特開2015-189933(P2015-189933A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2015-189933熱線遮蔽樹脂シート材および自動車、建造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189933(P2015-189933A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】熱線遮蔽樹脂シート材および自動車、建造物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20151006BHJP
   B60J 3/02 20060101ALI20151006BHJP
   E06B 3/70 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   C08J5/18CER
   C08J5/18CEZ
   B60J3/02 R
   E06B3/70 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-70175(P2014-70175)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100090136
【弁理士】
【氏名又は名称】油井 透
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(72)【発明者】
【氏名】中山 博貴
(72)【発明者】
【氏名】町田 佳輔
【テーマコード(参考)】
2E016
4F071
【Fターム(参考)】
2E016HA01
2E016KA05
2E016LA01
2E016LB09
2E016LD02
4F071AA14
4F071AA15
4F071AA22
4F071AA24
4F071AA26
4F071AA33
4F071AA42
4F071AA44
4F071AA50
4F071AA54
4F071AA60
4F071AB17
4F071AC12
4F071AE05
4F071AE22
4F071AF30Y
4F071AH07
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂を用いながら優れた遮熱特性を発揮する熱線遮蔽樹脂シート材、当該熱線遮蔽樹脂シート材が窓材として搭載されている自動車、当該熱線遮蔽樹脂シート材が窓材として搭載されている建造物を提供する。
【解決手段】複合タングステン酸化物微粒子と、選択波長吸収材料と、熱可塑性樹脂とを含有する熱線遮蔽樹脂シート材であって、前記選択波長吸収材料は、波長550nmの光の透過率が90%以上であり、かつ波長460nmの光の透過率が90%以上であるときの波長420nmの光の透過率が40%以下の透過プロファイルを有する熱線遮蔽樹脂シート材を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式MWO(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、選択波長吸収材料と、熱可塑性樹脂とを含有する熱線遮蔽樹脂シート材であって、
前記選択波長吸収材料は、波長550nmの光の透過率が90%以上であり、かつ波長460nmの光の透過率が90%以上であるときの波長420nmの光の透過率が40%以下の透過プロファイルを有することを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項2】
前記選択波長吸収材料が、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、インドール化合物、アゾメチン化合物、ベンゾトリアゾリル化合物、ベンゾイル化合物から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項3】
前記選択波長吸収材料が、〔化学式1〕で示されるベンゾトリアゾール化合物であって、
前記〔化学式1〕で示されるベンゾトリアゾール化合物におけるR1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が各々1〜8のアルキルカルボニルオキシアルキル基、アルキル基の炭素数の合計が2〜10のアルキルオキシカルボニルアルキル基、アリール基、アシル基、スルホ基、シアノ基、〔化学式2〕で示される基、〔化学式3〕で示される基、〔化学式4〕で示される基、〔化学式5〕で示される基から選択されるものであり、
前記〔化学式2〕〜〔化学式5〕で示される基におけるR2は、炭素数1〜8のアルキレン基であり、
前記〔化学式2〕〜〔化学式5〕で示される基におけるR3は、水素原子またはメチル基であり、
前記〔化学式4〕で示される基におけるR4は、炭素数1〜8のアルキレン基であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
〔化学式1〕
〔化学式2〕
〔化学式3〕
〔化学式4〕
〔化学式5〕
【請求項4】
前記選択波長吸収材料が、〔化学式6〕〜〔化学式10〕のいずれかで示されるベンゾトリアゾール化合物から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
〔化学式6〕
〔化学式7〕
〔化学式8〕
〔化学式9〕
〔化学式10〕
【請求項5】
前記選択波長吸収材料が、〔化学式11〕で示されるインドール化合物であり、
前記〔化学式11〕で示されるインドール化合物中におけるRは、炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
〔化学式11〕
【請求項6】
前記選択波長吸収材料が〔化学式12〕で示されるインドール化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
〔化学式12〕
【請求項7】
前記熱線遮蔽樹脂シート材中における前記選択波長吸収材料の含有量が、0.01質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体という樹脂群から選択される1種の樹脂、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、
のいずれかであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項9】
前記複合タングステン酸化物微粒子が、Cs0.33WO、Rb0.33WOから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項10】
前記複合タングステン酸化物微粒子が、分散粒子径40nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項11】
前記熱線遮蔽樹脂シート材が、さらに紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項12】
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物から選択される1種以上であることを特徴とする請求項11に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項13】
前記熱線遮蔽樹脂シート材中における前記紫外線吸収剤の含有率が、0.02質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項14】
前記熱線遮蔽樹脂シート材が、さらに赤外線吸収性有機化合物を含むことを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項15】
前記赤外線吸収性有機化合物が、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノン化合物、アゾ化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、スクアリリウム化合物、有機金属錯体、シアニン化合物から選択される1種以上であることを特徴とする請求項14に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項16】
前記赤外線吸収性有機化合物が、フタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項15に記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項17】
前記熱線遮蔽樹脂シート材中における前記赤外線吸収性有機化合物の含有量が、0.02質量%以上0.2質量%以下であることを特徴とする、請求項14から16のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項18】
JIS K 7373で算出される黄色度(YI)が−20.0以上10.0以下であることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項19】
JIS K 7373で算出される黄色度(YI)が−20.0以上5.0以下であることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項20】
