【解決手段】(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーとを含有し、前記(A)黒色顔料が、少なくともバナジウム酸窒化物を含み、前記(B)分散剤が、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物であり、前記(C)分散バインダーが、環式炭化水素を有する高分子化合物である、黒色顔料分散液。
(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーとを含有し、前記(A)黒色顔料が、少なくともバナジウム酸窒化物を含み、前記(B)分散剤が、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物であり、前記(C)分散バインダーが、環式炭化水素を有する高分子化合物である、黒色顔料分散液。
(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーと、(D)硬化性バインダーとを含有し、前記(A)黒色顔料が、少なくともバナジウム酸窒化物を含み、前記(B)分散剤が、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物であり、前記(C)分散バインダーが、環式炭化水素を有する高分子化合物である、黒色樹脂組成物。
前記黒色樹脂組成物の全固形分100質量部中、前記バナジウム酸窒化物の割合が、20質量部以上であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の黒色樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳しく説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
本発明において、光とは、可視及び非可視領域の波長の電磁波のみならず、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
本発明において硬化性とは、化学反応を経て固化することをいう。
また、本発明において高分子とは、分子量、又は質量平均分子量が1000以上のものをいう。
【0022】
[黒色顔料分散液]
本発明に係る黒色顔料分散液は、(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーとを含有し、前記(A)黒色顔料が、少なくともバナジウム酸窒化物を含み、前記(B)分散剤が、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物であり、前記(C)分散バインダーが、環式炭化水素を有する化合物であることを特徴とする。
【0023】
上記特定の(A)黒色顔料と、上記特定の(B)分散剤と、上記特定の(C)分散バインダーとを組み合わせて用いることにより、分散性及び分散安定性に優れ、電気抵抗が高く、遮光性に優れた塗膜を形成可能な黒色顔料分散液を得ることができる。
【0024】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明の部分もあるが、以下のように推定される。
従来、電気抵抗の高い黒色着色層を形成する手段として、特許文献2に記載の樹脂に被覆された被覆カーボンブラックや、特許文献3に記載のチタン酸窒化物等が検討されてきた。しかしながら、被覆カーボンブラックは、カーボンブラックのまわりを樹脂が被覆していることから、単位体積当たりのカーボンブラックの含有量が低くなるため、遮光性が低下するという問題があった。また、チタン酸窒化物は、可視光である波長400nm〜500nmの光を透過する性質を有するため、カーボンブラックなどに比べ遮光性が悪かった。
また、黒色顔料として金属粒子を用いる場合には、当該金属粒子は分散液中の各成分と比較して比重が大きいことから、保存時に顔料が沈降しやすいという問題があった。後述の比較例でも示すように、顔料粒子が高い遮光性と、電気抵抗を有していても、当該顔料粒子を用いた樹脂組成物の分散性が悪い場合には、得られる黒色着色層の遮光性が悪かったり、電気抵抗が低下したりする問題があった。
本発明においては、バナジウム酸窒化物を含む黒色顔料と、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物と、環式炭化水素を有する高分子化合物である分散バインダーとを組み合わせて用いる。バナジウム酸窒化物は、それ自体が高い電気抵抗を有し、遮光性に優れている。また、上記特定の分散剤が有する顔料吸着性基は、上記特定のヘテロ原子を含むため、バナジウム酸窒化物に吸着しやすく、当該バナジウム酸窒化物の凝集を防ぎ、分散性を向上する。更に、環式炭化水素を有する高分子化合物である分散バインダーは、分散剤や溶剤との相溶性に優れると共に、立体障害が大きいため、分散剤が吸着したバナジウム酸窒化物は、比重が大きいにもかかわらず沈降が抑制されるものと推定される。
これらの相乗効果により、本発明の顔料分散液は、バナジウム酸窒化物を用いながら、分散性及び分散安定性に優れると共に、高い電気抵抗と、優れた遮光性を有する着色層が形成可能となる。
【0025】
本発明の黒色顔料分散液は、少なくとも(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーを含有するものであり、通常、溶剤が用いられる。また、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の黒色顔料分散液の各成分について順に詳細に説明する。
【0026】
(A)黒色顔料
本発明に用いられる(A)黒色顔料は、少なくともバナジウム酸窒化物を含む。
バナジウム酸窒化物は、高い電気抵抗を有し、且つ、300〜800nmの広い波長域において優れた遮光性を有する。また、上記バナジウム酸窒化物は、優れた耐薬品性を有し、耐熱性にも優れている。
【0027】
バナジウム酸窒化物全体に対する、窒素原子の含有割合は、10質量%以上であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましく、13〜20質量%であることが更により好ましい。窒素原子の含有割合が上記範囲内であれば、より遮光性に優れている。
【0028】
また、バナジウム酸窒化物全体に対する、酸素原子の含有割合は、16質量%以下であることが好ましく、2〜16質量%であることがより好ましく、6〜16質量%であることが更により好ましい。酸素原子の含有割合が上記範囲内であれば、より遮光性に優れている。
なお、本発明において酸素濃度及び窒素濃度は、不活性ガス雰囲気溶解ガスクロマトグラフ法により測定したものである。
【0029】
バナジウム酸窒化物は、粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて、波長450nmの透過率Xが10.0%以下である青色遮蔽黒色粉末であることが、青色光に対する遮光性に優れている点から好ましい。
