特開2015-189964(P2015-189964A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-189964(P2015-189964A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/16 20060101AFI20151006BHJP
   C08F 279/04 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   C08F6/16
   C08F279/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-70743(P2014-70743)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 文敏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和則
(72)【発明者】
【氏名】秋山 友良
【テーマコード(参考)】
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J026AA68
4J026AC11
4J026BA05
4J026BA31
4J026BB03
4J026DA04
4J026DA07
4J026DA13
4J026DB04
4J026DB08
4J026DB13
4J026DB16
4J026EA01
4J026EA04
4J026EA05
4J026EA06
4J026FA04
4J026GA09
4J100AB02Q
4J100AM02R
4J100AS02P
4J100CA04
4J100CA05
4J100EA07
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA08
4J100FA20
4J100FA34
4J100GA18
4J100GC01
4J100GC07
4J100GC17
4J100GC25
4J100GC35
4J100GC37
4J100GD08
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】焼け樹脂による外観不良が抑制され、かつ成型時の滞留熱安定性が優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【解決手段】鉄イオン含有量が20ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計が100〜4000ppmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄イオン含有量が20ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計が100〜4000ppmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
鉄イオン含有量が10ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計が100〜4000ppmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
グラフト共重合体が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
グラフト共重合体に用いられるゴム状重合体が共役ジエン系重合体であることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼け樹脂による外観不良が抑制され、かつ成型時の滞留熱安定性が優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム状重合体に単量体をグラフト重合したグラフト共重合体(例えばABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂など)を含む熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性及び加工性のバランスに優れた樹脂であり、自動車等の車両用内外装部品、各種の家電製品やOA機器のハウジング、その他雑貨分野等、幅広い分野に使用されている。
【0003】
しかしながら、特にグラフト共重合体中のゴム質重合体が、パウダー化工程、造粒工程、成形工程などで加えられる熱により熱劣化が進行し、焼け樹脂の発生を引き起こす。この焼け樹脂が、成形品やフィルムの表面近傍に存在することで、外観不良を起こすという問題がある。そのため、熱履歴による焼け樹脂の発生が抑制され、成形品やフィルムに加工した際、良好な表面外観が得られる熱可塑性樹脂組成物が求められている。
【0004】
焼け樹脂の発生を抑制させる方法として、特許文献1には、ゴム変性熱可塑性樹脂組成物のQ値の範囲を規定することで、流動性に優れ、押し出された溶融ストランドの脈動がなくなることで、樹脂の滞留による焼け、異物の発生が抑制されることが開示されている。しかしながら、この方法では、造粒工程での焼け樹脂の発生は抑制されるが、造粒工程以外での焼け樹脂の発生は抑制出来ないため、依然として十分に満足のいくものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−17627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、焼け樹脂による外観不良が抑制され、かつ成型時の滞留熱安定性が優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂組成物中の鉄イオン含有量が20ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計を100〜4000ppmにすることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、鉄イオン含有量が20ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計が100〜4000ppmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により焼け樹脂による外観不良が抑制され、かつ成型時の滞留熱安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において焼け樹脂とは、熱可塑性樹脂組成物がパウダー化工程、造粒工程、成形工程などで加えられる熱による熱劣化により発生したものを示す。
【0011】
本発明において成型時の滞留熱安定性とは、溶融樹脂がシリンダー内に長く滞留した後、成形した成形品の外観に与える影響を示す。通常、溶融樹脂がシリンダー内に長く滞留すれば、焼け樹脂の発生が増える傾向にあり、焼け樹脂により成形品の外観不良が発生する。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体を含むことが好ましい。
【0013】
本発明で使用するグラフト共重合体を構成するゴム状重合体としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン−(エチレン−ブタジエン)−スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム等の共役ジエン系重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン(エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等)ゴム等のエチレン−プロピレン系ゴム、ポリブチルアクリレートゴム等のアクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、更にはこれらのゴムから選ばれた一種以上の複合ゴムなどが挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特に、共役ジエン系重合体が好ましい。
【0014】
ゴム状重合体の重合方法については特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができるが、乳化重合法が特に好ましい。
【0015】
ゴム状重合体を乳化重合法により得る際に用いる乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。特に、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩が好ましい。
【0016】