JIS R 3106で算出される可視光透過率が70%以上であり、且つ、日射透過率が32.5%以下であることを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材が、窓材として搭載されていることを特徴とする自動車。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材が、窓材として使用されていることを特徴とする建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線遮蔽樹脂シート材、および、当該熱線遮蔽樹脂シート材を用いた自動車、建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建造物や車両の窓などのいわゆる開口部は、太陽光線を取り入れるために透明なガラス板や樹脂板で構成されている。しかし、太陽光線には可視光線の他に紫外線や赤外線が含まれ、特に赤外線のうち波長800〜2500nmの近赤外線は熱線と呼ばれ、開口部分から進入することにより室内等の温度を上昇させる原因となる。
その為、近年では、各種建造物や車両の窓材などとして、可視光線を十分に取り入れながら熱線を遮蔽して、明るさを維持しつつ同時に室内等の温度上昇を抑制する熱線遮蔽材が検討され、そのための各種手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明樹脂フィルムに金属を蒸着してなる熱線反射フィルムを、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板などの透明基材に接着した熱線遮蔽板が提案されている。
熱線遮蔽の手段として、上述の透明基材上に熱線反射フィルムや熱線遮蔽樹脂シート材を施す方法以外にも、例えば特許文献2や特許文献3には、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明な樹脂に、熱線反射粒子として酸化チタンで被覆したマイカを練り込んで形成した熱線遮蔽板が提案されている。
【0004】
一方、特許文献4においては、熱線遮蔽効果を有する成分として自由電子を多量に保有する六ホウ化物微粒子に着目し、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂中に、六ホウ化物微粒子が分散され、若しくは六ホウ化物微粒子とITO微粒子及び/又はATO微粒子が分散されている熱線遮蔽樹脂シート材が提案され、六ホウ化物微粒子単独、若しくは六ホウ化物微粒子とITO微粒子および/またはATO微粒子が適用された熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性は、可視光領域に可視光透過率の極大を有すると共に、近赤外線領域に強い吸収を発現して日射透過率の極小を有することから、可視光透過率が70%以上で日射透過率が50%台まで低減されている。
【0005】
さらに、特許文献5においては、透明な樹脂基材中に複合タングステン酸化物微粒子を含有させた熱線遮蔽樹脂シート材は、特許文献1〜4に記載された従来の熱線遮蔽樹脂シート材に比べて、可視光透過率70%以上のときの日射透過率が35%前後となる迄、改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−277437号公報
【特許文献2】特開平5−78544号公報
【特許文献3】特開平2−173060号公報
【特許文献4】特開2003−327717号公報
【特許文献5】特開2006−219662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された熱線遮蔽樹脂シート材は、熱反射フィルム自体が非常に高価であるばかりでなく、接着工程等の煩雑な工程を要するため、非常に高コストになる欠点があった。また、透明基材と熱線反射フィルムの接着性が良くないので、経時変化により熱線反射フィルムが剥離するといった問題を有していた。
また、特許文献2、3に記載された熱線遮蔽板は、熱線遮蔽性能を高めるために熱線反射粒子を多量に添加する必要があるが、この熱線反射粒子の添加量を増大すると可視光線透過性が低下してしまうという問題があった。逆に、熱線反射粒子の添加量を少なくすると、可視光線透過性は高まるものの熱線遮蔽性が低下するため、熱線遮蔽性と可視光線透過性を同時に満足させることは困難であった。更に、熱線反射粒子を多量に配合すると、基材である透明樹脂の物性、殊に耐衝撃性や靭性が低下するという強度面の欠点も有していた。
【0008】
一方、市場では、自動車や建造物内の快適性向上、或いはエアコン負荷軽減による燃費向上の観点から更なる遮熱機能の高性能化を要望する声が高い。当該観点からすると、特許文献4、5に記載された熱線遮蔽樹脂シート材においても、未だ改善の余地を有していた。
【0009】
本発明は、上記課題に着目して為されたものであり、熱可塑性樹脂を用いながら優れた遮熱特性を発揮する熱線遮蔽樹脂シート材、当該熱線遮蔽樹脂シート材が窓材として搭載されている自動車、当該熱線遮蔽樹脂シート材が窓材として使用されている建造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、まず高い可視光透過率を維持させつつ熱線遮蔽特性を向上させる方法について鋭意研究を行った。
本発明者らは、JIS R 3106に記載されている可視光透過率算出に使用される重価係数の波長分布に着目した。具体的には、可視光透過率算出に使用される重価係数の波長分布と、短波長領域における日射エネルギーとを詳細に研究した。そして、可視光線の短波長領域を適宜に遮蔽することで、可視光透過率を高く維持しつつ日射透過率のみを低下させることが可能であるとの知見を得た。
当該知見より本発明者らは、強力な近赤外吸収能力を有する複合タングステン酸化物に加え、当該複合タングステン酸化物が十分な吸収能力を持たない領域の光を、効率よく吸収できる選択波長吸収材料を併存させることで、上記目的を達成出来ることに想到した。
【0011】
具体的には、可視光透過率の低下を少しでも防ぐため、従来技術における、可視光領域をできるだけカットしないような紫外線吸収剤を用いるという常識にも拘わらず、波長300nmから380nmにかけての紫外光、および波長380nmから480nmにかけての可視光を強く吸収する一方、可視光透過率算出に大きく寄与する領域である波長550nm付近には吸収を持たない選択波長吸収材料を、複合タングステン酸化物微粒子と併存させるという構成に想到した。
【0012】
しかし可視光を吸収する選択波長吸収材料を併存することで、熱線遮蔽樹脂シート材の色味が変化することが予想された。そこで次に本発明者らは、熱線遮蔽樹脂シート材の分光透過率測定からJIS Z 8701に基づき算出される色味値、および色味値からJIS K 7373に基づき算出されるプラスチックの黄色度(本発明において「YI」と記載する場合がある。)を指標にさまざまな検討を行った。その結果、新たな構想として、可視光透過率算出に大きく寄与する領域である波長550nm付近に吸収を持たず、かつ熱線遮蔽樹脂シート材のYIに大きな影響を持つ波長460nm付近に吸収を持たず、かつ波長420nm付近に大きな吸収を持つ選択波長吸収材料を複合タングステン酸化物微粒子と併存させるという構成に想到した。
【0013】
当該波長550nm付近に吸収を持たず、且つ波長460nm付近に吸収を持たず、且つ波長420nm付近に大きな吸収を持つ選択波長吸収材料を、複合タングステン酸化物と併存させることで、当該選択波長吸収材料を併存しない場合よりも、可視光透過率を維持しながら日射透過率を低くすることが出来た。即ち、熱線遮蔽特性を向上出来、且つ、透過像の色を正常に識別可能な色調を維持できることを知見し、本発明を完成した。
とりわけ選択波長吸収材料が、インドール化合物および/またはベンゾトリアゾール化合物であり、さらに好ましくは、特定の化学式を有するインドール化合物、ベンゾトリアゾール化合物および/またはベンゾトリアゾール誘導体化合物である場合には、熱線遮蔽特性を著しく向上出来ることを同時に知見した。
加えて、選択波長吸収材料がベンゾトリアゾール化合物であり、さらに好ましくは特定の化学式を有するベンゾトリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体化合物である場合には、熱線遮蔽樹脂シート材を長期間使用した場合の色調変化や可視光透過率の変動が少なく、耐候性が非常に良好であることも同時に知見した。
【0014】
すなわち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
一般式MWO(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、選択波長吸収材料と、熱可塑性樹脂とを含有する熱線遮蔽樹脂シート材であって、
前記選択波長吸収材料は、波長550nmの光の透過率が90%以上であり、かつ波長460nmの光の透過率が90%以上であるときの波長420nmの光の透過率が40%以下の透過プロファイルを有することを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第2の発明は、
前記選択波長吸収材料が、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、インドール化合物、アゾメチン化合物、ベンゾトリアゾリル化合物、ベンゾイル化合物から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第3の発明は、
前記選択波長吸収材料が、〔化学式1〕で示されるベンゾトリアゾール化合物であって、
前記〔化学式1〕で示されるベンゾトリアゾール化合物におけるR1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が各々1〜8のアルキルカルボニルオキシアルキル基、アルキル基の炭素数の合計が2〜10のアルキルオキシカルボニルアルキル基、アリール基、アシル基、スルホ基、シアノ基、〔化学式2〕で示される基、〔化学式3〕で示される基、〔化学式4〕で示される基、〔化学式5〕で示される基から選択されるものであり、