【0030】
また、バナジウム酸窒化物は、粉末濃度50ppmの分散透過スペクトルにおいて、波長450nmの透過率をXとし、波長550nmの透過率をYとし、波長650nmの透過率をZとしたときに、Xが10.0%以下であって、XとYの比(X/Y)が2.0以下であるもの、及び/又は、Xが10.0%以下であって、XとZの比(X/Z)が1.5以下であるものが、広い波長域において透過率の変化が小さいことから好ましい。
【0031】
バナジウム酸窒化物は、比表面積が10m
2/g〜150m
2/gであることが、遮光性に優れる点から好ましい。
【0032】
本発明に用いられるバナジウム酸窒化物は、更に電気抵抗を高めるために、シリカ、アルミナ、ジルコニア、イットリアを用いて表面をコーティングしてもよい。
【0033】
バナジウム酸窒化物は、例えば、五酸化バナジウム等の酸化バナジウムや、ジヒドロキシバナジウム等の水酸化バナジウムを、酸素含有量が16質量%以下、且つ、窒素含有量が10質量%以上となるように高温でアンモニアガスを用いて還元処理することにより、粉末濃度50ppmの分散透過スペクトルにおいて、波長450nmの透過率Xが10.0%以下であるバナジウム酸窒化物を得ることができる。
【0034】
本発明において、(A)黒色顔料は、本発明の効果を損なわない限り、バナジウム酸窒化物以外の、他の黒色顔料を含有してもよい。
他の黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、被覆カーボンブラック、グラフトカーボンブラック、チタン酸窒化物(チタンブラック)、鉄系複合酸化物、ペリレン化合物、ニオブ酸窒化物等が挙げられる。
【0035】
(A)黒色顔料中の、バナジウム酸窒化物の含有割合は、遮光性及び電気抵抗の点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更により好ましい。
【0036】
(B)分散剤
本発明においては、(B)分散剤として、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物が用いられる。
上記特定の顔料吸着性基が、前記(A)黒色顔料に吸着することにより、黒色顔料同士の凝集を抑制し、分散性及び分散安定性が向上する。
ここで、顔料吸着性基は、顔料に吸着する性質を有する官能基をいう。本発明においては、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む基が、前記バナジウム酸窒化物を含む黒色顔料に対する顔料吸着性基として機能する。顔料吸着性基としては、例えば、アミノ基、アミン塩、アンモニウム塩、ウレタン基、アミド基、イミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、スルホニル基、ホスホノ基等の他、フリル基、ピラニル基、チエニル基、チオピラニル基、ピリジニル基、ピペリジノ基、イミダゾリル基、モルホリノ基、イソシアヌル基等の複素環基が挙げられ、複素環基は、更に置換基を有していてもよい。前記バナジウム酸窒化物の吸着性に優れ顔料分散安定性に優れる点から、顔料吸着性基が窒素原子を含むことが好ましい。
本発明の分散剤が複数の顔料吸着性基を有する場合、分散剤中の複数ある顔料吸着性基が1種類のみであってもよく、2種以上の顔料吸着性基を含むものであってもよい。
【0037】
本発明においては、前記バナジウム酸窒化物の吸着性に優れる点から、分散剤の顔料吸着性基の少なくとも一部が複素環基であることが好ましい。顔料吸着性基が嵩高い複素環基であることにより、顔料同士の接触が抑制されるため、得られた着色層の表面抵抗が高くなる。また、顔料同士の凝集も抑制されるので、顔料の比表面積が大きく光学濃度(OD)の高い着色層を得ることができる。
【0038】
(B)分散剤として使用される高分子化合物としては、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体類;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物等、公知の(共)重合体を主鎖とし、側鎖に上記顔料吸着性基を有するもの等が挙げられる。
このような高分子化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、ビックケミー社製、BYK161、BYK168や、味の素ファインテクノ社製、アジスパーPB821等が好適に用いられる。
【0039】
(C)分散バインダー
分散バインダーは、顔料分散時に顔料や分散剤と共に用いられ、顔料の分散性及び分散安定性に寄与するものである。
本発明においては、(C)分散バインダーとして、環式炭化水素を有する高分子化合物が用いられる。環式炭化水素を有する高分子化合物は、立体障害が大きいため、(A)黒色顔料の凝集や沈降を抑制することができ、顔料が高濃度の場合であっても、顔料分散性及び分散安定性に優れている。更に、嵩高い上記特定の分散バインダーを用いることにより黒色顔料同士の接触が抑制され、得られた着色層の表面抵抗が高くなり、顔料同士の凝集も抑制されるので、顔料の比表面積が大きくなって光学濃度(OD)の高い着色層を得ることができる。
【0040】
本発明において環式炭化水素としては、脂環式炭化水素、及び芳香族炭化水素のいずれも好適に用いることができる。
芳香族炭化水素の具体例としては、例えば、ベンジル基の他、ナフチル基、アントラセニル基等の縮合多環芳香族炭化水素が挙げられ、更に、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
本発明においては、環式炭化水素の中でも、黒色顔料分散液中の各成分、特に前記(B)分散剤との相溶性に優れ、分散安定性を向上する点から、脂環式炭化水素であることが好ましい。また、脂環式炭化水素を有する分散バインダーを含む黒色顔料分散液を用いて調製された感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィー法により良好な細線パターンを形成することができる。
【0041】
脂環式炭化水素としては、顔料の分散性及び分散安定性の点から、炭素数6〜18の環構造を有することが好ましく、炭素数8〜12の環構造を有することがより好ましい。脂環式炭化水素の具体例としては、例えば、シクロへキシル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、トリシクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジヒドロジシクロペンタジエニル基等が挙げられ、中でも、バナジウム酸窒化物の凝集を防ぎ、分散性及び分散安定性に優れる点から、脂肪族多環式炭化水素であることが好ましく、トリシクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジヒドロジシクロペンタジエニル基がより好ましい。脂環式炭化水素は、更に、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0042】