ゴム状重合体を乳化重合法により得る際に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。これら開始剤と還元剤の組み合わせからなるレドックス系開始剤も用いることができ、還元剤としては、硫酸第一鉄7水塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、また、L−アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類、更にはラクトース、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。また、レドックス系開始剤を用いる際、キレート剤として、ピロリン酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(二水和物)等が用いられる。
【0017】
ゴム状重合体を乳化重合法により得る際の重合方法には特に制限はないが、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることが出来る。また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。
【0018】
ゴム状重合体を乳化重合法により得る際の重合温度は特に制限はないが、40〜80℃であることが好ましい。
【0019】
ゴム状重合体の重量平均粒子径に特に制限はないが、耐衝撃性、流動性及び発色性などの物性バランスから、150〜800nmが好ましく、200〜600nmがより好ましい。また、重量平均粒子径が50〜300nmのゴム状重合体に酸を添加し、凝集肥大化させることで調整することも出来る。
【0020】
本発明で使用するグラフト共重合体は、上述のゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも一種の単量体をグラフト重合して得られる。
【0021】
グラフト重合に用いる芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0022】
グラフト重合に用いるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にアクリロニトリルが好ましい。
【0023】
グラフト重合に用いる共重合可能な他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸(ジ)ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸クロルフェニル等が例示でき、マレイミド系単量体としてはN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が例示でき、アミド系単量体としてはアクリルアミド、メタクリルアミド等が例示できる。
【0024】
ゴム状重合体にグラフト重合される、上述の単量体の組成比率に特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体60〜90重量%、シアン化ビニル系単量体10〜40重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜30重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体30〜80重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体20〜70重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%、シアン化ビニル系単量体10〜60重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜30重量%の組成比率等であることが好ましい(グラフト重合に用いる単量体合計量を100重量部とする)。
【0025】
グラフト共重合体中のゴム状重合体の含有量は、耐衝撃性、流動性及び発色性などの物性バランスから、20〜85重量部であることが好ましく、40〜70重量部であることがより好ましい(グラフト共重合体を100重量部とする)。ゴム状重合体の含有量が20重量部より少ないとグラフト共重合体のグラフト率が高くなり耐衝撃性に劣り、85重量部を超えるとグラフト共重合体のグラフト率が低くなり発色性に劣る。
【0026】
グラフト共重合体の重合方法については特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができるが、乳化重合法が特に好ましい。
【0027】
グラフト共重合体を乳化重合法により得る際に用いる乳化剤、開始剤、重合方法及び重合温度としては、上述したゴム状重合体を乳化重合法により得る際と同様のものを用いることが出来る。
【0028】
グラフト共重合体のグラフト率(グラフト共重合体のアセトン可溶分量と不溶分量及びグラフト共重合体中のゴム状重合体の重量から求める)、及びアセトン可溶分の還元粘度(0.4g/100cc、N,Nジメチルホルムアミド溶液として30℃で測定)に特に制限はなく、要求性能によって任意の構造のものを使用することが出来るが、耐衝撃性、流動性及び発色性などの物性バランスの観点から、グラフト率は25〜150%であることが好ましく、還元粘度は0.2〜2.0dl/gであることが好ましい。
【0029】
グラフト共重合体が乳化重合法により得られた場合、凝固、洗浄、脱水、乾燥工程を経ることでパウダーを得ることが出来る。凝固工程で用いる凝固剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムのような金属塩、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸のような無機酸及び有機酸が挙げられ、1種単独又は2種以上を水溶液にして用いることが出来る。また、凝固剤を用いず、スプレードライヤーやアトマイザーなどによる回収、乾燥方法も用いることができる。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体を1種または2種以上含み、さらに他の樹脂を含むことができる。例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン− アクリロニトリル樹脂、α-メチルスチレン− アクリロニトリル樹脂、スチレン−メチルメタクリレート樹脂、スチレン− アクリロニトリル−メチルメタクリレート樹脂、N−フェニルマレイミド−スチレン樹脂、N−フェニルマレイミド− スチレン−アクリロニトリル樹脂等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物中のゴム状重合体含有量が5〜50重量%になるように含有させることが物性バランスの観点から好ましく、10〜30重量%にすることがより好ましい。
【0032】
熱可塑性樹脂組成物中の鉄イオン含有量の低減方法としては、例えば、グラフト共重合体が乳化重合法により得られる場合、レドックス系開始剤の還元剤である硫酸第一鉄7水塩量の削減や他の還元剤への変更、重合後のラテックスにキレート剤を添加して金属錯体を形成して水溶性を高めることや、得られたスラリーを高速遠心脱水機にかける際、その水洗量を増やす方法や得られたパウダーを除鉄機に通す方法などで適宜調整することができる。
【0033】
熱可塑性樹脂組成物中のナトリウムイオン及びカリウムイオン含有量の調整方法としては、例えば、グラフト共重合体が乳化重合法により得られる場合、乳化剤の使用量の変更、乳化剤由来の脂肪酸系金属塩を再度、脂肪酸に戻して溶剤洗浄する方法や、得られたスラリーを高速遠心脱水機にかける際、その水洗量を変更する方法などで適宜調整することができる。
【0034】
熱可塑性樹脂組成物中のマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオン含有量の調整方法としては、例えば、グラフト共重合体が乳化重合法により得られる場合、ラテックスからパウダーを得る際の凝固剤量の変更、および得られたパウダーを高速遠心脱水機にかける際、その水洗量を変更する方法などで適宜調整することができる。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の鉄イオン含有量を20ppm以下さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計は100〜4000ppmであり、鉄イオン含有量を10ppm以下さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計を100〜3000ppmであることがより好ましい。熱可塑性樹脂組成物中の鉄イオン含有量が20ppm以下さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計を100〜4000ppmにすることにより、焼け樹脂の発生が抑制され、成形品の外観が良好で、かつ成型時の滞留熱安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、ヒンダードアミン系の光安定剤、ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、臭気マスキング剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料、及び染料等を添加することもできる。更に、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の成分を混合することで得ることができる。混合するために、例えば、押出し機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す「部」及び「%」は重量に基づくものである。