前記〔化学式2〕〜〔化学式5〕で示される基におけるR2は、炭素数1〜8のアルキレン基であり、
前記〔化学式2〕〜〔化学式5〕で示される基におけるR3は、水素原子またはメチル基であり、
前記〔化学式4〕で示される基におけるR4は、炭素数1〜8のアルキレン基であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
〔化学式1〕
〔化学式2〕
〔化学式3〕
〔化学式4〕
〔化学式5〕
第4の発明は、
前記選択波長吸収材料が、〔化学式6〕〜〔化学式10〕のいずれかで示されるベンゾトリアゾール化合物から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
〔化学式6〕
〔化学式7〕
〔化学式8〕
〔化学式9〕
〔化学式10〕
第5の発明は、
前記選択波長吸収材料が、〔化学式11〕で示されるインドール化合物であり、
前記〔化学式11〕で示されるインドール化合物中におけるRは、炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
〔化学式11〕
第6の発明は、
前記選択波長吸収材料が〔化学式12〕で示されるインドール化合物であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
〔化学式12〕
第7の発明は、
前記熱線遮蔽樹脂シート材中における前記選択波長吸収材料の含有量が、0.01質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第8の発明は、
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体という樹脂群から選択される1種の樹脂、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、
のいずれかであることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第9の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、Cs0.33WO、Rb0.33WOから選択される少なくとも1種であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第10の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、分散粒子径40nm以下の微粒子であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第11の発明は、
前記熱線遮蔽樹脂シート材が、さらに紫外線吸収剤を含有することを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第12の発明は、
前記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第13の発明は、
前記熱線遮蔽樹脂シート材中における前記紫外線吸収剤の含有率が、0.02質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第14の発明は、
前記熱線遮蔽樹脂シート材が、さらに赤外線吸収性有機化合物を含むことを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第15の発明は、
前記赤外線吸収性有機化合物が、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノン化合物、アゾ化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、スクアリリウム化合物、有機金属錯体、シアニン化合物から選択される1種以上であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第16の発明は、
前記赤外線吸収性有機化合物が、フタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第17の発明は、
前記熱線遮蔽樹脂シート材中における前記赤外線吸収性有機化合物の含有量が、0.02質量%以上0.2質量%以下であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第18の発明は、
JIS K 7373で算出される黄色度(YI)が−20.0以上10.0以下であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第19の発明は、
JIS K 7373で算出される黄色度(YI)が−20.0以上5.0以下であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第20の発明は、
JIS R 3106で算出される可視光透過率が70%以上であり、且つ、日射透過率が32.5%以下であることを特徴とする熱線遮蔽樹脂シート材である。
第21の発明は、
本発明のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材が、窓材として搭載されていることを特徴とする自動車である。
第22の発明は、
本発明のいずれかに記載の熱線遮蔽樹脂シート材が、窓材として使用されていることを特徴とする建造物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱可塑性樹脂へ、複合タングステン酸化物微粒子と選択波長吸収材料とを併用して含有させることで、優れた光学的特性を発揮し、且つ、自然な色調を有する熱線遮蔽樹脂シート材を得ることが出来た。さらに、当該熱線遮蔽樹脂シート材を、自動車や建造物において窓材として使用することで、夏場等の自動車内、建造物内の温度上昇抑制が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材は、熱可塑性樹脂中に、熱線遮蔽成分(複合タングステン酸化物微粒子)、選択波長吸収材料が含有され、さらに、分散剤、紫外線吸収剤、所望によりその他の添加物が含有されたものである。
【0017】
以下、本発明に係る[1]熱線遮蔽樹脂シート材を構成する成分、[2]熱線遮蔽樹脂シート材の製造方法、および、[3]熱線遮蔽樹脂シート材の遮熱特性、について詳細に説明する。
【0018】
[1]熱線遮蔽樹脂シート材を構成する成分
上述したように、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材は、熱可塑性樹脂中に、熱線遮蔽成分(複合タングステン酸化物微粒子)、選択波長吸収材料が含有され、さらに、分散剤、紫外線吸収剤、所望によりその他の添加物が含有されたものである。そこで、(1)熱線遮蔽成分(複合タングステン酸化物微粒子)、(2)分散剤、(3)選択波長吸収材料、(4)紫外線吸収剤、(5)熱可塑性樹脂、(6)赤外線吸収性有機化合物、(7)その他の添加物、の順で詳細に説明する。
【0019】
(1)熱線遮蔽成分(複合タングステン酸化物微粒子)
複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MyWO(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で表記され、かつ六方晶の結晶構造を有しているものが好ましい。
【0020】
複合タングステン酸化物微粒子において、好ましい複合タングステン酸化物微粒子の例としては、Cs0.33WO、Rb0.33WOなどを挙げることが出来る。尤も、y、zの値が上記の範囲に収まるものであれば、有用な熱線遮蔽特性を得ることができる。元素Mの添加量は、0.1以上0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.33付近である。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。また、zの範囲については、2.2≦z≦3.0が好ましい。これは、MyWOで表記される複合タングステン酸化物材料においても、上述したWOで表記されるタングステン酸化物材料と同様の機構が働くのに加え、z≦3.0においても、上述した元素Mの添加による自由電子の供給があるためである。尤も、光学特性の観点から、より好ましくは2.45≦z≦3.00である。
【0021】
当該複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は、熱線遮蔽樹脂シート材の使用目的によって適宜選定することができる。例えば、熱線遮蔽樹脂シート材を透明性が求められる用途に使用する場合は、当該複合タングステン酸化物微粒子が40nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。当該複合タングステン酸化物微粒子が40nm以下の分散粒子径を有していれば、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することが出来るからである。
【0022】
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材を、例えば自動車ルーフやサイドウィンドウに適用され、特に可視光領域の透明性を重視される場合は、さらに複合タングステン酸化物微粒子による散乱低減を考慮することが好ましい。さらなる散乱低減を考慮するときには、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径を30nm以下、好ましくは25nm以下とするのが良い。