環式炭化水素を有する高分子化合物としては、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプトラクトン系等の主鎖を有し、側鎖の少なくとも一部に環式炭化水素を有するものが挙げられる。中でも、ポリアクリル系の主鎖を有し、側鎖の少なくとも一部に環式炭化水素を有するものが、分散性や組成物との相溶性の点から好ましい。
【0043】
ポリアクリル系のポリマーは、例えば、環式炭化水素を有する(メタ)アクリレートモノマーと、必要に応じて、(メタ)アクリレートモノマーと重合可能なその他のモノマーを用いて、公知の重合手段で重合することにより得ることができる。
上記その他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジメチル−2,2’−オキシビス(メチレン)ビス−2−プロペノエート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー、スチレン、γ−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。また、(C)分散バインダーに、アルカリ可溶性を付与する点から、カルボキシ基を有するモノマーを用いることが好ましい。カルボキシ基を有するモノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、及びこれらの無水物等があげられる。
また、上記ポリマーに、例えばグリシジル基、水酸基等の反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させるなどして、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等としてもよい。上記ポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより、側鎖にエチレン性不飽和結合を導入したポリマー等は、露光時に、後述する硬化性バインダー中のモノマー等と重合することが可能となる。
上記ポリマーは、ブロックポリマーであっても、ランダムポリマーであってもよい。
【0044】
上記ポリマーにおいて、環式炭化水素を有するモノマーの構成単位のユニット数mと、その他の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、顔料の分散性及び分散安定性の点から、0.3〜3.0の範囲内であることが好ましく、0.5〜2.5の範囲内であることがより好ましい。
【0045】
環式炭化水素を有する化合物の分子量は、3,000〜25,000であることが好ましく、4,000〜20,000であることがより好ましい。環式炭化水素を有する化合物が分子量分布を有する場合には、質量平均分子量Mwが上記範囲内にあることが好ましい。
なお、本発明において、質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算値である。
【0046】
<溶剤>
本発明の黒色顔料分散液は、分散媒として、通常、溶剤が用いられる。溶剤は、黒色顔料分散液の各成分とは反応せず、これらを溶解乃至分散可能な溶剤であればよく、特に限定されない。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系;メトキシアルコール、エトキシアルコール、メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルアルコール系;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系;メトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルアルコールアセテート系;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド系;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系;n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタンなどの飽和炭化水素系などの溶剤が挙げられる。本発明においては、黒色顔料分散液、乃至後述する黒色樹脂組成物中の各成分との相溶性や、塗布適性に優れる点から、エーテルアルコールアセテート系溶剤が好ましく、中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0047】
<その他の成分>
本発明の黒色顔料分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤等が挙げられる。
【0048】
<黒色顔料分散液の製造方法>
本発明において、黒色顔料分散液の製造方法は、(A)黒色顔料が良好に分散できる方法であればよく、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、前記溶剤中に、(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーと、必要に応じて他の成分を混合、攪拌した後、公知の攪拌機、又は分散機等を用いて分散させることによって、黒色顔料分散液を調製することができる。
【0049】
<黒色顔料分散液の各成分の含有割合>
本発明の黒色顔料分散液において、(A)黒色顔料の含有量は、黒色顔料分散液の全固形分に対して、30〜99質量%であることが好ましく、40〜93質量%であることがより好ましい。本発明の黒色顔料分散液は、(B)分散剤と、(C)分散バインダーとを組み合わせて用いることにより、黒色顔料が高濃度で存在する場合であっても分散性及び分散安定性に優れている。
(B)分散剤の含有量は、(A)黒色顔料全体を100質量部としたときに、3〜50質量部であることが好ましく、7〜40質量部であることがより好ましい。
また、(C)分散バインダーの含有量は、(A)黒色顔料全体を100質量部としたときに、3〜70質量部であることが好ましく、7〜55質量部であることがより好ましい。
黒色顔料分散液中の固形分の割合は、黒色顔料分散液を100質量部としたときに、固形分が、5〜30質量部であることが好ましく、8〜25質量部であることがより好ましい。
なお、本発明において固形分とは、溶剤以外のすべての成分をいう。
【0050】
本発明の黒色顔料分散液は、後述する黒色樹脂組成物を調製するための予備調製物として用いられる。すなわち、顔料分散液とは、後述の着色樹脂組成物を調製する前段階において、予備調製される(分散液中の顔料分質量)/(分散液中の顔料以外の固形分質量)比の高い顔料組成物である。具体的には、(分散液中の顔料分質量)/(分散液中の顔料以外の固形分質量)比は通常1.0以上である。黒色顔料分散液と少なくとも硬化性バインダーを混合することにより、顔料分散性及び分散安定性に優れた黒色樹脂組成物を調製することができる。
