブラックであるカーボンブラックを含む組成物であって、
前記組成物中のカップリング剤の含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して、0〜0.4重量部であるゴム組成物。
【請求項2】
前記エチレン−プロピレンゴムポリマーが、非油展エチレン−プロピレンゴム共重合ゴム及び/又は非油展エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴムである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して前記カーボンブラックを
80重量部以上含む請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックがMTカーボンである請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
過酸化物をさらに含み、前記過酸化物が、ジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、及びn−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレートからなる群から選択される1以上である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記過酸化物の含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜5重量部である請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記組成物中のプロセスオイルの含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜10重量部である請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記組成物中の共架橋剤の含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜2重量部である請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物から得られるシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれから得られるシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、石油化学、石油精製、電力、製紙等の各種プラント配管の継ぎ手として使用され、その隙間を塞ぐと同時に、流体の漏れ又は外部からの異物の進入を防止するものである。
【0003】
特に化学業界で広く使用されているプレート式熱交換器に使用するガスケットでは、高温の内部流体に長時間晒されても流体の圧力に耐えられる引張強さや伸びを保持している必要がある他、流体間及び高温な流体と外部との間をシールするために耐汚染性及び高い耐熱性も要求される。
しかしながら、ガスケットは酸化劣化による架橋の増加や切断によって表面にクラックが発生し、当該クラックから漏洩が生じてしまう等の問題があった。
【0004】
特許文献1は、ゴム、カーボンブラック及びチタネート系カップリング剤を含むシール材用ゴム組成物を開示する。しかしながら、当該組成物から得られるガスケットであっても耐熱性等の物性は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−72959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性と耐薬品性に優れたシール材の原料となるゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の組成物等が提供される。
1.エチレン−プロピレン共重合ゴム及び/又はエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴムであるエチレン−プロピレンゴムポリマー、並びにサーマルブラックであるカーボンブラックを含む組成物であって、
前記組成物中のカップリング剤の含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して、0〜0.4重量部であるゴム組成物。
2.前記エチレン−プロピレンゴムポリマーが、非油展エチレン−プロピレンゴム共重合ゴム及び/又は非油展エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴムである1に記載のゴム組成物。
3.前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して前記カーボンブラックを
80重量部以上含む1又は2に記載のゴム組成物。
4.前記カーボンブラックがMTカーボンである1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