この理由は、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱またはミー散乱による波長400nm〜780nmの可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。当該波長の光の散乱が低減することで、強い光が照射されたときに熱線遮蔽樹脂シート材が曇りガラスのような外観となって、鮮明な透明性が失われるという事態を回避できる。
これは、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径が40nm以下になると、上述した幾何学散乱またはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる為である。レイリー散乱領域では、散乱光が粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上する。さらに、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径が25nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。
【0023】
以上、説明したように、光の散乱を回避する観点からは、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は小さい方が好ましい。一方、複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径が1nm以上であれば、工業的な製造は可能である。
【0024】
また、熱線遮蔽樹脂シート材に含まれる複合タングステン酸化物微粒子の量は、単位面積あたり0.05g/m〜5.0g/mが望ましい。
【0025】
(2)分散剤
本発明に係る分散剤は、上述した本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を、後述する熱可塑性樹脂へ均一に分散させる為に用いられる。
本発明に係る分散剤は、示差熱・熱重量同時測定装置(以下、TG−DTAと記載する場合がある。)を用いて測定される熱分解温度が250℃以上あって、ウレタン、アクリル、スチレン主鎖を有する分散剤であることが好ましい。ここで、熱分解温度とはTG−DTAを用いJIS K 7120に準拠した測定において、当該分散剤の熱分解による重量減少が始まる温度である。
熱分解温度が250℃以上であれば、熱可塑性樹脂との混練時に当該分散剤が分解することが少ないからである。これによって、分散剤の分解に起因した熱線遮蔽樹脂シート材の褐色着色、可視光透過率の低下、本来の光学特性が得られない事態を回避出来る。
【0026】
また、当該分散剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有する分散剤であることが好ましい。これらの官能基は、複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着し、複合タングステン酸化物微粒子の凝集を防ぎ、熱線遮蔽樹脂シート材中でも当該微粒子を均一に分散させる効果を持つ。具体的には、カルボキシル基を官能基として有するアクリル−スチレン共重合体系分散剤、アミンを含有する基を官能基として有するアクリル系分散剤が例として挙げられる。官能基にアミンを含有する基を有する分散剤は、分子量Mw2000〜200000、アミン価5〜100mgKOH/gのものが好ましい。また、カルボキシル基を有する分散剤では、分子量Mw2000〜200000、酸価1〜50mgKOH/gのものが好ましい。
【0027】
当該分散剤の添加量は、複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対し10重量部〜1000重量部の範囲であることが望ましく、より好ましくは30重量部〜400重量部の範囲である。分散剤添加量が上記範囲にあれば、複合タングステン酸化物微粒子が、熱可塑性樹脂中で均一に分散するとともに、得られる熱線遮蔽樹脂シート材の物性に悪影響を及ぼすことがないからである。
【0028】
(3)選択波長吸収材料
本発明に係る選択波長吸収材料は、一定の波長領域における光のみを選択的に、強く吸収する材料である。
上述したように、本発明者らは、JIS R 3106に記載されている可視光透過率算出に使用される重価係数の波長分布を考慮し、さらにJIS Z 8701およびJIS K 7373に記載されているプラスチックのYI算出方法を検討した。そして、当該検討の結果、上述した複合タングステン酸化物微粒子だけでは十分に遮蔽しきれない波長420nm付近の光を強く吸収し、かつ可視光透過率算出に大きく寄与する波長領域である波長550nm付近に吸収を持たず、かつYIに大きな影響を及ぼす波長460nm付近の光の吸収を持たない選択波長吸収材料を、複合タングステン酸化物微粒子と併存させる構成に想到した。そして、当該波長420nm付近の光を強く吸収し、波長460nm付近および波長550nm付近に吸収を持たない選択波長吸収材料を、複合タングステン酸化物微粒子と併存させる構成を用いることで、複合タングステン酸化物微粒子単独で使用する場合と比較して、熱線遮蔽樹脂シート材のYIを上昇させることなく、より低い日射透過率を得ることが出来た。
【0029】
また、例えば、自動車ルーフやサイドウィンドウのように、高い視認性が要求される部材として熱線遮蔽樹脂シート材が使用された場合、直射日光、ヘッドランプなどの強い光が、当該熱線遮蔽樹脂シート材に照射された際、含有される複合タングステン酸化物微粒子等の微粒子が可視光の短波長領域を強く散乱し、当該熱線遮蔽樹脂シート材が青白く曇る現象が問題となる場合があった。
ここで、本発明者らは、上述した選択波長吸収材料が、複合タングステン酸化物微粒子等の微粒子によって散乱されて発生した可視光短波長領域の散乱光を吸収することで、当該青白く曇る現象の発生を抑制し、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材の透明性を高める効果をも発揮出来ることに想到した。
【0030】
本発明に係る選択波長吸収材料の光学特性としては、媒体や基材の吸収を除いた選択波長吸収材料自体において、波長550nmの光の透過率が90%以上、かつ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率が40%以下であることが好ましい。さらに、波長550nmの光の透過率が90%以上、かつ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率が15%以下であることがより好ましい。
これは、選択波長吸収材料自体として、波長550nmの光の透過率が90%以上、且つ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率が40%以下の透過プロファイルを有するものを選択し、当該選択波長吸収材料と複合タングステン酸化物微粒子とを併用したときに、可視光透過率が低下せず、基材のYIが大きく上昇することもなく、さらに、波長420nm付近の光の吸収も十分に得られるからである。その結果、上記複合タングステン酸化物微粒子を単独で使用した場合と比較して、色調には大きな変化がなく、且つ日射透過率が低くなることで、遮熱特性が向上するからである。
【0031】
本発明で使用される具体的な選択波長吸収材料としては、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体化合物、ベンゾフェノン化合物、ヒドロキシフェニルアラニン化合物、インドール化合物、アゾメチン化合物等が挙げられる。特に、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体化合物あるいはインドール化合物であることが好ましい。これはベンゾトリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール誘導体化合物あるいはインドール化合物が、類似の吸収特性を有するベンゾフェノン化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物といった紫外線吸収剤と比較して鋭い吸収ピークを持つ為、波長420nm付近の光を吸収するに足る量を、熱線遮蔽樹脂シート材へ添加した場合でも、基材のYIの上昇が非常に少ないからである。
【0032】
本発明に係る選択波長吸収材料としてベンゾトリアゾール化合物を用いる場合、〔化学式1〕で示される化合物を用いることが好ましい。これは前記〔化学式1〕で示される化合物が、波長360nm〜390nmに強い吸収ピークを有するという特徴を持つ一方で、熱線遮蔽樹脂シート材のYIに影響を与える波長の吸収が弱いことによる。さらに、吸収ピークにおける吸光度が一般的なベンゾトリアゾール化合物と比較して非常に高く、且つポリビニルブチラール樹脂への溶解性も高く、さらに耐候性も優れているためである。
〔化学式1〕
【0033】
ただし、前記〔化学式1〕において、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、直鎖または分鎖のモノ置換アミノ基、直鎖または分鎖のジ置換アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が各々1〜8のアルキルカルボニルオキシアルキル基、アルキル基の炭素数の合計が2〜10のアルキルオキシカルボニルアルキル基、アリール基、アシル基、スルホ基、シアノ基、あるいは〔化学式2〕の示す基、〔化学式3〕の示す基、〔化学式4〕の示す基、〔化学式5〕の示す基のいずれかであり、