【0051】
[黒色樹脂組成物]
本発明に係る黒色樹脂組成物は、(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーと、(D)硬化性バインダーとを含有し、前記(A)黒色顔料が、少なくともバナジウム酸窒化物を含み、前記(B)分散剤が、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物であり、前記(C)分散バインダーが、環式炭化水素を有する高分子化合物であることを特徴とする。
【0052】
上記特定の(A)黒色顔料と、上記特定の(B)分散剤と、上記特定の(C)分散バインダーと、(D)硬化性バインダーとを組み合わせて用いることにより、分散性及び分散安定性に優れ、電気抵抗が高く、遮光性に優れた着色層を形成可能な黒色樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
本発明の黒色樹脂組成物は、少なくとも(A)黒色顔料と、(B)分散剤と、(C)分散バインダーと、(D)硬化性バインダーとを含有するものであり、通常、溶剤が用いられる。また、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の黒色樹脂組成物の各成分について順に詳細に説明するが、(A)黒色顔料、(B)分散剤、(C)分散バインダー、及び、溶剤については、上記本発明に係る黒色顔料分散液において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0054】
(D)硬化性バインダー
本発明に係る黒色樹脂組成物は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与し、塗膜に充分な硬度を付与するために、(D)硬化性バインダーを含有する。硬化性バインダーとしては、特に限定されず、従来公知の硬化性バインダーを適宜用いることができる。
(D)硬化性バインダーとしては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性バインダーであっても、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性バインダーであってもよい。
【0055】
本発明の黒色着色組成物を、例えば、スクリーン印刷方式やインクジェット方式で用いる場合など、基板上にパターン状に選択的に付着させて着色層を形成する場合には、硬化性バインダー成分に現像性は必要がない。この場合、インクジェット方式等でカラーフィルター着色層を形成する場合に用いられる、公知の熱硬化性バインダーや、光硬化性バインダー等を適宜用いることができる。熱硬化性バインダーとしては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基等を有する化合物と、多価カルボン酸無水物、又は多価カルボン酸等を有する硬化剤とを組み合わせたものが好適に用いられる。
一方、着色層を形成する際にフォトリソグラフィー工程を用いる場合には、アルカリ現像性を有する光硬化性バインダーが好適に用いられる。
【0056】
光硬化性バインダーは、光硬化性モノマーと、光重合開始剤を少なくとも含有する系が好適に用いられる。
【0057】
光硬化性モノマーは、後述する光重合開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されないが、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0058】
アクリロイル基又はメタクリロイル基を化合物中に2個有する、二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を化合物中に3個以上有する、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の黒色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、光硬化性化合物が、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0061】
本発明の黒色樹脂組成物において、光硬化性モノマーを用いる場合には、光重合開始剤を組み合わせて用いることが好ましい。光重合開始剤は、従来公知の各種光重合開始剤の中から、適宜選択して用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキスフェニルビスイミダゾール等のビイミダゾール化合物;ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]等のオキシム化合物などが挙げられ、中でも、オキシム化合物が好ましい。オキシム化合物は市販品を用いてもよく、例えば、イルガキュアOXE02(BASFジャパン社製)、N−1919(ADEKA社製)、PBG304(常州強力電子新材有限公司製)等が挙げられる。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤は、黒色樹脂組成物の全固形分100質量部に対して3〜20質量部とすることが好ましく、4〜13質量部とすることがより好ましい。
【0062】
また、本発明において、(D)硬化性バインダーは、更に、カルド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルエポキシ樹脂、シロキサンポリマー系樹脂、及び、ポリイミド樹脂からなる群より選択される1種以上のポリマーを含有することが好ましく、中でもカルド樹脂を含有することが、表面抵抗が高くなり、優れた光学濃度(OD)を有する着色層を形成できることから好ましい。
【0063】
カルド樹脂とは、分子内に、下記化学式(1)の例に示されるような、フルオレン骨格に二つのベンゼン環が結合した構造(カルド構造)を有する樹脂をいう。
【0065】
カルド樹脂は、正確なメカニズムは不明であるがフルオレン骨格がπ共役系を含む嵩高い骨格を有する。そのため顔料が高濃度の場合であっても、黒色顔料同士の接触が抑制されて、分散性や分散安定性に優れると共に、顔料の比表面積が大きくすることができ光学濃度(OD)の高い着色層を形成することができるものと推定される。その結果、透過性の低い着色層を得ることができる。また、顔料同士の接触が抑制されるため、絶縁性に優れ着色層の表面抵抗も高くすることができる。
【0066】