5.過酸化物をさらに含み、前記過酸化物が、ジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、及びn−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレートからなる群から選択される1以上である1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
6.前記過酸化物の含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜5重量部である5に記載のゴム組成物。
7.前記組成物中のプロセスオイルの含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜10重量部である1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
8.前記組成物中の共架橋剤の含有量が、前記エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜2重量部である1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
9.1〜8のいずれかに記載のゴム組成物から得られるシール材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性と耐薬品性に優れたシール材の原料となるゴム組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のゴム組成物は、エチレン−プロピレン共重合ゴム及び/又はエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)であるエチレン−プロピレンゴムポリマー、並びにサーマルブラックであるカーボンブラックを含む組成物であって、組成物中のカップリング剤の含有量が、エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して、0〜0.4重量部である。
【0010】
本発明のゴム組成物が含むエチレン−プロピレンゴムポリマーは、好ましくは非油展エチレン−プロピレンゴム共重合ゴム及び/又は非油展エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴムである非油展エチレン−プロピレンゴムポリマーである。
尚、エチレン−プロピレンゴムポリマーが油展エチレン−プロピレンゴムポリマーである場合、当該油展エチレン−プロピレンゴムポリマーに含まれるオイルによって耐アミン性が低下するおそれがある。
【0011】
本発明のゴム組成物が含むカーボンブラックはMTカーボンブラック、FTカーボンブラック等のサーマルブラックである。当該カーボンブラックは他のカーボンブラックに比べて粒子表面の官能基が少ないために補強性が弱い。従って、ゴム組成物がMTカーボンブラック又はFTカーボンブラック等のサーマルブラックであるカーボンブラックを多く含む場合であっても、得られるゴムが硬くなるおそれがない。
カーボンブラックには様々なグレードのカーボンブラックがあるが、好ましくはMTカーボンブラック及びFTカーボンブラックから選択される1以上のカーボンブラックであり、より好ましくはMTカーボンブラックである。
尚、例えばISAF級カーボンブラック、SAF級カーボンブラック、HAF級カーボンブラック、MAF級カーボンブラック、MAF級カーボンブラック、FEF級カーボンブラック、GPF級カーボンブラック、SRF級カーボンブラックは本発明での使用には適さない。
【0012】
カーボンブラックの含有量は、好ましくはエチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して80重量部以上、より好ましくは90重量部超以上であり、さらに好ましくは100重量部以上である。上限は通常200重量部以下、好ましくは180重量部以下である。
ブラックカーボンの含有量を上記範囲とすることで、組成物中のエチレン−プロピレンゴムポリマーの含有量を抑えることができること、及びブラックカーボンの作用によって、高い耐熱性が得られる。
【0013】
本発明のゴム組成物は、さらに過酸化物を含んでもよい。
本発明のゴム組成物が含む過酸化物は、架橋剤として機能できる過酸化物であればよく、当該過酸化物としては、例えばジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレートが挙げられる。本発明のゴム組成物が過酸化物を含む場合、当該過酸化物は、好ましくはこれら過酸化物からなる群から選択される1以上である。
【0014】
過酸化物の含有量は、好ましくはエチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜5重量部であり、より好ましくは0.3〜4重量部であり、さらに好ましくは0.5〜3.5重量部である。
【0015】
本発明のゴム組成物はカップリング剤の含有量が、エチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して、0〜0.4重量部であり、好ましくはチタネート系カップリング剤等のカップリング剤を含まない。