R2は炭素数1〜8のアルキレン基であり、
R3は水素原子またはメチル基であり、
R4は炭素数1〜8のアルキレン基である。
〔化学式2〕
〔化学式3〕
〔化学式4〕
〔化学式5〕
【0034】
さらに、本発明に係る選択波長吸収材料として、〔化学式6〕〜〔化学式10〕のいずれかで示されるベンゾトリアゾール化合物を、特に好ましく使用することが出来る。これは、これらの化学式を持つ化合物が、波長550nmの光の透過率が90%以上、且つ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率が0.1%以下と非常に低く、また波長420nmの光の吸光度も類似の化合物と比較して高く、加えて他の選択波長吸収材料と比較して高い耐候性を持つためである。
〔化学式6〕
〔化学式7〕
〔化学式8〕
〔化学式9〕
〔化学式10〕
【0035】
一方、本発明に係る選択波長吸収材料としてインドール化合物を用いる場合、〔化学式11〕で示される化合物を用いることが好ましい。ここで〔化学式11〕においてRは、炭素数が1〜10のアルキル基、もしくは炭素数が7〜10のアラルキル基である。炭素数が1〜10のアルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基など、炭素数が7〜10のアラルキル基としてはフェニルメチル基などが挙げられる。なかでも、〔化学式11〕で示されるインドール化合物のうち、Rがメチル基であるインドール化合物、すなわち〔化学式12〕で示される化合物は、波長550nmの光の透過率が90%以上、かつ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率が0.1%以下と非常に低く、また波長420nmの光の吸光度も類似の化合物と比較して高いため、本発明に係る選択波長吸収材料として特に好ましい。
尤も、〔化学式11〕で示されるインドール化合物でなくても、インドール骨格を持ち、媒体や基材の吸収を除いたインドール化合物自体の波長550nmの光の透過率が90%以上、かつ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率が40%以下であるインドール化合物であれば、本発明に係る選択波長吸収材料として好適に用いることができる。
〔化学式11〕
〔化学式12〕
【0036】
熱線遮蔽樹脂シート材中における選択波長吸収材料の含有量は、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。これは含有量が0.01質量%以上であれば、選択波長吸収材料を併存させない場合と比較して有意に遮熱特性の向上が見られるからである。
これは2.0質量%以下であれば、YIに影響を与える波長の光の吸収が強くなりすぎず、熱線遮蔽樹脂シート材の色調が維持されるからである。また、2.0質量%以下であれば、熱線遮蔽樹脂シート材中で選択波長吸収材料が析出することがなく、膜の強度や接着力、耐貫通性に大きな影響を与えない。
【0037】
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材が、窓材として自動車や建造物に使用された際には、自然な色調(透明または無彩色)に近いことが好ましい。特に、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材を自動車のフロントガラス等に用いる場合を想定すると、運転中の安全性を担保するため、透視像の色が正常に識別可能であることが好ましい。
当該観点より、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材に対しては、例えば自動車用合わせガラスに求められる性能を規定したJIS R 3211およびJIS R 3212に基づく色の識別試験において、透視像の色が正常に識別可能であることが好ましい。
ここで、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材のYIが−20.0以上10.0以下であると、当該透視像の色が正常に識別可能である。そして、上述した本発明に係る選択波長吸収材料の添加量の構成をとることにより、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材のYIを−20.0以上10.0以下とすることが出来る。尚、熱線遮蔽樹脂シート材のYIが−20.0以上5.0以下であると、透視像の色がさらに容易に識別可能であるため、より好ましい。
【0038】
選択波長吸収材料の熱線遮蔽樹脂シート材への添加方法は、化合物自体を後述する複合タングステン酸化物微粒子可塑剤分散液、または、複合タングステン酸化物微粒子分散体と共にポリビニルアセタール樹脂と可塑剤に添加することも可能である。
ただし、得られる熱線遮蔽樹脂シート材の透明性を考慮すると、上述した複合タングステン酸化物微粒子と同様に、可塑剤に選択波長吸収材料を分散した状態の分散液、または、固体の分散剤中に選択波長吸収材料が分散した状態の分散体として、熱線遮蔽樹脂シート材へ添加することも可能である。
【0039】
いずれにしても、選択波長吸収材料が熱線遮蔽樹脂シート材中で均一に分散していれば良く、得られる熱線遮蔽樹脂シート材の透明性を損なわない方法であれば好適に用いられる。
【0040】
(4)紫外線吸収剤
本発明に係る、熱線遮蔽樹脂シート材において、選択波長吸収材料として波長420nmの光の吸収係数が高い、例えばインドール化合物やアゾメチン化合物、特定のベンゾトリアゾール化合物やベンゾトリアゾール誘導体化合物を用いた場合は、さらに紫外線吸収剤を添加することが好ましい構成である。
【0041】
当該本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材へさらに紫外線吸収剤を添加することが好ましい第一の理由は、インドール化合物やアゾメチン化合物は短波長の可視光を効率的に吸収するが、紫外線吸収剤を添加することで、紫外領域においても効果的な吸収を得られるからである。
紫外領域の光を十分にカットすることで、より高い温度上昇の抑止効果が得られる。また、本発明にかかる熱線遮蔽樹脂シート材が搭載された自動車車内や建造物内部の人間や内装などに対する紫外線の影響、日焼けや家具、内装の劣化などを十分に防止することができる。
【0042】
第二の理由は、紫外線吸収剤を添加することで、太陽光等に起因する選択波長吸収材料の光劣化を抑制することができるからである。
この結果、本発明にかかる熱線遮蔽樹脂シート材が、実際に自動車や建造物の窓材として長期にわたり使用された場合であっても、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材へさらに紫外線吸収剤を添加しておくことで、太陽光等に起因する選択波長吸収材料の光劣化を抑制することができる。
【0043】
上述した紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン化合物、サリチル酸化合物、HALS化合物、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾリル化合物、ベンゾイル化合物等の有機紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤などが挙げられ、なかでもベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物が特に好ましい。これは、ベンゾトリアゾール化合物およびベンゾフェノン化合物が、紫外線を十分に吸収するだけの濃度を添加した場合でも可視光透過率が非常に高く、かつ強力な紫外線の長期暴露に対する耐久性が高いためである。
当該紫外線吸収剤の好ましい具体例として〔化学式15〕、〔化学式16〕が挙げられる。
〔化学式15〕
〔化学式16〕
【0044】
熱線遮蔽樹脂シート材中の紫外線吸収剤の含有率は、0.02質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。含有率が0.02質量%以上であれば、選択波長吸収材料で吸収しきれない紫外光を十分に吸収することができ、また選択波長吸収材料の光劣化を十分に防止することができるためである。また含有率が5.0質量%以下であれば、熱線遮蔽樹脂シート材中で紫外線吸収剤が析出することがなく、また膜の強度や接着力、耐貫通性に大きな影響を与えないためである。
【0045】
一方、ベンゾトリアゾール化合物の一部は、波長420nmにおいて、大きな光の吸収係数を有している。そこで、これらの化合物の相当量を熱線遮蔽樹脂シート材へ添加することにより、上述した波長550nmの光の透過率が90%以上、且つ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率を40%以下とする効果を発揮させることも出来る。当該構成によれば、これらの化合物は選択波長吸収材料と紫外線吸収剤との効果を兼ねることとなる。
【0046】
一方、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾトリアゾリル化合物、ベンゾイル化合物といった化合物は、インドール化合物やアゾメチン化合物よりは低いものの、波長420nmにおいて光の吸収係数を有している。そこで、これらの化合物の相当量を熱線遮蔽樹脂シート材へ添加することによっても、上述した波長550nmの光の透過率が90%以上、且つ波長460nmの光の透過率が90%以上のとき、波長420nmの光の透過率を40%以下とする効果を発揮させることも出来る。当該構成によっても、これらの化合物は選択波長吸収材料と紫外線吸収剤との効果を兼ねることとなる。
【0047】
(5)熱可塑性樹脂