カルド樹脂としては、中でも、カルド構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい(以下、カルドエポキシ(メタ)アクリレート樹脂ということがある)。カルドエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、特開2007−119720号公報に記載された下記一般式(2)で表される重合性化合物や、特開2006−308698号公報に記載されたカルド構造を有するエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸の反応物(重縮合物)等が好ましく挙げられ、中でも下記一般式(2)で表される重合性化合物が好ましい。
【0068】
ここで、一般式(2)中、Xはそれぞれ独立して下記一般式(3)で表される基を、Yはそれぞれ独立して多価カルボン酸またはその酸無水物の残基を示し、R
1はそれぞれ独立して、下記一般式(4)で表される基をであり、jは0〜4の整数、kは0〜3の整数、nは1以上の整数である。複数あるX、Y及びR
1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0070】
一般式(3)中、R
2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、またはハロゲン原子を、R
3はそれぞれ独立して、−O−または−OCH
2CH
2O−を表す。
【0072】
一般式(4)中、R
4は水素原子またはメチル基、R
5はそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。
【0073】
本発明に用いられるカルド樹脂は、特開2007−119720号公報等に記載の方法を参考に製造することができ、例えば、フルオレンビスフェノール化合物をエポキシ化してフルオレンビスフェノール化合物のエポキシ化合物とし、これに(メタ)アクリル酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートとし、このエポキシ(メタ)アクリレートに多価カルボン酸又はその酸無水物と反応させることにより得ることができる。
フルオレンビスフェノール化合物としては、上記一般式(3)において、R
3が−O−であり、この−O−が−OHとなったものが好ましく挙げられる。
【0074】
フルオレンビスフェノール化合物としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等のビスフェノール化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
上記多価カルボン酸及びその酸無水物としては、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸等のジカルボン酸またはそれらの酸無水物;ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、4−(1,2−ジカルボキシエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸またはそれらの酸二無水物;トリメリット酸またはその酸無水物等のトリカルボン酸またはそれらの酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0076】
本発明に好ましく用いられるカルドエポキシ(メタ)アクリレート樹脂として、市販品を用いてもよい。本発明に好適に用いることができるカルド樹脂の市販品の商品名としては、INR−19P、INR−50M−2(ナガセケムテック(株)製)等が挙げられる。
【0077】
本発明の黒色樹脂組成物は、顔料吸着性基の少なくとも一部が複素環基である分散剤と、環式炭化水素を有する高分子化合物である分散バインダーと、上記カルド樹脂とを組み合わせて用いることが特に好ましい。嵩高い構造を有する分散剤と、分散バインダーと、上記カルド樹脂を組み合わせて用いることにより、これらの相乗効果により顔料が高濃度であっても、顔料の分散性及び分散安定性が更に向上し、電気抵抗がより高く、より遮光性に優れた着色層を形成できる。
【0078】
(任意添加成分)
本発明の黒色樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて、他の成分を含有してもよい。
【0079】
他の成分としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0080】
(黒色樹脂組成物における各成分の配合割合)
(A)黒色顔料の含有量は、黒色樹脂組成物の固形分全量に対して、20〜80質量%であることが好ましく、35〜70質量%であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、遮光性に優れた樹脂ブラックマトリクスを得ることができる。また、上記上限値以下であれば、分散性及び分散安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する樹脂ブラックマトリクスを得ることができる。
また、(B)分散剤の含有量としては、顔料を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、黒色樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1〜25質量部用いることができる。更に、全固形分100質量部に対して2.5〜20質量部の割合で配合するのが好ましく、特に5〜15質量部の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、黒色顔料の分散性及び分散安定性に優れ、黒色顔料の沈降も生じにくい。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。
(C)分散バインダーの含有量は、黒色樹脂組成物の全固形分100質量部に対して1〜35質量部であることが好ましく、2.5〜30質量部であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、黒色顔料の分散性及び分散安定性に優れ、黒色顔料の沈降も生じにくい。また、上記上限値以下であれば、分散液の粘度上昇が抑制される。
(D)硬化性バインダーの含有量は、黒色樹脂組成物の全固形分100質量部に対して0.5〜30質量部であることが好ましく、1.5〜25質量部であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、充分な硬度や、基板との密着性を有する樹脂ブラックマトリクスを得ることができる。また上記上限値以下であれば、現像性に優れ、熱収縮による微小なシワの発生も抑制される。
(D)硬化性バインダーにおいて、カルド樹脂とを組み合わせて用いる場合、カルド樹脂の含有割合は、硬化性バインダー全量100質量部に対して、5〜95質量部であることが好ましく、30〜90質量部であることがより好ましく、50〜80質量部であることが更により好ましい。