【0039】
小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックスの製造
10リットルの耐圧容器の内部を窒素で置換後、1,3−ブタジエン95重量部、スチレン5重量部、n−ドデシルメルカプタン0.23重量部、過硫酸カリウム0.29重量部、不均化ロジン酸ナトリウム1.98重量部(固形分)、水酸化ナトリウム0.05重量部(固形分)、脱イオン水158重量部を仕込み、攪拌しつつ69℃で8時間反応させた。その後、不均化ロジン酸ナトリウム0.24重量部(固形分)、水酸化ナトリウム0.08重量部(固形分)及び脱イオン水7重量部を添加した。さらに温度を69℃に維持しながら5時間攪拌を継続して反応を終了した。その後、減圧して残存している1,3−ブタジエンを除去し、小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックスを得た。得られた小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックスを、四酸化オスミウム(OsO)で染色し、乾燥後に透過型電子顕微鏡で写真撮影した。画像解析処理装置(装置名:旭化成(株)製 IP−1000PC)を用いて800個のゴム粒子の面積を計測し、その円相当径(直径)を求め、重量平均粒子径を算出した結果、99nmであった。
【0040】
凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−1)の製造
10リットルの耐圧容器に、脱イオン水177重量部、小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックス100重量部(固形分)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.022重量部(固形分)を添加して8分間攪拌混合した後、5%リン酸水溶液18重量部を8分間にわたり添加した。次いで10%水酸化カリウム水溶液9重量部を添加し、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−1)を得た。
上述の方法で、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(a−1)の重量平均粒子径を算出した結果、425nmであった。
【0041】
凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−2)の製造
10リットルの耐圧容器に、脱イオン水192重量部、小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックス100重量部(固形分)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.052重量部(固形分)を添加して8分間攪拌混合した後、5%リン酸水溶液18重量部を7分間にわたり添加した。次いで10%水酸化カリウム水溶液9重量部を添加し、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−2)を得た。
上述の方法で、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(a−2)の重量平均粒子径を算出した結果、267nmであった。
【0042】
スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−3)の製造
10リットルの耐圧容器の内部を窒素で置換後、1,3−ブタジエン95重量部、スチレン5重量部、n−ドデシルメルカプタン0.25重量部、過硫酸カリウム0.33重量部、不均化ロジン酸ナトリウム0.25重量部(固形分)、水酸化ナトリウム0.12重量部(固形分)、脱イオン水67重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で反応させた。11時間目、22時間目、33時間目、44時間目にそれぞれ不均化ロジン酸ナトリウム0.33重量部(固形分)、水酸化ナトリウム0.11重量部(固形分)及び脱イオン水7.7重量部を添加し51時間反応させた。その後、不均化ロジン酸ナトリウム0.19重量部(固形分)、水酸化ナトリウム0.1重量部(固形分)及び脱イオン水4重量部を添加した。さらに温度を70℃に維持しながら8時間攪拌を継続して反応を終了した。その後、減圧して残存している1,3−ブタジエンを除去し、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−3)を得た。上述の方法で、重量平均粒子径を算出した結果、435nmであった。
【0043】
グラフト共重合体(A−1)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−1)50重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し62.5℃に到達したところで、アクリロニトリル0.5重量部、スチレン5.5重量部とラクトース0.2重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.1重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.007重量部を脱イオン水17重量部に溶解した水溶液を添加した。70℃に到達後、アクリロニトリル12.0重量部、スチレン32重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.07重量部の混合液及び脱イオン水20重量部にオレイン酸カリウム1.1重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.13重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を4.5時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3.3時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−1)を得た。その後、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(二水和物)0.1部添加後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−1)のパウダーを得た。
【0044】
グラフト共重合体(A−2)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−1)40重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し66℃に到達したところで、アクリロニトリル1.0重量部、スチレン6.0重量部、を添加した。70℃に到達後、過硫酸ナトリウム0.23部添加し、アクリロニトリル17.0重量部、スチレン36重量部、および脱イオン水20重量部にオレイン酸カリウム0.82重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を3.3時間かけて連続的に滴下した。滴下後、4.2時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−2)を得た。その後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、さらに除鉄機を用いてパウダー中の鉄分を除去し、グラフト重合体(A−2)のパウダーを得た。
【0045】