カップリング剤の含有量が少ないと耐熱性に優れる。
【0016】
上記カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤;シランカップリング剤;ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
本発明のゴム組成物は共架橋剤を含んでもよく、当該共架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド等が挙げられ、その他アクリレート系、メタクリレート系共架橋剤等も用いることができる。
【0018】
共架橋剤の含有量は、好ましくはエチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜2重量部であり、より好ましくは0〜1.5重量部である。共架橋剤の含有量が少ないと耐熱性に優れる。
【0019】
ゴム組成物がパラフィンオイル等のプロセスオイルを含む場合、得られるゴム組成物の耐アミン性が低下するおそれがある。また、プロセスオイルは時間の経過とともにブリードアウト又は揮発し、当該プロセスオイルのブリードアウトや揮発によって得られる成形品が経時的に劣化するおそれがある。
本発明のゴム組成物のプロセスオイルの含有量は、好ましくはエチレン−プロピレンゴムポリマー100重量部に対して0〜10重量部である。
【0020】
本発明のゴム組成物は、エチレン−プロピレン共重合ゴム及び/又はエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴムであるエチレン−プロピレンゴムポリマー、並びにサーマルブラックであるカーボンブラックを含めばよく、任意にさらに過酸化物、共架橋剤を含んでもよい。エチレン−プロピレンゴムポリマー及びカーボンブラックで組成物の95重量%以上、99重量%以上、又は99.5重量%以上を占めてもよい。
本発明のゴム組成物は、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で架橋助剤、充填剤、老化防止剤等を含んでもよい。
【0021】
本発明のゴム組成物は、シール材の原料として好適であり、本発明のゴム組成物より得られるシール材は、耐熱性、耐放射線性、耐アミン性に優れたシール材である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1−7
表1に示す配合の材料をロールにて混練してゴム組成物とし、これを170℃に予熱された所定の形状の金型に充填し、22分間プレス成型を行った後、熱風循環式ギアオーブン中で170℃1時間2次架橋を行って試験片を得た。
【0024】
表1中の各成分は、以下の通りである。尚、ENBは、エチリデンノルボルネンの略である。
[EPDM]
EPDM1:非油展EPDM(ムーニー粘度ML1+4(125℃)80、エチレン含有量55%、第3成分ENB5.5重量%)
EPDM2:非油展EPDM(ムーニー粘度ML1+4(125℃)25、エチレン含有量53%、第3成分ENB6重量%)
EPDM3:非油展EPDM(ムーニー粘度ML1+4(125℃)42、エチレン含有量51%、第3成分ENB4.5重量%)
EPDM4:非油展EPDM(ムーニー粘度ML1+4(125℃)48、エチレン含有量54%、第3成分ENB9重量%)
[カーボンブラック]
サーマックスN990:MTカーボンブラック(平均1次粒子径280nm、Cancarb社製)
[過酸化物]
パーヘキサ25B:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(日本油脂(株))
[老化防止剤]
ノクラックCD:4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学(株))
【0025】
比較例1
ゴム組成物として、非油展EPDM(70重量部)と油展量40重量部の油展EPDM(100重量部)、1次粒子径が23nmであるカーボンブラック(ISAF級カーボンブラック:ショウブラックN220、キャボットジャパン株式会社製)(90重量部)、過酸化物2.8重量部、共架橋剤2.5重量部、老化防止剤1重量部を含む組成物を用いた他は、実施例1−7と同様にしてゴムシートを製造した。
【0026】
比較例2
ゴム組成物として、シリコーンゴム(100重量部)、着色剤1重量部、過酸化物0.8重量部を含む組成物を用いた他は、実施例1−7と同様にしてゴムシートを製造した。
【0027】
比較例3
ゴム組成物として、フッ素ゴム(100重量部)、MTカーボン20重量部、共架橋剤(トリアリルイソシアヌレート)4重量部、過酸化物(パーヘキサ25B)1.5重量部を含む組成物を用いた他は、実施例1−7と同様にしてゴムシートを製造した。
【0028】
評価例1
実施例1−7と比較例1−3で得られたゴムシートについて、以下の耐熱試験及び耐アミン性試験を実施した。結果を表1に示す。
[耐熱性試験]
耐熱性試験は、JIS K6262に準拠し、圧縮永久ひずみ特性によって評価した。