また、溶剤を用いる場合、当該溶剤の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。該溶剤を含む黒色樹脂組成物の全量に対して、通常、55〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65〜88質量%の範囲内であることが好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗工性に優れたものとすることができる。
【0081】
(黒色樹脂組成物の製造方法)
黒色樹脂組成物の製造方法としては、例えば、(1)溶剤中に、上記本発明に係る黒色顔料分散液と、(D)硬化性バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し、混合する方法、(2)溶剤中に、(D)硬化性バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに上記本発明に係る黒色顔料分散液を加えて混合する方法などを挙げることができる。
【0082】
[樹脂ブラックマトリクス]
本発明に係る樹脂ブラックマトリクスは、前記本発明に係る黒色樹脂組成物の硬化物を含有する。
前記本発明に係る黒色樹脂組成物の硬化物を含有することにより、本発明の樹脂ブラックマトリクスは、電気抵抗が高く、遮光性に優れているものとすることができる。
【0083】
このような本発明の樹脂ブラックマトリクスについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の樹脂ブラックマトリクスを備えた樹脂ブラックマトリクス基板の一例を示す概略断面図である。
図2は、本発明の樹脂ブラックマトリクスを備えた樹脂ブラックマトリクス基板の一例を示す概略平面図である。
図1及び
図2の例では、本発明の樹脂ブラックマトリクス2は、透明基板1上に開口部3を備えたパターン状に形成されて、樹脂ブラックマトリクス基板10を構成する。開口部3には、後述するカラーフィルターの着色層が形成される。
【0084】
樹脂ブラックマトリクスのパターンは、特に限定されず、後述する着色層の配列が、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列となるように、形成することができる。また、樹脂ブラックマトリクスの幅、面積等は任意に設定することができる。
樹脂ブラックマトリクスの厚みは、塗布方法、黒色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、0.2〜2μmの範囲であることが好ましい。
【0085】
本発明の樹脂ブラックマトリクスは、まず、透明基板上に、前記本発明に係る黒色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、コールコート法、スピンコート法などの公知の塗布方法により塗布してウェット塗膜を形成する。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光する。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用する黒色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、黒色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、樹脂ブラックマトリクスが形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0086】
また、樹脂ブラックマトリクスを、例えばインクジェット方式で形成する場合には、下記の方法により形成することができる。
まず、前記本発明の黒色樹脂組成物を、透明基板の表面に、樹脂ブラックマトリクスを形成する所定領域にインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。このインクの吹き付け工程において、黒色樹脂組成物は、インクジェットヘッドの先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持し続ける必要がある。
次に、当該インク層を乾燥し必要に応じてプリベークした後、適宜加熱乃至露光することにより硬化させる。インク層を適宜加熱乃至露光すると、黒色樹脂組成物中に含まれる硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、インク層が硬化して樹脂ブラックマトリクスが形成される。
【0087】
本発明の樹脂ブラックマトリクスにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基板であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルターに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
【0088】
[カラーフィルター]
本発明に係るカラーフィルターは、前記本発明に係る樹脂ブラックマトリクスを備えていることを特徴とする。
本発明のカラーフィルターは、前記本発明に係る樹脂ブラックマトリクスを備えていることにより、遮光部が高い遮光性と優れた絶縁性を有するため、光学特性に優れたカラーフィルターとなる。
【0089】
このような本発明のカラーフィルターについて、図を参照しながら説明する。
図3は、本発明のカラーフィルターの一例を示す概略断面図である。
図3の例では、本発明のカラーフィルター20は、透明基板1上に樹脂ブラックマトリクス2を備えた樹脂ブラックマトリクス基板10の開口部に、赤色着色層4R、緑色着色層4G、及び青色着色層4Bとを有している。
本発明のカラーフィルターは、透明基板と、樹脂ブラックマトリクスと、各色の着色層を有するものであるが、透明基板及び樹脂ブラックマトリクスは、前記本発明に係る樹脂ブラックマトリクスの項において説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
本発明のカラーフィルターに用いられる着色層は、通常3色以上の着色パターンから構成されている。
当該着色層は、カラーフィルターの着色層形成に用いられる従来公知のインクの中から、適宜選択して用いることができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法や、用いる着色層形成用インクの固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。着色層の幅、面積等は、前記本発明の樹脂ブラックマトリクスの開口部に合わせて、任意に設定することができる。
【0091】
着色層の形成方法は、前記樹脂ブラックマトリクスの形成方法と同様の方法とすることができる。また、カラーフィルターの他の構成は、従来公知のものと同様であって良い。
【0092】