グラフト共重合体(A−3)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−1)60重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し60℃に到達したところで、スチレン3重量部とラクトース0.22重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.11重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.021重量部を脱イオン水14重量部に溶解した水溶液を添加した。69℃に到達後、アクリロニトリル12.0重量部、スチレン25重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.13重量部の混合液および脱イオン水17重量部にオレイン酸カリウム0.95重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.22重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を3.7時間かけて連続的に滴下した。滴下後、2.9時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−3)を得た。その後、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(二水和物)0.05部添加後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−3)のパウダーを得た。
【0046】
グラフト共重合体(A−4)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−1)50重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し63.5℃に到達したところで、スチレン5重量部とラクトース0.18重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.05重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.013重量部を脱イオン水15重量部に溶解した水溶液を添加した。70℃に到達後、アクリロニトリル15重量部、スチレン30重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.22重量部の混合液および脱イオン水15重量部にオレイン酸カリウム1.25重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.32重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を4.25時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3.2時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−4)を得た。その後、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(二水和物)0.1部添加後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−4)のパウダーを得た。
【0047】
グラフト共重合体(A−5)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−2)50重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し60℃に到達したところで、スチレン6重量部とラクトース0.25重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.09重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.012重量部を脱イオン水16重量部に溶解した水溶液を添加した。70℃に到達後、アクリロニトリル15重量部、スチレン29重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25重量部の混合液および脱イオン水16重量部にオレイン酸カリウム1.05重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.39重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を4.0時間かけて連続的に滴下した。滴下後、4.0時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−5)を得た。その後、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(二水和物)0.001部添加後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−5)のパウダーを得た。
【0048】
グラフト共重合体(A−6)の製造
ガラスリアクターに、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−3)50重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し66℃に到達したところで、スチレン5重量部とラクトース0.31重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.14重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.019重量部を脱イオン水17重量部に溶解した水溶液を添加した。71℃に到達後、アクリロニトリル12.5重量部、スチレン32.5重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.14重量部の混合液および脱イオン水18重量部にオレイン酸カリウム1.15重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.25重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を4.5時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3.5時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−6)を得た。その後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−6)のパウダーを得た。
【0049】
グラフト共重合体(A−7)の製造
ガラスリアクターに、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−3)40重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し67℃に到達したところで、スチレン3重量部とラクトース0.29重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.11重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.099重量部を脱イオン水16重量部に溶解した水溶液を添加した。70℃に到達後、アクリロニトリル15重量部、スチレン42重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.18重量部の混合液および脱イオン水18重量部にオレイン酸カリウム1.0重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.27重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を5.5時間かけて連続的に滴下した。滴下後、4.2時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−7)を得た。その後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−7)のパウダーを得た。
【0050】
グラフト共重合体(A−8)の製造
ガラスリアクターに、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−3)60重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し67℃に到達したところで、スチレン8重量部とラクトース0.25重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.12重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.021重量部を脱イオン水17重量部に溶解した水溶液を添加した。70℃に到達後、アクリロニトリル12重量部、スチレン20重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.17重量部の混合液および脱イオン水17重量部にオレイン酸カリウム1.0重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.31重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を5.0時間かけて連続的に滴下した。滴下後、4.0時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−8)を得た。その後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−8)のパウダーを得た。