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材に用いる熱可塑性樹脂は、任意の樹脂を用いることができる。尤も、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材が各種の窓材に用いられることを考えれば、十分な透明性を持った樹脂であることが望ましい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、という樹脂群から選択される1種の樹脂、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体から、好ましい樹脂の選択を行うことが出来る。
なかでも透明性が高く、かつ窓材として要求される一般的な特性、すなわち剛性、軽量性、長期耐久性、コストなどの面を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂であることがさらに好ましい。
【0048】
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材に用いるポリカーボネート樹脂としては、2価フェノール類とカーボネート系前駆体とを、溶液法又は熔融法で反応させることによって得られるものである。2価フェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が代表例として挙げられる。
また、好ましい2価フェノールとして、ビス(4−ヒドロキシフェニル)のアルカン系があり、特にビスフェノールAを主成分とするものが好ましい。
【0049】
(6)赤外線吸収性有機化合物
本発明においては、所望により近赤外域に強い吸収を持つ赤外線吸収性有機化合物を、熱線遮蔽樹脂シート材へさらに添加しても良い。
当該赤外線吸収性有機化合物は、波長650nmから1000nmの可視光長波長領域から近赤外線領域の範囲の光を強く吸収する材料がより好ましい。これは、当該光学的特性を有する赤外線吸収性有機化合物と、波長800nm以上の波長領域に強い吸収をもつ複合タングステン酸化物微粒子とを併存させた時の相乗効果が大きく、複合タングステン酸化物微粒子を単独で使用する場合と比較して、高い遮熱性能が得られるからである。
【0050】
当該目的で用いられる赤外線吸収性有機化合物としては、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノン化合物、アゾ化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、スクアリリウム化合物、有機金属錯体、シアニン化合物等を使用することができる。さらに、上述した観点からは、ジイモニウム化合物、フタロシアニン化合物が好ましい。
【0051】
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材中の赤外線吸収性有機化合物の含有率は、0.02質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。赤外線吸収性有機化合物の添加量の混合割合が0.02質量%以上であれば、当該赤外線吸収性有機化合物による、波長650nmから1000nmの可視光長波長領域から近赤外線領域の範囲の光を強く吸収する効果が得られ好ましい。また、赤外線吸収性有機化合物の添加量の混合割合が上述した重量比で0.2質量%以下であれば、当該赤外線吸収性有機化合物により可視光透過率算出に大きく寄与する波長領域である波長550nm付近の光や、膜の黄色値に影響を与える460nm付近の光まで吸収されることを回避出来る為、可視光透過率の低下や黄色値の上昇を回避できる。この結果、可視光透過率を合わせても遮熱特性と色味が担保され、好ましい。
【0052】
(7)その他の添加物
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材へは、さらに所望により、一般的な添加物を配合することも可能である。
例えば、所望により、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材へ任意の色調を与える為、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料化合物、顔料化合物を添加しても良い。特に本発明においては、可視光の短波長側の光を吸収しているため、熱線遮蔽樹脂シート材の透過光色がわずかに黄色味を帯びる。そのため、必要に応じて染料、顔料等の化合物を添加して熱線遮蔽樹脂シート材の色調を調整することが好ましい。
【0053】
また、その他の添加物として、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を添加することが出来る。
【0054】
[2]熱線遮蔽樹脂シート材の製造方法
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材の製造方法について、(1)熱線遮蔽機能を有する微粒子の製造方法、(2)熱線遮蔽機能を有する分散体の製造方法、(3)熱線遮蔽樹脂シート材の製造方法、の順で詳細に説明する。
【0055】
(1)熱線遮蔽機能を有する微粒子の製造方法
一般式MWOで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を、不活性ガス雰囲気中または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
まず、タングステン化合物出発原料について説明する。
タングステン化合物出発原料としては、三酸化タングステン粉末、二酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、および、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか1種類以上のものと、元素Mを元素単体または化合物の形態で含有するものとを、好ましい例として挙げることが出来る。
【0056】
ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料を製造するためには、各原料を溶液の形で混合することが好ましい。そこで、元素Mを含むタングステン化合物出発原料が、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、元素Mを含有する、タングステン酸塩、タングステンの塩化物塩、タングステンの硝酸塩、タングステンの硫酸塩、タングステンのシュウ酸塩、タングステンの酸化物、タングステンの炭酸塩、タングステンの水酸化物等が挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。
【0057】
次に、熱処理について説明する。
まず、不活性ガス雰囲気中において熱処理する場合、温度条件としては400℃以上1200℃以下が好ましい。400℃以上1200℃以下で熱処理された出発原料は、十分な近赤外線吸収力を有し熱線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N等の不活性ガスを用いることがよい。
【0058】
また、還元性雰囲気中において熱処理する場合、出発原料を、まず還元性ガス雰囲気中にて100℃以上400℃以下で熱処理し、次いで、不活性ガス雰囲気中にて400℃以上1200℃以下の温度で熱処理することが良い。この時の還元性ガスは、特に限定されないが、Hが好ましい。そして、還元性ガスとしてHを用いる場合は、還元性雰囲気の組成として、例えば、Ar、N等の不活性ガスにHを体積比で0.1%以上100%未満を混合するかHガスそのものを用いることが好ましく、さらに好ましくはAr、N等の不活性ガスに体積比で0.2%以上100%未満を混合したものである。Hが体積比で0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
【0059】
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子を表面処理し、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上を含有する化合物、好ましくは酸化物で被覆することは、耐候性向上の観点から好ましい。当該表面処理を行うには、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上を含有する有機化合物を用いて、公知の表面処理を行えばよい。例えば、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子と有機ケイ素化合物とを混合し、加水分解処理を行えばよい。
【0060】
(2)熱線遮蔽機能を有する分散体の製造方法
複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤と、所望により溶剤と、を混合し、一般的な分散方法を用いて複合タングステン酸化物微粒子の分散液を得ることができる。具体的には、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの分散方法を用いることが出来る。
尚、所望により溶剤を加える場合は、120℃以下の沸点を有する有機溶剤の添加が好ましい。沸点が120℃以下であれば、後工程である乾燥工程、特に減圧乾燥で、当該溶剤を除去することが容易である。具体的には、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール、エタノールが挙げられるが、沸点が120℃以下で、且つ複合タングステン酸化物微粒子を均一に分散可能なものであれば、任意に選択できる。
【0061】