本発明のカラーフィルターは、液晶表示装置や、有機発光表示装置等の各種表示装置用のカラーフィルターとして好適に用いることができる。中でも、本発明のカラーフィルターは、遮光部が高い遮光性と優れた絶縁性を有するため、IPS方式の液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0093】
[タッチパネル用ベゼル材]
本発明に係るタッチパネル用ベゼル材は、前記本発明に係る黒色樹脂組成物の硬化物を含有することを特徴とする。ここで、タッチパネル用ベゼル材とは、タッチパネルの表示部分を保護する機能を持つ部材であって、タッチパネルの表示部分を取り囲み、非表示部となる縁部に黒色樹脂組成物の硬化物を含有しているものである。当該タッチパネル用ベゼル材の当該縁部においては、遮光性や絶縁性、更には、意匠性も求められる。
前記本発明に係る黒色樹脂組成物の硬化物を含有することにより、本発明のタッチパネル用ベゼル材は、電気抵抗が高く、遮光性に優れている。
【0094】
このような本発明のタッチパネル用ベゼル材について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、本発明のタッチパネル用ベゼル材30の一例を示す概略平面図である。
図5は、本発明のタッチパネル用ベゼル材の使用態様の一例を示す概略断面図である。
図4及び
図5の例では、本発明のタッチパネル用ベゼル材30は、黒色着色層5が、透明基板1上に開口部6を備えるように形成されている。
図5の例に示されるタッチパネル40は、透明基板1上に、タッチ位置を検出するための第一ITO膜7Aと第二ITO膜7Bとを絶縁層8を介して積層した位置検出部材40が、表示装置9上に配置され、当該位置検出部材40上に、タッチパネル用ベゼル材30が、黒色着色層5側から積層している。本発明のタッチパネル用ベゼル材は、電気抵抗が高いため、従来、カーボンブラックを黒色顔料として用いた場合に必須であった、第二ITO膜と黒色着色層との間に絶縁層を設けなくても、正確な位置検出が可能となる。また、本発明の黒色樹脂組成物を用いて形成された黒色着色層は、耐熱性や、耐薬品性にも優れているため、第二ITO膜を、ベゼル材側の透明基板上に形成することも可能である。また、ITO膜製膜時の加熱等による黒色着色層のクラックや密着不良が生じにくい。
【0095】
本発明に係るタッチパネル用ベゼル材の黒色着色層の形成方法は、上記本発明に係る樹脂ブラックマトリクスの形成方法と同様のものとすることができる。
タッチパネル用ベゼル材の厚みは、塗布方法、黒色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、0.2〜3μmの範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0096】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0097】
(製造例1 分散バインダーAの調製)
3Lのセパラブルフラスコに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)60質量部を加え、120℃まで昇温した後、モノマー組成としてメタクリル酸(MAA)、8.76質量部、メチルメタクリレート(MMA)8.56質量部、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)3.44質量部、1−アダマンチルメタクリレート(ADAMA)10.28質量部、ラジカル開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.66質量部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン1.54質量部を均一に混合し、3時間かけて滴下した。滴下終了3時間後に10分間かけて130℃に昇温させ、130℃一定温度で15分間保ち共重合体を合成した。上記の共重合体に所定量の重合禁止剤0.02質量部およびグリシジルメタクリレート(GMA)8.96質量部を添加して、110℃まで昇温し、110℃になった時点でN,N−ジメチルベンジルアミン0.2質量部を添加し、その後10時間加熱する事により分散バインダーAを得た。GPC測定装置(東ソー(株)製、「HLC−8220GPC」)にて、ゲル浸透クロマトグラフにより分子量を確認したところ、得られた分散バインダーAの重量平均分子量は8,500(ポリスチレン換算)であった。また、150℃オーブンにて2時間加熱することにより固形分を測定したところ44.5%であった。酸価はJIS K 0070に従って測定したところ80mgKOH/gであった。
【0098】
(製造例2 分散バインダーBの調製)
製造例1において、1−アダマンチルメタクリレートの代わりに、ジシクロペンテニルメタクリレート10.28質量部を用いた以外は、製造例1と同様にして、分散バインダーBを得た。
【0099】
(製造例3 分散バインダーCの調製)
製造例1において、1−アダマンチルメタクリレートの代わりに、トリシクロデカンアクリレート10.28質量部を用いた以外は、製造例1と同様にして、分散バインダーCを得た。
【0100】
(製造例4 分散バインダーDの調製)
製造例1において、1−アダマンチルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートの代わりに、ベンジルメタクリレート(BzMA)13.72質量部に変更した以外は、製造例1と同様にして、分散バインダーDを得た。
【0101】
(製造例5 分散バインダーEの調製)
製造例1において、モノマー組成を、メタクリル酸(MAA)12.0質量部、メチルメタクリレート(MMA)8.76質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)10.28質量部に変更した以外は、製造例1と同様にして、分散バインダーEを得た。
【0102】
(実施例1−1 黒色顔料分散液の調製)
バナジウム酸窒化物FB15M(三菱マテリアル電子化成(株)製、黒色顔料(以下、黒色顔料Aとする場合がある))76.9質量部と、BYK161(顔料吸着性基としてイソシアヌル基を有する顔料分散剤、ビックケミー(株)製(以下、顔料分散剤Aとする場合がある))11.5質量部と、製造例1で得られた分散バインダーA 11.5質量部を、下記表1の組成となるように加え、更に、PMA795.6質量部を加えて攪拌した。次いで、ジルコニアビーズを加え、ペイントシェーカーにより4時間分散することにより、固形分濃度が10質量%の黒色顔料分散液1を得た。
【0103】
(実施例1−2〜1−8 黒色顔料分散液の調製)
実施例1−1において、黒色顔料、顔料分散剤、及び分散バインダーの種類及び組成をそれぞれ、下記表1となるように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、固形分濃度が10質量%の黒色顔料分散液2〜8を得た。
なお、表1中、顔料Bは、チタンブラック13M−T(三菱マテリアル電子化成(株)製、黒色顔料)を、顔料Cは、カーボンブラックを表す。