試験片は大形試験片(φ29mm、厚さ12.5mm)を3個用い、圧縮率を25%に設定して行った。まず、試験片を標準温度23℃に置き、4時間恒温した後、厚さを測定した。次に試験片を圧縮板(平滑なステンレス鋼板)に置き、圧縮率が25%となるように規定したスペーサを試験片の外側に設置した。その後、圧縮板がスペーサに密着するまで油圧式ハンドプレスで圧縮し、ボルト締めで圧縮状態を維持した。
この試験ジグを任意の試験温度の熱風循環式ギアオーブン内に任意の試験時間保持した。試験時間が経過した後、試験ジグを取り出し、直ちに圧縮状態から開放し、厚さ1cmの木板上に試験片を置き、標準温度23℃で30分放置した後に試験片中央部の厚さを測定した。得られた試験前後の試験片厚さ及びスペーサ厚さから下記式に代入して圧縮永久ひずみを算出した。
CS=(t−t)/(t−t)×100
(式中、CSは、圧縮永久ひずみ(%)を表す。
は、試験片の元の厚さ(mm)を表す。
は、スペーサの厚さ(mm)を表す。
は、圧縮装置から取外し、30分後の試験片の厚さ(mm)を表す。)
【0029】
[耐アミン性試験]
長さ30mm、幅30mm、厚さ2mmに切断した試験片を用意し、空気中重量及び、水中重量を天秤で測定した。
これら試験片を100ccのPFA製蓋付き容器にモノエタノールアミン溶液を70cc入れた浸漬容器に入れて蓋をし、100℃の熱風循環式オーブンで168時間保持した。試験時間が経過した後、浸漬容器を取り出し、室温まで放冷した。容器から試験片を取り出し、表面のモノエタノールアミン溶液をウエスで拭き取った後に空中重量及び水中重量を測定した。得られた試験前後それぞれの空中重量及び水中重量から試験片体積を算出し、試験前後体積変化率を算出し、体積変化率を耐アミン性として評価した。
【0030】
【表1】
【0031】
評価例2
実施例1と比較例1〜3で得られたゴムシートについて、以下の耐蒸気試験及び耐放射線試験を実施した。結果を表2に示す。
[耐蒸気性試験]
耐蒸気性試験は、オートクレーブを用いて実施し、圧縮永久ひずみ特性によって評価した。試験片は大形試験片(φ29mm、厚さ12.5mm)を3個用い、圧縮率を25%に設定して行った。
まず、試験片を標準温度23℃に置き、4時間恒温した後、厚さを測定した。次に試験片を圧縮板(平滑なステンレス鋼板)に置き、圧縮率が25%となるように規定したスペーサを試験片の外側に設置した。その後、圧縮板がスペーサに密着するまで油圧式ハンドプレスで圧縮し、ボルト締めで圧縮状態を維持した。この試験ジグを任意の試験温度のオートクレーブ内に任意の試験時間保持した。試験時間が経過した後、オートクレーブを23℃まで冷却し、試験ジグを取り出した。23℃で試験ジグを圧縮状態から開放し、厚さ1cmの木板上に試験片を置き、標準温度23℃で30分放置した後に試験片中央部の厚さを測定した。得られた試験前後の試験片厚さ及びスペーサ厚さから耐熱性試験で用いた圧縮永久ひずみ計算式に代入して圧縮永久ひずみを算出した。
【0032】
[耐放射線試験]
耐放射線試験は、試験片に放射線を照射したものを用いて大気雰囲気下と蒸気雰囲気下での圧縮永久ひずみ特性によって評価した。試験片は大形試験片(φ29mm、厚さ12.5mm)を3個用い、圧縮率を25%に設定して行った。まず、試験片をアルミ箔で個別に包み、アルミケース(高さ15mm、幅300mm、長さ300mm)に梱包した。このケースに線源にCo60を使用したγ線を線量率10kGy/hrで総照射線量が800kGyとなるまで照射した。アルミケースから試験片を取り出し、得られた試験片を標準温度23℃に置き、4時間恒温した後、厚さを測定した。
次にこの試験片を用いて耐熱性試験、耐蒸気性試験と同様の操作で圧縮永久ひずみを測定した。
【0033】
【表2】
【0034】
実験例1−5
表3に示す配合の材料をロールにて混練してゴム組成物とし、これを170℃に予熱された所定の形状の金型に充填し、22分間プレス成型を行った後、熱風循環式ギアオーブン中で170℃1時間2次架橋を行って試験片を得た。
得られたゴムシートについて、評価例1と同様の耐熱性評価を行った。結果を表3に示す。
【0035】
表3中の各成分は、以下の通りである。
[EPDM]
EPDM1:非油展EPDM(ムーニー粘度ML1+4(125℃)80、エチレン含有量55%、第3成分ENB5.5重量%)
EPDM2:非油展EPDM(ムーニー粘度ML1+4(125℃)25、エチレン含有量53%、第3成分ENB6重量%)
[カーボンブラック]
FEF級カーボンブラック(平均1次粒子径43nm)
[架橋剤(過酸化物)]
パーヘキサ25B:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(日本油脂(株))
[カップリング剤]
ブレンアクトKR−TTS:チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ(株))
[共架橋剤]
NKエステル4G:ポリエチレングリコール #200 ジメタクリレート(新中村化学工業(株))
【0036】
【表3】
【0037】
表3からカップリング剤又は共架橋剤を含むと耐熱性が低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の組成物は、ガスケット等のシール材に好適に使用できる。