得られた分散液を減圧乾燥することにより、熱線遮蔽分散体が得られる。前述の120℃以下の沸点を有する有機溶剤を用いると、減圧乾燥の工程で除去することが迅速に進み、複合タングステン酸化物微粒子含有組成物の生産性が向上する。さらに、減圧乾燥の工程が容易かつ十分に進行するので、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子含有組成物中に過剰な有機溶剤が残留するのを回避できる。この結果、熱線遮蔽樹脂シート材成形時に気泡の発生などの不具合が発生することを回避できる。
【0062】
(3)熱線遮蔽樹脂シート材の製造方法
当該得られた熱線遮蔽分散体と、選択波長吸収材料と、熱可塑性樹脂とを混練した後、当該混練物を、押出成形法、射出成形法等の公知の方法により、例えば、平面状や曲面状のシート材に成形することにより、熱線遮蔽樹脂シート材を製造することができる。
また、熱可塑性樹脂へ、複合タングステン酸化物微粒子分散体と選択波長吸収材料とを均一に分散した混合物を造粒装置により一旦ペレット化した後、当該ペレットへ、押出成形法、射出成形法等の公知の方法を行なうことにより、熱線遮蔽樹脂シート材を作製することもできる。
【0063】
尚、熱線遮蔽樹脂シート材の厚さは、厚い板状から薄いフィルム状まで必要に応じて任意の厚さに調整することが可能である。
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材は、それ自体を熱線遮蔽透明基材として使用することが出来る。一方、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材をフィルム状または板状として、ガラス等の透明基材と合わせて使用することも出来る。
【0064】
また、上記熱線遮蔽樹脂シート材の少なくとも一つのシート材表面に、耐擦傷性を有するハードコート層を形成しても良い。例えば、上記熱線遮蔽樹脂シート材上に、シリケート系、アクリル系などの耐擦傷性ハードコート層を形成することができる。この耐擦傷性ハードコート層の形成により、熱線遮蔽樹脂シート材の耐擦傷性を向上させることが可能である。当該耐擦傷性を向上させた熱線遮蔽樹脂シート材は、車両、自動車の窓などに適用することが出来る。
【0065】
[3]熱線遮蔽樹脂シート材の遮熱特性
本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材の遮熱特性は、可視光透過率に対する日射透過率で示される。可視光透過率に対して日射透過率が低いほど遮熱特性に優れた熱線遮蔽樹脂シート材となる。具体的には、可視光透過率が70%のときに日射透過率が32.5%以下であることが好ましく、31%以下であるとより好ましい。
【0066】
上述したように、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材は、可視光透過率に対して日射透過率が低い。そこで、本発明に係る熱線遮蔽樹脂シート材を、自動車のルーフやサイドウィンドウ等の窓材として自動車に搭載することで、エアコンの消費電力が、通常のガラスが搭載させている場合よりも削減される。この結果、特にハイブリッドカーや電気自動車のような電池を用いる自動車においては、電池の消費を抑えられることから、航続距離の延長などに有意な効果が発揮される。従って、自動車の燃費向上、温室効果ガス排出量削減に寄与することが期待でき、将来的には自動車の設計上、必須の部材となることが予想される。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、各実施例における選択波長吸収材料の波長420nm、波長460nmならび波長550nmの光の透過率は、選択波長吸収材料を適切な濃度で有機溶媒に溶解させた液を光路長1cmの石英ガラスセルに入れ、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。ベースラインは溶解に用いた有機溶媒のみを同一のセルに入れた状態で引いた。選択波長吸収材料を溶解させる有機溶媒としてはトルエン、メチルイソブチルケトン、N−メチル−2−ピロリジノンから、選択波長吸収材料の溶媒溶解性に合わせて任意に選択した一種類を用いた。
熱線遮蔽樹脂シート材の可視光透過率ならびに日射透過率は、分光光度計U−4000を用いて測定した波長300〜2100nmの光の透過率から、JIS R 3106に基づいて算出した。尚、当該日射透過率は、熱線遮蔽樹脂シート材の熱線遮蔽性能を示す指標である。可視光透過率がほぼ一定のときの日射透過率がより低ければ、熱線遮蔽性能がより高いと言える。今回は可視光透過率を70.0〜70.5%の範囲に統一し、このときの日射透過率の高低をもって熱線遮蔽性能の優劣の判断基準とした。
一方、熱線遮蔽樹脂シート材のYIは、分光光度計U−4000を用いて測定された波長380〜780nmの光の透過率から、JIS Z 8701およびJIS K 7373に基づいて算出した。
【0068】
[実施例1]
複合タングステン酸化物微粒子Cs0.33WO(以下、微粒子aと記載する。)を20質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃)のアクリル系分散剤(以下、分散剤aと記載する。)10質量%、トルエン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、複合タングステン酸化物微粒子の分散液(以下、微粒子分散液Aと略称する。)を得た。
ここで、微粒子分散液A内における複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径を、日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ24nmであった。
上記分散液Aへ、さらに分散剤aを添加し、分散剤aと複合タングステン酸化物微粒子の重量比が[分散剤a/複合タングステン酸化物微粒子]=3となるように調製した。次に、この複合タングステン酸化物微粒子分散液Aからスプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、複合タングステン酸化物微粒子分散粉を得た(以下、分散粉Aと略称する。)。
【0069】
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂に対して、所定量の分散粉Aと選択波長吸収材料として〔化学式6〕で示されるベンゾトリアゾール化合物(波長550nmの光の透過率を99%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は0%)を、熱線遮蔽膜の製造用組成物中での選択波長吸収材料の含有率が0.05質量%となり、かつ合わせ透明基材としたときの可視光透過率が70.0〜70.5%となるよう添加し、熱線遮蔽樹脂シート材の製造用組成物を調製した。
〔化学式6〕
【0070】
この熱線遮蔽樹脂シート材の製造用組成物を、二軸押出機を用いて280℃で混練し、Tダイより押出しカレンダーロール法により1.0mm厚のシート材とし、実施例1に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。
得られた実施例1に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性は、可視光透過率70.1%のときの日射透過率は29.5%、YIは4.7であった。この結果を表2に示した。
【0071】
[実施例2〜16]
実施例1で説明した、選択波長吸収材料の種類および熱線遮蔽膜の製造用組成物中における前記選択波長吸収材料の含有率を表1のように変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜16に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該実施例2〜16に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。実施例2〜16に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性測定結果を表2に示した。
【0072】
実施例2〜3においては、選択波長吸収材料として、上述した〔化学式6〕で示されるベンゾトリアゾール化合物を用いた。
〔化学式6〕
実施例4〜6においては、〔化学式7〕で示されるベンゾトリアゾール化合物(波長550nmの光の透過率を99%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は0%)を用いた。
〔化学式7〕
実施例7〜9においては、〔化学式8〕で示されるベンゾトリアゾール化合物(波長550nmの光の透過率を99%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は0%)を用いた。
〔化学式8〕
実施例10においては、〔化学式9〕で示されるベンゾトリアゾール化合物(波長550nmの光の透過率を99%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は0%)を用いた。
〔化学式9〕
実施例11においては、〔化学式10〕で示されるベンゾトリアゾール化合物(波長550nmの光の透過率を99%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は0%)を用いた。
〔化学式10〕
実施例12〜14においては、〔化学式12〕で示されるインドール化合物であるオリヱント化学工業製BONASORB UA−3911(CAS No.142676−93−5。波長550nmの光の透過率を99%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は0%)を用いた。