また、表1中、顔料分散剤Bは、ビックケミー(株)製顔料分散剤、BYK168(顔料吸着性基としてイソシアヌル基を有する)を、顔料分散剤Cは味の素(株)製顔料分散剤、PB821(顔料吸着性基としてアミン基を有する)を、顔料分散剤Dはビックケミー(株)製顔料分散剤、BYK2155を、顔料分散剤Eはビックケミー(株)製顔料分散剤、BYK9077をそれぞれ表わす。
【0104】
(比較例1−1〜1−5 黒色顔料分散液の調製)
実施例1−1において、黒色顔料、顔料分散剤、及び分散バインダーの種類及び組成をそれぞれ、下記表1となるように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、固形分濃度が10質量%の比較黒色顔料分散液1〜5を得た。
【0105】
(分散安定性評価)
まず、上記実施例及び、比較例により得られた黒色顔料分散液1〜6及び比較黒色顔料分散液1〜5の沈降を確認した。次いで、25℃下で30日間静置して保管した後、沈降を確認するためスパチュラにより容器の底をかきとり顔料沈降の有無を確認した。<分散安定性評価基準>
5: 沈降がみられなかった。
4: わずかに沈降がみられた。
3: ソフトケーキ状の沈降があった。
2: 顔料が硬く沈降していた。
1: 顔料が完全に沈降していた。
分散安定性評価が4又は5であれば、分散安定性に優れていると評価される。
【0106】
【表1】
【0107】
(実施例2−1 黒色樹脂組成物1の調製)
下記表2の組成となるように、実施例1−1で得られた黒色分散液1と、硬化性バインダーとを混合して、固形分濃度が13質量%の黒色樹脂組成物1を得た。
【0108】
(実施例2−2〜2−11 黒色樹脂組成物の調製)
実施例2−1において、黒色顔料分散液、及び硬化性バインダー成分の種類及び組成をそれぞれ、下記表2となるように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、固形分濃度が13質量%の黒色樹脂組成物2〜11を得た。
なお、表2中、ポリマーAは、INR−19P(ナガセケムテックス(株)製、一般式(2)で表されるカルドエポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、ポリマーBは、INR−50M−2(ナガセケムテックス(株)製、一般式(2)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、モノマーは、アロニックスM402(東亜合成(株)製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)、光重合開始剤Aは、N1919(ADEKA(株)製)、光重合開始剤Bは、RBG304(常州強力電子新材料有限公司製)をそれぞれ表す。
【0109】
(比較例2−1〜2−5 比較黒色樹脂組成物の調製)
実施例2−1において、黒色顔料分散液、及び硬化性バインダー成分の種類及び組成をそれぞれ、下記表2となるように変更した以外は、実施例2−1と同様にして、固形分濃度が13質量%の比較黒色樹脂組成物1〜5を得た。
【0110】
(評価)
(1)塗膜の調製
実施例及び比較例で得られた黒色樹脂組成物1〜9及び比較黒色樹脂組成物1〜5をそれぞれ、スピンコート法により、ポストベーク後の膜厚が1.0μmになるように、ガラス基板に塗布し、90℃のホットプレートで3分間加熱して乾燥させた。次に、塗膜側から高圧水銀灯を用いて、紫外光を60mJ/m
2照射することにより露光した。その後、温度23度、KOH濃度0.05%の現像液で60秒間現像し、更にオーブンで230度、30分間加熱して塗膜を形成し得た。
【0111】
(2)光学濃度(OD)評価
(1)で得られた塗膜について、それぞれ、オリンパス(株)製、分光光度計、OSP−SP200により測色し、可視光領域の全光光学濃度を算出した。
得られた全光光学濃度を、膜厚1μmあたりの光学濃度(OD)に換算して、光学濃度を評価した。光学濃度(OD)が高いほど遮光性に優れていると評価される。結果を表2に示す。
【0112】
(3)表面抵抗試験
(1)で得られた塗膜について、それぞれ、(株)ダイヤインスツルメンツ製、表面抵抗率測定機ハイレスタにより、表面抵抗の測定を行った。結果を表2に示す。なお、本測定法による表面抵抗の測定上限は、9.99×10
15Ω/□であった。
【0113】
【表2】
【0114】
[結果のまとめ]
バナジウム酸窒化物を含む黒色顔料と、窒素、酸素、硫黄、及び燐よりなる群から選択される1種以上のヘテロ原子を含む顔料吸着性基を有する高分子化合物である分散剤と、環式炭化水素を有する高分子化合物である分散バインダーとを組み合わせて用いた実施例1−1〜実施例1−8の黒色顔料分散液1〜8は、30日保管後であっても顔料の沈降がほとんどみられず、顔料分散性、及び分散安定性に優れていた。中でも、イソシアヌル基を有する顔料分散剤A又はBを用いた実施例1−1、1−2、1−4、1−5、1−7、及び1−8は顔料分散安定性に特に優れていることが明らかとなった。
一方、分散バインダーを用いなかった、比較例1−1、1−2の比較黒色顔料分散液、及び、環式炭化水素を有しない分散バインダーを用いた比較例1−3の比較黒色顔料分散液は、分散安定性が悪く、30日保管後には顔料が沈降していた。
バナジウム酸窒化物含む黒色顔料を含有し、分散安定性が良好であった黒色顔料分散液1〜8を含む実施例2−1〜2−11の黒色樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、表面抵抗が1×10
15Ω/□以上であり、絶縁性に優れていた。また、実施例2−1〜2−11の黒色樹脂組成物を用いて形成された塗膜の光学濃度(OD)は4.3以上であり、遮光性に優れていた。
それに対して、分散安定性の悪い比較黒色顔料分散液1〜3を用いた比較黒色樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、バナジウム酸窒化物の含有割合が実施例2−1、及び2−3〜2−11と同一でありながら、実施例よりも遮光性が劣っており、また、絶縁性も悪かった。
黒色顔料としてチタンブラックを用いた比較例1−4の比較黒色顔料分散液4は、当該チタンブラックの分散に適しているとされる顔料分散剤Dを用いた場合であっても、保存安定性が不十分であり、顔料の沈降が認められた。また、当該比較顔料分散液4を用いた比較例2−4の黒色樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、絶縁性、及び遮光性が、ともに実施例の塗膜よりも劣っていた。
黒色顔料としてカーボンブラックを用いた比較例1−5の比較黒色顔料分散液5は、顔料分散剤Eを選択することにより分散安定性が良好であった。しかしながら、当該比較顔料分散液5を含む比較例2−5の比較黒色樹脂組成物を用いて形成された塗膜は、光学濃度(OD)は4.4と良好であったものの、絶縁性が悪かった。