【0051】
グラフト共重合体(A−9)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−2)40重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し65℃に到達したところで、スチレン5重量部、ラクトース0.21重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.15重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.018重量部を脱イオン水15重量部に溶解した水溶液を添加した。68℃に到達後、アクリロニトリル15重量部、スチレン40重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.23重量部の混合液および脱イオン水15重量部にオレイン酸カリウム1.0重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.33重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を6.0時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3.5時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−9)を得た。その後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−9)のパウダーを得た。
【0052】
グラフト共重合体(A−10)の製造
ガラスリアクターに、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(a−2)60重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し65℃に到達したところで、スチレン5重量部とラクトース0.21重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.15重量部、過硫酸カリウム0.2重量部及び硫酸第1鉄7水塩0.034重量部を脱イオン水15重量部に溶解した水溶液を添加した。69℃に到達後、アクリロニトリル12重量部、スチレン23重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.18重量部の混合液および脱イオン水15重量部にオレイン酸カリウム1.1重量部(固形分)、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.24重量部(固形分)を溶解した乳化剤水溶液を3.8時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3.5時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−10)を得た。その後、表1に示した凝固剤、洗浄水量、遠心脱水回数で脱水、乾燥し、グラフト重合体(A−10)のパウダーを得た。
【0053】
共重合体(B)
公知の塊状重合法により、スチレン70部、アクリロニトリル30部からなるスチレンーアクリロニトリル共重合体(B)を得た。この共重合体(B)の鉄イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオン含有量は0ppmであった。
【0054】
表1
【0055】
<実施例1〜5及び比較例1〜5>
表2に示すグラフト共重合体(A)、共重合体(B)を混合した後、東芝TEM−35B二軸押出機を用いて240℃にて溶融混練して実施例1〜5及び比較例1〜5のペレットを得た。各実施例及び比較例で得られたペレットを用いて以下の分析、評価に供した。その結果を表2に示す。
【0056】
鉄イオンの定量方法
サンプルを灰化し、酸溶解後、ICP発光分光分析法により鉄を定量した。
【0057】
カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの定量方法
サンプルを灰化し、酸溶解後、フレーム原子吸光分光法によりカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンを定量した。
【0058】
硫酸イオンの定量方法
サンプルを加圧熱水抽出し、イオンクロマト法により硫酸イオンを定量した。
【0059】
外観評価
十分乾燥させた上記ペレット70〜90gを2枚のステンレス板ではさみ、これを230℃に加熱した熱プレス機に設置し、圧力がかからない程度まで熱プレス機の熱板を近づけ6分間予熱する。予熱完了後、プレス圧力を9.8MPaまで上昇させ、ステンレス板の間よりはみ出してくる溶融樹脂を手で掴み、ゆっくり破れないようにフィルム状に約1m引き出す(フィルムの厚さは約0.01〜0.10mm)。
フィルム上に直径10cmの円を3箇所描き、それぞれの円内の焼け樹脂によるブツを数え(直径約0.2mm以上のもの)、平均した数値を用いる。
◎:0〜5個
○:6〜10個
△:11〜20個
×:21個以上
【0060】
酸化発熱開始温度の測定
示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス(株)製 DSC7020)を用いて酸化発熱開始温度を測定した。
酸化発熱開始温度が高い方が焼け樹脂の発生が抑制され、かつ滞留熱安定性にも優れる。
◎:220℃以上
○:210℃以上220℃未満
△:200℃以上210℃未満
×:200℃未満
【0061】
表2
【0062】
表2に示すように、実施例1〜5は本発明の熱可塑性樹脂組成物の例であり、焼け樹脂発生及び滞留熱安定性の指標である酸化発熱開始温度が高く、焼け樹脂によるブツ発生も少なく、良好な外観であった。
【0063】
表2に示すように、比較例1は、熱可塑性樹脂組成物中の鉄イオン含有量が本発明の規定量より多く、比較例2は、比較例1よりもさらに鉄イオン含有量が多い。比較例3は、鉄イオン以外のイオン含有量の合計が本発明の規定量の下限より少なく、比較例4は、鉄イオン以外のイオン含有量の合計が本発明の規定量の上限より多い。比較例5は、鉄イオン含有量が本発明の規定量より多くさらに鉄イオン以外のイオン含有量の合計が本発明の規定量の上限より多い。そのため、焼け樹脂発生及び滞留熱安定性の指標である酸化発熱開始温度が低く、焼け樹脂によるブツ発生が多く、外観に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、焼け樹脂による外観不良が抑制された、良好な成形品外観が得られることから、自動車等の車両用内外装部品、各種の家電製品やOA機器のハウジング、その他雑貨分野等、幅広い分野に利用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2015年3月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄イオン含有量が20ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計が100〜4000ppmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物であって、ゴム状重合体が共役ジエン系重合体を含有するグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
鉄イオン含有量が10ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計が100〜4000ppmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物であって、ゴム状重合体が共役ジエン系重合体を含有するグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。

【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
すなわち、本発明は、鉄イオン含有量が20ppm以下、さらにカリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び硫酸イオンの含有量の合計が100〜4000ppmであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物であって、ゴム状重合体が共役ジエン系重合体を含有するグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。