〔化学式12〕
実施例15においては、〔化学式13〕で示されるアゾメチン化合物であるオリヱント化学工業製BONASORB UA−3701(CAS No.55567−59−4。波長550nmの光の透過率を98%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は0%)を用いた。
〔化学式13〕
実施例16においては、〔化学式14〕で示されるベンゾフェノン化合物である大和化成製DAINSORB P−6(CAS No.131−55−4。波長550nmの光の透過率を97%、波長460nmの光の透過率を92%としたときの420nmの透過率は25%)を用いた。
〔化学式14〕
【0073】
[実施例17]
熱線遮蔽膜の製造用組成物へさらに紫外線吸収剤として〔化学式15〕で示されるベンゾトリアゾール化合物を、熱線遮蔽膜の製造用組成物中における紫外線吸収剤の含有率が0.3質量%となるよう添加した以外は実施例1と同様にして実施例17に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該実施例17に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。実施例17に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性測定結果を表2に示した。
【0074】
[実施例18〜19]
選択波長吸収材料の種類および熱線遮蔽膜の製造用組成物中における前記選択波長吸収材料の含有率、紫外線吸収剤の種類および熱線遮蔽膜の製造用組成物中における紫外線吸収剤の含有率を表1のように変えた以外は実施例17と同様にして、実施例18、19に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該実施例18、19に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。実施例18、19に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性測定結果を表2に示した。
【0075】
尚、実施例18においては、選択波長吸収材料として〔化学式6〕で示されるベンゾトリアゾール化合物を用い、紫外線吸収剤としては〔化学式16〕で示されるベンゾトリアゾール化合物を用いた。
〔化学式6〕
〔化学式16〕
実施例19においては、選択波長吸収材料として〔化学式12〕で示されるインドール化合物を用い、紫外線吸収剤として〔化学式15〕で示されるベンゾトリアゾール化合物を用いた。
〔化学式12〕
〔化学式15〕
【0076】
[実施例20]
熱線遮蔽膜の製造用組成物へさらに赤外線吸収性有機化合物としてジイモニウム系化合物である日本カーリット製CIR−RL(以下、CIR−RLと記載することがある)を、熱線遮蔽膜の製造用組成物中における赤外線吸収性有機化合物の含有率が0.05質量%となるよう添加した以外は、実施例1と同様にして実施例21に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該実施例21に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。実施例17に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性測定結果を表2に示した。
【0077】
[比較例1]
選択波長吸収材料を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該比較例1に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。比較例1に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性測定結果を表2に示した。
【0078】
[比較例2]
熱線遮蔽膜の製造用組成物中での選択波長吸収材料の含有率を0.005質量%とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該比較例2に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。比較例2に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性測定結果を表2に示した。
【0079】
[比較例3]
選択波長吸収材料として〔化学式17〕で示されるキノフタロン化合物(C.I.ソルベントイエロー33、CAS No.8003−22−3。波長550nmの光の透過率を99%、波長460nmの光の透過率を90%としたときの420nmの透過率は55%)を用い、熱線遮蔽膜の製造用組成物中での選択波長吸収材料の含有率を0.01質量%とした以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該比較例3に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。比較例3に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性測定結果を表2に示した。
〔化学式17〕
【0080】
[実施例21]
複合タングステン酸化物微粒子Rb0.33WO(以下、微粒子bと記載する。)を20質量%、分散剤a10質量%、トルエン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、複合タングステン酸化物微粒子の分散液(以下、微粒子分散液Bと略称する。)を得た。
ここで、微粒子分散液B内における複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径を、日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ21nmであった。
上記微粒子分散液Bへ、さらに分散剤aを添加し、分散剤aと複合タングステン酸化物微粒子の重量比が[分散剤a/複合タングステン酸化物微粒子]=3となるように調製した。次に、この複合タングステン酸化物微粒子分散液からスプレードライヤーを用いてトルエンを除去し、複合タングステン酸化物微粒子分散粉を得た(以下、分散粉Bと略称する。)。
分散粉Aに代えて分散粉Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例21に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該実施例21に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。この結果を表2に示した。
【0081】
[実施例22、23]
ポリカーボネート樹脂に代えて、熱可塑性樹脂を表2に示した種類に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例22、23に係る熱線遮蔽樹脂シート材を得た。そして当該実施例22、23に係る熱線遮蔽樹脂シート材の光学特性を実施例1と同様に測定した。この結果を表2に示した。なお、熱可塑性樹脂として実施例22ではアクリル樹脂(クラレ製パラペットG)を用い、二軸押出機の混練温度は270℃とした。実施例23ではポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人製TR−8550T )を用い、二軸押出機の混練温度は260℃とした。
【0082】
【表1】
【0083】
媒体や基材の吸収を除いた選択波長吸収材料自体において、波長550nmおよび波長460nmの光の透過率を90%以上としたときの波長420nmの光の透過率を表1に示した。
実施例1〜23で用いた(化学式6)、(化学式7)、(化学式8)、(化学式9)、(化学式10)で示されるベンゾトリアゾール化合物、(化学式12)で示されるインドール化合物、(化学式13)で示されるアゾメチン化合物、(化学式14)で示されるベンゾフェノン化合物の波長420nmの光の透過率は40%以下であるが、比較例3で用いた(化学式17)で示されるキノフタロン化合物の波長420nmの光の透過率は40%より高い値が得られた。
【0084】
【表2】
【0085】
[実施例1〜23および比較例1〜3の評価]
実施例1〜23においては、選択波長吸収材料を、複合タングステン酸化物微粒子と適切な割合で併存させたことによって、選択波長吸収材料を併存させなかった比較例1より低い日射透過率が得られた。また熱線遮蔽樹脂シート材のYIも10を超えることはなく、選択波長吸収材料の併存による色調の変化も少なかった。なかでも、実施例17〜19においては、さらに紫外線吸収剤を併存させたことで、選択波長吸収材料のみを複合タングステン酸化物微粒子と併存させたものよりも、より低い日射透過率が得られた。また実施例20においては、当該複合タングステン酸化物微粒子や選択波長吸収材料による吸収が十分でない波長800〜1100nm程度の波長の光を吸収する赤外線吸収性有機化合物を併存させたことで、選択波長吸収材料のみを複合タングステン酸化物微粒子と併存させるものよりもより低い日射透過率が得られた。
【0086】
一方、比較例2では選択波長吸収材料の添加量が少なかった為に十分な吸収を得られず、選択波長吸収材料を併存させなかった比較例1と同程度の日射透過率しか得られなかった。比較例3では選択波長吸収材料として波長550nmおよび波長460nmの光の透過率に対して、波長420nmの吸収の弱いキノフタロン化合物を用いたためにYIが10以上にまで上昇してしまい、熱線遮蔽樹脂シート材の色調が大きく変化してしまった。